説明

レゾルシン水混合物およびその保存方法

【課題】レゾルシン水混合物の着色を抑制すること。
【解決手段】レゾルシンと、該レゾルシン100重量部に対して10〜100重量部の水とを含むレゾルシン水混合物であり、さらに酸を含むことを特徴とするレゾルシン水混合物、及び該混合物を、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1つの条件で保存することを特徴とするレゾルシン水混合物の保存方法。
(A)酸素濃度3%以下の不活性ガス雰囲気下
(B)10〜60℃の温度条件下
(C)ステンレス製、ハステロイ製またはガラス製の容器中

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシン水混合物およびその保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルシンは水に溶解しやすいことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】THE MERCK INDEX THIRTEENTH EDITION pp.1462 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レゾルシンと、該レゾルシン1重量部に対して0.1〜1重量部の水とを含むレゾルシン水混合物を保存したところ、着色が進行することが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況の下、本発明者らは、レゾルシン水混合物の着色抑制について鋭意検討し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下<1>〜<10>に記載される発明等を提供するものである。
<1>レゾルシンと、該レゾルシン100重量部に対して10〜100重量部の水とを含むレゾルシン水混合物であり、さらに酸を含むことを特徴とするレゾルシン水混合物。
<2>酸が、オキシカルボン酸または無機酸である<1>に記載されるレゾルシン水混合物。
<3>酸が、クエン酸、グルコン酸または硫酸である<1>に記載されるレゾルシン水混合物。
<4>酸の含有量が、レゾルシン水混合物100重量部に対して1×10−4〜1重量部である<1>〜<3>のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物。
<5>さらに無機塩を含む<1>〜<4>のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物。
<6><1>〜<5>のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物を、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1つの条件で保存することを特徴とするレゾルシン水混合物の保存方法。
(A)酸素濃度3%以下の不活性ガス雰囲気下
(B)10〜60℃の温度条件下
(C)ステンレス製、ハステロイ製またはガラス製の容器中
【発明の効果】
【0006】
本発明のレゾルシン水混合物は、長期保存後の着色が抑制される傾向がある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本明細書において「長期保存後の着色が抑制される」とは、例えば、本発明のレゾルシン水混合物と、酸を含まないレゾルシン水混合物とを、同条件で保存し、保存前後の透過率の変化を求めた場合に、本発明のレゾルシン水混合物の方が、酸を含まないレゾルシン水混合物よりも、透過率の低下が少ないことをいう。
【0009】
レゾルシンは、ハイドロパーオキサイド法やアルカリフュージョン法等の任意の公知の方法により得られるものを使用することができる。特に、ハイドロパーオキサイド法により得られるレゾルシンを使用する際に有用である。
【0010】
水は特に限定されず、イオン交換水、濾過工水、水道水等から適宜選択して使用することができる。水の品質管理上、イオン交換水が好ましい。
【0011】
水の使用量は、レゾルシン100重量部に対して、通常10〜100重量部、好ましくは20〜70重量部である。
【0012】
酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸;が挙げられる。クエン酸、グルコン酸および硫酸が好ましい。
【0013】
レゾルシン水混合物のpHは3以下であれば、通常、本発明の目的は達せられる。しかし、pH0.5未満では後述する容器の材質に影響を与えるおそれがあるため、レゾルシン水混合物のpHは0.5〜3.0が好ましく、0.8〜2.3がより好ましく、1.0〜1.8がさらに好ましい。
【0014】
酸の含有量は、レゾルシン水混合物100重量部に対して1×10−4〜1重量部が好ましい。この範囲で、レゾルシン水混合物のpHが上記範囲になる量を含有させればよい。
【0015】
レゾルシン水混合物は、さらに無機塩を含んでいることが好ましい。
【0016】
無機塩としては、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0017】
無機塩の含有量は、レゾルシン水混合物100重量部に対して0.01〜0.1重量部が好ましい。
【0018】
レゾルシン水混合物は、レゾルシン、水および酸、ならびに必要に応じて無機塩を、好ましくは不活性ガス雰囲気下で混合することにより実施され、この混合順序は特に限定されない。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。混合系中に酸素が存在するか、そのおそれがある場合には、酸を含まない状態のレゾルシン水混合物と酸素との接触をできるだけ避けるべく、まずはレゾルシン以外の水および酸、ならびに必要に応じて無機塩を混合し、次いで、得られた混合物にレゾルシンを加えて混合することが好ましい。
【0019】
混合温度は5〜80℃の範囲が好ましく、20〜80℃の範囲がより好ましい。混合時間は0.1〜12時間の範囲が好ましい。混合中に着色が進行することを防ぐため、60℃を超える温度で混合するときは、1時間以内に混合を終了することがより好ましい。
【0020】
次に、上記のようにして得られるレゾルシン水混合物の保存方法について説明する。該保存方法は、次に挙げる条件(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1つの条件で保存することを特徴とする。
【0021】
条件(A)酸素濃度3%以下の不活性ガス雰囲気下
酸素濃度が3%以下であれば、長期保存後のレゾルシン水混合物の着色が抑制されるため好ましい。ここで、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、および、それらの混合ガス等が挙げられる。
【0022】
条件(B)10〜60℃の温度条件下
上記の温度条件下であれば、長期保存後のレゾルシン水混合物の着色が抑制されるとともに、レゾルシンの析出も抑制できるため好ましい。
【0023】
条件(C)ステンレス製、ハステロイ製またはガラス製の容器中
上記の容器中であれば、長期保存後のレゾルシン水混合物の着色が抑制されるため好ましい。ステンレスの中では、SUS316、SUS316Lがより好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
<透過率測定方法>
各実施例、比較例における透過率は、サンプリングしたレゾルシン水混合物と水とを混合して50重量%濃度のレゾルシン水溶液を調製し、得られたレゾルシン水溶液の透過率をJIS K−0115に準じて470nmの波長にて測定した値である。
【0026】
実施例1
室温でイオン交換水30gにクエン酸1水和物0.1gを溶解させた後、得られた溶液にレゾルシン70gを加えた。得られた混合物を攪拌しながら、30分かけて50℃まで昇温したところ、レゾルシンは溶解した。得られたレゾルシン水混合物をガラス製容器に充填し、気層部の酸素濃度を3%(他は主に窒素)に調整して密閉し、レゾルシン水混合物入り容器を得た。該レゾルシン水混合物入り容器を、遮光下50℃で保存した。保存日数毎にレゾルシン水混合物をサンプリングし、透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2
実施例1において、保存温度を60℃に変える以外は実施例1と同様にして透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例3
室温でイオン交換水30gにクエン酸1水和物0.1gと塩化ナトリウム0.05gを溶解させた後、得られた溶液にレゾルシン70gを加えた。得られた混合物を攪拌しながら、30分かけて50℃まで昇温したところ、レゾルシンは溶解した。得られたレゾルシン水混合物をガラス製容器に充填し、気層部の酸素濃度を3%(他は主に窒素)に調整して密閉し、レゾルシン水混合物入り容器を得た。該レゾルシン水混合物入り容器を、遮光下60℃で保存した。保存日数毎にレゾルシン水混合物をサンプリングし、透過率を測定した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
実施例4
実施例1において、レゾルシン水混合物入り容器の気層部を空気とする以外は実施例1と同様にして透過率を測定した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
実施例5
実施例1において、クエン酸1水和物の使用量を0.05gとする以外は実施例1と同様にして透過率を測定した。結果を表5に示す。
【0035】
【表5】

【0036】
実施例6
実施例1において、クエン酸1水和物の使用量を0.2gとする以外は実施例1と同様にして透過率を測定した。結果を表6に示す。
【0037】
【表6】

【0038】
実施例7
室温でイオン交換水30gに98%硫酸0.003gを溶解させた後、得られた溶液にレゾルシン70gを加えた。得られた混合物を攪拌しながら、30分かけて50℃まで昇温したところ、レゾルシンは溶解した。得られたレゾルシン水混合物をガラス製容器に充填し、気層部の酸素濃度を3%(他は主に窒素)に調整して密閉して、レゾルシン水混合物入り容器を得た。該レゾルシン水混合物入り容器を、遮光下60℃で保存した。保存日数毎にレゾルシン水混合物をサンプリングし、透過率を測定した。結果を表7に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
比較例
室温でイオン交換水30gにレゾルシン70gを加えた。得られた混合物を攪拌しながら、30分かけて50℃まで昇温したところ、レゾルシンは溶解した。得られたレゾルシン水混合物をガラス製容器に充填し、気層部を空気雰囲気として密閉して、レゾルシン水混合物入り容器を得た。該レゾルシン水混合物入り容器を、遮光下50℃で約半日保存した後、レゾルシン水混合物をサンプリングし、透過率を測定したところ、90%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のレゾルシン水混合物は、長期保存後の着色が抑制される傾向があるため、長期間の保存が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンと、該レゾルシン100重量部に対して10〜100重量部の水とを含むレゾルシン水混合物であり、さらに酸を含むことを特徴とするレゾルシン水混合物。
【請求項2】
酸が、オキシカルボン酸または無機酸である請求項1に記載されるレゾルシン水混合物。
【請求項3】
酸が、クエン酸、グルコン酸または硫酸である請求項1に記載されるレゾルシン水混合物。
【請求項4】
酸の含有量が、レゾルシン水混合物100重量部に対して1×10−4〜1重量部である請求項1〜3のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物。
【請求項5】
さらに無機塩を含む請求項1〜4のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載されるレゾルシン水混合物を、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1つの条件で保存することを特徴とするレゾルシン水混合物の保存方法。
(A)酸素濃度3%以下の不活性ガス雰囲気下
(B)10〜60℃の温度条件下
(C)ステンレス製、ハステロイ製またはガラス製の容器中

【公開番号】特開2011−42635(P2011−42635A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192908(P2009−192908)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】