説明

レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂

【課題】水溶液にした場合に適度な流動性を有し、レゾルシン単量体含有量およびレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂含有量の双方が低減された、レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂を提供すること。
【解決手段】レゾルシンとメチルエチルケトンとの反応によるケトン変性体合成後、ホルマリン縮合による一連の工程が同一反応器内で行われる製造方法によって製造された、レゾルシンホルマリン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析で得られる全体のピーク面積に対して、レゾルシン単量体に相当するピーク面積が3%〜9%であり、レゾルシン5核体以上に相当するピーク面積が30%〜55%である、レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシンとメチルエチルケトンとの反応によるケトン変性体合成後、ホルマリン縮合したレゾルシンホルマリン樹脂により、レゾルシン単量体含有量およびレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂含有量の双方を低減し、接着剤使用時に未反応レゾルシンが昇華して作業環境を悪化させることの少なく、優れた接着性を有する、レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レゾルシンホルマリン樹脂は硬化速度が速いので、接着剤、合板、集成材、表面被覆剤等に使用され、特にゴムや繊維に対する接着力が優れているので、タイヤ用接着剤、ゴムホース用接着剤として使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
レゾルシンホルマリン樹脂を接着剤として使用する場合、レゾルシンホルマリン樹脂が十分な流動性を有していること、および溶媒が共存している場合には均一に溶解していることが要求される。流動性に着目した場合、重縮合物の構成成分の中からレゾルシン5核体以上の構成比を低減させることによって、十分な流動性が得られることが経験的に知られている。レゾルシン5核体以上になると、3次元構造のものの比率が急に高くなるために、流動性が失われると考えられている。また、流動性を付与するために有機溶媒で希釈することも考えられるが、有機溶媒の使用は作業環境の悪化、接着力低下の可能性を有しているので好ましくない。有機溶媒を使用しないで、アニオン界面活性剤によって水中に分散させて接着剤とする方法もあるが(例えば、特許文献5参照)、水分散系の長期安定性という点で不安を残している。
樹脂中の未反応ホルムアルデヒド含量を抑制する目的で、2段階の反応で樹脂を製造している報告がある(例えば、特許文献6参照)。段ボール等の撥水性紙製品用接着材となるアルデヒド樹脂の製造方法特許で、実施例ではホルムアルデヒドとメチルエチルケトンで第1段階の反応を行い、その生成物に少量のレゾルシンを加え、第2段階の反応を行って、生成物中のホルムアルデヒド含量を0.1%としている。ただし、このアルデヒド樹脂はレゾルシンホルマリン樹脂の応用ではない。
【0004】
【特許文献1】特公昭48−12185号公報
【特許文献2】特開平4−148920号公報
【特許文献3】特開平6−100850号公報
【特許文献4】特開2000−178849号公報
【特許文献5】特開昭57−167342号公報
【特許文献6】EP0498301A2公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、重縮合物の構成成分の中からレゾルシン5核体以上の構成比を低減させることによって、溶媒が水の場合十分な流動性が得られることが知られているが、レゾルシン5核体以上の構成比を低減させるように反応条件をゆるやかに設定した場合、生成物の分子量分布が単に低分子側にずれるだけの結果となり、通常は逆に未反応レゾルシン濃度が高くなってしまう。レゾルシン濃度が高くなると、接着剤使用時にレゾルシンが昇華して、作業環境を悪化させ、接着力をも低下させる可能性があるので好ましくない。レゾルシン1モルに対して0.6モルのホルムアルデヒドを反応させた場合、反応終了後約33重量%程度の未反応レゾルシンが含有され、0.8モルのホルムアルデヒドを反応させた場合は、約20重量%の未反応レゾルシンが含有されていることから、未反応レゾルシンの量は15重量%に抑えるべきということで、未反応レゾルシン含有量を減少させるために減圧度0.05mmHg、130℃でレゾルシンを昇華除去したことが報告されている(例えば、特許文献7参照)。また、メチルイソブチルケトンを溶媒とし、水を抽出剤として連続抽出器を使用し、未反応レゾルシン含有量を5.5%に減じたことが報告されている(例えば、特許文献8参照)。しかし、これらの方法は反応終了後に真空蒸留を必要としたり、連続抽出器を使用して長時間の操作を要する等、工業的に不利である。
【0006】
逆に未反応レゾルシン濃度を低下させるために反応条件を激しくすると、5核体以上のレゾルシン多核体が大量に生成してしまい好ましくない。ここで、反応が水系で行われることから、反応終了後に高濃度の塩を添加して高分子量成分の溶解度を低下させ、析出後除去する方法が考えられる。しかしこの方法は、塩析工程をさらに付加させる必要があって不利であり、またレゾルシンホルマリン樹脂中に残存する無機塩による接着力低下、無機塩に起因する被着体の腐食が懸念され、実施されていない。この塩析工程を付加させないで、1段反応であっても7核体以上の構成比を増加させない工夫が開示されている(例えば、特許文献9参照)。レゾルシン多核体の溶解度を低下させるために、反応系に大量の塩を共存させる方法であるが、この方法では水相から析出したレゾルシン多核体がガム状になってしまうので、レゾルシンまでもがガム状物質に採り込まれる結果、反応速度の低下を招いて反応時間が長くなってしまう。工業的製造においては、長時間反応におけるガム状物質の生成は、撹拌停止、送液系のつまり等を起こすので採用することはむずかしい。
【0007】
【特許文献7】特公昭54−932号公報
【特許文献8】特公昭49−14550号公報
【特許文献9】特開2003−277308号公報
【0008】
本発明は、全工程が同一反応容器内で行われる製造方法によって製造された樹脂であり、水溶液にした場合に適度な流動性を有し、抽出工程を入れることなく、レゾルシン単量体含有量およびレゾルシン5核体以上のケトン変性レゾルシンホルマリン樹脂とレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂の含有量の双方を低減した、反応したメチルエチルケトンを樹脂中に含有するレゾルシン―メチルエチルケトン―ホルマリン樹脂を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レゾルシン(A)100重量部、メチルエチルケトン(B)2〜50重量部、触媒の有機酸または無機酸(C)0.01〜2重量部を混合し、またはさらに水1〜40重量部を混合し、前記混合物を沸点以下に加温して反応させ、仕込んだレゾルシン(A)のうちの1〜25%をレゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物(f)とした後、1〜40%ホルマリン(D)を、レゾルシン(A)に対して、ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.3〜0.8mol比として添加し反応させ、冷却後に、1〜30%アンモニア水(E)を有機酸または無機酸(C)に対して1.0〜2.0倍モル添加することによって、液々分配工程無しで得られる樹脂(F)である、樹脂(F)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析で得られる全体のピーク面積に対して、レゾルシン単量体に相当するピーク面積が3〜9%であり、レゾルシン5核体以上に相当するピーク面積が30〜55%であり、メチルエチルケトンが分子中に取り込まれた成分を樹脂(F)の固形分中に1〜25重量%含有し、最終的に樹脂(F)の固形分濃度が35〜60重量%であり、粘度が50〜10000mPa・sであることを特徴とする、レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂である。
【0010】
本発明では、1〜30%アンモニア水(E)を添加して得られた樹脂(F)に対して、さらにメタノール留去工程を付加して樹脂(F)中の残存メタノールを除去することができる。
【0011】
本発明のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂は、反応したメチルエチルケトンを樹脂(F)の固形分中に1〜25重量%含有している。このメチルエチルケトンの含有量は反応時のレゾルシン(A)とメチルエチルケトン(B)の比によって調節することができる。またこのことによって、レゾルシン(A)、メチルエチルケトン(B)、触媒の有機酸または無機酸(C)の反応によって得られた、レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物(f)の生成量を中間段階で測定することにより知ることができるので、レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物(f)を中間段階で分析し、その結果に応じて未反応レゾルシンとレゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物(f)の比を再調節することができる。
【0012】
本発明のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂は、レゾルシンとメチルエチルケトンとの反応、およびホルムアルデヒドとの縮合反応による2段階の反応によって製造されることを特徴としている。メチルエチルケトンの反応では、分子量の増加はメチルエチルケトンの分子量の72か、または脱水反応を伴って分子量の増加は54である。一方レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応では、その生成物の分子量は通常122ずつ増加してゆく。このことから、生成物の分子量を適正な範囲に収めるための反応設計はメチルエチルケトン反応のほうがやり易くなるという利点がある。レゾルシン―メチルエチルケトン―ホルマリン樹脂は、メチルエチルケトンを樹脂中に含有することにより、接着性能において改善がなされると考えられる。
【0013】
最終的に得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂の中で、メチルエチルケトンが分子中に取り込まれた成分の分子量MWは、MW=110×k+72×l+30×m−18×n(k、l、m、nは整数を表す)となる。ここで110はレゾルシンの分子量、72はメチルエチルケトンの分子量、30はホルムアルデヒドの分子量、18は水の分子量である。そしてこれらの数値の関係はk+l+m≒n+αとなり、2≦kであり、1≦lであり、0≦mであり、α=1または2である。このメチルエチルケトンが分子中に取り込まれた成分は、液体クロマトグラフィー分析により、保持時間がメチルエチルケトンを分子中に含まない成分の5核体よりも、保持時間が長いピークとして得られるので、液体クロマトグラフィー分析で把握することができる。本発明においてレゾルシンn核体とは、レゾルシンホルマリン樹脂そのもの自体のn核体と、ケトン変性されたことによってレゾルシンホルマリン樹脂そのものよりも分子量が少し大きくなっているケトン変性レゾルシンホルマリン樹脂の双方を意味している。またそれぞれのn核体の分子量は、レゾルシンホルマリン樹脂そのもののゲルパーミエーションクロマトグラフのピークを基準にして判別している。
【0014】
第1段階のケトン付加反応および第2段階の縮合反応において、5核体以上の成分が多くならないように反応を制御しているので、最終的に得られた反応生成物は水との混合物であるにもかかわらず接着剤に使用する際に適度な流動性を有している。また最終生成物までの以上の全工程が、同一反応容器内で行われる製造方法であることも有利である。
【0015】
レゾルシン―メチルエチルケトン―ホルマリン樹脂の製造工程に、触媒として使用される有機酸または無機酸(C)としては、塩酸、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。好ましいのはパラトルエンスルホン酸、塩酸である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレゾルシン―メチルエチルケトン―ホルマリン樹脂は、抽出工程を入れることなく全工程を同一反応容器内で行なうことができ、レゾルシン単量体含有量およびレゾルシン5核体以上のケトン変性レゾルシンホルマリン樹脂含有量の双方が低減されており、分子量が適正な範囲内に収められるので、水溶液にした場合に適度な流動性を有し、接着剤使用時に未反応レゾルシンが昇華して作業環境を悪化させることが少なく、反応したメチルエチルケトンを樹脂中に含有することによって優れた接着力を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
製造に使用される反応槽としては、酸触媒反応を行うので、耐酸性のものであれば通常の装置を使用することができる。
【0018】
製造に使用されるホルマリン(D)中のホルムアルデヒド濃度は、1〜40%、好ましくは30〜40%である。またホルマリンの使用量は、ホルマリン中のホルムアルデヒドモル数が、レゾルシン(A)に対して、ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.3〜0.8mol比、好ましくはホルムアルデヒド/レゾルシン=0.5〜0.8mol比となるような量である。
【0019】
攪拌下で、レゾルシン(A)、メチルエチルケトン(B)、触媒の有機酸または無機酸(C)、水を混合する際に、あらかじめレゾルシン(A)、触媒の有機酸または無機酸(C)、水を混合しておき、メチルエチルケトン(B)を少量ずつ滴下して混合することもできる。ホルマリン(D)の滴下時間は1〜300分間であり、好ましくは20〜120分間であり、さらに好ましくは60〜120分間である。
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
2リットルガラス製コルベンに水50g、レゾルシン500.0gを入れ、70〜75℃で溶解させた後、パラトルエンスルホン酸2.0gを反応槽に入れた。この温度を維持しながら、メチルエチルケトン80gを加えて攪拌混合した後、80〜85℃に昇温しこの温度で4時間反応して、レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物を得た。終了後、冷却し液温を50〜55℃に維持しながら、37%ホルムアルデヒド221.1g(ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.60mol比)を240分間かけて滴下し、滴下終了後さらに60分間撹拌して反応を進行させた。反応系の温度を室温まで冷却した後、pH8から9になるまで25%アンモニア水を加えた。次に水を加え固形分50重量%に調整することにより、レゾルシン及びレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂含量の低減したケトン変性レゾルシン樹脂1226gを得た(レゾルシン含有量は8.5%、固形分613g)。
【0022】
得られたケトン変性レゾルシンホルマリン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析を行い、未反応レゾルシン〜レゾルシン5核体以上の分布を測定した。得られたクロマトグラムを[図1]に示した。得られたクロマトグラムのピーク面積比は次のとおりであった。
レゾルシン … 8.5%
レゾルシン2核体…17.5%
レゾルシン3核体…11.3%
レゾルシン4核体…12.7%
レゾルシン5核体以上…50.0%
【0023】
採用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析条件を次に示した。
測定機種:東ソー製HLC−8020
カラム:東ソー製(G−2500)+(G−2500)+(G−4000)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1ml/min
【0024】
また、得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂について、液体クロマトグラフィー分析を行った。得られた結果を[図2]に示した。ケトン変性レゾルシンホルマリン樹脂の場合はメチルエチルケトンを反応させたことによって、30分以降に新たなピーク(メチルエチルケトン付加体)が出現しており、これらの成分によって、新たに接着性能等が向上する可能性がある。
【0025】
採用した液体クロマトグラフィー分析条件を次に示した。
測定機種:島津製HPLC LC−10A
カラム: Inertsil ODS−3
カラム温度:40℃
検出器:UV(283nm)
溶媒:メタノール/水=30/70→90/10(80分)
流量:1.0ml/min
【実施例2】
【0026】
2リットルガラス製コルベンに水50g、レゾルシン500.0gを入れ、70〜75℃で溶解させた後、パラトルエンスルホン酸2.0gを反応槽に入れた。この温度を維持しながら、メチルエチルケトン40gを4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに4時間攪拌して反応を進行させたレゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物を得た。反応終了後、冷却し液温を50〜55℃に維持しながら、37%ホルムアルデヒド239.6g(ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.65mol比)を240分間かけて滴下し、滴下終了後さらに60分間撹拌して反応を進行させた。反応系の温度を室温まで冷却した後、pH8から9になるまで25%アンモニア水を加えた。次に水を加え固形分50重量%に調整することにより、レゾルシン及びレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂含量の低減したレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂1152gを得た(レゾルシン含有量は8.6%、固形分576g)。
【0027】
実施例1と同様に、得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析を行い、未反応レゾルシン〜レゾルシン5核体以上の分布を測定した。得られたクロマトグラムのピーク面積比は次のとおりであった。
レゾルシン … 8.6%
レゾルシン2核体…16.7%
レゾルシン3核体…10.7%
レゾルシン4核体…12.0%
レゾルシン5核体以上…52.0%
【0028】
レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物が得られた段階で、ごく少量を採取し、実施例1と同様にしてゲルパーミエーションクロマト分析を行った。得られたクロマトグラムを[図3]に示した。原料レゾルシンのうち20%程度が、レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物に変化していることがわかる。
【実施例3】
【0029】
2リットルガラス製コルベンに水50g、レゾルシン500.0gを入れ、70〜75℃で溶解させた後、パラトルエンスルホン酸2.0gを反応槽に入れた。この温度を維持しながら、メチルエチルケトン160gを加えて攪拌混合した後、80〜85℃に昇温しこの温度で8時間反応し、レゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物を得た。反応終了後、冷却し液温を50〜55℃に維持しながら、37%ホルムアルデヒド184.3g(ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.50mol比)を240分間かけて滴下し、滴下終了後さらに60分間撹拌して反応を進行させた。反応系の温度を室温まで冷却した後、pH7になるまで25%アンモニア水を加え、メタノールを留去した。そして、室温まで冷却した後、pH8から9になるまで25%アンモニア水を加えた。次に水を加え固形分50重量%に調整することにより、レゾルシン及びレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂含量の低減したレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂1374gを得た(レゾルシン含有量は8.3%、固形分687g)。
【0030】
実施例1と同様に、得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析を行い、未反応レゾルシン〜レゾルシン5核体以上の分布を測定した。得られたクロマトグラムのピーク面積比は次のとおりであった。
レゾルシン … 8.3%
レゾルシン2核体…18.8%
レゾルシン3核体…12.4%
レゾルシン4核体…14.2%
レゾルシン5核体以上…46.3%
【0031】
[比較例1]
2リットルガラス製コルベンに水50g、レゾルシン500.0gを入れ、70〜75℃で溶解させた後、パラトルエンスルホン酸2.0gを反応槽に入れた。反応系を50〜55℃に下げこの温度を維持しながら、37%ホルムアルデヒド221.1g(ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.60mol比)を240分間かけて滴下し、滴下終了後さらに60分間撹拌して反応を進行させた。反応系の温度を室温まで冷却した後、pH8から9になるまで25%アンモニア水を加えた。次に水を加え固形分50重量%に調整することにより、レゾルシンホルマリン樹脂1065gを得た(レゾルシン含有量は15.3%、固形分533g)。
【0032】
得られたレゾルシンホルマリン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析を行い、未反応レゾルシン〜レゾルシン5核体以上の分布を測定した。分析条件は実施例1と同条件であり、得られたクロマトグラムを[図4]に示した。得られたクロマトグラムのピーク面積比は次のとおりであった。また実施例1と同条件で液体クロマトグラフィー分析を行った。得られた結果を[図5]に示した。
[図2]と比較して30分以降に明確なピークが存在しないことがわかる。
レゾルシン …15.3%
レゾルシン2核体…18.3%
レゾルシン3核体…15.0%
レゾルシン4核体…12.0%
レゾルシン5核体以上…39.4%
【0033】
実施例1で得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂および比較例1で得られたレゾルシンホルマリン樹脂についてLC/MS分析を行った。得られた結果のUV検出器によるクロマトグラムを[図6]、[図7]に示した。レゾルシンホルマリン樹脂の2核体〜7核体までを確認することができた。[図6]ではレゾルシンホルマリン樹脂の7核体よりも保持時間の長いピークが多く認められるのに対して、[図7]にはそれが存在しないことが認められる。[図6]の保持時間25分のピークは分子量328と確認された。この分子量328の生成物は、分子量計算式におけるk=2、m=0、n=2のものに相当し、MW=110×2+72×2+0−18×2=328であることが証明される。
【0034】
LC/MS分析条件を次に示す。
[LC条件]
測定機種:
カラム: Inertsil ODS−3 2.1×250mm
カラム温度:40℃
検出器:UV(283nm)
溶媒:メタノール/10mM−NH4OAc=50/50→100(60分)
流量:0.2ml/min
注入量:2.0μl
サンプル濃度:約1000ppm
[MS条件]
測定機種:Waters 2695 Alliance/Quattro micro
API
検出器:ESI(−)
コーン 電圧:30eV
MS:100〜1000 m/z
SCAN:0.5sec
注入量:2μl
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂は、抽出工程を入れることなくレゾルシン含有量を8%台にすることが可能となり、水溶液にした場合に適度な流動性を有し、レゾルシン単量体含有量およびレゾルシン5核体以上のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂とレゾルシン5核体以上のレゾルシンホルマリン樹脂の含有量の双方が低減されているので、接着剤使用時に未反応レゾルシンが昇華して作業環境を悪化させることが少ない、優れた接着力を有しているので、コスト的に有利であり、タイヤ用接着剤、ゴムホース用接着剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1で得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフ図である。
【図2】実施例1で得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂の液体クロマトグラフ図である。
【図3】実施例2で得られたレゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物のゲルパーミエーションクロマトグラフ図である。
【図4】比較例1で得られた樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフ図である。
【図5】比較例1で得られた樹脂の液体クロマトグラフ図である。
【図6】実施例2で得られたレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂のLC/MS分析における、液体クロマトグラフ図である。
【図7】比較例1で得られた樹脂のLC/MS分析における、液体クロマトグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシン(A)100重量部、メチルエチルケトン(B)2〜50重量部、触媒の有機酸または無機酸(C)0.01〜2重量部を混合し、またはさらに水1〜40重量部を混合し、前記混合物を沸点以下に加温して反応させ、仕込んだレゾルシン(A)のうちの1〜25%をレゾルシン−メチルエチルケトン反応生成物(f)とした後、1〜40%ホルマリン(D)を、レゾルシン(A)に対して、ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.3〜0.8mol比として添加し反応させ、冷却後に、1〜30%アンモニア水(E)を有機酸または無機酸(C)に対して1.0〜2.0倍モル添加することによって、液々分配工程無しで得られる樹脂(F)である、樹脂(F)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析で得られる全体のピーク面積に対して、レゾルシン単量体に相当するピーク面積が3〜9%であり、レゾルシン5核体以上に相当するピーク面積が30〜55%であり、メチルエチルケトンが分子中に取り込まれた成分を樹脂(F)の固形分中に1〜25重量%含有し、最終的に樹脂(F)の固形分濃度が35〜60重量%であり、粘度が50〜10000mPa・sであることを特徴とする、レゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。
【請求項2】
前記した1〜30%アンモニア水(E)を有機酸または無機酸(C)に対して1.0〜2.0倍モル添加して得られる樹脂(F)に、メタノール留去工程を付加する請求項1記載のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。
【請求項3】
前記した有機酸または無機酸(C)がパラトルエンスルホン酸であることを特徴とする、請求項1〜請求項2いずれかの項に記載のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。
【請求項4】
前記したホルマリン(D)中のホルムアルデヒドモル数が、レゾルシン(A)のモル数に対して、ホルムアルデヒド/レゾルシン=0.5〜0.8mol比であることを特徴とする、請求項1〜請求項3いずれかの項に記載のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。
【請求項5】
前記したレゾルシン(A)、メチルエチルケトン(B)、触媒の有機酸または無機酸(C)、水を混合する際に、あらかじめレゾルシン(A)、触媒の有機酸または無機酸(C)、水を混合しておき、メチルエチルケトン(B)を少量ずつ滴下して混合することを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの項に記載のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。
【請求項6】
前記したメチルエチルケトンが分子中に取り込まれた成分の分子量が、MW=110×k+72×l+30×m−18×n(k、l、m、nは整数を表し、k+l+m≒n+αであり、k≧2であり、l≧1であり、m≧0であり、α=1または2である。)である請求項1〜請求項5いずれかの項に記載のレゾルシン−メチルエチルケトン−ホルマリン樹脂。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−312733(P2006−312733A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104694(P2006−104694)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】