説明

レジャー用ベスト

【課題】着用者にとって体感防寒効果の高いレジャー用ベストの提供。
【解決手段】このベスト10は、ベスト本体11と、保温装置12と、絞り機構13とを備える。絞り機構13は、ベスト本体11のアームホール22の内径寸法を拡縮させる。絞り機構13は、環状帯27と、紐28と、ロック部材29とを備える。環状帯27は、アームホール22の周縁部に沿って設けられている。紐28は、環状帯27の周縁部30に内蔵されている。紐28の一部は、環状帯27から露出されている。ロック部材29は、この紐28を把持している。環状帯27は、伸縮性に優れた生地からなる。紐28は、弾性体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り等のレジャーに使用される防寒用のベストの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冬季における釣り等においては、釣人は十分な防寒対策を行う必要がある。一般的な防寒対策として、釣人は、保温性の高い下着等のインナーウェア、防水透湿性に優れるアウターウェアを着用すると共に、さらに保温性を高めるためにインナーウェアとアウターウェアとの間にベスト等のミドルウェアを着用する(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
従来のミドルウェアとしてのベストには、空気充填式保温装置が設けられているものがある。この空気充填式保温装置は、「エアバンテージ(登録商標)」として一般に知られている。この空気充填式保温装置は、ベストの前身頃及び後身頃の内側に縫い付けられる保温シートを備えている。この保温シートは、二枚の生地が重ね合わせられており、両者間に空気充填室が区画されている。さらに、保温シートには、空気充填室に連通する空気供給チューブが連結されている。釣人は、この空気供給チューブに息を吹くことにより、上記空気充填室に体温に略等しい温度の空気が充填され、高い保温効果が奏される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−60105公報
【特許文献2】特開2002−84952公報
【特許文献3】特開2001−295109公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに従来のベストでは、その構造ないし機能から帰結されるスペック上の防寒効果は優れている。しかしながら、釣人が実際にベストを着用した場合に体感できる防寒効果は、ベストの構造ないし機能によるところにも増して釣人の身体とベストとの間を実際に流れる空気の量によるところが大きい。言い換えれば、たとえベストが構造上優れた保温防寒機能を備えていても、釣人が実際に着用したときに釣人の身体とベストとの間を風が通り抜けてしまう場合は、結局のところ、釣人は防寒効果を体感することはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、着用者にとって体感防寒効果の高いレジャー用ベストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的が達成されるため、本発明に係るレジャー用ベストは、前身頃及び後身頃を有し、両者間にアームホールが設けられたベスト本体と、前身頃及び後身頃の内側を覆うように配置された空気充填式保温装置と、上記アームホールの内径寸法を拡縮させる絞り機構とを備えている。特に冬季における魚釣り等のレジャーでは、釣人は、このレジャー用ベストを着用する。空気充填式保温装置は、釣人の身体を保温する。釣人がこのレジャー用ベストを着用した場合には、釣人の両腕は、アームホールから外部に出る。釣人は、絞り機構によってアームホールの内径寸法を小さくすることができ、これにより、アームホールと釣人の両腕との間に隙間が生じない。一方、釣人は、絞り機構によって上記アームホールの内径寸法を大きくすることができ、これにより、釣人は所要時に容易にこのレジャー用ベストを脱ぐことができる。
【0008】
上記絞り機構は、上記アームホールの周縁部に沿って設けられた環状帯と、環状帯の周縁部に内蔵され、その一部が当該環状帯から露出された紐と、環状帯に設けられ、紐を着脱自在に把持するロック部材とを備えて構成され得る。この場合、釣人は、ロック部材と紐とのロック状態を解除し、当該紐を引っ張ることができる。これにより、上記アームホールが絞られて、その内径寸法が小さくなる。釣人は、ロック部材によって上記紐をロックすることができ、これにより、上記アームホールは、当該絞られた状態で保持される。したがって、釣人の腕とアームホールとの間に隙間が生じることはない。
【0009】
アームホールの周縁部には上記環状帯が設けられているから、釣人が上記紐を引っ張ったときは、この環状帯が絞られる。したがって、上記前身頃及び後身頃を構成する生地が強く折り畳まれることはない。つまり、前身頃及び後身頃が損傷を受けることはない。一方、釣人は、ロック部材と紐とのロック状態を解除し、当該紐を上記環状帯の内部に収容することによって、上記アームホールの内径寸法が大きくなる。
【0010】
上記環状帯は、2ウェイストレッチタイプの生地から構成されているのが好ましい。これにより、上記アームホールの内径寸法が小さくされた場合に、環状帯が釣人の腕の周りに一定の緊迫力で確実に当接する。したがって、釣人の腕とアームホールとの間に隙間が生じることが確実に防止される。しかも、上記環状帯が2ウェイストレッチタイプの生地から構成されることによって、環状帯がきわめて容易に伸縮する。したがって、アームホールの拡縮が繰り返された場合であっても、容易に環状帯が損傷を受けることはない。
【0011】
さらに、上記紐は、弾性体から構成されているのが好ましい。これにより、釣人が上記紐を引っ張ってアームホールを絞る場合には、紐の弾性(収縮力)によってアームホールの内径寸法が簡単且つ迅速に小さくなる。また、上記ロック部材と紐とのロック状態が解除された場合には、紐の弾性力によって瞬時にアームホールの内径寸法が大きくなる。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、釣人がこのレジャー用ベストを着用した場合には、釣人の両腕とベスト本体のアームホールとの間に隙間が生じないので、空気充填式保温装置による保温機能が十分に発揮される。したがって、釣人は、高い防寒効果を体感することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るベストの正面図である。このベスト10は、典型的には釣りの際に釣人が着用するものであり、主としてアウターウェアの内側に着用されるミドルウェアとして構成されている。もっとも、このベスト10は、釣人のみが着用するものではなく、防寒対策が必要なレジャー一般に使用される。また、このベスト10は、ミドルウェアとしてのみ使用されるものではなく、アウターウェアとして使用されてもよいことは勿論である。
【0015】
ベスト10は、ベスト本体11と、ベスト本体11の内側に配置された保温装置12(空気充填式保温装置)と、ベスト本体11に設けられた絞り機構13とを備えている。
【0016】
ベスト本体11は、前身頃14及び後身頃15とを有する。これらは、例えば透湿性を有し且つ防水性を有する生地から構成される。この生地が予め設計された形状に裁断されることによって前身頃14及び後身頃15が構成され、これらが脇部16において縫い合わされている。前身頃14と後身頃15との間には、アームホール22が設けられている。釣人がこのベスト10を着用したときは、釣人の腕がこのアームホール22から外部に出る。前身頃14は、右前身頃17及び左前身頃18を有し、両者は、ファスナー19を介して接続されている。したがって、釣人がファスナー19を操作することによって、前身頃14を開くことができる。なお、右前身頃17及び左前身頃18には、ポケット20、21が設けられている。
【0017】
図2は、前身頃14が開かれた状態でのベスト10の正面図である。保温装置12は、本実施形態では、市販品であるエアバンテージ(登録商標)が採用されている。この保温装置12は、空気を貯蔵することができる保温シート部材23と、空気供給チューブ24とを備えている。
【0018】
保温シート部材23は、対向配置された2枚のシートを有し、両者間にチャンバー25が形成されている。保温シート部材23は、さまざまな生地から構成されるが、透湿性を有し且つ防水性を有する生地が採用されてもよい。チャンバー25は、上記2枚のシート間に迷路状に形成されている。空気供給チューブ24は、チャンバー25の左前身頃18の上方に位置する部位に連結されている。この空気供給チューブ24は例えばゴムからなる。釣人は、空気供給チューブ24をくわえて息を吹くことにより、チャンバー25に息(空気)が送り込まれて、チャンバー25は膨らむ。なお、空気供給チューブ24は逆止弁26を備えているのが好ましい。これにより、チャンバー25から容易に空気が抜けることはないし、釣人は、逆止弁26を操作することによって、意図的にチャンバー25から空気を迅速に抜くことができる。
【0019】
この保温装置12は、ベスト本体11の内側に固定されている。具体的には、上記保温シート部材23の周縁部が上記後身頃15及び上記前身頃14の内周縁部に縫い付けられている。換言すれば、保温装置12は、ベスト本体11の裏地として構成されている。
【0020】
図3は、ベスト10の要部拡大斜視図であり、上記絞り機構13が詳細に図示されている。絞り機構13は、上記アームホール22に設けられた環状帯27と、これに内蔵された紐28と、この紐28をロックするロック部材29とを有する。
【0021】
環状帯27は、細長帯状に裁断された生地からなる。この生地が上記アームホール22の周縁部に沿って縫い付けられている。この生地を構成する材料は、綿、ナイロンのほかさまざまなものが採用され得る。本実施形態では、環状帯27は、2ウェイストレッチ機能を備えている。この「2ウェイストレッチ機能」とは、縦方向にも横方向にも伸縮することができる機能である。具体的には、上記生地が所定の種類の繊維により構成され且つこの繊維が所定の方式で織られることにより、環状帯27は、2ウェイストレッチ機能を備える。
【0022】
環状帯27の周縁部30は、袋状に形成されている。紐28は、環状に形成されており、この周縁部30の内部に配置されている。紐28は、ポリエステル等により構成されるが、伸縮性に優れた弾性体(典型的にはゴム紐)から構成されるのが好ましい。環状帯27は、上記周縁部30の内部と連通する引出孔を備えている。同図が示すように、紐28は、この引出孔から外部に引き出され、環状帯27からアームホール22側に露出している。
【0023】
ロック部材29は、既知の構成である。ロック部材29は、筒状の本体31と固定ピン32とを備えている。紐28は、ロック部材29を貫通している。固定ピン32は、本体31との間で紐28を挟持する。具体的には、固定ピン32が本体31に対して進退可能に嵌め込まれており、本体31及び固定ピン32には貫通孔が設けられている。紐28は、この貫通孔に挿通されている。常時において固定ピン32は、本体31から突出するように弾性付勢されている。したがって、ロック部材29を貫通した紐28は、本体31と固定ピン32との間に挟み込まれ、一定の保持力でロックされている。また、固定ピン32が本体31側へ押し付けられることによって、紐28のロックが解除され、紐28は、自由にロック部材29を挿通することができる。
【0024】
なお、ロック部材29は、ベスト本体11側に取り付けられている。本実施形態では、布等からなるベルト33によって、上記本体31が右前身頃17に連結されている。釣人が紐28を引っ張ると、この紐28によってアームホール22の内径寸法が小さくなる。つまり、アームホールが絞られる。
【0025】
以上の説明は、右前身頃17側に位置する絞り機構13についてのものであるが、左前身頃18側に位置する絞り機構13も同様の構成である。
【0026】
釣人がこのベスト10を着用した場合には、次のような効果が奏される。特に冬季における魚釣りでは、釣人は、防寒具としてこのベスト10を着用する。このとき、釣人の両腕は、アームホール22から外部に出る。釣人が保温装置12に息を吹くことにより、保温装置12は、釣人の身体を保温する。
【0027】
釣人は、絞り機構13を操作することよってアームホール22を絞ることができる。アームホール22が絞られると、アームホール22と釣人の腕との間に隙間が生じない。したがって、ベスト10と釣人の身体との間を風が通り抜けることがなく、保温装置12による保温機能が十分に発揮される。その結果、釣人は、高い防寒効果を体感することができる。また、釣人は、絞り機構13を操作することによって、アームホール22の内径寸法を大きくすることができる。これにより、釣人は必要なときに容易にベスト10を脱ぐことができる。
【0028】
本実施形態では、紐28は、前述のようにロック部材29によって一定の保持力でロックされているだけであるから、釣人は、図3が示すように、当該保持力に抗して上記紐28を矢印34の方向に引っ張ることにより、紐28のロックが自動的に解除されることになる。これにより、紐28は、ロック部材29を挿通し、簡単にアームホール22を絞ることができる。なお、釣人は、ロック部材29の固定ピン32を押すことにより積極的に紐28のロックを解除することができ、その状態で紐28を引っ張ることもできる。アームホール22の周縁部には環状帯27が設けられているから、釣人が紐28を引っ張ったときは、この環状帯27が絞られる。したがって、前身頃14及び後身頃15を構成する生地が強く折り畳まれることはない。つまり、前身頃14及び後身頃15が強く折り畳まれて損傷を受けることはない。しかも、前身頃14及び後身頃15と釣人の身体との間に隙間が形成されることもないので、上記高い保温効果が維持される。
【0029】
また、本実施形態では、環状帯27が2ウェイストレッチタイプの生地から構成されているので、アームホール22が絞られた場合に、環状帯27が釣人の腕の周りに一定の緊迫力で確実に当接する。したがって、釣人の腕とアームホール22との間に隙間が生じることが確実に防止され、上記高い保温効果が確実に維持される。
【0030】
しかも、環状帯27が2ウェイストレッチタイプの生地から構成されることによって、環状帯27がきわめて容易に伸縮する。したがって、アームホール22の拡縮が繰り返された場合であっても、容易に環状帯27が損傷を受けることはない。
【0031】
加えて、伸縮性に優れた環状帯27が設けられることによって、アームホール22の内径寸法が予め大きく設定され得る。アームホール22の内径寸法が大きく設定されても、環状帯27が大きく伸縮することができるので、釣人は、アームホール22を絞って腕とアームホール22との間の隙間を無くすことができる。したがって、ベスト10は、釣人にとって非常に着脱しやすく、着用した状態で非常に動きやすいものとなる。
【0032】
特に、上記紐28が弾性体からなり、伸縮性に優れるので、釣人が紐28を引っ張ると、紐28の弾力によってアームホール22が簡単且つ迅速に絞られる。また、ロック部材29による紐28のロックが解除されたときには、紐28の弾力によって瞬時にアームホール22が拡径されるという利点がある。
【0033】
本実施形態では、絞り機構13は、環状帯27、紐28及びロック部材29とを備えているが、絞り機構13の構造はこれに限定されるものではない。たとえば、環状帯27に取り付けられた面ファスナーによって絞り機構13が構成されていてもよい。この場合、面ファスナーによって環状帯27が束ねられることによりアームホール22が絞られる。また、この面ファスナーに代えてスナップが採用されていてもよい。この場合、スナップによって環状帯27が束ねられることによりアームホール22が絞られる。要するに、絞り機構13は、環状帯27を束ねてアームホール22を絞ることができる構造であれば、他の種々の構造が採用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、釣りその他のレジャーにおいて防寒具として着用されるベストに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るベストの正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るベストの前身頃が開かれた状態での正面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るベストの要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・ベスト
11・・・ベスト本体
12・・・保温装置
13・・・絞り機構
14・・・前身頃
15・・・後身頃
16・・・脇部
17・・・右前身頃
18・・・左前身頃
19・・・ファスナー
20・・・ポケット
21・・・ポケット
22・・・アームホール
23・・・シート部材
24・・・空気供給チューブ
25・・・チャンバー
26・・・逆止弁
27・・・環状帯
28・・・紐
29・・・ロック部材
30・・・環状帯の周縁部
31・・・本体
32・・・固定ピン
33・・・ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃及び後身頃を有し、両者間にアームホールが設けられたベスト本体と、
前身頃及び後身頃の内側を覆うように配置された空気充填式保温装置と、
上記アームホールの内径寸法を拡縮させる絞り機構とを備えたレジャー用ベスト。
【請求項2】
上記絞り機構は、
上記アームホールの周縁部に沿って設けられた環状帯と、
環状帯の周縁部に内蔵され、その一部が当該環状帯から露出された紐と、
環状帯に設けられ、紐を着脱自在に把持するロック部材とを備えている請求項1に記載のレジャー用ベスト。
【請求項3】
上記環状帯は、2ウェイストレッチタイプの生地から構成されている請求項2に記載のレジャー用ベスト。
【請求項4】
上記紐は、弾性体からなる請求項2又は3に記載のレジャー用ベスト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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