説明

レドックスフロー電池

【課題】電解液の不純物を効率よく除去できるレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】RF電池1Aは、正極電極を内蔵する正極セル102と、負極電極を内蔵する負極セル103と、各極セル102、103の間に介在される隔膜101とを有する電池セル100cを具え、正極電解液及び負極電解液を各極セル102、103に供給して充放電を行う。RF電池1Aは、各極電解液を濾過するフィルタ用セル10を具える。フィルタ用セル10は、電池セル100cと同様の構造で構成され、正極電解液を濾過する正極電解液用フィルタを内蔵する正極フィルタセル12と、負極電解液を濾過する負極電解液用フィルタを内蔵する負極フィルタセル13と、各極フィルタセル12、13を区画するセパレータ11とを具える。正極電解液用フィルタ及び負極電解液用フィルタは、正極電極及び負極電極よりも電解液の不純物を除去する濾過特性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関するものである。特に、電解液の不純物を効率よく除去できるレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した風力発電や太陽光発電の導入が世界的に推進されている。これらの発電出力は天候に影響されるため、再生可能エネルギーを利用した発電の大量導入は、電力系統の周波数や電圧の維持を困難にさせるという問題を招く。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の貯蓄、負荷平準化などを図ることが期待される。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池(RF電池)がある。RF電池は、正極電解液に含まれるイオンと負極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位の差を利用して充放電を行う電池である。図7のRF電池の動作原理図に示すように、RF電池100は、正極電極104を内蔵する正極セル102と、負極電極105を内蔵する負極セル103と、イオン透過膜からなり各極セル102、103を区画する隔膜101とを具える電池セル100cを具える。各極電極104、105は、カーボンフェルトからなるものが代表的である。
【0004】
各極セル102、103には、それぞれに供給する各極電解液を貯留する各極電解液用タンク106、107が、各極電解液を各極電解液用タンク106,107から各極セル102、103に送る往路管108、109と、及び各極電解液を各極セル102、103から各極電解液用タンク106、107に戻す復路管110、111とを有する各循環経路100p、100nを介して接続されている。各極電解液用タンク106、107に貯留される電解液は、ポンプ112、113により各極セル102、103に循環される。
【0005】
RF電池100に使用される各極電解液は、例えば、RF電池100の組立の途中でゴミなどの不純物が混入したり、充放電の繰り返しに伴い、電池セル100c、循環経路100p、100n、或いは各極電解液用タンク106、107などの構成材料が次第に溶出し、不純物として析出したりする場合がある。不純物が混入した電解液を使用してRF電池100を運転(充放電)すると、不純物が各極電極104、105に付着する。その結果、電解液の流れを阻害して圧力損失が増加したり、電池セルの内部抵抗が上昇したりして電池性能が低下する。
【0006】
それを解消するための技術として、特許文献1には、RF電池の運転前に、フィルタを用いて各極電解液を濾過することで不純物を除去すること、または、予め、RF電池の電池セルと同じ構造を有する濾過用セルを用いて充放電を行うことで不純物を除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−367657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、RF電池の運転中において、充放電の繰り返しに伴い不純物が析出し、電池性能の低下を招く虞がある。そこで、RF電池の運転前だけでなく、RF電池の運転中においても、電解液中の不純物を除去することが望まれている。一方で、RF電池の運転中に効率的に不純物を除去する具体的な構成、特にRF電池の運転に支障を来すことなく不純物を除去する具体的な構成は提案されていない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、電解液の不純物を効率よく除去できるレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明レドックスフロー電池は、正極電極を内蔵する正極セルと、負極電極を内蔵する負極セルと、正極セルと負極セルの間に介在される隔膜とを有する電池セルを具え、正極電解液及び負極電解液を各極セルに供給して充放電を行う。レドックスフロー電池は、さらに、各極電解液用タンクと、各循環経路と、ポンプと、フィルタ用セルとを具える。各極電解液用タンクは、各極セルに供給する各極電解液を貯留する。各循環経路は、各極電解液を各極電解液用タンクから各極セルに送る往路管と、各極電解液を各極セルから各極電解液用タンクに戻す復路管とを有する。ポンプは、各循環経路のそれぞれに設けられ、各極電解液を循環する。フィルタ用セルは、各極セルに供給される各極電解液を濾過するためのもので、電池セルと同様の構造で構成される。具体的には、正極フィルタセルと、負極フィルタセルと、セパレータとを具える。正極フィルタセルは、正極電解液が流通して当該正極電解液を濾過する正極電解液用フィルタを内蔵する。負極フィルタセルは、負極電解液が流通して当該負極電解液を濾過する負極電解液用フィルタを内蔵する。セパレータは、正極フィルタセルと負極フィルタセルとを区画する。そして、正極電解液用フィルタ及び負極電解液用フィルタは、電池セルの正極電極及び負極電極よりも不純物を除去する濾過特性に優れる。
【0011】
本発明レドックスフロー電池によれば、電池セルに供給される各極電解液を濾過するフィルタ用セルが、電池セルの各極電極よりも不純物を除去する濾過特性に優れる各極電解液用フィルタを具えることで、各極電解液の不純物を効率よく除去できる。そのため、各極電極に不純物が付着することを抑制できるので、内部抵抗の上昇を抑制でき、加えて、電解液の流れを阻害することがないので圧力損失の増加を抑制できる。その結果、電池特性の低下を抑制できる。また、フィルタ用セルは電池セルと同様の構造で構成されているため、電解液の漏洩を防止できる。
【0012】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、上記フィルタ用セルが、上記循環経路の途中に設けられていることが挙げられる。
【0013】
上記の構成によれば、電池セルに各極電解液を流通させるためのポンプで、フィルタ用セルに各極電解液を流通させることができる。即ち、ポンプを電池セルとフィルタ用セルとで共用できるので、レドックスフロー電池の構成を簡略化できる。
【0014】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、上記フィルタ用セルが、上記循環経路のうち、上記往路管の途中に設けられていることが挙げられる。
【0015】
上記の構成によれば、電池セルに供給される各極電解液は、各極電解液用タンクから送られて電池セル内に流通されるまでの間に濾過されて不純物が除去されるので、電池セル内には常に不純物が除去された各極電解液を流通させることができる。そのため、各極電極に不純物が付着することを一層抑制できる。
【0016】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、上記フィルタ用セルの各極電解液用フィルタの詰まり具合を検出する検出手段を具えることが挙げられる。
【0017】
上記の構成によれば、各極電解液用フィルタの詰まり具合を把握でき、フィルタの交換時期を把握できる。
【0018】
本発明レドックスフロー電池の一形態として、上記フィルタ用セルが上記循環経路の途中に設けられる場合、当該循環経路において、フィルタ用セルの各極電解液の流入側と流出側とをそれぞれバイパスするバイパス管と、バイパス管と循環経路との接続箇所に取り付けられる三方弁とを具えることが挙げられる。
【0019】
上記の構成によれば、フィルタ用セルが目詰まりして電池セルへの電解液の供給量が減少する場合が生じても、バイパス管を具えることで電池セルへの各極電解液の供給量を確保できる。また、バイパス管と循環経路との接続箇所に三方弁を具えることで、各極電解液用フィルタの目詰まりによりフィルタ用セルの各極電解液用フィルタを交換する必要が生じた場合、電池セルの充放電(運転)を停止することなく、各極電解液用フィルタを交換できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレドックスフロー電池は、各極電解液の不純物を効率よく除去できるので、電池セルの内部抵抗の上昇を抑制でき、電池効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図2】実施形態2に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図3】実施形態3に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図4】実施形態4に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図5】実施形態5に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図6】実施形態6に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【図7】レドックスフロー電池の動作原理図である。
【図8】セルスタックの概略構成図である。
【図9】試験例において、レドックスフロー電池の連続運転日数と内部抵抗率との関係を示すグラフであって、(A)は実施形態3に係るレドックスフロー電池の場合を示し、(B)は従来のレドックスフロー電池の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明レドックスフロー電池の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明レドックスフロー電池の基本的な構成は、従来のレドックスフロー電池と同様である。従って、まず、レドックスフロー電池の基本的な構成を説明する。その後、各実施形態の固有の構成についてそれぞれ図面を参照しつつ説明する。
【0023】
《レドックスフロー電池の共通構成》
[全体構成]
図7は、各実施形態のRF電池のうち、共通する構成を有する部分を示す動作原理図である。図7のRF電池100は、代表的には、交流/直流変換器を介して、発電部(例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他、一般の発電所など)や変電設備を含む電力系統に接続され、発電部を電力供給源として充電を行い、負荷を電力提供対象として放電を行なう。このRF電池100は、従来のRF電池と同様に、電池セル100cと、この電池セル100cに電解液を循環させる循環機構(タンク、配管、ポンプ)とを具える。
【0024】
[電池セルと循環機構]
RF電池100に備わる電池セル100cは、正極電極104を内蔵する正極セル102と、負極電極105を内蔵する負極セル103と、各極セル102,103を区画すると共にイオンを透過する隔膜101と、を具える。代表的には、各極電極は、カーボンフェルトからなるものが挙げられ、隔膜は、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜といったイオン交換膜が挙げられる。
【0025】
正極セル102には、正極セル102に供給する正極電解液を貯留する正極電解液用タンク106が、正極電解液用タンク106から正極セル102に正極電解液を送る往路配管108と、正極セル102から正極電解液用タンク106に正極電解液を戻す復路配管110とを有する循環経路100pを介して接続される。同様に、負極セル103には、負極セル103に供給する負極電解液を貯留する負極電解液用タンク107が、負極電解液用タンク107から負極セル103に負極電解液を送る往路配管109と、負極セル103から負極電解液用タンク107に負極電解液を戻す復路配管111とを有する循環経路100nを介して接続される。往路管108,109には、各極電解液を循環させるためのポンプ112,113を具える。電池セル100cは、各循環経路100p、100n、各ポンプ112,113を利用して、正極セル102(正極電極104)、負極セル103(負極電極105)にそれぞれ正極電解液用タンク106の正極電解液、負極電解液用タンク107の負極電解液を循環供給して、各極の電解液中の活物質となる活物質イオンの価数変化反応に伴って充放電を行なう。図7に示すRF電池100では、各極電解液にバナジウムイオン水溶液を用いた場合を例に挙げている。また、図7中の電池セル100c内の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示す。
【0026】
電池セル100cは通常、図8に示すように、複数積層されたセルスタック200と呼ばれる形態で利用される。電池セル100cを構成する各極セル102,103は、一面に正極電極104、他面に負極電極105が配置される双極板211と、電解液を供給する給液孔213、214及び電解液を排出する排液孔215、216を有し、かつ双極板211の外周に形成される枠体212とを具えるセルフレーム210を用いた構成が代表的である。複数のセルフレーム210を積層することで、給液孔213、214及び排液孔215、216は電解液の流路を構成し、この流路は各管108〜111に接続される。セルスタック200は、セルフレーム210、正極電極104、隔膜101、負極電極105、セルフレーム210、…と順に繰り返し積層されて構成される。代表的には、双極板は、プラスチックカーボンからなるもの、セルフレームの枠体は、塩化ビニルなどの樹脂からなるものが挙げられる。そして、両側に一対のエンドプレート220を配置して、ボルトなどの締付部材230で両エンドプレート220を締め付けることで構成されている。
【0027】
[電解液]
このRF電池100に用いられる正極電解液および負極電解液は、以下の(1)〜(5)のいずれかとすることが挙げられる。
(1)正極用電解液は、マンガンイオンを含有し、負極用電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(2)正極用電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有し、負極用電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(3)正極用電解液及び負極用電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有する。
(4)正極用電解液及び負極用電解液は、バナジウムイオンを含有する。
(5)正極用電解液は、鉄イオンを含有し、負極用電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
【0028】
そうすることで、好ましいRF電池100を構成することができる。特に、上記(1)、(2)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質に上記列挙したチタンイオンやバナジウムイオンなどを用いることで、高い起電力が得られる。上記(3)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質にチタンイオンを用いることで、高い起電力が得られる。更に、上記(2)、(3)の電解液において正極活物質をマンガンイオンとし、別途チタンイオンを含有することで、高い起電力が得られる上に、電池抵抗の増加につながる析出物の発生を効果的に抑制することができる。上記電解液(5)としては、正極電解液が鉄イオンを含有し、負極電解液がクロムイオンを含有する構成が好適である。
【0029】
電解液の溶媒としては、HSO、KSO、NaSO、HPO、H、KPO、NaPO、KPO、HNO、KNO、及びNaNOから選択される少なくとも一種の水溶液を利用することができる。
【0030】
《実施形態1》
実施形態1では、図1に示すようにRF電池1Aは、上述の基本的な構成に、さらに各極電解液を濾過して電解液中の不純物を除去するフィルタ用セル10を具える。本発明の特徴は、各極電解液を濾過するフィルタ用セル10の構造にある。以下、この特徴点を中心に説明する。ここでは、フィルタ用セル10の各極電解液の循環経路と電池セル100cの各極電解液の循環経路とが別経路である場合を例に説明する。
【0031】
[フィルタ用セルと循環機構]
フィルタ用セル10の基本的な構成は、電池セル100cと同様の構造であり、図1に示すように、正極電解液が流通される正極フィルタセル12と、負極電解液が流通される負極フィルタセル13と、各極フィルタセルを区画するセパレータ11とを具える。そして、正極フィルタセル12は、図8に示す、正極電解液を濾過する正極電解液用フィルタ14が内蔵され、負極フィルタセル13は、負極電解液を濾過する負極電解液用フィルタ15が内蔵される。但し、各極電解液用フィルタ14、15に具わる特性が、各極電極104、105とは異なる。
【0032】
正極電解液用フィルタ14及び負極電解液用フィルタ15の構成材料や構造は、それぞれ正極電極104及び負極電極105よりも濾過特性に優れるものを使用する。各極電解液用フィルタ14、15の構成材料としては、特に導電性などは問わず、各極セル102、103に内蔵される各極電極104、105のように充放電に適した材料で構成されていなくてもよく、各極電極104、105よりも導電率の低い材料、または絶縁性材料で構成されていてもよい。例えば、ポリプロピレン(PP)や、カーボンなどが挙げられる。また、各極電解液用フィルタ14、15の構造としては、各極電極104、105よりも各極電解液用フィルタ14,15の方が、各極電解液に混入、または析出した不純物を除去できるものであればよい。例えば、各極電極104、105よりも電解液を通過させ易い構造を有するもの、不純物を通過させ難い構造を有するもの、或いは、不純物が付着し易いものなどが挙げられる。具体的には、孔径が100μm以下、または各極電極104、105の表面積の2倍以上の表面積の少なくとも一方を具えるメッシュやフェルトなどが挙げられる。特に、孔径は10μm以下が好ましく、表面積は5倍以上、更には10倍以上が好ましい。
【0033】
セパレータ11は、正極フィルタセル12と負極フィルタセル13の各極の電解液が混合しないものでできていればよい。例えば、プラスチックシートが挙げられ、電池セル100cに具わる隔膜101と同じイオン交換膜などでもよい。
【0034】
フィルタ用セル10は、電池セル100cと同様、図8に示すように複数積層された形態(セルスタック20)として利用することができる。フィルタ用セル10を構成する各極フィルタセル12、13は、電池セル100cの各極セル102、103と同様に、一面に正極電解液用フィルタ14、他面に負極電解液用フィルタ15が配置される双極板211と、電解液を供給する給液孔213、214及び電解液を排出する排液孔215、216を有し、かつ双極板211の外周に形成される枠体212とを具えるセルフレーム210を用いた構成が挙げられる。複数のセルフレーム210を積層することで、給液孔213、214及び排液孔215、216は電解液の流路を構成する。セルスタック20は、セルフレーム210、正極電解液用フィルタ14、セパレータ11、負極電解液用フィルタ15、セルフレーム210、…と順に繰り返し積層されて構成される。双極板211及びセルフレーム210の枠体212の構成材料は、上述と同じ材料を使用する。そして、セルスタック200と同様に、両側に一対のエンドプレート220を配置して、ボルトなどの締付部材230で両エンドプレート220を締め付けることで構成されている。
【0035】
正極フィルタセル12は、電池セル100cの正極セル102に供給される正極電解液と共通の電解液が流通される。同様に、負極フィルタセル13は、電池セル100cの負極セル103に供給される負極電解液と共通の電気液が流通される。即ち、フィルタ用セル10の正極フィルタセル12と負極フィルタセル13は、それぞれ正極電解液用タンク106と負極電解液用タンク107からそれぞれ電解液が供給される。
【0036】
本例では、電池セル100cとは別の循環経路を具える。具体的には、正極フィルタセル12には、正極電解液用タンク106が、正極セル102に接続される往路管108と復路管110とは別の往路管31と復路管33とを有する循環経路30pを介して接続されている。一方、負極フィルタセル13には、負極電解液用タンク107が、負極セル103に接続される往路管109と復路管111とは別の往路管32と復路管34とを有する循環経路30nを介して接続されている。各往路管31、32には、フィルタ用セル10に各極電解液を循環させるポンプ35、36を具える。フィルタ用セル10は、各循環経路30p、30nと、各ポンプ35,36を利用して、電池セル100cに供給される各極電解液と共通の電解液を各極電解液用タンク106、107から各極フィルタセル12、13に循環して電解液を濾過し、電解液に混入した不純物を除去する。濾過された各極電解液は、各極電解液用タンク106、107に戻される。
【0037】
以上説明した実施形態1の構成によれば、各極電極104、105よりも濾過特性に優れる各極電解液用フィルタ14、15を内蔵するフィルタ用セル10を具えることで、電池セル100cに供給される各極電解液に混入、または析出した不純物を効率よく除去できるため、各極セル102、103に内蔵される各極電極104、105に不純物が付着するのを抑制できる。また、電池セル100cとは別の循環経路を具えて各極電解液を濾過するので、電池セル100cの充放電(運転)を停止することなくフィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15を交換できる。フィルタ用セル10は、電池セル100cと同じ構造をしているため、電解液の漏洩を防止できる。加えて、電池セル100cと共通の部材(例えばセルフレームや隔膜など)で構成されるので、コストを低減できる。
【0038】
《実施形態2》
図2に示す実施形態2のRF電池1Bは、実施形態1と同様に、上述の基本的な構成と、フィルタ用セル10とを具える。但し、フィルタ用セル10を設ける箇所が実施形態1と相違する。ここでは、フィルタ用セル10の各極電解液の循環経路と電池セル100cの各極電解液の循環経路とが同じ経路を辿る。即ち、RF電池1Bは、フィルタ用セル10を電池セル100cの各極電解液の循環経路の途中に設ける。より具体的には、電池セル100cから各極電解液用タンク106、107に各極電解液を戻す復路管110、111の途中に設ける。ここでは、電池セル100cに各極電解液を循環するために利用する各循環経路100p、100nと、各ポンプ112、113とを利用して、各極電解液用タンク106、107から送られて電池セル100cを通過した各極電解液を、フィルタ用セル10の各極フィルタセル12、13に通過させて各極電解液を濾過し、不純物を除去する。そして、不純物が除去された各極電解液が各極電解液用タンク106、107に戻される。
【0039】
この構成によれば、電池セル100cとフィルタ用セル10の各極電解液の循環経路が共通しているので、電池セル100cに各極電解液を循環させるポンプ112、113で、フィルタ用セル10に各極電解液を流通させることができる。即ち、ポンプ112、113を電池セル100cとフィルタ用セル10とで共用できる。そのため、各極電解液の不純物を除去できるRF電池1Bの構成を簡略化できる。
【0040】
《実施形態3》
図3に示す実施形態3のRF電池1Cは、基本的な構成は実施形態2と同様であるが、フィルタ用セル10を設ける箇所が、実施形態2と相違する。具体的には、本例のRF電池1Cは、各極電解液用タンク106、107から各極セル102、103(電池セル100c)に各極の電解液を送る往路管108、109の途中にフィルタ用セル10を設ける。つまり、フィルタ用セル10は、電池セル100cに各極電解液を循環するために利用する各管108〜111と、各ポンプ112、113とを利用して、各極電解液用タンク106、107から各極電解液を各極フィルタセル12、13に通過させて各極電解液を濾過し、不純物を除去する。そして、不純物が除去された各極電解液が続けて電池セル100cの各極セル102、103に供給されて、充放電が行われる。その後、各極電解液用タンク106、107に戻される。
【0041】
この構成によれば、電池セル100cに供給される各極電解液は、各極電解液用タンク106、107から送られて電池セル100c内に流通されるまでの間に濾過されるので、電池セル100c内には常に不純物が除去された各極電解液を流通させることができる。そのため、各極電極104、105に不純物が付着することを一層抑制できる。
【0042】
《実施形態4》
図4に示す実施形態4のRF電池1Dは、実施形態2と実施形態3を組み合わせたような構成である。つまり、RF電池1Dは、往路管108、109の途中と復路管110、111の途中の双方にフィルタ用セル10を具える。ここでは、上記双方にそれぞれ一つずつフィルタ用セル10を設けた。
【0043】
この構成によれば、往路管108、109と復路管110、111のそれぞれにフィルタ用セル10を設けることで、仮に一方のフィルタ用セル10が故障した場合でも、他方のフィルタ用セル10で電解液の不純物を除去できる。
【0044】
《実施形態5》
図5に示す実施形態5のRF電池1Eは、実施形態3のRF電池1Cに対して、さらにフィルタ用セル10の詰まり具合を検出する検出手段を具える。即ち、フィルタ用セル10は、往路管108、109の途中に設けている。
【0045】
RF電池1Eに具わる検出手段としては、フィルタ用セル10内に流通する電解液の流量を検出するための流量センサ41、42(流量計)、または、流量変化に伴い変化する電解液の圧力を検出するための圧力センサ(圧力計)などが挙げられる。この検出手段を用いて、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15の交換時期を把握できる。
【0046】
具体的には、予め、目詰まりしていない各極電解液用フィルタ14、15におけるポンプの出力と流量、或いはポンプの出力と圧力との相関データを求めておき、検出手段による検出結果がその相関データから一定以上の乖離があれば各極電解液用フィルタ14、15の目詰まりと判断し、各極電解液用フィルタ14、15を交換すればよい。特に、RF電池1Eは、上記相関データをメモリにテーブルとして記憶しておく記憶手段と、記憶手段から相関データを呼び出し、検出結果と比較して各極電解液用フィルタ14、15が目詰まりしているかどうかを判定する判定手段とを具える処理装置を具えておくことが好ましい。加えて、判定結果を作業者に知らせるモニタなどの表示装置などの確認手段を具えておくとさらによい。そうすれば、検出手段による検出結果と相関データとの比較から、容易に各極電解液用フィルタ14、15の交換時期が把握できる。
【0047】
ここでは、流量センサ41、42を、各往路管108、109において、フィルタ用セル10の各極電解液の流入側に設ける。流量センサ41、42には市販のものを使用することができる。
【0048】
この構成によれば、実施形態3の効果に加え、流量センサの検出結果からフィルタ用セル10の詰まり具合を把握できるので、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15の交換時期を把握できる。
【0049】
《実施形態6》
図6に示す実施形態6のRF電池1Fは、実施形態5のRF電池1Eに対し、さらに往路管108、109において、フィルタ用セル10の各極電解液の流入側と流出側とをバイパスするバイパス管51、52と、往路管108、109とバイパス管51、52との接続箇所に取り付けられる三方弁61〜64とを具える。即ち、フィルタ用セル10は、往路管108、109の途中に設けられ、フィルタ用セル10の詰まり具合を検出する検出手段(流量センサ41、42)が、往路管108、109において、フィルタ用セル10の各極電解液の流入側に設けられている。
【0050】
バイパス管51、52の一端は、往路管108、109において、流量センサ41、42とフィルタ用セル10の流入側との間に接続される。一方、バイパス管51、52の他端は、往路管108、109において、フィルタ用セル10の流出側と、電池セル100cの流入側との間に接続される。パイパス管51、52と往路管108、109との各接続箇所は、三方弁61〜64が取り付けられている。三方弁61〜64は、流量センサ41、42の検出結果に基づいて切り換えるようにバルブ制御手段により制御するとよい。
【0051】
具体的には、流量センサ41、42の検出結果が所定値以上、即ち、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15が詰まっておらず、電池セル100cへの各極電解液の供給量が所定値以上の場合、バイパス管51、52に各極電解液が流通しないように、バイパス管51、52側の弁を閉じた状態に三方弁61〜64を制御する。逆に、流量センサ41、42の検出結果が所定値未満の場合、即ち、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15が目詰まりし、電池セル100cへの各極電解液の供給量が所定値未満となった場合、フィルタ用セル10への各極電解液の供給を遮断してバイパス管51、52に各極電解液が流通するように、バイパス管51、52側の弁を開いた状態に三方弁61〜64を制御すればよい。そして、その間にフィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14,15を交換すればよい。つまり、上記供給量が所定値以上の場合、各極電解液は、各極電解液用タンク106、107からフィルタ用セル10を通過して不純物が濾過され、濾過された各極電解液が電池セル100cの各極セル102、103に供給される。一方、上記供給量が所定値未満の場合、各極電解液は、各極電解液用タンク106、107からバイパス管51,52を通って電池セル100cの各極セル102、103に供給される。
【0052】
この構成によれば、実施形態5の効果に加え、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15が各極電解液を濾過するに伴い、次第に目詰まりして電池セル100cへの電解液の供給量が減少しても、三方弁を切り換えてバイパス管51、52に電解液を流通させることで、電池セルへの電解液の供給量を確保することができる。そして、フィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15を交換する際、フィルタ用セル10への各極電解液の供給を遮断してバイパス管51、52に各極電解液を流通させることで、電池セル100cの充放電(RF電池1Fの運転)を停止することなく、各極電解液用フィルタ14、15を交換できる。
【0053】
《試験例》
試験例として、フィルタ用セルを具えるRF電池と、上述の基本的な構成のみを具えフィルタ用セルを具えない従来のRF電池とに対し、連続運転を行い、各RF電池の電池セルの内部抵抗率を比較した。フィルタ用セルを具えるRF電池として、ここでは、実施形態3のRF電池1C(図3)を使用した。そして、RF電池1Cにおけるフィルタ用セル10の各極電解液用フィルタ14、15に、電池セル100cの各極電極104、105の表面積の約10倍の表面積を有するカーボン製のフェルトを用いた。RF電池1Cの結果を図9の(A)に示し、従来のRF電池の結果を図9の(B)に示す。
【0054】
《結果》
RF電池1Cの場合、連続運転日数が長くなっても電池セルの内部抵抗が殆ど変化せず、運転開始時に約1.3Ω・cmであった内部抵抗率は、連続運転日数が約100日経過した後も同様であった。一方、従来のRF電池の場合、連続運転日数が長くなるにつれて電池セルの内部抵抗率が徐々に上昇し、運転開始時に約1.3Ω・cmであった内部抵抗率は、連続運転日数が約100日経過した頃には、1.4Ω・cm超となり、0.1Ω・cm以上上昇した。このような結果となったのは、RF電池1Cは、フィルタ用セル10で、各極電解液の不純物を除去でき、電池セルの各極電極に不純物が付着するのを抑制できたためであると考えられる。一方、従来のRF電池は、日が経つにつれて電池セルの充放電に伴い各極電解液に析出した不純物が、電池セルの各極電極に付着したためであると考えられる。
【0055】
また、RF電池1Cにおいて、電解液を濾過するためのフィルタとしてフィルタ用セル10の代わりに電池セル100cを設けて同様に連続運転した場合、連続運転日数に対して内部抵抗率の上昇する割合は図9の(B)よりも低いものの、内部抵抗率が上昇し、100日よりも更に日が経つと、徐々に上記従来のRF電池の内部抵抗率に近づくと考えられる。このような結果となるのは、各極電極104、105では各極電解液のある程度までしか不純物を除去できないからだと考えられる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、各極電解液用フィルタ14、15は、導電性を有するもので構成されていてもよい。その場合、各極電解液用フィルタ14、15に荷電して電気的に不純物を吸着させ易くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のRF電池は、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーの発電に対して、発電出力の変動の安定化、発電電力の余剰時の蓄電、負荷平準化などを目的とした用途に好適に利用することができる。そして、本発明RF電池は、一般的な発電所などに併設されて、瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした大容量の蓄電池としても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1A、1B、1C、1D、1E、1F レドックスフロー電池
10 フィルタ用セル
11 セパレータ 12 正極フィルタセル 13 負極フィルタセル
14 正極電解液用フィルタ 15 負極電解液用フィルタ
20 セルスタック
30p、30n 循環経路
31、32 往路管 33、34 復路管 35、36 ポンプ
41、42 流量センサ(流量計)
51、52 バイパス管
61、62、63、64 三方弁
100 レドックスフロー電池
100c 電池セル
101 隔膜 102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
106 正極電解液用タンク 107 負極電解液用タンク
100p、100n 循環経路
108、109 往路管 110、111 復路管 112、113 ポンプ
200 セルスタック
210 セルフレーム 211 双極板 212 枠体
213、214 給液孔 215、216 排液孔
220 エンドプレート 230 締付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極を内蔵する正極セルと、負極電極を内蔵する負極セルと、正極セルと負極セルの間に介在される隔膜とを有する電池セルを具え、正極電解液及び負極電解液を各極セルに供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記各極セルに供給する各極電解液を貯留する各極電解液用タンクと、
前記各極電解液を前記各極電解液用タンクから前記各極セルに送る往路管と、前記各極電解液を前記各極セルから前記各極電解液用タンクに戻す復路管とを有する各循環経路と、
前記各循環経路のそれぞれに設けられ、各極電解液を循環させるポンプと、
前記各極セルに供給される各極電解液を濾過するフィルタ用セルとを具え、
前記フィルタ用セルは、前記電池セルと同様の構造で構成されて、
前記正極電解液が流通して当該正極電解液を濾過する正極電解液用フィルタを内蔵する正極フィルタセルと、
前記負極電解液が流通して当該負極電解液を濾過する負極電解液用フィルタを内蔵する負極フィルタセルと、
前記正極フィルタセルと負極フィルタセルとを区画するセパレータとを具え、
前記正極電解液用フィルタ及び負極電解液用フィルタは、前記電池セルの正極電極及び負極電極よりも不純物を除去する濾過特性に優れることを特徴とするレドックスフロー電池。
【請求項2】
前記フィルタ用セルが、前記循環経路の途中に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記フィルタ用セルが、前記往路管の途中に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記フィルタ用セルの各極電解液用フィルタの詰まり具合を検出する検出手段を具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記循環経路において、前記フィルタ用セルの各極電解液の流入側と流出側とをそれぞれバイパスするバイパス管と、
前記バイパス管と前記循環経路との接続箇所に取り付けられる三方弁とを具えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37856(P2013−37856A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172320(P2011−172320)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】