説明

レンジシフタ及び粒子線照射装置

【課題】患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタ及び粒子線照射装置を提供すること。
【解決手段】患者の患部に粒子線を照射して治療する粒子線照射装置に設けられ、前記粒子線の拡大ブラッグピークを移動させるレンジシフタ16であって、前記粒子線のエネルギーを吸収する基板22と、前記基板22を前記粒子線の経路上に出没可能に移動させる基板駆動機構23とを具備することを特徴とするレンジシフタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジシフタ及び粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の患部に陽子線や重粒子線などの粒子線を照射する粒子線治療方法が知られている。この治療に用いる粒子線照射システムは、粒子線発生装置と、シンクロトロンなどの加速装置と、所定の照射エネルギーまで加速された粒子線を輸送する輸送路と、患者に対して粒子線を照射する粒子線照射装置とを備えている。
【0003】
粒子線を患者に照射した場合、粒子線は患者の体表面から所定の深さ位置で急激にエネルギーを放出して消滅する(ブラッグピーク)ことが知られている。粒子線の照射エネルギーが高いほどブラッグピークの発生する深さ位置が深くなり、粒子線が体内の深部まで到達することになる。したがって、ブラッグピークの発生位置を患部の深さ位置に合わせて粒子線を照射することで、患部に対して選択的に粒子線のエネルギーを放出することができる。粒子線のエネルギー放出を受けた患部は、細胞が破壊されて除去される。
【0004】
通常、患部は患者の体内で深さ方向に厚みを有している。患部全体を除去するためにはある程度の深さ範囲に亘ってブラッグピークを発生させる必要がある。つまり、深さ方向においてある程度広い吸収線量範囲(拡大ブラッグピーク)を形成する必要がある。加えて、患者によって患部の位置が異なるため、患部の深さ位置に応じて拡大ブラッグピークを移動させる手段が必要になる。このような拡大ブラッグピークを移動させる手段として、レンジシフタが知られている。
【0005】
レンジシフタは、通常、粒子線のエネルギーを吸収する複数の基板によって構成されている。この基板が粒子線の経路上に配置されると、粒子線のエネルギーが吸収され、患者の体内に到達する深さ位置を移動させることができる。一般的には、複数の基板を粒子線の経路外に配置させておき、患部の位置に応じて必要な基板を粒子線の経路上に出没移動させる構成が知られている。この場合、基板を移動させる移動手段としては、圧縮空気を駆動源とするエアシリンダ機構が知られている。エアシリンダ機構を用いることで、基板の出没に要する時間が0.3秒程度の高速移動が可能になっている。このエアシリンダ機構は、粒子線の経路上への移動及び粒子線の経路上から退避する移動のみを行うものであり、基板の移動停止の制御は単独では不可能である。このため、基板の移動を所定の位置で停止させるように、基板の移動を物理的に停止させるストッパを備えた構成になっている。
【特許文献1】特開2003−320039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エアシリンダ機構を用いた場合、基板の高速移動がストッパによって停止される際に基板がストッパに衝突し、衝突音が発生することになる。粒子線照射装置は患者に近い位置に配置されることが多いため、この衝突音が患者に心的ストレスを与えてしまう虞がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタ及び粒子線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るレンジシフタは、患者の患部に粒子線を照射して治療する粒子線照射装置に設けられ、前記粒子線の拡大ブラッグピークを移動させるレンジシフタであって、前記粒子線のエネルギーを吸収する基板と、前記基板を前記粒子線の経路上に出没可能に移動させるサーボ機構とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、粒子線のエネルギーを吸収する基板をサーボ機構によって粒子線の経路上に出没可能に移動させることとしたので、基板の移動及び基板の移動停止の制御を単独で行うことが可能になる。基板の移動を停止させるストッパが不要になるため、移動手段としてエアシリンダ機構を用いた場合に発生する衝突音を回避することができる。これにより、患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタを得ることができる。
【0010】
上記のレンジシフタは、前記基板が複数設けられており、前記サーボ機構が前記複数の基板を独立して移動可能になっていることを特徴とする。
本発明によれば、基板が複数設けられており、サーボ機構が複数の基板を独立して移動可能になっていることとしたので、複数の基板を移動させる際にも上記の衝突音の発生を回避することができる。
【0011】
上記のレンジシフタは、前記基板が複数設けられており、前記サーボ機構が前記複数の基板の一部又は全部を同時に移動可能になっていることを特徴とする。
本発明によれば、基板が複数設けられており、サーボ機構が複数の基板の一部又は全部を同時に移動可能になっていることとしたので、患部の位置に応じて複数の基板の中から任意に基板を選択して移動させることが可能になるため、基板1枚あたりの厚さを薄くすることが可能となる。これにより、効率的な移動を実現可能となる。
【0012】
上記のレンジシフタは、前記基板が複数設けられており、前記サーボ機構が前記基板ごとに設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、基板が複数設けられており、サーボ機構が基板ごとに設けられていることとしたので、例えば基板の重量が異なっている場合、基板の重量に対応した駆動力を有するサーボ機構を設けることができる。これにより、効果的な移動制御が実現可能になる。
【0013】
上記のレンジシフタは、前記複数の基板のうち隣接する基板に設けられるサーボ機構が、前記基板の異なる辺にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、複数の基板のうち隣接する基板に設けられるサーボ機構が、基板の異なる辺にそれぞれ設けられていることとしたので、複数の基板を近接させて配置した場合であっても、それぞれのサーボ機構の位置が重なるのを回避することができる。これにより、スペースを節約することができるため、レンジシフタを小型化することができる。
【0014】
上記のレンジシフタは、前記複数の基板には、前記粒子線のエネルギーの吸収量が異なる基板が含まれていることを特徴とする。
本発明によれば、複数の基板には粒子線のエネルギーの吸収量が異なる基板が含まれていることとしたので、患部の位置に応じて粒子線のエネルギーの吸収量の異なる基板を適宜選択して配置することができる。特に、サーボ機構が前記複数の基板の一部又は全部を同時に移動可能になっている場合、粒子線のエネルギーの吸収量の異なる基板を適宜組み合わせて配置させることが可能となるため、幅広い制御が可能となる。
【0015】
上記のレンジシフタは、前記基板が複数設けられており、前記複数の基板には、前記粒子線の経路に対して第1方向上に設けられる基板と、前記粒子線の経路に対して第2方向上に設けられる基板とが含まれていることを特徴とする。
本発明によれば、基板が複数設けられており、複数の基板には、粒子線の経路に対して第1方向上に設けられる基板と、粒子線の経路に対して第2方向上に設けられる基板とが含まれていることとしたので、基板を第1方向上及び第2方向上に分散して配置されることとなる。このため、レンジシフタのうち粒子線の進行方向上の寸法を小さくすることができる。
【0016】
本発明に係る粒子線照射装置は、上記のレンジシフタを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタを備えているので、患者の負担の少ない粒子線照射装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粒子線のエネルギーを吸収する基板をサーボ機構によって粒子線の経路上に出没可能に移動させることとしたので、基板の移動及び基板の移動停止の制御を単独で行うことが可能になる。基板の移動を停止させるストッパが不要になるため、移動手段としてエアシリンダ機構を用いた場合に発生する衝突音を回避することができる。これにより、患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタを得ることができる。
【0018】
本発明によれば、患者に心的ストレスを与えることの無いレンジシフタを備えているので、患者の負担の少ない粒子線照射装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る粒子線照射システムの構成を示す図である。
同図に示すように、粒子線照射システム1は、粒子線発生装置2と、加速装置3と、粒子線照射装置4と、輸送管5とを主体として構成されている。この粒子線照射システム1は、治療台S上の患者Tの患部に陽子線や重粒子線などの粒子線を照射する粒子線治療方法に用いられる。
【0020】
粒子線発生装置2は、陽子線や重粒子線を発生させる装置である。粒子線発生装置2としては、例えばECR型イオン源やPIG型イオン源など、公知のイオン源が用いられる。例えば炭素イオンC6+の重粒子を生成する粒子線発生装置には、COガスに電子ビームを照射し炭素分子Cから電子を1つずつたたき出してC、C2+、C3+、C4+と順に生成する機構と、C4+に残っている2つの電子を剥ぎとって炭素原子核のみのC6+を生成する機構とが設けられている。このほか、生成された粒子を加速装置3に入射するために当該粒子を加速する前段加速器(図示しない)なども設けられている。
【0021】
加速装置3は、加速高周波の周期を粒子回転周期に同期させることによって粒子線を290MeV/u程度の高エネルギーまで加速する装置である。代表的な加速装置3として、例えばシンクロトロン等が挙げられる。シンクロトロンには、例えば粒子線を周回軌道に保つための機構や、周回軌道上における粒子線の広がりを収束させる機構などが設けられている。このほか、シンクロトロンの周回軌道に沿って高周波加速空洞や高周波印加装置、加速した粒子線を射出する粒子線射出口なども設けられている。
【0022】
粒子線照射装置4は、治療台S上の患者Tの患部に対して水平方向及び垂直方向に粒子線を照射する装置である。本実施形態では、患者Tの患部に対して水平方向に粒子を照射する水平照射装置4aと、患者Tの患部に向けて垂直方向に粒子を照射する垂直照射装置4bとの2つの照射装置が設けられている。
【0023】
輸送管5は、加速装置3から射出された粒子線を2つの粒子線照射装置4まで輸送する輸送系である。この輸送管5は、一端が加速装置3の粒子線射出口に接続されており、粒子線照射装置4側では2つに分岐している。一方の分岐端が水平照射装置4aに接続されており、他方の分岐端が垂直照射装置4bに接続されている。
【0024】
図2は、粒子線照射装置4の構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、粒子線照射装置4は、ワブラー法による粒子線照射装置であり、モニタ部11と、ワブラー電磁石12と、散乱体13と、リッジフィルタ15と、レンジシフタ16と、アライメント18と、コリメータ19とを主体として構成されている。水平照射装置4aと垂直照射装置4bとでは、同一の構成になっている。
【0025】
モニタ部11は、患者Tの体内に照射する粒子線の線量を測定する線量モニタや、粒子線が正しい位置にあるかどうかを識別する位置モニタなどを有している。
【0026】
ワブラー電磁石12は、位相が互いに90°ずれた2基の電磁石からなる。ワブラー電磁石12には、各電磁石に同一周波数の交流励磁電流を流して磁場を発生させる機構が設けられている。この磁場により荷電粒子ビームを円軌道に沿って高速で走査させることができるようになっている。
【0027】
散乱体13は、例えばタンタルや鉛などの金属からなり、粒子線を散乱させることが可能な構成を有している。当該散乱によって粒子線の照射範囲を径方向(進行方向に対して垂直な方向)に拡大することができるようになっている。例えば図示しない制御部によって粒子線の拡大範囲を調節できるようになっている。
【0028】
リッジフィルタ15は、粒子線の照射経路上に配置されている。このリッジフィルタ15は、粒子線の照射エネルギーの分布幅を広げ患部の体内に形成されるブラッグピークを広範囲に拡大する装置である。
【0029】
レンジシフタ16は、リッジフィルタ15によって形成された粒子線のブラッグピークをずらすことにより、患者Tの体表面から深さ方向に対する粒子線の到達位置を調節する機構である。
【0030】
アライメント18は、粒子線の照射エネルギーの分布を測定する機構である。
【0031】
コリメータ19は、粒子線の照射領域が患者Tの患部の形状に対応した形状となるように粒子線の一部を遮断する機構である。
【0032】
図3及び図4は、レンジシフタ16の構成を示す図である。図3は粒子線の入射側から見たときの構成を示しており、図4は図3の上面側から見たときの構成を示している。
レンジシフタ16は、ケーシング21と、基板22と、基板駆動機構23とを主体として構成されている。
【0033】
ケーシング21は、例えばアルミニウム合金などからなり、基板22及び基板駆動機構23を収容する収容部である。ケーシング21内は、中央領域21aと、側部領域21b、21cとの3つの領域からなる。中央領域21aは、ケーシング21のうち図中左右方向の中央の領域であり、粒子線が通過する領域である。側部領域21bは、ケーシング21のうち図中左方向(第1方向)に位置する領域であり、粒子線が通過しない領域である。以下、この領域を左側部領域21bと表記する。側部領域21cは、ケーシング21のうち図中右方向(第2方向)に位置する領域であり、粒子線が通過しない領域である。以下、この領域を右側部領域21cと表記する。
【0034】
基板22は、例えばアクリルなど粒子線のエネルギーを吸収する材料からなる矩形の基板であり、ケーシング21の左側部領域21bと右側部領域21cとにそれぞれ6枚ずつ収容されている。粒子線の経路に対してそれぞれ異なる領域に基板22を同数ずつ収容することにより、基板22が分散して配置されることになるため、基板22を一列に配置する場合に比べてケーシング21のうち粒子線の進行方向上の寸法を小さくすることが可能になっている。
【0035】
各基板22は、粒子線の照射領域Pの面積よりも大きい面積になるように形成されており、それぞれ所定の厚さを有している。例えば、左側部領域21bに収容される基板22については、粒子線の入射方向の手前側からそれぞれ48mm、32mm、32mm、16mm、4mm、1mmの厚さ(粒子線の入射方向の寸法)を有している。また、右側部領域21cに収容される基板22については、粒子線の入射方向の手前側からそれぞれ48mm、32mm、32mm、8mm、2mm、0.5mmの厚さを有している。
【0036】
基板22は、その厚さが厚いほど粒子線のエネルギー吸収量も大きくなっている。このように厚さの異なる基板22を有していることによって、患部の位置に応じて粒子線のエネルギーの吸収量の異なる基板22を適宜選択して配置することができるようになっている。
【0037】
基板駆動機構23は、基板22を移動させる移動手段であり、各基板22ごとに設けられている。12枚の基板のうち厚さが大きい基板22には、駆動力の大きい基板駆動機構23が設けられており、厚さが小さい基板22には駆動力の小さい基板駆動機構23が設けられている。
【0038】
この基板駆動機構23は、サーボモータ31と、ガイドレール32と、基板保持部33とを主体として構成されている。左側部領域21bに設けられた基板22を駆動する基板駆動機構23は、ケーシング21の図中上側に配置されている。右側部領域21cに設けられた基板22を駆動する基板駆動機構23は、ケーシング21の図中下側に配置されている。このように左側部領域21bと右側部領域21cとで基板駆動機構23を上下に分散させて配置することにより、基板22又は基板駆動機構23の一部同士が重なるのを回避できるようになっている。
【0039】
サーボモータ31は、電力によって回転するモータ機構を備えた駆動機構であり、ケーシング21の内壁に固定されている。
【0040】
ガイドレール32は、サーボモータ31の回転軸に接続されており、サーボモータ31の回転がガイドレール32に伝わるようになっている。ガイドレール32は、基板22の移動方向に沿って設けられている。ガイドレール32の表面にはネジ山が形成されている。
【0041】
基板保持部33は、基板22の一部を保持するように当該基板22に固定された部分と、ガイドレール32に螺合するように設けられたボールネジ部分とを有している。ガイドレール32が回転することにより、当該ガイドレール32のネジ山に沿って基板保持部33のボールネジ部分が移動するようになっている。
【0042】
各基板駆動機構23は、それぞれ独立して駆動することが可能になっている。例えば基板駆動機構23は、1枚の基板22であっても複数枚の基板22であっても同時に移動させることができるようになっており、患部の深さ位置に応じて複数の基板22の中から任意に基板を組み合わせて移動させることが可能になっている。
【0043】
次に、上記のように構成された粒子線照射システムの動作を説明する。
粒子線発生装置2で発生した粒子線は、加速装置3において所定のエネルギー(290eV/u程度)にまで加速される。粒子線の照射エネルギーが大きくなった状態で、輸送管5を経て加速装置3から粒子線照射装置4(水平照射装置4a及び垂直照射装置4b)に入射する。
【0044】
各粒子線照射装置4に入射した粒子線は、モニタ部11、ワブラー電磁石12、散乱体13を順に通過する。この過程では、患者Tの体内に照射する粒子線の線量が測定され、粒子線が正しい位置にあるかどうかの識別が行われ、粒子線を走査して位置合わせが行われ、粒子線の照射範囲が径方向に拡大される。
【0045】
粒子線の入射前にリッジフィルタ15の回転板を回転させ、粒子線の経路上に所定のフィルタを配置する。粒子線は、リッジフィルタ15によって粒子線のブラッグピークが平坦化され、拡大ブラッグピークが形成される。
【0046】
リッジフィルタ15を透過した粒子線は、レンジシフタ16において、粒子線のエネルギーが吸収され、患者Tの体表面から深さ方向に対する粒子線の到達位置が調節される。
【0047】
このとき、レンジシフタ16では、患部の深さ位置に応じて最適な厚さの基板22を中央領域21aに移動させる。サーボモータ31が駆動を開始してから0.3秒程度で基板22が中央領域21aに移動する。一度に複数の基板22を同時に移動させることができるため、基板22の移動に要する時間が長くならずに済み、短時間で移動が行われる。必要に応じて、別の基板22を中央領域21aに移動させ、中央領域21aの基板22を左側部領域21b又は右側部領域21cへ退避させるようにしても構わない。
【0048】
基板22には、当該基板22の厚さに応じて最適な駆動力を有する基板駆動機構23が設けられているため、必要最小限の駆動で効率的に移動が行われることになる。左側部領域21b側の基板駆動機構23がケーシング21の上側に設けられており、右側部領域21c側の基板駆動機構23がケーシング21の下側に設けられているため、基板22の移動の際には左右の基板22あるいは基板駆動機構23の一部が衝突することなく、スムーズに移動が行われる。
【0049】
レンジシフタ16と通過した粒子線は、アライメント18において粒子線の照射エネルギーの分布が測定される。アライメント18を通過した粒子線は、コリメータ19によって患者Tの患部の形状に対応した照射領域となるように一部が遮断され、この状態で患者Tへ向けて射出される。
【0050】
このように、本実施形態によれば、粒子線のエネルギーを吸収する基板22を、サーボモータ31を有する基板駆動機構23によって粒子線の経路上(中央領域21a)に出没可能に移動させることとしたので、基板22の移動及び基板の移動停止の制御を単独で行うことが可能になる。基板22の移動を停止させるストッパが不要になるため、移動手段としてエアシリンダ機構を用いた場合に発生する衝突音を回避することができる。これにより、患者Tに心的ストレスを与えることの無いレンジシフタ16を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、患者Tに心的ストレスを与えることの無いレンジシフタ16を備えているので、患者の負担の少ない粒子線照射装置4を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る粒子線照射システムの構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る粒子線照射装置の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るレンジシフタの構成を示す正面図。
【図4】本実施形態に係るレンジシフタの構成を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
1…粒子線照射システム 2…粒子線発生装置 4…粒子線照射装置 4a…水平照射装置 4b…垂直照射装置 16…レンジシフタ 21…ケーシング 22…基板 23…基板駆動機構 31…サーボモータ 32…ガイドレール 33…基板保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患部に粒子線を照射して治療する粒子線照射装置に設けられ、前記粒子線の拡大ブラッグピークを移動させるレンジシフタであって、
前記粒子線のエネルギーを吸収する基板と、
前記基板を前記粒子線の経路上に出没可能に移動させるサーボ機構と
を具備することを特徴とするレンジシフタ。
【請求項2】
前記基板が複数設けられており、
前記サーボ機構が前記複数の基板を独立して移動可能になっている
ことを特徴とする請求項1に記載のレンジシフタ。
【請求項3】
前記基板が複数設けられており、
前記サーボ機構が前記複数の基板の一部又は全部を同時に移動可能になっている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンジシフタ。
【請求項4】
前記基板が複数設けられており、
前記サーボ機構が前記基板ごとに設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のレンジシフタ。
【請求項5】
前記複数の基板のうち隣接する基板に設けられるサーボ機構が、前記基板の異なる辺にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のレンジシフタ。
【請求項6】
前記複数の基板には、前記粒子線のエネルギーの吸収量が異なる基板が含まれている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のレンジシフタ。
【請求項7】
前記基板が複数設けられており、
前記複数の基板には、
前記粒子線の経路に対して第1方向上に設けられる基板と、
前記粒子線の経路に対して第2方向上に設けられる基板と
が含まれている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のレンジシフタ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のレンジシフタを備えたことを特徴とする粒子線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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