説明

レドックスフロー電池船

【課題】大電力の海上輸送に好適な船舶及び電力輸送方法を提供する。
【解決手段】船舶1は、レドックスフロー電池20を具備する。レドックスフロー電池20は大型化が容易で大電力を貯える用途に好適であるため、船舶1は大電力の海上輸送に好適である。上記船舶は、前記レドックスフロー電池を充電する波力発電装置を更に具備する。前記波力発電装置は、左舷側タンクと、右舷側タンクと、前記左舷側タンク及び前記右舷側タンク間で液体が移動するように前記左舷側タンク及び前記右舷側タンクを接続する管路と、前記管路に設けられたタービンと、前記タービンに接続された発電機とを備える。本発明による電力輸送方法は、船舶1に搭載されたレドックスフロー電池20を海上で充電するステップと、前記船舶が港まで航行するステップとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の輸送に好適な船舶、及び船舶を用いた電力輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波浪エネルギーを利用して発電する波力発電装置が開発されている。特許文献1は波力発電装置の一例を開示している。波力発電装置は、波浪エネルギー密度が高い海域に配置されることが好ましいため、陸上の電力需要者から遠くに配置される場合がある。波力発電装置と陸上の電力需要者との間で電力を効率的に輸送するための輸送手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−297929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、大電力の海上輸送に好適な船舶及び電力輸送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0006】
本発明による船舶(1)は、レドックスフロー電池(20)を具備する。
【0007】
上記船舶は、前記レドックスフロー電池を充電する波力発電装置(40)を更に具備する。
【0008】
前記波力発電装置は、左舷側タンク(42)と、右舷側タンク(43)と、前記左舷側タンク及び前記右舷側タンク間で液体が移動するように前記左舷側タンク及び前記右舷側タンクを接続する管路(44)と、前記管路に設けられたタービン(45)と、前記タービンに接続された発電機(46)とを備える。
【0009】
上記船舶は、左右対称に配置された複数の帆(50)を更に具備する。
【0010】
本発明による電力輸送方法は、船舶(1)に搭載されたレドックスフロー電池(20)を海上で充電するステップと、前記船舶が港(70)まで航行するステップとを具備する。
【0011】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、海上発電プラント(65)が前記レドックスフロー電池を充電する。前記船舶が前記港まで航行する前記ステップにおいて、前記船舶は前記海上発電プラントから前記港まで航行する。
【0012】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記船舶に搭載された波力発電装置(40)が前記レドックスフロー電池を充電する。
【0013】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記波力発電装置は前記船舶の横揺れによる動揺エネルギーを利用して発電する。
【0014】
前記船舶に複数の帆(50)が左右対称に設けられる。前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記複数の帆を用いて前記船舶の位置を保持する。
【0015】
上記電力輸送方法は、前記港で前記レドックスフロー電池からイオン溶液を積み出すステップを更に具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大電力の海上輸送に好適な船舶及び電力輸送方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るレドックスフロー電池船の側面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るレドックスフロー電池の概略図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る電力輸送方法を説明するための説明図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係るレドックスフロー電池船に搭載された波力発電装置の概略図である。
【図5】図5は、第2の実施形態に係る波力発電装置の原理を説明するための説明図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る電力輸送方法を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態に係るレドックスフロー電池船の側面図である。
【図8】図8は、第3の実施形態に係るレドックスフロー電池船の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明によるレドックスフロー電池船及び電力輸送方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るレドックスフロー電池船1は、船体10と、船体10に搭載されたレドックスフロー電池20とを備える船舶である。船体10には、推進用のプロペラ15と、舵16とが設けられている。
【0020】
図2を参照して、レドックスフロー電池20の構成を説明する。レドックスフロー電池20は、セル21と、イオン溶液タンク31及び32と、循環ポンプ33及び34とを備える。セル21は、セル容器22と、陽イオン交換膜25と、電極27及び28とを備える。セル容器22は、陽イオン交換膜25によって電極室23及び24に仕切られている。電極室23に電極27が設けられ、電極室24に電極28が設けられている。イオン溶液タンク31には、4価のバナジウムイオン及び5価のバナジウムイオンを含むイオン溶液が貯えられている。循環ポンプ33は、イオン溶液タンク31と電極室23との間で4価のバナジウムイオン及び5価のバナジウムイオンを含むイオン溶液を循環するように構成されている。イオン溶液タンク32には、2価のバナジウムイオン及び3価のバナジウムイオンを含むイオン溶液が貯えられている。循環ポンプ34は、イオン溶液タンク32と電極室24との間で2価のバナジウムイオン及び3価のバナジウムイオンを含むイオン溶液を循環するように構成されている。レドックスフロー電池20は、充電及び放電が可能な二次電池である。レドックスフロー電池20は大型化が容易であるため、大電力を貯える用途に好適である。
【0021】
図2を参照して、レドックスフロー電池20の充電中の現象を説明する。循環ポンプ33は、イオン溶液タンク31と電極室23との間で4価のバナジウムイオン及び5価のバナジウムイオンを含むイオン溶液を循環する。循環ポンプ34は、イオン溶液タンク32と電極室24との間で2価のバナジウムイオン及び3価のバナジウムイオンを含むイオン溶液を循環する。電極27から外部に電子が流出し、外部から電極28に電子が流入する。電極室23では、4価のバナジウムイオンが5価のバナジウムイオンに変化する。電極室24では、3価のバナジウムイオンが2価のバナジウムイオンに変化する。水素イオンが陽イオン交換膜25を通って電極室23から電極室24に移動する。したがって、充電が進行すると、イオン溶液タンク31内のイオン溶液中の5価のバナジウムイオン濃度が増加し、イオン溶液タンク32内のイオン溶液中の2価のバナジウムイオン濃度が増加する。
【0022】
図3を参照して、本実施形態に係る電力輸送方法を説明する。発電海域60は海象が荒れていて波浪エネルギー密度が高い海域である。海上発電プラント65は波力発電装置を備えている。海上発電プラント65は、発電海域60において波浪エネルギーを利用して発電する。港70は、陸上の電力需要者の近くに設けられている。港70は発電海域60から離れている。
【0023】
本実施形態に係る電力輸送方法は、充電ステップ、航行ステップ、イオン溶液積み出しステップを備える。充電ステップにおいて、海上発電プラント65がレドックスフロー電池船1のレドックスフロー電池20を海上で充電する。航行ステップにおいて、レドックスフロー電池船1が海上発電プラント65から港70まで航行する。イオン溶液積み出しステップにおいて、港70でレドックスフロー電池船1のレドックスフロー電池20からイオン溶液を積み出す。例えば、循環ポンプ33及び34を用いてイオン溶液を積み出す。積み出されたイオン溶液は陸上に設けられた電力供給設備(不図示)まで陸送される。陸送は、例えば、車両又はパイプラインにより行われる。電力供給設備は、レドックスフロー電池を備え、レドックスフロー電池船1から積み出されたイオン溶液を用いて発電し、電力需要者に電力を供給する。
【0024】
また、海上発電プラント65は、波力発電装置のかわりに風力発電装置や太陽電池を備えてもよい。この場合、海上発電プラント65は、風力発電や太陽光発電に適した海域で発電し、レドックスフロー電池船1のレドックスフロー電池20を充電する。
【0025】
本実施形態によれば、大電力の海上輸送に好適な船舶及び電力輸送方法が提供される。
【0026】
(第2の実施形態)
図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係るレドックスフロー電池船1は、第1の実施形態に係るレドックスフロー電池船1に波力発電装置40が追加されたものである。波力発電装置40は、波浪によるレドックスフロー電池船1の横揺れによる動揺エネルギーを利用して発電し、レドックスフロー電池20を充電する。波力発電装置40は、アンチローリングタンク41と、タービン45と、発電機46とを備える。アンチローリングタンク41は、左舷側タンク42と、右舷側タンク43と、管路44とを備える。左舷側タンク42は船体10の左舷側に設けられる。右舷側タンク43は船体10の右舷側に設けられる。管路44は、左舷側タンク42及び右舷側タンク43間で液体(例示:海水)が移動するように左舷側タンク42及び右舷側タンク43を接続する。タービン45は、管路44に設けられ、発電機46に接続されている。
【0027】
図5を参照して波力発電装置40の原理を説明する。レドックスフロー電池船1に横揺れが生じると、アンチローリングタンク41内の液体は、左舷側タンク42から右舷側タンク43へ、右舷側タンク43から左舷側タンク42へ、管路44を通って移動する。この液体の移動によりタービン45が回転し、発電機46が発電する。波力発電装置40は、大型化及び船舶への搭載が容易である。
【0028】
図6を参照して、本実施形態に係る電力輸送方法を説明する。本実施形態に係る電力輸送方法は、以下に述べる点を除いて第1の実施形態に係る電力輸送方法と同じである。充電ステップにおいて、レドックスフロー電池船1は発電海域60においてレドックスフロー電池20を充電する。より具体的には、波力発電装置40がレドックスフロー電池船1の横揺れの動揺エネルギーを利用して発電し、レドックスフロー電池20を充電する。航行ステップにおいて、レドックスフロー電池船1が発電海域60から港70まで航行する。
【0029】
なお、本実施形態に係るレドックスフロー電池船1は、波力発電装置40のかわりに他の方式の波力発電装置を備えてもよい。
【0030】
本実施形態によれば、レドックスフロー電池船1にレドックスフロー電池20を充電する機能を持たせることができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図7を参照して、本発明の第3の実施形態に係るレドックスフロー電池船1は、第2の実施形態に係るレドックスフロー電池船1に複数の帆50が追加されたものである。
【0032】
図8を参照して、複数の帆50は左右対称に配置されている。ただし、帆50の数及び配置は図8に示す例に限定されない。ここで、帆50が発生する推進力が矢印51で示されている。複数の帆50が左右対称に配置されているため、レドックスフロー電池船1の船首を風上に向けた状態において、一つの帆50が発生する推進力の船幅方向の成分と、その帆50と左右対称の関係にある他の帆50が発生する推進力の船幅方向の成分とを相殺することができる。したがって、本実施形態に係るレドックスフロー電池船1は、プロペラ15を使用しなくても、複数の帆50によりレドックスフロー電池船1の位置を保持することが可能である。
【0033】
本実施形態に係る電力輸送方法は、以下に述べる点を除いて第2の実施形態に係る電力輸送方法と同じである。充電ステップにおいて、レドックスフロー電池船1は、複数の帆50を用いてレドックスフロー電池船1の位置を保持する。これにより、レドックスフロー電池船1が風や波によって漂流することが防止される。また、図8に示すように位置保持を行うことで、レドックスフロー電池船1の横揺れが大きくなる。その結果、波力発電装置40の発電量が増加してレドックスフロー電池20の充電時間が短縮される。
【符号の説明】
【0034】
1…レドックスフロー電池船
10…船体
15…プロペラ
16…舵
20…レドックスフロー電池
21…セル
22…セル容器
23、24…電極室
25…陽イオン交換膜
27、28…電極
31、32…イオン溶液タンク
33、34…循環ポンプ
40…波力発電装置
41…アンチローリングタンク
42…左舷側タンク
43…右舷側タンク
44…管路
45…タービン
46…発電機
50…帆
51…矢印
60…発電海域
65…海上発電プラント
70…港

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池を具備する
船舶。
【請求項2】
前記レドックスフロー電池を充電する波力発電装置を更に具備する
請求項1の船舶。
【請求項3】
前記波力発電装置は、
左舷側タンクと、
右舷側タンクと、
前記左舷側タンク及び前記右舷側タンク間で液体が移動するように前記左舷側タンク及び前記右舷側タンクを接続する管路と、
前記管路に設けられたタービンと、
前記タービンに接続された発電機と
を備える
請求項2の船舶。
【請求項4】
左右対称に配置された複数の帆を更に具備する
請求項2又は3の船舶。
【請求項5】
船舶に搭載されたレドックスフロー電池を海上で充電するステップと、
前記船舶が港まで航行するステップと
を具備する
電力輸送方法。
【請求項6】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、海上発電プラントが前記レドックスフロー電池を充電し、
前記船舶が前記港まで航行する前記ステップにおいて、前記船舶は前記海上発電プラントから前記港まで航行する
請求項5の電力輸送方法。
【請求項7】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記船舶に搭載された波力発電装置が前記レドックスフロー電池を充電する
請求項5の電力輸送方法。
【請求項8】
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記波力発電装置は前記船舶の横揺れによる動揺エネルギーを利用して発電する
請求項7の電力輸送方法。
【請求項9】
前記船舶に複数の帆が左右対称に設けられ、
前記レドックスフロー電池を海上で充電する前記ステップにおいて、前記複数の帆を用いて前記船舶の位置を保持する
請求項8の電力輸送方法。
【請求項10】
前記港で前記レドックスフロー電池からイオン溶液を積み出すステップを更に具備する
請求項5乃至9のいずれかに記載の電力輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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