説明

レッドフルーツおよびコーヒーの香気を有するコーヒーエキス

【課題】天然のコーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有し、香気が改変されているが、本質的なコーヒー風味を維持したコーヒーエキスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】(a)コーヒーエキス、および(b)果物の混合品、を含むコーヒー香気が改変されたコーヒーエキス。コーヒーエキスに使用されるコーヒーがアラビカコーヒー、ロブスタコーヒー、またはそれらのブレンド品であり、果物がストロベリーおよびブラックベリーであるレッドフルーツである前記コーヒーエキス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質、香気プロフィールおよび革新性に関して際立った特徴を有する100%天然のコーヒーエキス、ならびにその製造方法に関する。特に、本発明は100%天然原料を使用し、コーヒーの風味に悪影響を与えない、コーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するコーヒーエキスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー関連製品の分野では、それらが望ましい香気および風味特性を有することは非常に重要である。このような香気および風味特性は、一般的に高品質のコーヒー製品にとって特に重要である。コーヒー関連製品の香気および風味の改良に関わる技術の開発には、多くの労力、技術が費やされている。コーヒー関連製品の市場は非常に要求が厳しく、また嗜好の変化も多彩であり、それゆえ、より高い品質と高い革新的な成分を有する製品が要求されている。
【0003】
特許文献1は、図1に示すとおり、a)コーヒー豆を挽き、それをタンク(4)に保管し、b)果物パルプを作製し、所望によりc)果物を乾燥する間に他の着色料や香料を添加し、最後に、d)乾果を粉末化し、他のタンク(11)に保管する、ことを特徴とするコーヒーおよび果物風味を有する飲料の製造方法に関する。最後に、粉末化された果物およびコーヒーは混合され(15)、包装容器(16)に充填される。
【0004】
しかしながら、特許文献1はコーヒーの本質的な風味を維持し、コーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するコーヒーエキスを開示しない。
【0005】
特許文献2は飲食品工業で使用される原料シロップを得るために、コーヒー加工工程で得られる皮および残り汁を使用する果物飲料の処方および調製を開示する。
【0006】
特許文献3は微粒子のインスタントコーヒーおよび風味付けされていないコーヒーオイルを含み、コーヒーオイルの粒子径が0.1μmから25μmである、改善された香気および風味を有するインスタントコーヒー製品を開示する。
【0007】
特許文献4はコーヒーフレーバー発酵によるフラワーノートおよび/またはフルーツノートとコーヒー香気を含む発酵コーヒー成分を含むノンアルコールコーヒー飲料を提供する。しかしながら、この特許文献はストロベリーやブラックベリーパルプの使用によって得られるレッドフルーツ香気を有する飲料を開示しない。
【0008】
結果として、天然のコーヒーおよびレッドフルーツの香気を有するように香気が変えられているが、本質的なコーヒー風味を維持した液体コーヒーエキスの提供の必要性がいまだ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2759254号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1059452号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/035000号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1527695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、品質、香気プロフィールおよび革新性に関して際立った特徴を有し、インスタント飲料(RTD)の基本的要求を満たす100%天然原料由来のコーヒーエキスを提供することを目的とする。特に、レッドフルーツおよびコーヒーの香気ならびにコーヒー抽出物を得るために、原料としてレッドフルーツおよびコーヒーを使用した100%天然原料由来のコーヒーエキスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、100%天然原料のレッドフルーツとコーヒーを使用し、本質的なコーヒー風味が維持され、レッドフルーツとコーヒーの組み合わせられた香気を有するコーヒーエキスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) (a)コーヒーエキス、および(b)果物の混合品、を含むコーヒー香気が改変されたコーヒーエキス、
(2) 果物がレッドフルーツである、(1)のコーヒーエキス、
(3) コーヒーエキスに使用されるコーヒーがアラビカコーヒー、ロブスタコーヒー、またはそれらのブレンド品である、(1)のコーヒーエキス、
(4) レッドフルーツが、ストロベリーおよびブラックベリーである、(2)のコーヒーエキス、
(5) 最終的に得られるコーヒーエキスが、果物とコーヒーの組み合わせられた香気を有し、可溶性固形分が40%以下である、(1)〜(4)いずれかのコーヒーエキス、
(6) コーヒー、ストロベリー、ブラックベリーの比率がそれぞれ50:25:25、40:30:30、または60:20:20であることを特徴とする、(1)または(4)のコーヒーエキス。
(7) ストロベリーおよびブラックベリーを、可溶性固形分で1〜10%含むことを特徴とする、(1)〜(6)いずれかのコーヒーエキス、
(8) 果物が香気化合物として
4−メチル−1−(1−メチルエチル)−シクロヘキセン−1−オール、
シクロブタンカルボン酸オクチル、
酢酸エチル、および
ヘキサノール、
を含むことを特徴とする、(1)のコーヒーエキス、
(9) ・アラビカ、ロブスタ、またはそれらをブレンドしたコーヒー豆を180〜230℃で10〜15分間、15〜25%減量するように焙煎し、
・160〜186℃の温度および10〜15barの圧力でコーヒーを浸出して抽出液を得て、
・抽出液の一部を、入口濃度が10〜18°Brix(可溶性固形分で8.33〜15%)または15%以下のコーヒー可溶性固形分で、出口濃度が34〜42°Brix(可溶性固形分で28.3〜35%)または35%以下のコーヒー可溶性固形分である冷却濃縮に供し、
・抽出液の残りを10〜18°Brixに希釈し、ストロベリーパルプおよびブラックベリーパルプと混合した後、90〜100℃で蒸留して香気を回収し、
・得られた香気を冷却濃縮された抽出液と混合することを特徴とする、
(1)のコーヒーエキスの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、全体として新規な製品、すなわち、100%天然原料由来であり、コーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するが、本質的なコーヒーの風味を維持しているコーヒーエキスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、特許文献1に記載された装置を示した図である。
【図2】図2は、試料Bをにおい嗅ぎガスクロマトグラフィーに供したときのクロマトグラムを示す図である。試料Cも同様のクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、試料BおよびCで検出された主な香気成分を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、天然のコーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するとともに、本質的なコーヒー風味を維持したコーヒーエキスおよびその製法に関する。
【0016】
本発明のコーヒーエキスはインスタント飲料(RTD)用ミックスの原料として消費者に使用され得る。
【0017】
本発明の第一の態様は、品質、香気プロフィールおよび革新性に関して際立った特徴を有し、インスタント飲料(RTD)の基本的要求を満たす100%天然原料由来のコーヒーエキスである。
【0018】
特に、本発明は全体として新規な製品、すなわち、100%天然原料由来であり、天然のコーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するという利点を有し、さらに本質的なコーヒーの風味を維持しているコーヒーエキスを提供する。このような製品は従来の技術では開示されていなかった。
【0019】
本発明の他の態様は、コーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気を有するコーヒーエキスを得るための製造方法である。
【0020】
本発明における、コーヒーの本質的な風味が維持されているとは、コーヒーの良好な風味がしっかりと感じられ、不快な風味や、好ましくない風味が感じられないことをいう。
【0021】
本発明において、コーヒー加工および香気の製造と回収を行う業者の公知の技術および経験に基づき、下記の原料、機器等が用いられる。
【0022】
使用され得る原料
・アラビカコーヒー生豆100%
・ロブスタコーヒー生豆100%
・アラビカおよびロブスタコーヒー生豆ブレンド品
・100%天然ストロベリーパルプ
・100%天然ブラックベリーパルプ
【0023】
本発明のコーヒー原料として、100%アラビカコーヒー、100%ロブスタコーヒーおよび100%アラビカコーヒーおよびロブスタコーヒー生豆ブレンド品が使用される。各コーヒーは以下のように区分される。
【0024】
アラビカコーヒー
本発明のアラビカコーヒーとは、アラビカ種のコーヒーをいう。アラビカ種はエチオピア起源の品種で、栽培される地域の土壌、標高、気候の違いにより、香気、風味、色調等の異なる、多数の種類を含む。アラビカ種の代表例として、ティピカ、ジャワ、ブルボン等が挙げられる。なお、後述するロブスタ種とのハイブリッドで、アラビカ種と類似の風味を有するものも、アラビカ種に含めてもよい。
【0025】
一般的に、アラビカコーヒーは海抜800から2000メートルの間の高度で成育し、プランテーションで栽培される。高地で栽培されたものほど風味が良い傾向がある。主要な産地はブラジル、コロンビア、ハワイ、ジャマイカ、インドネシア、エチオピア、タンザニア、ケニア等である。アラビカ種は水洗での乾燥処理のものと、非水洗の乾燥処理のものがある。非水洗処理は豆の裂け目に土が残る等の欠点があり、水洗処理のものが均一な品質のものが得られやすい。アラビカコーヒーはカフェイン濃度が1%から1.5%またはそれ未満であり、相対的にカフェイン含量の多い(約3%前後)ロブスタコーヒーとは大きく異なる。また、100%アラビカコーヒーは香気が強く、口当たりがよいので好ましい。
【0026】
ロブスタコーヒー
本発明のロブスタコーヒーとはロブスタ種のコーヒーをいう。ロブスタ種は正確にはカネフォラ種の一種とされているが、コーヒー市場はほぼロブスタ種で占められており、ロブスタ種という名称はカネフォラ種全般を示す用語として当業者に認識されている。ロブスタ種の代表例として、コニロン、コウイロイ(Kouilloi)、ニアウリ(Niaouili)、ウガンダ等が挙げられる。なお、ロブスタ種とアラビカ種とのハイブリッドで、ロブスタ種と類似の風味を有するものも、ロブスタ種に含めてもよい。
【0027】
主要な産地はアフリカ、ベトナム、インドネシア、ブラジル等の地域である。2から4%と、比較的カフェイン含量の多いコーヒーである。それらは黄色がかった豆であり、穀物臭を示す。焙煎により、強いボディ、濃い色調および口に残る鋭い苦味を伴う強い風味を有する強いコーヒーを生産する。ロブスタ種は通常は非水洗で乾燥処理される。
【0028】
アラビカおよびロブスタコーヒーブレンド品
より強いボディをもつ苦いコーヒーが欲しいときはロブスタ含量を高め、より香気の強い、口当たりの良いコーヒーが望まれるときはアラビカ含量を高めるというように、所望の風味、香気等に応じて異なるタイプのブレンド品が調製できる。ブレンド比率は、任意の比率が可能である。
【0029】
レッドフルーツ
本発明のレッドフルーツは、赤色の色素を含む果物全般をいう。代表例として、ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリー、カシス等のベリー類、チェリー、トマト等が挙げられる。特にストロベリー、ブラックベリーが好ましい。原料として使用するレッドフルーツの形態は特に限定されないが、そのまま、ピューレ、パルプ、粉末等の形態が使用できる。特に、パルプを使用することが好ましい。レッドフルーツ原料として、100%天然である事が保証され、添加物を含まないものを使用することが好ましい。
【0030】
使用機器
試験レベルでは、コーヒーおよびレッドフルーツの香気回収にデジタルロータリーエバポレーター等の機器が使用でき、抽出液の調製のために33kgコーヒー可溶性固形分/時程度の規模の試験的抽出プラントが使用できる。
【0031】
工業レベルでは、コーヒーおよびレッドフルーツの香気回収のために蒸留塔等の設備が利用でき、抽出液の調製のために330kgコーヒー可溶性固形分/時程度の規模の工業的抽出プラント、コーヒー用遠心分離機およびロータリーエバポレーターが使用できる。
【0032】
得られた香気および抽出物の測定および品質管理のために公知の装置、例えば色差計、pH測定器、遠心分離機、滴定装置、屈折計、質量分析ガスクロマトグラフ(GCMS)、水分活性測定器、および菌測定装置等が使用できる
【0033】
官能分析は、コーヒー抽出物および香気について訓練を受けた複数のパネリストによって行われる。
【0034】
焙煎
コーヒー生豆は、焙煎により焙煎コーヒー豆となる。焙煎方法については通常の焙煎方法が利用でき、例えば直火式、熱風式、半熱風式焙煎機等が使用できる。焙煎温度、焙煎環境についても通常の条件でよい。200から500kgの焙煎容量を有する熱風式工業的ドラム式焙煎装置の使用が好ましい。焙煎温度は180から220℃、焙煎時間は10から15分とすることができる。焙煎により、通常コーヒー豆が15〜25%重量減少する。
【0035】
抽出
コーヒー豆は粉砕され、溶媒により抽出されるが、その粉砕度合いに特に制限はない。また、溶媒の種類も通常コーヒー抽出に使用されるものであれば特に制限はない。抽出溶媒の例として、水、熱水等が挙げられる。
【0036】
試験的抽出
抽出装置は特に限定されるものではないが、試験レベルでは、固−液コーヒー試験的抽出器等が利用できる。抽出条件として、例えば抽出溶媒として水を用い、抽出温度150〜200℃、水の流量250〜350リットル/時、蒸気圧8〜14bar、および挽き豆導入温度25〜35℃等とすることができる。
【0037】
工業的抽出
工業レベルでは、固−液工業的コーヒー抽出器等が利用できる。抽出条件として、例えば抽出溶媒として水を用い、抽出温度150〜200℃、水の流量2500〜3500リットル/時、蒸気圧8〜14barの間とすることができる。この場合、250から300kgの挽き豆から、収率25〜45%が得られる。
【0038】
得られた抽出液は、遠心分離、ろ過等の公知の方法で清澄化した後、そのまま、あるいは希釈して濃度を調整する。この際の濃度は10°Brix以上が好ましく、10〜18°Brix(可溶性固形分で8.33%から15%)が好ましい。その後、一部は抽出液濃度の調整のため濃縮工程に供される。濃縮は遠心濃縮、冷却濃縮等公知の方法で実施できる。例えば、1500〜2500リットル/時の流量、圧力4〜5barの工業的エバポレーターを使用できる。工業的エバポレーターを使用する場合、濃縮の処理温度は熱による劣化を避けるため、40〜70℃とすることが好ましい。また、冷却濃縮法は熱による劣化が少なく、好ましい。
【0039】
香気回収
コーヒーおよびレッドフルーツの香気を回収する原料として、コーヒーエキス、レッドフルーツの混合物を使用する。コーヒーエキス、レッドフルーツの可溶性固形分を調整し、混合する。一例として、可溶性固形分12〜20%のコーヒー抽出物、可溶性固形分5〜10%のストロベリー、可溶性固形分5〜10%のブラックベリーを混合し、可溶性固形分換算でそれぞれ50:25:25、40:30:30、60:20:20の比率の混合物を原料とすることができる。
【0040】
香気回収に用いる装置として、試験レベルでは、ロータリーエバポレーター等を用いることができ、工業レベルでは、蒸留塔等を用いることができる。ロータリーエバポレーターを用いる場合、吸引圧95〜100mbar、回転数80〜100rpmとすることが好ましい。蒸留塔を用いる場合、処理温度は80〜100℃が好ましく、流速は60〜100リットル/時とすることが好ましい。
【0041】
回収された香気は、濃縮された抽出液と混合され、本発明のコーヒーエキスとなる。香気は、濃縮された抽出液に対して5〜20%の割合で混合することが好ましい。本発明のコーヒーエキスは、可溶性固形分が40%以下であることが好ましい。
【0042】
本発明のコーヒーエキスの形態は食品がとり得るものであれば特に限定されず、液体、ペースト、粉末、顆粒、錠剤等の形態をとり得る。
【0043】
本発明のコーヒーエキスはいくつかの用途に使用し得る。
・インスタント飲料調製のベースとして
・UHT処理および包装し、液体コーヒーとして
・乾燥、粉末化して、コーヒーおよびレッドフルーツの香気を有する粉末コーヒーとして
・コーヒー風味とレッドフルーツ香気を有するアイスクリーム調製用のベースとして
・チョコレート、菓子、およびソースなどの他の食品のためのコーヒー風味とレッドフルーツ香気のベースとして
【0044】
コーヒーとレッドフルーツの香気が組み合わせられた、本発明のコーヒーエキスは通常のコーヒーエキスと同様に流通、保存することが出来る。例えば、−22℃以下の温度で冷凍して、12ヶ月の品質保持期限を有する。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されるというものではない。
【0046】
pH測定器、ガスクロマトグラフ、粘度計、屈折計などの当業者に公知の機器が、酸度、pH、沈殿物、粘度、水分活性、および濃度などの本発明の抽出物の計測および品質試験に使用される。
【0047】
以下、本質的なコーヒーの風味を維持し、100%天然のコーヒーおよびレッドフルーツの香気を強調する、レッドフルーツとコーヒーの香気を加えた本発明のコーヒーエキスの具体的な製造方法を説明する。
【0048】
アラビカコーヒー(もしくはロブスタコーヒーまたはアラビカコーヒーとロブスタコーヒーの混合物)を、工業的熱風式ドラム型コーヒー焙煎機でバッチごとに、コーヒー豆投入量200〜500kg、焙煎温度180℃〜230℃、焙煎時間10〜15分の焙煎工程に供した。得られたコーヒーの減量は15〜25%、湿度は6%未満、ハンターLabによるL値は14〜20であった。
【0049】
その後、焙煎されたコーヒー豆を工業的抽出器にて抽出した。水入り口温度は160〜186℃、水の流量は2000〜3500リットル/時、10〜15barに加圧し、コーヒー抽出液を500〜1200kg/時回収した。抽出液を希釈し、濃度10〜18°Brix(可溶性固形分で8.33〜15%)、pH4.8〜5.2の抽出液が得られた。
【0050】
抽出液を清澄化した後、一部を低温濃縮工程に供した。低温濃縮機を用い、濃度10〜18°Brix(可溶性固形分で8.33〜15%)の抽出液を、流量600〜1200kg/時で導入し、濃度34〜42°Brix(可溶性固形分で28.3%〜35%)に濃縮された抽出液を、400〜600kg/時の出口流量で得た。
【0051】
残りの抽出液を、10〜18°Brixの濃度のまま、可溶性固形分5〜10%、pH3〜4のストロベリーパルプおよび可溶性固形分5〜10%、pH2.5〜3.5のブラックベリーパルプと、下記の可溶性固形分を基にした比率で混合した。
コーヒー:ストロベリー:ブラックベリー=50:25:25(試料A原料)、40:30:30(試料B原料)、60:20:20(試料C原料)。
【0052】
蒸留工程のため、均質化した混合物をそれぞれ投入量50〜100リットル/時、大気圧、動作温度90〜100℃で蒸留塔に投入した。コーヒーおよびレッドフルーツの組み合わせられた香気が80〜120リットル/日得られた(それぞれ試料A〜C)。
【0053】
得られた香気は下記の特性を示した。
【0054】
官能プロフィール
風味:広がりのあるあと口、木の香調と良好なワイン様の酸味を有する。
香気:炒ったアーモンドの香調、非常に強い果物の甘い香り、ならびにより軽いレッドフルーツおよびコーヒーの香気を有する。この香気に特有のクロマトグラムを図2に示す。
この香気はにおい嗅ぎガスクロマトグラフによる分析によると、図3に示す主要な化合物を有する(領域は標準化した百分率)。得られた香気成分をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、表1に示す成分が含まれていた。
【0055】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0056】
香気プロフィール
表2は試料Bをにおい嗅ぎおよびカップテーストによって評価したコーヒーおよびレッドフルーツ香気プロフィールのコメントを示す。訓練された数名のパネリストによって、におい嗅ぎ装置を接続したガスクロマトグラフにより、コーヒーに特有の結果が得られた。試料Cも同様の傾向を示した。
【0057】
【表2】

【0058】
におい嗅ぎクロマトグラフィーおよび官能プロフィールの結果によると、得られたコーヒー香気は香気および風味の特徴として、トースト、ジャスミン様の花、チョコレート、スイートアーモンドおよびフルーツ様の香調を有していた。
【0059】
コーヒー香気の典型的な化合物に加えて、ブラックベリーおよびストロベリーのフルーツノートのキー化合物も同定された。
36.83分 4−メチル−1−(1−メチルエチル)−シクロヘキセン−1−オール
23.93分 シクロブタンカルボン酸オクチル
5.80分 酢酸エチル
25.02分 2−ヘキサノール
【0060】
得られたコーヒーおよびレッドフルーツの香気を、冷却濃縮した抽出液に可溶性固形分を基に5〜20%、撹拌しながら混合した。得られたコーヒーエキスは36〜46°Brix(可溶性固形分で30〜38.2%)の濃度を示し、pHは4.8〜5.2の間であった。訓練されたパネリスト2名による検査の結果、得られたコーヒーエキスは本質的なコーヒー風味が維持され、強いコーヒーおよび果物の香気と、平均的なボディと酸度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、本質的なコーヒー風味が維持された、レッドフルーツとコーヒーの組み合わせられた香気を有するコーヒーエキスを提供するため、広い食料品分野への適用が可能である。
【符号の説明】
【0062】
3 コーヒー挽き豆
4 タンク
11 フルーツパウダー
12 タンク
13 出口管
14 流量調節器
15 ミキサー付き混合タンク
16 包装容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コーヒーエキス、および(b)果物の混合品、を含むコーヒー香気が改変されたコーヒーエキス。
【請求項2】
果物がレッドフルーツである、請求項1記載のコーヒーエキス。
【請求項3】
コーヒーエキスに使用されるコーヒーがアラビカコーヒー、ロブスタコーヒー、またはそれらのブレンド品である、請求項1記載のコーヒーエキス。
【請求項4】
レッドフルーツが、ストロベリーおよびブラックベリーである、請求項2記載のコーヒーエキス。
【請求項5】
最終的に得られるコーヒーエキスが、果物とコーヒーの組み合わせられた香気を有し、可溶性固形分が40%以下である、請求項1〜4いずれか1項記載のコーヒーエキス。
【請求項6】
コーヒー、ストロベリー、ブラックベリーの比率がそれぞれ50:25:25、40:30:30、または60:20:20であることを特徴とする、請求項1または4記載のコーヒーエキス。
【請求項7】
ストロベリーおよびブラックベリーを、可溶性固形分で1〜10%含むことを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項記載のコーヒーエキス。
【請求項8】
果物が香気化合物として
4−メチル−1−(1−メチルエチル)−シクロヘキセン−1−オール、
シクロブタンカルボン酸オクチル、
酢酸エチル、および
ヘキサノール、
を含むことを特徴とする、請求項1記載のコーヒーエキス。
【請求項9】
・アラビカ、ロブスタ、またはそれらをブレンドしたコーヒー豆を180〜230℃で10〜15分間、15〜25%減量するように焙煎し、
・160〜186℃の温度および10〜15barの圧力でコーヒーを浸出して抽出液を得て、
・抽出液の一部を、入口濃度が10〜18°Brix(可溶性固形分で8.33〜15%)または15%以下のコーヒー可溶性固形分で、出口濃度が34〜42°Brix(可溶性固形分で28.3〜35%)または35%以下のコーヒー可溶性固形分である冷却濃縮に供し、
・抽出液の残りを10〜18°Brixに希釈し、ストロベリーパルプおよびブラックベリーパルプと混合した後、90〜100℃で蒸留して香気を回収し、
・得られた香気を冷却濃縮された抽出液と混合することを特徴とする、
請求項1記載のコーヒーエキスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−100646(P2012−100646A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16424(P2011−16424)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(511025949)
【Fターム(参考)】