説明

レトルトクリームソース、電子レンジ調理用容器詰食品及びクリーム煮料理の製造方法

【課題】具材をレトルトクリームソースに加えて加熱調理することによりクリーム煮料理を得る際に、その加熱を電子レンジ加熱で行っても、ふきこぼれが生じず美味しいクリーム煮料理が得られるレトルトクリームソースを提供する。
【解決手段】具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースであって、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の4質量%以下であり、卵黄の含有量が生換算でレトルトクリームソース全体の0.1〜2質量%であり、モノアシル型親水性乳化剤の含有量がレトルトクリームソース全体の0.001〜1質量%であるレトルトクリームソース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱調理に適したレトルトクリームソース、そのレトルトクリームソースが充填された容器に固形具材を投入して電子レンジ調理を行うための電子レンジ調理用容器詰食品、及びそれを利用してクリーム煮料理を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活が洋風化した現在、人気のある代表的メニューの一つとして、タラ、鶏肉、牛肉、ブロッコリーなどの具材をクリームソースで煮込んだクリーム煮料理がある。クリーム煮料理に用いるクリームソースは、例えば、トマトソース、ホワイトルー、あるいは、ソテーした香味野菜に白ワインを加えたソースなどベースとなるソースに生クリームを加えることで、ベースとなるソースに濃厚な乳風味となめらかな口当たりを付加した比較的低粘度のソースである。クリーム煮料理は、例えば、煮込む具材をソテーした後、トマトソース、ホワイトルーを牛乳で希釈したソース、あるいはソテーした香味野菜に白ワインを加えたソースなどの比較的低粘度のベースソースを加えて煮込み、ベースソースの味を具材に馴染ませた後、最後に生クリームを加えてひと煮立ちさせて製造される。このように製造されるクリーム煮料理は、具材を加熱しすぎたりして具材の食感を損なったりしないように、火加減を調整しながら加熱する必要があって調理に手間がかかる。そこで、家庭、レストラン、弁当屋、あるいは惣菜店などでは、簡便に出来たてのクリーム煮料理を提供できるような加工食品が望まれていた。
【0003】
一方、近年、家庭やレストラン等で簡便に料理を提供することができるレトルト食品の需要が増加している。レトルト食品は、容器に既に完成した調理食品が充填されているので、家庭、レストラン、弁当屋、あるいは惣菜店などでは、電子レンジで30秒〜1分ほど加熱するだけで、人々に供するに足る調理料理を手軽に提供でき、また、レトルト処理により加熱殺菌されているので長期保存も可能である。しかしながら、レトルト処理は、過度の熱がかかるため、具材によっては、予め加熱調理したものを容器内に収容してレトルト処理し、食するときに再度加熱すると、色や香りが劣化したり、水がでたりするものがある。また、レトルト処理による過度の加熱により具材にクリームの味が過度に染み込み、具材そのものの味が失われ易い。このため、クリーム煮料理を容器に詰めてレトルト処理して容器詰食品としても、その美味しさには限界があった。
【0004】
ところで、特許文献1(特開2006−44708号公報)には、ジッパーを備えた水蒸気透過性調理用袋に、野菜や肉などの生鮮食品具材と調味料とを密封した調理用バッグが提案されている。この調理用バッグを電子レンジで数分間、加熱調理した場合、生鮮食品具材はレトルト処理を受けずに電子レンジ加熱調理により初めて加熱されるので、具材にクリームの味が過度に染み込んで具材そのものの味が失われたりし難いことが期待できる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−44708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、電子レンジ調理が可能となる特許文献1記載の調理用バッグと長期保存が可能となるレトルト食品の技術をクリーム煮料理に応用することを着想した。そして、レトルトクリームソースと具材とを用意し、これらを電子レンジ調理用容器に充填して電子レンジで加熱調理を開始したところ、クリームソースが電子レンジ加熱の沸騰により沸き上がり、容器内に泡が充満して容器の蒸気抜きのための開口部から調味液がふきこぼれるという問題が生じた。
【0007】
消泡技術としては、従来、低HLBのショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等の親油性の乳化剤を添加することが知られているが、このような親油性の乳化剤をレトルトクリームソースに添加すると、クリームソースの乳化が壊れて油脂成分が分離するため、このような従来技術は採用できない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、具材をレトルトクリームソースに加えて加熱調理することによりクリーム煮料理を得る際に、その加熱を電子レンジ加熱で行っても、ふきこぼれが生じず美味しいクリーム煮料理が得られるレトルトクリームソースを提供することである。また、本発明は、そのようなレトルトクリームソースを使用する電子レンジ調理用パウチ詰食品及びそれを使用するクリーム煮料理の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、レトルトクリームソースに配合する原料と、レトルトクリームソースの成分のうち特に蛋白質に着目し鋭意研究を行った結果、卵黄を配合し、レトルトクリームソースの蛋白質含有量を特定濃度以下とすることにより、レトルトクリームソースに具材を加えて電子レンジ加熱を行っても電子レンジ加熱調理中の泡の沸き上がりが抑制され、ふきこぼれが防止されることを見出した。更に、この場合、卵黄配合量が多すぎると沸騰状態で加熱した後のクリーム煮料理のソース部に卵黄の凝集物が生じて口あたりがざらつく場合があったものの、卵黄の配合量を特定量以下としてモノアシル型親水性乳化剤を特定量配合することにより、電子レンジ加熱後のクリームソース煮のソース部がなめらかな口あたりとなることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースであって、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の4質量%以下であり、卵黄の含有量が生換算でレトルトクリームソース全体の0.1〜2質量%であり、モノアシル型親水性乳化剤の含有量がレトルトクリームソース全体の0.001〜1質量%であるレトルトクリームソースを提供する。
【0011】
また、本発明は、上述のレトルトクリームソースが容器に充填されてなり、容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品を提供する。特に、容器として、固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチを使用することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上述の電子レンジ調理用容器詰食品の容器内に具材を投入して電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レトルトクリームソースに卵黄を配合し、レトルトクリームソースの蛋白質含有量を特定濃度以下としているので、電子レンジ加熱時のクリームソースのふきこぼれを抑制することができる。また、卵黄の配合量を特定量以下とするとともにモノアシル型親水性乳化剤を特定量配合しているので、得られたクリーム煮料理のソース部をなめらかな口あたりとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のレトルトクリームソースは、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするソースである。なお、本発明において、レトルトクリームソースの性状(例えば、粘度や食塩濃度等)や構成成分の含有量等を規定する場合、クリームソースが目視で均一な液状と評価できる場合には、そのままのクリームソースに対し、必要な測定、試験あるいは評価を行い、得られた結果に基づき、前述の性状や含有量を規定すればよい。他方、クレームソースにタマネギやマッシュルーム等の具材が含まれている場合には、クリームソースを10メッシュの網目に通し、網目を通り抜けた液状物に対し、必要な測定、試験、評価を行い、得られた結果に基づき、前述の性状や含有量を規定すればよい。
【0015】
本発明が対象とするレトルトクリームソースとは、少なくとも調味料及び乳原料を含有する乳化状のソースであって、常法でレトルト処理されたものである。調味料としては、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、動植物エキス類、香辛料等が挙げられる。乳原料としては、牛乳、クリーム、バター、チーズ、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダーなどが挙げられる。クリームソースには、トマト、ホワイトルー、香味野菜、あるいは、白ワインなどの味付けのベースとなる風味原料を配合したものであることが好ましい。具体的なクリームソースとしては、ホワイトルーを加えたホワイトクリームソース、トマトを加えたトマトクリームソース、白ワインを加えたヴァンブランソースなどが挙げられる。
【0016】
本発明においては、このようにレトルトクリームソースを用いるが、レトルトクリームソースに具材を加えて電子レンジで加熱調理すると、調味液が電子レンジ調理により沸騰して沸き上がり、容器内に泡が充満して容器からふきこぼれる問題が生じることから、本発明のレトルトクリームソースはその蛋白質の含有量を、レトルトクリームソース全体の4質量%以下としてある。後述するように、レトルトクリームソースに卵黄を配合する必要があるが、このように蛋白質含有量を特定量以下としてあることにより、具材を加えて電子レンジで加熱調理する際に調味液が沸騰して沸き上がることが抑制され、ふきこぼれが防止される。電子レンジ加熱時の沸き上がり抑制効果がより得られ易い点から、前記蛋白質の含有量は、好ましくは3質量%以下である。これに対して、前記蛋白質含有量が4質量%を超えると、電子レンジ加熱時にふきこぼれが顕著になる。一方、レトルトクリームソースの蛋白質含有量が少なすぎると良好なコク味のあるクリームソースの風味が得られ難いことから、前記蛋白質含有量は好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。なお、蛋白質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載の窒素定量換算法に準じて測定した値である。
【0017】
本発明において使用できる蛋白質としては、乳蛋白質、大豆蛋白、卵蛋白等が挙げられるが、良好な乳風味が得られる点からクリームソースの全蛋白質に占める乳蛋白質の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0018】
また、本発明のレトルトクリームソースは、卵黄を生換算でレトルトクリームソース全体の0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%含有する。上述のようにレトルトクリームソースの蛋白質含有量を特定量以下とすることに加えて、このように特定量の卵黄を含有することにより、具材を加えて電子レンジで加熱調理する際の沸き上がりが抑制されてふきこぼれが防止される。これに対して、卵黄含有量が前記範囲よりも少ないと電子レンジで加熱調理する際の沸き上がり抑制効果が充分に得られず、卵黄含有量が前記範囲よりも多いと沸騰状態で加熱した後のクリーム煮料理のソース部に卵黄の凝集物が生じてざらついた口あたりとなる。前記卵黄含有量は、電子レンジで沸き上がり抑制効果がより得られ易い点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1%以上である。
【0019】
前記本発明の卵黄としては、食用として一般的に用いている卵黄であれば特に限定するものではない。例えば、殻付生卵を割卵して卵黄と卵白を分離して溶きほぐして調製した生液卵黄をはじめ、当該生液卵黄に殺菌処理、冷凍処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩若又は糖類等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したもの等が挙げられる。また、本発明の卵黄としては、殻付生卵を割卵して溶きほぐして調製した生液全卵、あるいは生液卵黄と生液卵白とを任意の割合で混合したもの、あるいはこれらに上記処理を施したもの等を用いてもよい。
【0020】
更に、本発明のレトルトクリームソースは、モノアシル型親水性乳化剤をレトルトクリームソース全体の0.001〜1質量%含有する。このように特定量のモノアシル型親水性乳化剤を含有することにより、電子レンジ加熱により沸騰状態で加熱した場合であっても、ソース部がなめらかな口あたりを有するクリーム煮料理が得られる。これに対して、モノアシル型親水性乳化剤の含有量が前記範囲よりも少ないと沸騰状態で加熱した後のクリーム煮料理のソース部に卵黄の凝集物が生じてざらついた口あたりとなる傾向がある。一方、モノアシル型親水性乳化剤の含有量が前記範囲よりも多いと、かえってふきこぼれが生じ易くなり好ましくない。前記モノアシル型親水性乳化剤は、電子レンジ加熱時間が長時間となってもふきこぼれが懸念される場合には、0.5質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
前記本発明のモノアシル型親水性乳化剤とは、1個のアシル基を有し、水又は温水に分散する性質を有する食品に使用可能な乳化剤のことであり、具体的には、例えば、ジアシルグリセロリン脂質をホスフォリパーゼAあるいはホスフォリパーゼAの酵素で1位あるいは2位のアシル基を加水分解し、水酸基に変換したモノアシルグリセロリン脂質であるリゾリン脂質や、HLB(親水性親油性バランス)が、10以上のショ糖脂肪酸エステル若しくはポリグリセロリン脂肪酸エステル等が挙げられる。特に、これらの乳化剤のうち卵黄リゾリン脂質を使用すると、クリーム煮料理のソース部がよりなめらかな口あたりとなり易く好ましい。
【0022】
なお、モノアシル型親水性乳化剤としてリゾリン脂質を用いる場合は、リゾリン脂質そのものを使用してもよいが、トリグリセリド、コレステロール、リン脂質等の他の脂質成分も含有した一般的に卵黄リゾレシチン、大豆リゾレシチン、酵素処理卵黄レシチン、酵素処理大豆レシチン、酵素処理卵黄油等と称されるものも使用してよい。この場合、脂質混合物中のリゾリン脂質の部分は、本発明でいう脂質の一部に相当する。
【0023】
本発明のレトルトクリームソースは、乳原料を含有する乳化状のソースであるが、油脂原料としては、乳原料である生クリームやバター以外の食用油脂を配合してもよい。このような油脂原料としては、例えば、菜種油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、米油、トウモロコシ油、これらを精製したサラダ油等の植物性油脂、あるいは、ラード、ヘット、卵黄油等の動物性油脂等が挙げられる。更に、これらの油脂を硬化、エステル交換等の処理を施したものの他、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0024】
また、油脂原料としては、バターやバターオイルなどの乳脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳化剤、水等を添加して製造した還元クリーム、乳脂肪分および植物性脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳化剤、安定剤、水等を添加して製造したコンパウンドクリーム、植物性脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳由来以外の蛋白質、乳化剤、安定剤、水等を添加して製造した合成クリーム等を配合してもよい。
【0025】
前記油脂原料の配合量としては、本発明のレトルトクリームソースにおける脂質の含有量が、レトルトクリームソース全体の好ましくは2〜30質量%、より好ましくは4〜25質量となる配合量とすることが好ましい。脂質含有量が2質量%未満であると、レトルトクリームソースに好ましいこく味を付与することができず、30質量%を超えると、レトルトクリームソースが油っぽくなるばかりか電子レンジ加熱時に油脂分の分離が生ずる可能性が高まる。なお、脂質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載のエーテル抽出法に準じて測定した値である。
【0026】
本発明のレトルトクリームソースの粘度としては、好ましくは1〜10Pa・s、より好ましくは1.5〜8Pa・s、更に好ましくは1.5〜5Pa・sである。粘度が好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは1.5Pa・s以上としてあることにより電子レンジ加熱調理中のクリームソースの沸き上がり抑制効果がより得られやすい。また、10Pa・sを超えると、具材を加えてクリーム煮料理として煮込みにくくなるので、好ましくは10Pa・s以下、より好ましくは8Pa・s以下、更に好ましくは5Pa・s以下とする。なお、粘度の測定は、当該ソースをBH型粘度計で、品温60℃、回転数20rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上のときローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。
【0027】
本発明のレトルトクリームソースの粘度の調整は、電子レンジ調理中のクリームソースの沸き上がりを抑制する効果が得られ易い点から、澱粉を用いる。澱粉としては、例えば、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉などの生澱粉、これら生澱粉に常法によりα化処理を行ったα化澱粉、生澱粉に常法により湿熱処理を行った湿熱澱粉、更に、生澱粉に常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの一種又は二種以上の処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの加工澱粉などが挙げられる。これらの澱粉の中でも、具材にソースが絡み易い好ましい性状を付与できるという点から、湿熱処理澱粉又は加工澱粉を好ましく使用できる。なお、澱粉の使用量は、レトルトクリームソースの粘度が前記粘度となるに必要な量を配合すればよく、具体的には、レトルトクリームソース全体の好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0028】
本発明のレトルトクリームソースの食塩濃度は、具材を適度に味付けする点から、好ましくは1〜3質量%、より好ましくは1.1〜2質量%とする。食塩濃度は、塩化ナトリウムの濃度又はそれに換算した食塩相当濃度をいい、常法により試料を希酸抽出法で調製して原子吸光法でナトリウム含量を測定し、所定の係数(2.54)を乗じて算出することにより求められる。
【0029】
本発明のレトルトクリームソースには、以上述べた原料の他に、水飴、デキストリン、還元デキストリン、サイクロデキストリン、ソルビトール、トレハロース等の糖類、食酢、クエン酸等の有機酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、着色料、香料、甘味料、保存料等の原料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0030】
本発明のレトルトクリームソースは、上述した蛋白質原料、脂質原料、調味料、及びその他の成分を、加熱撹拌したものを、レトルトパウチに密封し、レトルト処理することにより製造することができる。
【0031】
なお、本発明のレトルトクリームソースでクリーム煮すべき対象となる具材としては、クリーム煮料理に適したものを適宜選択して使用すればよい。例えば、キャベツ、ホウレン草、小松菜、ナス、インゲン、ブロッコリー、ダイコン、ニンジン、カブ、カボチャ、ジャガイモなどの野菜類、まいたけ、しめじなどのきのこ類、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉などの獣肉類、スズキ、タラ、たこ、いか、エビ、ムール貝、ホタテなどの魚介類などを挙げることができる。これらの具材は、容器に投入する前に予め、下茹で、油通し、あく抜きなどの下処理をしておくことができる。
【0032】
また、本発明において電子レンジ加熱調理とは、加えた具材の好ましいテクスチャーや旨みを加熱により引き出し、また、クリームソースで具材を調味する点から少なくともクリームソースが沸騰する加熱条件、具体的には、クリームソースと加えた具材の合計300gあたり、好ましくは出力600W×3分相当以上の加熱をすることを意味する。ここで600W×3分相当とは、出力300Wであれば6分、出力400Wであれば、4.5分、出力800Wであれば2.25分というように、出力ワット数と時間との積の値が同じになるように換算して計算した条件以上の電子レンジ加熱を行うことである。また、クリームソースと具材の合計が例えば600gであれば、出力ワット数と時間との積の値が300gの場合の2倍となるように電子レンジ加熱を行う。なお、従来のレトルト処理済みの調理食品を単に温めるために行う電子レンジ加熱は、通常沸騰する条件で行われることは無く、この場合、調理食品が電子レンジ調理により沸騰して沸き上がることもないことから、上述したふきこぼれの問題も生じない。前記加熱条件の上限としては、沸騰状態を持続して投入した具材が適度に加熱調理される条件とすればよく、具体的には、投入した具材の種類にもよるが、クリームソースと加えた具材の合計300gあたり、好ましくは出力600W×20分相当以下の加熱条件とすればよい。
【0033】
次に、本発明のレトルトクリームソースが容器に充填されてなり、容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品について説明する。
【0034】
この電子レンジ調理用容器詰食品に使用する容器としては、レトルト処理及びレンジ調理が可能な種々の容器を用いることができる。このような容器としては、例えば、耐熱性樹脂性の成形容器の他、底面にマチをもたせたスタンディングパウチ、底面及び側面にマチをもたせたガゼット袋、四方シール袋などが挙げられる。また、これら容器としては、容器を開封して具材を投入した後電子レンジ調理する前に当該容器を再封するための再封機能や、電子レンジ加熱調理時に蒸気を容器外に排出する蒸気抜き機構を備えていることが好ましい。
【0035】
本発明においては、容器に充填するソースの容積に関し、電子レンジで加熱調理する際のふきこぼれを防止するために、容器に充填するソースの充填量を少なくすることが好ましい。一方、あまり充填量が少なすぎても投入した具材とソースとが絡み難く、うまく煮込めなくなる傾向がある。従って、例えば、容器としてジッパー部を備えたパウチを用いた場合、パウチの最大密封充填容積の10〜40%となるようにソースをパウチに充填することが好ましい。よりふきこぼれ防止効果が得られ易い点からは、ソースの充填量は、パウチの最大密封充填容積の好ましくは10〜35%、より好ましくは10〜30%である。なお、本発明におけるパウチの最大密封充填容積とは、パウチのジッパー部を閉じた時に、パウチに密封充填できる最大の容積であり、当該最大密封充填容積の測定は、例えば、パウチに満杯量の清水を充填密封し、そのパウチ内の清水の容積をメスシリンダー等で測定することに行うことができる。
【0036】
以下、電子レンジ調理用容器詰食品の一態様を、図面を参照しつつ詳細に説明する。各図中、同一符号は同一又は同等の要素を表す。
【0037】
図1は、本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の斜視図である。
【0038】
この電子レンジ調理用パウチ詰食品1は、電子レンジ対応のフィルム材料からなる袋状のパウチ10に、予め下調理したクリームソース30を充填密封し、レトルト処理したものであって、これを食するときに、所定の固形具材をパウチ10内に投入し、電子レンジで加熱調理するようにしたものである。ここで、レトルト処理としては、レトルトクリームソース30の中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する処理又はこれと同等以上の加熱調理レベルを有する処理を挙げることができる。
【0039】
図1に示す様に、パウチ10は、底面にマチができるようにプラスチックフィルムを折り曲げて重ね合わせ、両側縁部及び上縁部をヒートシールして側縁シール部11及び上縁シール部12を形成したスタンディングパウチからなる平袋状のレトルトパウチであり、パウチ10の片面の上縁シール部12の近傍には、ジッパー部13が設けられている。
【0040】
ジッパー部13の外方もヒートシールされてジッパーシール部14が形成されており、このジッパーシール部14近傍の側縁シール部11において、ジッパー部13より上の部分に、引き裂きによりジッパーシール部14を切除し、ジッパー部13を開口可能とするためのノッチ15が形成されている。このようにジッパーシール部14をジッパー部13の外方に設けることにより、レトルト処理の間にジッパー部13が開口することなく、密封状態を維持することが可能となる。
【0041】
また、側縁シール部11において、ジッパー部13と上縁シール部12との間には、料理の取出用開口部を引き裂きにより形成するためのノッチ16が形成されている。後述するように、このノッチ16から、電子レンジ加熱調理後のパウチ10を開封し、内容物を一気に皿に移すことにより内容物が撹拌されるので、料理の加熱ムラを容易に解消することが可能となる。
【0042】
また、パウチ10の表面には、電子レンジ加熱調理時にパウチ10が過度に膨張して破裂することを防止する蒸気抜き機構17が設けられている。蒸気抜き機構17としては、従来より電子レンジ対応包装袋で使用されているものを設けることができ、例えば、側縁シール部11の近傍に、弱化シール部18を設け、その弱化シール部18内に切欠19を形成したものとする。また、パウチ10の蒸気抜き機構17としては、密封されていたジッパー部13が電子レンジ加熱時にパウチ10が膨張する際の圧力で部分的に開口するようにジッパー部の嵌合を調整してもよい。
【0043】
レトルト処理においてクリームソースの中心部と外周部をムラなく均一に加熱し、加熱条件を緩くしても、中心部を120℃で4分間相当に加熱できるようにするため、図2に示すように、クリームソース30が充填されている状態で平板50の上に平置きして平らにならした場合のパウチ厚(以下、単にパウチ厚という)Lは、過度に厚くなると、クリームソース30のレトルト処理において、中心部が120℃4分間相当に加熱されるまでに、外周部が過度に加熱され、風味が低下する傾向があるので、好ましくは2cm以下、より好ましくは1.5cm以下、特に好ましくは1cm以下とする。
【0044】
また、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1には、電子レンジ加熱調理で最終的に得ようとする料理の種類、電子レンジ加熱の際にパウチ内に投入することが予定されている固形具材の種類、その固形具材の好ましい切り方、大きさ、投入量、パウチへの投入方法、電子レンジ加熱する際のパウチの姿勢、電子レンジ加熱に必要なワット数と時間、電子レンジ加熱後のパウチの開封方法などの説明表示40を備えることが好ましい。特に、説明表示40の具体的な内容として、固形具材の投入量、大きさ、電子レンジ加熱のワット数と時間については、これらが電子レンジ加熱後の調理の出来の善し悪しに大きく影響するため、できるだけ表示することが望まれる。
【0045】
このような説明表示40は、図1に示したように、パウチ10の表面に印刷することにより形成してもよく、電子レンジ調理用パウチ詰食品1の梱包箱等の外装材に印刷することにより形成してもよく、パウチ10とは別個の紙片に印刷し、その紙片を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に添付するようにしてもよい。
【0046】
本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の製造方法としては、例えば、上縁シール部12が未シール状態のパウチ10を用意し、それにクリームソース30を充填して、上縁シール部12をヒートシールし、レトルト処理を施すことが挙げられる。
【0047】
次に、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品を使用してクリーム煮料理を製造する方法を説明する。
【0048】
まず、レトルト処理したクリームソース30で煮込む対象の固形具材を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に付された説明表示40を参照して選択し、説明表示40の内容に沿って必要に応じてパウチ10への投入サイズにカットする。
【0049】
次に、図3に示すように、電子レンジ調理用パウチ詰食品1のジッパー部13外方のノッチ15からパウチ10を引き裂いてジッパーシール部14を切除した後、ジッパー部13を開封し、そこから固形具材20を矢印のようにパウチ10内に投入する。この場合、固形具材20の洗浄水などが固形具材20に付着してパウチ10内に入るのは別として、固形具材20とは別に、味の調整などの目的でパウチ10内に水を加えることはしないようにすることが好ましい。水を加えると、パウチ10内で固形具材20が接するクリームソース30の濃度にバラツキが生じ、電子レンジ加熱調理後の固形具材20の味付けにもバラツキが生じることが懸念されるからである。なお、固形具材20の投入時に、必要に応じてパウチ10内にあく取りシートを投入してもよい。
【0050】
次に、ジッパー部13を閉じた後、蒸気抜き機構17から内容物がこぼれ難いように蒸気抜き機構17が上部にくるようにパウチ10を電子レンジ内に寝かせ、あるいは立て、その状態で所定のワット数と時間で電子レンジ加熱調理を行う。加熱調理の具体的条件としては、パウチ10に充填されているクリームソース30及び投入した固形具材20の合計300gあたり、好ましくは600W×3分相当以上の電子レンジ加熱条件が挙げられる。
【0051】
なお、図4に、電子レンジ加熱調理の際に、固形具材20が投入され、ジッパー部13を閉じ、電子レンジで加熱調理のための姿勢とした状態であって、電子レンジ加熱前の状態を示す。図4に示されるように、投入された固形具材20で規定されるパウチ内空間高さα(21(固形具材の最高位置)と32(固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向における固形具材の最大間隔)を、クリームソースの深さβ(31(ソース表面)と32(ソースまたは固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向深さ)の好ましくは1.2倍〜10倍、より好ましくは2倍〜10倍となるようにパウチ10に固形具材20を投入する。これにより、クリームソース30に浸漬しない固形具材を確保することができる。固形具材の一部をクリームソース30に浸漬しない状態で電子レンジ加熱調理を開始すると、電子レンジによりクリームソース30が沸騰状態で過度の加熱がなされても固形具材そのものの好ましいテクスチャーや旨みが引き出された美味しい加熱料理を作ることができる。これに対して、ソース表面31が、前記高さよりも高く、パウチ10内に投入した固形具材20の大部分が浸漬した状態で電子レンジ加熱調理を開始した場合は、これらの固形具材20にクリームソースの調味成分が染み込みすぎて素材そのものの味が損なわれて料理全体が均質な味となり易い。
【0052】
また、電子レンジ加熱調理により直接的にクリームソース30と固形具材20が加熱されるのに加え、ジッパー部が閉じられていることから、発生した蒸気によってもクリームソース30と固形具材20とがいわゆる蒸らし効果により加熱される。発生した蒸気は、蒸気抜き機構17から排出されるため、パウチ10は膨張しても、その破裂は防止される。これにより、パウチ10内に充填されていたクリームソース30と、それに浸漬していた及び浸漬していない固形具材20とがそれぞれ適度に加熱調理され、見た目も味も美味しい料理を作ることができる。そして、加熱調理後は、直ちに上縁シール部12近傍のノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて開口し、パウチ10の料理を一気に大皿にあけて、クリームソース30に、それに浸漬していない固形具材20を絡め混合すればよい。また、パウチ10内では料理に加熱ムラがあっても、パウチ10内の料理を大皿にあけることにより、料理が撹拌され、温度の均一化が図られる。また、加熱調理後のパウチ10は大変熱くなっていて、ジッパー部13を手で開封する作業を行うことが困難であるが、このようにノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて料理を取り出すと開封作業を安全に行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、実施例等に基づいて具体的に説明する。
【0054】
[実施例1]
(1)加える具材
パウチ内に後に加える具材を一口大(約3cm角)にカットしたブロッコリー約100gとした。
【0055】
(2)クリームソース
表1に示す配合原料を用意した。まず、脱脂粉乳、卵黄、キサンタンガム、卵黄リゾレシチン、澱粉、食塩、香辛料及び清水をミキサーで撹拌混合し、更に、菜種油を徐々に加えながら撹拌混合して原料混合液を得た。次に、加熱した二重釜に、得られた原料混合液を投入し撹拌しながら品温90℃になるまで加熱することによりクリームソースを得た。
【0056】
(3)電子レンジ調理用容器詰食品(クリームソース入り)
次に、得られたクリームソース200gを弱化シール部と切欠とからなる蒸気抜き機構を有する図1のジッパー付きスタンドパウチ(パウチサイズ:縦220mm×横140mm×折込(マチ)40mm、材質:(パウチ)ポリエステル/ポリアミド/無延伸ポリプロピレン、(ジッパー部)ポリプロピレン、最大密封充填可能容量:820mL)に充填密封後、レトルト処理(115℃、15分間)し、パウチ内にクリームソース(200mL)が充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの食塩濃度は1.5%、クリームソースの粘度は2Pa・sであり、脂質含有量は6.5質量%、蛋白質含有量は3質量%であった。クリームソースの全蛋白質に占める乳蛋白質の割合は、92質量%であった。
【0057】
【表1】

【0058】
(4)電子レンジによる加熱調理
(3)の電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、(1)のブロッコリー100gを入れ、再度ジッパーを閉じた。次に、電子レンジ内にブロッコリー投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。このときのクリームソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/3(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、クリームソースの深さの3倍)であった。これを電子レンジで加熱調理(600W×4分間)をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のクリームソースは、沸騰しても液面上に泡が沸き上がらなかった。
【0059】
得られたブロッコリーのクリーム煮は、ブロッコリー特有の好ましい食感と色調があってコクのあるクリーム風味があり、しかも、ソース部の口あたりもなめらかで大変美味しいものであった。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、澱粉の配合量を0.5質量%に減らしその減少分は清水の配合量を増やして補正した他は実施例1と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの食塩濃度は1.5%、クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は6.5質量%、蛋白質含有量は3質量%であった。クリームソースの全蛋白質に占める乳蛋白質の割合は、92質量%であった。
【0061】
得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、実施例1と同様にブロッコリー100gを入れて、電子レンジ内にブロッコリー投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。このときのクリームソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/3(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、クリームソースの深さの3倍)であった。これを電子レンジで加熱調理をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のクリームソースは、沸騰して液面上に泡が沸きあがっていたが、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mm以下であり問題のない範囲であった。
【0062】
得られたブロッコリーのクリーム煮は、ブロッコリー特有の好ましい食感と色調があってコクのあるクリーム風味があり、しかも、ソース部の口あたりもなめらかで大変美味しいものであった。
【0063】
[比較例1]
実施例2において、卵黄を配合せず、その減少分は清水の配合量を増やして補正した他は実施例2と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は6質量%、蛋白質含有量は2.7質量%であった。
【0064】
[比較例2]
実施例2において、脱脂粉乳の配合量を15質量%に増やし、その増加分は清水の配合量を減らして補正した他は実施例2と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は6.5質量%、蛋白質含有量は5.3質量%であった。
【0065】
[比較例3]
実施例2において、リゾレシチンの配合量を3質量%に増やし、その増加分は清水の配合量を減らして補正した他は実施例2と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は9.5質量%、蛋白質含有量は3質量%であった。
【0066】
[比較例4]
実施例2において、卵黄の配合量を3質量%に増やし、更に、リゾレシチンを配合せず、その増加分は清水の配合量を減らして補正した他は実施例2と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は7質量%、蛋白質含有量は3.2質量%であった。
【0067】
[試験例1]
クリームソースにおける蛋白質含有量及び卵黄含有量が、具材を加えて電子レンジ加熱した際のソースの状態及び得られたクリーム煮料理のソース部の食感に与える影響を調べるため、以下の試験を行った。つまり、実施例1〜2及び比較例1〜4の6種類のレトルトクリームソースを用い、実施例1と同様にそれぞれにブロッコリーを加えて電子レンジで加熱調理した場合の電子レンジ加熱中のクリームソースの状態及び電子レンジ加熱後のクリーム煮料理のソース部の食感について下記評価基準で評価した。結果を表2に示す。A又はBランクと評価されたものが実用上問題のないレベルである。
【0068】
<電子レンジ加熱中のクリームソースの状態の評価基準>
評価ランク 内容
A: 沸騰しているが、液面上に泡が沸き上がっていない。
B: 沸騰して液面上に泡が沸きあがっており、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mm以下である。
C: 沸騰して液面上に泡が沸きあがっており、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さである。
D: 沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ内のヘッドスペースの大部分に泡が充満し、最終的にパウチの蒸気抜きのための開口部からふきこぼれた(なお、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さである)。
【0069】
<電子レンジ加熱後のクリーム煮料理のソース部の食感の評価基準>
評価ランク 内容
○: なめらかな口あたりである
×: ざらつきを感じる。
【0070】
【表2】

【0071】
表2からわかるように、実施例1及び2のクリームソースの場合、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の4質量%以下であり、卵黄を生換算でレトルトクリームソース全体の0.1〜2質量%含有し、モノアシル型親水性乳化剤をレトルトクリームソース全体の0.001〜1質量%含有するので、電子レンジ加熱中のふきこぼれが防止され、しかも、電子レンジ加熱後のクリーム煮料理のソース部の口あたりがなめらかであり、好ましいものであった。なお、実施例1及び2の結果から、電子レンジ加熱中の泡の沸き上がり抑制に関し、粘度が1Pa・s以上であることがより好ましい結果を与えることがわかる。
【0072】
それに対し、卵黄を配合していない比較例1のクリームソース、蛋白質の含有量が4質量%を越える比較例2のクリームソース、及びモノアシル型親水性乳化剤の含有量が1質量%を越える比較例3のクリームソースは、電子レンジ加熱中のふきこぼれが防止されなかった。また、卵黄含有量が生換算で2質量%を超えており、モノアシル型親水性乳化剤を含有していない比較例4のクリームソースは、電子レンジ加熱後のクリーム煮料理のソース部の口あたりがざらついていた。
【0073】
[比較例5]
実施例2において、卵黄の代わりにショ等脂肪酸エステル(HLB1)を配合した他は実施例2と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの粘度は0.5Pa・sであり、脂質含有量は6質量%、蛋白質含有量は2.7質量%であった。
【0074】
得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、実施例2と同様にブロッコリー100gを入れて電子レンジで加熱調理をしたところ、電子レンジ加熱後のブロッコリーのクリーム煮のソース部に油分離が生じた。
【0075】
[実施例3]
表3に示す配合原料を用意した。まず、これらの配合原料をミキサーで撹拌混合して原料混合液を得た。次に、加熱した二重釜に、得られた原料混合液を投入し撹拌しながら品温90℃になるまで加熱することによりクリームソースを得た。
【0076】
続いて、得られたクリームソースを、実施例1と同様にジッパー付きスタンドパウチに充填密封後、レトルト処理し、パウチ内にクリームソースが充填されている電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの食塩濃度は1.5%、クリームソースの粘度は3Pa・sであり、脂質含有量は2.6質量%、蛋白質含有量は0.8質量%であった。クリームソースの全蛋白質に占める乳蛋白質の割合は、79質量%であった。
【0077】
得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、実施例1と同様にブロッコリー100gを入れて、電子レンジ内にブロッコリー投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。このときのクリームソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/3(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、クリームソースの深さの3倍)であった。これを電子レンジで加熱調理をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のクリームソースは、沸騰しても液面上に泡が沸き上がらなかった。
【0078】
また、得られたブロッコリーのクリーム煮は、ブロッコリー特有の好ましい食感と色調があってコクのあるクリーム風味があり、しかも、ソース部の口あたりもなめらかで大変美味しいものであった。
【0079】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図2】電子レンジ調理用パウチ詰食品を平置きした状態の側面図である。
【図3】固形具材を投入するためにジッパー部を開口した電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図4】固形具材をパウチに投入後、そのパウチを電子レンジで加熱調理する姿勢とした状態の電子レンジ調理用パウチ詰食品の側面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 電子レンジ調理用パウチ詰食品
10 パウチ
11 側縁シール部
12 上縁シール部
13 ジッパー部
14 ジッパーシール部
15 ノッチ
16 ノッチ
17 蒸気抜き機構
18 弱化シール部
19 切欠
20 固形具材
30 (レトルト)クリームソース
31 ソース表面
40 説明表示
50 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースであって、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の4質量%以下であり、卵黄の含有量が生換算でレトルトクリームソース全体の0.1〜2質量%であり、モノアシル型親水性乳化剤の含有量がレトルトクリームソース全体の0.001〜1質量%であることを特徴とするレトルトクリームソース。
【請求項2】
澱粉を含有し、粘度が1〜10Pa・sである請求項1記載のレトルトクリームソース。
【請求項3】
全蛋白質の70質量%以上が、乳蛋白質である請求項1又は2記載のレトルトクリームソース。
【請求項4】
脂質の含有量が、レトルトクリームソース全体の2〜25質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のレトルトクリームソース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレトルトクリームソースが容器に充填されてなり、容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項6】
容器が固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチである請求項5記載の電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項7】
レトルトクリームソースが、パウチの最大密封充填可能容積の10〜40%となる容積でパウチに充填密封されている請求項6記載の電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の電子レンジ調理用容器詰食品の容器内に具材を投入して電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の製造方法。
【請求項9】
レトルトクリームソース及び加えた具材の合計300gあたり、600W×3分相当以上の条件で電子レンジで加熱調理する請求項8記載のクリーム煮料理の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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