説明

ルアー

【課題】ブレード等の水抵抗体によってフィッシュイータへのアピール性が向上したルアーの提供。
【解決手段】ボディ2と、水中を移動するとき、水の抵抗を受けることにより、ボディ2とは異なる動きをしうるブレード14等の水抵抗体とを備えており、このボディ2が、前端部の頭部3と、後端部の尾部4と、それぞれが頭部3と尾部4との間に位置する、上部である背部5と、下部である腹部6と、左体側部7と、右体側部8とを備えており、このボディ2が、その左右の厚さより上下の幅の方が大きい、扁平形状を呈しており、上記水抵抗体が、頭部3より後方であり且つ尾部4より前方の、左右いずれかの体側部7、8に対して可動状態で取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに用いられるルアーに関する。さらに詳しくは、ブレード等の水抵抗体が取り付けられたルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
小魚を補食するフィッシュイータを捕獲する手段として、ルアーフィッシングが普及している。ルアーフィッシングでは、疑似餌としてのルアーが用いられる。このルアーの一種であるメタルジグが使用される。このメタルジグを使用した釣りはジギングと呼ばれている。メタルジグは、海中の狙いの棚に沈降させて使用される。メタルジグの一種として、いわゆるテールスピン型ジグ、スピナーベイト型ジグ等が知られている。これらのジグは、特開2002−34393公報、特開2002−360128公報、特開2006−197903公報、特開2007−228951公報に開示されている。
【0003】
これらのジグは、小魚の形状を真似たボディを有している。ボディには、水からの抵抗を受けて回転したり羽ばたくように動くブレードが取り付けられている。ブレードは、例えば、小判、木の葉等の形状を有している。ブレードは、曲面状や平面状を呈した薄い板から形成されている。ブレードは、スプリットリング、又は、金属線から形成されたシャフトにより、ボディの後端部に取り付けられる。ブレードが、ボディの前端部から上方に延びたシャフトの先端に取り付けられたジグも知られている。ボディには、金属線からなるフックアイ及びラインアイが設けられている。フックアイにはフックが取り付けられる。ラインアイにはラインが結ばれる。
【0004】
上記ブレードは、ボディ及びシャフトへの取付部において、回転自在にされている。テールスピン型ジグ及びスピナーベイト型ジグが、水中をラインに引かれて泳ぐとき、シャフトが振動する。ブレードが、水の抵抗を受けることによって回転する。このようなブレードの動きが、フィッシュイータに対するジグのアピールに寄与する。このジグをベイトと勘違いしたフィッシュイータは、ジグに食いつく。ジグに取り付けられたフックがフィッシュイータに刺さり、フィッシュイータが釣り上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−34393公報
【特許文献2】特開2002−360128公報
【特許文献3】特開2006−197903公報
【特許文献4】特開2007−228951公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ジグが、フォールされるとき、ラインを介してしゃくられる(引き上げ力が繰り返し加えられる)とき等、ジグ使用時の種々の場面において、フィッシュイータに対してより効果的にアピールしうるルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るルアーは、
ボディと、
水中を移動するとき、水の抵抗を受けることにより、ボディとは異なる動きをしうる水抵抗体とを備えており、
上記ボディが、前端部の頭部と、後端部の尾部とを備えており、
上記水抵抗体が、頭部より後方であり且つ尾部より前方である部位に、ボディに対して可動状態で取り付けられている。
【0008】
好ましくは、上記ボディが、頭部と尾部との間に、上部である背部、下部である腹部、左右の体側部の一方である第一体側部、及び、他方である第二体側部を備えており、このボディが、その左右の厚さより上下の幅の方が大きい、扁平形状を呈しており、上記水抵抗体が、第一体側部に取り付けられている。
【0009】
好ましくは、上記ボディが、ラインが接続されるラインアイを有しており、ラインアイと上記水抵抗体の取り付け位置との間にルアーの重心が位置している。
【0010】
さらに好ましくは、ボディの全長に対する、ボディの前端から水抵抗体取り付け位置までの距離の比が、0.5以上であり、ボディの前端から水抵抗体取り付け位置までの距離に対する、ボディの前端から重心までの距離の比が、1.0以下である。
【0011】
好ましくは、上記水抵抗体が、薄い板状のブレード及び薄い板から形成されたプロペラのうちのいずれか一方であり、ボディに対して回転自在に取り付けられている。
【0012】
好ましくは、上記水抵抗体をボディに取り付けるための連結部材を備えており、この連結部材が、ボディに固定されたアイと、一端がアイに連結され、他端が上記水抵抗体に連結されたスイベルとから構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、その水抵抗体の挙動が、フィッシュイータに対するルアーのアピール性を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係るルアーの一実施形態であるジグを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のジグの重心位置と水抵抗体の取り付け位置との位置関係を示す底面図である。
【図3】図3は、図1のジグの挙動を説明する斜視図である。
【図4】図4(a)は、図1のジグの正面図であり、図4(b)は、図4(a)のIV−IV線に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1には、ルアーの一種であるメタルジグ(以下、単にジグという)1が示されている。ジグ1は、ボディ2を有している。ボディ2は、ベイトである小魚に類似した外形を有している。ボディ2の表面が着色されてもよい。ボディ2の表面に模様が画かれてもよい。着色や模様は、フィッシュイータに対するアピールに寄与する。図中の左側が頭部(ヘッド)3側(前方)であり、右側が尾部(テール)4側(後方)であり、上側が背部5側であり、下側が腹部6側である。背部5と腹部6との間に、左右の体側部7、8が形成されている。ボディ2は、その左右方向の厚さより上下方向の幅の方が大きい、扁平形状を呈している。
【0017】
ボディ2の前端部には、ラインアイ9が設けられている。ボディ2の後端部にはフックアイ10が設けられている。ボディ2の左体側部7にはブレードアイ11が設けられている。本発明においては、ブレードアイ11は右体側部8に設けられてもよい。ラインアイ9、フックアイ10及びブレードアイ11は、いずれも金属線から形成されている。ラインアイ9には、スプリットリング21を介してライン12が連結されている。フックアイ10には、スプリットリング21を介してフック13が取り付けられている。このフック13は、いわゆるトレブルフックである。ブレードアイ11にはブレード14が回転自在に取り付けられている。
【0018】
ボディ2の各アイ9、10、11を除く部分(仮に魚体部分と呼ぶ)は、通常、タングステン合金、鉛等の比重の大きい金属から鋳造によって製造される。魚体部分がタングステン合金から製造される場合、粉状の材料が焼結されることにより得られる。上記ラインアイ9及びフックアイ10はともに、鋳造又は焼結工程において、魚体部分に一体化されている。ブレードアイ11は、ボディ2の表面にろう付け等によって固着されている。
【0019】
ブレード14は、薄い金属、合成樹脂等の板から、木の葉状に形成されている。本発明では、ブレード14は、木の葉状に限らず、円板状、小判状等、任意の形状が採用されうる。ブレード14は、スイベル(サルカンともいう)15によってブレードアイ11に取り付けられている。スイベル15は、胴部16、上環17及び下環18を有している。胴部16は中空である。胴部16の上端には上間口19が形成され、下端には図示しない下間口が形成されている。上間口19及び下間口の内径は小さい。上環17及び下環18は、金属線から概ねΩ字状に形成されている。上環17及び下環18の図示しない各基部は、上間口19及び下間口を通して胴部16の内部に挿入されている。各基部は、胴部16の内部に張り出して、上間口19及び下間口から脱出不能にされている。上環17はブレード14の貫通孔20に接続され、下環18はブレードアイ11に接続されている。上環17及び下環18は、胴部16に対して、胴部16の中心軸回りに回転自在にされている。その結果。ブレード14は、ボディに対して回転自在にされている。図中のスイベル15は、スイベル機構の一例を示している。本発明におけるスイベル機構は、かかる構造には限定されない。
【0020】
図2には、ジグ1におけるブレード14とジグ1の重心Gとの位置関係が示されている。この重心Gの決定に際しては、フック13の重量を含めても、除いてもよい。ブレード14の取り付け位置は、ボディ2の長手方向で頭部と尾部との間である。ボディ2の全長、すなわち、ラインアイ9の前端からフックアイ10の後端までの距離をL1とする。ラインアイ9の前端からブレードアイ11までの距離をL2とする。ラインアイ9の前端から重心Gまでの距離をL3とする。ブレード14の好ましい挙動という観点から、L2/L1が0.5以上であるのが好ましく、L3/L2が1.0以下であるのが好ましい。すなわち、好ましくは、ブレード14の取り付け位置が、ボディ2の長手方向における、ジグ1の重心Gの位置、又はそれより尾部側にあるのが好ましい。上記と同様の観点から、ブレード14の取り付け位置が、さらに、ラインアイ9の前端から、ボディ2の全長の1/2の位置と4/5の位置との間にあるのが好ましく、ボディ2の全長の1/2の位置と3/4の位置との間にあるのがさらに好ましい。
【0021】
図3は、ジグ1を斜め下から見た斜視図である。図3に示されるように、ブレード14は、ボディ2の左体側部7に対して、上記スイベル15のみによって取り付けられている。ブレード14のボディ2への連結に、シャフト、ハリス等の長尺部材は用いられていない。ブレード14は、ボディ2に近接している。従って、ブレード2はフック13と干渉しにくい。ジグ1の沈降時には、重心Gの長手方向両側に、沈降抵抗となるライン12及びブレード14が位置する。その結果、ボディ2が水平の姿勢に近づこうとする。この状態では、ブレード14が大きく回転し揺動しうる。ジグ1は、やや平面的な体側部に水の抵抗を受けなら沈む。このように、ジグ1は、その重量バランスに起因して、水平姿勢を保とうとしながら沈む。その結果、ボディ2が水の抵抗によって左右前後に繰り返し傾く。このジグの、ローリング、ピッチング、ヨーイング等の動作と、ブレード14の回転とが干渉する。その結果、ジグの動きが不規則且つ複雑なものとなる。このジグ1の挙動は、フィッシュイータに対するアピール効果が大きい。ジグ1の沈降に対するライン12からの抵抗は、ブレード14による抵抗より小さい。従って、ブレード14の取り付け位置は、重心Gの位置に近いのが好ましい。
【0022】
ブレード14の取り付け個数は、1個だけには限定されない。本発明では、ボディ2に対して2個以上のブレード14が取り付けられてもよい。一つのブレードアイ11に、複数個のブレード14が取り付けられてもよい。
【0023】
ブレード14に代えて、図示しないプロペラがボディ2に取り付けられてもよい。このプロペラは、中央に位置するボス部と、ボス部から放射状に延びる複数枚の薄い羽を有している。プロペラは、図1に示されるスイベル15のような連結部材を介してボディ2に取り付けられてもよい。この場合、プロペラのボス部に、スイベルの上環が接続される。プロペラは、短いシャフトによってボディ2に取り付けられてもよい。この場合、シャフトがボディ2の一方の体側部に突設される。スイベルのボス部には貫通孔が形成される。この貫通孔にシャフトが挿通される。シャフトの先端にはストッパが固定され、プロペラはシャフトから離脱不能となる。ストッパは、シャフトに対して着脱可能にされてもよい。このシャフトは、ボディ2に揺動可能に取り付けられてもよい。
【0024】
ブレードアイ11は、ラインアイ9及び/又はフックアイ10と一体に形成されてもよい。例えば、図4に示されるように、一本の金属線22が三つに折り曲げられる。金属線22の2つの折り曲げ位置に、ラインアイ9用のループ部9a及びフックアイ10用のループ部10aが形成される。金属線22の、三つに折られたうちの二つの端部の直線部分22a、22bの一方22aに、ブレードアイ11用の屈曲部11aが形成される。又は、一本の金属線22を、折り曲げると同時に、順に各部9a、10a、11a(又は、11a、10a、9aの順に)を形成してもよい。金属線22の各部9a、10a、11aが、ボディ2用鋳型から突出するように配置される。鋳型内に溶融鉛、タングステン合金粉末等の材料が注入される。これらの金属材料が型内で凝固し、ジグが出来上がる。以上の手順は一例である。
【0025】
ブレード14の取り付け位置は、体側部7、8には限定されない。背部5でも腹部6でもよい。しかし、ジグが弱った小魚を演技することによってフィッシュイータにアピールするという観点から、ブレード14は、左右いずれかの体側部7、8に取り付けられるのが好ましい。ブレード14に対する水の抵抗により、ジグ1が、弱った小魚のように横倒しの姿勢(図3参照)をとりうるからである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るルアーによれば、ブレード、プロペラ等の水抵抗体によるフィッシュイータへのアピール性が向上する。従って、このルアーは、例えば、メタルジグを用いた魚釣りであるジギングに好適である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・ジグ
2・・・ボディ
3・・・頭部
4・・・尾部
5・・・背部
6・・・腹部
7・・・左体側部
8・・・右体側部
9・・・ラインアイ
10・・・フックアイ
11・・・ブレードアイ
12・・・ライン
13・・・フック
14・・・ブレード
15・・・スイベル
16・・・胴部
17・・・上環
18・・・下環
19・・・上間口
20・・・(ブレードの)貫通孔
21・・・スプリットリング
22・・・金属線
G・・・(ジグの)重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
水中を移動するとき、水の抵抗を受けることにより、ボディとは異なる動きをしうる水抵抗体とを備えており、
上記ボディが、前端部の頭部と、後端部の尾部とを備えており、
上記水抵抗体が、頭部より後方であり且つ尾部より前方である部位に、ボディに対して可動状態で取り付けられているルアー。
【請求項2】
上記ボディが、頭部と尾部との間に、上部である背部、下部である腹部、左右の体側部の一方である第一体側部、及び、他方である第二体側部を備えており、
このボディが、その左右の厚さより上下の幅の方が大きい、扁平形状を呈しており、
上記水抵抗体が、第一体側部に取り付けられている請求項1記載のルアー。
【請求項3】
上記ボディが、ラインが接続されるラインアイを有しており、
ラインアイと上記水抵抗体の取り付け位置との間に重心を有している請求項1又は2に記載のルアー。
【請求項4】
ボディの全長に対する、ボディの前端から水抵抗体取り付け位置までの距離の比が、0.5以上であり、ボディの前端から水抵抗体取り付け位置までの距離に対する、ボディの前端から重心までの距離の比が、1.0以下である請求項3に記載のルアー。
【請求項5】
上記水抵抗体が、薄い板状のブレード及び薄い板から形成されたプロペラのうちのいずれか一方であり、ボディに対して回転自在に取り付けられている請求項1から4のいずれかに記載のルアー。
【請求項6】
上記水抵抗体をボディに取り付けるための連結部材を備えており、
この連結部材が、ボディに固定されたアイと、一端がアイに連結され、他端が上記水抵抗体に連結されたスイベルとから構成されている請求項1から5のいずれかに記載のルアー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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