説明

リールシートを装着した釣竿

【課題】投擲時にリールシートのぐらつきがないと共に、リールシート端部の糸止め部の白濁を防止できる釣竿を提供する。
【解決手段】リールシートの中間部を直接に糸で固定し、該リールシートの前端部20Aと後端部20Cの少なくとも一方を間接に糸止めした釣竿であって、前記間接に糸止めする形態は、前記リールシートの端部につき、該端部を挿入させて該端部を覆うことのできる凹部を有するカバー部材22,22’で該端部を覆い、該カバー部材の弾性変形を利用して該カバー部材の内面が端部上面を押圧するよう、端部の上方位置に設けた糸24の巻回によってカバー部材を止め、この状態のカバー部材の前記凹部は、その奥側端と前記端部の先端との間にリールシートの長手方向の隙間が存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状タイプ等のリールシートを外側に装着した釣竿に関し、特にキスやカレイ等を対象魚とする投げ竿又は磯竿等のリールを装着するタイプの釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リールを装着するタイプの釣竿が使用されている。こうしたリール装着装置の一つとして板状のものがある。この板状のリールシートは竿杆の上に載置した状態で、糸により中央部と前端部と後端部とを糸止めし、その巻回糸を接着剤で接着固定させる。この板状リールシートを、投擲を主たる使用形態とする投げ竿に装着した場合、大きく前後方向に振る投擲操作の際に、釣竿にはリールシート領域辺りまで撓み変形が生じる。この際、リールシートは竿杆の撓みに沿うように、僅かながら強制的に撓み方向に変形させられる。これを繰り返すと、巻回糸を固定している接着剤層が白濁してくる。そしてやがては糸止めの固定力が低下する。また、このことは、釣竿の撓み性の観点では、固定されたリールシートが釣竿の撓み性を阻害し、釣竿の調子に影響を与えている。そこでリールシートの固定構造に工夫を要することとなる。下記特許文献1はリールシートの装着構造ではないが、釣糸ガイドの装着構造であって、釣竿の撓みに順応でき、釣竿のしなり調子に影響を与え難い構造が開示されている。
【特許文献1】実公昭62−39666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、リールシートを特許文献1のような構造で装着させた場合、リールシートの一端側は、片持ち的な袋状係合受部に差し込まれている構造故、リールシートの一側端部と竿杆とが前後方向に相対移動するのみならず、リールシートの一端側が竿杆の径方向にも起き上がることになる。これではリールシート部位を把持して投擲操作を行う際に、リールシートと共にリールが動き、投擲の正確さが狂うと共に、投擲感が悪化する。
依って解決しようとする課題は、投擲時にリールシートのぐらつきがないと共に、リールシート端部の糸止め部の白濁を防止できる、即ち、しなり調子に影響を与え難い釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題に鑑みて第1の発明は、リールシートの中間部領域の適宜位置を竿杆と共に直接に糸で巻回して該糸を接着剤で固定し、該リールシートの前端部と後端部の少なくとも何れか一方を間接に糸止めして接着剤で固定した釣竿であって、前記間接に糸止めする形態は、前記リールシートの端部につき、該端部を挿入させて該端部を覆うことのできる凹部を有するカバー部材で該端部を覆い、該カバー部材の弾性変形を利用して該カバー部材の内面が前記端部の上面を押圧するよう、該端部の上方位置に設けた糸の巻回によってカバー部材を竿杆に対して糸の巻回と接着剤で止め、この状態のカバー部材の前記凹部は、その奥側端と前記端部の先端との間にリールシートの長手方向の隙間が存在していることを特徴とするリールシートを装着した釣竿を提供する。
【0005】
第2の発明では、第1の発明の間接に糸止めしたリールシートの端部の下面が対向する竿杆の表面に保護層を設けるよう構成する。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、リールシートはその中間部領域の適宜位置を直接に糸止め接着固定しているため、リールシート全体としては前後方向に動かない。しかし、少なくとも何れか一方の端部はカバー部材を介した間接的な糸止め状態であり、該端部の先端と、カバー部材凹部の奥側端との間に隙間が存在しているため、竿杆が撓んだ際に、該竿杆と、リールシートの間接に糸止めした端部とが長手方向に相対滑りを生ずることができる。従って、竿杆に対してはその撓み性を阻害し難く、しなり調子に影響を与え難い。また、リールシート端部の糸止め固定部に対しては、竿杆の撓みに起因する曲げ荷重負荷を小さくでき、糸止め部の白濁が防止できる。更には、中間部領域はもとより、カバー部材が設けられている端部も、そうでない端部があっても、各端部はその上方から糸巻回によって押圧されているので竿杆表面から浮き上がることは防止されており、また、リールシート全体としては上記の通り前後方向に動くこともないため、安定しており、投擲操作が正確に行え、投擲感もよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る釣竿の要部平面図であり、図2は図1の釣竿の同じ要部の縦断面図、図3は図2のリールシートの前端部付近の拡大図、図4は図3の矢視線D−Dによる横断面図である。合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製の竿杆10の所定の位置に、リール(この例ではスピニングリール)Rを装着固定するリールシート20を装着して、投げ竿を構成している。この例では、リールシートの固定フード20KFを前側(釣竿の穂先側)に、移動フード20IFを後側(釣竿のハンドル側)に装着しているが、逆でもよい。このリールシートの中間部領域の適宜位置であって、固定フードの直ぐ後ろ側に凹部20Bが設けられており、この凹部に糸24が設けられて竿杆と共に巻回している。また、接着剤(樹脂剤)26で糸を固定している。
【0008】
この例では、上記巻回糸の上側には蓋部材20Kが設けられ、その前後に亘ってリールシートのリール載置面が平らになるように構成しているが、蓋部材が無くてもよいし、また、凹部が無くて、リールシートの平面状の中間部領域に糸を巻回してもよい。この場合、足裏に所定の高さの凹部が存在するリールが使用できる。
リールシートはその前後端部20A,20Cをも糸24を使って固定している。このリールシートの前後端部と竿杆10との間には、釣竿使用中の撓みに起因してこれら端部が竿杆表面を傷付けることを防止すべく、適宜な樹脂製等のシート28による保護層が竿杆10の表面に配設されている。
【0009】
このシート28は平面視において端部20A,20Cよりも広がっているように配設している。シート28等の保護層はゴムや合成樹脂等で0.5mm以下の厚みで形成し、端部による竿杆10の傷付きを防止するもので、塗装によって形成してもよい。
一方、ナイロンや塩化ビニル樹脂等の一般的な構造用樹脂材でカバー部材22,22’を形成し、これを各端部に被せている。各カバー部材は同じものであって、取り付ける向きが前後で異なるだけであるため、前端部に装着したカバー部材22について説明する。
【0010】
図4で分かるように、カバー部材22の横断面形状は円弧状になっている。また、後方(図3の右側)に向かって開口した凹部22Aを形成しており、この例ではその奥部は塞がっているが、開放されていてもよい。この凹部は前端部20Aを受け入れることができる。カバー部材22はこの凹部の奥側端と前端部20Aの先端との間にリールシートの長手方向の隙間Sが存在するような位置に固定する。糸24をカバー部材22の凹部の上壁を成す天井部22Kの上に巻回し、その巻回力によって天井部を弾性変形させて前端部20Aの上面を押圧する。この糸は前端部20Aの(一部領域の)真上位置にも位置している。この状態の糸を合成樹脂の接着剤26で固定している。
【0011】
以上のようにリールシート20はその中間部領域において固定されていると共に、前後端部を上記の如く拘束していると、リールシート領域を握持して投擲を行う際にも、リールシートが竿杆から浮き上がるようなことも無く、また、竿の長手方向に動くこともない。即ち、安定して投擲操作ができる。一方、投擲時に竿杆は撓み、投げ竿ではその撓みはリールシート領域にまで達する。その際、上記の隙間Sが存在しているため、リールシート前端部20A(正確には、糸固定されている凹部20Bから先端に至る前側領域)は竿杆に対して竿杆の長手方向に相対滑りが可能であって、極僅かの滑りを生じる。その結果、竿杆10の撓み変形を拘束し難いと共に、竿杆撓みの影響によって糸固定部に対して荷重が作用し難く、接着剤層の白濁が防止できる。
【0012】
また、この時、前端部20Aの下面と対向する竿杆10の表面の位置に保護層を設け、前端部20Aの先端部は竿杆10の表面に対し、シート28等の保護層の厚み分の間隙だけ離隔した状態で相対滑りをして接触しないので、竿杆表面の傷付きが防止できる。
図5は図3に対応する変形例を示し、前端部20Aと竿杆との間にシートが存在せず、前端部が竿杆に対して直接に接していることが異なるが、その他は同じであり、説明を省略する。
【0013】
以上の実施形態例では、リールシートの前後両方の端部の先端とカバー部材凹部の奥側端との間に隙間を設けたが、前端部についてのみ隙間を設け、後端部については隙間を無くしてもよい。また、前端部又は後端部の何れか一方については、カバー部材を無くし、糸で後端部を直接に巻回する構造でもよい。更には、リールシートの中間部領域の適宜位置の例として、固定フードの直後の例を説明したが、前端部20Aと後端部20Cの間の領域であればどこでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、投げ竿や磯竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係る釣竿の要部平面図である。
【図2】図2は図1の釣竿の同じ要部縦断面図である。
【図3】図3は図2のリールシートの前端部付近の拡大図である。
【図4】図4は図3の矢視線D−Dによる横断面図である。
【図5】図5は図3に対応する変形例の図である。
【符号の説明】
【0016】
10 竿杆
20 リールシート
20A 前端部
20B 凹部(中間部)
20C 後端部
22 カバー部材
22A 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールシートの中間部領域の適宜位置を竿杆と共に直接に糸で巻回して該糸を接着剤で固定し、該リールシートの前端部と後端部の少なくとも何れか一方を間接に糸止めして接着剤で固定した釣竿であって、
前記間接に糸止めする形態は、前記リールシートの端部につき、該端部を挿入させて該端部を覆うことのできる凹部を有するカバー部材で該端部を覆い、該カバー部材の弾性変形を利用して該カバー部材の内面が前記端部の上面を押圧するよう、該端部の上方位置に設けた糸の巻回によってカバー部材を竿杆に対して糸の巻回と接着剤で止め、この状態のカバー部材の前記凹部は、その奥側端と前記端部の先端との間にリールシートの長手方向の隙間が存在している
ことを特徴とするリールシートを装着した釣竿。
【請求項2】
間接に糸止めしたリールシートの端部の下面が対向する竿杆の表面に保護層を設けてなる請求項1記載のリールシートを装着した釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−92099(P2011−92099A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249442(P2009−249442)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】