説明

ルーペ

【課題】焦点距離がつかみ難く、試行錯誤しながら使用する手持ちのルーペの使い勝手を向上させる。
【解決手段】使用者の手4の特定の指に嵌められる指輪部11をレンズ10と一体にし、第五指43を観察面5に接触させて手をたてた状態でレンズを観察面に正対可能な形状にし、かつ、その状態での作動距離と概略等しい焦点距離のレンズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察物を拡大して見る目的で、使用者が片方の手に保持しながらレンズ部を覗いて使用するルーペに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピンセットを使った指先での細かい作業時や、小さい字を読んだり、さらには微小なものを観察する場合等に於いては、片方の手で保持できるルーペは非常に有用で、従来から種々のものが提供されている。
【0003】
例えばレンズ部に連続して握り手がついており、手で握って保持するものや、指でつまむように挟んで保持するものや、さらには指輪のように指に嵌めて使用するもの等、種々のものが提供され、あるいは知られている。
【0004】
実開昭63−77514号公報(特許文献1)及び特開平8−262345号公報(特許文献2)及び特開2000−235801号公報(特許文献3)及び特開2005−31607号公報(特許文献4)及び特開2006−305275号公報(特許文献5)及び実用新案登録第3154119号公報(特許文献6)では、指輪とルーペが連接されて、指輪を嵌めた手の平を観察物にかざした状態で観察可能な提案がなされている。
【0005】
特開2007−108435号公報(特許文献7)では、使用者の指ではなく腕に嵌める腕輪とルーペが連接され、観察物が置かれた面に腕をあてることで、ルーペと観察物との一定の距離が保たれる提案がなされている。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−77514号公報
【特許文献2】特開平8−262345号公報
【特許文献3】特開2000−235801号公報
【特許文献4】特開2005−31607号公報
【特許文献5】特開2006−305275号公報
【特許文献6】実用新案登録第3154119号公報
【特許文献7】特開2007−108435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1から特許文献6までの実施例に於いては、観察物とルーペのレンズとの距離(以下作動距離と称す)及びレンズと観察者の目の距離、このふたつの距離を調整しながらピントが合い希望の大きさに拡大される位置を探りながら使用しなければならない。
【0008】
また、特許文献7の実施例に於いては、作動距離が限られ、レンズをより観察物に近ずけて高倍率を得る使い方が出来ない。
【0009】
ルーペの使用に於いては、前記二つの距離に応じて、倍率および拡大された虚像の出来る位置が変わることは公知の原理である。
【0010】
ひとつの使い方は、作動距離を、観察物側のレンズの焦点距離(以下、前側焦点距離と称す)と概略等しくした場合であり、この場合、観察者の目の位置は、レンズの前記とは反対側の焦点距離(以下、後側焦点距離と称す)より離れていればピントが合うので、一般的な使い方である。
【0011】
二つ目の使い方は、作動距離を前側焦点距離より短くして、レンズを観察物に近ずけ、観察者の目をレンズに近接させて覗き込む使い方であり、前記より高い倍率が得られる。
【0012】
本発明はこれらのふたつの使い方に於いて、使用者が勘で調整していたルーペ位置が、勘に寄らず簡単かつ確実に得られるものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、平均的な手の幅に応じた前側焦点距離のレンズと観察者の指に嵌める指輪部を一体となし、観察者がその指輪部を第二指に嵌めて、第五指を観察物が置かれた面に接触させて手の平を立てることで、レンズが面に正対し、かつ作動距離が概略、前側焦点距離と等しくなるようにした。
【0014】
さらに、本発明は、レンズ部と指輪部を透明な合成樹脂で一体に成型し、低コストで提供可能にした。
【発明の効果】
【0015】
本発明のルーペによれば、従来、レンズ位置と目の位置を動かしながら探っていた、はっきりと見える位置を、ルーペを嵌めた手を観察物が置かれた面に当てるだけで得られ、はるかに簡単でわかりやすい使い方を実現可能である。
【0016】
また、ルーペを第三指あるいは第四指に嵌めれば、目の位置をレンズに近接させるだけで、倍率の高い虚像を、簡単に観察可能である。
【0017】
また、第五指を面に接触させているので、ルーペがぶれることなく、保持している手及び腕の疲労も少ない。
【0018】
また、レンズを手の平側にも手の甲側にも向けることが出来、使用する状況によって、最適な姿勢を提供可能である。
【0019】
また、ルーペとして使用しないときには、レンズを手の甲側に向けて、任意の指に嵌めれば、手の平側に無駄な突起が無いので、保持等の指の動きを邪魔せず、かつ携帯性にも優れる。
【0020】
以上のように、本発明の効果は明らかなものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に於ける使用時のひとつの状態を、使用者の右手前からみた斜視図である。
【図3】本発明の実施例に於ける使用時のもうひとつの状態を、使用者の右手前からみた斜視図である。
【図4】本発明の実施例に於ける使用時のひとつの状態の、使用者の目とレンズと観察物の位置関係を示す側面図である。尚、使用者の目は眼球を模式化している。
【図5】図4の位置関係で、使用時を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。図1から図5までは本発明による実施例を示す。
【0023】
図1に示す通り、ルーペ1はレンズ部10と指輪部11が、レンズ10の光軸10aと指輪部11の指が挿入される方向11aが直交する姿勢で一体に構成されている。
【0024】
図2は使用者の手4の第二指41に指輪部11が嵌められ、第五指43を観察物3が置かれた面5に接触させている。この状態でレンズ部10は面5に正対している。後述するが、この状態では、レンズ部10と面5との距離すなわち作動距離は、レンズ部10の前側焦点距離faに概略等しい。
【0025】
図3は使用者の手4の第三指42に指輪部11が嵌められ、第五指43を観察物3が置かれた面5に接触させている。この状態でレンズ部10は面5に正対している。後述するが、この状態では、レンズ部10と面5との距離すなわち作動距離は、レンズ部10の前側焦点距離faより短くなる。
【0026】
図4は図2に示す作動距離と前側焦点距離faが等しい場合での位置関係を示すが、眼球2に入る光線10bは平行となり、水晶体20によって網膜21に観察物3の観察物像30が結像する。従って眼球2は無限遠にある虚像を見ていることになる。この場合、眼球2はレンズ部10の後側焦点距離fbより遠い位置にあれば良い。尚10aはレンズ部10と眼球2の光軸である。
【0027】
レンズ部10を、両面凸で各面の曲率半径を53mmとし、中心厚さを3.5mmとし、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の屈折率で計算すると前側焦点距離fa及び後側焦点距離fbはそれぞれ約55mmを得る。一般に使われている明視の距離250mmから倍率を計算すれば、約4.5倍のルーペレンズとなる。
【0028】
図5に示す手幅Wは、男性の平均値が約82mm、女性の平均値が約74mmであることが、経済産業省の調査報告で知られている。従ってレンズ部10の前側焦点距離faが50mmから60mmの範囲内にあれば、第二指41に嵌められた状態での作動距離は、前側焦点距離faと概略一致するか、あるいは前側焦点距離faより若干短くなる。
【0029】
使用者の手の大きさによって、作動距離が変わるが、上記の前側焦点距離faであれば、ほとんどの場合、作動距離が前側焦点距離faより大きくなることはない。従って、目の分解能による光学系の焦点深度を考慮すれば、眼球2が後側焦点距離fbより離れた位置で、自然にはっきりとした観察物像30が得られる。
【0030】
図示しないが、ルーペ1を180度まわして、使用者の手4の甲側に位置させても、以上の説明は同様である。また図5に示す通り、いずれの場合でもレンズ部10の主平面10cは、手の平あるいは手の甲の面に直交している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上述べたように、本発明によって、常時、携帯可能で、簡単かつ明快な使い方のルーペが実現可能であり、読書等にルーペの必要ないわゆる老眼の老齢者や、組立製造現場等での検査等、さまざまな使用者に多大な利益をもたらすものである。
【符号の説明】
【0032】
1 ルーペ
10 レンズ部 11 指輪部 11a 指が挿入される方向
10a 光軸 10b 光線
10c 主平面
2 眼球
20 水晶体 21 網膜
3 観察物
30 観察物像
4 使用者の手
41 第二指 42 第三指
43 第五指
5 面
W 手幅
fa 前側焦点距離
fb 後側焦点距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が手に保持しながら該使用者自身の目で覗いて観察物を拡大視するルーペであって、レンズ部と指輪部からなり、該レンズ部の外径の一部と該指輪部の概略環形状の外径の外側の一部に於いて該レンズ部と該指輪部が連接し、かつ該レンズ部のレンズ光軸と該指輪部の指が挿入される方向が互いに直交し、かつ、該使用者の該指に嵌められた状態で、該レンズ部のレンズ主平面が該使用者の手の甲あるいは手の平に直交する方向に位置することを特徴とするルーペ。
【請求項2】
前記レンズ部と前記指輪部は無色透明乃至は薄い色で着色された合成樹脂により一体成型された事を特徴とする請求項1記載のルーペ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109343(P2013−109343A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247853(P2012−247853)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(507237417)
【Fターム(参考)】