説明

リーフチェーン

【課題】リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることを防止して、大きな荷重を受けた際にも摩擦抵抗の増大を低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上するリーフチェーンを提供すること。
【解決手段】複数のリンクプレート110、130、140の連結ピン孔112に連結ピン120を挿入して交互に屈曲可能に多数連結したリーフチェーン100において、複数のリンクプレート110、130、140が長手方向の少なくとも一方の端面111を側面に対して垂直な面に加工されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の荷役用機械に使用され、端面がプーリに巻き掛けられて長手方向の荷重を受けるリーフチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートと、該リンクプレートの連結ピン孔に挿入され複数のリンクプレートを交互に屈曲可能に多数連結する連結ピンとを有し、一端が固定され他端がフォーク等に連結され、プーリに巻き掛けられてフォークリフトのフォーク等を昇降させるために使用されるリーフチェーンが知られている(例えば特許文献1、特許文献2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−543013号公報(第3乃至4頁、図1)
【特許文献2】実開昭61−204042号公報(第1頁、図1乃至図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のリーフチェーンは、リンクプレート510(530、540)が打ち抜き等のプレス加工により製造されるため、図7、図8に示すように、その端面511を両側面513に対して垂直に製造することが困難であった。
【0005】
そのため、リーフチェーンがプーリ550に巻き掛けられて大きな荷重をプーリ550から受けた際に、図9に示すように、リンクプレート510(530、540)の端面511がプーリの外周面551に片当たりして傾斜する力として作用し、リンクプレート530、540と連結ピン520、リンクプレート510(530、540)とプーリ550の外周面551、あるいは、隣接するリンクプレート510と、リンクプレート530、540の間の摩擦抵抗が増加してより大きな駆動力が必要となるとともに、騒音が増大したり、偏摩耗が生じて耐久性が低下するという問題があった。
【0006】
また、リーフチェーンが屈曲するために内リンクプレート530は連結ピン520と円滑に摺動する必要があることから、連結ピン520は内リンクプレート530の連結ピン孔532に微少な間隙を有して遊嵌されているため、内リンクプレート530の端面531がプーリの外周面551に片当たりすることで実際に傾斜が発生し、内リンクプレート530と連結ピン520、あるいは、隣接する各リンクプレート510、530、540の間でも局所的に摩擦が生じ、このことによって、さらに摩擦抵抗が増加してより大きな駆動力が必要となるとともに、騒音が増大したり、偏摩耗が生じて耐久性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることを防止して、大きな荷重を受けた際にも摩擦抵抗の増大を低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上するリーフチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートと、該リンクプレートの連結ピン孔に挿入され複数のリンクプレートを交互に屈曲可能に多数連結する連結ピンとを有するリーフチェーンにおいて、前記複数のリンクプレートが、長手方向の少なくとも一方の端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートを含むことにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたリーフチェーンの構成に加えて、前記複数のリンクプレートが、左右一対の外リンクプレートと、該外リンクプレートと連結ピンにより屈曲可能に連結される内リンクプレートと、前記左右一対の外リンクプレートの内側に同列に配置される中間リンクプレートからなり、前記内リンクプレートおよび中間リンクプレートが、リンクプレートを複数枚重ねて連結されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたリーフチェーンの構成に加えて、前記端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートが、プーリと接触するすべてのリンクプレートであり、前記側面に対して垂直な面に加工されている端面が、プーリと接触する側の端面であることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたリーフチェーンの構成に加えて、前記内リンクプレートが、連結ピン孔の内周面に二硫化モリブデンを含む潤滑剤を塗布されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたリーフチェーンの構成に加えて、前記連結ピンが、外周面に二硫化モリブデンを焼付け処理されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたリーフチェーンの構成に加えて、前記端面が、切削加工により平面状に形成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本請求項1に係る発明のリンクプレートは、前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートと、該リンクプレートの連結ピン孔に挿入され複数のリンクプレートを交互に屈曲可能に多数連結する連結ピンとを有するリーフチェーンにおいて、複数のリンクプレートが、長手方向の少なくとも一方の端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートを含むことにより、リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることが防止され、大きな荷重を受けた際にもリンクプレートと連結ピン、リンクプレートとプーリの外周面、あるいは、隣接するリンクプレートの間の摩擦抵抗の増大を低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【0015】
本請求項2に係る発明のリーフチェーンは、請求項1に係るリーフチェーンが奏する効果に加えて、複数のリンクプレートが左右一対の外リンクプレートと、該外リンクプレートと連結ピンにより屈曲可能に連結される内リンクプレートと、左右一対の外リンクプレートの内側に同列に配置される中間リンクプレートからなり、内リンクプレートおよび中間リンクプレートがリンクプレートを複数枚重ねて連結されていることにより、幅方向のリンクプレートを減らすことなく隣接するリンクプレートの間の摺動摩擦を低減することができ、駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減することができる。
【0016】
本請求項3に係る発明のリーフチェーンは、請求項1または請求項2に係るリーフチェーンが奏する効果に加えて、端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートがプーリと接触するすべてのリンクプレートであり、側面に対して垂直な面に加工されている端面がプーリと接触する側の端面であることにより、機械加工部分を最小としつつ確実にリンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることを防止することができ、摩擦抵抗の増大をさらに低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【0017】
本請求項4に係る発明のリーフチェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るリーフチェーンが奏する効果に加えて、内リンクプレートが、連結ピン孔の内周面に二硫化モリブデンを含む潤滑剤を塗布されていることにより、リンクプレートと連結ピンの間の摩擦抵抗の増大をさらに低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【0018】
本請求項5に係る発明のリーフチェーンは、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るリーフチェーンが奏する効果に加えて、連結ピンが外周面に二硫化モリブデンを焼付け処理されていることにより、リンクプレートと連結ピンの間の摩擦抵抗の増大をさらに低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【0019】
本請求項6に係る発明のリーフチェーンは、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るリーフチェーンが奏する効果に加えて、端面が切削加工により平面状に形成されていることにより、正確に端面を側面に対して垂直に加工することができるため、リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることがより防止され、摩擦抵抗の増大をさらに低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のリーフチェーンの使用時の説明図。
【図2】本発明のリーフチェーンの側面図。
【図3】本発明のリーフチェーンの平面図。
【図4】本発明のリーフチェーンのリンクプレートの側面図。
【図5】本発明のリーフチェーンのリンクプレートの正面図。
【図6】本発明のリーフチェーンをプーリに巻き掛けた状態の説明図。
【図7】従来のリーフチェーンのリンクプレートの側面図。
【図8】従来のリーフチェーンのリンクプレートの正面図。
【図9】従来のリーフチェーンをプーリに巻き掛けた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のリーフチェーンは、前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートと、該リンクプレートの連結ピン孔に挿入され複数のリンクプレートを交互に屈曲可能に多数連結する連結ピンとを有するリーフチェーンにおいて、複数のリンクプレートが、長手方向の少なくとも一方の端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートを含み、リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることが防止され、大きな荷重を受けた際にもリンクプレートと連結ピン、リンクプレートとプーリの外周面、あるいは、隣接するリンクプレートの間の摩擦抵抗の増大を低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明のリーフチェーンについて図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例であるリーフチェーン100は、図1乃至図3に示すように、両端に設けられる取付端部101の間を、前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートを連結ピンにより交互に屈曲可能に多数連結して構成され、プーリ150に巻き掛けられて使用される。
【0023】
複数のリンクプレートは、リーフチェーン100の幅方向最外方に設けられる左右一対の外リンクプレート110と、該外リンクプレート110と連結ピン120により屈曲可能に連結される内リンクプレート130と、外リンクプレート110の内側に同列に配置される中間リンクプレート140からなり、内リンクプレート130は左右外リンクプレート110に隣接して幅方向にそれぞれ3枚重ねて、中間リンクプレート140は幅方向中央に2枚重ねて設けられている。
【0024】
なお、本実施例では、各連結ピン120は左右1対の外リンクプレート110の連結ピン孔に、圧入、かしめ等の手段で固定され、内リンクプレート130の連結ピン孔とは微少な間隙を有して遊嵌されている。
また、取付端部101と連結される左右1対の外リンクプレート110の一方は、連結ピン孔に連結ピン120が直接固定されず、割りピン102で抜け止めされて、分解組み立てが容易となるように構成されている。
【0025】
各リンクプレート110(130、140)は、図4、図5に示すように、板材を打ち抜き加工し、側面から見てひょうたん型の外形となるように形成されるとともに、長手方向の前後に1対の連結ピン孔112が形成されている。
【0026】
各リンクプレート110(130、140)の外形の端面111のうち、プーリと接触する側の端面111の少なくとも接触する部分は、切削加工されて側面113に対して垂直な加工端面114が形成されている。
なお、当該加工端面114以外の端面111は、打ち抜き加工による不可避な傾斜が形成されており、側面113に対して垂直ではない。
【0027】
また、内リンクプレート130の連結ピン孔132の内周面には二硫化モリブデンが塗布されるとともに、各連結ピン120の外周面には二硫化モリブデンが焼付け処理され、リーフチェーン100が屈曲する際の連結ピン孔132と連結ピン120の摩擦抵抗が低減されるように構成されている。
【0028】
以上のように構成されたリーフチェーン100は、図6に示すように、プーリ150に巻き掛けられて大きな荷重をプーリ150から受けた際でも、各リンクプレート110、130(140)の加工端面114がプーリ150の外周面151に平均的に面接触するとともに、各リンクプレート110、130(140)が傾斜する方向の力は発生しない。
【0029】
このため、各リンクプレート110、130(140)と連結ピン120、リンクプレート110、130(140)とプーリ150の外周面151、あるいは、隣接する各リンクプレート110、130(140)の間の摩擦抵抗が増加することはなく、片当たりや各リンクプレート110、130(140)の傾斜による局所的な摩擦が生じることもない。
【0030】
また、内リンクプレート130の連結ピン孔132の内周面には二硫化モリブデンが塗布されるとともに、各連結ピン120の外周面には二硫化モリブデンが焼付け処理されているため、プーリ150に巻き掛けられて大きな荷重をプーリ150から受けた際でも屈曲の際に円滑に摺動し、駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができる。
【0031】
以上のように、本発明のリーフチェーンによれば、リンクプレートの端面がプーリの外周面に片当たりすることを防止して、大きな荷重を受けた際にも摩擦抵抗の増大を低減し駆動力の増大を防止するとともに、騒音を低減し、偏摩耗を防止して耐久性を向上することができるなど、その効果は甚大である。
【0032】
なお、上記実施例では、内リンクプレート130は左右外リンクプレート110に隣接して幅方向にそれぞれ3枚重ねて、中間リンクプレート140は幅方向中央に2枚重ねて設けられているが、それぞれの配置や重ねる枚数は必要とする荷重に応じて適宜設計すれば良い。
【0033】
また、上記実施例では、各リンクプレート110(130、140)の外形の端面111のうち、長手方向の一方の端面111にのみ加工端面114が形成されているが、両方の端面に形成しても良く、外形のすべてを加工端面としても良く、プーリ150と接触しないリンクプレート110(130、140)が存在する場合、接触しないリンクプレート110(130、140)は、加工端面114が形成されていないものであっても良い。
【符号の説明】
【0034】
100、500 ・・・リーフチェーン
101 ・・・取付端部
102 ・・・割りピン
110、510 ・・・外リンクプレート
111、511 ・・・端面
112、512 ・・・連結ピン孔
113、513 ・・・側面
114 ・・・加工端面
120、520 ・・・連結ピン
130、530 ・・・内リンクプレート
131、531 ・・・端面
132、532 ・・・連結ピン孔
134 ・・・加工端面
140、540 ・・・中間リンクプレート
150、550 ・・・プーリ
151、551 ・・・外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対の連結ピン孔を有する複数のリンクプレートと、該リンクプレートの連結ピン孔に挿入され複数のリンクプレートを交互に屈曲可能に多数連結する連結ピンとを有するリーフチェーンにおいて、
前記複数のリンクプレートが、長手方向の少なくとも一方の端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートを含むことを特徴とするリーフチェーン。
【請求項2】
前記複数のリンクプレートが、左右一対の外リンクプレートと、該外リンクプレートと連結ピンにより屈曲可能に連結される内リンクプレートと、前記左右一対の外リンクプレートの内側に同列に配置される中間リンクプレートからなり、
前記内リンクプレートおよび中間リンクプレートが、リンクプレートを複数枚重ねて連結されていることを特徴とする請求項1に記載のリーフチェーン。
【請求項3】
前記端面を側面に対して垂直な面に加工されているリンクプレートが、プーリと接触するすべてのリンクプレートであり、
前記側面に対して垂直な面に加工されている端面が、プーリと接触する側の端面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリーフチェーン。
【請求項4】
前記内リンクプレートが、連結ピン孔の内周面に二硫化モリブデンを含む潤滑剤を塗布されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリーフチェーン。
【請求項5】
前記連結ピンが、外周面に二硫化モリブデンを焼付け処理されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリーフチェーン。
【請求項6】
前記端面が、切削加工により平面状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のリーフチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−106619(P2011−106619A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264104(P2009−264104)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】