説明

レトルト米飯及びその製造方法

【課題】本発明は、均一で粒感があり口あたりのよいレトルト米飯及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】レトルト米飯の製造方法であって、レトルト処理工程の昇温時間を通常以上、好ましくは30分以上とることにより、レトルト処理と同時にパウチ中の米を炊飯と同様の処理をすることにより、具材や液のかたよりのないレトルト米飯を効率的に製造することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト米飯(雑炊、リゾットなどの粥類)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品は常温長期保存が可能な食品として市場に受け入れられている。その製造法は、調味液や具材をパウチや成型容器に充填、密封(ヒートシール)し、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)処理を行うというものである。
【0003】
レトルト米飯も、パウチや成型容器に研いだ米(あるいは無洗米)と調味液を充填、密封し、レトルト殺菌を施す。米は、容器に充填後、レトルト殺菌が終了するまでに調味液の水分によって次第に膨潤する。レトルト直後の米は、芯が残ってまだまだ硬い状態である。製造後も米は膨潤し続き、数日で容器中の米は平衡状態の軟飯となり、調味液にも適度なとろみがつき、喫食可能な状態になる。レトルト食品の中でも、特にレトルト米飯は、レトルト殺菌と保管中において殺菌と調理を行う非常に効率的な製法ということができる。
【0004】
もともとレトルト米飯は、米だけのおかゆや梅・かつおなどの少量の具材だけで、調味液も塩やしょうゆやだしを使った単純なものであった。ところが、昨今、こういった単純な米飯だけではなく、具材がたくさんはいった雑炊や、乳脂などの油がはいったリゾットなど、メニューのバラエティー化が行われ、これまでの製法では、問題が発生することとなった。
【0005】
他のレトルト製品同様、すべて調理後、つまり米を炊飯後にパウチや成型容器に充填すれば、ミックス液全体の粘度が高いので、問題はおこらないし、製品のばらつきも少ない。よって、炊飯後の充填は、通常行われている。しかし、米を炊飯せずに充填するレトルト米飯の製法は、2工程を1工程にし、短時間で処理できる非常に効率的な方法である。この効率的な製法をとった場合の問題点は以下の通りである。
【0006】
1つ目は、特に具材が多くなった際、充填時の具材の分散性が必要になることである。かたよりなく均一に充填するためには、具材と調味液を仕込み釜及び充填ホッパーで均一に分散させておき、ミックスした状態での充填を行わなければならない。したがって、具材が沈降や浮上をしない程度のとろみを調味液に付与しておく必要がある。仕込み釜・充填ホッパーの攪拌回転数を上げ分散性を高める方法もあるが、回転数を上げることで調味液に対流が起こり、沈降・浮上はしなくても調味液内で具材のかたよりが起こる。
【0007】
もともとの調味液の粘度が高いと、製品中で米が次第に膨潤した時に、さらに高粘度となり最終製品の口溶けが悪くなる。殺菌時の高温によって、その網目構造が崩れ粘度が下がるでん粉による最低限のとろみ付けしかできない。つまり、でん粉由来のとろみは製品喫食時には商品品質上不要となる。
【0008】
一方カップに具材をいれ、調味液とミックスしない、調味液にとろみをつける必要がない充填方法もあるが、具材が多くなると容器に入りにくく、具材落下による充填量不足や容器シール部への具材付着によるシール不良が起こりやすくなる。また、殺菌直後の製品の粘度が低いという点は、ミックス充填と同様である。
よって、具材が多いものは、重量に差があるため米と具材と調味液が分散せず、製品が不均一な偏りのある状態となる。
【0009】
2つ目の問題は、油の多いリゾットなどで、同様な理由により殺菌によりとろみを失った製品中において、油が分離してしまうことである。米の膨潤により、製品が増粘すれば、そのとろみによって油は分離せず製品中に分散状態で保持される。しかし、バターなどの固形脂は、量が多かったり、米の膨潤により増粘する前の保管が低温であると、分離して固まってしまい、油のかたよりのある製品となってしまう。
【0010】
その解決方法として、(1)レトルト後製品にとろみがつくまでの間、恒温(10〜30℃)保管して油の分離固化を防止することが考えられるが、恒温倉庫は必ずしも工場にはあるものではない。
(2)現在報告されている「レトルト粥及びその製造方法」(特開2003-310182)にあるように、炊飯した米を充填するという方法もある。しかし、レトルト処理以前に炊飯工程が必要で、1工程増えることになる。また、炊飯された御飯をパウチ内に充填するのは、非常に難しいものである。
【0011】
また、このように米を炊飯後充填し製造されたレトルト米飯は、御飯に粒感がなく、糊状になりがちである。
【特許文献1】特開2003-310182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来のこのような問題点の解決を目的として創出されたものであり、均一で粒感があり、口当たりの良いレトルト米飯及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者はレトルト米飯及びその製造方法について鋭意研究の結果、レトルト処理工程の昇温時間を長くとることにより、レトルト処理と同時にパウチ中の米を炊飯と同様の処理をするという レトルト米飯及びその製造方法 を発明することで上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
均一で粒感があり口あたりのよいレトルト米飯の効率的な製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する原料は、調味液に使用する糖類や食塩やしょうゆや各種エキス類でん粉などと、米、さらに具材などである。
【0016】
製造工程は、レトルト米飯であっても、他のレトルト製品と同様であった。梶原工業製クッキングミキサーOAM-15等で上記調味液と具材をミックスし、米と別々に充填シール機にて容器に充填・密封する。さらに、神垣鉄工所製熱水インジェクション式レトルト殺菌冷却装置等で121℃30分程度のレトルト処理をする。
米飯以外のレトルト食品は、レトルト処理直後であっても、ほぼ喫食可能な状態にある。しかし、レトルト米飯においては、レトルト後2日程度保管することにより米が膨潤して平衡状態に達して、喫食可能な状態となるある種他のレトルト食品とは異なった特別な製法をとっている。
【0017】
レトルト処理の加熱により、調味液にでん粉でとろみをつけた製品は、一旦粘度が低下する。その後、米が膨潤することにより再び粘度が上がり、やがて平衡に達する。レトルト直後は、製品のとろみが少ない為、具材が多い雑炊などでは、米や具材が保管中にかたよる。また、脂が多いリゾットなどでは、脂分離がおこりがちで、低温で保管した場合は分離した油が固まってしまう場合がある。つまり、分離などの品質のばらつきがおこることもあり得る。
【0018】
そこで本発明では、従来単に効率的な殺菌を行える温度まで、容器が変形や破袋が起こらないように安全に少しずつ温度を上げていく製造工程中のレトルト処理の昇温時間を従来より長くとり、レトルト処理中に米を膨潤させる。すなわち、レトルト処理と同時に炊飯をしてしまおうというものである。
【0019】
本来、昇温工程は、単にレトルト処理槽の温度を殺菌温度にまで上げる工程であり、5分から長くても20分程のものである。よって、安全かつできるだけ短時間で終えようと考えがちで、わざわざ長くするようなことは、考えつかない。鋭利検討の結果、この工程を通常時間以上、好ましくは30分以上とることにより、効率的にレトルト米飯を製造しようというのがこの発明である。
【0020】
つまり、レトルト処理工程中、炊飯と同様の90℃〜110℃の温度帯にある時間を通常時間以上、好ましくは30分以上と長くとることにより、米の膨潤を促進し、炊飯をしてしまおうというものである。
しかも、この温度帯にある時間を長くとっても、殺菌価はほとんど上がらないので、レトルト処理中のレトルト臭や褐変などの風味の劣化が増すことはない。
勿論、あまり昇温時間が長すぎると、炊飯工程をとった場合と処理時間が同様になり、効率的とはいえなくなってくるなど、別の問題がでてくるので、効率面からは60分以内が好ましい。
【0021】
こうして、レトルト処理直後には、従来は膨潤しきれないままであった米が、十分に膨潤し、高温によって配合しているでん粉由来のとろみがなくなった製品にも米の膨潤によるとろみが発生し、分離などのない均一な状態になる。
このようにして、効率的なレトルト米飯の生産が可能となる。


(実施例、比較例)
【0022】
以下、実施例、比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
原料と配合は表1の2通り。配合例1は、具材が多い雑炊。配合例2は、油のはいったリゾット。
【0024】
【表1】

【0025】
製造工程例は、(1)梶原工業製クッキングミキサーOAM-15等のニーダー釜で、でん粉でとろみをつけた調味液を作製し、炊き上げる。(2)炊き上げた調味液に具材をミックスし、25回転で攪拌を行う。(3)東洋自動機製TVP-E3等の充填シール機にて調味液・具材のミックス液と、カップに入れた米を別々に容器に充填・密封する。(4)容器に充填された製品を、神垣鉄工所製熱水インジェクション式レトルト殺菌冷却装置等で121℃30分程度のレトルト処理をする。レトルト処理工程の昇温時間は、90℃〜110℃の温度帯にある時間を30分とし、合計40分とした。
【比較例】
【0026】
レトルト処理前以外は、実施例と同様に製造し、レトルト処理の昇温時間を合計10分とした。
【0027】
表1配合例1の実施例、比較例におけるレトルト製品を室温保管2日後に試食評価した結果を表2に示す。さらに、表1配合例2においてレトルト処理直後及び冷蔵2日保管後の評価状態を表3に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
表1 配合
表2 配合例1評価結果
表3 配合例2評価結果

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、炊飯と殺菌を同時に行う効率的に製造された、具材や液のかたよりのないレトルト米飯が提供される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜5%のでん粉を配合してとろみをつけた調味液と炊飯されていない米を容器に充填密封し、充填後のレトルト殺菌工程の時間を通常の昇温時間以上に延長することにより、製造中の米の膨潤を昇温時間中に促進し、米飯を製造することを特徴とするレトルト米飯製造方法及びそれによって製造された米飯。
【請求項2】
レトルト殺菌工程の昇温工程を30分以上とすることにより、米飯を製造する請求項1記載のレトルト米飯製造方法及びそれによって製造された米飯。
【請求項3】
レトルト殺菌工程の昇温工程の90℃〜100℃までの時間を10分以上、100℃〜110℃までの時間を20分以上とり、米飯を効率的に製造する請求項1及び2に記載のレトルト米飯製造方法及びそれによって製造された米飯。
【請求項4】
具材量が、全体の5〜60%である請求項1〜3に記載のレトルト米飯製造方法及びそれによって製造された米飯。
【請求項5】
固体脂の配合率が、0.5〜5%である請求項1〜3に記載のレトルト米飯製造方法及びそれによって製造された米飯。