レンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法

【課題】 施工時における容易性、安全性の実現と、低コストで、耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物の壁体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋として連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことで、施工の容易性、安全性、応用性が向上し、耐震性と耐久性に優れたレンガ積み壁面の配筋方法を提供することを可能とした。
【解決手段】 コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋として連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことで、施工の容易性、安全性、応用性が向上し、耐震性と耐久性に優れたレンガ積み壁面の配筋方法を提供することを可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンガ積み建築物のレンガ壁面の構造に関し、特にレンガ壁面内部の配筋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、レンガを積んで壁面を構成した建築物は、レンガ自体の持つ重厚で趣のある色彩や質感といった美的外観、そして耐久性、耐火性、断熱性、遮音性などといった優れた建築物としての性能を有する。これらのレンガ積み建築物は、モルタルを用いてレンガを積み重ねる湿式工法によりレンガ壁面を構成している。このようなレンガ壁面は、モルタルの接着力によって各々のレンガの一体化を図っているため、構造体としての充分な強度を得られない。特に、地震の際にレンガ壁面にかかる水平荷重に対してはほとんど耐えられず、地震の多い日本においては普及に障害がある。
【0003】
そこで、前記したような課題を解決するために、種々の提案がなされている。
例えば、特開昭53−73826号公報(特許文献1)に開示された「特殊レンガ及び組積工法」は、確実に施工が可能で、暴風、地震などの災害に対しても充分な強度をもった建築物を形成可能な特殊レンガ及びその組積工法に関するもので、レンガ自体に、レンガを積み重ねる方向に貫通する配筋配設用の縦通孔を開設して形成し、その縦通孔同士が重なり合うように各レンガ同士をモルタルなどの固結材で結合するとともに、配筋を通した縦通孔に固結材を流し込むことによりレンガと配筋とを固定し、さらにレンガ同士をワイヤーなどの連結具材を用いて連結することで、従来のレンガ建築が配筋を使用できないか、あるいはできても壁式鉄筋構造の如く思うように配筋できないため結果として充分な構造強度が得られなかった欠点を、極めて効果的に配筋を入れることを可能にしたことにより解決したものであり、さらには配筋による縦方向の補強と、連結具材による横方向の補強などが建築・構造物中においてあたかも格子状に埋設されることとなるから暴風・地震などの災害に対して非常に強い構造を具えた建築・構造物を形成することができたものである。(特許文献1の明細書中、第2頁第2行から4行、第3頁第9行から17行、第9頁第2行から12行を参照)
【0004】
特許第3432495号公報(特許文献2)に開示された「建物外壁の煉瓦工法」は、建物外壁のレンガ工法で、建物躯体の外側に空間層を設けてレンガ壁面を構築することにより、建物の外装仕上げと同時に断熱性及び耐久性の向上を図ることができるようにしたレンガ工法に関するもので、建物躯体の外側下部に、外壁から所定の距離を離れた位置に水平面と、外壁と水平面の間に防水処理した外側下がりの傾斜面とを形成し、上記水平面上に、上下方向の貫通孔を有するレンガを並べると共に順次積み重ね、上下に位置するレンガは貫通孔に縦筋を通して充填材で埋め、レンガを所定高さの積み上げごとに縦筋と結合した引き金物で建物躯体の外壁に固定し、上部に積み重ねるレンガには貫通孔に達する切り欠きを設けたレンガを用い、この切り欠きを縦筋に外側から差し込んで積み上げることにより、建物躯体の外側に空気層を設けてレンガ壁面を構築するようにしたものである。(特許文献2の明細書中、段落番号0001、0005を参照)このように構成したことにより、レンガによる外装仕上げと同時に、空間層が建物躯体に対して断熱効果を発揮することになり、冷暖房効率の優れた建物にすることができる。また、レンガの貫通孔に縦筋を通して充填材で埋め、レンガを所定高さの積み上げごとに引き金物で建物躯体の外壁に固定するようにしたので、縦筋と引き金物を介してレンガ壁面を建物躯体に対して固定することで、一定の距離と垂直を精度高く出すことができるとともに、強度的に優れたレンガ壁の構築を可能としたものである。(段落番号0019から0020を参照)
【0005】
なお、上下のレンガに通す縦筋は、一本物の通し筋でも、短い縦筋をスリーブを用いて継ぎ足して使用してもよいことが示されている。(段落番号0013及び図2を参照)また、短い部分筋を使用した場合は、積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置として、レンガ壁面の強度を維持することが示されている。(段落番号0016及び図4を参照)
【0006】
特開2007−284973号公報(特許文献3)に開示された「煉瓦積み建築物」は、レンガを用いた木造建築物の外壁部分を改良したレンガ積み建築物で、木造建築物において壁を構成する壁構造材と、該壁構造材の外側に間隔をあけて基礎に立設される複数の縦筋と、最下段のレンガが基礎に固着されるとともに上記縦筋が挿通されるレンガを含め多数のレンガを積み上げてなる面状レンガ体(レンガ壁面)と、上記壁構造材の適宜箇所に固着される複数の控金具と、該控金具に支承される複数の横筋とからなり、上記横筋は上記縦筋の外側に連係して配設したことで、地震時の揺れや振動により水平方向に力が加わると、面状レンガ体は内部の縦筋が横筋により抑えられるので外方向への移動を制限される。該横筋は壁構造材に固着された控金具に挟み込まれており、面状レンガ体と壁構造材とを一体化している。このため横筋の移動が壁構造材に伝達され、面状レンガ体は壁構造材と同一の方向に揺れる。よって地震時の揺れや振動を建物全体で支持するので壁面のレンガの倒壊を防止することができる。また、上記壁構造材と上記面状レンガ体との間に一定の間隙からなる通気層を設け、該通気層を上記基礎と1階床との間に設ける床下空間に連通させ、外気を上記通気層及び床下空間に流通させるように構成したことで、壁構造材が常時乾燥状態となり、壁構造材の腐朽が防止され、壁構造材に支持される面状レンガ体の倒壊を防止し、耐震性のあるレンガ積み建築物とすることを可能としたものである。(段落番号0014から0016を参照)
【0007】
特許第3319808号公報(特許文献4)に開示された「ブロック組積構造」は、特に耐震性に優れた、レンガやコンクリート製のブロックを組積して構築するブロック組積構造で、レンガ1個の高さよりも若干長めの全長を有する金属製のナットとボルトを一体化させた緊締具を用いて、金属ボルトの締結力によりプレストレスを導入しながらレンガを多層に積層するいわゆる乾式のレンガ組積工法である分散型アンボンドプレストレス工法(DUP工法)である。このように構成したことにより、モルタルなどの固結材よる組積工法のように、モルタルの厚みやレンガの通りなど高度な専門技術が不必要であるため、専門職人によらずとも容易に施工ができ、しかも耐震性に優れたブロック組積構造を得ることができるものである。また、多数の緊締具の締め付けにあたっては、構造設計や応力解析によって求められた適正なトルクで、すべての緊締具を一定に締め付けることが必要であるためにトルクレンチを使用することが望ましいことが示されている。(段落番号0013を参照)
【0008】
特許第3749825号公報(特許文献5)に開示された「煉瓦組積構造、煉瓦組積工法及び煉瓦」は、特許文献4と同様のDUP工法を用いた発明であるが、レンガ壁体のコーナー部Cの出隅部に位置するレンガの貫通孔に、長さ1m程度の長尺の大径・全螺子ボルトが、貫通孔に挿入され、長ナットを介して相互に連結されることが示されている。(段落番号0043を参照)
【0009】
【特許文献1】 特開昭53−73826号公報
【特許文献2】 特許第3432495号公報
【特許文献3】 特開2007−284973号公報
【特許文献4】 特許第3319808号公報
【特許文献5】 特許第3749825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1の発明では、レンガ自体に、レンガを積み重ねる方向に貫通する配筋配設用の縦通孔を開設して形成したことで、従来のレンガ積み建築では使用できなかった配筋を、レンガ内部に入れることを可能にしたのであるが、この場合の配筋、すなわち縦筋はモルタルの基礎からレンガを積む所望の高さに応じた長さであるため、縦筋の上端部からレンガを順次、縦通孔を通して積み重ねていくといった工程であり、例えばレンガ積み壁面の高さが3mであった場合は、レンガを3mの高さの縦筋の上端に一端持ち上げて、縦筋にレンガの縦通孔を通し下方まで移動させる必要がある。この工法で多数のレンガを積み上げていくには手間と時間がかかり自ずと工期が長くなり建築コストも必然的に上昇するといった課題がある。また、レンガを上方から落下させてしまうといった事故も危惧され施工の安全面においても課題がある。さらに、モルタルでレンガと配筋とを固定するのであるが、一般的な配筋材の表面は若干の凹凸があるものの平滑面であるため、地震の際のモルタルと配筋の固着部へかかる応力により、レンガと配筋とが剥離してレンガ壁面の強度が保てないといった課題がある。さらにまた、一般的な配筋材の表面は防錆処理が施されていないため、モルタルの水分や経年による腐食で、自然にモルタルと配筋が剥離してしまい、前記したようにレンガ壁面の強度が保てないといった課題もある。
【0011】
特許文献2の発明では、前述の特許文献1と同様の施工上の課題、固着材のモルタルと配筋との強靱な接着状態を保てないといった課題がある。また、縦筋は建物躯体の屋上部に達する一本物の通し筋を用いる他に、六段に積み上げたレンガの高さに見合う長さの短い縦筋を、スリーブを用いて継ぎ足したり、短い縦筋を部分筋として積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置として、レンガ壁面の強度を維持することが示されており、これにより施工上の種々課題を回避することができるのであるが、短い縦筋を、スリーブを用いて継ぎ足す場合は、縦筋とスリーブは圧入して固着、あるいは圧着工具により、かしめて固着された状態であるため、仮留めの域を脱せず一本物の通し筋を使用する場合と比較すると強度的に劣るといった課題がある。また、短い縦筋を部分筋として、積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置とした場合は、隣接する部分筋の一部がラップしているとはいえ、縦筋の配筋状態は一本物の通し筋の配筋と比較すると粗い状態で配設されていることは否めず、施工は容易であるが所望のレンガ壁面の強度を得ることが難しいといった課題もある。
【0012】
特許文献3の発明についても、コンクリートの基礎からレンガを積む所望の高さに応じた長さで縦筋を立設し、その縦筋の上端部からレンガの孔を挿通させて順次積み重ねる工法であるため、特許文献1及び2と同様の課題がある。
【0013】
特許文献4の発明は、分散型アンボンドプレストレス工法(DUP工法)で、金属ボルトの締結力によりプレストレスを導入しながらレンガを多層に積層した耐震性に優れたレンガ組積工法であるが、レンガ1個の高さよりも若干長めの全長を有するナットとボルトを一体化させた緊締具を、構造設計や応力解析によって求められた適正なトルクで、トルクレンチを使用して一定に締め付けることが要求される。このため、極めて多量の緊締具のすべてを一定のトルクで締め付けながら、レンガを1段ずつ積み重ねていくといった工法は、施工上極めて手間と時間がかかるものであり、建築部材点数の増大、煩雑な部品管理、一般住宅に用いる工法としてはコストが高くなりすぎ普及しにくい。また、特許文献1及び2で述べた配筋の腐食の課題について解決したものではない。
【0014】
特許文献5の発明においても、前述した特許文献4の発明と同様の課題がある。
【0015】
そこで本発明は、上記した課題を考慮し、施工時における容易性、安全性の実現と、低コストで、耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面背筋方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことで解決される。
【0017】
また、前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したことで解決される。
【0018】
さらに、窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことで解決される。
【0019】
さらにまた、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したことで解決される。
【発明の効果】
【0020】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたので、複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋の上端部から順次レンガを挿通して積み重ね、レンガが全ネジボルト縦筋の上端部に到達あるいは近づいた時点で連結ナットによってさらに上方に全ネジボルト縦筋を螺合連結してレンガを順次積み重ねる作業を繰り返すことにより、全ネジボルト縦筋は最終的に一本の通し縦筋として構成される。これにより、短尺の全ネジボルト縦筋同士は連結ナットで螺合連結されるので強固に固着され、一本物の通し縦筋と同様の強度を得ることを可能とするとともに、容易に安全に短時間でレンガを積み重ねることを可能とした。また、縦筋を全ネジボルト縦筋としたことにより、構築するレンガ壁面の高さや、積み重ねる途中に配設される窓枠などの状況に応じて任意寸法に切断して、連結ナットを螺合結合させて継ぎ足すことで、施工方法の向上を可能とした。さらに、全ネジボルト縦筋を挿通したレンガの縦孔にモルタルを流し込みながら積み重ねることで、全ネジボルト縦筋の表面全面を構成するネジ山とモルタルが、強固に固着することで両者の剥離が防止され、耐震性に優れたレンガ積み壁面の配筋方法を提供することを可能とした。
【0021】
また、前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の、連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したので、地震の際の全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合結合位置にかかる揺れによる負荷を、レンガ壁面の全面に分散して、より安定した強度のあるレンガ積み壁面を提供することが可能となった。
【0022】
さらに、窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことで、単に窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した状態のままで施工した場合と比較して、左右のレンガの固着力が増すことで、窓枠下部分のレンガ壁面の耐震性の向上を可能とした。
【0023】
さらにまた、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したので、レンガ内部の配筋に生じた錆や腐食による膨張を原因とするレンガ及び目地モルタルのクラックの発生を防止し、レンガ積み建築物の高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1実施例について、図面を参照して詳細に説明する。図1はレンガ積み建築物の正面図で、図2は図1のレンガ壁面(1)の内部に配設された全ネジボルト縦筋と横筋の配筋状態を示す図である。本発明においては、木造の在来工法にレンガ壁面配筋方法を適用して説明をする。図3はレンガ壁面(1)の内部構造及び建物躯体の構造説明の斜視図、図4はレンガ壁面(1)の縦方向断面図、図5はレンガ壁面(1)の縦方向詳細断面図、図6はレンガ壁面(1)の横方向詳細断面図である。
【0025】
建物躯体の壁面は、コンクリートの基礎(5)の立ち上がり部に設けた土台(6a)と、その上方に立設した柱(6b)と間柱(6c)、屋内側には石膏ボードなどからなる内装材(7a)、屋外側には壁内の湿気を積極的に屋外に排出し壁内の結露を防ぐための透湿防水シート(7b)を備える。そして、該構成の建物躯体の壁面の屋外側に、レンガ壁面(1)と一定の隙間を空けて通気層(8)を構成して、レンガ積み建築物を構成する
【0026】
図3に示されるように、レンガ壁面(1)の内部には、基礎(5)の横方向に間隔をおいて全ネジボルト縦筋(2a)が立設され、レンガ(1a)の上下方向に貫通させた複数の縦孔(1b)に挿通されて縦方向の配筋としている。複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋(2a)は、長手方向全てに亘ってネジが切られており、該全ネジボルト縦筋(2a)同士を連結ナット(2b)によって螺合連結して延長することで一本の長尺の通し縦筋として所望の強度をもって構成される。このため、レンガ(1a)の縦孔(1b)に全ネジボルト縦筋(2a)を挿通して積み重ねる際に、充分に手が届く高さに全ネジボルト縦筋(2a)の上部端があるので、レンガ(1a)の縦孔(1b)を容易に全ネジボルト縦筋(2a)の上部端から挿通し下方にレンガ(1a)を降ろして順次積み重ねることができるので、容易、安全かつ短時間にレンガ壁面(1)を構築することが可能となった。
【0027】
なお、複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋(2a)は、特にその長さを限定するものではないが、一本物の通し縦筋で施工した場合の課題を解決できる長さとすれば良い。それからすれば施工者が上に手を伸ばしたときに容易に手が届く程度の長さとすれば良い。
【0028】
また、全ネジボルト縦筋(2a)は、複数に分割して短尺としたことにより、建築現場への配送も、従来のように長尺物を積載するためのロングボディトラックではなく、ショートボディトラックやワンボックスバンなどの小型の車両で配送することが可能となり、積載時に長尺の鉄筋のように車両の前後方向にはみ出して積載することがなく、道幅の狭い場所でも車両の取り回しが容易であるので、極めて安全な配送が可能となり荷役性の向上を実現した。
【0029】
さらに、構築するレンガ壁面(1)の高さや、積み重ねる途中に配設される窓枠などの状況に応じて全ネジボルト縦筋(2a)を任意寸法に切断しても、すべてにネジが施されているので連結ナット(2b)で容易に螺合結合させて継ぎ足すことができ、極めて応用の範囲や施工性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することが可能となったものである。
【0030】
さらにまた、レンガ(1a)を積む際に用いるレンガ同士の固着材としてのモルタル(9)は、全ネジボルト縦筋(2a)を挿通したレンガ(1a)の縦孔(1b)の内部にも充填しながら順次積み重ねるため、全ネジボルト縦筋(2a)表面の全面を構成するネジ山と、モルタル(9)が強固に結合することで、両者の剥離を防止し、地震の際もレンガ壁面(1)の強度を維持することが可能となった。
【0031】
ところで、レンガ壁面(1)には、全ネジボルト縦筋(2a)のほかに、横筋(3)をレンガ(1a)の適宜な積み重ね段数毎(図3、4においては5段毎)に、全ネジボルト縦筋(2a)の外方に位置するように配設した。横筋(3)は、図5及び6に示されるように、横方向に適宜な間隔に配置された取付金物(4)によって建物躯体の柱(6b)、間柱(6c)にネジで固定することで、レンガ壁面(1)は通気層(8)を挟んで建物躯体と連結される。
【0032】
なお、横筋(3)は図3、4においては5段毎の間隔でレンガ(1a)に配設しているが、施工状況や高さ位置、窓などの配置状況に応じて適宜の間隔で配設すれば良い。例えば、地震の際に最も揺れが大きい屋根近傍は細かい間隔で横筋(3)を配設し、下方に行くにしたがって間隔を粗くしても良いのである。
【0033】
図7は、前記した取付金物(4)の説明図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図で、横筋(3)の保持状態を示している。図8は、取付金物(4)の詳細説明図であり、2枚の取付金物を端部で連設して折り曲げ重ね合わせて構成されていることを示している。取付金物(4)は、建物躯体に取り付けるためのネジ穴(4a)を有する取付部(4b)、建物躯体から離間した位置に横筋を配設するためのステー部(4c)、横筋を保持するための保持部(4d)から構成される。このように構成された取付金物(4)は、レンガ(1a)に配設された横筋(3)に図8のように開いた状態で嵌装し、図7の(B)の矢印に示されるように横筋(3)が前後方向に移動可能に保持されて構成される。
【0034】
このように取付金物(4)によって建物躯体に固定されたレンガ壁面(1)は、横筋(3)が取付金物(4)の保持部(4d)に前後方向に移動可能に保持されているので、地震の際の建物躯体の揺れが通気層(8)とで吸収緩和されてレンガ壁面(1)の耐震強度を向上させる。また、横筋(3)は全ネジボルト縦筋(2a)の外方に位置するように配設しているので、レンガ壁面(1)の外方への倒壊を防止して優れた耐震性を実現した。
【0035】
また、通気層(8)は建物躯体の透湿防水シート(7b)から排出された壁内の湿気を、通気層(8)内に生じる対流により上昇させ、図示しないが軒下などに設けた排出口から排出して建物のカビの発生や腐りを防止することで建物の耐久性を向上させる。さらに、レンガ壁面(1)の基礎部分にあるレンガ(1a)の縦目地の一部をモルタルを充填せずに開孔することで、通気層(8)内への外気導入を促進し、さらなる湿気の防止と、レンガ壁面(1)内部に侵入した雨などの水滴が外部に抜けやすくなるといった効果も生じる。
【0036】
本発明の第2の実施例を説明する。図9に示すように基礎(5)から一定の間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋(2a)の連結ナット(2b)での螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置した。一本の縦筋の螺合連結位置の間隔は全ネジボルト縦筋(2a)の長さが例えば100cmである場合は、連結ナット(2b)も100cmおきに配置される。この場合、隣合う同様に立設した縦筋の連結ナット(2b)での螺合連結位置を水平方向において上又は下に1/2の長さの50cmずらして互い違いに配置することで、地震の際、連結ナット(2b)の螺合連結部にかかる揺れの負担をレンガ壁面(1)の全面に分散することが可能となり、より安定してレンガ壁面(1)の耐震強度を維持することが可能となった。
【0037】
本発明の第3の実施例を説明する。図10は、図2における2階の窓枠部分を拡大して表したもので、図11は窓枠の笠木(6d)とその下に位置する配筋関係を詳細に表したものである。また、図12は図11におけるA部拡大図で、図13は図11におけるB−B線端面図である。
【0038】
一般的に、窓枠下の笠木(6d)の直下に積み重ねられたレンガ(1a)内部の縦筋は、笠木(6d)の直下まで下方から延設した状態であって、隣り合う縦筋の先端部同士は互いに固定されていない。このため、笠木(6d)の直下に左右方向に連設された個々のレンガ(1a)は、単にモルタル(9)によって固着された状態であり、必ずしも耐震性を満足させるものではない。そこで、図11から13に表されるように窓枠下の笠木(6d)の直下に連設されたレンガ(1a)の上面に、全ネジボルト縦筋(2a)に螺合したT型ナット(21)の水平方向の貫通孔(21b)に横筋を挿通して隣り合う全ネジボルト縦筋(2a)の先端部同士が横筋(3)を介して互いに固定されるように構成した。
【0039】
また、図12に表されるように、T型ナット(21)は、垂直方向に全ネジボルト縦筋(2a)を螺合するために雌ネジを備えた螺合部(21a)と、水平方向に横筋(3)を挿通するための貫通孔(21b)とでT型に構成されている。笠木(6d)の直下の段まで積まれたレンガ(1a)の縦孔(1b)には、下方から延設された全ネジボルト縦筋(2a)の先端がレンガ(1a)の上面から適宜突出した状態となっており、T型ナット(21)の螺合部(21a)と螺合結合する。そしてレンガ壁面(1)と平行にT型ナット(21)の貫通孔(21b)の向きを合わせて横筋(3)を挿通し、図13に表されるように、窓下レンガ(11a)の底面側凹部にモルタル(9)を充填して固着する。これにより、窓枠下に積み重ねられたレンガ壁面(1)の強度が格段に増してさらなる耐震性の向上を可能としたものである。
【0040】
本発明の第4の実施例では、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したので、レンガ内部の配筋に生じた錆や腐食による膨張を原因とするレンガ及び目地モルタルのクラックの発生を防止し、レンガ積み建築物の高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【0041】
溶融亜鉛メッキは、塗装や電気メッキなどとは異なり、亜鉛と鉄との間にできた合金層によって、亜鉛と鉄が強く結合しているため、長い年月に亘りメッキが剥離することがない。また、溶融亜鉛メッキは、鋼材を溶かした亜鉛に浸すことで表面に亜鉛の酸化皮膜が設けられ、空気や水を通しにくい安定した性質で錆の発生を防止する。全ネジボルト縦筋(2a)、横筋(3)、連結ナット(2b)、T型ナット(21)などを運搬や施工している際に、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、傷の周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出し電気化学的に保護することで、錆の発生及び腐食を防止する。このように、亜鉛の酸化皮膜による保護皮膜作用と、亜鉛が鉄より先に溶け出し電気化学的に保護する犠牲防食作用により、モルタルの水分やモルタルに混ぜる砂に微量に含まれた塩分、経年による腐食や、何らかの原因でレンガ及びモルタルにクラックが生じ内部に水分が浸透した場合の錆の発生や腐食を極めて効果的に防止し、レンガ積み建築物としての高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【0042】
以上説明したように本発明においては、建物躯体が木造の在来工法に適用して説明したが、2×4工法や鉄筋コンクリート構造の建物躯体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】レンガ積み建築物の正面図である。
【図2】レンガ壁面内部の配筋状態を示す図である。
【図3】レンガ壁面の内部構造及び建物躯体の構造説明の斜視図である。
【図4】レンガ壁面の縦方向断面図である。
【図5】レンガ壁面の縦方向詳細断面図である。
【図6】レンガ壁面の横方向詳細断面図である。
【図7】取付金物の説明図である。
【図8】取付金物の詳細説明図である。
【図9】本発明の第2の実施例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施例を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示す詳細図である。
【図12】図11のA部拡大図である。
【図13】図11のB−B線端面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 レンガ壁面
1a レンガ
1b 縦孔
11a 窓下レンガ
2a 全ネジボルト縦筋
2b 連結ナット
21 T型ナット
21a 螺合部
21b 貫通孔
3 横筋
4 取付金物
4a ネジ穴
4b 取付部
4c ステー部
4d 保持部
5 基礎
5a アンカー
6a 土台
6b 柱
6c 間柱
6d 笠木
7a 内装材
7b 透湿防水シート
8 通気層
9 モルタル
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンガ積み建築物のレンガ壁面の構造に関し、特にレンガ壁面内部の配筋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、レンガを積んで壁面を構成した建築物は、レンガ自体の持つ重厚で趣のある色彩や質感といった美的外観、そして耐久性、耐火性、断熱性、遮音性などといった優れた建築物としての性能を有する。これらのレンガ積み建築物は、モルタルを用いてレンガを積み重ねる湿式工法によりレンガ壁面を構成している。このようなレンガ壁面は、モルタルの接着力によって各々のレンガの一体化を図っているため、構造体としての充分な強度を得られない。特に、地震の際にレンガ壁面にかかる水平荷重に対してはほとんど耐えられず、地震の多い日本においては普及に障害がある。
【0003】
そこで、前記したような課題を解決するために、種々の提案がなされている。
例えば、特開昭53−73826号公報(特許文献1)に開示された「特殊レンガ及び組積工法」は、確実に施工が可能で、暴風、地震などの災害に対しても充分な強度をもった建築物を形成可能な特殊レンガ及びその組積工法に関するもので、レンガ自体に、レンガを積み重ねる方向に貫通する配筋配設用の縦通孔を開設して形成し、その縦通孔同士が重なり合うように各レンガ同士をモルタルなどの固結材で結合するとともに、配筋を通した縦通孔に固結材を流し込むことによりレンガと配筋とを固定し、さらにレンガ同士をワイヤーなどの連結具材を用いて連結することで、従来のレンガ建築が配筋を使用できないか、あるいはできても壁式鉄筋構造の如く思うように配筋できないため結果として充分な構造強度が得られなかった欠点を、極めて効果的に配筋を入れることを可能にしたことにより解決したものであり、さらには配筋による縦方向の補強と、連結具材による横方向の補強などが建築・構造物中においてあたかも格子状に埋設されることとなるから暴風・地震などの災害に対して非常に強い構造を具えた建築・構造物を形成することができたものである。(特許文献1の明細書中、第2頁第2行から4行、第3頁第9行から17行、第9頁第2行から12行を参照)
【0004】
特許第3432495号公報(特許文献2)に開示された「建物外壁の煉瓦工法」は、建物外壁のレンガ工法で、建物躯体の外側に空間層を設けてレンガ壁面を構築することにより、建物の外装仕上げと同時に断熱性及び耐久性の向上を図ることができるようにしたレンガ工法に関するもので、建物躯体の外側下部に、外壁から所定の距離を離れた位置に水平面と、外壁と水平面の間に防水処理した外側下がりの傾斜面とを形成し、上記水平面上に、上下方向の貫通孔を有するレンガを並べると共に順次積み重ね、上下に位置するレンガは貫通孔に縦筋を通して充填材で埋め、レンガを所定高さの積み上げごとに縦筋と結合した引き金物で建物躯体の外壁に固定し、上部に積み重ねるレンガには貫通孔に達する切り欠きを設けたレンガを用い、この切り欠きを縦筋に外側から差し込んで積み上げることにより、建物躯体の外側に空気層を設けてレンガ壁面を構築するようにしたものである。(特許文献2の明細書中、段落番号0001、0005を参照)このように構成したことにより、レンガによる外装仕上げと同時に、空間層が建物躯体に対して断熱効果を発揮することになり、冷暖房効率の優れた建物にすることができる。また、レンガの貫通孔に縦筋を通して充填材で埋め、レンガを所定高さの積み上げごとに引き金物で建物躯体の外壁に固定するようにしたので、縦筋と引き金物を介してレンガ壁面を建物躯体に対して固定することで、一定の距離と垂直を精度高く出すことができるとともに、強度的に優れたレンガ壁の構築を可能としたものである。(段落番号0019から0020を参照)
【0005】
なお、上下のレンガに通す縦筋は、一本物の通し筋でも、短い縦筋をスリーブを用いて継ぎ足して使用してもよいことが示されている。(段落番号0013及び図2を参照)また、短い部分筋を使用した場合は、積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置として、レンガ壁面の強度を維持することが示されている。(段落番号0016及び図4を参照)
【0006】
特開2007−284973号公報(特許文献3)に開示された「煉瓦積み建築物」は、レンガを用いた木造建築物の外壁部分を改良したレンガ積み建築物で、木造建築物において壁を構成する壁構造材と、該壁構造材の外側に間隔をあけて基礎に立設される複数の縦筋と、最下段のレンガが基礎に固着されるとともに上記縦筋が挿通されるレンガを含め多数のレンガを積み上げてなる面状レンガ体(レンガ壁面)と、上記壁構造材の適宜箇所に固着される複数の控金具と、該控金具に支承される複数の横筋とからなり、上記横筋は上記縦筋の外側に連係して配設したことで、地震時の揺れや振動により水平方向に力が加わると、面状レンガ体は内部の縦筋が横筋により抑えられるので外方向への移動を制限される。該横筋は壁構造材に固着された控金具に挟み込まれており、面状レンガ体と壁構造材とを一体化している。このため横筋の移動が壁構造材に伝達され、面状レンガ体は壁構造材と同一の方向に揺れる。よって地震時の揺れや振動を建物全体で支持するので壁面のレンガの倒壊を防止することができる。また、上記壁構造材と上記面状レンガ体との間に一定の間隙からなる通気層を設け、該通気層を上記基礎と1階床との間に設ける床下空間に連通させ、外気を上記通気層及び床下空間に流通させるように構成したことで、壁構造材が常時乾燥状態となり、壁構造材の腐朽が防止され、壁構造材に支持される面状レンガ体の倒壊を防止し、耐震性のあるレンガ積み建築物とすることを可能としたものである。(段落番号0014から0016を参照)
【0007】
特許第3319808号公報(特許文献4)に開示された「ブロック組積構造」は、特に耐震性に優れた、レンガやコンクリート製のブロックを組積して構築するブロック組積構造で、レンガ1個の高さよりも若干長めの全長を有する金属製のナットとボルトを一体化させた緊締具を用いて、金属ボルトの締結力によりプレストレスを導入しながらレンガを多層に積層するいわゆる乾式のレンガ組積工法である分散型アンボンドプレストレス工法(DUP工法)である。このように構成したことにより、モルタルなどの固結材よる組積工法のように、モルタルの厚みやレンガの通りなど高度な専門技術が不必要であるため、専門職人によらずとも容易に施工ができ、しかも耐震性に優れたブロック組積構造を得ることができるものである。また、多数の緊締具の締め付けにあたっては、構造設計や応力解析によって求められた適正なトルクで、すべての緊締具を一定に締め付けることが必要であるためにトルクレンチを使用することが望ましいことが示されている。(段落番号0013を参照)
【0008】
特許第3749825号公報(特許文献5)に開示された「煉瓦組積構造、煉瓦組積工法及び煉瓦」は、特許文献4と同様のDUP工法を用いた発明であるが、レンガ壁体のコーナー部Cの出隅部に位置するレンガの貫通孔に、長さ1m程度の長尺の大径・全螺子ボルトが、貫通孔に挿入され、長ナットを介して相互に連結されることが示されている。(段落番号0043を参照)
【0009】
【特許文献1】 特開昭53−73826号公報
【特許文献2】 特許第3432495号公報
【特許文献3】 特開2007−284973号公報
【特許文献4】 特許第3319808号公報
【特許文献5】 特許第3749825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1の発明では、レンガ自体に、レンガを積み重ねる方向に貫通する配筋配設用の縦通孔を開設して形成したことで、従来のレンガ積み建築では使用できなかった配筋を、レンガ内部に入れることを可能にしたのであるが、この場合の配筋、すなわち縦筋はモルタルの基礎からレンガを積む所望の高さに応じた長さであるため、縦筋の上端部からレンガを順次、縦通孔を通して積み重ねていくといった工程であり、例えばレンガ積み壁面の高さが3mであった場合は、レンガを3mの高さの縦筋の上端に一端持ち上げて、縦筋にレンガの縦通孔を通し下方まで移動させる必要がある。この工法で多数のレンガを積み上げていくには手間と時間がかかり自ずと工期が長くなり建築コストも必然的に上昇するといった課題がある。また、レンガを上方から落下させてしまうといった事故も危惧され施工の安全面においても課題がある。さらに、モルタルでレンガと配筋とを固定するのであるが、一般的な配筋材の表面は若干の凹凸があるものの平滑面であるため、地震の際のモルタルと配筋の固着部へかかる応力により、レンガと配筋とが剥離してレンガ壁面の強度が保てないといった課題がある。さらにまた、一般的な配筋材の表面は防錆処理が施されていないため、モルタルの水分や経年による腐食で、自然にモルタルと配筋が剥離してしまい、前記したようにレンガ壁面の強度が保てないといった課題もある。
【0011】
特許文献2の発明では、前述の特許文献1と同様の施工上の課題、固着材のモルタルと配筋との強靱な接着状態を保てないといった課題がある。また、縦筋は建物躯体の屋上部に達する一本物の通し筋を用いる他に、六段に積み上げたレンガの高さに見合う長さの短い縦筋を、スリーブを用いて継ぎ足したり、短い縦筋を部分筋として積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置として、レンガ壁面の強度を維持することが示されており、これにより施工上の種々課題を回避することができるのであるが、短い縦筋を、スリーブを用いて継ぎ足す場合は、縦筋とスリーブは圧入して固着、あるいは圧着工具により、かしめて固着された状態であるため、仮留めの域を脱せず一本物の通し筋を使用する場合と比較すると強度的に劣るといった課題がある。また、短い縦筋を部分筋として、積み上げたレンガの横方向において、隣接する部分筋の一部がラップするような配置とした場合は、隣接する部分筋の一部がラップしているとはいえ、縦筋の配筋状態は一本物の通し筋の配筋と比較すると粗い状態で配設されていることは否めず、施工は容易であるが所望のレンガ壁面の強度を得ることが難しいといった課題もある。
【0012】
特許文献3の発明についても、コンクリートの基礎からレンガを積む所望の高さに応じた長さで縦筋を立設し、その縦筋の上端部からレンガの孔を挿通させて順次積み重ねる工法であるため、特許文献1及び2と同様の課題がある。
【0013】
特許文献4の発明は、分散型アンボンドプレストレス工法(DUP工法)で、金属ボルトの締結力によりプレストレスを導入しながらレンガを多層に積層した耐震性に優れたレンガ組積工法であるが、レンガ1個の高さよりも若干長めの全長を有するナットとボルトを一体化させた緊締具を、構造設計や応力解析によって求められた適正なトルクで、トルクレンチを使用して一定に締め付けることが要求される。このため、極めて多量の緊締具のすべてを一定のトルクで締め付けながら、レンガを1段ずつ積み重ねていくといった工法は、施工上極めて手間と時間がかかるものであり、建築部材点数の増大、煩雑な部品管理、一般住宅に用いる工法としてはコストが高くなりすぎ普及しにくい。また、特許文献1及び2で述べた配筋の腐食の課題について解決したものではない。
【0014】
特許文献5の発明においても、前述した特許文献4の発明と同様の課題がある。
【0015】
そこで本発明は、上記した課題を考慮し、施工時における容易性、安全性の実現と、低コストで、耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面背筋方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことで解決される。
【0017】
また、前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したことで解決される。
【0018】
さらに、窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことで解決される。
【0019】
さらにまた、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したことで解決される。
【発明の効果】
【0020】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたので、複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋の上端部から順次レンガを挿通して積み重ね、レンガが全ネジボルト縦筋の上端部に到達あるいは近づいた時点で連結ナットによってさらに上方に全ネジボルト縦筋を螺合連結してレンガを順次積み重ねる作業を繰り返すことにより、全ネジボルト縦筋は最終的に一本の通し縦筋として構成される。これにより、短尺の全ネジボルト縦筋同士は連結ナットで螺合連結されるので強固に固着され、一本物の通し縦筋と同様の強度を得ることを可能とするとともに、容易に安全に短時間でレンガを積み重ねることを可能とした。また、縦筋を全ネジボルト縦筋としたことにより、構築するレンガ壁面の高さや、積み重ねる途中に配設される窓枠などの状況に応じて任意寸法に切断して、連結ナットを螺合結合させて継ぎ足すことで、施工方法の向上を可能とした。さらに、全ネジボルト縦筋を挿通したレンガの縦孔にモルタルを流し込みながら積み重ねることで、全ネジボルト縦筋の表面全面を構成するネジ山とモルタルが、強固に固着することで両者の剥離が防止され、耐震性に優れたレンガ積み壁面の配筋方法を提供することを可能とした。
【0021】
また、前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の、連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したので、地震の際の全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合結合位置にかかる揺れによる負荷を、レンガ壁面の全面に分散して、より安定した強度のあるレンガ積み壁面を提供することが可能となった。
【0022】
さらに、窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことで、単に窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した状態のままで施工した場合と比較して、左右のレンガの固着力が増すことで、窓枠下部分のレンガ壁面の耐震性の向上を可能とした。
【0023】
さらにまた、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したので、レンガ内部の配筋に生じた錆や腐食による膨張を原因とするレンガ及び目地モルタルのクラックの発生を防止し、レンガ積み建築物の高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1実施例について、図面を参照して詳細に説明する。図1はレンガ積み建築物の正面図で、図2は図1のレンガ壁面(1)の内部に配設された全ネジボルト縦筋と横筋の配筋状態を示す図である。本発明においては、木造の在来工法にレンガ壁面配筋方法を適用して説明をする。図3はレンガ壁面(1)の内部構造及び建物躯体の構造説明の斜視図、図4はレンガ壁面(1)の縦方向断面図、図5はレンガ壁面(1)の縦方向詳細断面図、図6はレンガ壁面(1)の横方向詳細断面図である。
【0025】
建物躯体の壁面は、コンクリートの基礎(5)の立ち上がり部に設けた土台(6a)と、その上方に立設した柱(6b)と間柱(6c)、屋内側には石膏ボードなどからなる内装材(7a)、屋外側には壁内の湿気を積極的に屋外に排出し壁内の結露を防ぐための透湿防水シート(7b)を備える。そして、該構成の建物躯体の壁面の屋外側に、レンガ壁面(1)と一定の隙間を空けて通気層(8)を構成して、レンガ積み建築物を構成する
【0026】
図3に示されるように、レンガ壁面(1)の内部には、基礎(5)の横方向に間隔をおいて全ネジボルト縦筋(2a)が立設され、レンガ(1a)の上下方向に貫通させた複数の縦孔(1b)に挿通されて縦方向の配筋としている。複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋(2a)は、長手方向全てに亘ってネジが切られており、該全ネジボルト縦筋(2a)同士を連結ナット(2b)によって螺合連結して延長することで一本の長尺の通し縦筋として所望の強度をもって構成される。このため、レンガ(1a)の縦孔(1b)に全ネジボルト縦筋(2a)を挿通して積み重ねる際に、充分に手が届く高さに全ネジボルト縦筋(2a)の上部端があるので、レンガ(1a)の縦孔(1b)を容易に全ネジボルト縦筋(2a)の上部端から挿通し下方にレンガ(1a)を降ろして順次積み重ねることができるので、容易、安全かつ短時間にレンガ壁面(1)を構築することが可能となった。
【0027】
なお、複数に分割されて短尺となった全ネジボルト縦筋(2a)は、特にその長さを限定するものではないが、一本物の通し縦筋で施工した場合の課題を解決できる長さとすれば良い。それからすれば施工者が上に手を伸ばしたときに容易に手が届く程度の長さとすれば良い。
【0028】
また、全ネジボルト縦筋(2a)は、複数に分割して短尺としたことにより、建築現場への配送も、従来のように長尺物を積載するためのロングボディトラックではなく、ショートボディトラックやワンボックスバンなどの小型の車両で配送することが可能となり、積載時に長尺の鉄筋のように車両の前後方向にはみ出して積載することがなく、道幅の狭い場所でも車両の取り回しが容易であるので、極めて安全な配送が可能となり荷役性の向上を実現した。
【0029】
さらに、構築するレンガ壁面(1)の高さや、積み重ねる途中に配設される窓枠などの状況に応じて全ネジボルト縦筋(2a)を任意寸法に切断しても、すべてにネジが施されているので連結ナット(2b)で容易に螺合結合させて継ぎ足すことができ、極めて応用の範囲や施工性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することが可能となったものである。
【0030】
さらにまた、レンガ(1a)を積む際に用いるレンガ同士の固着材としてのモルタル(9)は、全ネジボルト縦筋(2a)を挿通したレンガ(1a)の縦孔(1b)の内部にも充填しながら順次積み重ねるため、全ネジボルト縦筋(2a)表面の全面を構成するネジ山と、モルタル(9)が強固に結合することで、両者の剥離を防止し、地震の際もレンガ壁面(1)の強度を維持することが可能となった。
【0031】
ところで、レンガ壁面(1)には、全ネジボルト縦筋(2a)のほかに、横筋(3)をレンガ(1a)の適宜な積み重ね段数毎(図3、4においては5段毎)に、全ネジボルト縦筋(2a)の外方に位置するように配設した。横筋(3)は、図5及び6に示されるように、横方向に適宜な間隔に配置された取付金物(4)によって建物躯体の柱(6b)、間柱(6c)にネジで固定することで、レンガ壁面(1)は通気層(8)を挟んで建物躯体と連結される。
【0032】
なお、横筋(3)は図3、4においては5段毎の間隔でレンガ(1a)に配設しているが、施工状況や高さ位置、窓などの配置状況に応じて適宜の間隔で配設すれば良い。例えば、地震の際に最も揺れが大きい屋根近傍は細かい間隔で横筋(3)を配設し、下方に行くにしたがって間隔を粗くしても良いのである。
【0033】
図7は、前記した取付金物(4)の説明図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図で、横筋(3)の保持状態を示している。図8は、取付金物(4)の詳細説明図であり、2枚の取付金物を端部で連設して折り曲げ重ね合わせて構成されていることを示している。取付金物(4)は、建物躯体に取り付けるためのネジ穴(4a)を有する取付部(4b)、建物躯体から離間した位置に横筋を配設するためのステー部(4c)、横筋を保持するための保持部(4d)から構成される。このように構成された取付金物(4)は、レンガ(1a)に配設された横筋(3)に図8のように開いた状態で嵌装し、図7の(B)の矢印に示されるように横筋(3)が前後方向に移動可能に保持されて構成される。
【0034】
このように取付金物(4)によって建物躯体に固定されたレンガ壁面(1)は、横筋(3)が取付金物(4)の保持部(4d)に前後方向に移動可能に保持されているので、地震の際の建物躯体の揺れが通気層(8)とで吸収緩和されてレンガ壁面(1)の耐震強度を向上させる。また、横筋(3)は全ネジボルト縦筋(2a)の外方に位置するように配設しているので、レンガ壁面(1)の外方への倒壊を防止して優れた耐震性を実現した。
【0035】
また、通気層(8)は建物躯体の透湿防水シート(7b)から排出された壁内の湿気を、通気層(8)内に生じる対流により上昇させ、図示しないが軒下などに設けた排出口から排出して建物のカビの発生や腐りを防止することで建物の耐久性を向上させる。さらに、レンガ壁面(1)の基礎部分にあるレンガ(1a)の縦目地の一部をモルタルを充填せずに開孔することで、通気層(8)内への外気導入を促進し、さらなる湿気の防止と、レンガ壁面(1)内部に侵入した雨などの水滴が外部に抜けやすくなるといった効果も生じる。
【0036】
本発明の第2の実施例を説明する。図9に示すように基礎(5)から一定の間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋(2a)の連結ナット(2b)での螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置した。一本の縦筋の螺合連結位置の間隔は全ネジボルト縦筋(2a)の長さが例えば100cmである場合は、連結ナット(2b)も100cmおきに配置される。この場合、隣合う同様に立設した縦筋の連結ナット(2b)での螺合連結位置を水平方向において上又は下に1/2の長さの50cmずらして互い違いに配置することで、地震の際、連結ナット(2b)の螺合連結部にかかる揺れの負担をレンガ壁面(1)の全面に分散することが可能となり、より安定してレンガ壁面(1)の耐震強度を維持することが可能となった。
【0037】
本発明の第3の実施例を説明する。図10は、図2における2階の窓枠部分を拡大して表したもので、図11は窓枠の笠木(6d)とその下に位置する配筋関係を詳細に表したものである。また、図12は図11におけるA部拡大図で、図13は図11におけるB−B線端面図である。
【0038】
一般的に、窓枠下の笠木(6d)の直下に積み重ねられたレンガ(1a)内部の縦筋は、笠木(6d)の直下まで下方から延設した状態であって、隣り合う縦筋の先端部同士は互いに固定されていない。このため、笠木(6d)の直下に左右方向に連設された個々のレンガ(1a)は、単にモルタル(9)によって固着された状態であり、必ずしも耐震性を満足させるものではない。そこで、図11から13に表されるように窓枠下の笠木(6d)の直下に連設されたレンガ(1a)の上面に、全ネジボルト縦筋(2a)に螺合したT型ナット(21)の水平方向の貫通孔(21b)に横筋を挿通して隣り合う全ネジボルト縦筋(2a)の先端部同士が横筋(3)を介して互いに固定されるように構成した。
【0039】
また、図12に表されるように、T型ナット(21)は、垂直方向に全ネジボルト縦筋(2a)を螺合するために雌ネジを備えた螺合部(21a)と、水平方向に横筋(3)を挿通するための貫通孔(21b)とでT型に構成されている。笠木(6d)の直下の段まで積まれたレンガ(1a)の縦孔(1b)には、下方から延設された全ネジボルト縦筋(2a)の先端がレンガ(1a)の上面から適宜突出した状態となっており、T型ナット(21)の螺合部(21a)と螺合結合する。そしてレンガ壁面(1)と平行にT型ナット(21)の貫通孔(21b)の向きを合わせて横筋(3)を挿通し、図13に表されるように、窓下レンガ(11a)の底面側凹部にモルタル(9)を充填して固着する。これにより、窓枠下に積み重ねられたレンガ壁面(1)の強度が格段に増してさらなる耐震性の向上を可能としたものである。
【0040】
本発明の第4の実施例では、全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したので、レンガ内部の配筋に生じた錆や腐食による膨張を原因とするレンガ及び目地モルタルのクラックの発生を防止し、レンガ積み建築物の高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【0041】
溶融亜鉛メッキは、塗装や電気メッキなどとは異なり、亜鉛と鉄との間にできた合金層によって、亜鉛と鉄が強く結合しているため、長い年月に亘りメッキが剥離することがない。また、溶融亜鉛メッキは、鋼材を溶かした亜鉛に浸すことで表面に亜鉛の酸化皮膜が設けられ、空気や水を通しにくい安定した性質で錆の発生を防止する。全ネジボルト縦筋(2a)、横筋(3)、連結ナット(2b)、T型ナット(21)などを運搬や施工している際に、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、傷の周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出し電気化学的に保護することで、錆の発生及び腐食を防止する。このように、亜鉛の酸化皮膜による保護皮膜作用と、亜鉛が鉄より先に溶け出し電気化学的に保護する犠牲防食作用により、モルタルの水分やモルタルに混ぜる砂に微量に含まれた塩分、経年による腐食や、何らかの原因でレンガ及びモルタルにクラックが生じ内部に水分が浸透した場合の錆の発生や腐食を極めて効果的に防止し、レンガ積み建築物としての高い耐久性に見合った縦筋の耐久性を実現し、総合的に極めて耐震性、耐久性に優れたレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法を提供することを可能とした。
【0042】
以上説明したように本発明においては、建物躯体が木造の在来工法に適用して説明したが、2×4工法や鉄筋コンクリート構造の建物躯体に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】レンガ積み建築物の正面図である。
【図2】レンガ壁面内部の配筋状態を示す図である。
【図3】レンガ壁面の内部構造及び建物躯体の構造説明の斜視図である。
【図4】レンガ壁面の縦方向断面図である。
【図5】レンガ壁面の縦方向詳細断面図である。
【図6】レンガ壁面の横方向詳細断面図である。
【図7】取付金物の説明図である。
【図8】取付金物の詳細説明図である。
【図9】本発明の第2の実施例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施例を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示す詳細図である。
【図12】図11のA部拡大図である。
【図13】図11のB−B線端面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 レンガ壁面
1a レンガ
1b 縦孔
11a 窓下レンガ
2a 全ネジボルト縦筋
2b 連結ナット
21 T型ナット
21a 螺合部
21b 貫通孔
3 横筋
4 取付金物
4a ネジ穴
4b 取付部
4c ステー部
4d 保持部
5 基礎
5a アンカー
6a 土台
6b 柱
6c 間柱
6d 笠木
7a 内装材
7b 透湿防水シート
8 通気層
9 モルタル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことを特徴とするレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項2】
前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したことを特徴とする請求項1に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項3】
レンガ壁面の窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことを特徴とする請求項1及び2に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項4】
全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したことを特徴とする請求項1乃至3に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項1】
コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した縦筋を、レンガの上下方向に貫通させた複数の縦孔に挿通するとともに、レンガの適宜な積み重ね段数毎に横筋を配設し、該横筋を建物躯体に取付金物を用いて接続してなるレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法において、縦筋を複数の全ネジボルト縦筋とし、連結ナットで螺合連結して一本の通し縦筋としたことを特徴とするレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項2】
前記コンクリートの基礎に、間隔をおいて複数立設した全ネジボルト縦筋の連結ナットでの螺合連結した位置を、横方向に隣り合う全ネジボルト縦筋の水平方向において、一致しないように交互にずらして配置したことを特徴とする請求項1に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項3】
レンガ壁面の窓枠下に連設されたレンガの上面に突出した全ネジボルト縦筋の先端に、T型ナットの垂直方向に備えられた螺合部と螺合連結するとともに、該T型ナットの水平方向に備えられた貫通孔に横筋を挿通したことを特徴とする請求項1及び2に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【請求項4】
全ネジボルト縦筋、横筋、連結ナット、T型ナットの何れか、あるいは組み合わされた複数、あるいはすべてに、溶融亜鉛メッキを施したことを特徴とする請求項1乃至3に記載のレンガ積み建築物のレンガ壁面配筋方法。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【公開番号】特開2010−13915(P2010−13915A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200193(P2008−200193)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(504461460)SAYYAS JAPAN株式会社 (6)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(504461460)SAYYAS JAPAN株式会社 (6)
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