説明

レンズ稼動装置

【課題】VCMにより傾きを抑えながらレンズホルダーを移動させることができるレンズ稼動装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るレンズ稼動装置は、光学系を収容するレンズホルダー9と、レンズホルダーを変位させるための駆動ユニット7,8と、レンズホルダーを付勢する第1のスプリング5及び第2のスプリング10と、ベース11と、ベース上に設けられ、レンズホルダー、駆動ユニット及び第1及び第2のスプリングを収容するヨーク2とを備える。レンズホルダーは、コイル8を固定するための本体部9aを有し、駆動ユニットは、コイル8とヨーク側に設けられコイルに磁界を提供するための永久磁石7とを含み、ベースは、光を通過させるための開口部11aを有すると共に開口部の周囲に略円環状の溝11bが設けられ、レンズホルダーは、駆動ユニットによる変位量にかかわらず常に一部又は全部を溝の内壁11fに隣接できる略円環状の突部9dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系を収容するレンズホルダーとVCM(Voice Coil Motor)を利用したアクチュエーターとを備えたレンズ稼動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等に搭載される小型のカメラモジュールは、オートフォーカスの機能を備えたものが開発されている。
【0003】
オートフォーカスは、レンズホルダーを光軸方向に駆動させるアクチュエーターを備えたレンズ稼動装置で構成される。レンズ稼動装置のアクチュエーターには、VCM(Voice Coil Motor)、ステッピングモーターや圧電素子を利用するもの等、様々なタイプがある。中でも、VCMを利用したレンズ稼動装置は、構造が簡単でしかも小型であるため、従来から広く利用されている(特許文献1及び2を参照)。
【0004】
VCMを利用した従来のレンズ稼動装置は、通常、レンズ等の光学系を収容するレンズホルダーと、VCMのアクチュエーターと、レンズホルダーをレンズの光軸方向に付勢する2つのスプリングと、それらを収納する本体とで構成されている。本体は、ベースと、そのベースを上方から覆うヨークとで構成され、ベース及びヨークは、光学系の光軸上に開口部がそれぞれ設けられている。VCMのアクチュエーターは、レンズホルダーの外周部に固定されたコイルと、そのコイルに磁界を与える永久磁石とで構成される。コイルに電流を流すことにより、電磁力でレンズホルダーを光学系の光軸方向に移動させ焦点を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−251517号公報
【特許文献2】特開2010−190923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレンズ稼動装置は、レンズホルダーが光軸に対して傾斜し易いという問題があった。レンズホルダーが傾斜すると光学性能が低下するだけでなく、傾斜が大きくなると、レンズホルダーを光軸方向に付勢するスプリングが塑性変形してしまうといった問題も生じ易かった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、主に、レンズホルダーの傾斜を抑えたレンズ稼動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレンズ稼動装置は、光学系を収容するレンズホルダー9と、レンズホルダーを光軸方向に変位させるための駆動ユニット7,8と、レンズホルダーを主に下方に付勢する第1のスプリング5と、レンズホルダーを主に下方に付勢する第2のスプリング10と、レンズホルダーを支持するベース11と、ベース上に設けられ、レンズホルダー、駆動ユニット及び第1及び第2のスプリングを収容するヨーク2とを備える。そして、レンズホルダーは、コイルを巻き付けて固定するための本体部9aを有し、駆動ユニットは、本体部に巻かれたコイル8と、ヨーク側に設けられコイルに磁界を提供するための永久磁石7とを含み、ベースは、レンズユニットに入射した光を通過させるための開口部11aを有すると共に開口部の周囲に略円環状の溝11bが設けられ、レンズホルダーは、駆動ユニットによる変位量にかかわらず常に一部又は全部を溝の内壁11fに隣接できる略円環状の突部9dを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、レンズホルダー9の突部9dとベース11の溝11bの内壁11fとがレンズホルダー9の移動前後や移動中であっても常に隣接できるようになっているため、たとえレンズホルダー9が傾いてもレンズホルダー9の突部9dが溝11bの内壁11fに接触することで、レンズホルダー9の傾きを一定の範囲内に抑えることができる。レンズホルダー9の傾きは、主に突部9dと内壁11fとの距離で規制することができ、この距離が短くなるほど、レンズホルダー9の傾きも小さくすることができる。それに伴って、レンズホルダー9の傾きによる第1のスプリング5及び第2のスプリング10の変形を抑えることができる。なお、ベース11の内壁11fは、溝11bにかかわらず、レンズホルダー9の移動を妨げないように光軸方向に沿って上方に延長部分を有してもよい。
【0010】
さらに、レンズホルダー9の突部9dとベース11の溝11bの内壁11fとで常にレンズホルダー9の側方から開口部11aへの進路を遮っているため、レンズホルダー9の本体部9aの側方付近で発生したあるいはレンズホルダー9の上方から侵入したヨーク内のゴミ等の異物が開口部11aに侵入することを抑えることができる。しかも、ダストトラップ剤等も不要であるため、簡単な構造で幅等の寸法を抑えて小型にすることができる。
【0011】
開口部11aは係止部11eを有し、他方、レンズホルダー9は係止部に係合する係合部9bを有することにより、レンズホルダー9の水平回転を規制するための機構を具備することが好ましい。この構成によると、レンズホルダー9の水平方向の回転を係合部9bと係止部11eの係合により規制することができるため、レンズホルダー9を付勢している第1のスプリング5及び第2のスプリング10は、レンズホルダー9の水平方向の回転による変形を抑えることができる。また、第1のスプリング5及び第2のスプリング10は、いずれもレンズホルダー9の上下方向の付勢だけを考慮するだけでよく、それらの厚さを薄くすることができる。
【0012】
突部9dは、駆動ユニットによるレンズホルダーの変位量にかかわらず常に溝11bの内壁11fとの隙間eを所定値以内に維持することが好ましい。具体的には、隙間eの値は、0よりも大きく、かつ、第2のスプリングの厚みTを2倍した値以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレンズ稼動装置によれば、レンズホルダーの移動前後や移動中にレンズホルダーの突部とベースの溝の内壁とを接触させることでレンズホルダーの傾きを一定に保持することができ、さらに、ヨーク内のゴミ等の異物が開口部に侵入することを抑えることができる。さらに、レンズホルダーの係合部とベースの係止部とを備えると、それらの係合によりレンズホルダーの水平方向の回転を規制することで、第1のスプリング及び第2のスプリングの水平方向の回転による変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のレンズ稼動装置を示す斜視図
【図2】実施形態のレンズ稼動装置の分解斜視図であり、(a)はヨーク体を示す斜視図、(b)はベース体を示す斜視図
【図3】ヨーク体の分解斜視図
【図4】ベース体の分解斜視図
【図5】ボビンを示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は下方から見た底面図、(c)は矢印Bの方向に見た矢視図、(d)は図5(a)のC−Cの矢印の方向に見た断面図
【図6】ベースを示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は下方から見た底面図、(c)は矢印Dの方向に見た矢視図、(d)は図6(a)のE−Eの矢印の方向に見た断面図
【図7】ボビンの移動を説明する断面図であり、(a)はボビンの移動前の状態を示す断面図、(b)はボビンの移動後の状態を示す断面図
【図8】ボビンの水平方向の回転を規制する機構を説明する図
【図9】パウダー試験の結果の一例を示す図であり、(a)は従来のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面の写真を示す図、(b)は実施形態のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面の写真を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態のレンズ稼動装置は、レンズホルダーの傾きを抑えるために、レンズホルダーとベースとの相対的な位置を所定の範囲内に制限する構成とした。
【0016】
図1は、実施形態のレンズ稼動装置を示す斜視図である。なお、図中の上下関係は、図に示す通りである。レンズ稼動装置1は、ヨーク体1aと、ベース体1bとで構成されている。図1に示すように、レンズ稼動装置1は、ヨーク体1aの上面に開口部2aを有し、その開口部2aから後述するボビン9の内側のねじ切り部9fを確認することができる。本実施形態のレンズホルダーとしてのボビン9は、図示しないレンズ等の光学系やそれらを収容する光学系ユニットを、内側のねじ切り部9fにねじ込むことによりそれらを保持できるようになっている。レンズ稼動装置1は、ベース体1bの下面側にVCMに電源を供給するための2つの端子10cを有する。
【0017】
図2は、実施形態のレンズ稼動装置の分解斜視図である。図2(a)は、ヨーク体を示す斜視図であり、図2(b)は、ベース体を示す斜視図である。なお、図中の上下関係は、図に示す通りである。図2(a)及び図2(b)に示すように、図1に示すレンズ稼動装置1は、ヨーク体1aとベース体1bとに分解することができ、逆に、ヨーク体1aとベース体1bとから組み立てることができる。
【0018】
ヨーク体1aは、カバー3と、プレート4と、スプリング5と、プレート6と、永久磁石7と、それらを収容するヨーク2とで構成されている。また、ベース体1bは、コイル8と、ボビン9と、2つのスプリング10と、それらを支持するベース11とで構成されている。
【0019】
カバー3は、主に、ボビン9の上方向の移動を制限する。スプリング5は、ボビン9を主に下方に付勢する。永久磁石7は、コイル8に磁界を提供する。コイル8は、ボビン9の円筒部に巻き付けて固定されている。2つのスプリング10は、導電性部材で構成され、ボビン9を主に下方に付勢するとともに、コイル8に電流を流すための端子にもなっている。
【0020】
図3は、ヨーク体の分解斜視図である。なお、図中の一点鎖線は各部品の中心軸を、破線はヨークの内側四隅の部分と各部品との相対的な位置を示す基準線をそれぞれ示す。図3に示すように、各部品(ヨーク2、カバー3、プレート4、スプリング5、プレート6、永久磁石7)の中心軸を揃え、図2(a)のヨーク体1aは、例えば、カバー3、プレート4、スプリング5、プレート6、永久磁石7の順にそれぞれをヨーク2に収納していくことで組み立てられる。カバー3は、4つの角に突部3aを設けてあり、予めカーバー3にプレート4、スプリング5、プレート6、永久磁石7を組み込んで一体とし、それをヨーク2に収納することもできる。
【0021】
図4は、ベース体の分解斜視図である。なお、図中の一点鎖線は各部品の中心軸を、破線は組み立て時に各部の対応する位置をそれぞれ示す基準線をそれぞれ示す。図4に示すように、各部品(コイル8、ボビン9、2つのスプリング10、ベース11)の中心軸を揃え、図2(b)のベース体1bは、例えば、2つのスプリング10、ボビン9、コイル8の順にそれぞれをベース11の上に配置していくことで組み立てられる。ただし、コイル8は、導電性部材で構成され、ボビン9の外周部9cに巻き付けて固定されている。そして、コイル8の一端は1つのスプリング10に接続され、コイル8の他端はもう一つのスプリング10に接続されている。つまり、2つのスプリング10は、コイル8を介して電気的に接続されている。なお、2つのスプリング10の端子10cは、ベース11の挿通孔11dに挿通されてベース11の下側に突出するように配置される。ベース体1bの組み立て方法は、具体的に、まず、ボビン9にコイル8、2つのスプリング10を順に取り付け、その後コイル8と2つのスプリング10とを半田で接合し、それらをベース11に取り付けることでベース体1bを得る。
【0022】
また、2つのスプリング10は、孔10aにボビンの突部93、94をそれぞれ挿入し、孔10bにベース11の突部11cをそれぞれ挿入して、ボビン9の水平方向の回転を保持しながら、ボビン9を主に下方に付勢している。なお、スプリング5は、4つの係止部51にボビン9の4つの係合部95を下から勘合させてボビン9の水平方向の回転を保持しながら、ボビン9を主に下方に付勢している。図3及び図4に示すように、スプリング5及び2つのスプリング10は、主に小型、軽量とするとともにボビン9を上下方向に付勢する目的から薄く構成されている。そのため、スプリング5及び2つのスプリング10は、ボビン9の傾きや水平方向の回転に対して構造的に非常に弱く、塑性変形し易い。
【0023】
ボビン9の突部9dは、ベース11の溝11bに上方から挿入されている。次に、ボビン9について詳細に説明する。
【0024】
図5は、ボビンを示す図である。図5(a)は、上方から見た平面図であり、図5(b)は、下方から見た底面図であり、図5(c)は、矢印Bの方向に見た矢視図であり、図5(d)は、図5(a)のC−Cの矢印の方向に見た断面図である。図5に示すように、ボビン9は、略円筒状の本体部9aを有し、コイル8を巻き付けて固定するための外周部9cと、本体部9aの内側にねじ切り部9fと、本体部9a下方に、2つの切り欠き部91、92と、2つの突部93、94と、開口部9eと、その開口部9eに沿って設けられた突部9dとで構成される。なお、ボビン9は、4つの突部9iが開口部9eの中心軸から最大距離となるように設けられている。突部9dは、一部で2つの係合部9bを形成している。図5(d)に示すように、突部9dの内壁9gは、開口部9eと段差を有しているが、この段差をなくして突部9dの内壁9gが開口部9eを形成してもよい。
【0025】
コイル8は、本体部9aの外周部9cに巻き付けて固定されるが、このとき、コイル8は、一端を切り欠き部91と一方のスプリング10の切り欠き部分10dとを介してその切り欠き部分10d付近の平面部に半田で接合され、他方を切り欠き部92ともう一方のスプリング10の切り欠き部分10dとを介してその切り欠き部分10d付近の平面部に半田で接合される。2つのスプリング10は、孔10aに突部93、94を挿入してボビンを主に下方に付勢するとともに、コイル8の端部と電気的に接続される。次にベース11について詳細に説明する。
【0026】
図6は、ベースを示す図である。図6(a)は、上方から見た平面図であり、図6(b)は、下方から見た底面図であり、図6(c)は、矢印Dの方向に見た矢視図であり、図6(d)は、図6(a)のE−Eの矢印の方向に見た断面図である。図6に示すように、ベース11は、ベース本体の中央部に円状の開口部11aと、ベース本体の上面に、開口部11aに沿って設けられた溝11bと、4つの突部11cと、スプリング10の端子10cを下方に突出させるための2つの挿通孔11dとで構成される。溝11bは、その内壁の一部で開口部11aの一部を形成するように構成されている。溝11bの開口部11a側に設けられた内壁11fは、段部11gと同じ高さでなくてもよく、開口部11aの上端11sに応じた高さとなっている。また、溝11bは、ベース11の上面から下方に向かって設けられ、一部で2つの係止部11eを形成している。
【0027】
図7は、ボビンの移動を説明する断面図である。図7(a)は、ボビンの移動前の状態を示す断面図であり、図7(b)は、ボビンの移動後の状態を示す断面図である。なお、図7(a)は、ボビン9の初期の状態を、図7(b)は、ボビン9が上方向に最大移動した状態をそれぞれ示す。また、図7は、図2(b)のベース体1bを、中心軸を通る垂直な面で切断した断面図である。具体的に、ボビン9は、主に図5(d)の断面を、ベース11は、主に図6(d)の断面をそれぞれ表しており、断面以外の細部やスプリング5、10等の他の構成は省略している。図7では、光は、矢印Sに示すように、上方からベース11の開口部11aを介して下方の図示しないフィルタや撮像素子に入射する。
【0028】
図7(a)に示すように、ベース体1bは、移動前において、ボビン9の突部9dの先端部がベース11の溝11bの底部に当接し、ボビン9の段部9hがベース11の段部11gに当接している。また、ボビン9の突部9dの内壁9gは、ベース11の溝11bの内壁11fに隙間(クリアランス)eを有して近接されている。なお、突部9dの先端部は、溝11bの底部に当接していなくてもよく、また、ボビン9の段部9hは、ベース11の段部11gに当接していなくてもよい。
【0029】
図7(b)に示すように、ベース体1bは、移動後において、ボビン9が上方向に最大移動量c移動しているが、溝11bの深さが最大移動量cよりも大きいため、ボビン9の突部9dはベース11の溝11bに一部を挿入している。なお、溝11bの内壁11fの高さfは、ボビン9の最大移動量cよりも大くなっている。ボビン9の突部9dの内壁9gは、ベース11の溝11bの内壁11fに隙間(クリアランス)eを有して近接されている。
【0030】
図7(a)及び図7(b)に示すように、ベース体1bは、ボビン9の移動前後及びボビン9の移動中において、ボビン9の内壁9gとベース11の内壁11fとの隙間eを所定の範囲内に維持することにより、ボビン9の傾きを所定の範囲内に抑えることができる。図7においては、当然ながらに、この隙間eが小さくなるほどボビン9の傾きも小さくすることができる。なお、隙間eは、ボビン9の4つの突部9iとベース11の内壁11hとで維持してもよい。
【0031】
また、ボビン9の内壁9gとベース11の内壁11fとを隙間eで近接させることにより、ヨーク体1aの上方から侵入するゴミやヨーク体1aの内部で発生するゴミ等の異物の移動が内壁9gと内壁11fとに遮られて、異物がベース11の開口部11aに侵入することを抑えることができる。
【0032】
隙間eは、具体的に、0よりも大きく、かつ、スプリング10の厚みTを2倍した値以下であると、良好な結果が得られることが判明している。具体的には、ボビン9の傾きを抑えてボビン9を移動させることができるため、カメラモジュールの性能の劣化やスプリングの変形を抑えることができ、さらに、ゴミ等の異物を内壁9gと内壁11fとの壁で遮ってベース11の開口部11aから侵入することを防止することができる。
【0033】
なお、実施形態のレンズ稼動装置は、小麦粉を用いてパウダー試験を行った結果、ベース11の開口部11aから侵入してセンサー面に付着する小麦粉の量を従来のレンズ稼動装置よりも大幅に軽減することができた。また、開口部11aがベース11の上方に向かって長く設けられている場合、すなわち、ボビン9の内壁9gの高さ及びベース11の内壁11fの高さを高くして内壁9gと内壁11fとの隣接できる面積を大きくすると、センサー面に付着する小麦粉の量が効果的に減少することも判明している。
【0034】
図9は、パウダー試験の結果の一例を示す図である。図9(a)は、従来のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面の写真を示す図であり、図9(b)は、実施形態のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面の写真を示す図である。パウダー試験は、試験機に粒径が50〜100[μm]の小麦粉をカメラモジュールのレンズの天面まで入れ、10〜150[Hz]で5分間の振動試験を実施した。なお、カメラモジュールは、比較のためにレンズ稼動装置だけが異なる、従来のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールと、実施形態のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールとの2種類を用いた。図9(a)に示すように、従来のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面SSは、小麦粉WFが大量に付着していることがわかる。それに比べて、図9(b)に示すように、実施形態のレンズ稼動装置を組み込んだカメラモジュールのセンサー面は、小麦粉WFの付着量が少なく、実施形態のレンズ稼動装置は、センサー面の小麦粉WFの付着量を大幅に抑えていることがわかる。
【0035】
図8は、ボビンの水平方向の回転を規制する機構を説明する図である。図8は、図2(b)のベース体1bを、上方から見た図であり、特に、ボビンの水平方向の回転を規制するための構成をわかり易くするために、主にボビン9の突部9dとベース11とを示す概略図である。図8に示すように、ベース体1bは、ボビン9の突部9dをベース11の溝11bに挿入して構成されている。このとき、ボビン9の係合部9bがベース11の係止部11eに勘合するように挿入され、ボビン9が光学系の光軸の周り、すなわち、水平方向に回転しようとすると、係合部9bと係止部11eとが係合することにより、ボビン9の水平方向の回転を規制している。この構成でボビン9の水平方向の回転を規制することにより、ボビン9を付勢するスプリング5、10の変形を抑えることができる。
【0036】
以上のように、実施形態のレンズ稼動装置は、ボビン9の突部9dをベース11の溝11bに挿入するとともに、突部9dの内壁9gと溝11bの内壁11fとの隙間eを所定の範囲内に維持することで、ボビン9の移動前後及び移動中の傾きを抑えることができる。さらに、ヨーク体1aの上方から侵入あるいは内部で発生するゴミ等の異物が、突部9dの内壁9gと溝11bの内壁11fとの壁に遮られてベース11の開口部11aに侵入することを抑えることができる。また、ボビン9の突部9dの係合部9bがベース11の溝11bの係止部11eに係合することにより、ボビン9の水平方向の回転を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るレンズ稼動装置は、VCMのアクチュエーターを搭載するカメラモジュールの信頼性を大きく向上させるものとして、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0038】
1 レンズ稼動装置
1a ヨーク体
1b ベース体
2 ヨーク
2a 開口部
3 カバー
4 プレート
5 スプリング
6 プレート
7 永久磁石
8 コイル
9 ボビン
9b 係合部
9d 突部
10 スプリング
11 ベース
11b 溝
11e 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を収容するレンズホルダー(9)と、
前記レンズホルダーを光軸方向に変位させるための駆動ユニット(7,8)と、
前記レンズホルダーを主に下方に付勢する第1のスプリング(5)と、
前記レンズホルダーを主に下方に付勢する第2のスプリング(10)と、
前記レンズホルダーを支持するベース(11)と、
前記ベース上に設けられ、
前記レンズホルダー、前記駆動ユニット及び第1及び第2のスプリングを
収容するヨーク(2)と、
を具備するレンズ稼動装置であって、
前記レンズホルダーは、コイルを巻き付けて固定するための本体部(9a)を有し、
前記駆動ユニットは、前記本体部に巻かれたコイル(8)と、
前記ヨーク側に設けられ前記コイルに磁界を提供するための永久磁石(7)とを含み、
前記ベースは、前記レンズユニットに入射した光を通過させるための開口部(11a)を有すると共に前記開口部の周囲に略円環状の溝(11b)が設けられ、
前記レンズホルダーは、前記駆動ユニットによる変位量にかかわらず常に一部又は全部を前記溝の内壁(11f)に隣接できる略円環状の突部(9d)を有する
ことを特徴とするレンズ稼動装置。
【請求項2】
前記開口部は係止部(11e)を有し、
他方、前記レンズホルダーは前記係止部に係合する係合部(9b)を有することにより、
前記レンズホルダーの水平回転を規制するための機構を具備する
ことを特徴とする請求項1記載のレンズ稼動装置。
【請求項3】
前記突部は、前記駆動ユニットによる前記レンズホルダーの変位量にかかわらず
常に前記溝の内壁との隙間(e)を所定値以内に維持する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレンズ稼動装置。
【請求項4】
前記隙間の値は、0よりも大きく、かつ、
前記第2のスプリングの厚み(T)を2倍した値以下である
ことを特徴とする請求項3記載のレンズ稼動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181384(P2012−181384A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44703(P2011−44703)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】