説明

レンズ駆動装置

【課題】装置内部へ塵埃が入り込むのを抑制することが可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と可動体を保持する固定体とを繋ぐ板バネ5を備えている。板バネ5は、可動体に固定される可動体固定部5aと、固定体に固定される固定体固定部5bと、可動体固定部5aと固定体固定部5bとを繋ぐ腕部5cとを備え、固定体は、駆動用磁石15および駆動用コイル16の外周側を覆うとともに光軸方向における一端面に固定体固定部5bが固定されるカバー部材10と、固定体固定部5bを覆うようにカバー部材10に固定される第2のカバー部材9と、カバー部材10と第2のカバー部材9との間に配置されるエストラマー製のシール部材13とを備えている。シール部材13は、光軸方向に圧縮された状態で、カバー部材10と第2のカバー部材9との間に挟まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置として、レンズを保持して光軸方向へ移動するレンズホルダと、レンズホルダを光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、レンズホルダを光軸方向へ駆動するための駆動用コイルおよび駆動用磁石を有する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、固定体は、固定体の反被写体側部分を構成するベース部材と、駆動用コイルおよび駆動用磁石の外周側を覆うヨークとを備えている。
【0003】
また、このレンズ駆動装置では、レンズホルダは、レンズホルダの被写体側に配置される上側板バネと、レンズホルダの反被写体側に配置される下側板バネとによって、光軸方向への移動が可能となるように固定体に支持されている。上側板バネは、ヨークの上面に固定される環状の外側固定部と、レンズホルダの上端部に固定される環状の内側固定部と、外側固定部と内側固定部とを繋ぐ3本の腕部とを備えている。また、固定体は、上側板バネの外側固定部を被写体側から覆うカバー部材を備えている。カバー部材は、ベース部材との間にヨークを挟んだ状態で、ベース部材に固定されている。上側板バネの上面とカバー部材との間には、上側板バネのバネ定数を調整するための調整板が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−217665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電話等に搭載されるカメラに使用されるレンズ駆動装置は、塵埃の比較的多い環境で使用されることもある。レンズ駆動装置の内部に塵埃が入り込むと、内部に入り込んだ塵埃の影響で、レンズ駆動装置が搭載されたカメラで撮影される画像の質が低下するおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、装置内部へ塵埃が入り込むのを防止するための対策は考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、装置内部へ塵埃が入り込むのを抑制することが可能なレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構と、可動体と固定体とを繋ぐ板バネとを備え、板バネは、可動体に固定される可動体固定部と、固定体に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、固定体は、駆動機構の外周側を覆うとともに光軸方向における一端面に固定体固定部が固定されるカバー部材と、固定体固定部を覆うように光軸方向における一端側でカバー部材に固定される第2のカバー部材と、カバー部材と第2のカバー部材との間に配置されるエストラマー製のシール部材とを備え、シール部材は、光軸方向に圧縮された状態で、カバー部材と第2のカバー部材との間に挟まれていることを特徴とする。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置では、駆動機構の外周側を覆うカバー部材の光軸方向における一端面に板バネの固定体固定部が固定され、光軸方向における一端側でカバー部材に固定される第2のカバー部材によって固定体固定部が覆われている。また、本発明では、カバー部材と第2のカバー部材との間に、光軸方向に圧縮された状態のエストラマー製のシール部材が挟まれている。そのため、板バネの固定体固定部を覆うように第2のカバー部材が設けられている場合であっても、シール部材によって、カバー部材と第2のカバー部材との間の隙間を埋めることが可能になる。したがって、本発明では、カバー部材と第2のカバー部材との間からレンズ駆動装置の内部へ塵埃が入り込むのを防止することが可能になり、その結果、レンズ駆動装置の内部へ塵埃が入り込むのを抑制することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、カバー部材と第2のカバー部材との間にエストラマー製のシール部材が配置されているため、レンズ駆動装置が落下する等の状況が生じて、第2のカバー部材に衝撃が加わっても、この衝撃をシール部材で緩和することが可能になる。したがって、本発明では、レンズ駆動装置の耐衝撃性を高めることが可能になる。また、本発明では、カバー部材と第2のカバー部材との間にエストラマー製のシール部材が配置されているため、可動体が光軸方向へ移動する際の振動をシール部材で吸収することが可能になる。したがって、本発明では、レンズ駆動装置が取り付けられるカメラの筺体の振動等を抑制することが可能になる。
【0010】
本発明において、カバー部材および第2のカバー部材は、金属材料で形成されており、第2のカバー部材は、光軸方向に略平行なカバー部材の側面の外側からカバー部材の側面に溶接で固定される被固定部を備えることが好ましい。このように構成すると、シール部材の圧縮量を変えることで、光軸方向において、カバー部材に対する第2のカバー部材の固定位置を調整することが可能になる。したがって、レンズ駆動装置を構成する部品にばらつきが生じても、光軸方向におけるレンズ駆動装置の寸法のばらつきを抑制して、光軸方向におけるレンズ駆動装置の寸法精度を高めることが可能になる。また、第2のカバー部材に形成される被固定部がカバー部材の側面の外側からカバー部材の側面に溶接で固定されるため、第2のカバー部材をカバー部材に溶接で固定する際に、光軸方向における第2のカバー部材の固定位置の調整が容易になる。
【0011】
本発明において、被固定部には、カバー部材の側面に向かって突出する凸部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、凸部を利用して、カバー部材の側面と被固定部とを密着させることが可能になる。したがって、カバー部材の側面と被固定部とを確実に溶接することが可能になり、カバー部材の側面と被固定部との固定強度を高めることが可能になる。
【0012】
本発明において、第2のカバー部材は、光軸方向へ立ち上るようにかつ環状に形成される外周壁部を備え、被固定部は、外周壁部に繋がるように形成され、シール部材は、環状に形成されるとともに外周壁部の内周側に配置され、被固定部の近傍では、シール部材と外周壁部との間に隙間が形成されていることが好ましい。このように構成すると、光軸方向に圧縮されて光軸方向に直交する方向へ広がったシール部材が、外周壁部の、被固定部の近傍部分を外周側へ押し広げるのを防止することが可能になる。したがって、カバー部材の側面と被固定部とを確実に密着させて、カバー部材の側面と被固定部とを確実に溶接することが可能になる。
【0013】
本発明において、固定体は、固定体固定部が固定される固定部材を備え、固定部材は、光軸方向におけるカバー部材の一端面との間に固定体固定部を挟んだ状態で、光軸方向におけるカバー部材の一端面に固定され、シール部材は、固定部材と第2のカバー部材との間に、かつ、固定部材と重なるように配置されていることが好ましい。このように構成すると、固定部材によって固定体固定部の強度を高めることが可能になる。したがって、カバー部材の一端面に固定体固定部を固定する前に、固定部材に固定体固定部を固定しておけば、カバー部材の一端面に固定体固定部を固定する際の固定体固定部の変形を防止することが可能になる。その結果、板バネのバネ特性を安定させることが可能になる。また、このように構成すると、シール部材が、固定部材と第2のカバー部材との間に、かつ、固定部材と重なるように配置されているため、カバー部材と第2のカバー部材との間に固定部材が設けられている場合であっても、シール部材によって、カバー部材と第2のカバー部材との間からレンズ駆動装置の内部へ塵埃が入り込むのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、レンズ駆動装置の内部へ塵埃が入り込むのを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の斜視図である。
【図2】図1のE−E断面の断面図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】図3に示す第2のカバー部材の筒部の内部にシール部材が配置された状態を反被写体側から示す図である。
【図5】図3に示すスリーブ、駆動用磁石および駆動用コイルの配置関係を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(レンズ駆動装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。図4は、図3に示すカバー部材9の筒部9bの内部にシール部材13が配置された状態を反被写体側から示す図である。図5は、図3に示すスリーブ8、駆動用磁石15および駆動用コイル16の配置関係を説明するための平面図である。
【0018】
なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、図1等のX1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0019】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。すなわち、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略四角形状となるように形成されている。本形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0020】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。なお、本形態では、上側は、光軸方向の一端側である。
【0021】
レンズ駆動装置1は、図1、図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。また、レンズ駆動装置1は、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6を備えている。すなわち、可動体2は、板バネ5、6を介して固定体3に移動可能に保持されている。本形態では、1個の板バネ5が可動体2の上端側に配置され、2個の板バネ6が可動体2の下端側に配置されている。
【0022】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の上端面を構成する第2のカバー部材としてのカバー部材9と、レンズ駆動装置1の4つの側面を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11と、板バネ5の一部が固定される固定部材としてのスペーサ12と、カバー部材9とカバー部材10との間に配置されるシール部材13と、後述の駆動用コイル16に電流を供給するための2個の給電用端子14とを備えている。なお、図2、図3では、レンズホルダ7の図示を省略している。
【0023】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7の内周側には、光軸方向から見たときの形状が略円形状となる複数のレンズが固定されている。
【0024】
スリーブ8は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略筒状に形成されている。具体的には、スリーブ8は、上下方向から見たときの内周面の形状が略円形状となり、上下方向から見たときの外周面の形状が略八角形状となる略筒状に形成されている。また、スリーブ8の下端側には、レンズ駆動装置1の四隅の方向へ突出する突出部8aが形成されており、上下方向から見たときのスリーブ8の下端側部分の形状は略正方形状となっている。このスリーブ8は、その内周側でレンズホルダ7を保持している。すなわち、スリーブ8の内周面にレンズホルダ7の外周面が固定されている。
【0025】
カバー部材10は、磁性材料で形成されるとともに、金属材料で形成されている。たとえば、カバー部材10は、磁性を有する鋼板によって形成されている。また、カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。上側に配置される底部10aの中心には、貫通孔10cが形成されている。筒部10bを構成する前後左右の4つの側面は、上下方向に略平行に配置されている。カバー部材10は、可動体2の上端側の一部を除く大半部分および駆動機構4の外周側を囲むように配置されている。
【0026】
筒部10bの左右の側面は、平面状に形成されている。一方、筒部10bの前後の側面には、前後方向の外側に向かって突出する突出部10dが形成されている。突出部10dは、筒部10bの前後の側面の、左右方向における中心位置に形成されている。
【0027】
カバー部材9は、金属材料で形成されている。たとえば、カバー部材9は、非磁性のステンレス鋼板で形成されている。また、カバー部材9は、底部9aと筒部9bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。筒部9bの上下方向の幅は、カバー部材10の筒部10bの上下方向の幅よりも狭くなっている。上側に配置される底部9aの中心には、貫通孔9cが形成されている。筒部9bを構成する前後左右の4つの側面は、上下方向に略平行に配置されている。本形態の筒部9bは、下方向へ立ち上るようにかつ環状に形成される外周壁部である。なお、カバー部材9は、磁性材料で形成されても良い。
【0028】
筒部9bの左右の側面は、平面状に形成されている。一方、筒部9bの前後の側面には、カバー部材10の筒部10bの形状に対応するように、前後方向の外側に向かって突出する突出部9eが形成されている。突出部9eは、筒部9bの前後の側面の、左右方向における中心位置に形成されている。
【0029】
カバー部材9は、板バネ5を構成する後述の固定体固定部5bを覆うようにカバー部材10の上端側に溶接によって固定されており、レンズ駆動装置1の上端側部分を構成するとともに、固定体3の上端側部分を構成している。また、カバー部材9は、可動体2の上端側の一部の外周側を囲むように配置されている。
【0030】
筒部9bには、溶接によってカバー部材10に固定される被固定部9dが形成されている。被固定部9dは、筒部9bの下端に繋がるように形成されている。また、被固定部9dは、左右方向における突出部9eの両側から(すなわち、筒部9bの前後の側面の左右両端側から)下方向へ突出するように形成されている。すなわち、被固定部9dは、4箇所に形成されている。また、被固定部9dは、略正方形状に形成されている。この被固定部9dは、前後方向において、カバー部材10の筒部10bの前後の側面の外側に配置されている。被固定部9dは、筒部10bの前後の側面の外側から筒部10bの前後の側面に溶接によって固定されている。
【0031】
筒部10bに溶接される前の被固定部9dには、前後方向の内側に向かって突出する凸部9fが形成されている。すなわち、筒部10bに溶接される前の被固定部9dには、筒部10bの前後の側面に向かって突出する凸部9fが形成されている。凸部9fは、被固定部9dの一部が前後方向の内側に向かって半抜き加工されることで形成されている。また、凸部9fは、前後方向から見たときの形状が略円形状となるように形成されている。
【0032】
筒部10bの前後の側面に被固定部9dを溶接する際に、筒部10bの前後の側面の外側に被固定部9dを配置すると、筒部10bの前後の側面に凸部9fが当接する。本形態では、被固定部9dの、凸部9fが形成された部分にレーザ光を照射することで、筒部10bの前後の側面に被固定部9dが溶接されて、固定される。すなわち、筒部10bと被固定部9dとの溶接後には、被固定部9dの、凸部9fが形成された部分およびその近傍で、筒部10bと被固定部9dとが繋がっており、被固定部9dの、凸部9fが形成された部分およびその近傍には、溶接跡が残っている。また、筒部10bと被固定部9dとの溶接後でも、凸部9fの一部が残ることがある。
【0033】
ベース部材11は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形となるブロック状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に固定されており、レンズ駆動装置1の下端側部分を構成するとともに、固定体3の下端側部分を構成している。ベース部材11の中心には、貫通孔11aが形成されている。
【0034】
板バネ5は、スリーブ8の上端側に固定される円環状の可動体固定部5aと、可動体固定部5aの外周側に配置され、スペーサ12およびカバー部材10に固定される略正方形の枠状の固定体固定部5bと、可動体固定部5aと固定体固定部5bとを繋ぐ4本の腕部5cとを備えている。この板バネ5は、可動体固定部5aおよび固定体固定部5bの厚さ方向と上下方向とが略一致するように、スリーブ8、カバー部材10およびスペーサ12に固定されている。
【0035】
板バネ6は、スリーブ8の下端側に固定される略半円弧状の可動体固定部6aと、可動体固定部6aの外周側に配置され、ベース部材11に固定される略三角形状の2個の固定体固定部6bと、可動体固定部6aと固定体固定部6bとを繋ぐ2本の腕部6cとを備えている。この板バネ6は、可動体固定部6aおよび固定体固定部6bの厚さ方向と上下方向とが略一致するように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。2個の板バネ6のそれぞれには、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル16の両端部のそれぞれが半田付け等されて固定されており、電気的に接続されている。
【0036】
スペーサ12は、金属材料で形成されるとともに、略正方形の枠状に形成されている。スペーサ12の上下方向の厚さは、板バネ5の厚さよりも厚くなっている。スペーサ12の下面には、板バネ5の固定体固定部5bの上面が固定されており、スペーサ12と固定体固定部5bとが重なっている。本形態では、上下方向から見たときのスペーサ12の形状が、上下方向から見たときの固定体固定部5bの形状と略同形状になっており、上下方向から見たときに、スペーサ12と固定体固定部5bとがほぼ完全に重なっている。また、本形態では、スペーサ12の下面に固定体固定部5bの上面が固定された後に、固定体固定部5bの下面がカバー部材10の底部10aの上面に接着等によって固定されている。すなわち、スペーサ12は、底部10aの上面との間に固定体固定部5bを挟んだ状態で、固定体固定部5bを介して底部10aの上面に固定されている。
【0037】
シール部材13は、ゴム状の弾性力を有する工業用材料であるエストラマーによって形成されている。たとえば、シール部材13は、衝撃吸収性および振動吸収性に優れた制振ゴムによって形成されている。また、シール部材13は、略正方形の枠状(環状)に形成されている。シール部材13は、カバー部材9の底部9aの下面に接着で固定されており、スペーサ12の上面と底部9aの下面との間に配置されている。すなわち、シール部材13は、カバー部材10の底部10aの上面とカバー部材9の底部9aの下面との間に配置されている。シール部材13は、上下方向から見たときにスペーサ12の全体を覆うように形成されている。本形態では、シール部材13は、スペーサ12と重なるように配置されており、スペーサ12の全体を上側から覆っている。
【0038】
また、シール部材13は、カバー部材9の筒部9bの内周側に配置されている。図4に示すように、シール部材13は、筒部9bの突出部9eの内側面にその外周端が当接し、かつ、筒部9bの左右の内側面とその外周端との間に隙間が形成されるように形成され、配置されている。また、シール部材13の四隅には、前後方向の外側へ突出する略円弧状の凸部13aが形成されており、前後方向における凸部13aの外側端は、筒部9bの前後の内側面に当接している。また、シール部材13の外周端の、突出部9eの内側面に当接する部分と凸部13aとの間の部分と、筒部9bの前後の内側面との間には、隙間Sが形成されている。この隙間Sは、被固定部9dが形成される箇所に対応するように形成されている。すなわち、被固定部9dの近傍では、シール部材13と筒部9bとの間に隙間Sが形成されている。
【0039】
上述のように、カバー部材9は、カバー部材10の上端側に溶接によって固定されている。本形態では、シール部材13は、スペーサ12とカバー部材9の底部9aとの間に上下方向に圧縮された状態で挟まれている。
【0040】
給電用端子14は、導電性を有する平板状の金属材料が折り曲げられて形成されている。この給電用端子14は、ベース部材11に固定されている。また、2個の給電用端子14のそれぞれには、2個の板バネ6のそれぞれが半田付け等されて固定されており、電気的に接続されている。
【0041】
駆動機構4は、レンズ駆動装置1の四隅(具体的には、カバー部材10の内側の四隅)に配置される略三角柱状の4個の駆動用磁石15と、スリーブ8に固定される1個の駆動用コイル16とを備えている。
【0042】
駆動用磁石15は、上下方向から見たときの形状が略直角三角形となるように形成されており、光軸Lに略平行でかつ互いに直交する矩形状の側面15a、15bを備えている。この駆動用磁石15は、カバー部材10の筒部10bの内周面と側面15a、15bとが略平行に、かつ、所定の隙間をあけて対向するように配置されている。また、4個の駆動用磁石15の上端面は、カバー部材10の底部10aに固定されている。
【0043】
駆動用磁石15の下端面には、磁性材料で形成された磁性部材17が固定されている。磁性部材17は、上下方向から見たときの形状が駆動用磁石15と同様の略直角三角形状となる平板状に形成されており、互いに直交する2個の端面17a、17bを備えている。この磁性部材17は、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように駆動用磁石15の下端面に固定されている。
【0044】
駆動用磁石15は、上端面の磁極と下端面の磁極とが異なるように、上下方向で2極に着磁されている。そのため、たとえば、レンズ駆動装置1では、カバー部材10の筒部10b、底部10a、駆動用磁石15および磁性部材17を通過するとともに、磁性部材17の下面や端面から筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界が形成されている。なお、駆動用磁石15の下端面と磁性部材17の上面との当接部分の近傍からも筒部10bの内周面に向かって磁界が回り込んでいる。
【0045】
駆動用コイル16は、上下方向から見たときの形状が略正方形状となるように扁平な略四角筒状に巻回されている。この駆動用コイル16は、スリーブ8の突出部8aの上面に固定されている。駆動用コイル16は、カバー部材10の筒部10bの内周面に沿うように配置されており、駆動用コイル16の四隅およびその近傍部分は、駆動用磁石15の側面15a、15bおよび磁性部材17の端面17a、17bとカバー部材10の筒部10bとの隙間に配置されている。
【0046】
また、駆動用コイル16の四隅およびその近傍部分は、磁性部材17の下面や端面17a、17bから筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界の中に配置されている。本形態では、可動体2の可動範囲において、駆動用コイル16の内周側に磁性部材17が常に配置されるように、駆動用コイル16が配置されている。駆動用コイル16に電流が供給されると、駆動用磁石15と駆動用コイル16との作用で、可動体2が上下方向(光軸方向)へ移動する。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カバー部材10の底部10aとカバー部材9の底部9aとの間に、上下方向に圧縮された状態のシール部材13が配置されている。そのため、板バネ5の固定体固定部5bを覆うようにカバー部材9が設けられている場合であっても、シール部材13によって、カバー部材9とカバー部材10との間の隙間を埋めることが可能になる。したがって、本形態では、カバー部材9とカバー部材10との間から(具体的には、筒部9bと筒部10bとの間から)レンズ駆動装置1の内部へ塵埃が入り込むのを防止することが可能になり、その結果、レンズ駆動装置1の内部へ塵埃が入り込むのを抑制することが可能になる。
【0048】
また、本形態では、カバー部材9とカバー部材10との間にエストラマー製のシール部材13が配置されているため、レンズ駆動装置1が落下する等の状況が生じて、カバー部材9に衝撃が加わっても、この衝撃をシール部材13で緩和することが可能になる。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1の耐衝撃性を高めることが可能になる。また、本形態では、カバー部材9とカバー部材10との間にエストラマー製のシール部材13が配置されているため、可動体2が上下方向へ移動する際の振動をシール部材13で吸収することが可能になる。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1が取り付けられるカメラの筺体の振動等を抑制することが可能になる。
【0049】
本形態では、カバー部材9の被固定部9dが、カバー部材10の筒部10bの前後の側面の外側から筒部10bの前後の側面に溶接によって固定されている。そのため、シール部材13の圧縮量を変えることで、上下方向において、カバー部材10に対するカバー部材9の固定位置を調整することが可能になる。具体的には、上下方向におけるレンズ駆動装置1の高さが略一定になるように、所定の治具を用いて、シール部材13の圧縮量を変えることで、カバー部材10に対するカバー部材9の固定位置を調整することが可能になる。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1を構成する部品にばらつきが生じても、上下方向におけるレンズ駆動装置1の寸法のばらつきを抑制して、上下方向におけるレンズ駆動装置1の寸法精度を高めることが可能になる。また、本形態では、筒部10bの前後の側面の外側から筒部10bの前後の側面に被固定部9dが溶接で固定されるため、カバー部材9をカバー部材10に溶接で固定する際に、上下方向におけるカバー部材9の固定位置の調整が容易になる。
【0050】
本形態では、筒部10bに溶接される前の被固定部9dに、筒部10bの前後の側面に向かって突出する凸部9fが形成されている。そのため、凸部9fを利用して、筒部10bの前後の側面と被固定部9dとを密着させることが可能になる。したがって、本形態では、筒部10bの前後の側面と被固定部9dとを確実に溶接することが可能になり、筒部10bの前後の側面と被固定部9dとの固定強度を高めることが可能になる。
【0051】
本形態では、被固定部9dの近傍において、シール部材13と筒部9bとの間に隙間Sが形成されている。そのため、上下方向に圧縮されて前後方向へ広がったシール部材13が、筒部9bの、被固定部9dの近傍部分を外周側へ押し広げるのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、筒部9bの下端に繋がる被固定部9dと筒部10bの前後の側面とを確実に密着させて、筒部10bの前後の側面と被固定部9dとを確実に溶接することが可能になる。また、本形態では、シール部材13の四隅に凸部13aが形成されており、前後方向における凸部13aの外側端が筒部9bの前後の内側面に当接しているため、被固定部9dの近傍において、シール部材13と筒部9bとの間に隙間Sが形成されていても、カバー部材9に対するシール部材13の位置ずれを防止することが可能になる。
【0052】
本形態では、板バネ5よりも厚い金属製のスペーサ12に固定体固定部5bが固定された後に、固定体固定部5bがカバー部材10の底部10aに固定されている。そのため、スペーサ12に固定されていない状態の固定体固定部5bが底部10aに固定される場合と比較して、底部10aに固定体固定部5bを固定する際の固定体固定部5bの変形を防止することが可能になる。したがって、本形態では、板バネ5のバネ特性を安定させることが可能になる。
【0053】
本形態では、シール部材13は、スペーサ12と重なるように配置されている。そのため、カバー部材9とカバー部材10との間にスペーサ12が設けられていても、シール部材13によって、カバー部材9とカバー部材10との間からレンズ駆動装置1の内部へ塵埃が入り込むのを防止することが可能になる。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0055】
上述した形態では、筒部10bに溶接される前の被固定部9dに凸部9fが形成されているが、筒部10bに溶接される前の被固定部9dに凸部9fが形成されていなくても良い。この場合には、たとえば、被固定部9dの下端面と筒部10bの前後の側面との接触部分にレーザ光を照射することで、筒部10bの前後の側面に被固定部9dが溶接されて、固定される。ただし、この場合には、被固定部9dの下端面でレーザ光が反射して、たとえば、反射したレーザ光がベース部材11に照射されるおそれがある。樹脂製のベース部材11にレーザ光が照射されると、ベース部材11が溶けるおそれがある。そのため、筒部10bに溶接される前の被固定部9dには、凸部9fが形成されていることが好ましい。
【0056】
上述した形態では、筒部9bに被固定部9dが形成されているが、筒部9bに被固定部9dが形成されていなくても良い。この場合には、たとえば、カバー部材10の底部10aの上面に当接する当接部をカバー部材9に形成して、この当接部に上側からレーザ光を照射することで、溶接によって、カバー部材10にカバー部材9を固定しても良い。なお、この場合には、上下方向において、カバー部材10に対するカバー部材9の固定位置を調整することが困難になるため、筒部9bに被固定部9dが形成されていることが好ましい。
【0057】
上述した形態では、スペーサ12の下面に固定体固定部5bの上面が固定された後に、固定体固定部5bの下面がカバー部材10の底部10aの上面に接着等によって固定されている。この他にもたとえば、上下方向から見たときに、スペーサ12が固定体固定部5bよりも大きく形成されているのであれば、スペーサ12の下面に固定体固定部5bの上面が固定された後に、スペーサ12の下面が底部10aの上面に固定されても良い。すなわち、固定体固定部5bは、スペーサ12を介して底部10aに固定されても良い。このときには、スペーサ12の下面は、接着によって底部10aに固定されても良いが、溶接によって底部10aに固定される。すなわち、このときには、溶接によってスペーサ12が底部10aに接合されることで、固定体固定部5bは、スペーサ12を介して底部10aに固定される。また、固定体固定部5bとシール部材13との間にスペーサ12が配置されていなくても良い。また、上述した形態では、カバー部材9とシール部材13とが別体で形成されているが、カバー部材9とシール部材13とが一体で形成されても良い。
【0058】
上述した形態では、駆動機構4は、略三角柱状に形成されレンズ駆動装置1の四隅に配置される駆動用磁石15と、略四角筒状に巻回されて形成され駆動用磁石15の外周側に配置される駆動用コイル16とを備えている。この他にもたとえば、駆動機構4は、スリーブ8の外周側に巻回される駆動用コイルと、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置され駆動用コイルの外周面に対向する駆動用磁石とを備えていても良い。また、駆動機構4は、スリーブ8の外周側に巻回される駆動用コイルと、レンズ駆動装置1の四隅に配置され駆動用コイルの外周面に対向する駆動用磁石とを備えていても良い。
【0059】
上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良い。また、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略六角形状等の多角形状となるように形成されても良いし、光軸方向から見たときの形状が円形状や楕円形状となるように形成されても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 レンズ駆動装置
2 可動体
3 固定体
4 駆動機構
5 板バネ
5a 可動体固定部
5b 固定体固定部
5c 腕部
9 カバー部材(第2のカバー部材)
9b 筒部(外周壁部)
9d 被固定部
9f 凸部
10 カバー部材
12 スペーサ(固定部材)
13 シール部材
L 光軸
S 隙間
Z 光軸方向
Z1 光軸方向の一端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体を前記光軸方向へ駆動する駆動機構と、前記可動体と前記固定体とを繋ぐ板バネとを備え、
前記板バネは、前記可動体に固定される可動体固定部と、前記固定体に固定される固定体固定部と、前記可動体固定部と前記固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、
前記固定体は、前記駆動機構の外周側を覆うとともに前記光軸方向における一端面に前記固定体固定部が固定されるカバー部材と、前記固定体固定部を覆うように前記光軸方向における一端側で前記カバー部材に固定される第2のカバー部材と、前記カバー部材と前記第2のカバー部材との間に配置されるエストラマー製のシール部材とを備え、
前記シール部材は、前記光軸方向に圧縮された状態で、前記カバー部材と前記第2のカバー部材との間に挟まれていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記カバー部材および前記第2のカバー部材は、金属材料で形成されており、
前記第2のカバー部材は、前記光軸方向に略平行な前記カバー部材の側面の外側から前記カバー部材の側面に溶接で固定される被固定部を備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記被固定部には、前記カバー部材の側面に向かって突出する凸部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記第2のカバー部材は、前記光軸方向へ立ち上るようにかつ環状に形成される外周壁部を備え、
前記被固定部は、前記外周壁部に繋がるように形成され、
前記シール部材は、環状に形成されるとともに前記外周壁部の内周側に配置され、
前記被固定部の近傍では、前記シール部材と前記外周壁部との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記固定体は、前記固定体固定部が固定される固定部材を備え、
前記固定部材は、前記光軸方向における前記カバー部材の一端面との間に前記固定体固定部を挟んだ状態で、前記光軸方向における前記カバー部材の一端面に固定され、
前記シール部材は、前記固定部材と前記第2のカバー部材との間に、かつ、前記固定部材と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92578(P2013−92578A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233232(P2011−233232)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】