説明

レオロジー改質剤

【課題】取り扱い性が良好で、生産性の高いレオロジー改質剤を提供する。
【解決手段】アニオン性芳香族化合物と、カチオン性界面活性剤と、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とを含有する粉末状レオロジー改質剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末状レオロジー改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水と粉体からなるスラリーにおいて粘性等のレオロジー物性を制御するには、水と粉体の比率を調節したり、pH調整剤などにより粒子の分散状態を変えたり、あるいは、吸水性ポリマーを添加して余剰水量を制御したりする等の技術や、水溶性高分子化合物をスラリー系に添加して高分子の絡み合いによる増粘作用を利用する技術が使われてきた。
【0003】
更に、スラリーを製造する際に短時間の混練で十分な粘性を示し、更には材料分離抵抗性が安定で、水粉体比が高い場合や水相と接触しても性状ないしは組成が安定であり、水硬性粉体に対しては凝結遅延がなく硬化物性も優れるスラリーを得ることと目的としたスラリーレオロジー改質剤が提案されている(特許文献1)。また、2種の水溶性低分子化合物を併用するスラリーレオロジー改質剤をキットとして用いることも提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−313536号
【特許文献2】特開2004−189978号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のようなレオロジー改質剤を粉体化して、水硬性物質、骨材、微粒子等のモルタル既調合材料(以下、ドライブレンドという)の配合成分とできれば、取り扱い性や、水硬性組成物調製時の利便性などの点で好ましいものとなる。特許文献1、2においても、二種の化合物を粉末状で用いることに言及されているが、具体的な手法としては、特許文献2において、凍結乾燥により粉末化することが開示されているのみである。しかし、生産性という点で更なる向上が望まれる。
【0006】
水を含む界面活性剤の粉末化には、加熱による噴霧乾燥、ドラム乾燥などが用いられることもあるが、特許文献1、2で用いられる化合物のなかには加熱が好ましくないものがあり、こうした手法が適用しにくい場合がある。
【0007】
本発明の課題は、取り扱い性が良好で、生産性の高い粉末状レオロジー改質剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アニオン性芳香族化合物と、カチオン性界面活性剤と、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とを含有する粉末状レオロジー改質剤に関する。
【0009】
また、本発明は、アニオン性芳香族化合物を含有する粉末状組成物(A)と、カチオン性界面活性剤と比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とを含有する粉末状組成物(B)とを含んで構成されるレオロジー改質剤キット、上記本発明の粉末状レオロジー改質剤を配合してなる水硬性組成物、並びに、粉末状レオロジー改質剤の製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末と、アニオン性芳香族化合物と、カチオン性界面活性剤とを混合する工程を有する粉末状レオロジー改質剤の製造方法であって、
アニオン性芳香族化合物及びカチオン性界面活性剤の少なくとも一方を、液状で混合する粉末状レオロジー改質剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取り扱い性が良好で、生産性の高い粉末状レオロジー改質剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粉末状レオロジー改質剤に用いられるアニオン性芳香族化合物とカチオン性界面活性剤は、レオロジー改質対象物の組成物中で紐状ミセル等の会合体構造を形成し、その構造によりレオロジー改質効果を発現するものである。
【0013】
アニオン性芳香族化合物とカチオン性界面活性剤の組み合わせは、紐状ミセル等の会合体構造を形成するものであれば良く、アニオン性芳香族化合物の粘度100mPa・s以下の水溶液とカチオン性界面活性剤の粘度100mPa・s以下の水溶液とを混合すると、その粘度が混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる性質を有することが好ましい。さらに好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、更に好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍高くすることができることである。ここで、粘度は、20℃の条件でB型粘度計(Cローター[No.表記の場合はNo.3ローター]、1.5r.p.mから12r.p.m)で測定されたものをいう。この場合、前記の粘度挙動は、1.5r.p.m.から12r.p.m.の回転数の何れかで発現されればよい。また、混合はそれぞれの水溶液を50/50の重量比で混合する。アニオン性芳香族化合物の水溶液及びカチオン性界面活性剤の水溶液の濃度は、共に0.01〜50重量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の粉末状レオロジー改質剤に用いられるアニオン性芳香族化合物としては、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、4−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していていも良く、これらを2種以上併用してもよい。ただし、重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)500未満であることが好ましい。
【0015】
アニオン性芳香族化合物は、粉末状のレオロジー改質剤を得る観点から、アニオン性芳香族化合物単独で粉末状の形態のものを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明の粉末状レオロジー改質剤に用いられるカチオン性界面活性剤としては、4級塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、4級塩型のカチオン性界面活性剤としては、構造中に、10から26個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。例えば、アルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、増粘効果の温度安定性の観点から、カチオン性界面活性剤として、上記のアルキル基の炭素数の異なるカチオン性界面活性剤を2種類以上併用することが好ましい。
【0017】
カチオン性界面活性剤は、粉末状のレオロジー改質剤を得る観点から、溶液状の形態のものを後述する無機粉末と混合して担持させて用いることが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる無機粉末は、液状のアニオン性芳香族化合物又は液状のカチオン性界面活性剤を含有(担持)することにより、これらを粉末状にするものである。
【0019】
本発明に用いられる無機粉末は、比表面積が大きいほどアニオン性芳香族化合物又はカチオン性界面活性剤を含有できる容量が大きくなる。比表面積は用いるアニオン性芳香族化合物又はカチオン性界面活性剤の種類や量に応じて決定すれば良いが、アニオン性芳香族化合物又はカチオン性界面活性剤を含有し粉末化する観点から、具体的には比表面積が5000cm2/g以上であり、更に、比表面積10000cm2/g以上、特に、比表面積20000cm2/g以上が好ましい。本発明において、比表面積は、窒素吸着法によるBET表面積測定(島津製作所製 Micromeritics Flowsorb 2300)で測定されたものである。
【0020】
無機粉末としては、高炉スラグ、珪酸カルシウム、シリカフューム等の粉末、等が挙げられる。特にシリカフュームが、粒子径が細かく比表面積が大きく、より多くの液体を担持できる点と、入手しやすい点で好ましい。有機粉末は、水硬性組成物を含むドライブレンドの硬化特性に悪影響を及ぼす点で好ましくない。
【0021】
本発明では、アニオン性芳香族化合物やカチオン性界面活性剤を含んだ液状組成物の合計量(X)と無機粉末の合計量(Y)の重量比は、(X)/(Y)=1/99〜60/40が好ましく、更に、5/95〜50/50が好ましく、特に、10/90〜40/60が、粉末化の面から好ましい。
【0022】
アニオン性芳香族化合物又はカチオン性界面活性剤の粉末化の観点から、無機粉末の比表面積を考慮すると、比表面積が1500000cm2/g以下500000cm2/g超では(X)/(Y)=1/99〜60/40が好ましく、500000cm2/g以下100000cm2/g超では(X)/(Y)=1/99〜20/80が好ましく、100000cm2/g以下30000cm2/g超では(X)/(Y)=1/99〜10/90が好ましく、30000cm2/g以下10000cm2/g超では(X)/(Y)=1/99〜5/95が好ましく、10000cm2/g以下5000cm2/g以上では(X)/(Y)=1/99〜3/97が好ましい。
【0023】
液状組成物の濃度は、粉末品を製造できる範囲内で濃厚な方が、より有効分含有量の高い粉末品とできるので好ましい。
【0024】
本発明に係る粉末化の方法によりレオロジー改質剤に用いられるアニオン性芳香族化合物及び/又はカチオン性界面活性剤を含む液状組成物(水溶液等)を、粉末化することができる。特に、カチオン性界面活性剤は通常液状組成物として入手されるため、本発明に係る粉末化が有用である。すなわち、アニオン性芳香族化合物及びカチオン性界面活性剤の少なくとも一方を、液状、例えば液状組成物(水溶液等)で混合することが好ましい。
【0025】
粉末化は、アニオン性芳香族化合物を含む液状組成物(水溶液等)及び/又はカチオン性界面活性剤を含む液状組成物(水溶液等)を、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末と混合して行うことが好ましい。これら成分の混合に用いる混合機としては、V型混合機、リボンミキサー、ナウターミキサー、スーパーミキサー、等の粉体混合機が挙げられるが、特にスーパーミキサーが均質な粉体が得られることから好ましい。
【0026】
粉末化のための混合方法の一例を挙げれば、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末をスーパーミキサー(300L、オリンピア化工機製)に投入し、100〜500rpmで攪拌しながら、上部から、アニオン性芳香族化合物を含む組成物及びカチオン性界面活性剤を含む組成物の所定量を散布しながら混合する方法が挙げられる。ここでアニオン性芳香族化合物を含む組成物及びカチオン性界面活性剤を含む組成物は、少なくとも一方が液状組成物(水溶液等)である。ミキサーの攪拌条件は、周速150〜1500m/min、更に150〜1200m/min、特に150〜900m/minが、粉体均一化の面と発熱抑制の面から好ましい。また、混合時の前記液状組成物の散布時間は、5〜30分、更に、5〜20分、特に、5〜15分が、粉体均一化の面と発熱抑制の面から好ましい。特に、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とカチオン性界面活性剤を含有する液状組成物とを混合した後、粉末状のアニオン性芳香族化合物を混合することが好ましい。
【0027】
アニオン性芳香族化合物を含む液状組成物(水溶液等)及びカチオン性界面活性剤を含む液状組成物(水溶液等)の一方のみを散布する場合は、他方の成分は粉末状で用いられ、得られた粉末化物に、更に当該他方の成分(粉末状)や消泡剤(粉末状)などを加えて、混合することで、本発明の粉末状レオロジー改質剤が得ることができる。
【0028】
粉末化された本発明のレオロジー改質剤は、水硬性物質、骨材、微粒子等を含むモルタル既調合材料(ドライブレンド)に配合する成分として使用できる。ドライブレンドを得る際の成分の混合には、上記の混合機、好ましくはスーパーミキサーを用いることができる。ドライブレンドの用途としては、建築物の外壁、内壁、下地モルタル、吹きつけモルタル、注入材、補修材、セルフレベリング材等が挙げられる。
【0029】
本発明のレオロジー改質剤は、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末100重量部に対して、アニオン性芳香族化合物を0.1〜30重量部(有効分換算)、更に1〜10重量部、特に1〜7重量部、カチオン性界面活性剤を0.1〜30重量部(有効分換算)、更に1〜10重量部、特に1〜7重量部含有することが好ましい。
【0030】
本発明のレオロジー改質剤は、水粉体の重量比(水/粉体)が30/100〜1000/100のスラリーに好ましく適用できる。このスラリーを製造する際の粉体としては、粉体として水和反応により硬化する物性を有する水硬性物質を用いた水硬性組成物とすることができる。例えばセメントや石膏が挙げられる。また、フィラーも用いることができ、例えば炭酸カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、ベントナイト、クレー(含水珪酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物:カオリナイト、ハロサイト等)が挙げられる。これらの粉体は単独でも、混合されたものでもよい。目的のスラリーの物性に、悪影響を与えないフィラーを、本発明に係るレオロジー改質剤の無機粉体として用いることが好ましい。更に、必要に応じてこれらの粉体に骨材として砂や砂利、及びこれらの混合物が添加されてもよい。また、酸化チタン等の無機酸化物系粉体のスラリーや土に適用することもできる。
【0031】
また、本発明のレオロジー改質剤においては、アニオン性芳香族化合物とカチオン性界面活性剤のスラリー中の有効分濃度は、目的とする増粘の程度に応じて適宜決めればよいが、本発明のレオロジー改質剤を、予め調製されたスラリーに添加する、スラリー製造時に添加する、等の方法により、本発明の改質剤を含有するスラリーが得られる。また、アニオン性芳香族化合物とカチオン性界面活性剤との有効分の合計がスラリーの水相中の有効分濃度で0.01〜20重量%、更に0.1〜15重量%、より更に0.1〜10重量%、特に0.3〜10重量%になるように用いることが好ましい。
【0032】
本発明のレオロジー改質剤を含有する水硬性組成物は分散剤を含有しても良い。分散剤は、減水剤としてリグニンスルホン酸塩及びその誘導体、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、高性能減水剤及び高性能AE減水剤として、ナフタレン系(花王(株)製:マイテイ150)、メラミン系(花王(株)製:マイテイ150V−2)、ポリカルボン酸系(花王(株)製:マイテイ3000、NMB社製:レオビルドSP、日本触媒社製:アクアロックFC600、アクアロックFC900)、リン酸系、アニオン界面活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤(花王(株)製:ポイズシリーズ)等が挙げられる。その中でも、ポリカルボン酸系高性能減水剤、リン酸系高性能減水剤及びポリカルボン酸型界面活性剤がスラリーの流動性と粘性を両立出来るという意味で、好適である。
【0033】
本発明のレオロジー改質剤を含有する水硬性組成物における分散剤の含有量は、一般に水硬性粉体に対して有効成分で0.01〜5重量%、更に0.05〜3重量%が好ましい。
【0034】
本発明のレオロジー改質剤と他の既存の増粘剤とを併用して用いることができる。他の既存の増粘剤としては、例えばセルロース誘導体、ポリアクリル系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリビニールアルコール、ガム系多糖類、微生物発酵多糖類等が挙げられる。
【0035】
本発明のレオロジー改質剤と消泡剤とを併用して用いることができる。消泡剤を併用することにより、例えばレオロジー改質剤を含有する水硬性組成物中の空気量を調整することができる。また、消泡剤は、レオロジー改質剤の粉末中に含有することができる。消泡剤の含有量は用途により任意に調整できる。消泡剤としては、例えば、トリブチルフォスフェート、プルロニック系消泡剤、シリコーン系消泡剤、アセチレングリコール誘導体などが用いられる。
【0036】
本発明のレオロジー改質剤を含有する水硬性組成物は、本剤の性能に支障がなければ他の成分、例えば、AE剤、遅延剤、早強剤、促進剤、気泡剤、発泡剤、ひび割れ低減剤、膨張剤等を含有していてよい。
【0037】
本発明のレオロジー改質剤と水硬性粉体を含有する組成物を硬化してなる硬化組成物は、初期硬化物性に優れる。更に、本発明のレオロジー改質剤を含有する水硬性組成物に骨材を含有することができる。この水硬性組成物が硬化されてなる硬化組成物は初期硬化物性に優れ、特に構造物等に好適に使用される。
【0038】
骨材としては細骨材や粗骨材が使用でき、特に限定されるものではないが、吸水率が低くて骨材強度が高いものが好ましい。粗骨材としては、川、陸、山、海、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材としては、川、陸、山、海、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。
【0039】
本発明によれば、上記アニオン性芳香族化合物と、上記比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末と、上記カチオン性界面活性剤とから、アニオン性芳香族化合物を含有する粉末状組成物(A)と、カチオン性界面活性剤と比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とを含有する粉末状組成物(B)とを含んで構成されるレオロジー改質剤キットを提供することができる。粉末状組成物(A)及び/又は粉末状組成物(B)には、上記した任意の成分を適宜配合することができる。このようなレオロジー改質剤キットから、本発明の粉末状レオロジー改質剤を得ることができる。
【実施例】
【0040】
実施例1
300Lスーパーミキサー(オリンピア化工機製)に、シリカフューム(SF−CD、比表面積203350cm2/g)40kg仕込み、200rpmで攪拌しながら、カチオン性界面活性剤水溶液(アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(炭素数16のアルキルと炭素数18のアルキルの等モル混合物)、有効分濃度29重量%)7.1kgを園芸用噴霧機で6分かけて投入、投入後1分間混合し、更に、アニオン性芳香族化合物としてp−トルエンスルホン酸ナトリウムの粉末1.4kgと、消泡剤(シリコーン系消泡剤、主成分:ジメチルポリシロキサン)0.2kgを投入して、200rpmで2分間混合した。混合後の1mmメッシュの振動振るい機で通過させ、粉末状レオロジー改質剤を得た。
【0041】
さらに表1に示した無機粉末について上記製造例1と同様にして粉末状レオロジー改質剤を製造した。ただし、カチオン性界面活性剤水溶液の量は一定とし、無機粉末の量を調整して、カチオン性界面活性剤水溶液(X)/無機粉末(Y)重量比を表1のように変更した。
【0042】
得られた粉末状レオロジー改質剤について、乾いた粉末状であるものを「1点」、湿った粉末状であるものを「2点」、直径2mm以上の湿った粒が生じるものを「3点」とした。結果を表1に示す。なお、表1中「−」は試験しなかったことを意味する。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から、レオロジー改質剤の粉末化について、無機粉末の比表面積が大きいほど、乾いた粉末状の改質剤を得るためのカチオン界面活性剤水溶液の使用量を多くでき、得られる粉末状レオロジー改質剤中の有効分をより多くできることがわかる。
【0045】
実施例2
無機粉末としてシリカフューム(SF−CD、比表面積203350cm2/g)を用い、カチオン性界面活性剤水溶液(X)/無機粉末(Y)重量比を15/85として、実施例1と同様にして、粉末状レオロジー改質剤を調製した。この粉末状レオロジー改質剤を用い、スラリーのレオロジー特性に対する評価を行った。
【0046】
スラリーの配合は、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製)400g、粉末状レオロジー改質剤の表2に示す量をドライブレンドし、水道水400gを加えてハンドミキサーで60秒攪拌して調製した。粉末状レオロジー改質剤の添加量は水に対する量で計算した。スラリー試験は室温23℃で行い、スラリー温度が20℃になるように練り水の温度を調整した。
【0047】
スラリーの粘度測定は、ビスコテスターVT−04E(リオン製)を用い、ローターNo.1、回転数62.5rpm、温度20℃で測定した。また、空気量は、練り上がったスラリーの密度から計算で求めた。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
*1:水に対する重量%
【0050】
表2から、本発明のレオロジー改質剤をスラリーに添加することにより、スラリーに粘性を付与できることがわかる。
【0051】
実施例3
無機粉末としてシリカフューム(SF−CD、比表面積203350cm2/g)を用い、カチオン性界面活性剤水溶液(X)/無機粉末(Y)重量比を15/85として、実施例1と同様にして、粉末状レオロジー改質剤を調製した。ただし消泡剤の添加量は、表3に示す量となるように調整した。消泡剤の添加量は粉末状レオロジー改質剤に対する量で計算した。この粉末状レオロジー改質剤を用い、スラリーのレオロジー特性に対する評価を実施例2と同様に行った。なお、粉末状レオロジー改質剤の添加量は水に対して13.4重量%で一定とした。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
*1:水に対する重量%
*2:粉末状レオロジー改質剤に対する重量%
【0054】
表3から、本発明のレオロジー改質剤に含有する消泡剤の量を調整することで、スラリー中の空気量を調整できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性芳香族化合物と、カチオン性界面活性剤と、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とを含有する粉末状レオロジー改質剤。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤が前記無機粉末に担持されている請求項1記載の粉末状レオロジー改質剤。
【請求項3】
無機粉末がシリカフュームである請求項1記載の粉末状レオロジー改質剤。
【請求項4】
アニオン性芳香族化合物を含有する粉末状組成物(A)と、比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とカチオン性界面活性剤とを含有する粉末状組成物(B)とを含んで構成されるレオロジー改質剤キット。
【請求項5】
水硬性粉体を含有するスラリーに、請求項1〜3の何れか1項記載の粉末状レオロジー改質剤を配合してなる水硬性組成物。
【請求項6】
比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末と、アニオン性芳香族化合物と、カチオン性界面活性剤とを混合する工程を有する粉末状レオロジー改質剤の製造方法であって、
アニオン性芳香族化合物及びカチオン性界面活性剤の少なくとも一方を、液状で混合する粉末状レオロジー改質剤の製造方法。
【請求項7】
比表面積が5000cm2/g以上の無機粉末とカチオン性界面活性剤を含有する液状組成物とを混合した後、粉末状のアニオン性芳香族化合物を混合する、請求項6記載の粉末状レオロジー改質剤の製造方法。

【公開番号】特開2007−321064(P2007−321064A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153175(P2006−153175)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】