説明

レドックスフロー電池

【課題】低損失で、放熱性に優れるレドックスフロー電池(RF電池)を提供する。
【解決手段】本発明RF電池は、電池要素とタンクとに接続される配管によって正極電解液及び負極電解液の流路を構成する。流路の少なくとも一部に放熱領域を具える。放熱領域は、貫通孔10hを有し、樹脂により構成された本体部10と、本体部10の表面に接合され、金属などの熱伝導率が高く、酸素透過性が低い材料からなる放熱材11とを具える。本発明RF電池は、放熱領域を具えることで、冷却水などを用いることなく放熱性に優れ、電力損失を低減できる。また、本発明RF電池は、放熱材11が酸素を透過し難いことで、酸素による電池構成部材の劣化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関するものである。特に、低損失で、放熱性に優れるレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった新エネルギーの導入が世界的に推進されている。これらの発電出力は、天候に影響されるため、大量に導入が進むと、周波数や電圧の維持が困難になるといった電力系統の運用に際しての問題が予測されている。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の貯蓄、負荷平準化などを図ることが期待される。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池100は、図7に示す形態のものが知られている(特許文献1など)。レドックスフロー電池100は、正極電極104を内蔵する正極セル102と負極電極105を内蔵する負極セル103との間に隔膜101を介在させた電池要素100cと電解液の循環機構とを具え、循環機構により、正極電解液及び負極電解液を電池要素100cに循環供給して充放電を行う。循環機構は、正極電解液を貯留する正極タンク106と、正極タンク106と電池要素100cとの間で正極電解液を流通する正極上流流路108及び正極下流流路110と、負極電解液を貯留する負極タンク107と、負極タンク107と電池要素100cとの間で負極電解液を流通する負極上流流路109及び負極下流流路111と、上流流路108,109に配置されるポンプ112,113とを具える。電解液には、代表的には、酸化還元により価数が変化するバナジウムイオンといった金属イオンを含有する水溶液が利用される。図7においてタンク106,107内のイオンは例示である。また、図7において実線矢印は、充電、破線矢印は放電を意味する。
【0004】
電池要素100cは、代表的には、正極セル102及び負極セル103と隔膜101とを複数積層させたセルスタックと呼ばれる形態が利用される。正極セル102,負極セル103は、一面に正極電極104、他面に負極電極105が配置される双極板(図示せず)と、電解液を供給する給液孔及び電解液を排出する排液孔を有し、かつ上記双極板の外周に形成される枠体(図示せず)とを具えるセルフレームを用いた構成が代表的である。複数のセルフレームを積層することで、上記給液孔及び排液孔は電解液の流路を構成し、上流流路108,109、下流流路110,111に接続される。セルスタックは、セルフレーム、正極電極104、隔膜101、負極電極105、セルフレーム、…と順に繰り返し積層されて構成される。
【0005】
上流流路108,109、下流流路110,111は、電解液が直接接触することから、電解液と反応せず、電解液に対する耐性に優れる材料、代表的にはポリ塩化ビニルといった樹脂によって構成された配管(代表的には丸パイプ)が利用されている。
【0006】
一般に、電池は、内部抵抗などにより発熱し、発熱と放熱とのバランスがとれるまで温度が徐々に上昇する。レドックスフロー電池も同様に発熱し、その発熱部分は、主として電池要素であり、電池要素からの熱は電解液に伝えられて、電解液の温度が上昇する。この温度上昇により、電解液に接している上述の流路108〜111を構成する配管は、樹脂が軟化するなどの劣化が生じ得る。そこで、流路108〜111を構成する配管の熱劣化を防止するために、従来、電解液を冷却している。冷却には、電解液を多数のチューブに流通させ、このチューブを冷却水で冷却する水冷式や、上記チューブに強制的に送風を行う空冷式が利用されている。
【0007】
特許文献1では、各極のタンクを一つの容器とせず、複数のパイプ状容器を連通したユニットにすることで表面積を増やし、一つの容器からなるタンクに電解液を貯留する場合に比較して、放熱性を高めることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-030729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記水冷式冷却では、冷却のために大きな電力が必要であり、電池全体として損失が大きい。
【0010】
水冷式冷却は、空冷式よりも冷却能力が高く、チューブが密集された場合でも、内部に配置されたチューブまで十分に冷却することができる。しかし、水冷式冷却では、冷却水を循環させるためのポンプ、冷却水を冷却するための冷却器などの駆動に電力が必要であり、電力損失が大きい。また、水冷式冷却を利用すると、冷却設備の設置スペースの確保、冷却設備のメンテナンスの必要性などのデメリットもある。
【0011】
上記チューブや流路を構成する配管の厚さを薄くすれば、放熱性を高められる。しかし、チューブや流路を構成する配管の構成材料に利用される樹脂は、薄くなると酸素を透過し易くなり、経時的に電解液に酸素が混入されることで、電解液の劣化や電極の酸化などといった電池構成部材の劣化を招く。従って、酸素の透過防止を考慮すると、上記厚さを薄くすることに限界がある。
【0012】
特許文献1に記載されるように一つのタンクではなく、複数のパイプ容器を利用する場合、電解液の流路が非常に長くなるため、ポンプの出力を大きくする必要があり、ポンプの駆動のために大きな電力が必要である。また、従来のタンクと同程度の容量を満たすためには、パイプ容器を非常に多くする必要があり、多くのパイプ容器を接続するにあたり、接続ミスなども発生し得る。
【0013】
そこで、本発明の目的は、低損失で放熱性に優れるレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電解液の流路の少なくとも一部を特定の材料により構成することで上記目的を達成する。
【0015】
本発明のレドックスフロー電池(以下、RF電池と呼ぶ)は、流路を介してタンク内の電解液を電池要素に供給して充放電を行うものであり、上記流路は、以下の放熱領域を具える。放熱領域は、上記電解液が流通される貫通孔を有し、樹脂により構成された本体部と、上記本体部の表面の少なくとも一部に接合され、上記樹脂よりも熱伝導率が高くかつ酸素透過性が低い材料からなる放熱材とを具える。
【0016】
本発明RF電池は、タンクと電池要素との間に設けられる電解液の流路の少なくとも一部に上述の放熱領域を具えており、放熱性に優れる(冷却能力が高い、熱交換性が高い)ことから、電解液の温度上昇を抑制することができる。従って、本発明RF電池は、電解液の流路のうち、少なくとも電解液が接触する部分を、従来のRF電池と同様に、樹脂により構成しても、温度上昇に伴う流路の構成材料(特に樹脂部分)の劣化を防止できる。また、上記放熱領域は、それ自体が従来の樹脂製配管と比較して放熱性に優れることから、従来の樹脂製配管に空冷式冷却を施す場合と比較して効率よく放熱でき、水冷式冷却を施す場合と比較して、電力損失を低減でき、運転効率が高い。更に、上記放熱領域は、放熱材が酸素を透過し難いことで、長期の使用によって透過した酸素による電解液の劣化が実質的に生じない。従って、本発明RF電池は、低損失で、放熱性に優れる。
【0017】
本発明の一形態として、上記放熱領域の断面は、上記本体部の周方向の一部に放熱材が接合された被覆箇所と、上記本体部の周方向の他部に放熱材が接合されていない露出箇所とを有し、上記被覆箇所の樹脂の厚さが上記露出箇所よりも薄い形態が挙げられる。
【0018】
上記形態は、被覆箇所における樹脂部分の薄肉化により、放熱領域の放熱性を更に高められる。また、放熱領域は、酸素透過性が低い放熱材を具えるため、本体部において当該放熱材が配置された被覆箇所の樹脂の厚さを薄くしても、放熱材によって酸素の透過を防止できる。かつ、上記形態は、露出箇所の厚さが相対的に厚いことで、酸素の透過を防止でき、放熱領域の全域に亘って、酸素が実質的に透過されることがない。従って、上記形態は、冷却能力が高い上に、酸素を透過し難い。
【0019】
上記樹脂の厚さは、例えば、上記被覆箇所の樹脂の厚さが3mm以下、上記露出箇所の樹脂の厚さが3mm超が挙げられる。
【0020】
上記形態は、被覆箇所の樹脂の厚さが十分に薄いため、放熱性に優れ、被覆箇所に放熱材を具えること及び露出箇所の樹脂の厚さが十分に厚いため、酸素の透過を防止できる。
【0021】
本発明の一形態として、上記放熱材がフィン状、又は凹凸形状である形態が挙げられる。
【0022】
上記形態は、放熱材の表面積を増大して、冷却面積を多く確保できるため、放熱性により優れる。
【0023】
本発明の一形態として、上記放熱材がシリコーン系樹脂により上記本体部に接合されている形態が挙げられる。
【0024】
シリコーン系樹脂は放熱性に優れる上に、密着性にも優れる。そのため、上記形態は、電解液の熱を効率よく放熱材に伝達できる上に、放熱材と本体部との間に相対的に放熱性に劣る空気が介在され難く、放熱性に優れる。
【0025】
本発明の一形態として、上記流路が、一つの配管を分岐する分岐部と、上記分岐部に繋がる複数の分岐管と、上記分岐管を別の一つの配管に集約する集約部とを有する分岐配管部を具える形態が挙げられる。特に、上記分岐管が並列又は積層され、上記放熱領域が上記分岐管の少なくとも一つに設けられた形態が挙げられる。
【0026】
分岐配管部は、一つの配管と比較して表面積(冷却面積)を大きくし易く、放熱性を高められる。従って、流路の一部に分岐配管部を具える形態は、放熱性に優れる。特に、上記分岐管に放熱領域が設けられた形態は、放熱性に更に優れる。また、分岐管が並列された形態は、嵩が小さくなり易く、分岐管が積層された形態は設置面積が小さくなり易く、これらの形態は、小型な電池とすることができる。大容量の電池などで、電解液の供給量(単位面積あたりの流量)を多くすることが望まれる場合でも、分岐配管部を具える形態では、分岐管の数を調整することで、合計断面積を容易に大きくでき、上記要求に容易に対応できる上に、放熱性に優れる。
【0027】
上記分岐管において、上記分岐管同士が接触する箇所の樹脂の厚さが、接触していない箇所の少なくとも一部の樹脂の厚さよりも薄い形態が挙げられる。
【0028】
上記分岐管同士が接触する箇所は、酸素が透過し難い、或いは実質的に透過しない。従って、上記分岐管同士が接触する箇所の樹脂の厚さが薄い上記形態は、透過酸素による電解液の劣化が生じ難い上に、薄いことで放熱性を高められる。分岐管同士の間に上述したシリコーン系樹脂を介在させてもよい。
【0029】
本発明の一形態として、上記流路は、上記電解液が導入される導入口と、導入された電解液が排出される排出口とを繋ぐ直線よりも長い流通経路を有する異形配管を具える形態が挙げられる。上記異形配管は、例えば、その内部に上記貫通孔が蛇行して設けられた形態が挙げられる。或いは、別の異形配管として、上記電解液の導入口及び上記排出口の少なくとも一方の断面積よりも大きな断面積を有する拡張領域を有し、この拡張領域にリブが設けられた形態が挙げられる。そして、上記放熱領域が、上記異形配管に設けられた形態が挙げられる。
【0030】
上記異形配管であって、貫通孔が蛇行して設けられた形態では、電解液の流通経路の長さが電解液の導入口と排出口とを繋ぐ直線の長さに実質的に等しい配管、例えば、丸パイプなどを利用した場合と比較して、電解液の接触面積が多くなることによる温度の低下、シャントカレントの抑制、設置面積の低減、といった効果を期待できる。上記異形配管であって、拡張領域を有する形態も、丸パイプなどを利用した場合と比較して、上記接触面積の増大による温度の低下を期待できる。拡張領域を有する形態において、特にリブを具える形態は、配管の内部空間が広い場合でも座屈し難く、機械的特性に優れる。そして、このような異形配管が放熱領域であると、放熱性に更に優れる。
【0031】
本発明の一形態として、上記放熱材に送風を行うファンを具える形態が挙げられる。また、本発明の一形態として、上記放熱材と上記ファンとが一体化された形態が挙げられる。
【0032】
上記形態は、ファンにより強制冷却を行えることで放熱性を更に高められる。特に、上記形態では、放熱材に送風するため、放熱効率に優れる。放熱材とファンとが一体化された形態は、放熱効率を高められる上に、設置作業性に優れる。
【0033】
本発明の一形態として、上記本体部は、上記貫通孔の断面積が30cm2以下である細径部を有し、この細径部の長さが50cm以上である形態が挙げられる。
【0034】
上記形態は、放熱材を具えることで放熱性に優れる上に、細長いことでシャントカレントを抑制でき、この点からも損失を低減できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明レドックスフロー電池は、低損失で、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部の横断面図であり、(A)は、形態1、(B)は、形態2、(C)は、形態3を示す。
【図2】(A)は、本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部であって、形態4の斜視図、(B)は、(B)-(B)断面図、(C)は、(C)-(C)断面図である。
【図3】本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部の横断面図であり、(A)は、形態5、(B)は、形態6を示す。
【図4】本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部であって、形態7の横断面図である。
【図5】本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部であって、(A)は、形態8の斜視図、(B)は、(B)-(B)断面図である。
【図6】本発明RF電池に具える電解液の流路を構成する配管の一部であって、(A)は、形態9の斜視図、(B)は、(B)-(B)断面図である。
【図7】RF電池の基本構成及び動作原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。
【0038】
本発明レドックスフロー電池:RF電池の基本的な構成は、上述した図7に示す従来のRF電池100と同様であり、正負の各極の電解液を貯留するタンク106,107と電池要素100cとの間に設けられる電解液の流路の構造に特徴を有する。以下、RF電池の基本的な構成については概要のみを説明し、特徴点を詳細に説明する。
【0039】
[全体構造]
本発明RF電池は、交流/直流変換器を介して、発電部(例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他、一般の発電所など)と電力系統や需要家などの負荷とに接続され、発電部を電力供給源として充電を行い、負荷を電力提供対象として放電を行う二次電池である。本発明RF電池は、従来のRF電池100と同様に、電池要素100c(図7)を主要構成部材とし、この電池要素100cに正極電解液及び負極電解液を循環供給する循環機構として、タンク106,107(図7)、上流流路及び下流流路(詳細は後述する)、ポンプ112,113(図7)を具える。
【0040】
代表的には、電池要素100cを構成する正極電極104(図7)・負極電極105(図7)には、カーボンフェルトからなるもの、隔膜101(図7)には、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜といったイオン交換膜、上述したセルフレームを構成する双極板には、プラスチックカーボンからなるもの、セルフレームの枠体には、塩化ビニルなどの樹脂からなるものが利用される。
【0041】
本発明RF電池において、正負の各極の活物質に利用される金属イオンの対として、正極:鉄イオン、負極:クロムイオン、正極及び負極:バナジウムイオン、その他、正極:マンガンイオン、負極:チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンからなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンが挙げられる。正極活物質をマンガンイオンとする場合、負極活物質によっては全バナジウム系RF電池よりも起電力が高いRF電池を得ることができる。また、正極にマンガンイオンと共にチタンイオンを含有すると、Mn3+の不均化反応に伴うMnO2の析出を抑制することができる。正極及び負極の双方にマンガンイオン及びチタンイオンを含有する形態とすることもできる。
【0042】
正負の各極の電解液は、硫酸、リン酸、硝酸、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩の少なくとも一種を含む水溶液が好ましい。特に、硫酸アニオン(SO42-)を含むものが利用し易い。
【0043】
[流路]
本発明RF電池に具える上流流路及び下流流路は、代表的には、樹脂製の配管により構成される。配管は、その外形と貫通孔の輪郭形状とが相似形状の筒体、例えば、丸パイプ(円筒体)や角パイプ(角筒体)が代表的である。上流流路及び下流流路の少なくとも一部に、外形と貫通孔の輪郭形状とが異なる異形配管(図5,図6参照)により構成された部分を有していてもよい。
【0044】
本発明RF電池において上流流路及び下流流路の少なくとも一部に放熱領域を具える。放熱領域は、樹脂により構成された本体部の表面の少なくとも一部に後述の放熱材が接合された領域である。以下、放熱領域を構成する部材(以下、被覆部材と呼ぶ)の具体的な形態を図1〜図6を参照して説明する。まず、共通事項である材質や基本形状などを説明する。
【0045】
(本体部)
本体部の材質は、従来の樹脂製配管に利用されているような材料、つまり、電解液と実質的に反応せず、ある程度の厚さにすることで酸素を実質的に透過しない樹脂が挙げられる。具体的な樹脂は、ポリ塩化ビニル:PVC、ポリエチレン:PE、ポリプロピレン:PP、ポリテトラフルオロエチレン:PTFEに代表されるフッ素系樹脂などが挙げられる。
【0046】
本体部の代表的な形状は、円筒体(図1(A)など)や角筒体(図1(C)など)といった、貫通孔の形状と相似形状の外形を有する筒状体が挙げられる。貫通孔の断面形状は、円形(図1(A)など)、楕円、長方形(図1(C)など)、多角形(頂点数n=3又は5以上)などの種々の形状を取り得る。貫通孔が円孔や楕円孔であると、電解液の流通時の圧力損失が小さく、貫通孔が多角形状(n≧3)の角孔であると、放熱材の形状を単純な形状にできる場合がある。また、本体部の外形が円形状や楕円形状であると放熱面積を大きくし易い。本体部の外形が多角形状(n≧3)であると、(1)放熱材を接合し易い、(2)設置し易い、(3)後述するように積層・並列し易いといった利点がある。本体部の外形と貫通孔の形状とを非相似形状とすることもできる。例えば、本体部の貫通孔を円孔、外形を直方体状の異形配管とすると、上述した効果を併せもつことができる。或いは、図5に示すように、貫通孔が蛇行して設けられた異形配管、図6に示すように、貫通孔の長手方向において断面積が異なる部分を有する異形配管とすることができる。
【0047】
本体部を構成する樹脂の厚さは、代表的には、その貫通孔の周方向に沿って、及び長手方向に沿って均一である形態、例えば、図1(A),(B)に示すように本体部の全周・全長に亘って樹脂の厚さが一様な形態が挙げられる。その他、後述する図1(C)に示す形態3のように貫通孔の周方向に沿った厚さが部分的に異なる形態、後述する図2,図5,図6に示す形態4,8,9などのように、貫通孔の長手方向に沿った厚さが部分的に異なる形態とすることができる。本体部を構成する樹脂の厚さは、厚いほど酸素が透過し難い(酸素透過性が低い)。従って、当該樹脂の厚さが厚い形態は、経時的に透過した酸素により電解液が劣化する、という現象が実質的に生じない。例えば、本体部の厚さを3mm超とすると、酸素の透過を効果的に防止できる。但し、列挙した上述の樹脂は、その熱伝導率が1W/m・K以下(せいぜい0.5W/m・K程度)であり、熱伝導性に劣る。従って、本体部を構成する樹脂の厚さが厚過ぎると、熱伝導性の低下を招くため、本体部の最大厚さは2mm以下が好ましい。
【0048】
本体部において、放熱材が接合されない露出箇所は、上述のように経時的な酸素の透過を防止するために、厚くする(例えば、3mm超、好ましくは5mm〜30mm)とすることが好ましい。一方、本体部において、放熱材が接合される被覆箇所の樹脂の厚さは、上記露出箇所の樹脂の厚さよりも薄くしても後述する放熱材によって酸素の透過を防止できる。つまり、放熱材が酸素透過防止部材として機能する。例えば、被覆箇所の樹脂の厚さは3mm以下とすることができる。この厚さが薄いほど放熱性を高められることから、2mm以下、更に1mm以下とすることができ、0.1mm以上であれば、機械的強度を十分に保持することができる。その他、後述するように樹脂部分を接触させて配置する場合には、当該接触箇所は実質的に酸素に接触しないため、当該接触箇所の樹脂の厚さを上述の範囲で薄くすることができる。
【0049】
(放熱材)
放熱材の材質は、本体部の構成樹脂よりも、熱伝導率が高くかつ酸素透過性が低い材料とする。このような材料として、例えば、金属、カーボンなどが挙げられる。金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金などが挙げられる。これらの金属は、100μm以下といった薄膜でも、上述の樹脂より酸素透過性が低い。銅やその合金は、熱伝導率が高い(銅:398W/m・K)。アルミニウムやマグネシウム、その合金は、熱伝導率が高く(アルミニウム:237W/m・K、マグネシウム:156W/m・K)、軽量である。鉄やその合金は、高強度である、ステンレス鋼などは耐食性にも優れる、資源が比較的豊富であり利用し易い、コストを低減できる、といった利点がある。その他、金属、カーボン、及びセラミックスから選択される1種以上のフィラーが上述の樹脂に混合された複合樹脂を放熱材に利用することができる。セラミックスは、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、炭化珪素などが挙げられる。上記セラミックスは、樹脂よりも熱伝導率が高く、放熱性を高められる。
【0050】
<形態1>
図1(A)に示す被覆部材1は、外形が円形状の筒体である。この被覆部材1は、樹脂によって構成され、電解液が流通される貫通孔10hが設けられた本体部10と、本体部10の表面の少なくとも一部に接合された放熱材11とを具える。
【0051】
形態1の被覆部材1に具える本体部10は、その周方向に沿った樹脂の厚さが均一的な円筒体からなる(ここでは厚さ:3mm以下)。この本体部10の表面の実質的に全面に、円筒状の放熱材11を具える。つまり、被覆部材1は、本体部10の全周及び全長が被覆箇所となっている。ここでは、放熱材11は、一対の断面半円弧状の半割れ片11a,11bで構成されている。各半割れ片11a,11bはそれぞれ、その周方向に沿って均一的な厚さである。放熱材11を半割れ片11a,11bで構成することで、本体部10の外周を容易に覆うことができ、作業性に優れる。
【0052】
各半割れ片11a,11bは、その厚さが厚いほど、放熱性を高められるが、被覆部材1が大型化したり重くなったりすることから、0.1mm〜2mm程度が好ましい。100μm程度と薄くても放熱性に寄与することができる上に、酸素の透過を防止できる。この厚さに関する点は、後述する形態2の半割れ片21a,21b、形態3の本体片310、形態8,9の放熱材81,91についても同様に適用することができる。
【0053】
半割れ片11a,11bは、その合わせ目が本体部10の軸方向に沿った直線状となる形態が代表的である。その他、合わせ目が本体部10の軸方向に交差するように配置される形態、合わせ目がジグザグ形状や波型などの異形状となる形態などとすることができる。
【0054】
形態1の被覆部材1では、シリコーン系樹脂からなる接着剤12によって半割れ片11a,11bを本体部10に固定しており、本体部10と放熱材11との密着性に優れる。
【0055】
図1(A)に示す例では、半割れ片11a,11b間に若干の隙間があるが、隙間が生じないように、半割れ片11a,11bの周長を調整したり、半割れ片11a,11b間に上述の接着剤を充填したりすることができる。或いは、本体部10の表面から径方向に突出する突条(図示せず)を本体部10の周方向の適宜な箇所(例えば、ここでは180°ずれた位置)に設けて、半割れ片11a,11b間にこの突条を介在させて、半割れ片11a,11b間に隙間が設けられないようにすることができる。突条を有する部分は、その他の箇所と比較して樹脂の厚さが厚くなる。
【0056】
被覆部材1は、本体部10の実質的に全周が金属などからなる放熱材11により覆われることで、従来の樹脂製配管に比較して放熱性に優れる上に、酸素の透過を防止できる。上述のように接着剤を充填したり、突条を設けたりした場合には、当該接着剤や突条により、酸素の透過を防止できる。また、突条は、半割れ片11a,11bの位置決めに利用することができ、放熱材11の配置を行い易く、作業性に優れる。或いは、金属管の内周面を樹脂で被覆した樹脂被覆管を利用すると、樹脂からなる本体部の全表面が金属で覆われた形態を容易に形成することができる。
【0057】
<形態2>
図1(B)に示す形態2の被覆部材2は、形態1と同じ本体部10を具え、本体部10の表面の実質的に全面に、シリコーン系樹脂からなる接着剤12によって放熱材21が接合されている。従って、被覆部材2も、本体部10の全周及び全長が被覆箇所となっている。但し、放熱材21の外形が形態1の放熱材11と異なっている。以下、この相違点を詳細に説明し、形態1と共通する構成及び効果はその説明を省略する。
【0058】
放熱材21も一対の半割れ片21a,21bで構成されている。各半割れ片21a,21bは、断面半円弧状の本体片210と、本体片210の表面からその径方向に突出する複数のフィン板211を具える。ここでは、矩形板により各フィン板211を構成しているが、フィン板211の形状・大きさ・放熱材21に具える数などは適宜選択することができる。フィン板211の表面積が大きく、数が多いほど、放熱性を高められる。本体片210とフィン板211とは一体成形してもよいし、別部材として接着剤などにより一体化してもよい。フィン板211に代えて、例えば、本体片210の表面を凹凸形状(平面・曲面のいずれで形成されていてもよい)とすることができる。フィン板211に関する点は、後述する形態3のフィン板311についても同様に適用することができる。
【0059】
被覆部材2も、形態1の被覆部材1と同様に、本体部10の実質的に全周が金属などからなる放熱材21により覆われることで、従来の樹脂製配管に比較して放熱性に優れる上に、酸素の透過を防止できる。特に、放熱材21は、フィン板211を具えるフィン形状であることで、形態1の放熱材11よりも表面積を大きくすることができるため、形態2の被覆部材2は、放熱性を更に高められる。
【0060】
<形態3>
図1(C)に示す被覆部材3は、基本的構成は形態2と類似であり、樹脂からなる本体部30と、本体部30の表面の一部に放熱材31がシリコーン樹脂からなる接着剤(図示せず)によって接合されている。放熱材31は、形態2の放熱材21と同様に本体片310に複数のフィン板311を具えるフィン形状である。但し、形態3の被覆部材3は、本体部30の形状及びその厚さ、周方向の被覆箇所の大きさが形態1と異なっている。以下、この相違点を詳細に説明し、形態1と共通する構成及び効果はその説明を省略する。
【0061】
本体部30は、断面長方形状の貫通孔30hを有しており、外形も長方形状である角筒体である。貫通孔30hの周方向に沿って本体部30を構成する樹脂の厚さをみたとき、当該樹脂の厚さが部分的に異なっている。具体的には、本体部30の表面をつくる四面のうち、一面側領域の厚さtp301がその残りの領域の厚さtp302よりも薄い薄肉部301を有する。そして、形態3の被覆部材3は、この薄肉部301のみに放熱材31が接合されている。つまり、被覆部材3は、薄肉部301が被覆箇所であり、本体部30の残部は、放熱材31が接合されていない露出箇所である。
【0062】
放熱材31は、薄肉部301の長方形状の表面と同じ大きさ・形状の長方形状板からなる本体片310に直交に、矩形板からなるフィン板311が立設されている。
【0063】
本体部30において薄肉部301の厚さtp301は、例えば、0.1mm以上3mm以下が挙げられる。薄肉部301の厚さtp301が3mm以下と薄くても金属などからなる放熱材31により、酸素の透過を防止でき、例えば、0.1mm〜1mmとすることができる。本体部30において薄肉部301以外の箇所:露出箇所の樹脂の厚さを均一的にしており、その厚さtp302は薄肉部301の厚さtp301よりも厚い(tp301<tp302)。露出箇所の樹脂の厚さは部分的に異ならせてもよい。例えば、露出箇所の外形を凹凸形状とすると、表面積の増大により、放熱材31を有していない場合でも、放熱性を高められる。酸素の透過の防止を考慮すると、露出箇所の最低厚さは3mm超が好ましい。
【0064】
被覆部材3も、本体部30の一部に放熱材31を具えることで、従来の樹脂のみからなる配管に比較して放熱性に優れる上に、酸素の透過を防止できる。特に、被覆部材3では、放熱材31が形態2の放熱材21と同様にフィン形状であることで放熱性により優れる上に、本体部30において放熱材31が接合された被覆箇所が薄肉部301であることで、放熱性を更に高められる。また、薄肉部301は、樹脂よりも酸素を透過し難い金属などからなる放熱材31で覆われることで、酸素の透過を効果的に防止できる。更に、被覆部材3では、本体部30において放熱材31が配置されない露出箇所が薄肉部301の厚さtp301よりも厚さtp302が厚い厚肉部302から構成されることで、酸素の透過を防止できる。
【0065】
<形態3の変形例>
形態1,2で説明した円筒状の本体部10においても、その周方向の一部にのみ放熱材が接合された形態(例えば、一方の半割れ片11a,21aのみを具える形態など)とすることができる。この場合に、放熱材が接合された被覆箇所の樹脂の厚さを放熱材が配置されない露出箇所の樹脂の厚さよりも薄くすることができる。例えば、一方の半割れ片11a(21a)のみを具える形態として、本体部10において半周分の厚さを残り半周分の厚さよりも薄い段差形状である形態とすることができる。段差の高さは、例えば、配置する放熱材(本体片)の厚さに適合した厚さとすると、被覆部材の外形がフィン板を除き、一様な形状となる。段差の高さに比較して、放熱材の厚さを厚くしてもよいし、薄くしてもよい。この段差は、放熱材の位置決めにも利用でき、放熱材の配置作業性に優れる。段差を有するといった異形状であっても、本体部は、樹脂製であるため、公知の樹脂管の製造方法(代表的には押出法)により、容易に製造可能である。或いは、この形態や上述した形態3は、適宜な形状の放熱材と樹脂からなる本体部とを射出成形やインサート成形などにより一体成形した配管を利用することができる。
【0066】
<形態4>
樹脂からなる本体部の厚さがその長手方向に異なる形態とすることができる。例えば、図2(A)に示す配管4は、その長手方向の一部が形態1で説明した被覆部材1で構成され、他部が本体部10を構成する樹脂のみで構成された複合構造管である。上記樹脂のみで構成された部分(以下、樹脂管40と呼ぶ)の厚さtp40は、被覆部材1に具える本体部10の樹脂の厚さtp10よりも厚く、本体部10と放熱材11との合計厚さと同じにしている。そのため、配管4は、その長手方向に亘って外径が一様になっている。樹脂管40の厚さtp40は、酸素の透過の防止を考慮すると3mm超が好ましい。
【0067】
配管4は、その長手方向の一部が被覆部材1で構成されることで、放熱性に優れる上に、酸素を透過し難い。また、配管4は、その長手方向の他部が従来の樹脂製配管と同様に、厚さtp40が比較的厚い樹脂管40で構成されることから、酸素を透過し難い。
【0068】
なお、ここでは、複合構造管として、被覆部材1を具える形態を示すが、上述した形態2,3,変形例に変更することができる。
【0069】
<形態5>
流路の一部に、複数の分岐管を具えた形態とすることができる。より具体的には、複数の分岐管と、各分岐管の一端に接続されて、これら分岐管を集約する分岐部(図示せず)と、各分岐管の他端に接続されて、これら分岐管を集約する集約部(図示せず)とを具える分岐配管部を流路の構成要素とすることができる。分岐配管部を具えることで、分岐配管部を具えていない場合と比較して、流路の表面積が増えることから放熱性を高められる。分岐管を例えば、上述した被覆部材1〜3、変形例によって構成すると放熱性を更に高められる。また、各分岐管を例えば、図3(A)に示すように被覆部材3で構成し、これら分岐管を積層した(縦積みした)積層構造管5とすることができる。積層構造管5は、その設置面積が一つの被覆部材3の設置面積と同じであるため、設置スペースを小さくすることができる。また、分岐配管部を具える形態では、分岐管の外形が、直方体状などの対向する二面が平行な立体である。このような分岐管は、外形が円筒状といった曲面形状や凹凸形状などである場合と比較して、容易に積層可能な上に、安定性に優れる。積層構造管5では、角筒状の被覆部材3を積層させているため、円筒状の被覆部材1と比較して、積層が容易であり、安定性に優れる。
【0070】
各分岐管を適宜一体化することで、積層状態を維持し易い。一体化するには、例えば、放熱材31に取付部を形成してボルトとナットとで締め付けたり、帯状材で拘束する、などが挙げられる。
【0071】
なお、図3(A)では積層数を2とするが、勿論、それ以上の分岐管を積層してもよい。分岐管の数は、各管に具える貫通孔の合計断面積が所望の流量(リットル/mm2)を満たすように選択するとよい。分岐管の数を多くすることで、電解液の合計流量を容易に増大できることから、この形態は、例えば、大容量の電池などに好適に利用することができる。
【0072】
<形態6>
或いは、図3(B)に示すように、分岐管を被覆部材3で構成し、これら分岐管を並列した(横並びした)並列構造管6とすることができる。並列構造管6は、複数の分岐管が集約して配置されることから、各分岐管を離散的に配置する場合に比較して、設置面積を小さくし易い。
【0073】
図3(B)に示す例では、分岐管である被覆部材3同士が接触する箇所の樹脂の厚さを被覆部材3同士が接触していない箇所(ここでは、被覆箇所以外の箇所(例えば、底部))の樹脂の厚さよりも薄くしている。流路を構成する樹脂部分において被覆箇所以外の箇所であっても、酸素に実質的に接触しない箇所は、このように厚さを薄くしても、酸素の透過による電解液の劣化が生じ難い。
【0074】
その他、放熱性を更に高めるために、上述した各形態1〜6、変形例の被覆部材などの近傍に、別途ファン(図示せず)を配置した形態とすることができる。ファンは、ファンからの風が特に被覆部材などに具える放熱材に当たるように配置することが好ましい。この場合に、形態6の並列構造管6では、分岐管同士が近接されていることで、各分岐管がファンの風を効率よく受けられるため、放熱性に優れる。
【0075】
<形態7>
或いは、被覆部材3とファン70とを一体にした複合管7とすることができる。特に、図4に示すように放熱材31に近接するようにファン70を具えることで、ファン70からの風を放熱材31に効率よく当てることができ、放熱性に優れて好ましい。また、ファン70と被覆部材3とを一体化することで、ファン70と被覆部材3とを同時に配置できる上に、複合管7の設置面積が被覆部材3の設置面積と同じになるため、設置スペースを小さくすることができる。
【0076】
ここでは、複合管7は、角筒状の被覆部材3にファン70を載置した形態であることで、円筒状の被覆部材1に載置した形態と比較して、ファン70を安定して載置することができる。また、放熱材31が金属から構成され、本体片310やフィン板311の一部にファン70の取付部(図示せず)を設けて、ボルトなどの締付部材により一体化しても、経時的に締付力の緩みなどが生じ難く、長期に亘り、強固に固定することができる。
【0077】
<形態8>
上述の形態1〜7などではいずれも、流路を構成する配管において電解液の流通経路の長さが電解液の導入口と排出口とを繋ぐ直線の長さに実質的に等しい形態を説明した。流路を構成する配管として、上記流通経路の長さと、上記直線の長さとが異なる異形配管を利用することができる。図5に示す異形配管8は、直方体状の本体部80を有し、その内部に、一辺方向(図5(B)では上下方向)に振幅するように蛇行して設けられた貫通孔80hを具える。図5に示す例では、貫通孔80hの両端、つまり、電解液の導入口80i及び排出口80oを同じ平面上に設けているが、図6に示すように異ならせることもできる。図6に示す例では本体部90の対角位置に導入口90i及び排出口90oが設けられている。図5に示す導入口80i及び排出口80oの形状(ここでは円形状)は例示であり、上述した種々の形状、例えば、図6に示す矩形状などとすることができる。
【0078】
異形配管8は、小型ながら、例えば、異形配管8を構成する直方体の一辺の長さと同じ長さの貫通孔を有する配管と比較して、電解液における配管との接触面積を大きくすることができる。従って、異形配管8を通過した電解液は、その温度をある程度低下できると期待される。また、蛇行した貫通孔80hにより電解液の流通距離が長くなることで、異形配管8はシャントカレントを低減できる。更に、図5に示す例では、異形配管8の外形が直方体状であることで、上述した積層構造や並列構造を容易に構築することができる。異形配管8の外形は、円柱状など、適宜変更することができる。外形に関する点は、後述する形態9の異形配管9も同様である。
【0079】
異形配管8が放熱材81を具える形態であると、つまり、異形配管8が放熱領域であると、放熱性に優れる上に、上述のようにシャントカレントの低減、小型化を図ることができる。図5に示す例では、放熱材81は矩形板状であり、異形配管8の一面の一部にのみ具える形態を示すが、放熱材81の形状、形成領域は適宜変更することができる。例えば、放熱材81を異形配管8の上記一面の全面に具える形態、上述したフィンを具える形態などとすることができる。この点は、後述する形態9の異形配管9も同様である。
【0080】
<形態9>
図6に示す異形配管9は、直方体状の本体部90を有し、その内部に異形状の貫通孔90hを具える。異形配管9の貫通孔90hは、電解液の導入口90i及び排出口90oの断面積が等しく、内部の断面積が導入口90i及び排出口90oよりも大きい。より具体的には、異形配管9は、導入口90i又は排出口90oと同じ断面積を有する細領域96と、細領域96よりも大きな断面積を有する拡張領域95とを具える。また、図6に示す例では、異形配管9は、拡張領域95に複数のリブ93を具える。リブ93は矩形板状で、貫通孔90hを構成する一面から立設している。リブ93の形状、配置位置は特に問わない。
【0081】
異形配管9も、小型ながら、例えば、異形配管9を構成する直方体の一辺の長さと同じ長さの貫通孔を有する配管と比較して、電解液における配管との接触面積を大きく、異形配管9の通過による電解液の温度の低下をある程度期待できる。また、リブ93を本体部90に一体に具えることで、拡張領域95を有していながら、機械的強度を高められる。従って、例えば、異形配管9を分岐管に利用する場合に積層形態とする場合にも、拡張領域95の座屈を防止できる。
【0082】
異形配管9が放熱材91を具える形態であると、つまり、異形配管9が放熱領域であると、放熱性に優れる上に、小型化を図ることができる。特に、異形配管9は、リブ93を具えており、このリブ93により放熱材91を支持されるように当該放熱材91を配置することで、座屈などし難い。
【0083】
<形態10>
その他、流路において上述の樹脂から構成される部分に、貫通孔の断面積が30cm2以下である細径部を有する形態とすることができる。特に、細径部の長さを50cm以上とすることで、シャントカレントを効果的に低減できる。細径部の貫通孔の断面積を5cm2以下、更に3.2cm2以下、細径部の長さを50cm以上、更に80cm以上とすると、シャントカレントをより効果的に低減できる。また、樹脂の厚さが同じ一つの樹脂管と同じ容積を有するように細径部を構成した場合、細径部の方が長くなることで表面積が大きくなり、放熱性に優れる。
【0084】
上記細径部が上述した放熱材を具える形態、つまり、細径部が放熱領域であると、放熱性に優れる上に、上述のようにシャントカレントも低減できる。
【0085】
<放熱領域の存在範囲>
正極上流流路及び正極下流流路、負極上流流路及び負極下流流路の少なくとも一部を上述の形態1〜10、変形例で説明した放熱部材などで構成する。上流流路及び下流流路の長手方向において、放熱領域の範囲が大きいほど(最大:全長)、放熱性を高められる。また、放熱領域は、断面をとったとき、本体部の表面における周方向の被覆箇所が大きいほど(最大:全周)、放熱性を高められる。
【0086】
上流流路及び下流流路において放熱領域の範囲は、例えば、上流流路や下流流路が配置される環境に応じて選択することができる。具体的には、例えば、上流流路が比較的高温環境に配置される場合、上流流路のみを放熱領域とし、下流流路は、従来の樹脂製配管で構成した形態とすることができる。或いは、電池反応が行われることで、温度が高い傾向にある電解液が流通される下流流路のみを放熱領域とし、当該下流流路により冷却された電解液が流通され得る上流流路は、従来の樹脂製配管で構成した形態とすることができる。その他、正負の両極に放熱領域を具える形態、正極側のみに放熱領域を具える形態、負極側のみに放熱領域を具える形態のいずれの形態も利用可能である。
【0087】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、本体部の材質、放熱材の材質などを適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明レドックスフロー電池は、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーの発電に対して、発電出力の変動の安定化、発電電力の余剰時の蓄電、負荷平準化などを目的とした大容量の蓄電池に好適に利用することができる。その他、本発明レドックスフロー電池は、一般的な発電所や工場などに併設されて、瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした大容量の蓄電池としても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3, 被覆部材 4 配管 5 積層構造管 6 並列構造管 7 複合管
8,9 異形配管 10,30,80,90 本体部 10h,30h,80h,90h 貫通孔
11,21,31,81,91 放熱材 11a,11b,21a,21b 半割れ片 12 接着剤
40 樹脂管 70 ファン 80i,90i 導入口 80o,90o 排出口 93 リブ
95 拡張領域 96 細領域
210,310 本体片 211,311 フィン板 301 薄肉部 302 厚肉部
100 レドックスフロー電池 100c 電池要素 101 隔膜 102 正極セル
103 負極セル 104 正極電極 105 負極電極 106 正極タンク
107 負極タンク 108 正極上流流路 109 負極上流流路
110 正極下流流路 111 負極下流流路 112,113 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を介してタンク内の電解液を電池要素に供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記流路は、放熱領域を具え、
前記放熱領域は、
前記電解液が流通される貫通孔を有し、樹脂により構成された本体部と、
前記本体部の表面の少なくとも一部に接合され、前記樹脂よりも熱伝導率が高くかつ酸素透過性が低い材料からなる放熱材とを具えることを特徴とするレドックスフロー電池。
【請求項2】
前記放熱領域の断面は、前記本体部の周方向の一部に前記放熱材が接合された被覆箇所と、他部に前記放熱材が接合されていない露出箇所とを有し、
前記被覆箇所の樹脂の厚さが前記露出箇所よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記放熱領域の断面は、前記本体部の周方向の一部に前記放熱材が接合された被覆箇所と、他部に前記放熱材が接合されていない露出箇所とを有し、
前記被覆箇所の樹脂の厚さが3mm以下であり、
前記露出箇所の樹脂の厚さが3mm超であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記放熱材は、フィン形状、又は凹凸形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記放熱材は、シリコーン系樹脂により前記本体部に接合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記流路は、一つの配管を分岐する分岐部と、前記分岐部に繋がる複数の分岐管と、前記分岐管を別の一つの配管に集約する集約部とを有する分岐配管部を具え、
前記分岐管は、並列又は積層されており、
前記放熱領域は、前記分岐管の少なくとも一つに設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記分岐管において、前記分岐管同士が接触する箇所の樹脂の厚さが、接触していない箇所の少なくとも一部の樹脂の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記流路は、前記電解液が導入される導入口と、導入された電解液が排出される排出口とを繋ぐ直線よりも長い流通経路を有する異形配管を具え、
前記異形配管は、その内部に前記貫通孔が蛇行して設けられ、
前記放熱領域は、前記異形配管に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記流路は、前記電解液が導入される導入口と、導入された電解液が排出される排出口とを繋ぐ直線よりも長い流通経路を有する異形配管を具え、
前記異形配管は、前記導入口及び前記排出口の少なくとも一方の断面積よりも大きな断面積を有する拡張領域を有し、この拡張領域にリブが設けられており、
前記放熱領域は、前記異形配管に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記放熱材に送風を行うファンを具えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記放熱材と前記ファンとは一体化されていることを特徴とする請求項10に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記本体部は、前記貫通孔の断面積が30cm2以下である細径部を有し、この細径部の長さが50cm以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−37776(P2013−37776A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170390(P2011−170390)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】