説明

ルチン含有物の処理方法

【課題】 ルチン分解酵素が共存するルチン含有物について、特段の設備・作業を必要としない該分解酵素の失活方法を開発する。
【解決手段】 粉砕時における被粉砕物の発熱等の作用を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そば類の種子に代表されるような、ルチンとルチン分解酵素とを含む物質の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルチンはポリフエノールの一種であって、血液循環系の改善・強化を促進する機能を有することが良く知られており、そば類特にダッタンそばの種子に多く含有され、健康食品として注目を集めている。しかしながら、そば類の種子には、同時にルチン分解酵素が含まれており、加水によって作用が発現し、特にダッタンそばにおいては通常の日本そばに比べて数百倍もの強い分解作用を示し、ルチンの相当部分が苦味成分に転化する。これを防止するため、通常種子又は種子の粉砕物に対し乾燥加熱、湿潤加熱、加圧、エクストルーダー中での加熱等の酵素失活処理が実施される。(例えば特許第2766259号、特開平11−75743、特開2001−231475、徳島工業技術センター報告:平成13年度)。
【0003】
このため、方法によって差はあるものの、焙煎・給湿加熱・加圧等の処理工程を必要とし、そのための設備と作業とがコストの増大を招くことは避けられない。
【特許文献1】特許第2766259号
【特許文献2】特開平11−75743
【特許文献3】特開2001−231475
【非特許文献1】大村:徳島工業技術センター報告平成13年度
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、ルチン及びルチン分解酵素を含む物質に対し、特段の設備・操作を使用することなくルチン分解酵素を失活させる処理方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者らは以下のごとき発明を行った。
〔書類名〕特許請求の範囲
(1)特段のルチン分解酵素失活処理を施すことなく、ルチン分解酵素の共存するルチン含有物を粉砕すると同時にルチン分解酵素を失活せしめる、該ルチン含有物の処理方法。
(2)特段のルチン分解酵素失活処理を施すことなく、ダッタンそば種子を粉砕すると同時に該種子に含まれるルチン分解酵素を失活せしめる、ダッタンそば種子の処理方法。
(3)自粉砕方式の粉砕機を使用して、粉砕と同時にルチン分解酵素を失活せしめる、(1)又は(2)記載の処理方法。
(4)相互に平行に同方向又は逆方向に回転する2枚の回転翼または回転板の間に被粉砕物を導入し、翼間又は板間に生ずる気流に乗った被粉砕物の相互衝撃により粉砕を行う自粉砕方式の粉砕機を使用して、粉砕と同時にルチン分解酵素を失活せしめる、(1)又は(2)記載の処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、特段の設備・操作を行うことなく、加工時に通常行われる粉砕操作のみによってルチン分解酵素の失活した状態のルチン含有物粉末を得ることが出来、コストの削減と生産効率の向上を期待することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における粉砕方法は、特に限定されず、粉砕時に被粉砕物に必要な発熱又は雰囲気等と関連するメカノケミカルな作用が得られるように選定されればよく、被粉砕物もそば類に限定されるものではないが、ダッタンそばは特にルチン含有量が多く、且つ分解酵素の活性が高いことから、主要な関心の対象となるものである。また、粉砕方法としては、自粉砕方式特に相互に平行に同方向又は逆方向に回転する2枚の回転翼または回転板の間に被粉砕物を導入し、翼間又は板間に生ずる気流に乗った被粉砕物の相互衝撃により粉砕を行う自粉砕方式の粉砕機(例えば特開平11−300224、特開2001−321684、特開2002−79183)の使用は本発明の目的に適している。その理由は未だ確定的では無いが、上記粉砕機では粒径10μm程度の微細な粒子を得ることが出来、衝突による瞬間的な発熱等が粒子全体に作用を及ぼしやすいことも考えられる。
【実施例】
【0008】
予備的な実験として、市販のダッタンそば粉(中国産)を2軸2翼の自粉砕方式粉砕機(特開2002−79183)で約20分間粉砕し、粒径約10μm前後の粒子が80%以上の微粉としたものと、未処理の市販ダッタンそば粉とを、各々50%の小麦粉と30%の水分を加えて約30分間手練りし、直径5〜6cmの円盤上にして室温(20〜28℃)で24時間保持した後、通常の方法でゆでてパネル10名(関係者)により苦味の官能評価を行った。基準として、通常の日本そば粉を同様に処理したものの苦味を1、未処理のものの苦味を5として、粉砕処理したものの点数を求めたところ、結果は、4と答えたもの1名以外は総て2の評価であり、粉砕処理の有効性を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は適用が極めて容易であり、関連分野における広い実用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチン分解酵素の共存するルチン含有物を粉砕すると同時にルチン分解酵素を失活せしめる、該ルチン含有物の処理方法。
【請求項2】
ダッタンそば種子を粉砕すると同時に該種子に含まれるルチン分解酵素を失活せしめる、ダッタンそば種子の処理方法。
【請求項3】
自粉砕方式の粉砕機を使用して、粉砕と同時にルチン分解酵素を失活せしめる、請求項1又は請求項2記載の処理方法。
【請求項4】
相互に平行に同方向又は逆方向に回転する2枚の回転翼または回転板の間に被粉砕物を導入し、翼間又は板間に生ずる気流に乗った被粉砕物の相互衝撃により粉砕を行う自粉砕方式の粉砕機を使用して、粉砕と同時にルチン分解酵素を失活せしめる、請求項1又は請求項2記載の処理方法。

【公開番号】特開2006−87415(P2006−87415A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308851(P2004−308851)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000100757)アイシーエス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】