説明

ルテイン劣化防止剤及びそれを含有する飲食品

【課題】優れたルテイン劣化防止作用(ルテインの光劣化防止作用等)を有し、かつ、安全性の高いルテイン劣化防止剤、及び、前記ルテイン劣化防止剤を利用した飲食品を提供すること。
【解決手段】ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)の抽出物を含有することを特徴とするルテイン劣化防止剤、及び、前記ルテイン劣化防止剤を含有することを特徴とする飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツルレンゲの抽出物を含有するルテイン劣化防止剤、及び、前記ルテイン劣化防止剤を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテインは網膜や黄斑部に存在する黄斑色素で、目の機能強化や、白内障、加齢黄斑変性などの治療又は予防に効果があることが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。ルテインは体内で作り出すことができないため、食事で摂取する必要があり、そのため、ルテインは、アイケア素材として多くのサプリメント等に配合されているが、活性酸素、ストレス、加齢、強い光などの外的要因により、減少し易いという問題があった。
そのため、前記したような外的要因によるルテインの劣化を防ぎ、ルテインの効果を持続させることのできるルテイン劣化防止剤の開発が、望まれているのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−287376号公報
【特許文献2】特開2003−238442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたルテイン劣化防止作用(ルテインの光劣化防止作用等)を有し、かつ、安全性の高いルテイン劣化防止剤、及び、前記ルテイン劣化防止剤を利用した飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)の抽出物が、優れたルテイン劣化防止作用(ルテインの光劣化防止作用等)を有することを見出し、本発明の完成に至った。
ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)は、マメ科ゲンゲ属の植物であり、ツルゲンゲとも呼ばれ、中国などの山野に生える多年草である。草丈は1m以上、全体が短い剛毛に覆われ、茎はやや扁平で地上をはうように生える。ツルレンゲの種子は円みのある腎臓形で、沙苑子(シャエンシ)とも呼ばれ、肝機能や腎機能を補うなどの薬効があるとされている。しかしながら、ツルレンゲの抽出物が、優れたルテイン劣化防止作用を有することは従来全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0006】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)の抽出物を含有することを特徴とするルテイン劣化防止剤である。
<2> ルテインの光劣化防止作用を有する前記<1>に記載のルテイン劣化防止剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のルテイン劣化防止剤を含有することを特徴とする飲食品である。
<4> 更に、ルテインを含有する前記<3>に記載の飲食品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたルテイン劣化防止作用(ルテインの光劣化防止作用等)を有し、かつ、安全性の高いルテイン劣化防止剤、及び、前記ルテイン劣化防止剤を利用した飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(ルテイン劣化防止剤)
本発明のルテイン劣化防止剤は、ツルレンゲの抽出物を含有してなり、更に必要に応じて適宜その他の成分を含有してなる。
【0009】
前記ルテイン劣化防止剤は、ルテインの光劣化防止作用を少なくとも有するものである。 前記ツルレンゲの抽出物中に存在すると考えられる、ルテインの光劣化防止作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記ツルレンゲの抽出物が、このような優れた作用を有し、ルテイン劣化防止剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0010】
前記ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)は、マメ科ゲンゲ属の植物であり、ツルゲンゲとも呼ばれ、中国などの山野に生える多年草である。草丈は1m以上、全体が短い剛毛に覆われ、茎はやや扁平で地上をはうように生える。ツルレンゲの種子は円みのある腎臓形で、沙苑子(シャエンシ)とも呼ばれ、肝機能や腎機能を補うなどの薬効があるとされている。
前記ツルレンゲは、中国の遼寧、吉林、河北、陜西、甘粛、山西、内モンゴル等の山野に生え、これらの地域から容易に入手可能である。
【0011】
抽出原料となる前記ツルレンゲの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ツルレンゲの葉部、花部、茎部、果実、種子、根部などを用いることができる。これらの中でも、種子が特に好ましい。
【0012】
抽出原料である前記ツルレンゲは、例えば、乾燥した後に、そのままの状態で、又は粗砕機を用いて粉砕した状態で、溶媒抽出に供することができる。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記ツルレンゲは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、ツルレンゲの極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0013】
前記ツルレンゲの抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。なお、前記ツルレンゲの抽出物には、ツルレンゲの抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0014】
抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒等を用いることができる。
【0015】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0016】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0017】
抽出原料である前記ツルレンゲから、ルテインの光劣化防止作用を少なくとも有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、抽出原料としてのツルレンゲを投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明のルテイン劣化防止剤として用いることができる。
【0018】
抽出により得られるツルレンゲの抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られるツルレンゲの抽出液は、そのままでもルテイン劣化防止剤として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、ツルレンゲの抽出物の生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0019】
以上のようにして得られるツルレンゲの抽出物は、ルテインの光劣化防止作用を少なくとも有しており、この作用に基づいて、本発明のルテイン劣化防止剤の有効成分として好適に利用可能である。
なお、前記ルテイン劣化防止剤中の、前記ツルレンゲの抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記ルテイン劣化防止剤は、前記ツルレンゲの抽出物そのものであってもよい。
【0020】
また、前記ルテイン劣化防止剤中に含まれ得る、前記ツルレンゲの抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ツルレンゲの抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記ルテイン劣化防止剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
本発明のルテイン劣化防止剤は、優れたルテイン劣化防止作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0022】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明のルテイン劣化防止剤を含有してなり、好ましくは更にルテインを含有してなり、更に必要に応じて適宜その他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品、などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、ツルレンゲの抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、ツルレンゲの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、ツルレンゲの抽出物そのものであってもよい。
【0023】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0024】
また、前記ルテイン劣化防止剤は、ルテインの劣化防止作用に優れるため、中でもルテインを含有する飲食品に適用されることが好ましい。ルテインは、目の機能強化や、白内障、加齢黄斑変性などの治療又は予防に効果があることが知られているが、活性酸素、ストレス、加齢、強い光などの外的要因により劣化し易いという性質を有している。そこで、前記ルテイン劣化防止剤を、ルテインと共に飲食品に含有させることにより、前記したような外的要因によるルテインの劣化を防ぎ、ルテインの効果をより持続させることのできる、優れた飲食品を提供することが可能となる。
なお、前記飲食品に含有され得るルテインとしては、特に制限はなく、例えば、マリーゴールドから抽出(食品添加物「マリーゴールド色素」)することにより入手することができる。
【0025】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0026】
前記飲食品中の、前記ルテイン劣化防止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、飲食品の総量(100質量%)に対して、ツルレンゲの抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。
また、前記飲食品中のルテインの含有量に対する、前記ルテイン劣化防止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ルテインの含有量(100質量部)に対して、ツルレンゲの抽出物の量として、100質量部〜10,000質量部が好ましく、500質量部〜5,000質量部がより好ましい。
【0027】
(効果)
本発明のルテイン劣化防止剤、及び、本発明の飲食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分であるツルレンゲの抽出物の働きによって、ルテイン劣化防止作用、特に、ルテインの光劣化防止作用を、極めて効果的に発揮させることができるものである。そのため、本発明のルテイン劣化防止剤、及び、本発明の飲食品は、例えば、目の機能強化や、白内障、加齢黄斑変性などの治療又は予防を目的とした、ルテインを含む健康食品、栄養補助食品などに、幅広く利用可能であると考えられる。
なお、本発明のルテイン劣化防止剤、及び、本発明の飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明のルテイン劣化防止剤、及び、本発明の飲食品は、天然由来のツルレンゲの抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(製造例1:ツルレンゲの水抽出物の製造)
抽出原料としてツルレンゲの種子の粉砕物1,000gを、水5,000mLに投入し、攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0030】
(製造例2:ツルレンゲの30質量%エタノール抽出物の製造)
抽出原料としてツルレンゲの種子1,000gを、30質量%エタノール(水とエタノールとの質量比7:3)5,000mLに投入し、攪拌しながら2時間、還流下に保った後、ろ過した。ろ液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0031】
(製造例3:ツルレンゲの70質量%エタノール抽出物の製造)
抽出原料としてツルレンゲの種子1,000gを、70質量%エタノール(水とエタノールとの質量比3:7)5,000mLに投入し、攪拌しながら2時間、還流下に保った後、ろ過した。ろ液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例1:ルテインの光劣化防止作用試験)
製造例1〜3の各ツルレンゲ抽出物を被験試料として用い、下記の試験法により、ツルレンゲ抽出物のルテインの光劣化防止作用を試験した。
【0034】
ルテイン(和光純薬工業(株))をエタノールに分散し、ルテイン含量が0.08mg/mLの濃度になるように、緩衝液(PBS Ca2+,Mg2+フリー)に溶解し、ルテイン溶解液とした。各ツルレンゲ抽出物を、2mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mLの濃度になるように前記ルテイン溶解液に添加し、温度37℃、照度15,000lxに設定したグロースチャンバ内に静置し、PBSで20倍に希釈した溶液について、極大吸収を示す447nmでの吸光度を測定した。静置後0日目の吸光度を100%とした際の、静置後1日〜8日目の吸光度の割合を、ルテイン残存率(%)として評価した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果から、ルテインのみの場合では、静置後、徐々にルテインの劣化が進行し、8日目にはルテイン残存率は約50%まで低下したのに対して、ツルレンゲ30%EtOH抽出物を添加した場合では、全ての添加濃度において劣化の速度が抑えられ、静置後8日目においてもルテイン残存率は約70%〜80%と、2割〜3割程度の劣化で抑えられたことがわかる。
【0037】
以上、前記実施例1の結果から、ツルレンゲ抽出物は、光によるルテインの劣化を防止する、強い作用を有していることが認められた。このことから、ツルレンゲ抽出物は、ルテイン劣化防止剤として非常に有用であり、目の機能強化や、白内障、加齢黄斑変性などの治療又は予防を目的とした、ルテインを含む健康食品、栄養補助食品などに幅広く利用可能であることが示唆された。
【0038】
(配合実施例1:錠剤状栄養補助食品)
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・製造例2のツルレンゲ30質量%エタノール抽出物・・・10質量%
・ルテイン・・・1質量%
・粉糖(ショ糖)・・・52質量%
・グアガム分解物・・・33質量%
・グリセリン脂肪酸エステル・・・4質量%
【0039】
(配合実施例2:顆粒状栄養補助食品)
下記の混合物を顆粒状に形成して、栄養補助食品を製造した。
・製造例1のツルレンゲ水抽出物・・・6.2質量%
・ルテイン・・・0.5質量%
・ビートオリゴ糖・・・59.3質量%
・ビタミンC・・・33.3質量%
・ステビア抽出物・・・0.7質量%
【0040】
(配合実施例3:ソフトカプセル状栄養補助食品)
下記の混合物をソフトカプセルに充填して、栄養補助食品を製造した。
・製造例2のツルレンゲ30質量%エタノール抽出物・・・33質量%
・ルテイン・・・5質量%
・植物油・・・38質量%
・グリセリン脂肪酸エステル・・・4質量%
・ミツロウ・・・20質量%
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のルテイン劣化防止剤は、ツルレンゲの抽出物を含むことから、優れたルテインの光劣化防止作用を有し、かつ、安全性にも優れたものである。したがって、本発明のルテイン劣化防止剤は、例えば、目の機能強化や、白内障、加齢黄斑変性などの治療又は予防を目的とした、ルテインを含む健康食品、栄養補助食品などに幅広く利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツルレンゲ(Astragalus complanatus R.Br.)の抽出物を含有することを特徴とするルテイン劣化防止剤。
【請求項2】
ルテインの光劣化防止作用を有する請求項1に記載のルテイン劣化防止剤。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のルテイン劣化防止剤を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項4】
更に、ルテインを含有する請求項3に記載の飲食品。

【公開番号】特開2009−107946(P2009−107946A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279657(P2007−279657)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】