説明

レンズキャップ

【課題】レンズキャップとレンズケースとを別々に使用する煩わしさがなく、交換レンズを速やかに収納することができ、安価で製造できるレンズキャップを提供する。
【解決手段】略有底円筒形状のフロントキャップ20及びリアキャップ30の開口側周縁部に、フロント側装着部21b及びリア側装着部31bを設け、フロント側装着部21aにリア側装着部31aを装着可能とした。そして、交換レンズ10にフロントキャップ20とリアキャップ30とを装着し、フロント側装着21bにリア側装着部31bを螺合させ、フロントキャップ20にリアキャップ30を装着することにより、交換レンズ10の外周部分全体を保護し、レンズケースとしても使用可能とすることを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花型形状のフードを備えた交換レンズに用いられるレンズキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズの被写体側レンズや像側レンズを保護するものとしては、フロントキャップやリアキャップ等のレンズキャップが知られている。
図3は、一般的なレンズキャップを装着した交換レンズの断面図である。
一般的なレンズキャップは、交換レンズ10の前後に装着されるフロントキャップ200と、リアキャップ300とがあった。
交換レンズ10は、略円筒形状であり、その内部には、レンズL1〜L9が設けられている。また、交換レンズ10は、その光軸方向の被写体側にはフード部11が固定され、像側には不図示のカメラに取り付けられるマウント部12が設けられ、カメラ取り付け面12aで不図示のカメラの被写体側面と接する。
フード部11は、この交換レンズ10の最大画角を示す光線Mを遮らないように切り込み部が形成された花型形状のフードである。
レンズL1〜L9は、交換レンズ10の内部に、被写体側からレンズL1、レンズL2、レンズL3と順に像側へ、その中心が光軸に一致するように配列されている。レンズL1は、光軸方向において最も被写体側に配列され、レンズL9は、最も像側に配列されている。
【0003】
フロントキャップ200は、金属又はプラスチック等で形成され、略円筒形状であるフロント側円筒部210と、フロント側円筒部210の一端を塞ぐフロント側底部220と、植毛部230とを有する略有底円筒形状であり、交換レンズ10の被写体側レンズL1とフード部11の外周部分とを保護する部材である。
【0004】
フロント側円筒部210は、その一端の周縁部の内周に雌ネジ210aが設けられており、フロント側円筒部210の長さは、少なくともフード部11の切り込み部が覆われる長さである。
フロント側底部220は、略円盤状の部材であり、一方の端面に不図示の付勢部材によって径方向に付勢された一対の爪部220aが設けられ、フロント側円筒部210の雌ネジ210aに係合することにより、フロント側円筒部210に着脱可能に装着される。
植毛部230は、フロント側円筒部210の内周に設けられた緩衝部材であり、例えば、フェルト等が使用されている。植毛部230は、フロントキャップ200を交換レンズ10に装着するときに、その弾性によって交換レンズ10を保持し、また、フード部11とフロント側円筒部210の内周部分とが接触し、フード部11が傷付くことを防ぐものである。
【0005】
リアキャップ300は、金属又はプラスチック等で形成され、略有底円筒形状であり、円筒部分の内周に交換レンズ10のマウント部12に装着可能な装着部310を備え、交換レンズ10の像側レンズL9を保護する部材である。装着部310は、例えば、いわゆるバヨネット構造である。
【0006】
このような一般的なレンズキャップは、交換レンズ10を不図示のカメラから取り外し、次に、フロントキャップ200を交換レンズ10のフード部11に被せて装着し、リアキャップ300を交換レンズ10のマウント部12に装着して使用する。
図3に示すように、一般的なレンズキャップでは、フロントキャップ200は、交換レンズ10の被写体側レンズL1とフード部11の外周部分とを保護し、リアキャップ300は、交換レンズ10の像側レンズL9を保護する。
【0007】
しかし、フロントキャップ200とリアキャップ300とでは、交換レンズ10の外周部分全体を保護することはできない。
よって、これらのレンズキャップで保護された交換レンズ10は、例えば、レンズケースに収納される。レンズケースは、レンズキャップと独立して設けられており、レンズケースとレンズキャップとは、別々に使用されるものである。
【0008】
そのため、交換レンズ10を収納するには、レンズキャップとレンズケースの両方を準備しなければならず、煩雑であり、交換レンズ10を速やかに収納できないという問題があった。
また、使用者は、レンズケースとレンズキャップとを個別に携帯しなければならないため、レンズケースやレンズキャップを紛失してしまうという問題があった。
さらに、レンズキャップとレンズケースとを別々に生産するため、生産コストが高くなることも問題であった。
【0009】
一方、例えば、レンズフードの両端部分にネジを設け、そのネジに蓋を取り付けることにより、レンズフードがレンズケースとしても使用可能となるものもあった(特許文献1参照。)。
【0010】
しかし、花型形状のフードでは、切り込み部を有するため、ネジをフードの全周にわたって設けることができず、蓋を取り付けることはできない。そのため、花型形状のフードが設けられた交換レンズには、適用できないという問題があった。
【特許文献1】実開平7−10732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、レンズキャップとレンズケースとを別々に使用する煩わしさがなく、交換レンズを速やかに収納することができ、安価で製造できるレンズキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、切り込み部が形成された花型形状のフード部(11)を備えた交換レンズ(10)に用いられるレンズキャップであって、略円筒形状であるフロント側円筒部(21)と前記フロント側円筒部の一端を塞ぐフロント側底部(22)とを有する略有底円筒形状であり、前記交換レンズの被写体側レンズ(L1)と前記フード部の外周部分とを保護するフロントキャップ部材(20)を有し、前記フロントキャップ部材は、前記フロント側円筒部の開口側周縁部に、他部品を装着するフロント側装着部(21b)が設けられていること、を特徴とするレンズキャップである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレンズキャップにおいて、略円筒形状であるリア側円筒部(31)と前記リア側円筒部の一端を塞ぐリア側底部(32)とを有する略有底円筒形状であり、前記交換レンズ(10)の像側レンズ(L9)と像側外周部分とを保護するリアキャップ部材(30)を有し、前記リアキャップ部材は、前記リア側円筒部の開口側周縁部に、前記フロント側装着部に装着されるリア側装着部(31b)が設けられていること、を特徴とするレンズキャップである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレンズキャップにおいて、前記フロントキャップ部材(20)は、前記フロント側円筒部(21)の長さが、前記フード部(11)の先端から前記交換レンズのマウント部(12)のカメラ取り付け面(12a)までの長さよりも短いこと、を特徴とするレンズキャップである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までに記載のレンズキャップにおいて、前記フロント側底部(22)及び前記リア側底部(32)は、前記フロント側円筒部(21)及び前記リア側円筒部(31)に着脱可能であり、同一形状であること、を特徴とするレンズキャップである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4に記載のレンズキャップにおいて、前記フロント側底部(22)及び前記リア側底部(32)は、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップを使用可能であること、を特徴とするレンズキャップである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、以下の効果を奏することができる。
(1)フロントキャップ部材は、フロント側円筒部の開口側周縁部に、他部品を装着するフロント側装着部が設けられているので、レンズキャップとして使用できるうえに、フロント側装着部に他部品、例えば、リアキャップ部材等を装着することにより、交換レンズを速やかに収納することができ、レンズケースとしても使用できる。
【0018】
(2)フロントキャップ部材は、フロント側円筒部の長さが、フード部の先端から交換レンズのマウント部のカメラ取り付け面までの長さよりも短いので、交換レンズをカメラに取り付けたまま、フロントキャップ部材を交換レンズに取り付け、レンズキャップとして使用できる。
【0019】
(3)フロント側底部及びリア側底部は、フロント側円筒部及びリア側円筒部に着脱可能であり、同一形状であるので、フロント側底部とリア側底部との部品を共用できるので、生産コストを抑えることができる。
【0020】
(4)フロント側底部及びリア側底部は、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップを使用可能であるので、生産コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、レンズキャップとレンズケースとを別々に使用する煩わしさがなく、交換レンズを速やかに収納することができ、安価で製造できるレンズキャップを提供するという目的を、略有底円筒形状であるフロントキャップ部材及びリア側キャップ部材の開口側周縁部に、フロント側装着部及びリア側装着部を設け、フロント側装着部にリア側装着部を装着可能にすることにより実現した。
【実施例】
【0022】
図1は、本実施例のレンズキャップと交換レンズの断面図である。
図2は、本実施例のレンズキャップを装着した交換レンズの断面図である。
本実施例のレンズキャップは、切り込み部が形成された花型形状のフード部11を備えた交換レンズ10に用いられるレンズキャップである。
【0023】
フロントキャップ20は、金属又はプラスチック等で形成され、略円筒形状であるフロント側円筒部21と、フロント側円筒部21の一端を塞ぐフロント側底部22とを有する略有底円筒形状であり、交換レンズ10の最も被写体側に設けられたレンズL1とフード部11の外周部分とを保護する部材である。
【0024】
フロント側円筒部21は、フロント側雌ネジ21aと、フロント側装着部21bと、植毛部23とを有する略円筒形状の部材である。フロント側円筒部21の長さは、交換レンズ10のフード部11の先端からマウント部12のカメラ取り付け面12aまでの長さよりも短い。
フロント側雌ネジ21aは、フロント側円筒部21の一端の周縁部の内周に設けられた雌ネジであり、後述するフロント側底部22を装着可能である。
フロント側装着部21bは、フロント側円筒部21のフロント側底部22が装着される一端と対向する開口側周縁部の、例えば、内周に設けられた雌ネジであり、後述するリアキャップ30を装着可能である。
【0025】
フロント側底部22は、略円盤状の部材であり、例えば、一方の端面に不図示の付勢部材により径方向に付勢された一対の爪部22aが設けられ、その爪部22aが前述のフロント側雌ネジ21aに係合することにより、フロント側円筒部21に着脱可能に装着されるスプリング式キャップである。また、フロント側底部22は、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップである。
【0026】
植毛部23は、フロント側円筒部21のフロント側底部22側の内周に設けられた緩衝部材であり、例えば、フェルトが使用される。植毛部23は、フロントキャップ20を交換レンズ10に装着するときに、その弾性によって交換レンズ10を保持し、また、フード部11とフロント側円筒部21の内周部分とが接触し、フード部11が傷付くことを防ぐものである。
【0027】
リアキャップ30は、金属又はプラスチック等で形成され、略円筒形状であるリア側円筒部31と、リア側円筒部31の一端を塞ぐリア側底部32とを有する略有底円筒形状であり、交換レンズ10の最も像側に設けられたレンズL9と交換レンズ10の像側外周部分とを保護する部材である。
【0028】
リア側円筒部31は、リア側雌ネジ31aと、リア側装着部31bとを有する略円筒形状の部材である。
リア側雌ネジ31aは、リア側円筒部31の一端の周縁部の内周に設けられた雌ネジであり、後述するリア側底部32を装着可能である。
リア側装着部31bは、リア側円筒部31のリア側底部32が装着される一端と対向する開口側周縁部の、例えば、外周に設けられた雄ネジであり、前述したフロント側装着部21bと螺合する。これにより、リアキャップ30は、フロントキャップ20に装着可能である。
【0029】
リア側底部32は、フロント側底部22と同一形状のスプリング式キャップであり、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップである。リア側底部32は、爪部22と同様に設けられた一対の爪部32aが、前述のリア側雌ネジ31aに係合することにより、リア側円筒部31に着脱可能に装着される。
【0030】
本実施例のレンズキャップの装着方法について説明する。
図2は、本実施例のレンズキャップを装着した交換レンズの断面図である。
不図示のカメラから交換レンズ10を取り外し、フロントキャップ20を交換レンズ10のフード部11に被せて装着し、リアキャップ30を交換レンズ10のマウント部12に装着する。次に、フロント側装着部21bと、リア側装着部31bとを螺合させることにより、リアキャップ30は、フロントキャップ20に装着される。
【0031】
図2に示すように、リアキャップ30がフロントキャップ20に装着されることにより、交換レンズ10は、その外周部分全体が、フロントキャップ20とリアキャップ30とにより保護される。これにより、本実施例のレンズキャップは、交換レンズ10を保護するレンズケースとして使用でき、レンズキャップとレンズケースとを別々に使用することなく、速やかに交換レンズ10を収納することができる。
【0032】
また、フロント側円筒部21の長さは、フード部11の先端から交換レンズ10のマウント部12のカメラ取り付け面12aまでの長さよりも短いので、交換レンズ10がカメラに取り付けられた状態で、フロントキャップ20を交換レンズ10に装着することができる。
【0033】
さらに、フロント側底部22とリア側底部32とは、同一形状であり、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップであるので、生産コストを低く抑えることができる。
【0034】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施例において、フロント側装着部21bを雌ネジとし、リア側装着部31bを雄ネジとして、これらを螺合させることにより、フロントキャップ20にリアキャップ30を装着する例を示したが、これに限らず、例えば、バヨネット構造や、クリック機構や、マグネットを用いて、フロントキャップ20にリアキャップ30を装着させてもよい。
【0035】
(2)本実施例において、フロント側底部22及びリア側底部32は、フロント側円筒部21及びリア側円筒部31に着脱可能である例を示したが、フロント側円筒部21及びリア側円筒部31と一体成型でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施例のレンズキャップと交換レンズの断面図である。
【図2】本実施例のレンズキャップを装着した交換レンズの断面図である。
【図3】一般的なレンズキャップを装着した交換レンズの断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 交換レンズ
11 フード部
12 マウント部
12a カメラ取り付け面
20 フロントキャップ
21 フロント側円筒部
21a フロント側雌ネジ
21b フロント側装着部
22 フロント側底部
22a 爪部
23 植毛部
30 リアキャップ
31 リア側円筒部
31a リア側雌ネジ
31b リア側装着部
32 リア側底部
32a 爪部
200 フロントキャップ
210 フロント側円筒部
220 フロント側底部
300 リアキャップ
310 装着部
L1〜L9 レンズ
M 最大画角を示す光線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り込み部が形成された花型形状のフード部を備えた交換レンズに用いられるレンズキャップであって、
略円筒形状であるフロント側円筒部と前記フロント側円筒部の一端を塞ぐフロント側底部とを有する略有底円筒形状であり、前記交換レンズの被写体側レンズと前記フード部の外周部分とを保護するフロントキャップ部材を有し、
前記フロントキャップ部材は、前記フロント側円筒部の開口側周縁部に、他部品を装着するフロント側装着部が設けられていること、
を特徴とするレンズキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズキャップにおいて、
略円筒形状であるリア側円筒部と前記リア側円筒部の一端を塞ぐリア側底部とを有する略有底円筒形状であり、前記交換レンズの像側レンズと像側外周部分とを保護するリアキャップ部材を有し、
前記リアキャップ部材は、前記リア側円筒部の開口側周縁部に、前記フロント側装着部に装着されるリア側装着部が設けられていること、
を特徴とするレンズキャップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレンズキャップにおいて、
前記フロントキャップ部材は、前記フロント側円筒部の長さが、前記フード部の先端から前記交換レンズのマウント部のカメラ取り付け面までの長さよりも短いこと、
を特徴とするレンズキャップ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までに記載のレンズキャップにおいて、
前記フロント側底部及び前記リア側底部は、前記フロント側円筒部及び前記リア側円筒部に着脱可能であり、同一形状であること、
を特徴とするレンズキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズキャップにおいて、
前記フロント側底部及び前記リア側底部は、他の交換レンズの被写体側に設けられたフィルタ装着ネジに装着可能な汎用キャップを使用可能であること、
を特徴とするレンズキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−65097(P2006−65097A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248921(P2004−248921)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】