説明

ルイス酸触媒を使用してバッカチン誘導体からタキソイドを調製するための方法

【課題】タキソイドの新規な調製方法の提供。
【解決手段】1又は複数のルイス酸及び塩基剤の存在下で、保護されたバッカチン誘導体を特定のβ−ラクタム化合物と反応させることによりタキソイド(X)を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年12月13日に出願された米国仮出願第61/422,472号の優先権を主張し、本明細書中で全体において参照により組み込まれている。
【0002】
本発明の技術分野
本開示は、触媒として1又は複数のルイス酸を使用した、バッカチン誘導体からタキソイドを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タキソイドは、タキソール(登録商標)(パクリタキセルとも呼ぶ)に由来する化合物であり、単離された天然物であり、そして重要な抗癌剤である。これは有糸分裂中の微小管を安定化し、異なる種類の癌(例えば、卵巣癌、乳癌及び肺癌)患者を治療する。天然のタキソール(登録商標)は、イチイの幹の皮から単離されている。しかしながら、タキソール(登録商標)のイチイからの抽出及び精製は高価である。
【0004】
タキソール(登録商標)をイチイから得る代わりの、バッカチン誘導体(例えば、適当な保護された10−デアセチルバッカチンIII(10−DAB))からのタキソール(登録商標)の半合成は、より経済的な方法である。
【化1】

10−デアセチルバッカチンIII(10−DAB)
【0005】
Potierのグループによる予備研究(P.C.R. Acad. Sci. Paris II, 299, 1039, 1984; Tetrahedron 42, 4451, 1986)は、10−DABのヒドロキシル基がピリジン中の無水酢酸に対して異なる反応性を有することを示した。相対的な反応性は、C(7)−OH>C(10)−OH>C(13)−OH>C(1)−OHであった。1988年に、Greeneのグループ(J. Am. Chem. Soc., 110, 5917, 1988)は、ピリジン中のトリエチルシリルクロリドでのC(7)ヒドロキシル基の選択的シリル化によって、85%の収率で7−TES−10−DABを生成したことを報告した。Potier及びGreeneのグループによって調製された保護された10−DABの誘導体は、タキソール(登録商標)合成のための重要な前駆物質である。10年後に、Holtonのグループ(Tetrahedron Lett., 39, 2883, 1998)は、10−DABのC(10)−OHの選択的アシル化及びシリル化並びに10−DABのC(7)−OHの選択的シリル化のための新たな方法を提供した。米国特許第5,962,705号(Didier等)は、C(7)−OH及びC(10)−OHが同時にメチル化され、7,10−ジメトキシ−10−DABが得られることを開示する。米国特許第5,874,595号は、10−デアセチルバッカチンIIIから誘導されるバッカチンIIIを調製するための方法であって:10−デアセチルバッカチンIIIを無水酢酸、酢酸の混合無水物及びその他のカルボン酸又はアセチルハライド、及びルイス酸触媒でアセチル化する工程を含んでなる方法を開示する。
【0006】
様々なタキソイド(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、カバジタキセル(cabazitaxel)、及びこれらの誘導体)の合成に適用できる位置選択的な方法が必要である。
【化2】

【発明の概要】
【0007】
本発明は、1又は複数のルイス酸及び塩基剤の存在下で、保護されたバッカチン誘導体(B)をβ−ラクタム(C)と反応させることによるタキソイド(X)の調製方法に関する。本発明はまた、保護されたバッカチン誘導体(B)のバッカチン誘導体(A)からの調製方法であって、1又は複数のルイス酸を触媒とした、任意の塩基剤との保護反応を含んでなる方法に関する。
【0008】
発明の詳細な説明
明細書中で使用する場合、他に特に規定しない限り、「Ac」はアセチルを意味し;「Ph」はフェニルを意味し;「Bz」はベンゾイルを意味し;「TES」はトリエチルシリルを意味し;「10−DAB」は10−デアセチルバッカチンIIIを意味し;「DMAP」はN,N−ジメチル−4−アミノ−ピリジンを意味し;「Tf」はトリフリル(CFSO−)を意味し;そして「DCM」はジクロロメタンを意味する。
【0009】
他に特に規定しない限り、次の用語、ハロ置換基は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される、と通常定義するが、これに限定されない。
【0010】
「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖の、包括的に1〜12個の炭素原子、より好適には包括的に1〜8個の炭素原子、そして最も好適には包括的に1〜6又は1〜4個の炭素原子を有する基を意味する。
【0011】
「アルケニル」は、直鎖又は分岐鎖の、包括的に2〜12個の炭素原子を有する基であって、少なくとも1つの二重結合を含む、任意には1つ以上の二重結合を含む基を意味する。
【0012】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合、任意には1つ以上の三重結合を含み、さらに任意には1又は複数の二重結合部分を含む、直鎖又は分岐鎖の包括的に2〜12個の炭素原子を有する基を意味する。
【0013】
「アルコキシ」は、アルキル基が上記の通りであり、任意には上記の通り定義される置換アルキル基を含む基、アルキル−O−を意味する。
【0014】
「アリール」は、単環(例えば、フェニル)又は複数の縮合環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する、包括的に6〜14個の炭素原子を有する不飽和芳香族炭素環基を意味する。好適なアリールは、フェニル、ナフチル等を含む。
【0015】
「アリールアルキル」は、アリールアルキル基を意味し、好適にはアルキル部分に包括的に1〜6個の炭素原子を、アリール部分に包括的に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル基を意味する。このようなアリールアルキル基は、ベンジル、フェネチル等によって例示される。
【0016】
「アリールアルケニル」は、アリールアルケニル基を意味し、好適にはアルケニル部分に2〜6個の炭素原子を、そしてアリール部分に包括的に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルケニル基を意味する。
【0017】
「アリールアルキニル」は、アリールアルキニル基を意味し、好適にはアルキニル部分に包括的に2〜6個の炭素原子を、そしてアリール部分に包括的に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキニル基を意味する。
【0018】
「シクロアルキル」は、任意に1〜3個のアルキル基と置換できる、単環又は複数の縮合環を有し、包括的に3〜12個の炭素原子を有する環状アルキル基を意味する。このようなシクロアルキル基は、例として、単環構造、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチル等、又は複数の環構造、例えばアダマンチル等が含まれる。
【0019】
「ヘテロアリール」は、包括的に1〜10個の炭素原子、並びに環内に酸素、窒素及び硫黄から選択される包括的に1〜4個のヘテロ原子を有する一価の芳香族複素環基を意味する。このようなヘテロアリール基は、単環(例えば、ピリジル又はフリル)又は複数の縮合環(例えば、インドリジニル又はベンゾチエニル)を有してよい。
【0020】
「複素環」は、単環又は複数の縮合環、1〜8個の炭素原子、並びに包括的に環内に窒素、硫黄又は酸素から選択される包括的に1〜4個のヘテロ原子を有する飽和又は不飽和基を意味する。このような複素環基は、単環(例えば、ピペリジニル又はテトラヒドロフリル)又は複数の縮合環(例えば、インドリニル、ジヒドロベンゾフラン又はキヌクリジニル)を有する。好適な複素環は、ピペリジニル、ピロリジニル及びテトラヒドロフリルを含む。
【0021】
複素環及びヘテロアリールの例は、フラン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、インドリン等を含むがこれらに限定されない。
【0022】
他に特に規定しない限り、上述の基において水素が占める位置は、以下に例示される置換基でさらに置換することができるがこれらに限定されない:ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、メトキシ、エトキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ハロアルコキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ハロ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、トリフルオロメチル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、チオ、アルキルチオ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、置換カルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルアミノ、スルホンアミド、置換スルホンアミド、シアノ、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アミジノ、アミドキシモ、ヒドロキサモイル、フェニル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ピリジル、イミダゾリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、複素環、(複素環)オキシ、及び(複素環)アルキル;であって、ここで好適なヘテロ原子が酸素、窒素及び硫黄である置換基。アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及び/又は複素環基でさらに置換することができる開放原子価がこれらの置換基上のどこに存在するか、これらの開放原子価が、ハロゲンによって、及び酸素、窒素、又は硫黄が結合した置換基によってさらに置換することができる炭素上のどこに存在するか、並びに結合の直接形成によって又は新たなヘテロ原子、好適には酸素、窒素、若しくは硫黄への結合の形成によってこれらの基が結合して環を形成することができる複数のこれらの開放原子価がどこに存在するかを理解できる。水素を置換基と置換することで本発明の分子に容認できない不安定性をもたらすことにならず、且つ化学的に妥当である限り、上記置換が可能であるとさらに理解できる。好適な置換基は、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、メトキシ、エトキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ハロ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アルキル、置換アルキル、トリフルオロメチル、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、フェニル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロアルキル、置換シクロアルキルである。
【0023】
I)保護されたバッカチン誘導体(B)からタキソイド(X)を調製するための方法
本開示の一態様は、一般式(X)
【化3】

のタキソイドを調製するための方法に関する。
【0024】
当該方法は:
(a)一般式(B)の保護されたバッカチン誘導体を一般式(C)のβ−ラクタムと、1又は複数のルイス酸ML及び第一の塩基剤の存在下で反応させ、1又は複数のシリルエーテル保護基を有する一般式(X)の保護されたタキソイドを供する工程
【化4】

;及び
(b)シリルエーテル保護基を除去して一般式(X)のタキソイドを供する工程
(式中、
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R’10、又は−O−Si(R’11)(R’12)(R’13)、好適にはアルコキシ、−O−C(=O)−R’10、又は−O−Si(R’11)(R’12)(R’13)、より好適にはメトキシ、Ac−O−、−O−Si(CH又は−O−Si(CHCHであり;
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R’20、又は−O−Si(R’21)(R’22)(R’23)であるか、或いはR’がC7と共にシクロアルキル環を形成する場合にはR’はHであり;好適にはR’は、水素アルコキシ、−O−C(=O)−R’20、又は−O−Si(R’21)(R’22)(R’23)、より好適には水素、メトキシ、−O−Ac、−O−Si(CH又は−O−Si(CHCHであり;
R’は、アルキルであるか、又はC7と共にシクロアルキル環を形成する、好適にはC1−4アルキル(例えば、メチル)であるか、又はC7と共にシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル環)を形成し;
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R’50、又は−O−Si(R’51)(R’52)(R’53)、好適には−O−Si(CHCH又は−O−Si(CHであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、又は−O−C(=O)−R10、好適にはヒドロキシル、アルコキシ(例えば、メトキシ)、又は−O−C(=O)−R10(例えば、−O−Ac−)であり;
は、ヒドロキシル、水素、アルコキシ、アルキル、アリールオキシ、又は−O−C(=O)−R20、好適にはヒドロキシル、水素、又はアルコキシ(例えば、メトキシ)であり;
は、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシであるか、又はC7と共にシクロアルキル環を形成する、好適にはアルキル(例えば、メチル)であるか又はC7と共にシクロアルキル環(例えば、シクロプロピル環)を形成し;
は、アルコキシ又はアリール、好適には−OC(CH又はフェニルであり;そして
10、R20、R’10、R’20、及びR’50は、水素、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択され;そして
11、R12、R13、R21、R22、R23、R’11、R’12、R’13、R’21、R’22、R’23、R’51、R’52、及びR’53は、水素、置換及び非置換アルキル、置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択される)
を含んでなる。
【0025】
ルイス酸は、ルイス塩基によって提供される電子対を共有することによって、電子対受容体であり従ってルイス塩基と反応しルイス付加物を形成することができる分子実体である、とIUPACでは定義する。ルイス酸は、孤立電子対電子を受容する任意の種と定義する。ルイス塩基は、孤立電子対電子を提供する任意の種である。例えば、Hは、孤立電子対を受容できるのでルイス酸であり、一方OH−及びNHはどちらも孤立電子対を提供するのでルイス塩基である。
【0026】
ルイス酸は、炭素−炭素結合形成を促進する。古典的には、フリーデル・クラフツ反応、エン反応、ディールス・アルダー反応、及び向山アルドール合成は、通常のルイス酸、例えばAlCl、TiCl、BF・OEt、又はSnClによって触媒される。
【0027】
本願の方法に適当なルイス酸は、式中Mが、基IA(アルカリ)、基IIA(アルカリ土類)、基IIIA、基IVA、基IB、基IIB、基IIIB、基IVB、基VB、又は基VIIIB(遷移金属)の元素、あるいはこれらの任意の組合せの元素中のカチオンであり;LがMの対アニオンである、式MLを有する。1つのルイス酸又は1つ以上(例えば、2つ)の異なるルイス酸の組合せを本開示において使用することができる。好適なMは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Sc、Y、Ti、V、Nb、Co、B、Al、In、Sn、又はCeのカチオン、あるいはこれらの任意の組合せである。より好適なMは、Li、K、Cs、Mg、Sc、Ti、V、Cu、Zn、B、Al、In、Sn、又はCeのカチオン、あるいはこれらの任意の組合せである。好適なLは、アニオンである。Lの例は、オキシド(例えば、(OCH(CH、及びO2−)、酸性ラジカル(例えば、ClO、CO2−、及びトリフレート(CFSO))、ハロゲン化物アニオン(例えば、Br、Cl、F、及びI)、及びこれらの任意の組合せを含み、これらに限定されない。好適なルイス酸MLの例は、LiBr、MgBr、CsBr、ZnBr、ZnCl、CuBr、Cu(CFSO、BF・OEt、KBr、TiCl、SnCl、ScCl、VCl、AlCl、InCl、AlCO、CeCl、AgO、ZnClO、LiClO、Ti{OCH(CH及びこれらの任意の複合体及び組合せを含むがこれらに限定されない。
【0028】
ルイス酸なしに実施される反応と比較して、ルイス酸の存在はより選択的な反応を供し、高反応率、高収率、より選択的な生成物、高純度の目的の生成物及び副生成物の減少を特徴とする。一実施形態において、ルイス酸の存在によって、あまり厳格でない条件、例えば、弱塩基使用条件、低い反応温度下等で反応を生じることが可能である。
【0029】
本開示において、好適な第一の塩基剤は、アミン、水素化金属又は金属芳香族化合物の配位錯体である。アミンの例は、ピリジン、トリエチルアミン、2,6−tert−ブチル−ピリジン、2,6−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン及びN−1−ナフチルエチレンジアミンを含むがこれらに限定されない。水素化金属の例は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムを含むがこれらに限定されない。金属芳香族化合物の配位錯体の例は、ナフタレン・Liを含むがこれらに限定されない(Tetrahedron, 66, 871, 2010;Tetrahedron lett., 39, 4183, 1998.)。
【0030】
本願の方法の工程(b)において、シリルエーテル保護基、例えば(−O−Si(R’11)(R’12)(R’13)、−O−Si(R’21)(R’22)(R’23)、及び/又は−O−Si(R’31)(R’32)(R’33)の除去は、酸又はフッ化物を使用することによって行われる。酸は、無機酸(例えば、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、硝酸、リン酸、硫酸、及びホウ酸)、又は有機酸(例えば、カンファースルホン酸(CSA)及び酢酸(AcOH))である。フッ化物は、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)又はフッ化水素酸である。好適な実施形態において、酸性条件において、例えばアルコール(例えば、メタノール及びエタノール)中において無機酸(例えば、HCl)で、低温(例えば、5℃以下;0℃以下;-5〜5℃;又は0〜5℃)で、又は室温で保護基は除去される。保護基はまた、MeOH中の100mol%のCSAによって室温で;10mol%のCSA、1:1のMeOH:DCMによって、−20℃又は0℃で;4:1:1 v/v/vのAcOH:THF:水によって、室温で除去できる。保護基はまた、塩基性条件において、例えばピリジン中のHF;10:1のTHF:ピリジンで、0℃で;THF中の1:1のTBAF/AcOH;又はTHF中のTBAFで室温で除去できる。
【0031】
本開示において、好適なβ−ラクタムの例は、(3R,4S)−tert−ブチル−2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート、及び(3R,4S)−フェニル−2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレートを含むがこれらに限定されない。
【0032】
本開示に従って調製することができるタキソイドの例は、(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4,12−ビス(アセチルオキシ)−1,9−ジヒドロキシ−15−{[(2R,3S)−2−ヒドロキシ−3−フェニル−3−(フェニルホルムアミド)プロパノイル]オキシ}−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(パクリタキセル)、(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4−(アセチルオキシ)−15−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1,9,12−トリヒドロキシ−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(ドセタキセル)、(1S,2S,3R,4S,7R,9S,11R,13R,16S)−4,13−ビス(アセチルオキシ)−16−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1−ヒドロキシ−15,18,18−トリメチル−12−オキソ−6−オキサペンタシクロ[12.3.1.03,11.04,7.09,11]オクタデカ−14−エン−2−イルベンゾエート(ラロタキセル)、(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4−(アセチルオキシ)−15−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1−ヒドロキシ−9,12−ジメトキシ−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(カバジタキセル)、及びこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0033】
II)保護されたバッカチン誘導体(B)を調製するための方法
本開示の他の態様は、タキソイド(X)を調製するために使用することができる保護されたバッカチン誘導体(B)を調製するための方法に関する。
【0034】
一実施形態において、保護されたバッカチン誘導体(B)を調製するための方法は、1又は複数のルイス酸M’L’を、任意にはさらに第二の塩基剤をバッカチン誘導体(A)に適用して、保護されたバッカチン誘導体(B)
【化5】

(式中、
R’、R’、及びR’は、上記に定義される通りであり、好適にはR’は、アルコキシであり、かつR’はアルコキシであるか、又はR’は−O−Si(R’11)(R’12)(R’13)であり、かつR’は、−O−Si(R’21)(R’22)(R’23)であり;
M’は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Sc、Y、Ti、V、Nb、Co、B、Al、In、Sn、Ceのカチオン、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択され;
L’は、対イオンであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R60、又は−O−Si(R61)(R62)(R63)、好適にはヒドロキシルであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R70、又は−O−Si(R71)(R72)(R73)、好適にはヒドロキシル又は−O−Si(R71)(R72)(R73)、より好適にはヒドロキシル又は−O−Si(CH或いは−O−Si(Cであり;
は、アルキル、好適にはC1−4アルキル、例えばメチルであり;
60、及びR70は、水素、ヒドロキシル、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択され;そして
61、R62、R63、R71、R72、及びR73は、水素、ヒドロキシル、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択される)
を形成する工程を含んでなる。
【0035】
バッカチン誘導体(A)の例は、10−DAB(R=R=H);7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチンIII(R=R=−O−Si(CHCH);(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−1,13−ジヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(R=−OC(=O)CH、R=H);及び7,10−ジメトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(R=R=CH)を含むがこれらに限定されない。
【0036】
第二の塩基剤の例は、アミン、水素化金属、又は金属芳香族化合物の配位錯体を含むがこれらに限定されない。好適には、第二の塩基剤は、ピリジン、トリエチルアミン、2,6−tert−ブチル−ピリジン、2,6−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン、N−1−ナフチルエチレンジアミン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又はナフタレン・Liである。
【0037】
任意には、保護されたバッカチン誘導体(B)を、1又は複数のルイス酸ML及び第一の塩基剤の存在下でβ−ラクタム(C)と結合させ、上述のタキソイド(X)を調製することができ、第一及び第二の塩基剤は同一又は異なるものとすることができ、そしてルイス酸ML及びM’L’は同一又は異なるものとすることができる。
【0038】
ルイス酸なしに行われる反応と比較すると、ルイス酸の存在によってより選択的な反応が供され、高反応率、高収率、より選択的な生成物、高純度の目的の生成物及び副生成物の減少を特徴とする。一実施形態において、ルイス酸の存在によって、あまり厳格でない条件、例えば、弱塩基使用条件、低い反応温度下等で生じる反応が可能である。
【0039】
i)C(7)及びC(10)−OHの一段階のジ−アルキル化
好適な実施形態において、バッカチン誘導体(A)は、10−DAB(式中、R及びRはヒドロキシルであり、R及びR’はメチルである)であり、そしてR’及びR’はアルコキシである。本願の方法は、保護されたバッカチン誘導体(B)の目的の転換が達成されるまで適当な条件下で、第二の塩基及び/又は1又は複数のルイス酸M’L’の存在下で10−DABをアルキル化剤と反応させる工程を含んでなる。
【0040】
より好適な実施形態において、R’及びR’は、メトキシであり、アルキル化剤はメチルサルフェート(MeSO)である。好適な第二の塩基剤は、NaH、及びナフタレン・Liを含むがこれらに限定されない。好適なLは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。好適なルイス酸MLは、CsBr、KBr、MgBr、ZnBr、CeCl、及びこれらの組合せ(例えば、CsBr及びKBr;MgBr及びCsBr;ZnBr及びCsBr;並びにCeCl及びCsBr)から成る群から選択される。塩基及び1又は複数のルイス酸の好適な組合せは、ナフタレン・Li及びCsBr、ナフタレン・Li及びKBr、NaH及びCsBr、NaH及びKBr、NaH及びMgBr、NaH及びZnBr、NaH及びCeCl、及びこれらの組合せ(例えば、NaH、CsBr及びKBr;NaH、MgBr及びCsBr;NaH、ZnBr及びCsBr;並びにNaH、CeCl及びCsBr)から成る群から選択される。一実施形態において、塩基は反応中に存在しない。
【0041】
ii)C(7)とC(10)−OHの二段階のシリル化、任意にはワンポット反応
他の好適な実施形態において、Rはヒドロキシルであり、R及びR’はメチルであり、R、R’及びR’は−O−Si(Cである。本願の方法は、10−DABを第一のシリル化試薬と反応させ、上述の反応において使用されるバッカチン誘導体(A)を含んでなる第一のシリル化反応混合物を供する工程を含んでなる。
【0042】
任意には、本願の方法は、1又は複数のルイス酸M’L’を含んでなる第二のシリル化試薬を第一のシリル化反応混合物に添加し、保護されたバッカチン誘導体(B)を供する工程をさらに含んでなる。任意には、第一のシリル化反応及び第二のシリル化反応は、同一の反応ポットにおいて行われる。あるいは、バッカチン誘導体(A)は、単離され精製され、上述の第二のシリル化反応において使用する。好適には、R’11、R’12、R’13、R’21、R’22、R’23、R71、R72、及びR73は、それぞれ−CHCH又は−CHである。
【0043】
シリル化試薬の例は、上述のものである。好適なシリル化試薬は、トリアルキルシリルハライド(例えば、トリエチルシリルクロリド(TESCl))及び塩基(例えば、トリエチルアミン(NEt))を含んでなる。第二のシリル化試薬は、1又は複数のルイス酸M’L’、そして任意にはシリル化試薬及び/又は第二の塩基剤を含んでなる。好適なルイス酸M’L’は、LiBr、MgBr、CsBr、ZnBr、CuBr、及びこれらの組合せ(例えば、CsBr及びLiBr、ZnBr及びLiBr、CuBr及びLiBr)を含むがこれらに限定されず、好適な第二の塩基剤は、DMAP及びNaHを含むがこれらに限定されない。
【0044】
iii)C(10)−OHのアシル化
他の実施形態において、保護されたバッカチン誘導体(B)を調製するための方法は、C(10)−アシル化反応を含んでなる。本願の方法は;
1)第一の保護されたバッカチン誘導体(B
【化6】

の目的の転換が達成されるまで、1又は複数のルイス酸M’L’を、任意にはさらに第二の塩基剤を適当な条件下でバッカチン誘導体(A)と反応させる工程;及び
2)前記第一の保護されたバッカチンIII誘導体(B)を保護されたバッカチン誘導体(B)に転換する工程
(式中:
M’、L’、R、R、R、R’、R’、R’、及び第二の塩基剤は、上記に定義される通りであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R10、又は−O−Si(R11)(R12)(R13)、好適には−O−C(=O)−R10であり、より好適にはO−C(=O)−CHであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R20、又は−O−Si(R21)(R22)(R23)、好適にはヒドロキシルであり;
10及びR20は、水素、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択され;そして
11、R12、R13、R11、R22、及びR23は、水素、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択される)
を含んでなる。
【0045】
任意には、保護されたバッカチン誘導体(B)は、1又は複数のルイス酸ML及び第一の塩基剤の存在下でβ−ラクタム(C)と結合され、上述のタキソイド(X)を調製することができ、第一及び第二の塩基剤は同一又は異なるものとすることができ、ルイス酸ML及びM’L’は同一又は異なるものとすることができる。
【0046】
好適な実施形態において、R’は水素であり;R’は、C7と共にシクロアルキル環、より好適にはシクロプロピル(proyl)環を形成する。
【0047】
他の好適な実施形態において、R’は−O−Si(R’21)(R’22)(R’23)であり;好適にはR’21、R’22、及びR’23はそれぞれエチル又はメチルである。
【0048】
本願の方法において、適当なルイス酸M’L’及び第二の塩基剤の例は、上述のものと同一である。好適な実施形態において、L’は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。他の好適な実施形態において、1又は複数のルイス酸M’L’は、ZnBr、LiBr、ZnCl、CuBr及びこれらの組合せ(例えば、CuBr及びLiBr、並びにCuBr及びZnBr)から成る群から選択される。一実施形態において、よりソフトな酸(例えば、Zn2+及びCu)を形成するM’は、よりハードな酸(例えば、Li)を形成するMと比較して、C(10)−アセチル化を触媒することにおいて、より良い位置選択性を供する。
【0049】
ルイス酸なしに行われる反応と比較して、ルイス酸の存在は、より選択的な反応を供し、高反応率、高収率、より選択的な生成物、高純度の目的の生成物及び副生成物の減少を特徴とする。一実施形態において、ルイス酸の存在によって、あまり厳格でない条件、例えば、弱塩基使用条件、低い反応温度下等で生じる反応が可能である。
【0050】
III)パクリタキセルの調製
タキソール(登録商標)を調製するための2つの主要な工程は、7−と10−ヒドロキシル基の選択的保護及び13−ヒドロキシル基のエステル化である。
【0051】
一実施形態において、パクリタキセルは、ルイス酸触媒の位置選択的保護及びエステル化を含むスキーム1に従って調製される。
【化7】

【0052】
スキーム1に示されるように、バッカチン誘導体(A)は10−DABであり、第一の保護されたバッカチン誘導体はバッカチンIII(T1)であり、保護されたバッカチン誘導体(B)は7−O−TES−バッカチンIII(T2)であり、保護されたタキソイドは1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)であり、そしてT3はさらに脱保護されパクリタキセル(タキソール(登録商標))を供する。
【0053】
10−DABのC(10)−OHは、1又は複数のルイス酸M’L’を触媒として無水酢酸と反応させることによって位置選択的にアセチル化(C(10)−アセチル化)される。一実施形態において、L’は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸M’L’は、ZnBr、LiBr、ZnCl、CuBr及びこれらの組合せ(例えば、CuBr及びLiBr、並びにCuBr及びZnBr)から成る群から選択される。一実施形態において、ソフトな酸(例えば、Zn2+及びCu)を形成するM’は、ハードな酸(例えば、Li)を形成するMと比較して、C(10)−アセチル化を触媒することにおいて、より良い位置選択性を供する。
【0054】
続いてT1は、トリエチルシリルクロリド、トリエチルアミン及びDMAPによってC(7)−OHにおいてシリル化され、T2を生成する。
【0055】
T2のC(13)−OHは、水素化ナトリウムによってまず脱プロトン化され、続いて1又は複数のルイス酸MLを触媒としてβ−ラクタムと反応され、T3が得られる。一実施形態において、Lは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、CsBr、KBr、MgBr、LiBr、ZnBr、及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0056】
最終的に、T3は、塩酸によって脱保護され、パクリタキセル(タキソール(登録商標))を生成する。
【0057】
IV)ラロタキセルの調製
他の実施形態において、ラロタキセルは、ルイス酸触媒を使用してスキーム2に従って調製され、エステル化反応を促進する。
【化8】

【0058】
スキーム2に示されるように、第一の保護されたバッカチン誘導体はT1であり、上述の通りバッカチン誘導体(A)10−DABから調製され、保護されたバッカチン誘導体(B)は7−O−トリフレート−バッカチンIII(L1)であり、タキソイドのエステル化物は(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−13−({(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(L3)であり、そしてL3は、さらに脱保護され、タキソイド(X)ラロタキセルを提供する。
【0059】
T1は、トリフリン無水物(TfO)及びピリジンで処理し、L1(Tetrahedron lett., 35, 52, 9713, 1994)を提供し、続いてアジ化ナトリウムで処理し、シクロプロピル中間体L2を得る(Tetrahedron Lett., 35, 43, 7893, 1994)。
【0060】
L2のC(13)−OHは、水素化ナトリウムによってまず脱プロトン化し、続いて1又は複数のルイス酸MLを触媒としてβ−ラクタムと反応させ、L3を得る。一実施形態において、Lは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、CsBr、KBr、MgBr、LiBr、ZnBr、及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0061】
最終的に、L3は、塩酸によって脱保護され、最終生成物、ラロタキセルを提供する。
【0062】
V)ドセタキセルの調製
他の実施形態において、ドセタキセルは、ルイス酸触媒の位置選択的保護及びエステル化を含むスキーム3に従って調製される。
【化9】

【0063】
スキーム3に示されるように、保護されたバッカチン誘導体(B)は7,10−ジ−トリエチルシリル−10−DAB(D2)であり、バッカチン誘導体(A)7−O−TES−10−DAB(D1)から調製され、保護されたタキソイド(X)は1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)であり、そしてD3は、さらに脱保護されタキソイド(X)ドセタキセルを提供する。
【0064】
D1は、トリエチルシリルクロリド(TESCl)及びトリエチルアミン(NEt)での10−DABのC(7)−OHの位置選択的シリル化によって供される。
【0065】
一実施形態において、10−DABのC(7)及びC(10)−OHの二段階のシリル化反応は、ワンポット反応において完了することができる。1又は複数のルイス酸M’L’を、C(7)−OHのシリル化の完了後に反応混合物に添加し、D1の精製なしにC(10)−OHのシリル化を行う。一実施形態において、L’は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、LiBr、MgBr、CsBr、ZnBr、CuBr、及びこれらの組合せ(例えば、LiBr及びCsBr;ZnBr及びLiBr;並びにCuBr及びLiBr)から成る群から選択される。
【0066】
D2のC(13)−OHは、水素化ナトリウムによってまず脱プロトン化され、続いて1又は複数のルイス酸MLを触媒としてβ−ラクタムと反応させ、D3を提供する。一実施形態において、Lは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、LiBr、MgBr、CsBr、CsCl及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0067】
最終的に、D3は、塩酸によって脱保護され、最終生成物、ドセタキセルが提供される。
【0068】
VI)カバジタキセルの調製
他の実施形態において、カバジタキセルは、ルイス酸触媒位置選択的保護及びエステル化を含むスキーム4に従って調製される。
【化10】

【0069】
スキーム4に示されるように、保護されたバッカチン誘導体(B)は、7,10−ジ−メトキシル10−DAB(C1)であり、第一のバッカチン誘導体(A)10−DABから調製され、保護されたタキソイド(X)は1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)であり、そしてC2は、さらに脱保護され、タキソイド(X)カバジタキセルを提供する。
【0070】
10−DABを、塩基及び/又は1又は複数のルイス酸M’L’の存在下で、メチルサルフェート(MeSO)と反応させ、C1が提供される。一実施形態において、L’は、対イオン、例えばハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)のアニオンである。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、CsBr、KBr、MgBr、ZnBr、CeCl、及びこれらの組合せ(例えば、CsBr及びKBr;MgBr及びCsBr;ZnBr及びCsBr;並びにCeCl及びCsBr)から成る群から選択される。一実施形態において、塩基は、ナフタレン・Liである。一実施形態において、塩基及び1又は複数のルイス酸触媒の組合せは、ナフタレン・Li及びCsBr、並びにナフタレン・Li及びKBrから成る群から選択される。一実施形態においては、塩基は、反応において存在しない。一実施形態においては、塩基及び1又は複数のルイス酸がどちらも反応中に存在する。
【0071】
C1のC(13)−OHは、水素化ナトリウムによってまず脱プロトン化され、続いて1又は複数のルイス酸MLを触媒としてβ−ラクタムと反応させ、C2が得られる。一実施形態において、Lは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)である。一実施形態において、1又は複数のルイス酸触媒は、LiBr、MgBr、CsBr、CsCl、KBr、FeCl、及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0072】
最終的に、C2は、塩酸によって脱保護され、最終生成物カバジタキセルが提供される。
【0073】
以下の実施例は、本開示をさらに説明する。これらの実施例は単に本開示の実例を目的とするものであり、これらに限定することを目的とするものでない。
【実施例】
【0074】
I.ルイス酸触媒(LiBr、MgBr、CsBr/LiBr、ZnBr/LiBr、及びCuBr/LiBr)を使用した7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の合成(実施例1〜5)
実施例1
【化11】

LiBrを触媒とする、7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の調製
25℃の200mLのTHF中の10−DAB(10g)及びDMAP(1当量、2.2g)の溶液に、窒素下でトリエチルアミン(18当量、45.8mL)及びTESCl(8当量、25mL)を液滴で添加し、3〜4時間撹拌し続けた。10−DABを消費後、10mLのTHF中のLiBr(1当量、1.6g)を反応混合物に添加した。反応物を65〜70℃で3〜5時間撹拌し、続いて反応が完了するまで20〜30℃でさらに13〜16時間撹拌した。反応溶液を200mLのエチルアセテートで希釈し、200mLの水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパー(rotavapor)で乾燥した。蒸発後に得られた未精製のD2を120mLのn−ヘキサンで3〜4時間温浸した。最後に、濾過後に真空化で乾燥し、生成物、7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)を得た(収率89%、12.6g、LC純度98%)。
【表1】

【0075】
実施例2
【化12】

MgBrを触媒とする、7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の調製
THF中の7−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D1、1当量)及びMgBr(0.5当量)の溶液を窒素下で25℃で30分間撹拌した後に、DMAP(0.5当量)、トリエチルアミン(8当量)及びTESCl(4当量)を液滴で添加した。反応物を還流下で46.5時間撹拌した。反応溶液をエチルアセテートで希釈し水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD2を得た(LC純度48%)。
【0076】
実施例3
【化13】

CsBr及びLiBrの混合物を触媒とする7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の調製
THF中の7−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D1、1当量)、CsBr(0.5当量)及びLiBr(0.5当量)の溶液を25℃、窒素下で30分間撹拌後、DMAP(0.5当量)、トリエチルアミン(8当量)及びTESCl(4当量)を液滴で添加した。反応物を還流下で46.5時間撹拌した。反応溶液をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD2を得た(LC純度78%)。
【0077】
実施例4
【化14】

ZnBr及びLiBrの混合物を触媒とする7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の調製
THF中の7−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D1、1当量)、ZnBr(0.5当量)及びLiBr(0.5当量)の溶液を25℃、窒素下で30分間撹拌後、DMAP(0.5当量)、トリエチルアミン(8当量)及びTESCl(4当量)を液滴で添加した。反応物を還流下で46.5時間撹拌した。反応溶液をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD2を得た(LC純度58%)。
【0078】
実施例5
【化15】

CuBr及びLiBrの混合物を触媒とする、7,10−ジ−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D2)の調製
THF中の7−トリエチルシリル−10−デアセチルバッカチン(III)(D1、1当量)、CuBr(0.5当量)及びLiBr(0.5当量)の溶液を25℃、窒素下で30分間撹拌後、DMAP(0.5当量)、トリエチルアミン(8当量)及びTESCl(4当量)を液滴で添加した。反応物を還流下で46.5時間撹拌した。反応溶液をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD2を得た(LC純度26%)。
【0079】
II.ルイス酸触媒(LiBr、MgBr、CsBr、及びCeCl)を使用した、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)の合成(実施例6〜9)
【0080】
実施例6
【化16】

触媒LiBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)の調製
【0081】
窒素下で−15〜−10℃まで冷却した5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、0.2g,)の溶液に、5mLのTHF中の7,10−ジ−トリエチルシリル−10−DAB(D2、0.5g)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5〜5℃で1時間撹拌し、続いて3mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2-オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.6当量、0.63g)の溶液を液滴で添加した。−5〜5℃で1時間撹拌した後に、反応混合物を2mLのTHF中のLiBr(1当量、0.06g)の溶液に添加した。反応が完了するまで、反応物を3時間撹拌した。反応物を−5〜5℃において、5mLの10%のAcOH/THFで中和し、続いて20mLのエチルアセテートで希釈し20mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD3を得た(LC純度96%)。
【0082】
実施例7
【化17】

触媒CsBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)の調製
窒素下で−15〜−10℃まで冷却した2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、83mg)の溶液に、2mLのTHF中の7,10−ジ−トリエチルシリル−10−DAB(D2、200mg)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5〜5℃で1時間撹拌し、続いて3mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、244mg)の溶液を液滴で添加した。−5〜5℃で1時間反応混合物を撹拌し、続いて2mLのTHF中のCsBr(0.5当量、28mg)の溶液に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を3時間撹拌した。反応物を−5〜5℃で5mLの10%のAcOH/THFで中和し、20mLの酢酸エチルで希釈し、20mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD3を得た(LC純度94%)。
【0083】
実施例8
【化18】

触媒MgBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)の調製
【0084】
窒素下で−5℃まで冷却した2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、82.9mg)の溶液に、2mLのTHF中の7,10−ジ−トリエチルシリル−10−DAB(D2、1当量、200mg)の溶液を液滴で添加した。−5℃で1時間反応混合物を撹拌し、続いて2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、244mg)及びMgBr(0.5当量、23.9mg)の溶液を液滴で添加した。反応が完了するまで反応混合物を3時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD3を得た(LC純度43%)。
【0085】
実施例9
【化19】

触媒CeClによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(D3)の調製
窒素下で−5℃まで冷却した2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、83mg)の溶液に、2mLのTHF中の7,10−ジ−トリエチルシリル−10−DAB(D2、1当量、200mg)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5℃で1時間撹拌し、続いて2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、244mg)及びCeCl(0.5当量、32.0mg)の溶液を液滴で添加した。反応が完了するまで3時間反応混合物を撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のD3を得た(LC純度26%)。
【0086】
実施例10
【化20】

(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4−(アセチルオキシ)−15−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1,9,12−トリヒドロキシ−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(ドセタキセル)の調製
【0087】
22.5mLのMeOH中の実施例6の未精製のD3を、0.09mLの32%HCl(aq)に−5〜5℃で添加し、3時間撹拌した。続いて、反応温度を20〜30℃まで上昇させ、脱保護が完了するまで反応混合物を24時間撹拌した。反応混合物をロータベーパーで乾燥し、続いて40mLのCHClで希釈した。40mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のドセタキセルを得た。10mLのCHCl中の未精製のドセタキセルを5mLのn−ヘプタンに徐々に添加し、ドセタキセルを沈殿させた。濾過し、固体を乾燥した後に、0.3gのドセタキセルを得た(収率60%、LC純度96%)。
【表2】

【0088】
III.ルイス酸触媒(ZnBr、LiBr、ZnCl、CuBr、CuBr/LiBr、及びCuBr/ZnBr)を使用した、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)(T1)の合成(実施例11〜16)
実施例11
【化21】

ZnBrを触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)T1の調製
20mLのTHF中の10−DAB(1.0g)の溶液に、0.4mLのTHF中のZnBr(2当量、0.21g)の溶液を徐々に添加し、続いて無水酢酸(6当量、1.0mL)を添加した。さらに、反応温度を60℃まで上昇させ、19時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発しクロマトグラフィーによって精製し、T1を生成した(収率73%、830mg、LC純度95%)。
【表3】

【0089】
実施例12
【化22】

LiBrを触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)T1の調製
200mLのTHF中の10−DAB(10.0g)の溶液に、4mLのTHF中のLiBr(1当量、1.56g)の溶液を徐々に添加し、続いて無水酢酸(6当量、1.76mL)を添加した。そして、反応温度を60℃まで上昇させ、反応混合物を17時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発し、未精製のT1を生成した(収率50%;8.3g、生成物のLC純度65%)。
【0090】
実施例13
【化23】

ZnClを触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)T1の調製
5mLのTHF中の10−DAB(0.25g)の溶液に、0.5mLのTHF中のZnCl(0.5当量、0.03g)の溶液を徐々に添加し、続いて無水酢酸(1.5当量、0.06mL)を添加した。そして、反応温度を60℃まで上昇させ、反応混合物を17時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発し未精製のT1を得た(収率74%;240mg、生成物のLC純度、83%)。
【0091】
実施例14
【化24】

CuBrを触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)T1の調製
10mLのTHF中の10−DAB(0.5g)の溶液に、3mLのTHF中のCuBr(0.5当量、0.07g)の溶液を徐々に添加し、続いて無水酢酸を添加した(5当量、0.440mL)。そして、反応温度を60℃まで上昇させ、反応混合物を21.5時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発させ、未精製のT1を生成した(収率60%;360mg、生成物のLC純度、89%)。
【0092】
実施例15
【化25】

CuBrとLiBrの混合物を触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)T1の調製
10mLのTHF中の10−DAB(0.5g)の溶液に、3mLのTHF中のCuBr(0.5当量、0.07g)とLiBr(0.5当量、0.04g)の溶液を徐々に添加し、続いて無水酢酸(5当量、0.440mL)を添加した。反応温度を60℃まで上昇させ、反応混合物を21.5時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発し、未精製のT1を生成した(LC純度91%)。
【0093】
実施例16
【化26】

CuBrとZnBrの混合物を触媒とする、10−アセチル−10−デアセチルバッカチン(III)(T1)の調製
10mLのTHF中の10−DAB(0.5g)の溶液に、3mLのTHF中のCuBr(0.5当量、0.07g)とZnBr(0.5当量、0.1g)の溶液を添加し、続いて無水酢酸(5当量、0.440mL)を添加した。そして、反応温度を60℃まで上昇させ、反応混合物を21.5時間撹拌した。続いて、反応混合物をエチルアセテートで希釈し、水で洗浄した。分離後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後に、濾液を蒸発し、未精製のT1を生成した(収率75%;420mg、LC純度、97%)。
【0094】
IV.ルイス酸触媒(CsBr、KBr、MgBr、LiBr、及びZnBr)を使用した、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の合成(実施例17〜21)
実施例17
【化27】

触媒CsBrによる、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の調製
【0095】
THF中の10−デアセチルバッカチン(III)T1(1当量、10.0g、LC純度97%)の溶液を25℃の窒素下で30分間撹拌し、続いてDMAP(1.4当量、3g)、トリエチルアミン(12当量、28.5mL)及びTESCl(5.1当量、13.1g)を徐々に添加した。反応物を還流下で16時間撹拌し、エチルアセテートで希釈しそして水で洗浄した。分離後、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT2を得た(収率75%、9.5g、LC純度92%)。
【0096】
0.5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、5.6当量、320mg)の溶液を窒素下で−5〜0℃まで冷却し、THF中の未精製のT2の溶液(1当量、100mg/L)をその中に徐々に添加した。反応混合物を−5〜0℃で0.5時間撹拌し、続いて0.5mLのTHF中の(3R,4S)−1−ベンゾイル−4−フェニル−3−(トリエチルシリル)オキシ−2−アゼチジノン(β−ラクタム、2当量、109mg)とCsBr(1当量、30mg)の混合物を液滴で添加した。反応が完了するまで、反応物を0〜7℃で2時間撹拌した。反応物を2mLの10%のAcOH/THFで0〜5℃で中和し、続いて5mLの酢酸エチルで希釈し、5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT3を得た(収率75%、154mg、LC純度69%)。
【表4】

【0097】
実施例18
【化28】

触媒KBrによる、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の調製
0.5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、5.6当量、320mg)の溶液を窒素下で−5〜0℃まで冷却し、1mLのTHF中の7−TES−バッカチンIII T2(1当量、100mg、LC純度92%)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5〜0℃で0.5時間撹拌し、続いて0.5mLのTHF中の(3R,4S)−1−ベンゾイル−4−フェニル−3−(トリエチルシリル)オキシ−2−アゼチジノン(β−ラクタム、2当量、109mg)とKBr(1当量、17mg)の溶液を液滴で添加した。そして、反応が完了するまで、反応混合物を−5〜7℃で2時間撹拌した。反応物を0〜5℃で2mLの10%のAcOH/THFで中和し、続いて5mLの酢酸エチルで希釈し5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT3を得た(収率75%、154mg、LC純度69%)。
【0098】
実施例19
【化29】

触媒MgBrによる、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の調製
0.5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、5.6当量、320mg)の溶液を窒素下で−5〜0℃まで30分間冷却し、1mLのTHF中の7−TES−バッカチンIII(1当量、100mg、LC純度92%)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を−5〜0℃で0.5時間撹拌し、続いて0.5mLのTHF中の(3R,4S)−1−ベンゾイル−4−フェニル−3−(トリエチルシリル)オキシ−2−アゼチジノン(β−ラクタム、2当量、109mg)とMgBr(1当量、26mg)の溶液を液滴で添加した。反応が完了するまで、反応物を−5〜13℃で3時間撹拌した。反応物を2mLの10%のAcOH/THFで0〜5℃で中和し、続いて5mLの酢酸エチルで希釈し5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT3を得た(収率68%;158mg、LC純度62%)。
【0099】
実施例20
【化30】

触媒LiBrによる、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の調製
0.5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、5.6当量、320mg)の溶液を窒素下で−5〜0℃まで30分間冷却し、1mLのTHF中の7−TES−バッカチンIII T2(1当量、100mg、LC純度92%)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を−5〜0℃で0.5時間撹拌し、続いて0.5mLのTHF中の(3R,4S)−1−ベンゾイル−4−フェニル−3−(トリエチルシリル)オキシ−2−アゼチジノン(β−ラクタム、2当量、109mg)とLiBr(1当量、12mg)の溶液を液滴で添加した。反応が完了するまで、反応混合物を0〜23℃で5時間撹拌した。反応物を2mLの10%のAcOH/THFで0〜5℃で中和し、続いて5mLの酢酸エチルで希釈し5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT3を得た(収率60%、150mg、LC純度57%)。
【0100】
実施例21
【化31】

触媒ZnBrによる、1−ヒドロキシ−7β−トリエチルシリルオキシ−9−オキソ−10β−アセチルオキシ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−[(2R,3S)−3−ベンゾイルアミノ−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート](T3)の調製
0.5mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、5.6当量、320mg)の溶液を窒素下で−5〜0℃まで30分間冷却し、1mLのTHF中の7−TES−バッカチンIII T2(1当量、100mg、LC純度92%)の溶液をこの中に徐々に添加した。反応混合物を−5〜0℃で0.5時間撹拌し、続いて0.5mLのTHF中の(3R,4S)−1−ベンゾイル−4−フェニル−3−(トリエチルシリル)オキシ−2−アゼチジノン(β−ラクタム、2当量、109mg)とZnBr(1当量、35mg)の溶液を液滴で添加した。反応が完了するまで、反応混合物を0〜23℃で4時間撹拌した。反応物を2mLの10%のAcOH/THFで0〜5℃で中和し、続いて5mLの酢酸エチルで希釈し、5mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のT3を得た(LC純度12%)。
【0101】
実施例22
【化32】

(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4,12−ビス(アセチルオキシ)−1,9−ジヒドロキシ−15−{[(2R,3S)−2−ヒドロキシ−3−フェニル−3−(フェニルホルムアミド)プロパノイル]オキシ}−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(パクリタキセル)の調製
22.5mLのMeOH中の実施例14の未精製のT3に、0.09mLの32%HCl(aq)を−5〜5℃で添加し、続いて反応混合物を3時間撹拌した。反応温度を20〜30℃まで上昇させ、脱保護が完了するまで反応混合物を24時間撹拌した。反応混合物をロータベーパーで乾燥し、続いて40mLのCHClで希釈した。40mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後に、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製物を得た。10mLのCHCl中の未精製物に、20mLのn−ヘプタンを徐々に添加し、パクリタキセルを沈殿させた。濾過し固体を乾燥した後に、7.0gのパクリタキセルを得た(収率90%、LC純度95%)。
【表5】

【0102】
V.ルイス酸触媒(LiBr、CsBr、及びKBr)を使用した、(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−13−({(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(L3)の合成(実施例23〜25)
【0103】
実施例23
【化33】

触媒LiBrによる、(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−13−({(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(L3)の調製
撹拌したDCM(8mL)中の10−デアセチルバッカチンIII(2g、3.4mmol)とピリジン(7mL)の溶液を−30℃まで冷却し、トリフリン無水物(2.5当量、1.4mL)を20分間に渡って添加した。添加中、反応混合物の温度を−15℃以下に維持し、添加後30分間−20〜−25℃に維持した。0℃で2時間撹拌した後に、反応混合物をまずCHClで希釈し、続いて1MのNaHSO、飽和(sat’d)NaHCO、及び50%の飽和NaClで連続的に洗浄した。各水性洗浄をDCMで逆抽出し、結合した有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をフラッシュシリカゲルカラムに適用した。TLCによって生成物を含有することが分かった画分の蒸発によって、7−O−トリフレート−バッカチンIII、L1が得られた(収率98%、2.5g)。
【表6】

【0104】
乾燥ACN(40mL)中の7−O−トリフレート−バッカチンIII L1(2.5g、3.5mmol)の溶液をNaN(2.7g、42mmol)で処理した。反応物を窒素下で5〜6時間還流した。混合物をEtOAcで希釈し、水及びブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム中で乾燥し、蒸発させた。生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。TLCによって生成物を含有することが確認された画分の蒸発によって、7−デオキシ−8−デスメチルバッカチン(III)L2が得られた(収率64%、1.27g)。
【表7】

【0105】
1mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、25mg、8当量)の溶液を、窒素下で−15〜−10℃まで冷却し、続いて1mLのTHF中の(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−1,13−ジヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエートL2(0.1g、LC純度73%)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5〜5℃で1時間撹拌し、続いて0.4mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2当量、144mg)の溶液を液滴で添加した。−5〜5℃で1時間撹拌した後に、反応混合物に0.4mLのTHF中のLiBr(6mg)の溶液を添加した。反応が終了するまで、反応混合物をさらに3時間撹拌した。反応物を0.5mLの10%のAcOH/THFで−5〜5℃で中和し、続いて10mLのエチルアセテートで希釈しそして8mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のL3を得た(LC純度65%)。
【表8】

【0106】
実施例24
【化34】

触媒CsBrによる(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−13−({(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(L3)の調製
1mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、25mg、8当量)の溶液を−15〜−10℃まで窒素下で冷却し、続いて1mLのTHF中の(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−1,13−ジヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエートL2(0.1g、LC純度73%)の溶液を液滴で添加した。反応混合物を−5〜5℃で1時間撹拌し、続いて0.4mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2当量、144mg)の溶液を液滴で添加した。−5〜5℃で1時間撹拌した後に、反応混合物に0.4mLのTHF中のCsBr(6mg)の溶液を添加した。反応が完了するまで、反応混合物を1.5時間撹拌した。反応物を0.5mLの10%のAcOH/THFで−5〜5℃で中和し、続いて10mLのエチルアセテートで希釈し、8mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し未精製のL3を得た(LC純度75%)。
【0107】
実施例25
【化35】

触媒KBrによる、(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−13−({(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエート(L3)の調製
1mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、25mg、8当量)の溶液を窒素下で−15〜−10℃まで冷却し、続いて1mLのTHF中の(2α,3α,4α,5β,7α,10β,13α)−4,10−ビス(アセチルオキシ)−1,13−ジヒドロキシ−9−オキソ−5,20−エポキシ−7,19−シクロタキサ−11−エン−2−イルベンゾエートL2(0.1g、LC純度73%)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を−5〜5℃で1時間撹拌し、続いて0.4mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2当量、144mg)の溶液を液滴で添加した。−5〜5℃で1時間撹拌した後に、反応混合物に0.4mLのTHF中のKBr(6mg)の溶液を添加した。反応が完了するまで、反応混合物を1.5時間撹拌した。反応物を0.5mLの10%のAcOH/THFで−5〜5℃で中和し、続いて10mLのエチルアセテートで希釈し8mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のL3を得た(LC純度73%)。
【0108】
実施例26
【化36】

(1S,2S,3R,4S,7R,9S,11R,13R,16S)−4,13−ビス(アセチルオキシ)−16−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1−ヒドロキシ−15,18,18−トリメチル−12−オキソ−6−オキサペンタシクロ[12.3.1.03,11.04,7.09,11]オクタデカ−14−エン−2−イルベンゾエート(ラロタキセル)の調製
4.5mLのMeOH中に溶解した未精製のL3(100mg)に、1.5mLの0.5%HCl(aq)を0〜5℃で添加し、続いて反応混合物を0〜5℃で2.5時間撹拌した。そして、反応物を20mLの飽和NaHCO(aq)で0〜5℃で中和した。反応混合物をロータベーパーで乾燥し、続いて40mLのCHClで希釈した。40mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後に、有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製の生成物を得た。5mLのCHCl中の未精製の生成物に10mLのn−ヘプタンを徐々に添加し、ラロタキセルを沈殿させた。濾過後に、固体を乾燥し、白色固体のラロタキセルを得た(収率90%、90mg、LC純度94%)。
【表9】

【0109】
VI.ルイス酸触媒(CsBr、CsBr/KBr、CsBr/MgBr、CsBr/ZnBr、及びCsBr/CeCl)及び水素化ナトリウムを使用した、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の合成(実施例27〜31)
実施例27
【化37】

CsBrを触媒とする、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
共溶媒THF/DMF(2/1、6mL)中の水素化ナトリウム(60%、3当量、0.22g)及びCsBr(0.5当量、0.20g)の溶液を窒素下で−20℃まで冷却し、20分間撹拌した。THF/DMF(2/1、6mL)中の10−DAB(1当量、1g)/MeSO(10当量、1.74mL)をNaH/CsBr反応混合物中に徐々に添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、反応が完了するまで2時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、CHCl及び水で抽出した。分離後、有機層を飽和NaHCO(aq)で抽出した。有機層を再結晶によって濃縮し精製し(CHCl/ヘキサン)、C1を白色固体として得た(収率50%、0.37g、LC純度90%)。
【表10】

【0110】
実施例28
【化38】

CsBrとKBrの混合物を触媒とする、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
共溶媒THF/DMF(2/1、6mL)中の水素化ナトリウム(60%、3当量、0.22g)/CsBr(0.5当量、0.20g)/KBr(0.1当量、0.02g)の溶液を窒素下で−20℃まで冷却し、20分間撹拌した。THF/DMF(2/1、6mL)中の10−DAB(1当量、1g)/MeSO(10当量、1.74mL)をNaH/CsBr/KBr溶液中に徐々に添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、反応が完了するまで2時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、CHCl及び水で抽出した。分離後、有機層を飽和NaHCOで抽出し、再結晶(CHCl/ヘキサン)によって濃縮し精製し、C1を白色固体として得た(LC純度:66%)。
【0111】
実施例29
【化39】

CsBrとMgBrとの混合物を触媒とする、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
共溶媒THF/DMF(2/1、6mL)中の水素化ナトリウム(60%、3当量、0.22g)/CsBr(0.5当量、0.20g)/MgBr(0.1当量、0.03g)の溶液を窒素下で−20℃まで冷却し、20分間撹拌した。THF/DMF(2/1、6mL)中の10−DAB(1当量、1g)/MeSO(10当量、1.74mL)をNaH/CsBr/MgBr混合物中に徐々に添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、そして反応が完了するまで2時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、CHCl及び水で抽出した。分離後、有機層を飽和NaHCO(aq)で抽出し、再結晶(CHCl/ヘキサン)によって濃縮し精製し、C1を白色固体として得た(LC純度74%)。
【0112】
実施例30
【化40】

CsBr及びZnBrの混合物を触媒とする、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
共溶媒THF/DMF(2/1、6mL)中の水素化ナトリウム(60%、3当量、0.22g)/CsBr(0.5当量、0.20g)/ZnBr(0.1当量、0.04g)の溶液を窒素下で−20℃まで冷却し、20分間撹拌した。THF/DMF(2/1、6mL)中の10−DAB(1当量、1g)/MeSO(10当量、1.74mL)をNaH/CsBr/ZnBrの混合物中に徐々に添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、反応が完了するまで17時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、CHCl及び水で抽出した。分離後、有機層を飽和NaHCO(aq)で抽出し、再結晶(CHCl/ヘキサン)によって濃縮し精製し、C1を白色固体として得た(LC純度44%)。
【0113】
実施例31
【化41】

CsBr及びCeClの混合物を触媒とする、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
共溶媒THF/DMF(2/1、6mL)中の水素化ナトリウム(60%、3当量、0.22g)/CsBr(0.5当量、0.20g)/CeCl(0.1当量、0.05g)の溶液を窒素下で−20℃まで冷却し、20分間撹拌した。THF/DMF(2/1、6mL)中の10−DAB(1当量、1g)/MeSO(10当量、1.74mL)をNaH/CsBr/CeClの混合物中に徐々に添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、反応が完了するまで2時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、CHCl及び水で抽出した。分離後、有機層を飽和NaHCO(aq)で抽出し、再結晶(CHCl/ヘキサン)によって濃縮し精製し、C1を白色固体として得た(LC純度61%)。
【0114】
VII.ルイス酸触媒(CsBr、及びKBr)及び(ナフタレン)・Liを使用した、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の合成(実施例32〜35)
【0115】
実施例32
【化42】

(ナフタレン)・Li及び触媒CsBrによる、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
無水THF(11mL)中のリチウム(3.0当量、0.04g)及びナフタレン(3.3当量、0.78g)を、25℃で16時間窒素下で撹拌し、続いて−78℃まで冷却した。無水THF(9mL)中の10−DAB(1当量、1g)及びMeSO(10当量、1.74mL)を(ナフタレン)・Li及びCsBr(0.5当量、0.20g)の混合物に徐々に添加した。続いて反応混合物を徐々に室温まで戻した。6.5時間撹拌した後に、出発原料を消費した反応物を10%のAcOH/THFによってクエンチし、続いてCHCl及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC1を得た(HPLC純度:22%)。
【0116】
実施例33
【化43】

THF/DMF下での(ナフタレン)・Li及び触媒CsBrによる、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
無水THF/DMF(10/1mL)中のリチウム(3.0当量、0.04g)及びナフタレン(3.3当量、0.78g)を窒素下で25℃で16時間撹拌し、続いて−78℃まで冷却した。無水THF/DMF(10/1mL)中の10−DAB(1当量、1g)及びMeSO(10当量、1.74mL)の溶液を(ナフタレン)・LiとCsBr(0.5当量、0.20g)の混合物中に徐々に添加した。続いて反応混合物を徐々に室温まで戻した。6.5時間撹拌した後に、出発原料を消費した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、続いてCHCl及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC1を得た(HPLC純度:10%)。
【0117】
実施例34
【化44】

(ナフタレン)・Li及び触媒KBrによる、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
無水THF(11mL)中のリチウム(3.0当量、0.04g)及びナフタレン(3.3当量、0.78g)を窒素下で25℃で16時間撹拌し、続いて−78℃まで冷却した。無水THF(9mL)中の10−DAB(1当量、1g)及びMeSO(10当量、1.74mL)の溶液を(ナフタレン)・LiとKBr(0.5当量、0.11g)との混合物中に徐々に添加した。続いて反応混合物を徐々に室温まで戻した。6.5時間撹拌した後に、出発原料を消費した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、続いてCHCl/水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC1を得た(HPLC純度:10%)。
【0118】
実施例35
【化45】

THF/DMF下での(ナフタレン)・Li及び触媒KBrによる、7,10−ジ−メトキシ−10−デアセチルバッカチン(III)(C1)の調製
無水THF/DMF(10/1mL)中のリチウム(3.0当量、0.04g)及びナフタレン(3.3当量、0.78g)を窒素下で25℃で16時間撹拌し、続いて−78℃まで冷却した。無水THF(10/1mL)中の10−DAB(1当量、1g)及びMeSO(10当量、1.74mL)の溶液を(ナフタレン)・LiとKBr(0.5当量、0.11g)の混合物中に徐々に添加した。続いて反応混合物を徐々に室温に戻した。6.5時間撹拌した後に、出発原料を消費した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、続いてCHCl/水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC1を得た(HPLC純度:9%)。
【0119】
VIII.ルイス酸触媒(LiBr、MgBr、CsBr、CeCl、KBr、及びFeCl)を使用した、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の合成(実施例36〜41)
【0120】
実施例36
【化46】

触媒LiBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を−15℃まで窒素下で冷却した。2mLのTHF中に溶解した7,10−ジ−メトキシ−10−DAB C1(1当量、200mg)を水素化ナトリウム溶液中に添加した。この反応混合物に、2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とLiBr(0.5当量、15mg)の混合物を徐々に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を−15℃〜20℃で撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(LC純度58%)。
【表11】

【0121】
実施例37
【化47】

触媒MgBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を−15℃まで窒素下で冷却した。2mLのTHF中に溶解した7,10−ジ−メトキシ−10−DAB(1当量、200mg)をNaH溶液中に添加した。続いて、反応混合物に2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とMgBr(0.5当量、32.2mg)との混合物を徐々に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を−15〜20℃で2時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(LC純度79%)。
【0122】
実施例38
【化48】

触媒CsBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を−15℃まで窒素下で冷却した。2mLのTHF中の7,10−ジ−メトキシ−10−DAB(1当量、200mg)をNaH溶液に添加した。反応混合物に、2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とCsBr(0.5当量、37.2mg)の混合物を徐々に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を1.5時間、−15〜20℃で撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(LC純度85%)。
【0123】
実施例39
【化49】

触媒CeClによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を−15℃まで窒素下で冷却した。2mLのTHF中の7,10−ジ−メトキシ−10−DAB(1当量、200mg)をNaH溶液に添加した。反応混合物に、2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とCeCl(0.5当量、43.0mg)との混合物を徐々に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を−15〜20℃で2.5時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(LC純度87%)。
【0124】
実施例40
【化50】

触媒KBrによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を−5℃まで窒素下で冷却した。2mLのTHF中の7,10−ジ−メトキシ−10−DAB(1当量、200mg)を液滴でNaH溶液に添加した。反応混合物に、2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とKBr(0.5当量、20mg)との混合物を徐々に添加した。反応が完了するまで、反応混合物を−15〜20℃で2.5時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(LC純度72%)。
【0125】
実施例41
【化51】

触媒FeClによる、1−ヒドロキシ−7β,10β−ジ−メトキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタキサ−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−トリエチルシリルオキシ3−フェニルプロパノアート}(C2)の調製
2mLのTHF中の水素化ナトリウム(60%、8当量、112mg)の溶液を窒素下で−5℃まで冷却した。2mLのTHF中の7,10−ジ−メトキシ−10−DAB(1当量、200mg)をNaH溶液に液滴で添加した。反応混合物に、2mLのTHF中の(3R,4S)−tert−ブチル2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート(β−ラクタム、2.5当量、329mg)とFeCl(0.5当量、28.4mg)との混合物を添加した。反応が完了するまで、反応混合物を−15〜20℃で2.5時間撹拌した。反応物を10%のAcOH/THFでクエンチし、エチルアセテート及び水で抽出した。有機層をロータベーパーで乾燥し、未精製のC2を得た(収率45%、LC純度95%)。
【0126】
実施例42
【化52】

(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)−4−(アセチルオキシ)−15−{[(2R,3S)−3−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル]オキシ}−1,9,12−トリヒドロキシ−10,14,17,17−テトラメチル−11−オキソ−6−オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデカ−13−エン−2−イルベンゾエート(カバジタキセル)の調製
pHが1〜2に達するまで、32%のHCl(aq)を、−5〜5℃で3.5mLのMeOH中のC3(490mg、1当量)の溶液に液滴で添加した。脱保護が完了するまで、−5〜5℃で反応混合物を撹拌し、続いて飽和NaHCO(aq)でクエンチしCHClで抽出した。再結晶(CHCl/ヘキサン)によって有機層を濃縮し精製し、カバジタキセルを白色固体として得た(収率65%、280mg;LC純度98%)。
【表12】

【0127】
実施例43
以下の表1は、実施例1〜42の概要を示すものである。
表1.実施例1〜42の概要
【表13−1】

【表13−2】

【表13−3】

*「--」は、測定されなかったことを意味する。
【0128】
本発明、及びこれを生産し且つ使用する態様及び方法は、発明が関連する技術分野の当業者が当該発明を生産し且つ使用することができるように、完全、明確、簡潔且つ正確な用語により記載されている。上述の実施例は本開示の好適な実施形態を記載し、請求項で説明される本開示の範囲から逸脱することのない範囲で変更がなされてよいことを理解されたい。発明としてみなす対象を特に指摘し且つ明確に特許請求するために、以下の請求項で明細書を完結させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(X)のタキソイドを調製するための方法であって:
(a)1又は複数のルイス酸ML及び第一の塩基剤の存在下で、保護されたバッカチンIII誘導体(B)を一般式(C)のβ−ラクタムと反応させ、1又は複数のシリルエーテル保護基を有する一般式(X)の保護されたタキソイドを得る工程;及び
(b)上記シリルエーテル保護基を除去し、一般式(X)のタキソイドを得る工程
【化1】

(式中、
Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Sc、Y、Ti、V、Nb、Co、B、Al、In、Sn、Ceのカチオン、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択され;
Lは、Mの対イオンであり;
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R10、又は−O−Si(R11)(R12)(R13)であり;
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R20、又は−O−Si(R21)(R22)(R23)であるか、或いはR’がC7と共にシクロアルキル環を形成する場合にはR’はHであり;
R’は、アルキルであるか、又はC7と共にシクロアルキル環を形成し;
R’は、アルコキシ、アリールオキシ、−O−C(=O)−R50、又は−O−Si(R51)(R52)(R53)であり;
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、又は−O−C(=O)−R10であり;
は、ヒドロキシル、水素、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は−O−C(=O)−R20であるか、或いはRがC7と共にシクロアルキル環を形成する場合には、RはHであり;
は、アルキル、又はC7と共にシクロアルキル環を形成し;
は、アルコキシ又はアリールであり;
10、R20、及びR50は、水素、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択され;そして
11、R12、R13、R21、R22、R23、R51、R52、及びR53は、水素、置換及び非置換アルキル、置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択される)
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記Mが、Li、K、Cs、Mg、Sc、Ti、V、Cu、Zn、B、Al、In、Sn、Ceの金属カチオン、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Lが、オキシド、酸性ラジカル、ハロゲン化物アニオン、Br、Cl、F、I、CO2−、O2−、ClO、(OCH(CH、トリフレート、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MLが、LiBr、MgBr、CsBr、ZnBr、ZnCl、CuBr、Cu(CFSO、BF・OEt、KBr、TiCl、SnCl、ScCl、VCl、AlCl、InCl、AlCO、CeCl、AgO、ZnClO、LiClO、Ti{OCH(CH又はこれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記式中、R’及びR’がアルコキシル基であるか、又はR’が、−O−Si(R11)(R12)(R13)であり、かつR’が−O−Si(R21)(R22)(R23)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式中、Rが、−OC(CH、又はフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記式中、R’が、−O−Si(CHCH又は−O−Si(CHである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式中、R’が、アルコキシ、−O−C(=O)−R10、又は−O−Si(R11)(R12)(R13)であり;
R’が、アルコキシ、−O−Si(R21)(R22)(R23)であるか、又はR’がC7と共にシクロアルキル環を形成する場合にはR’がHであり;
R’が、−O−Si(R51)(R52)(R53)であり;
が、ヒドロキシル、アルコキシ、又は−O−C(=O)−R10であり;
が、ヒドロキシル又はアルコキシであるか、あるいはRがC7と共にシクロアルキル環を形成する場合にはRはHであり;
10、R20、及びR50が、それぞれ水素又はアルキルであり;
11、R12、R13、R21、R22、R23、R51、R52、及びR53が、それぞれ水素又はアルキルであり;そして
保護基が、保護されたタキソイドを酸と反応させることによって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の塩基剤がアミン又は水素化金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の塩基剤が、ピリジン、トリエチルアミン、2,6−tert−ブチル−ピリジン、2,6−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン、N−1−ナフチルエチレンジアミン、水素化ナトリウム、又は水素化カリウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記β−ラクタムが、(3R,4S)−tert−ブチル−2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレート、又は(3R,4S)−フェニル−2−オキシ−4−フェニル−3−(トリエチルシリルオキシ)アゼチジン−1−カルボキシレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記タキソイドが、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、又はカバジタキセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
A)1又は複数のルイス酸M’L’と、任意にはさらに第二の塩基剤と、バッカチンIII誘導体(A)
【化2】

(式中、
M’が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Sc、Y、Ti、V、Nb、Co、B、Al、In、Sn、Ceのカチオン、及びこれらの任意の組合せから成る群から選択され;
L’は、M’の対イオンであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、−O−C(=O)−R60、又は−O−Si(R61)(R62)(R63)であり;
は、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、−O−C(=O)−R70、又は−O−Si(R71)(R72)(R73)であり;
は、アルキルであり;
60及びR70は、水素、ヒドロキシル、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択され;そして
61、R62、R63、R71、R72、及びR73は、水素、ヒドロキシル、置換及び非置換アルキル、並びに置換及び非置換アリールから成る群から独立して選択される)
とを反応させて、請求項1に記載の保護されたバッカチンIII誘導体(B)を形成する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記式中、R’が、アルコキシであり;
R’が、アルコキシであり;そして
及びRが、いずれもヒドロキシルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式中、R’及びR’がいずれもメトキシであり、Rがメチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記式中、R’が、−O−Si(R11)(R12)(R13)であり;
R’が、−O−Si(R21)(R22)(R23)であり;
が、ヒドロキシルであり;そして
が、−O−Si(R71)(R72)(R73)である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
A’)10−DAB
【化3】

をシリル化試薬と反応させ、請求項13に記載のバッカチン誘導体(A)を得る工程をさらに含んでなり;そして
任意には上記の工程A’)及び請求項13に記載の工程A)を同一の反応ポット中で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R71、R72、及びR73は、それぞれ−CHCH又は−CHである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第一の塩基剤及び第二の塩基剤が、それぞれアミン塩基、水素化金属、又は金属芳香族化合物の配位錯体である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第一の塩基剤及び第二の塩基剤が、それぞれピリジン、トリエチルアミン、2,6−tert−ブチル−ピリジン、2,6−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン、N−1−ナフチルエチレンジアミン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又はナフタレン・Liである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1)1又は複数のルイス酸M’L’と、任意にはさらに第二の塩基剤と、バッカチンIII誘導体(A)とを反応させて、第一の保護されたバッカチンIII誘導体(B)を形成する工程
【化4】

;及び
2)上記第一の保護されたバッカチンIII誘導体(B)を保護されたバッカチンIII誘導体(B)に転換する工程
(式中、
M’、L’、R、R及びRは、請求項13に定義される通りであり;
は、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、−O−C(=O)−R10、又は−O−Si(R11)(R12)(R13)であり;
は、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、−O−C(=O)−R20、又は−O−Si(R21)(R22)(R23)であり;そして
10、R11、R12、R13、R20、R21、R22、及びR23は、請求項1に定義される通りである)
をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記式中、Rが、−O−C(=O)−R10であり;
、R及びRが、ヒドロキシルであり;
R’が、−O−C(=O)−R10であり;
R’が、水素であり;そして
R’が、C7と共にシクロアルキル環を形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記式中、R10がメチルであり、シクロアルキル環がシクロプロピル環である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程2が:
i)第一の保護されたバッカチンIII誘導体(B)をトリフリン無水物及びピリジンと反応させ、化合物L1
【化5】

を提供する工程;及び
ii)化合物L1をアジ化ナトリウム又はヨウ化ナトリウムと反応させ、保護されたバッカチンIII誘導体(B)を提供する工程を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記式中、Rが、−O−C(=O)−R10であり;
、R及びRが、ヒドロキシルであり;
R’が、−O−C(=O)−R10であり;そして
R’が、−O−Si(R21)(R22)(R23)である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記式中、R10がメチルであり、R21、R22、及びR23がそれぞれエチル又はメチルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第一の塩基剤及び第二の塩基剤が、それぞれアミン、水素化金属、又は金属芳香族化合物の配位錯体である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記第一の塩基剤及び第二の塩基剤が、それぞれピリジン、トリエチルアミン、2,6−tert−ブチル−ピリジン、2,6−tert−ブチル−4−メチル−ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン、N−1−ナフチルエチレンジアミン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、又はナフタレン・Liである、請求項27に記載の方法。