説明

レジネートペースト

【課題】 耐熱性の高い導体膜を形成することのできるレジネートペーストを提供する。
【解決手段】 内部電極を構成する導体層が、Pt/Auモル比が十分に大きく、且つ、Ceレジネートを含むレジネートペーストから生成されることから、膜厚が極めて薄くされていても、欠陥が少なく高い被覆率を有する特徴がある。このような特徴を有するのは、主な導体成分としてAuに加えて融点が著しく高いPtが十分に多く含まれていると共に、セラミック成分であるCeが含まれているためである。耐熱性が高められることにより、導体層14自体の形成時やその後の加熱処理工程において高温に曝されても、金属成分の拡散や粒成長等が抑制され延いては表面張力の作用による厚み方向への伸長や面方向の収縮すなわち過焼結が抑制されるので、導体層の連続性や被覆率が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機化合物を含むレジネートペーストの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数層の誘電体層および導体層が交互に積層された積層セラミックコンデンサや、複数層の圧電性セラミックスから成る基材層および導体層が交互に積層された積層圧電素子等の電子部品が知られている。これらの電子部品において、導体層は、一般に、誘電体層或いは基材層(以下、特に区別しないときはセラミック層という)の一面に導電ペーストを塗布し、焼成処理を施すことによって形成される。この導電ペーストは、例えば、Pt,Pd,Ag-Pd等の導体粉末と、必要に応じて添加される無機結合剤、ガラスフリット、フィラー等の種々の添加剤粉末とを、有機媒質(ビヒクル)に分散させることにより調製される。
【0003】
上記のような積層型のセラミック電子部品の製造方法としては、大まかに分けて2つの方法が挙げられる。一つは、セラミック層を構成するためのグリーンシート上に導体ペーストを塗布して焼成処理を施し、焼成後にグリーンシートを積層して導体ペーストを塗布し焼成する工程を繰り返して、導体層の一層毎に焼成処理を施すものである。他の一つは、複数枚のグリーンシートにそれぞれ導体ペーストを塗布して積層し、一括して焼成処理を施すものである。前者においては、内部電極を構成する導体層に繰り返し熱処理が施されることになる。後者においては、内部電極を形成するための焼成処理は1回であるが、外部電極を設ける際に再び焼成処理が施される。そのため、何れにしても、繰返し熱処理に対する耐性が要求される。すなわち、熱処理後にも、例えば抵抗値、膜厚、緻密性、セラミック層への付着強度が維持されることが望まれ、従来から耐熱性を高めるための提案が種々為されている。
【0004】
例えば、PZT系圧電セラミックスの導体層を形成するためのAg-Pd粉末を導体成分として含む導電ペーストにおいて、平均粒径が10〜100(nm)の希土類酸化物粉末を、好ましくは導体粉末100重量部に対して0.1〜3重量部程度の割合で添加するものがある(例えば特許文献1を参照。)。上記のような微細な希土類酸化物粉末が含まれていると、導体成分として低融点のAg-Pd粉末が用いられても導体層の耐熱性が高められる。
【0005】
また、積層セラミックコンデンサの内部電極形成に用いられるPd粉末を導体成分として含む導電ペーストにおいて、Pdと複合酸化物を形成する元素の化合物をPd 100原子部に対して0.03〜11原子部の割合で含有するものがある(例えば特許文献2を参照。)。上記元素は、Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy等であり、化合物としては水酸化物、炭酸塩、酸化物、ルテニウム複合酸化物、有機金属化合物が挙げられている。これらの元素の水酸化物や炭酸塩等は導体層を形成するための加熱処理の際に分解して活性な金属となり、Pd粉末と反応してその表面に極めて薄いPd複合酸化物層を形成するので、Pd粉末の酸化が抑制され延いては耐熱性が高められるものと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−198688号公報
【特許文献2】特開平06−012910号公報
【特許文献3】特開平04−246477号公報
【特許文献4】特開平08−169788号公報
【特許文献5】特表2003−508331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような積層型セラミック部品において、一層の小型化のために内部電極の薄膜化が求められている。前述した金属粉末を導体成分として含む導電ペーストでは、導体層の厚さ寸法が原料中の金属粉末等の粒径に依存することから、その原料粉末を細粒化して薄膜化への対応が行われている。しかしながら、原料粉末が微細になるほど凝集が生じ易くなると共に、原料粉末中から粗粒粉を除去することも困難になる。金属粉末を導体成分として含む金属粉末ペーストでは形成し得る膜厚はその金属粉末の粒径に依存して少なくとも1(μm)以上、通常は4.5(μm)以上であり、これよりも薄くすることは困難である。しかも、膜厚を原料粒径に近づけるほど膜表面に欠陥が生じ易くなり、緻密な膜を得ることが困難になる。
【0008】
これに対して、緻密な薄い導体層を形成するために、導体成分としてレジネートを含む導電ペーストを用いることが行われている。レジネートとは、有機金属化合物(Metal Orgnic Compound)を含む液状またはペースト状物で、加熱されることにより有機化合物が消失すると、高純度で極めて薄い金属膜が生成されるものである。このようなレジネートを用いると、例えば0.1〜0.6(μm)程度の膜厚の金属膜が得られる。また、レジネートから生成された膜は金属粉末ペーストから生成された膜に比較して緻密性に優る利点もある。
【0009】
しかしながら、レジネートから生成した導体層は上記のように極めて薄いことから、金属粉末を用いた導体層に比較して耐熱性が劣る。そのため、例えば、900(℃)以上の温度に曝すことができないので、前述したような繰り返し熱処理が与えられる積層型セラミック部品の電極形成に用いると、膜の緻密度が低くなって抵抗値が高くなり、甚だしい場合は、島状に分膜して導通が得られなくなる。一般に、耐熱性が要求される用途ではAuに代えてPtやPt/Pd等の耐熱性の高い導体が用いられるが、これらを導体成分とするレジネートも電極形成に十分な耐熱性を有しない。レジネートの耐熱特性を高める試みも従来から種々の目的で行われているが、上述した積層型セラミック部品の電極形成に用いるためには、少なくとも900(℃)、好ましくは1100(℃)の焼成にも耐えることが望まれ、これを満足するものは未だ知られていない。
【0010】
例えば、Au 5.0〜25.0(wt%)、Pt 1.0〜10.0(wt%)、Pd 0.5〜5.0(wt%)、Rh 0.02〜1.0(wt%)、Cr 0.02〜1.0(wt%)、Bi 0.02〜2.0(wt%)の割合となる各金属の有機金属化合物(レジネート)と、有機ビヒクルとを含む有機金属導体組成物、或いは、これにAg 5.0(wt%)以下、V 1.0(wt%)以下を更に含む有機金属導体組成物が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。この有機金属導体組成物は、Auレジネートから形成した導体膜にハンダを用いる際にその導体膜が消失することを抑制し、延いてはハンダ付けを可能とするもので、セラミック基板表面に電子回路を形成するために用いられる。Pt、Pdを含む組成とすることで導体膜の消失が抑制されているが、耐熱性は未だ不十分で、例えば製造過程における焼成温度は900(℃)以下に限定されていた。
【0011】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、耐熱性の高い導体膜を形成することのできるレジネートペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、導電性を有する薄膜を形成するためのレジネートペーストであって、(a)Auレジネートと、(b)M1/Auモル比が100/100〜300/100の範囲内の割合のPtおよびPdの少なくとも一方の金属M1のレジネートと、(c)Ce,Zr,Yの中から選択された少なくとも一種の金属M2のレジネートとを、含むことにある。
【発明の効果】
【0013】
このようにすれば、本発明のレジネートペーストには、金属M1すなわちPt,PdのレジネートがM1/Auモル比で100/100〜300/100の範囲内の割合で含まれるが、Auの融点が1064(℃)であるのに対し、Ptの融点は1770(℃)、Pdの融点は1550(℃)であって、Auに比べて著しく高いので、導体成分の一部がPt,Pdで代替されると、Auが主な導体成分である場合に比較して生成される合金の融点が高くなる。しかも、レジネートペーストには金属M2すなわちCe,Zr,Yも含まれるが、これらはセラミックスの構成成分であることから、導体膜の生成時にセラミック化し、その導体膜に一層の耐熱性を与えるものと考えられる。これらにより、レジネートペーストから生成される導体膜の耐熱性が高められ、延いては、高温焼成が可能で膜厚が薄くとも連続性の高い緻密な導体膜が得られる。
【0014】
上記金属M1は導電性を確保しつつ耐熱性を高める作用を有するが、十分な耐熱性を得るためにはAuの同量以上含まれることが必須である。また、含有量がAuの3倍を越えると印刷性が悪くなって乾燥時にクラックが発生し易くなる等、膜質が悪化する。そのため、金属M1のレジネートは、M1/Auモル比で100/100〜300/100の範囲内であることが必須である。なお、ここで「膜質」とは、導体膜の品質を定性的に表したもので、クラックが無く被覆率(すなわち導体膜がそれが設けられた基材を覆っている割合)が高いほど膜質がよい。
【0015】
また、レジネートペーストから生成される導体膜の耐熱性を十分に高めるためには、上記のように導体成分の一部を金属M1で置き換えるだけでは不十分で、金属M2のレジネートも添加することが必須である。上述したように金属M1のレジネートの量はM1/Auモル比で300/100以下に留める必要があるが、この範囲の添加量では生成される導体膜の耐熱性を十分に高めることができない。そのため、これに加えて印刷性を悪化させることなく耐熱性を高め得る金属M2を添加する必要がある。なお、上記金属M1および金属M2のレジネートはそれぞれ2種類以上のレジネートの混合物であってもよい。
【0016】
因みに、金属レジネートの特性を改善する試みは従来から種々行われてきており、例えば、貴金属レジネート10〜80(wt%)、卑金属レジネート1〜30(wt%)、有機結合剤0〜30(wt%)、有機溶剤0〜30(wt%)、誘電性セラミック粉末0.5〜20(wt%)から成る貴金属含有レジネートペーストが提案されている(例えば前記特許文献4を参照。)。上記貴金属レジネートを構成する貴金属としては、Pd,Ag,Au,Pt,Rhが挙げられており、上記卑金属レジネートを構成する卑金属としては、Bi,Cr,Zr,Ce,Sn,Tiが挙げられ、貴金属とセラミックスの重量比は1:1〜25:1の範囲が好ましいものとされている。また、誘電性セラミックスとしては、バリウムチタネート、ストロンチウムチタネート、カルシウムチタネートが挙げられている。このレジネートペーストはセラミック多層コンデンサの内部電極形成に用いられるもので、従来から知られる導体ペーストでは高価な貴金属が用いられるため製造コストが高くなると共に、セラミック層厚みが20(μm)程度で電極厚みが1(μm)以上になることが小型化を妨げていたことから、その対策として提案されたものである。しかしながら、このペーストは上記のようにセラミック粉末を含むことから、その粒径が形成可能な電極厚みを制限するので、その実施例にも記載されているように1(μm)を僅かに下回る程度の厚さ寸法が限界であり、レジネート本来の特性を活かした薄膜は得られない。
【0017】
また、金属を6〜16(wt%)含む1種以上の有機金属化合物と、2種以上の非貴金属化合物の融剤と、有機または水性溶媒とを含む貴金属の装飾を施すための光輝貴金属配合物が提案されている(例えば前記特許文献5を参照。)。上記融剤は、例えば、クロム化合物をCr2O3換算で0.3〜1.0(wt%)、コバルト化合物をCoO換算で0.2〜0.7(wt%)それぞれ含み、CoOに対するCr2O3の重量比が1.0〜2.3の範囲内のものである。この光輝貴金属配合物は、金または金を主成分とする合金の融点よりも高温で熱処理でき且つ貴金属または貴金属合金の自然な色を持つ輝きのある金属の装飾を施すためのもので、付加的な融剤成分として、セリウム、ジルコニウム、或いはこれらの化合物等を含み得ることも記載されている。しかしながら、この光輝貴金属配合物においても、セリウム等の融剤は粉末で添加されるため、前記特許文献4に記載されたペーストと同様な問題がある。
【0018】
ここで、好適には、前記レジネートペーストは、Rhレジネートを更に含むものである。このようにすれば、生成される導体膜の硬度が高められるので、導体膜が破損し難くなる利点がある。
【0019】
また、好適には、前記レジネートペーストは、Bi,Ag,Cuの中から選択された少なくとも一種の金属M3のレジネートを更に含むものである。このようにすれば、これらは膜の欠陥を抑制すると共に膜の連続性を高める作用を有するので、一層薄く且つ欠陥の少ない導体膜が得られる。
【0020】
また、好適には、前記レジネートペーストは、M2/(Au+M1)モル比が2/100〜20/100の範囲内の割合である。このようにすれば、導体膜の耐熱性を高めるための必須成分である金属M2が適度な範囲で含まれることから、導体膜の欠陥が抑制されて被覆率や膜の連続性が一層高められる利点がある。金属M2の量は、耐熱性および印刷性に影響する。上記モル比が2/100以上であれば極めて高い耐熱性が得られるので、焼成過程および使用中における導体膜の品質低下が抑制される。一方、上記モル比が20/100以下であれば極めて高い印刷性が得られると共に脱バイ不良や製膜障害も生じ難いので、印刷膜の欠陥に起因する導体膜の品質低下が抑制される。
【0021】
なお、前記金属M2のレジネートおよび金属M3のレジネートはそれぞれ2種類以上のレジネートの混合物であってもよい。
【0022】
また、好適には、前記金属M1はPtである。PtおよびPdの何れも導電性を保ちつつ耐熱性を高め得るものであるが、例えば、圧電体の電極形成用途ではPdを含まない方が好ましいことから、Ptが好ましい。Pdが含まれていると分極性能が低下する場合がある。
【0023】
また、好適には、前記金属M2はCeである。Ce,Zr,Yの何れも印刷性を保ちながら耐熱性を高め得るものであるが、これらの中でもCeを用いると、理由は定かでは無いが、比較的広い膜厚の範囲で欠陥の少ない導体膜を得ることができる。焼成温度次第でもあるが、例えば950(℃)程度までの比較的低い温度であれば、乾燥厚みで5〜25(μm)程度、焼成後で0.1〜0.6(μm)程度の範囲であれば、連続性が高く緻密な導体膜が得られる。
【0024】
なお、本発明のレジネートペーストは、前記金属M1、M2の種類や割合等により異なるが、例えば1200(℃)程度の高温で焼成可能である。また、形成可能な導体膜の厚さ寸法は例えば0.1〜1.0(μm)の範囲内である。すなわち、本発明によれば、従来では実現不可能であった焼成温度および膜厚の導体膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例のレジネートペーストが内部電極形成に適用された積層型圧電素子の構成例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0027】
図1は、内部電極形成に本発明の一実施例のレジネートペーストが適用された積層型圧電素子10の概略構成を説明するための断面図である。図1において、圧電素子10は、圧電性セラミックス例えばPZTから成る複数枚の基材層12と、その基材層12の層間に設けられた複数の導体層14と、端面に設けられた外部電極16と、表面18および裏面20にそれぞれ備えられた表面電極22とを備えている。なお、表面電極22は必要に応じて設けられるもので、必須のものではない。
【0028】
上記の圧電素子10は、例えば、基材層12の厚さ寸法が1(μm)程度、導体層14の厚さ寸法が0.5(μm)程度と何れも極めて薄いもので、素子全体の厚さ寸法も例えば10(μm)以下と極めて薄くなっている。しかしながら、導体層14は、このような薄い膜厚であるにも拘わらず、欠陥が少なく、膜の連続性や緻密性に優れており、例えば、90(%)以上の被覆率で形成されている。
【0029】
上記の圧電素子10は、例えば以下のようにして製造される。すなわち、まず、基材層12を構成するためのPZT等から成るグリーンシートをシート成形法等の適宜の方法で製造する。次いで、導体層14を構成するための導電ペーストをそのグリーンシートに予め定められた形状および厚さ寸法で塗布する。次いで、それぞれ導電ペーストが塗布されたグリーンシートを積層・圧着する。次いで、この積層体を基材および導電ペーストに応じて予め定められた所定の焼成温度で例えば電気炉を用いて焼成する。焼成処理は、PZTから成る基材が用いられる場合にはPZT雰囲気とすることが好ましい。焼成処理温度は基材層12の構成材料に応じて適宜定められるが、例えば900〜1200(℃)の範囲内である。焼成処理後、前記外部電極16を構成するための導体ペーストを端面に塗布して更に焼成処理を施す。これにより、前記圧電素子10が得られる。
【0030】
上記の導電ペーストは、例えば、PtおよびAuを主な導体成分とするPt/Auレジネートと、Ceレジネートと、Bi,Ag,Rh,およびCuの微量成分のレジネートとを含むもので、ターピネオール等の溶剤が加えられることで適宜の粘度に調製されたレジネートペーストである。上記PtおよびAuのレジネートは、例えば、Pt/Auモル比で100/100〜300/100程度の範囲内の割合で含まれる。また、Ceレジネートは、例えば、Ce/(Au+Pt)モル比で2/100〜12/100程度(重量比で1.4/100〜8.6/100程度)の範囲内の割合で含まれる。
【0031】
このように、本実施例の圧電素子10は、内部電極を構成する導体層14が、Pt/Auモル比が十分に大きく、且つ、Ceレジネートを含むレジネートペーストから生成されることから、前述したように膜厚が極めて薄くされていても、欠陥が少なく高い被覆率を有する特徴がある。このような特徴を有するのは、主な導体成分としてAuに加えて融点が著しく高いPtが十分に多く、すなわち、モル比でAuと同程度からその3倍程度までの割合で含まれていると共に、セラミック成分であるCeが含まれているためであると考えられる。耐熱性が高められることにより、導体層14自体の形成時やその後の加熱処理工程において高温に曝されても、金属成分の拡散や粒成長等が抑制され延いては表面張力の作用による厚み方向への伸長や面方向の収縮すなわち過焼結が抑制されるので、導体層14の連続性や被覆率が保たれるものと考えられる。
【0032】
しかも、上記レジネートペーストは、Bi,Ag,Rh,Cuの微量成分レジネートを含むことから、硬度が十分に高く、一層緻密で連続性の高い導体膜が得られる。
【0033】
また、本実施例によれば、レジネートペーストは、Ce/(Au+Pt)モル比が2/100〜12/100の範囲内の割合であることから、十分に含有量が多いので高い耐熱性を有すると共に、含有量が適度な量に留められているため高い印刷性が得られる利点がある。すなわち、印刷膜の欠陥に起因する導体膜14の品質低下が生じ難い利点がある。
【0034】
以下、上記のレジネートペーストの最適な組成を検討するために、組成を種々変更して耐熱性を評価した結果を説明する。以下の評価は、用意したレジネートペーストをZrO2基板に塗布し、乾燥および焼成を施して、焼成膜観察および膜厚測定により行った。ペースト塗布は、SUS165-45メッシュを用いてスクリーン印刷により、所望の乾燥膜厚が得られるまで繰り返し印刷して積層し、印刷後、室温で5分間のレベリングを行った。積層に際しては、各層の印刷後に70(℃)で10分間の乾燥を施した。また、焼成は電気炉を用いて275(℃/Hr)の速度で昇温し、950〜1200(℃)で1(Hr)保持した後、自然冷却した。焼成膜観察は、光学顕微鏡およびSEMにより行い、膜質を5段階(数字が小さい方が良好)で示した。膜質は連続性や被覆率が高いほど良い。また、膜厚は、(株)東京精密製の表面粗さ計「surfcom A480」(「surfcom」は同社の登録商標)で測定した。
【0035】
下記の表1は、AuレジネートとPtレジネートの混合されたレジネートペーストにおいて、Pt/Auモル比を20/100〜200/100の範囲で変更して、乾燥膜厚および焼成膜厚を測定すると共に膜質を評価した結果を纏めたものである。なお、膜厚は例えば10点程度測定して算出した平均値によった。以下の各表においても同様である。「その他レジネート」は、上記用途において耐化学性や接着性を高める目的で微量添加されているレジネートで、Rhはレジネート中の金属成分がAuの100重量部に対して1重量部の割合となるように添加されている。表1中「その他レジネート」の「○」は量は特に示さないが、ペースト中に含まれていることを示したもので、Si,Fe,Bi,Cu,Zn,Ni,Agの各成分の量は適宜定められている。また、「その他レジネート」の各成分の量はNo.1〜3相互に同一である。
【0036】
【表1】

【0037】
上記の評価結果によれば、Ptレジネートの割合を増すことで耐熱性が向上する傾向は認められるが、膜質は3以上に留まる。Pt/Auモル比を200/100よりも大きくしても、高い効果は期待できず、その反面で、印刷性はPtレジネートが多くなるほど劣る傾向にあるので、Pt量を多くするだけでは十分な耐熱性を得ることは困難である。
【0038】
下記の表2は、上記表1のNo.2に対してZr,Ce,Ti,Yの各レジネートを、Au+Pt合計100重量部に対して金属成分量で1.6重量部、モル比でAu+Pt合計100モルに対して2.2〜6.6モルの割合で添加したものである。「その他レジネート」の添加量はNo.2と同一である。また、焼成温度は前記表1に示した試験と同様1100(℃)である。Zr,Ce,Yレジネートを添加したNo.4,5,7では、膜質が2〜3に改善する効果が認められる。Tiレジネートを添加したNo.6は膜質が改善しなかった。未だ不十分な結果ではあるが、Ce添加の場合が最も良く、膜質2が得られた。これらは酸化すると耐熱性の高いセラミックスになる成分であるため、生成したセラミックスによって膜の耐熱性が高められたものと考えられる。
【0039】
【表2】

【0040】
また、下記の表3は、上記表2において最も高い効果の得られたCeレジネートの添加量を評価した結果である。No.6は表2と同一仕様のものを再掲した。この試験結果によれば、CeレジネートをCe/(Au+Pt)重量比で4.0/100、Au+Ptに対するモル比で5.6/100添加したときに最もよい膜質1が得られ、それよりも少ない1.6/100(モル比で2.2/100)の場合も、それよりも多い6.4/100(モル比で9.0/100)の場合も利用可能な程度ではあるものの4.0/100(モル比で5.6/100)に比べて膜質が低い結果であった。この結果によれば、少なくともPt/Au=150/100の調合仕様において、Ceの最適添加量が4.0/100(モル比で5.6/100)近傍にあり、それよりも添加量が少なくても多くても添加効果が低下するものと考えられる。
【0041】
【表3】

【0042】
また、下記の表4は、前記表2に示されるNo.4のZrレジネートを用いた場合についても、Ceレジネートの場合と同様に添加量を評価した結果である。No.4は表2と同一仕様のものを再掲した。この評価においても、「その他レジネート」の各成分の量はNo.4と同一である。この試験結果によれば、ZrレジネートをZr/(Au+Pt)重量比で4.0/100、Au+Ptに対するモル比で8.6/100添加したときに最もよい膜質2が得られ、それよりも少ない1.6/100(モル比で3.5/100)の場合も、それよりも多い6.4/100(モル比で13.8/100)の場合も4.0/100(モル比で8.6/100)に比べて膜質が低い結果であった。この結果によれば、少なくともPt/Au=150/100の調合仕様において、Zrの最適添加量が4.0/100(モル比で8.6/100)近傍にあり、添加量が過少でも過剰でも十分な添加効果が得られないものと考えられる。
【0043】
【表4】

【0044】
また、下記の表5は、前記表2に示されるNo.7のYレジネートを用いた場合についても、Ceレジネート、Zrレジネートの場合と同様に添加量を評価した結果である。No.7は表2と同一仕様のものを再掲した。「その他レジネート」の各成分の量はこの評価においてもNo.7と全て同一である。この試験結果によれば、YレジネートをY/(Au+Pt)重量比で4.0/100、Au+Ptに対するモル比で8.9/100添加したときに最もよい膜質2が得られ、それよりも少ない1.6/100(モル比で3.5/100)の場合も、それよりも多い6.4/100(モル比で14.2/100)の場合も4.0/100(モル比で8.9/100)に比べて膜質が低い結果であった。この結果によれば、少なくともPt/Au=150/100の調合仕様において、Yの最適添加量が4.0/100(モル比で8.9/100)近傍にあり、添加量が過少でも過剰でも十分な添加効果が得られないものと考えられる。
【0045】
【表5】

【0046】
下記の表6は、前記表2に示した評価結果において一応の効果を得ることができたZrレジネートの添加系No.4において、乾燥膜厚を5.2〜32.0(μm)の間で変化させて膜質を評価したものである。各乾燥膜厚は、薄い方から順に1層、2層、3層、4層の積層により実現した。この評価では膜厚のみを変化させ、各成分の添加量等は全てNo.4と同一である。
【0047】
【表6】

【0048】
上記表6の評価結果によれば、少なくともZr/(Au+Pt)重量比=1.6/100(モル比で3.5/100)のZrレジネートの添加によって膜質の改善効果が得られるが、このような効果が得られる膜厚は限定的である。14(μm)程度の乾燥膜厚で最も良い膜質3が得られるものの、それよりも薄い場合は膜が島状になり、一方、厚い場合は焼成時に有機成分が消失する際にクラックが生じ易い。
【0049】
上記のような膜質の膜厚依存性は、レジネートペーストを用いた導体膜形成で一般に認められることであり、図示はしないが、膜厚を横軸に、被覆率を縦軸にとってグラフ化すると、上に凸の曲線が得られる。すなわち、最適厚みより薄くても厚くても被覆率が低下し、良好な膜質が得られない。
【0050】
下記の表7は、膜質の改善効果が最も高い結果が得られたCeレジネート添加系において、前記No.8をベースにして、焼成温度と膜厚を種々変更して膜質を評価したものである。焼成温度は950〜1160(℃)の間で変化させ、膜厚は乾燥膜厚で5〜39(μm)の間で変化させた。この評価でも、印刷層数を変化させて膜厚を変化させた他は、各成分の添加量等、全てNo.8と同一である。焼成温度が低い方が膜質が良く(すなわち被覆率が高い)、焼成温度が高くなると膜質が悪化する傾向があるが、また、焼成温度が高くなるほど、最適厚みが厚くなる傾向が認められる。例えば、950(℃)の場合は、乾燥膜厚で11〜21(μm)のときに膜質1、5(μm)または25(μm)のときに膜質2であるが、1050(℃)の場合は、17〜21(μm)で膜質2、25〜37(μm)で膜質3、1100(℃)の場合は17〜25(μm)で膜質3(この温度では膜質3が最高)、1130(℃)の場合は21〜25(μm)で膜質3、1160(℃)の場合は25(μm)以上で膜質3になる。
【0051】
【表7】

【0052】
なお、上記表7に示す評価結果によれば、Ceレジネートを添加した系の方がZrレジネートを添加した系(表6参照)よりも最適膜厚の範囲が広い。したがって、許容膜厚の範囲が広いことからも、ZrレジネートよりもCeレジネートを添加する方がよい結果が得られるものと言える。なお、膜厚が薄すぎると島状になり易く、厚すぎると有機成分の消失時にクラックが生じ易い傾向はZrレジネート添加の場合と同様である。
【0053】
また、下記の表8は、上記表7等で「その他レジネート」と表示されている耐化学性や接着性を高める目的で添加されている微量添加レジネートのうちの一部を除外した場合の膜質を評価したものである。圧電素子10のようなセラミック電子部品には耐化学性や接着性は特に必要ない。そこで、この試験は、微量金属レジネートの一部を添加しないことで膜質の改善を試みたものである。
【0054】
【表8】

【0055】
上記表8のNo.14は、前記表2等に示したCeレジネートを用いた系において、RhレジネートをRh/Au重量比で2/100、CeレジネートをCe/(Au+Pt)重量比で5.0(モル比で7.0)としたもので、No.15〜21は、ここからSiレジネート、Biレジネート等のうち「×」で示す一種だけ添加しないこととした仕様である。「○」で示す他のレジネートについては、No.1等と同一の添加量とした。この評価結果によれば、1100(℃)までの焼成温度範囲であれば、その他レジネートのうちの一種を除外しても膜質には悪影響を及ぼさない。但し、1200(℃)焼成では、Bi,Cuレジネートを添加しないと膜質の若干の低下が認められ、Agレジネートを添加しないと膜質が著しく低下する。すなわち、上記結果によれば、微量金属レジネートを除外しても膜質の改善は特に認められないが、BiおよびCuは添加することが望ましく、Agは添加することが必須と考えられる。反対に、無くしても膜質の低下が認められなかったSi,Ni,Zn,Feは、本実施例の用途では無用なものである可能性がある。
【0056】
下記の表9は、上記表8に示した評価結果を受けて、微量金属レジネート(すなわち「その他レジネート」)のうち何れか1種のみを含む仕様で膜質を評価したものである。各試料において添加されている微量金属レジネートの添加量は前記No.1等と同一である。この評価においても、Bi,Cu,Agの何れかを添加したNo.24,25,28の膜質が比較的優れている結果が得られた。すなわち、Bi,Cu,Agが必須のものと考えられる。なお、これらを含まない場合の影響は焼成温度が高くなると顕著になる。
【0057】
【表9】

【0058】
下記の表10は、上記表8、表9の結果を受けて、Bi,Cu,Agの併用による効果を確かめたものである。No.29のようにBi,Cuを含んでいても、Agを含まない系では、1100(℃)焼成でも膜質が2に留まる。No.31のようにCu,Agを含んでいても、Biを含まない系では、1100(℃)では膜質1が得られるものの、1200(℃)では膜質の若干の低下が認められる。No.30,32のようにBi,Agを共に含む系では、焼成温度に拘わらず良好な膜質が得られた。これらの結果によれば、Bi,Agが必須であり、Cuも含まれていることが好ましいと考えられる。一方、これら3種だけで良好な結果を得ることができたことから、前記表8、表9に示される「その他レジネート」のうちSi,Fe,Zn,Niは膜質に関しては添加する効果がないものと考えられる。
【0059】
【表10】

【0060】
下記の表11は、Ceレジネートを添加した系において、Ptレジネートの割合を高くして膜質を評価したものである。No.34,36,38,40,42は、Ceレジネートを含まないもので、何れも1100(℃)で膜質4、1200(℃)で膜質5の結果となっている。これに対して、Ceレジネートを添加したNo.33,35,37,39,41では、膜質3以上の結果が得られており、特に、PtレジネートをPt/Auモル比で100/100〜300/100としたNo.35,37,39では、1100(℃)、1200(℃)の何れでも膜質1が得られている。Pt/Auモル比が50/100のNo.33、400/300のNo.41では、膜質が2〜3に留まっており、Ptは過少でも過剰でも膜質が低下することが明らかである。Ptが不足する場合は耐熱性が不十分で、多すぎる場合は印刷性が低下して乾燥クラックが発生し、膜質が著しく低下するものと考えられる。
【0061】
【表11】

【0062】
下記の表12は、上記表8〜表11で微量添加レジネートとしてBi,Cu,Agが必須であることが確かめられたことを受けて、その他のレジネートとしてこれら3種だけを含む系において、Ce,Zr,Yの各レジネートの添加量を再度検討した結果をまとめたものである。
【0063】
【表12】

【0064】
上記表12において、No.43〜45はCeレジネートを添加したもので、Ce/(Au+Pt)重量比で1.6/100〜5.0/100(モル比で2.2/100〜7.0/100)とすれば、1100(℃)焼成でも1200(℃)焼成でも膜質1が得られる。添加量を重量比で8.4/100、モル比で11.8/100まで多くしても十分に良好な膜質が得られるものの、膜質の低下傾向が認められ、その傾向は焼成温度が高い方が顕著である。
【0065】
また、No.46〜48はZrレジネートを添加したもので、Zr/(Au+Pt)重量比で1.6/100〜5.0/100(モル比で3.5/100〜10.8/100)とすれば、1100(℃)焼成では膜質1が得られ、1200(℃)焼成でも膜質2が得られる。添加量を重量比で8.4/100、モル比で18.1/100まで多くしても十分に良好な膜質が得られるものの、膜質の低下傾向が認められ、Zrにおいても、その傾向は焼成温度が高い方が顕著である。
【0066】
また、No.49〜51はYレジネートを添加したもので、Y/(Au+Pt)重量比で1.6/100〜5.0/100(モル比で3.5/100〜11.1/100)とすれば、1100(℃)焼成では膜質1が得られ、1200(℃)焼成でも膜質2が得られる。添加量を重量比で8.4/100、モル比で18.6/100まで多くしても十分に良好な膜質が得られるものの、膜質の低下傾向が認められ、Yにおいても、その傾向は焼成温度が高い方が顕著である。上記表12に示されるこれらの評価結果によれば、Zr,Ce,Yは、Au+Ptに対してモル比で2/100〜20/100の範囲内が好適で、2/100〜12/100が一層好ましいと言える。なお、Ceは12/100を上回る範囲について、Zr,Yは3.5/100を下回る範囲について、それぞれデータを示していないが、これらの範囲についても十分な膜質改善効果が得られる。また、何れもAu+Ptモル比でZrは3/100〜20/100程度、Ceは2/100〜12/100程度、Yは3/100〜20/100程度がそれぞれ好ましく、Zrは3/100〜11/100程度、Ceは2/100〜7/100程度、Yは3/100〜12/100程度がそれぞれ一層好ましい。
【0067】
また、下記の表13は、Pt/Auモル比が200/100、Ce/(Au+Pt)重量比が5.0/100(モル比で7.0/100)のCeレジネート添加系において、Biレジネートの量をAu+Pt比0.20〜2.70(wt%)の範囲で変化させて影響を評価したものである。Bi/(Au+Pt)重量比が0.60/100〜2.20/100の範囲では、1100(℃)、1200(℃)の何れでも膜質1が得られたが、これよりもBi量が少なく或いは多くなると、1100(℃)では特に問題が生じないものの、1200(℃)焼成では膜質が3に低下する結果となった。
【0068】
【表13】

【0069】
下記の表14は、前記表13に示すNo.53の組成において、Agレジネートの添加量をAg/(Au+Pt)重量比で0.70/100〜4.10/100の間で変化させて膜質を評価したものである。Ag/(Au+Pt)重量比が0.70/100〜1.40/100のNo.58,59では1100(℃)、1200(℃)とも膜質1が得られたが、2.70/100〜4.10/100のNo.60,61では、何れの焼成温度でも膜質が2に低下した。この評価結果によれば、Agレジネート量が1.40/100よりも多くなると膜質の低下傾向が生ずるものと言える。
【0070】
【表14】

【0071】
下記の表15は、Ceレジネートに加えてYレジネート或いはZrレジネートを同時に添加して、膜質への影響を評価したものである。YレジネートをY/(Au+Pt)重量比で1.0/100(モル比で2.2/100)としたNo.62では1100(℃)、1200(℃)共に膜質1が得られているが、添加量を重量比で2.0/100(モル比で4.4/100)としたNo.63では1100(℃)では膜質1に保たれるものの1200(℃)では膜質5まで急激に低下する。また、添加量を重量比で3.0/100(モル比で6.6/100)としたNo.64では1100(℃)でも膜質5に低下する。これらの結果によれば、CeとYの併用は可能ではあるが、Y量が多くなると膜質が低下するため、重量比で1.0/100以下(モル比で2.2/100以下)に留める必要がある。
【0072】
【表15】

【0073】
また、ZrレジネートをZr/(Au+Pt)重量比で2.0/100(モル比で4.3/100)加えたNo.65では1100(℃)では膜質1に保たれるものの、1200(℃)では膜質4に急激に低下する。また、添加量を重量比で4.0/100(モル比で8.6/100)としたNo.66では1100(℃)でも膜質5に悪化する。したがって、CeとZrの併用では良好な膜質が得られないものと考えられる。
【0074】
下記の表16は、Cuレジネートの添加量をCu/(Au+Pt)重量比で0.03/100〜2.10/100の間で変化させて膜質を評価したものである。Cu添加量が1.10/100以下の範囲では1100(℃)焼成および1200(℃)焼成の何れでも膜質1が得られるが、それよりもCu量が多くなると、何れの焼成温度でも膜質2〜3に低下する。この結果によれば、CuレジネートはCu/(Au+Pt)重量比で1.10/100以下に留めることが好ましいと思われる。
【0075】
【表16】

【0076】
上述した評価結果によれば、何れもAu+Pt重量比で、Bi量は0.60〜2.20、Ag量は1.40以下、Cu量は1.10以下とすることが特に好ましいと言える。
【0077】
以上、説明したように、電子部品等の電極形成用途のレジネートペーストは、Pt/Au重量比を100/100〜300/100に大きくすると共に、Ce,Zr,Yの何れかを添加することで耐熱性の著しい改善が認められ、900(℃)以上、例えば1100(℃)程度で焼成する圧電素子10の導体層14を形成する目的にも好適に用いることができる。
【0078】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【0079】
例えば、実施例においては、本発明が主な導体成分としてPtを含むレジネートペーストに適用された場合について説明したが、Ptに物性が類似するPdを主な導体成分として含むPd/Auレジネートペーストにも本発明は同様に適用される。
【符号の説明】
【0080】
10 積層型圧電素子、12 基材層、14 導体層、16 外部電極、18 表面、20 裏面、22 表面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する薄膜を形成するためのレジネートペーストであって、
Auレジネートと、
M1/Auモル比が100/100〜300/100の範囲内の割合のPtおよびPdの少なくとも一方の金属M1のレジネートと、
Ce,Zr,Yの中から選択された少なくとも一種の金属M2のレジネートと
を、含むことを特徴とするレジネートペースト。
【請求項2】
Rhレジネートを更に含むものである請求項1のレジネートペースト。
【請求項3】
Bi,Ag,Cuの中から選択された少なくとも一種の金属M3のレジネートを更に含むものである請求項1または請求項2のレジネートペースト。
【請求項4】
M2/(Au+M1)モル比が2/100〜20/100の範囲内の割合である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレジネートペースト。

【図1】
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