説明

リール

【課題】確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にし、前記テープ状部材の異なる幅に対応し、製造コストの低減を実現したリールを提供する。
【解決手段】リールは、ハブ10と、ハブを挟んで相対向するように保持された一対のフランジ20A、20Bとを具える。ハブには、第1の孔13及び第2の孔14を含む複数の孔が形成され、フランジには、第1の突起23及び第2の突起24を含む複数の突起が形成されている。第1の突起が第1の孔に嵌入された場合に一対のフランジ間の距離が短く設定され、第2の突起が第2の孔に嵌入された場合に一対のフランジ間の距離が長く設定され、複数の突起の、第1の突起及び第2の突起を含む少なくとも一つと、複数の孔の、第1の孔及び第2の孔を含む少なくとも一つの孔とが係合して、ハブと一対のフランジとが保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リールに関する。
【背景技術】
【0002】
エンボステープ等のテープ状部材を保管あるいは運搬して出荷梱包するに際しては、前記テープ状部材をリールに巻回して行う。このようなリールは、通常、前記テープ状部材を巻回するためのハブと、このハブの両端部に接続された一対のフランジとからなる。従来においては、巻回すべき前記テープ状部材の幅に応じたハブを有するリールを逐一作製して準備するようにしていた。換言すれば、前記テープ状部材の幅に応じた異なる種類(大きさ)のリールを逐一作製し、準備していた。
【0003】
しかしながら、テープ状部材の幅に応じて独立にそれぞれ全く異なるリールを作製するとなると、製造工程が煩雑化し、各リールの製造コスト増大の原因となっていた。また、上述のようなフランジとハブとが一体化したリールは、スライド金型を用いて作製しなければならず、このスライド金型が高価なことに加えて、異なる種類(大きさ)のリール毎に異なるスライド金型を作製し、準備する必要がある。したがって、このような特殊な金型を使用しなければならないという観点からも、上述したリールの製造コストを増大させてしまう原因となっていた。
【0004】
特許文献1〜3に開示されたものにおいては、テープ状部材の幅に応じてハブの長さを調整すべく、リール全体を逐一製造しないまでも、その構成部材であるハブに関しては、複数の部材を準備し、これらを組合わせて前記テープ状部材の幅に対応していた。すなわち、前記テープ状部材の幅に対応すべく、リール全体を再構成しないまでも、その構成部材であるハブに関しては、逐一作製しなければならず、テープ状部材の幅に応じたリールの製造コストを十分に低減することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−075575号
【特許文献2】特開平4−201950号
【特許文献3】特開平5−43139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にし、前記テープ状部材の異なる幅に対応し、製造コストの低減を実現したリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のリールは、ハブと、前記ハブを挟んで相対向するように保持された一対のフランジとを具える。前記ハブには、第1の孔及び第2の孔を含む複数の孔が形成され、前記フランジには、第1の突起及び第2の突起を含む複数の突起が形成されている。前記第1の突起が前記第1の孔に嵌入された場合に前記一対のフランジ間の距離が短く設定され、前記第2の突起が前記第2の孔に嵌入された場合に前記一対のフランジ間の距離が長く設定され、前記複数の突起の、前記第1の突起及び前記第2の突起を含む少なくとも一つと、前記複数の孔の、前記第1の孔及び前記第2の孔を含む少なくとも一つの孔とが係合して、前記ハブと前記一対のフランジとが保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態におけるリールを構成するハブ及びフランジの構成図である。
【図2】第1の実施形態におけるリールの全体構成を示す図である。
【図3】第2の実施形態に係わるリールの構成図である。
【図4】リールに対して、半導体装置を収納したエンボステープを巻回した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本態様におけるリールを構成するハブの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すハブの中央断面図である。図1(c)は、本態様のリールを構成するフランジの平面図であり、図1(d)及び(e)は、図1(c)に示すフランジの側面図である。図1(d)は、ハブに対して左方に位置するフランジを示し、図1(e)は、ハブに対して右方に位置するフランジを示している。また、図2は、リールの全体構成を示している。
【0011】
図1(a)、(b)に示すように、本態様のリールにおけるハブ10は、略中央部において円形状の突起部材からなるフランジに対する係合部材11を有するとともに、その外周部において矩形状の突起部材からなるフランジに対する係合部材12を有している。なお、本例では、係合部材12の数は4としているが必要に応じて任意の数とすることができる。また係合部材11を円形状とし、係合部材12を矩形状としているが、必要に応じて任意の形状とすることができる。
【0012】
図1(a)に示すように、係合部材11の周囲には、ハブ10の中心から外側に向けて、第1の孔13、第2の孔14及び第3の孔15が4組形成されている。
【0013】
図1(b)に示すように、孔の深さは、第1の孔13、第2の孔14及び第3の孔15の順に深くなっている。これは以下に説明するフランジ表面に形成された突起を係合させるために、前記突起の長さに対応させたものである。
【0014】
図1(c)、(d)に示すように、本態様のリールにおけるフランジ20A及び20Bは、略中央部において環状の孔部21が形成されているとともに、その外周部において矩形状の孔部22が形成されている。これらの孔部21及び22は、ハブ10とフランジ20A及び20Bとを組合わせる際に、ハブ10の係合部材11及び12が係合するように構成されている。すなわち、以下に示すように突起によってフランジ20A及び20B間の距離を調整しないような場合は、ハブ10の係合部材11及び12が、フランジ20A及び20Bの孔部21及び22に直接係合することによって組み立てられる。
【0015】
また、図1(c)〜(e)に示すように、フランジ20A及び20Bの互いに対向する面上には、第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25が形成されている。突起の長さは、第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25の順に長くなっている。すなわち、第1の突起23が最も長く、第3の突起25が最も短くなっている。また、ハブ10とフランジ20A及び20Bとを組合わせてリールを作製する場合、フランジ20A及び20Bの第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25は、それぞれハブ10の第1の孔13、第2の孔14及び第3の孔15に係合するので、これらの突起は、ハブ10に形成された孔の位置と合致するようにして形成する。
【0016】
ハブ10とフランジ20A及び20Bとを組合わせてリールを形成する場合、例えば、フランジ20A及び20B間を最も短くするには、第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25をそれぞれ第1の孔13、第2の孔14及び第3の孔15に埋め込むようにする。その場合、リールの形状は、図2(a)に示すような形状となる。この場合、上述したように、ハブ10の係合部材11及び12が、フランジ20A及び20Bの凹部21及び22に直接係合するようになる。
【0017】
なお、本例では、第1の突起から第3の突起の長さ及び第1の孔から第3の孔の深さ、並びにハブ10の長さを調整することによって、フランジ20A及び20B間を例えば16mmとすることができる。
【0018】
一方、フランジ20A及び20B間を最も長くするには、第1の突起23のみを第1の孔13中に嵌入する。この場合、ハブ10とフランジ20A及び20Bとは、第1の突起23と第1の孔13との係合によって保持されるので、図2(b)に示すように、フランジ20A及び20B間を長く設定することができる。
【0019】
なお、本例では、第1の突起23の長さ及び第1の孔13の深さを調整することによって、フランジ20A及び20B間を例えば32mmとすることができる。
【0020】
また、フランジ20A及び20B間を中程度の長さとするには、第1の突起23及び第2の突起24をそれぞれ第1の孔13及び第2の孔14中に嵌入する。この場合、ハブ10とフランジ20A及び20Bとは、第1の突起23と第1の孔13との係合、並びに第2の突起24と第2の孔14との係合によって保持されるので、図2(c)に示すように、フランジ20A及び20B間を中程度に長く設定することができる。
【0021】
なお、本例では、第1の突起23の長さ及び第1の孔13の深さ、及び第2の突起24の長さ及び第2の孔14の深さを調整することによって、フランジ20A及び20B間を例えば24mmとすることができる。
【0022】
このように、本態様では、一対のフランジの対向面上に異なる長さの複数の突起を形成するとともに、これら突起に対応してハブ中に複数の孔を形成し、前記ハブ中の前記孔中に嵌入させる突起を適宜選択することによって、前記一対のフランジ間の距離が調整できる。
【0023】
また、前記突起及び前記孔は、巻回すべきテープ状部材の幅等を考慮して、リールを構成するフランジ及びハブに適宜形成するものではなく、総てのリールに対して予め画一的に形成しておくものである。したがって、巻回すべきテープ状部材の幅を考慮して、ハブ等を逐一形成することなく、確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にすることができる。結果として、前記テープ状部材の異なる幅に対応したリールの製造コストを低減することができる。
【0024】
なお、本態様では、フランジ20A及び20Bに対して、長さの異なる3種類の突起23,24,25を形成し、これに対応させてハブ10に深さの異なる3種類の孔13,14,15を形成したが、突起及び孔の数は、設定すべきフランジ20A及び20Bの幅の種類に応じて任意の設定することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図3(a)は、第2の実施形態に係わるリールの構成図である。第1の実施形態では、一対のフランジ20A及び20Bを設け、この間にハブ10を配置するようにしたが、本態様では、一対のフランジの一方、すなわちフランジ20Aにハブ10を固定し、一対のフランジの他方、すなわちフランジ20Bに対して第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25を形成するようにしている。
【0026】
なお、特に図示しないが、図3(a)に示すハブ10は図1(a)、(b)に示すような態様を取る。
【0027】
本態様でも、フランジ20A及び20B間を最も短くするには、第1の突起23、第2の突起24及び第3の突起25をそれぞれ第1の孔13、第2の孔14及び第3の孔15に埋め込むようにする。その場合、リールの形状は、図2(a)に示すような形状となる。この場合、上述したように、ハブ10の係合部材11及び12が、フランジ20A及び20Bの凹部21及び22に直接係合するようになる。
【0028】
一方、フランジ20A及び20B間を最も長くするには、第1の突起23のみを第1の孔13中に嵌入する。この場合、ハブ10とフランジ20A及び20Bとは、第1の突起23と第1の孔13との係合によって保持されるので、図2(b)に示すように、フランジ20A及び20B間を長く設定することができる。
【0029】
また、フランジ20A及び20B間を中程度の長さとするには、第1の突起23及び第2の突起24をそれぞれ第1の孔13及び第2の孔14中に嵌入する。この場合、ハブ10とフランジ20A及び20Bとは、第1の突起23と第1の孔13との係合、並びに第2の突起24と第2の孔14との係合によって保持されるので、図2(c)に示すように、フランジ20A及び20B間を中程度に長く設定することができる。
【0030】
このように、本態様でも、一方のフランジの、他方のフランジとの対向面上に異なる長さの複数の突起を形成するとともに、これら突起に対応してハブ中に複数の孔を形成し、前記ハブ中の前記孔中に嵌入させる突起を適宜選択することによって、前記一対のフランジ間の距離が調整できるようになるものである。
【0031】
また、前記突起及び前記孔は、巻回すべきテープ状部材の幅等を考慮して、リールを構成するフランジ及びハブに適宜形成するものではなく、総てのリールに対して予め画一的に形成しておくものである。したがって、巻回すべきテープ状部材の幅を考慮して、ハブ等を逐一形成することなく、確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にすることができる。結果として、前記テープ状部材の異なる幅に対応したリールの製造コストを低減することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図4は、第1の実施形態及び第2の実施形態で得たリールに対して、半導体装置を収納したエンボステープを巻回した状態を示す図である。図4において、参照数字41は半導体チップを収納するポケット42を有するキャリアテープであり、参照数字43はキャリアテープ41の上側に圧着されるカバーテープであり、キャリアテープ41とカバーテープ43とが一体となってエンボステープ44を構成する。なお、参照数字45はこのエンボステープ44を巻き取るためのリールである。
【0033】
なお、本態様では、エンボステープ44の巻回状態に着目しているため、リール45の構成については簡略化している。
【0034】
上述した第1の実施形態によれば、エンボステープ44の幅が変化した場合においても、一対のフランジの対向面上に異なる長さの複数の突起を形成するとともに、これら突起に対応してハブ中に複数の孔を形成し、前記ハブ中の前記孔中に嵌入させる突起を適宜選択することによって、前記一対のフランジ間の距離が調整できるので、確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にすることができる。結果として、前記テープ状部材の異なる幅に対応したリールの製造コストを低減することができる。
【0035】
また、上述した第2の実施形態によれば、一方のフランジの、他方のフランジとの対向面上に異なる長さの複数の突起を形成するとともに、これら突起に対応してハブ中に複数の孔を形成し、前記ハブ中の前記孔中に嵌入させる突起を適宜選択することによって、前記一対のフランジ間の距離が調整できるので、確定したリール構成で異なる幅のテープ状部材の巻回を可能にすることができる。結果として、前記テープ状部材の異なる幅に対応したリールの製造コストを低減することができる。
【0036】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0037】
例えば、上記具体例では、ハブ10内に孔を形成し、フランジ20A及び20Bに形成した突起を嵌入させて係合するようにしているが、図3(b)に示すように、ハブ11の表面に第2の突起17を形成するとともに、フランジ20Bに形成すべき突起27を受け皿状とし、ハブ11の第2の突起17とフランジ20B(20A)の突起27とを係合させるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10…ハブ、11,12…係合部材、13…第1の孔、14…第2の孔、15…第3の孔、20A,20B…フランジ、21,22…凹部、23…第1の突起、24…第2の突起、25…第3の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、
前記ハブを挟んで相対向するように保持された一対のフランジとを具え、
前記ハブには、第1の孔及び第2の孔を含む複数の孔が形成され、
前記フランジには、第1の突起及び第2の突起を含む複数の突起が形成され、
前記第1の突起が前記第1の孔に嵌入された場合に前記一対のフランジ間の距離が短く設定され、
前記第2の突起が前記第2の孔に嵌入された場合に前記一対のフランジ間の距離が長く設定され、
前記複数の突起の、前記第1の突起及び前記第2の突起を含む少なくとも一つと、前記複数の孔の、前記第1の孔及び前記第2の孔を含む少なくとも一つの孔とが係合して、前記ハブと前記一対のフランジとが保持されていることを特徴とする、リール。
【請求項2】
前記第1の突起が前記第1の孔に嵌入された場合、前記ハブと前記フランジとが直接係合することを特徴とする、請求項1に記載のリール。
【請求項3】
前記第2の突起が前記第2の孔に嵌入された場合、前記第2の突起と前記第2の孔とが係合することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリール。
【請求項4】
前記孔の少なくとも一部は、前記ハブに設けられた第3の突起に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のリール。
【請求項5】
ハブと、
前記ハブを挟んで相対向するように保持された一対のフランジとを具え、
前記ハブには複数の孔が形成され、
前記フランジには複数の突起が形成され、
前記複数の突起の少なくとも一部と、前記複数の孔の少なくとも一部とは、前記ハブと前記一対のフランジとが保持されるように係合していることを特徴とする、リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214299(P2012−214299A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140770(P2012−140770)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2010−289474(P2010−289474)の分割
【原出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】