説明

ルータ装置、ルータ装置の初期設定方法

【課題】外部ネットワークにアクセス可能に既に設置されたモデムと端末との間に新たに設置するルータの初期設定に係る利便性を向上させる。
【解決手段】外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置は、ローカルエリアネットワーク側からパケットを受信して、受信したパケットを外部ネットワーク側へそのまま転送する転送部と、受信し、転送するパケットに付与されたヘッダ情報の少なくとも一部を把握して監視する監視部と、把握したヘッダ情報に応じた、外部ネットワークへ接続する場合の初期動作を実行して、外部ネットワークへの接続に必要な設定をルータ装置に対して行う実行部とを備えている。この転送部は、外部ネットワークへの接続に必要な設定を行った後に、パケットのルーティングを行う動作モードに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置の初期設定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク技術の発展により、一般家庭においてもインターネットへの接続環境が整備されることが一般的となっている。家庭内で1台のパーソナルコンピュータのみを使用してインターネットに接続する場合、例えば、パーソナルコンピュータは、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)に接続するためのモデムを介してインターネットに接続される。このようにモデムを使用してインターネットに接続する環境において、例えば、パーソナルコンピュータの数を増設する際には、モデムとパーソナルコンピュータとの間にルータを新たに設置して接続することが考えられる。かかる場合、インターネットに接続する方式としては、例えば、PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet、「Ethernet」は登録商標)、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)など複数の方式があるので、ユーザは、使用環境に合わせて、どのような接続方式を用いるかなどを新規導入するルータに設定する必要がある。こうした設定作業は、ユーザにとって面倒であった。
【0003】
特に、モデムの仕様によっては、接続された1台のパーソナルコンピュータのMACアドレスを把握して登録し、当該MACアドレスを有するノード以外からの通信を遮断するタイプのものが存在する。こうしたタイプのモデムでは、モデムの電源をOFFにすることによって、登録されたMACアドレスをクリアできるものもあれば、ボタン電池などを装備し、電源のON,OFFにかかわらず登録されたMACアドレスを継続的に記憶して、登録をクリアできないものもある。後者の場合、新規導入するルータ及び既存のモデムを介してパーソナルコンピュータからインターネットに接続するためには、ユーザは、パーソナルコンピュータのMACアドレスを調べて、当該MACアドレスを新規導入するルータのWAN側MACアドレスとして設定する必要がある。かかる設定作業は、とりわけ面倒であった。
【0004】
上述した問題は、ルータを新設する場合に限らず、既存のルータに代えて新たなルータを設置する場合にも共通する問題であった。また、インターネットへの接続に限らず、公衆網などのWAN(Wide Area Network)に接続する場合にも共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−515730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、外部ネットワークにアクセス可能に既に設置されたモデムと端末との間に新たに設置するルータの初期設定に係る利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的とし、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置であって、
前記ローカルエリアネットワーク側からパケットを受信して、該受信したパケットを前記外部ネットワーク側へそのまま転送する転送部と、
前記受信し、転送するパケットに付与されたヘッダ情報の少なくとも一部を把握して監視する監視部と、
前記把握したヘッダ情報に応じた、前記外部ネットワークへ接続する場合の初期動作を実行して、該外部ネットワークへの接続に必要な設定を前記ルータ装置に対して行う実行部と
を備え、
前記転送部は、前記設定の後に、前記パケットのルーティングを行う動作モードに移行する
ルータ装置。
【0009】
かかる構成のルータ装置は、ローカルエリアネットワーク側から受信したパケットを外部ネットワーク側へそのまま転送する過程で、パケットのヘッダ情報を把握するので、ユーザが、所定の通信プロトコルで外部ネットワークに接続可能に構築されたモデムと端末との間に当該ルータ装置を接続し、端末から外部ネットワークにアクセスすれば、ルータ装置は、端末が外部ネットワークと接続関係を確立させるための通信に係るパケットのヘッダ情報を把握する。このヘッダ情報は、外部ネットワークへ接続する場合の初期動作に応じて異なる内容となるから、ルータ装置は、把握したヘッダ情報に応じた初期動作を実行することができる。このような点を利用して、ルータ装置は、外部ネットワークへの接続に必要な設定をルータ装置に行い、ルーティングを行う動作モードに移行する。したがって、ユーザは、外部ネットワークに接続するための初期設定を新規導入するルータ装置に対して容易に行うことができ、利便性が向上する。例えば、ルータ装置の設定方法として、端末を用いて、予め定められたURL(Uniform Resource Locator)を入力して、WEBブラウザでルータ装置にアクセスし、ルータ装置のWEBサーバ機能を利用して端末から設定を行う方法が一般的に知られているが、本実施例の設定処理によれば、入力すべきURLを知らなくても設定を行うことができるので、ユーザの操作負担が軽減される。
【0010】
[適用例2]前記初期動作は、DHCPを用いて前記外部ネットワーク側のIPアドレスを取得する動作を含む適用例1記載のルータ装置。
【0011】
かかる構成のルータ装置は、ヘッダ情報がDHCPに対応するものである場合に、DHCPを用いて外部ネットワーク側のIPアドレスを取得し、ルータ装置に設定することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2記載のルータ装置であって、前記初期動作は、前記外部ネットワークと通信するために所定の情報を用いて認証を得る認証工程を有する認証動作を含み、更に、前記ヘッダ情報に応じた初期動作が前記認証動作である場合に、前記所定の情報を受け付ける受付部を備え、前記実行部は、前記受け付けた所定の情報を用いて前記認証動作を実行するルータ装置。
【0013】
かかる構成のルータ装置は、ヘッダ情報が、外部ネットワークと通信するために所定の情報を用いて認証を得る認証工程を有する認証動作に対応するものである場合に、所定の情報を受け付けて、その情報を用いて認証動作を実行することができる。
【0014】
[適用例4]更に、前記ヘッダ情報に応じた初期動作が前記認証動作である場合に、前記所定の情報の入力が必要であることをユーザに報知する報知部を備えた適用例3記載のルータ装置。
【0015】
かかる構成のルータ装置は、認証動作に必要な所定の情報の入力が必要であることをユーザに報知するので、ユーザは、所定の情報を入力すべきタイミングを容易に知ることができる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0016】
[適用例5]前記受付部は、前記ローカルエリアネットワーク側から前記外部ネットワーク側へ向けた宛先が任意の要求に応じて、WEBブラウザが解釈可能な形式のWEBデータを応答し、該WEBデータを用いて入力され、送信された前記所定の情報を受け付ける適用例3または適用例4記載のルータ装置。
【0017】
かかる構成のルータ装置は、ローカルエリア側の端末から外部ネットワークに向けて任意の宛先に対して要求を行えば、WEBブラウザが解釈可能な形式のWEBデータを応答し、WEBデータを用いて入力され、送信された所定の情報を受け付ける。したがって、ユーザは、端末を操作して、要求の宛先を意識する必要のない容易な方法で要求を行い、端末でWEBブラウザを用いて所定の情報を入力するだけで、ルータ装置の設定を行うことができ、利便性が向上する。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか記載のルータ装置であって、前記実行部は、前記把握部が把握した前記受信したパケットの送信元のMACアドレスを前記ルータ装置のMACアドレスとして使用して、前記初期動作を実行し、前記転送部は、前記送信元のMACアドレスを前記ルータ装置のMACアドレスとして使用して、前記ルーティングを行うルータ装置。
【0019】
かかる構成のルータ装置は、受信したパケットの送信元のMACアドレスを自身のMACアドレスとして使用するので、ルータ装置に接続されるモデムが、接続された1つのノードのMACアドレスのみを把握して登録し、当該MACアドレスを有するノード以外からの通信を遮断するタイプのものである場合でも、初期動作に係る通信やルーティングがモデムによって阻害されることがない。したがって、ルータ装置の汎用性が高まり、利便性が向上する。
【0020】
また、本発明は、上述したルータ装置のほか、ルータ装置に用いるプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、適用例7の設定方法等としても実現することができる。勿論、これらの実現形態に対しても、適用例2〜適用例6の構成を付加することも可能である。
[適用例7]外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置の初期設定を行う設定方法であって、モデムを介して前記外部ネットワークへの接続が可能に設定されたノードと該モデムとの間に前記ルータ装置を接続する接続工程と、前記ノードから前記外部ネットワークへ接続するために該ノードに送信させたパケットを前記ルータ装置に受信させて、該受信したパケットを前記外部ネットワーク側へそのまま転送させる転送工程と、前記転送工程の過程において、前記受信したパケットに付与されたヘッダ情報の少なくとも一部を前記ルータ装置に把握して監視させる監視工程と、前記把握したヘッダ情報に応じた、前記外部ネットワークへ接続する場合の初期動作を前記前記ルータ装置に実行させて、該外部ネットワークへの接続に必要な前記ルータ装置の設定を該ルータ装置に行わせる実行工程とを備えた設定方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例としてのルータ100の設置例を示す説明図である。
【図2】ルータ100の概略構成を示す説明図である。
【図3】ルータ100における設定処理の流れを示す説明図である。
【図4】変形例としてのルータ100の設置例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.実施例:
本発明の実施例について説明する。
A−1.ルータ100の構成:
本発明のルータ装置の実施例としてのルータ100の設置例を図1に示す。ローカルエリアネットワークとしてのネットワークシステム20は、パーソナルコンピュータPCとモデム50とを備えている。パーソナルコンピュータPCは、モデム50と図示しないISP(Internet Services Provider)とを介して、外部ネットワークとしてのインターネットINTに接続されている。本実施例では、インターネットINTに接続する回線としてADSLを用いている。このネットワークシステム20は、パーソナルコンピュータPCからモデム50を介してインターネットINTに接続可能に通信設定が既になされている。かかる既存のネットワークシステム20において、ルータ100は、パーソナルコンピュータPCとモデム50との間に新たに設置される。なお、モデム50が接続される外部ネットワークは、インターネットINTに限らず、例えば、専用線を用いたWANなどであってもよい。
【0023】
モデム50は、ADSL信号とEthernet信号との間の変換を行う信号変換器である。本実施例では、モデム50は、接続されたパーソナルコンピュータPCのMACアドレスを把握して登録し、当該MACアドレスを有するノード以外からの通信を遮断するように構成されている。更に、このモデム50は、ボタン電池を装備し、電源のON,OFFにかかわらず登録されたMACアドレスを継続的に記憶しており、モデム50の電源をOFFにしてもMACアドレスの登録情報はクリアされない。
【0024】
ルータ100は、本実施例においては、ルーティングテーブルを用いてOSI参照モデルのネットワーク層でパケットのルーティングを行う有線ルータである。ただし、ルータ100は、無線LAN機能を有していてもよい。ルータ100の概略構成を図2に示す。図示するように、ルータ100は、CPU110、フラッシュROM120、RAM130、有線LANインタフェース140、WANインタフェース150、LED160を備え、それぞれがバスにより相互に接続されている。
【0025】
CPU110は、フラッシュROM120に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM130に展開して実行することで、ルータ100の動作全般を制御する。詳細は後述するが、CPU110は、モニタリングモードとルータモードという、排他的に選択される2つの動作モードでルータ100を動作させることが可能である。また、CPU110は、所定のプログラムを実行することで、WEBサーバとしても機能する。さらに、CPU110は、所定のプログラムを実行することで、転送部111、監視部112、実行部113、受付部114、報知部115としても機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0026】
フラッシュROM120は、不揮発性のメモリであり、上述したプログラムの他に、設定画面データ121を記憶している。設定画面データ121は、ルータ100の通信設定に関する設定情報を入力するためのGUI(Graphical User Interface)画像を表す画像データである。この設定画面データ121は、WEBブラウザで解釈可能なHTML(HyperText Markup Language)形式の画像データである。
【0027】
有線LANインタフェース140は、有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース140は、4つのポートを備えているが、ポート数は1つでもよいし、5つ以上であってもよい。この有線LANインタフェース140は、有線LANケーブルを介してパーソナルコンピュータPCに接続される。WANインタフェース150は、固定回線によってインターネットINTなどの外部ネットワークに接続するためのインタフェースである。このWANインタフェース150は、有線ケーブルを介してモデム50に接続される。
【0028】
LED160は、後述する設定処理において、ルータ100の初期設定のために、インターネットINTに接続するために使用する通信プロトコルに応じた所定の情報、例えば、ユーザ名やパスワードの入力が必要であることをユーザに報知するための出力手段である。
【0029】
A−2.設定処理:
ルータ100における設定処理について説明する。本実施例における設定処理とは、所定の通信プロトコル、例えは、DHCPを用いてインターネットINTに接続可能に既に設定されたネットワークシステム20に対して、図1に示したように新たにルータ100を導入する場合に、ルータ100がインターネットINTに接続するための初期設定を行う処理である。本実施例においては、設定処理は、ルータ100の電源投入によって開始される。ただし、設定処理の開始契機は特に限定するものではない。例えば、ルータ100が、設定処理の開始を受け付けるための専用のスイッチを備える構成としてもよいし、電源投入時における設定処理の開始の可否を切り替えるスイッチを備える構成としてもよい。あるいは、ルータ100が赤外線などの無線手段を備えている場合には、ルータ100は、ユーザが操作するリモコンなどから設定処理の開始指示を受け付けてもよい。あるいは、ルータ100がUSB(Universal Serial Bus)インタフェースなど、記憶媒体を接続可能なインタフェースを備えている場合には、所定の情報が記憶されたUSBメモリなどを接続した場合に設定処理を開始する構成としてもよい。かかる場合、設定処理を実行するためのプログラムは、USBメモリからダウンロードしてもよい。
【0030】
設定処理が開始されると、ルータ100のCPU110は、まず、監視部112の処理として、モニタリングモードの動作を開始する(ステップS200)。モニタリングモードとは、有線LANインタフェース140から受信したパケットをWANインタフェース150側にそのまま転送し、また、WANインタフェース150から受信したパケットを有線LANインタフェース140側にそのまま転送する動作モードである。このモニタリングモードは、いわゆるリピータとしての動作であり、ルーティングテーブルを用いたパケットのルーティングは行われない。ただし、モニタリングモードにおいて、CPU110は、受信したパケットのヘッダ情報を把握して、パケットの監視を行う。本実施例においては、CPU110は、受信したパケットのヘッダ領域を参照して、通信プロトコルを識別可能な情報(詳しくは後述)と送信元のMACアドレスとを把握する。
【0031】
かかるモニタリングモードの動作を開始すると、CPU110は、有線LANインタフェース140からのパケットの受信を待機する(ステップS210)。ここで、ユーザは、ルータ100の電源を投入して設定処理を開始させると、上述したモニタリングモードによるパケットの監視をルータ100に行わせるために、パーソナルコンピュータPCを用いて、インターネットINTにアクセスする操作を行う。この操作によって、パーソナルコンピュータPCは、設定された通信プロトコルを用いた初期動作、例えば、DHCPを用いたグローバルIPアドレスの取得プロセスを開始する。なお、この操作の利便性を向上させるために、ルータ100は、モニタリングモードの動作開始を契機にLED160を点灯させるなどして、モニタリングモードの動作を開始したことをユーザに報知する構成としてもよい。本実施例においては、当該操作として、ユーザは、パーソナルコンピュータPCにインストールされたWEBブラウザを用いて、インターネットINT上の所望のURLにアクセスするものとした。
【0032】
このようなユーザ操作に基づいてパーソナルコンピュータPCから送信されたパケットを受信すると(ステップS210:YES)、ルータ100のCPU110は、監視部112の処理として、受信したパケットのヘッダ領域を参照して、通信プロトコルと、送信元のMACアドレスとを把握し、フラッシュROM120に登録すると共に、転送部111の処理として、WANインタフェース150側に転送する(ステップS220)。なお、その後もルータ100は、モニタリングモードでの動作を継続するので、パーソナルコンピュータPCとISPとのやり取りによって、パーソナルコンピュータPCにグローバルIPアドレスが割り当てられ、パーソナルコンピュータPCがインターネットINTに接続できる状態となる。
【0033】
パケットを転送すると、CPU110は、転送したパケットを契機として開始された、パーソナルコンピュータPCがインターネットINTに接続するための初期動作プロセスに係る通信の終了を待機する(ステップS230)。この初期動作とは、後述するステップS270,300,S330で実行されるプロセスの動作であり、例えば、パーソナルコンピュータPCがDHCPを用いてISPからグローバルIPアドレスの割り当てを受ける場合(後述するステップS270)には、ディスカバリパケットの送信を契機として開始されるDHCPディスカバープロセスによって、パーソナルコンピュータPCがグローバルIPアドレスを取得する動作である。この初期動作に係る通信の終了の判断は、本実施例では、ユーザが、パーソナルコンピュータPCからインターネットINTに適切に接続できたことを確認した後、有線LANインタフェース140に接続された有線LANケーブルを抜き差しし、それをCPU110が検知することで行うこととした。
【0034】
その結果、通信が終了すれば(ステップS230:YES)、CPU110は、ルータ100自身のMACアドレスを上記ステップS220で登録したパーソナルコンピュータPCのMACアドレスに変更する設定を行う(ステップS240)。MACアドレスを変更すると、CPU110は、転送部111の処理として、動作モードをモニタリングモードからルータモードに変更する(ステップS250)。ルータモードとは、ルーティングテーブルを用いてパケットのルーティングを行う動作モードである。動作モードがルータモードに変更されることによって、CPU110は、有線LANインタフェース140側とWANインタフェース150側とを別々のセグメントとして取り扱うこととなる。また、上記ステップS250では、動作モードの変更を行った後に、CPU110は、有線LANインタフェース140側のネットワークを論理的に一旦切断して、パーソナルコンピュータPCに設定されたグローバルIPアドレスをクリアさせる。なお、上記ステップS230の判断をケーブルの抜き差しを検知することで行う場合には、この切断処理を省略することができる。その後、CPU110は、有線LANインタフェース140側のネットワークに再接続し、ルータ100のDHCP機能によって、パーソナルコンピュータPCにプライベートIPアドレスを割り当てる。
【0035】
ルータモードへの変更を行うと、CPU110は、上記ステップS220で登録した通信プロトコルの種類を判断する(ステップS260)。その結果、通信プロトコルがDHCPであれば(ステップS260:DHCP)、CPU110は、実行部113の処理として、DHCPディスカバープロセスによって、ISPからグローバルIPアドレスを取得し、WANインタフェース150側のIPアドレスとして設定する(ステップS270)。なお、通信プロトコルがDHCPであることは、ポート番号によって識別することができる。
【0036】
一方、通信プロトコルがPPPoEであれば(ステップS260:PPPoE)、CPU110は、報知部115の処理として、LED160を所定の態様で点灯させる(ステップS280)。このLED160の点灯は、インターネットINTに接続するために使用する通信プロトコル(ここではPPPoE)に応じた所定の情報(ここではユーザID及びパスワード)の入力が必要であることをユーザに報知し、以下に説明する操作をユーザに促す意味を持つ。なお、通信プロトコルがPPPoEであることは、タイプフィールドによって識別することができる。
【0037】
こうしてLED160が点灯し、ユーザがユーザID及びパスワードの入力が必要であることを知ると、ユーザは、再度、パーソナルコンピュータPCのWEBブラウザを用いて、任意のURLにアクセスする。この操作に基づいて、パーソナルコンピュータPCは、指定されたURLに対してHTTP(HyperText Transfer Protocol)要求を送信する。一方、ルータ100のCPU110は、LED160を点灯させた後、HTTP要求の受信を待機しており、HTTP要求を受けると、自身のURLをHTTP要求の宛先URLに設定して、設定画面データ121を用いてHTTP応答を行う(ステップS290)。この設定画面データ121は、PPPoEの認証に必要となるユーザID及びパスワードを入力可能に構成されている。
【0038】
こうしてHTTP応答を行うと、ユーザは、パーソナルコンピュータPCのWEBブラウザを介してモニタに表示された設定画面データ121のGUIを用いて、ユーザID及びパスワードを入力し、当該入力情報をルータ100に送信する操作を行う。かかる操作によってパーソナルコンピュータPCが入力情報をルータ100に送信すると、ルータ100のCPU110は、受付部114の処理として、入力情報を受け付け、当該入力情報を用いて、PPPoEディスカバリステージの認証プロセスによって、ISPからグローバルIPアドレスを取得し、フラッシュROM120に登録して、WANインタフェース150側のIPアドレスとして設定する(ステップS300)。なお、上述の例では、設定画面データ121を用いて、入力情報を受け付ける構成としたが、入力情報の受付態様は、特に限定するものではなく、ルータ100が入力情報を入力可能なUI(User Interface)を備えている場合には、当該UIを用いて入力された入力情報を受け付けてもよいし、リモコン通信が可能に構成されている場合には、リモコンを用いて入力された入力情報を受け付けてもよい。
【0039】
一方、通信プロトコルがその他の通信プロトコルであれば(ステップS260:その他)、CPU110は、報知部115の処理として、上記ステップS280と同様に、LED160を点灯させる(ステップS310)。なお、ここでのその他の通信プロトコルとは、インターネットINTに接続するために必要なものとして特定のISPが個別的に定めたルールに基づくものであり、特別な認証を必要とするプロトコルである。こうした通信プロトコルとしては、例えば、PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)、IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)などのVPN(Virtual Private Network)を構築するための通信プロトコルを例示することができる。なお、通信プロトコルがPPTPやIPsecであることは、プロトコル番号やポート番号によって識別することができる。
【0040】
LED160が点灯すると、ユーザは、通信プロトコルがPPPoEである場合(上記ステップS260:PPPoE)と同様に、ユーザは、パーソナルコンピュータPCのWEBブラウザを用いて、所望のURLにアクセスする。これにより、パーソナルコンピュータPCがHTTP要求を送信すると、ルータ100のCPU110は、上記ステップS290と同様に、設定画面データ121を用いてHTTP応答を行う(ステップS320)。この設定画面データ121は、PPTPやIPsecの認証の前段階で実行されるPPPoEディスカバリステージの認証プロセスに必要なユーザID及びパスワードのほか、PPTPやIPsecの認証に必要となるユーザIDやパスワードを入力可能に構成されている。なお、この設定画面データ121は、PPPoE、PPTP、IPsecなど、使用環境に応じて用いられる可能性があると想定される全ての通信プロトコルの認証プロセスに必要な情報を入力可能に構成されていてもよいが、上記ステップS260で判断した通信プロトコルに対応する入力項目だけを入力可能に構成されていることが望ましい。こうすれば、ユーザは、どの入力項目に入力する必要があるのかを迷う必要がなく、利便性が向上するからである。
【0041】
こうしてHTTP応答を行うと、ユーザは、通信プロトコルがPPPoEである場合(上記ステップS260:PPPoE)と同様に、パーソナルコンピュータPCのモニタに表示されたGUIを用いて、必要な情報を入力して、ルータ100に送信する操作を行う。これを受けて、ルータ100のCPU110は、受付部114の処理として、入力情報を受け付け、当該入力情報を用いて、PPPoEの認証プロセスによってIPアドレスを取得すると共に、PPTPやIPsecの認証を行い、当該認証の工程でやり取りした情報をもとにVPNの構築に必要な暗号鍵を生成し、これらをフラッシュROM120に登録して、設定する(ステップS330)。こうして、ステップS270,S300,S330のいずれかでインターネットINTに接続するために必要な情報がルータ100に設定されると、ルータ100は、ルータ100の導入前と同様の通信プロトコルでインターネットINTに接続が可能となり、ルータモードでの動作によって、インターネットINTとの間でルーティングを行うこととなる。なお、ルータ100は、上記ステップS220で登録したMACアドレスをルータモードの動作においても自己のMACアドレスとして使用する。
【0042】
A−3.効果:
かかる構成のルータ100は、モニタリングモードによって、ローカルエリアネットワークとしてのネットワークシステム20側から受信したパケットをインターネットINT側に向けてそのまま転送する過程で、受信したパケットのヘッダ情報を把握するので、ユーザが、所定の通信プロトコルでインターネットINTに接続可能に構築されたモデム50とパーソナルコンピュータPCとの間にルータ100を接続し、パーソナルコンピュータPCからインターネットINTにアクセスすれば、ルータ100は、パーソナルコンピュータPCがインターネットINTと接続関係を確立させるための通信、例えば、DHCPディスカバープロセスやPPPoEディスカバリステージの認証プロセスに係るパケットのヘッダ情報を把握する。このヘッダ情報は、インターネットINTへ接続する場合の初期動作(DHCPディスカバープロセスやPPPoEディスカバリステージの認証プロセスなど)に応じて、ポート番号などの情報が異なるから、ルータ100は、把握したヘッダ情報に応じた初期動作を実行することができる。このような点を利用してルータ100は、インターネットINTへの接続に必要な設定をルータ100に行い、ルーティングモードに移行する。したがって、ユーザは、インターネットINTに接続するための初期設定を新規導入するルータ100に対して容易に行うことができ、利便性が向上する。例えば、ルータ100の設定方法として、パーソナルコンピュータPCを用いて予め定められたURLを入力して、WEBブラウザでルータ100にアクセスし、ルータ100のWEBサーバ機能を利用してパーソナルコンピュータPCから設定を行う方法が一般的に知られているが、本実施例の設定処理によれば、入力すべきURLを知らなくても設定を行うことができるので、ユーザの操作負担が軽減される。
【0043】
また、ルータ100の設定処理は、インターネットINTへ接続する場合の初期動作として、DHCPによるWAN側IPアドレスの設定を行うことができる。かかる設定は、ユーザが、インターネットINTに接続可能に構築されたモデム50とパーソナルコンピュータPCとの間にルータ100を設置し、パーソナルコンピュータPCからインターネットINTにアクセスするだけで実行することができ、ユーザの操作負担が大幅に軽減される。
【0044】
また、ルータ100は、インターネットINTへ接続する場合の初期動作として、所定の情報を用いて認証を得る認証工程を有する認証動作、例えば、PPPoEによるWAN側IPアドレスの設定や、PPTP、IPsecなどによるVPNの構築を行うことができる。かかる初期動作には、ユーザが所定の情報の入力を行う必要があるが、ルータ100は、入力が必要であることをLED160の点灯によって報知するので、ユーザは、所定の情報を入力すべきタイミングを容易に知ることができ、ユーザの利便性が向上する。しかも、所定の情報の入力は、ユーザが、パーソナルコンピュータPCを操作して、インターネットINTに向けて任意のURLを宛先としたHTTP要求を行えば、ルータ100が設定画面データ121を応答するので、ユーザは、ルータ100のURLを知らなくても、ルータ100のWEBサーバ機能を用いて容易に入力を行うことができる。
【0045】
また、ルータ100は、モニタリングモードにおいてパーソナルコンピュータPCから受信したパケットに含まれるパーソナルコンピュータPCのMACアドレスを自身のMACアドレスとして設定して、初期動作の実行やルーティングを行うので、モデム50が、接続されたパーソナルコンピュータPCのMACアドレスを把握して登録し、当該MACアドレスを有するノード以外からの通信を遮断するタイプのものである場合でも、初期動作に係る通信やルーティングがモデム50によって阻害されることがない。したがって、ルータ装置100の汎用性が高まり、利便性が向上する。かかる効果は、モデム50が、ボタン電池などを装備し、電源をOFFにしても登録されたMACアドレスをクリアしないタイプである場合に、特に顕著なものとなる。なお、かかる構成は、モデム50が登録された1つのMACアドレスを有するノード以外からの通信を遮断するタイプでなければ、必ずしも必要でないことは勿論である。
【0046】
上述した実施形態の変形例について説明する。
B:変形例:
B−1.変形例1:
上述の実施形態においては、ルータ100が1台のパーソナルコンピュータPCと接続される構成について示したが、ルータ100をネットワークシステム20に設置し、設定処理を実行した後は、ルータ100が備える複数のポートを介して直接的に、または、ハブなどを介して間接的に複数のパーソナルコンピュータPCに接続してもよい。かかる場合、NAPT(Network Address Port Translation)やNAT(Network Address Translation)を用いて、複数のパーソナルコンピュータPCの各々からインターネットINTに接続可能に構成してもよい。
【0047】
B−2.変形例2:
上述の実施形態においては、ルータ100は、LED160を点灯させることでユーザの入力が必要であることを報知する構成としたが、報知手段は、種々の構成とすることができる。例えば、音声によって報知してもよいし、パーソナルコンピュータPCのモニタにポップアップメッセージを表示させて報知してもよい。
【0048】
B−3.変形例3:
上述の実施形態においては、設定処理において、インターネットINTに接続可能とするために、WAN側IPアドレスや暗号鍵を設定する構成を例示したが、設定項目は、かかる例に限らず、既存のネットワークにおいて外部ネットワークに接続するための通信プロトコルとして設定された通信プロトコルに係る種々の設定項目とすることができる。例えば、設定項目は、VLAN(Virtual LAN)IDなどであってもよい。なお、VLANIDは、パケットに付加されたヘッダのVLANタグフィールドによって識別することができる。
【0049】
B−4.変形例4:
上述の実施形態においては、モデム50とパーソナルコンピュータPCとの間にルータ100を新たに導入するケースについて示したが、ルータ100の設定処理は、既存のルータの交換時にも適用可能である。具体的には、図4に示すように、パーソナルコンピュータPCがルータ460、モデム50を介してインターネットINTに接続されるネットワークシステム420において、ルータ460をルータ100に交換する場合にも適用可能である。なお、この場合、上記ステップS240の処理は省略可能である。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、ルータ装置としての構成のほか、ルータ装置の初期設定方法、そのプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
20…ネットワークシステム
50…モデム
100…ルータ
110…CPU
111…転送部
112…監視部
113…実行部
114…受付部
115…報知部
120…フラッシュROM
121…設定画面データ
130…RAM
140…有線LANインタフェース
150…WANLANインタフェース
160…LED
420…ネットワークシステム
460…ルータ
PC…パーソナルコンピュータ
INT…インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置であって、
前記ローカルエリアネットワーク側からパケットを受信して、該受信したパケットを前記外部ネットワーク側へそのまま転送する転送部と、
前記受信し、転送するパケットに付与されたヘッダ情報の少なくとも一部を把握して監視する監視部と、
前記把握したヘッダ情報に応じた、前記外部ネットワークへ接続する場合の初期動作を実行して、該外部ネットワークへの接続に必要な設定を前記ルータ装置に対して行う実行部と
を備え、
前記転送部は、前記設定の後に、前記パケットのルーティングを行う動作モードに移行する
ルータ装置。
【請求項2】
前記初期動作は、DHCPを用いて前記外部ネットワーク側のIPアドレスを取得する動作を含む請求項1記載のルータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のルータ装置であって、
前記初期動作は、前記外部ネットワークと通信するために所定の情報を用いて認証を得る認証工程を有する認証動作を含み、
更に、前記ヘッダ情報に応じた初期動作が前記認証動作である場合に、前記所定の情報を受け付ける受付部を備え、
前記実行部は、前記受け付けた所定の情報を用いて前記認証動作を実行する
ルータ装置。
【請求項4】
更に、前記ヘッダ情報に応じた初期動作が前記認証動作である場合に、前記所定の情報の入力が必要であることをユーザに報知する報知部を備えた請求項3記載のルータ装置。
【請求項5】
前記受付部は、前記ローカルエリアネットワーク側から前記外部ネットワーク側へ向けた宛先が任意の要求に応じて、WEBブラウザが解釈可能な形式のWEBデータを応答し、該WEBデータを用いて入力され、送信された前記所定の情報を受け付ける請求項3または請求項4記載のルータ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか記載のルータ装置であって、
前記実行部は、前記把握部が把握した前記受信したパケットの送信元のMACアドレスを前記ルータ装置のMACアドレスとして使用して、前記初期動作を実行し、
前記転送部は、前記送信元のMACアドレスを前記ルータ装置のMACアドレスとして使用して、前記ルーティングを行う
ルータ装置。
【請求項7】
外部ネットワークとローカルエリアネットワークとに接続されるルータ装置の初期設定を行う設定方法であって、
モデムを介して前記外部ネットワークへの接続が可能に設定されたノードと該モデムとの間に前記ルータ装置を接続する接続工程と、
前記ノードから前記外部ネットワークへ接続するために該ノードに送信させたパケットを前記ルータ装置に受信させて、該受信したパケットを前記外部ネットワーク側へそのまま転送させる転送工程と、
前記転送工程の過程において、前記受信したパケットに付与されたヘッダ情報の少なくとも一部を前記ルータ装置に把握して監視させる監視工程と、
前記把握したヘッダ情報に応じた、前記外部ネットワークへ接続する場合の初期動作を前記前記ルータ装置に実行させて、該外部ネットワークへの接続に必要な前記ルータ装置の設定を該ルータ装置に行わせる実行工程と
を備えた設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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