説明

レンズクリーニング装置

【課題】複数枚のレンズに対し連続で効率良くクリーニングを行うことができるレンズク
リーニング装置を提供する。
【解決手段】レンズ(メガネレンズL)を、その光軸を中心に回転させるレンズ回転機構
2と、回転するレンズに表裏両側から臨む一対の押圧パッド13を有し、レンズを表裏両
側から払拭する払拭機構3と、各押圧パッド13とレンズとの間に介設されたワイピング
シート4と、ワイピングシート4を、シート送り経路5に沿って、シート供給部14から
一対の押圧パッド13を経由しシート回収部15に送るシート供給機構6と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガネレンズ等のレンズを払拭するレンズクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズを外周面(コバ)で狭持し回転させる3つのローラーと、レンズの表裏両
面を拭き取る一対の拭き皿と、押圧シリンダー(エアーシリンダー)を駆動源とし、各拭
き皿を上下方向に移動させてレンズに押し付ける平行リンク機構を有する一対のアームと
、各平行リンク機構の2つの固定対偶の部分で各アームを支持すると共に、各アームを介
して各拭き皿を水平面内で円運動させる回転シリンダーと、を備えたレンズ拭取り装置(
レンズクリーニング装置)が知られている(特許文献1参照)。
このレンズクリーニング装置では、3つのローラーにより回転するレンズに対し押圧シ
リンダーにより拭き皿を押圧しながら回転シリンダーによりレンズの外側に向かって円弧
状に移動させて拭き皿とレンズ面との接触点を連続的に変化させることによって、表裏両
レンズ面の良好な拭き取りを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−039295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレンズクリーニング装置では、複数枚のレンズの拭取りを連続で行うと、拭
き皿に汚れが蓄積し、この汚れが払拭すべきレンズに再付着するという問題があった。こ
のような汚れの再付着を防ぐために、頻繁に拭き皿の交換作業を行わなければならず、レ
ンズクリーニングの作業効率が低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、複数枚のレンズに対し連続で効率良くクリーニングを行うことができるレン
ズクリーニング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズクリーニング装置は、レンズを、その光軸を中心に回転させるレンズ回
転機構と、回転するレンズに表裏両側から臨む一対の押圧パッドを有し、レンズを表裏両
側から払拭する払拭機構と、各押圧パッドとレンズとの間に介設されたワイピングシート
と、ワイピングシートを、シート送り経路に沿って、シート供給部から一対の押圧パッド
を経由しシート回収部に送るシート供給機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合、シート送り経路は、シート供給部から一方の押圧パッドに至る送込み経路と
、一方の押圧パッドからレンズを迂回して他方の押圧パッドに至る迂回経路と、他方の押
圧パッドからシート回収部に至る送出し経路と、を有していることが好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、シート供給機構によりワイピングシートをシート供給部から一
対の押圧パッドを経由してシート回収部に送るようにしているため、レンズに対してシー
ト面の同じ部分を繰り返し使用することなく、常に新しい拭取り面を接触させてクリーニ
ングを行うことができる。このため、一旦拭取った異物がレンズに再付着するのを防止す
ることができ、且つ押圧パッドにおいて均一な押圧性能を優先させることができる。した
がって、押圧パッドの交換が不要となり、長尺のワイピングシートを用いることによりレ
ンズ払拭の作業効率を向上させることができる。さらに、レンズ面の両面を同時に払拭す
ることができるため、拭取り作業にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
この場合、シート供給機構は、シート供給部に設けられ、ロール状に巻回したワイピン
グシートを繰り出す繰出しリールと、シート送り経路に沿ってワイピングシートの送りを
経路変更する経路変更手段と、シート回収部に設けられ、送られてきたワイピングシート
を巻き取る巻取りリールと、を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、レンズに対し長尺のワイピングシートを効率良く供給することがで
きる。
【0011】
この場合、経路変更手段は、迂回経路に臨み、ワイピングシートを表裏反転させるシー
ト反転機構を、有していることが好ましい。
【0012】
また、シート反転機構は、ワイピングシートを表裏反転した状態に掛け渡す一対の経路
変更ローラーと、一対の経路変更ローラー間において、ワイピングシートの捻じった状態
を保持する保持ローラーと、を有していることが好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、ワイピングシートを反転させることによって、ワイピングシー
トの両面をレンズのクリーニングに使用することができる。これによって、ワイピングシ
ートを無駄なく使用することができ、大幅なコスト削減を達成することができる。
【0014】
この場合、ワイピングシートにクリーニング液を滴下するクリーニング液供給機構を、
更に備えたことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、クリーニング液が湿潤剤となり、且つ、異物のワイピングシートへ
の付着を促進するため、レンズを傷つけることなく効率良くクリーニングを行うことがで
きる。
【0016】
この場合、一対の押圧パッドがレンズに対し径方向に相対的に移動するように、レンズ
回転機構および払拭機構の少なくとも一方を移動させる払拭移動機構を、更に備えたこと
が好ましい。
【0017】
この構成によれば、拭き残しを生じさせることなく、レンズの払拭すべき領域のすべて
を拭取ることができる。
【0018】
この場合、各押圧パッドは、ゴム風船様に形成され、一対の押圧パッドに圧縮エアーを
供給する圧縮エアー供給機構を、更に備えたことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、押圧パッドが押圧力によって変形し、ワイピングシートは押圧パッ
ドを介してレンズの形状に倣って隙間無く接触することができる。これによって、拭き残
すことなくレンズをクリーニングすることができる。
【0020】
この場合、レンズが、メガネレンズであることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、メガネレンズに付着した異物を除去し、クリーニングを行うことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るレンズクリーニング装置の平面図である。
【図2】本実施形態に係るレンズクリーニング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るレンズクリーニング装置について説明する。
このレンズクリーニング装置は、研磨加工した後のメガネレンズの表面に付着している研
磨剤等の異物を拭き取るためのものである。
【0024】
図1および図2に示すように、レンズクリーニング装置1は、メガネレンズLを平面内
において回転させるレンズ回転機構2と、メガネレンズLの表裏両面を同時に払拭する一
対の押圧パッド13を有する払拭機構3と、各押圧パッド13とメガネレンズLとの間に
介設され、メガネレンズLの表裏表面に付着した異物を払拭するワイピングシート4と、
ワイピングシート4をシート送り経路5に沿ってシート供給部14から一対の押圧パッド
13を経由してシート回収部15に送るシート供給機構6と、ワイピングシート4にクリ
ーニング液を滴下するクリーニング液供給機構7と、レンズ回転機構2を払拭機構3に対
し略径方向に移動させる払拭移動機構8と、これらの機構を支持する機台9と、装置全体
を統括制御する制御装置16と、を備えている。また、レンズクリーニング装置1は、レ
ンズ回転機構2に対しメガネレンズLを搬入搬出する搬入搬出機構11と、搬入搬出機構
11に対しメガネレンズLを除給材する除給材ロボット12と、を備えている。
【0025】
除給材ロボット12により除給材トレイ17(模式的に小さく図示されている。)から
搬入搬出機構11に移載されたメガネレンズLは、搬入搬出機構11によりレンズ回転機
構2に搬入されこれに受け渡される。一方、レンズ回転機構2に受け渡されたメガネレン
ズLには、ワイピングシート4を介在させた一対の押圧パッド13が上下から接触する。
この状態で、レンズ回転機構2によりメガネレンズLが水平姿勢のまま回転し、同時にシ
ート供給機構6によりワイピングシート4の送りが実施される。さらに、この状態で払拭
移動機構8により、レンズ回転機構2と共にメガネレンズLが径方向に移動することによ
り、メガネレンズLの表裏両面の全域が同時に払拭される。メガネレンズLの払拭動作が
完了すると、これらの機構が停止すると共に、レンズ回転機構2に搬入搬出機構11が臨
む。ここで、搬入搬出機構11はレンズ回転機構2からメガネレンズLを受け取り、除給
材ロボット12の位置まで搬送してこれに受け渡す。そして、除給材ロボット12は、受
け取ったメガネレンズLを除給材トレイ17に移載する。
【0026】
図1に示すように、除給材ロボット12は、水平多関節ロボット(スカラーロボット)
であり、ロボットアーム18の先端に設けたコレット19により、除給材トレイ17上の
メガネレンズLをチャック(吸着)し、旋回動作して搬入搬出機構11に受け渡す(載置
)。また、払拭済みのメガネレンズLに対し除給材ロボット12は、上記と逆の手順で搬
入搬出機構11からメガネレンズLを受け取り、除給材トレイ17に受け渡す。一方、搬
入搬出機構11は、直動のロッドレスシリンダーで構成されており、シリンダー本体21
とシリンダー本体21により進退する載置テーブル22と、を備えている。除給材ロボッ
ト12により載置テーブル22上にメガネレンズLが載置されると、シリンダー本体21
が駆動し、メガネレンズLを前進させてレンズ回転機構2の中心位置に搬入する。また、
払拭済みのメガネレンズLに対し搬入搬出機構11は、逆の手順でレンズ回転機構2から
メガネレンズLを受け取り、除給材ロボット12の位置(ホーム位置)まで搬出する。
【0027】
レンズ回転機構2は、メガネレンズLのコバを挟持状態で回転自在に支持する複数(図
示のものでは4つ)の転接ローラー23と、複数の転接ローラー23のうち1つの転接ロ
ーラー23を回転駆動するローラー駆動機構24と、他の3つの転接ローラー23のうち
の隣接する2つの転接ローラー23を、メガネレンズLの径方向にそれぞれ進退自在に支
持する2つのローラー進退機構25と、これら構成部品を支持する機構ベース26と、を
備えている。払拭移動機構8により移動可能なレンズ回転機構2は、セットされたメガネ
レンズLの中央に一対の押圧パッド13が上下から接触する位置、すなわち、払拭開始位
置をホーム位置とする。
【0028】
複数の転接ローラー23に囲まれた位置にメガネレンズLが搬入されると、ローラー進
退機構25が駆動し、2つの転接ローラー23を径方向に前進させる。これにより、メガ
ネレンズLが、複数の転接ローラー23によりチャックされ、この状態で、ローラー駆動
機構24を駆動することにより、メガネレンズLがその光軸を中心に水平面内で回転する
。なお、払拭開始位置から離れた位置をレンズ回転機構2のホーム位置としてもよい。こ
の場合、払拭動作に際して、メガネレンズLがセットされた後、払拭移動機構8によって
レンズ回転機構2を払拭開始位置まで移動させる必要がある。
【0029】
複数の転接ローラー23は、周方向に均等配置され、鉛直姿勢で従動回転する3つの従
動ローラー27と、鉛直姿勢で駆動回転する1つの駆動ローラー28とで構成されている
。各従動ローラー27および駆動ローラー28は、メガネレンズLのコバに4点で転接し
て、メガネレンズLを確実に挟持しつつ、これを安定して回転させる。3つの従動ローラ
ー27のうち、2つの従動ローラー27は、ローラー進退機構25によりメガネレンズL
の径方向に進退可能に構成され、1つの従動ローラー27は、機構ベース26上において
固定的に立設されている。
【0030】
各転接ローラー23は、そのローラー軸29が鉛直姿勢で設置されており、ローラー本
体31が、レンズコバの一方の縁端に転接する第1転接部32と他方の縁端に転接する第
2転接部33とを有している。第1転接部32はテーパー形状に形成され、第2転接部3
3は第1転接部32に対し逆テーパー形状に形成されていて、全体として鼓状に形成され
ている。第1転接部32および第2転接部33がそれぞれ分力を作用させることによって
、回転時に第1転接部32および第2転接部33の分力が拮抗する位置でメガネレンズL
の位置が規制される。また、各転接ローラー23(ローラー本体31)は、メガネレンズ
Lのコバの欠けや傷を防止するため、ゴムやポリウレタン等で構成されている。
【0031】
ローラー駆動機構24は、動力源となる回転駆動モーター34と、回転駆動モーター3
4の主軸35に軸着した駆動プーリー36と、転接ローラー23のローラー軸29に軸着
した従動プーリー37と、駆動プーリー36と従動プーリー37との間に掛け渡したタイ
ミングベルト38と、で構成されている。回転駆動モーター34は、スピードコントロー
ルモーターやステッピングモーターで構成され、メガネレンズLの回転数を適宜変更でき
るようになっている。駆動ローラー28は、機構ベース26上に設けた軸受けブロック3
9によって回転自在に支持され、回転駆動モーター34の回転に伴って回転する。駆動ロ
ーラー28の回転を受けて、メガネレンズLが回転し、さらにメガネレンズLに転接する
3つの従動ローラー27が回転する。
【0032】
ローラー進退機構25は、3つの従動ローラー27のうちの隣接する2つの従動ローラ
ー27を径方向にそれぞれ進退自在に支持するスライダー付のエアーシリンダー41で構
成されている。エアーシリンダー41は、駆動ローラー28を含む2つの転接ローラー2
3に対し、他方の2つの転接ローラー23を進退させ、メガネレンズLの着脱を可能にす
る。そして、機構ベース26は、機構ベース26上に、ローラー進退機構25、ローラー
駆動機構24および複数の転接ローラー23をすべて支持している。
【0033】
なお、転接ローラー23の数は、任意であるが、駆動ローラー28を1つ以上有し、合
計4つの転接ローラー23が等間隔で配置されていることが好ましい。4つの転接ローラ
ー23を設置することによって、メガネレンズLの着脱を容易に行うことができると共に
、メガネレンズLにアクセスする装置や部材を適切に配置することができる。
【0034】
払拭機構3は、メガネレンズLを中心に上下に対峙するように設置された一対の押圧パ
ッド13と、各押圧パッド13に圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備(図示省略)
と、先端に各押圧パッド13を保持した上下一対の回動アーム42と、押圧パッド13が
メガネレンズLに離接するように各回動アーム42を回動させる上下一対のサーボモータ
ー43と、一対のサーボモーター43を上下に配置した状態で支持する装置フレーム(図
示省略)と、を備えている。
【0035】
一対の押圧パッド13は回動アーム42の先端に取り付けられており、一方はメガネレ
ンズLの表面に、他方はメガネレンズLの裏面に離接するように配置されている。各押圧
パッド13は、ゴム等の弾性材によりゴム風船様に形成されており、その表面がワイピン
グシート4に覆われるようになっている。また、圧縮エアー供給機構は、押圧パッド13
に接続されたエアー配管(図示省略)と、エアー配管に介設された、エアー供給をコント
ロールするためのエアーバルブ(図示省略)とを有している。各押圧パッド13には、内
部が適正圧力になるように、エアー配管を通じて圧縮エアーが供給される。この状態で、
メガネレンズLに押し付けられた押圧パッド13は、メガネレンズLの形状に倣って変形
するため、メガネレンズLに密着させて拭取りを行うことができ、拭き残しのない良好な
クリーニングを行うことができる。特に、メガネレンズLの周縁部の拭取りを均一に行う
ことができる。
【0036】
一対の回動アーム42は、払拭開始位置に臨んだメガネレンズLを上下から挟むように
して上下対称に配設されている。各回動アーム42は、基端部をサーボモーター43のモ
ーター軸44に固定したアーム本体45と、その先端に取り付けた押圧パッド13の押圧
力を測定するフォースゲージ46と、を有している。一対の回動アーム42は、サーボモ
ーター43によってモーター軸44の回転に伴ってアーム本体45を回動させて、その先
端に取り付けられた押圧パッド13をワイピングシート4を介してメガネレンズLに押し
当て、メガネレンズLの表裏両面の拭取りを行う。
【0037】
サーボモーター43は、モーター軸44を回動させる駆動源となる駆動モーター47と
、モーター軸44の回転角度を検出するエンコーダー(図示省略)と、制御装置16の演
算結果による信号を駆動モーター47の駆動に必要な電力に変換する電力変換装置(図示
省略)と、から構成されている。そして、フォースゲージ46からの測定信号およびエン
コーダーから出力信号に基づいて、駆動モーター47が制御されるようになっている。
【0038】
クリーニング液供給機構7は、ワイピングシート4の繰出し側上方(送込み経路52)
に設置されており、クリーニング液タンク(図示省略)と、クリーニング液タンクに接続
されたディスペンサー(図示省略)と、を備える。このディスペンサーは、ワイピングシ
ート4の拭取り面に対峙し、ワイピングシート4の繰出し動作に合わせて、クリーニング
液タンクから供給されるアセトン、アルコール等のクリーニング液をワイピングシート4
に滴下する。すなわち、制御装置16は、シート供給機構6に同期してクリーニング液供
給機構7を駆動する。ワイピングシート4に滴下されたクリーニング液は、湿潤剤となっ
て、メガネレンズLとワイピングシート4との摩擦を防ぐので、メガネレンズLを傷つけ
ることなく拭取り動作を行うことができる。
【0039】
払拭移動機構8は、機台9上に設けられ、機構ベース26をスライド自在に支持するガ
イドレール48と、機構ベース26の裏面に固定され、ガイドレール48に係合する前後
のスライダー49と、ガイドレール48を案内にして機構ベース26を直動させるモータ
ー(図示省略)と、を備えている。ガイドレール48は、上記の回動アーム42の延在方
向に延びており、払拭移動機構8は、機構ベース26と共にレンズ回転機構2を、この延
在方向に進退させる。すなわち、払拭動作に際して、払拭移動機構8は、ホーム位置にあ
るレンズ回転機構2を、給材位置方向にメガネレンズLの略半径に相当する距離を移動さ
せる。この半径方向への移動と回転により、メガネレンズLの表裏両面を、拭き残しなく
拭取ることができる。なお、払拭移動機構8が、レンズ回転機構2ではなく、払拭機構3
を移動させることによって、一対の押圧パッド13がメガネレンズLに対し径方向に相対
的に移動するようにしてもよい。
【0040】
制御装置16は、パーソナルコンピュータ(PC)で構成されており、レンズクリーニ
ング装置1全体を統括制御する。また、制御装置16は、キーボード等の入力デバイスを
用いてユーザーからの各種パラメーターの入力を受けると共に、ディスプレイやスピーカ
ー等の出力手段によりレンズクリーニング装置1の状態をユーザーに提示(報知)する。
【0041】
次に、本発明の特徴的部分である、シート供給機構6について詳細に説明する。シート
供給機構6は、ワイピングシート4を供給するシート供給部14と、拭取り作業後のワイ
ピングシート4を回収するシート回収部15と、シート供給部14からシート回収部15
に至るワイピングシート4のシート送り経路5を構成する経路変更手段51と、を備えて
いる。また、シート送り経路5は、シート供給部14から上側の押圧パッド13に至る送
込み経路52と、上側の押圧パッド13からメガネレンズLを迂回して下側の押圧パッド
13に至る迂回経路53と、下側の押圧パッド13からシート回収部15に至る送出し経
路54と、を有している。
【0042】
シート供給部14は、ワイピングシート4をロール状に巻回した繰出しリール55と、
繰出しリール55を繰出し回転させる繰出しモーター56と、を備えている。繰出しモー
ター56は、ワイピングシート4に張りを与えつつ繰り出すものであり、例えばインダク
ションモーターで構成されている。一方、シート回収部15は、拭取り作業後のワイピン
グシート4を巻き取る巻取りリール57と、巻取りリール57を巻取り回転させる巻取り
モーター58と、を備えている。巻取りモーター58は、ワイピングシート4を一定の速
度および張力で巻き取るものであり、例えばトルクモーターで構成されている。繰出しモ
ーター56と巻取りモーター58とは同期回転し、張った状態のワイピングシート4を、
シート供給部14から送込み経路52を介して上側の押圧パッド13に導くと共に、迂回
経路53を経て下側の押圧パッド13に導き、さらに送出し経路54を介して最終的にシ
ート回収部15に送り入れる。
【0043】
経路変更手段51は、送込み経路52をシート供給部14から上側の押圧パッド13に
向って経路変更する第1変更ローラー61と、迂回経路53の上流側において経路変更を
行う第2変更ローラー62および第3変更ローラー63と、迂回経路53の中間点に介設
したシート反転機構59と、迂回経路53の下流側において経路変更を行う第4変更ロー
ラー64および第5変更ローラー65と、送出し経路54を下側の押圧パッド13からシ
ート回収部15に向って経路変更する第6変更ローラー66と、を有している。
【0044】
第1変更ローラー61および第2変更ローラー62は、送られてゆくワイピングシート
4が上側の押圧パッド13の下面を円弧状に覆うように、ワイピングシート4を経路変更
する。同様に、第5変更ローラー65および第6変更ローラー66は、送られてゆくワイ
ピングシート4が下側の押圧パッド13の上面を円弧状に覆うように、ワイピングシート
4を経路変更する。また、第3変更ローラー63および第4変更ローラー64は近接して
配設され、シート反転機構59を通過するワイピングシート4が略「C」字状に周回する
ように経路変更する。
【0045】
シート反転機構59は、ワイピングシート4を表裏反転した状態に掛け渡す上下一対の
反転部変更ローラー67と、一対の反転部変更ローラー67間において、ワイピングシー
ト4の捻じった状態を保持する保持ローラー(傾斜プーリー)68と、を有している。一
対の反転部変更ローラー67は、上下に十分な距離を隔てて配設されており、両反転部変
更ローラー67間において、ワイピングシート4が表裏反転した状態、すなわち180°
捻じられた状態に掛け渡されている。一方、保持ローラー68は、両反転部変更ローラー
67の中間位置に配設された一対のフリーローラーで構成されている。一対のフリーロー
ラーは、ニップローラーの形態を有し、90°に捻じられたワイピングシート4の走行を
ガイドする。
【0046】
迂回経路53において、上側の押圧パッド13を経て送られてきたワイピングシート4
は、第3変更ローラー63からシート反転機構59に送り込まれ、ここで表裏反転して、
第4変更ローラー64から下側の押圧パッド13に導かれる。これにより、ワイピングシ
ート4は、メガネレンズLの表面および裏面を、異なる拭取り面で払拭する。したがって
、ワイピングシート4の両面を無駄なく使用することができ、大幅にコスト削減を達成す
ることができる。なお、保持ローラー68の設置数は任意であり、ワイピングシート4の
各部の捻り角度に応じて2個以上設置してもよい。
【0047】
ここで、メガネレンズLの払拭作業(クリーニング作業)の動作について簡単に説明す
る。
先ず、除給材ロボット12により除給材トレイ17から載置テーブル22に移載された
メガネレンズLは、搬入搬出機構11によりレンズ回転機構2に搬入され受け渡される。
その後、ユーザーは、キーボード等の入力デバイスを用いて、メガネレンズLに対する押
圧パッド13の理想的な押圧力である目標押圧力Fを入力する。この目標押圧力Fは、予
め実験的に求めておくことが望ましい。
【0048】
次に、駆動モーター47により一対の回動アーム42を回動させ、各回動アーム42の
先端に固定された押圧パッド13を、メガネレンズLの両面から挟み込むようにして接触
させる。メガネレンズLの表裏両面を押圧した状態で、レンズ回転機構2によりメガネレ
ンズLを水平面内で回転させると同時に、シート供給機構6によりワイピングシート4の
送りが実施される。メガネレンズLを把持する各転接ローラー23は、第1・第2両転接
部32,33の分力が拮抗する位置でメガネレンズLの位置を規制し、メガネレンズLを
特定の平面内において高い安定性をもって回転させる。
【0049】
また、シート供給部14から繰出されたワイピングシート4は、一定の速度および張力
を保ちながら、シート送り経路5に沿って送られ、一方の押圧パッド13を通って迂回経
路53に至る。ワイピングシート4は、迂回経路53に配設されたシート反転機構59を
通過し、表裏反転した状態で他方の押圧パッド13に向けて送られる。このとき、払拭移
動機構8のモーターを駆動させ、レンズ回転機構2をホーム位置から給材位置方向に向か
って移動させる。これにより、拭き残すことなくメガネレンズLの表裏両面が同時に払拭
される。レンズ回転機構2が、メガネレンズLの略半径に相当する距離(中心を僅かに越
えた位置から半径分)を移動すると、メガネレンズLの表裏全体がすべて払拭され、クリ
ーニング作業が終了する。
【0050】
メガネレンズLのクリーニング作業の終了後、これらの機構が停止すると共に、レンズ
回転機構2に搬入搬出機構11が臨む。ここで、ローラー進退機構25により、2つの転
接ローラー23が進退動作をすると同時に、搬入搬出機構11はレンズ回転機構2からメ
ガネレンズLを受け取り、除給材ロボット12の位置まで搬送してこれに受け渡す。そし
て、除給材ロボット12は、受け取ったメガネレンズLを除給材トレイ17に移載する。
【0051】
以上の構成によれば、シート供給機構6により、ワイピングシート4をシート供給部1
4から一対の押圧パッド13を経由してシート回収部15に送るため、メガネレンズLに
対して同じ部分を繰り返し使用することなく、常に新しい拭取り面でクリーニングを行う
ことができる。また、ワイピングシート4を表裏反転させることによって、ワイピングシ
ート4の両面を無駄なく使用することができ、大幅なコスト削減を達成することができる

【符号の説明】
【0052】
1…レンズクリーニング装置 2…レンズ回転機構 3…払拭機構 4…ワイピングシ
ート 5…シート送り経路 6…シート供給機構 13…押圧パッド 14…シート供給
部 15…シート回収部 51…経路変更手段 52…送込み経路 53…迂回経路 5
4…送出し経路 55…繰出しリール 57…巻取りリール 68…保持ローラー L…
メガネレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを、その光軸を中心に回転させるレンズ回転機構と、
回転する前記レンズに表裏両側から臨む一対の押圧パッドを有し、前記レンズを表裏両
側から払拭する払拭機構と、
前記各押圧パッドと前記レンズとの間に介設されたワイピングシートと、
前記ワイピングシートを、シート送り経路に沿って、シート供給部から一対の前記押圧
パッドを経由しシート回収部に送るシート供給機構と、を備えたことを特徴とするレンズ
クリーニング装置。
【請求項2】
前記シート送り経路は、
前記シート供給部から一方の前記押圧パッドに至る送込み経路と、
前記一方の前記押圧パッドから前記レンズを迂回して他方の前記押圧パッドに至る迂回
経路と、
他方の前記押圧パッドからシート回収部に至る送出し経路と、を有していることを特徴
とする請求項1に記載のレンズクリーニング装置。
【請求項3】
前記シート供給機構は、
前記シート供給部に設けられ、ロール状に巻回した前記ワイピングシートを繰り出す繰
出しリールと、
前記シート送り経路に沿って前記ワイピングシートの送りを経路変更する経路変更手段
と、
前記シート回収部に設けられ、送られてきた前記ワイピングシートを巻き取る巻取りリ
ールと、を有していることを特徴とする請求項2に記載のレンズクリーニング装置。
【請求項4】
前記経路変更手段は、前記迂回経路に臨み、前記ワイピングシートを表裏反転させるシ
ート反転機構を、有していることを特徴とする請求項3に記載のレンズクリーニング装置

【請求項5】
前記シート反転機構は、前記ワイピングシートを表裏反転した状態に掛け渡す一対の経
路変更ローラーと、
前記一対の経路変更ローラー間において、前記ワイピングシートの捻じった状態を保持
する保持ローラーと、を有していることを特徴とする請求項4に記載のレンズクリーニン
グ装置。
【請求項6】
前記ワイピングシートにクリーニング液を滴下するクリーニング液供給機構を、更に備
えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のレンズクリーニング装置。
【請求項7】
前記一対の押圧パッドが前記レンズに対し径方向に相対的に移動するように、前記レン
ズ回転機構および前記払拭機構の少なくとも一方を移動させる払拭移動機構を、更に備え
たことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のレンズクリーニング装置。
【請求項8】
前記各押圧パッドは、ゴム風船様に形成され、
一対の前記押圧パッドに圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給機構を、更に備えたこと
を特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のレンズクリーニング装置。
【請求項9】
前記レンズが、メガネレンズであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記
載のレンズクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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