説明

レーザビーム角度計測方法及び装置並びに光中継方法及び光中継装置

【課題】光の入射角度を計測する。これを応用して光中継する。
【解決手段】レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し凸レンズにより集光されたレーザビーム光が平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置を備える。二次元位置検出装置の前方にレーザビーム光の広がりを制限して進行させる遮光孔を備えた遮光板を位置させた状態で、レーザビーム光を通過孔に通過させる。凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出する。当該検出した角度が所定の角度内のときにレーザ発振器を発振させて、光路を中継する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射するレーザビーム光の曲がり角度を計測する方法及び光路中に光発振器を備えて中継する中継器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水管あるいは通信ケーブルを地下に敷設するため設置する場所の地上の状況、例えば、コストダウンの観点で地上とのアクセス孔である立坑を減らしたい、川の下で立坑を掘れない場合などから一回に推進する孔の距離を長くしたいとの要望がある。
例えば、通信ケーブルを地下に敷設する場合、300mm〜600mm程度の小口径の管路内に配線する。管路を配設するには図6の側面図のように発進立坑601側から到達立坑602側までの計画線に沿って先導体603で掘削し、その孔に一定長さの推進管を計画線の始めから順次つなげるように推していく。このとき、管路が計画線からずれないように、計画線からのずれを測定しながら推進管を推す方向を決めている。なお、604はレーザ発振器、605は基準プリズムユニット、606は中間プリズムユニット、607はレーザ光線、608は地表である。
【0003】
図7(a)は、計画線からのずれを測定する方法を示し、光学式プリズム計測システムを示す。図7(a)において、701は管路、702は管路701の発進立坑側に配置したレーザ発振器、703は管路701の発進立坑側に設けた基準プリズムユニット、704は管路701に沿って配設された一定長さの推進管、705は推進管704の1つ所定位置に設置された中間プリズムユニット、706は先端部に掘削機を備えた先導体、707は先導体706の掘削機の設置とは反対方向の面の受光部、708はこの計測システムを制御する制御部である。基準プリズムユニット605、中間プリズムユニット705及び先導体706は制御部708に接続し、信号の授受、機構部の制御等を受ける。
受光部707の上下左右の4個所例えば正四角形の各頂点位置に設けられる光電センサ707aが設けられ、この例を図7(b)に示す。
この明細書において、基準プリズムユニット703と中間プリズムユニット705とを総称してプリズムユニットということがある。これらプリズムユニットは、図8(a)の断面図のように、回転自在に設けられた一対のウェッジプリズム801a,801bと、この一対のウェッジプリズムそれぞれを個別に回転する一対の駆動手段802a,802bと、一対のウェッジプリズムそれぞれの回転角を検出する一対の角度検出手段803a,803bと、光電センサ804を備える。光電センサ804は、図8(b)の側面図に示すように、ケース808の発振立坑側の面上の透過窓809の周囲上下左右4個所例えば正四角形の各頂点位置に設けられる。なお、基準プリズムユニット703に光電センサ804を備える必要はない。
各ウェッジプリズムの一方の面805a,805bと直角な軸806を中心に回転するように一対のウェッジプリズムを配置し、それぞれの傾斜面807a,807bのそれそれが平行にあるときにプリズムユニット705に入射する光と出る光とは平行となる。図7には一例としてウェッジプリズムの傾斜面807a、807bが対面する構成を示しているが、直角面805a、805bが対面する構成でも機能は変わらない。プリズムユニットに入射した光は各ウェッジプリズムの相対的な回転角に応じて軸806に対し所定の角度で屈折して透過窓810を通過する。
【0004】
図7、図8において、先導体706が管路701をある程度掘削して進み、その後に推進管704を接続している。中間プリズムユニット705を一定間隔で推進管704a内の所定位置に配置する。
レーザ発振器702からのレーザ光702aは、中間プリズムユニット705の光電センサ804で検知できるように、基準プリズムユニット703の一対のウェッジプリズムを回転させ、さらに中間プリズムユニット705を通過したレーザ光702aが先導体706の受光部707で検知できるように、中間プリズムユニット705の一対のウェッジプリズム801a,801bを回転させる。このときの基準プリズムユニット703と中間プリズムユニット705との回転角からレーザ光の屈折角θ1,θ2を知ることができる。この角度θ1,θ2と距離L1,L2とから、先導体706の計画線からのずれを算定し、その位置を計算する。なお、L1は基準プリズムユニット703の一対のウェッジプリズムの中間部から中間プリズムユニット705の一対のウェッジプリズムの中間部までの距離、L2は中間プリズムユニット705から先導体706の受光面707までの距離である。
【0005】
このような光学式プリズム計測システムによると、地中深くに敷設する場合でも、ウェッジプリズムの回転角を計測することで精密に光の屈折角を制御でき、位置を高精度に計測することができる。
しかしながら、レーザ光を用いているもののレーザ発振器702から先導体706までの距離が現状の150m程度から300m以上になると拡散・減衰してしまい150m程度が実用限度で精度よく計測できないものとなっていた。
また、このためレーザの角度情報を中継してさらに伸ばす手段(レーザ中継器)が必要となる。レーザ中継器として前後双方向にビームを出すレーザ発振管を用いた手段があるが、この手段では使用する双方向出力レーザという特殊なレーザの入手が困難であるという難点があった。
【特許文献1】特許第3600763号公報
【特許文献2】特許第3663322号公報
【特許文献3】特開2002−090142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、より簡単に実現するものとして、発進立坑に設置されたレーザビームに対する2軸の角度計測手段として半導体レーザを一体に納めた光中継器を検討した。このレーザを用いた光中継器には機能として、発進立坑に設置されたレーザトランシットに対する中継器自体の2軸の角度を高精度に検出するとともに、指向安定度の高いレーザを発振することが要求される。この2軸角度検出装置としては円形状の孔を通して2軸のPSD(Position Sensing Device:光センサが平面上に配列し、光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置)に当てて位置を検出する方法を検討した。これは、構造が簡単であるが、PSDセンサ面の大きさを、前記円形状の孔の直径に検出角度に相当するビームのセンサ上の移動量を加えた大きさ以上とする必要がある。小さいPSDセンサが使えるように孔を小さくすると、光の利用効率が低下する。
【0007】
発明が解決しようとする課題は、より小さい二次元位置検出装置を用いて光の入射角度を計測する方法及び装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、より小さい二次元位置検出装置を用いて光の入射角度を計測する方法を応用した光中継方法を提供し、また、その光中継器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に係るレーザビーム角度計測方法は、レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置を備え、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出するレーザビーム角度計測方法であって、前記二次元位置検出装置の前方にレーザビーム光の広がりを制限して進行させる通過孔を備えた遮光板を位置させた状態で、レーザビーム光を通過孔に通過させる過程と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出する過程からなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係るレーザビーム角度計測装置は、レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を算出するレーザビーム角度算出手段と、前記二次元位置検出装置へのレーザビーム光の広がりを制限して進行させる通過孔を備えた遮光板とからなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係る光中継方法は、レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置を備え、前記二次元位置検出装置の前方にレーザビーム光の広がりを制限して進行させる遮光孔を備えた遮光板を位置させた状態で、レーザビーム光を通過孔に通過させる過程と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出する過程と、当該検出した角度が所定の角度内のときにレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とする過程とにより光路を中継することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に係る光中継器は、外部からのレーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を算出するレーザビーム角度算出手段と、前記二次元位置検出装置へのレーザビーム光の広がりを制限して進行させる遮光孔を備えた遮光板と、前記二次元位置検出装置の所定の位置へのレーザビーム光の入射により発振するか、または発振しているレーザ光を使用可とするようにしたレーザ発振器とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係るレーザビーム角度計測方法によると、レーザビーム光を凸レンズで集光して二次元位置検出装置に入射させる際に、レーザビーム光の広がりを遮光板の通過孔により制限し、二次元位置検出装置に入射させて前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出するものであるが、凸レンズによりレーザビーム光を二次元位置検出装置に集光するから、小さい二次元位置検出装置を使えることができ、遮光板の通過光を通すからレーザビームの広がり制限され、空気の擾乱によりビームスポットの揺れ及びビーム外周部の干渉縞、散乱などによるビーム外周部の変形による重心計算の誤差を減らすことができる。
【0014】
請求項2に係るレーザビーム角度計測装置によると、レーザビーム光を凸レンズで集光して二次元位置検出装置に入射させる際に、レーザビーム光の広がりを遮光板の通過孔により制限し、二次元位置検出装置に入射させて前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出するものであるが、凸レンズによりレーザビーム光を二次元位置検出装置に集光するから、小さい二次元位置検出装置を使えることができ、遮光板の通過光を通すからレーザビームの広がりが制限され、空気の擾乱によりビームスポットの揺れ及びビーム外周部の干渉縞、散乱などによるビーム外周部の変形による重心計算の誤差を減らすことができる。
【0015】
請求項3に係る光中継方法によると、レーザビーム光を凸レンズで集光して二次元位置検出装置に入射させる際に、レーザビーム光の広がりを遮光板の通過孔により制限し、二次元位置検出装置に入射させて前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出し、検出した角度が所定の角度内のときにレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とさせるものであるが、凸レンズによりレーザビーム光を二次元位置検出装置に集光するから、小さい二次元位置検出装置を使えることができ、遮光板の通過光を通すからレーザビームの広がり制限され、空気の擾乱によるビームスポットの揺れ及びビーム外周部の干渉縞、散乱などによるビーム外周部の変形による重心計算の誤差を減らすことができ、正確な所定角度においてレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とすることができ、レーザビーム光を中継することができる。
【0016】
請求項4に係る光中継器によると、レーザビーム光を凸レンズで集光して二次元位置検出装置に入射させる際に、レーザビーム光の広がりを遮光板の通過孔により制限し、二次元位置検出装置に入射させて前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出し、検出した角度が所定の角度内のときにレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とさせるものであるが、凸レンズによりレーザビーム光を二次元位置検出装置に集光するから、小さい二次元位置検出装置を使えることができ、遮光板の通過光を通すからレーザビームの広がり制限され、空気の擾乱によるビームスポットの揺れ及びビーム外周部の干渉縞、散乱などによるビーム外周部の変形による重心計算の誤差を減らすことができ、正確な所定角度においてレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とさせることができ、レーザビーム光を中継することができる。
【実施例1】
【0017】
図1は、レーザビーム角度計測装置を適用した光中継器の一実施例の構成を示す図である。図2はレーザビーム角度計測方法を用いた光中継方法を説明するフロー図である。
図1において、100は光中継器、101は例えば筒状に形成したケース、103は凸レンズ、104は二次元位置検出装置、105はレーザ発振器、106は遮光板、106aは遮光板106に形成した通過孔、107はプリズムユニット、107a,107bはプリズムユニット107を構成する一対のウェッジプリズム、109a,109bは一対のウェッジプリズム107a,107bを回転駆動する駆動手段、111a,111bは、例えばロータリエンコーダで構成し、一対のウェッジプリズム107a,107bの回転角を検出する角度検出手段、112は光電センサ、113a,113bは防塵窓、114は傾斜計、115は制御部、116は基準軸である。また、140は、光中継器100の外部に位置し、発進立坑側にある後方の中間プリズムユニット、150は到達立坑側にある前方の中間プリズムユニットであり、図8に示したプリズムユニットと同様のものである。
レーザビーム角度計測装置は、ケース101、凸レンズ103、二次元位置検出装置104、遮光板106、通過孔106a及び制御部115からなり、必要により防塵窓113a,113bを備える。
二次元位置検出装置104は、光センサを平面上に配列した装置であり、光が照射されたときその光スポットの重心に二次元位置に応じて出力することにより、その重心位置を知ることができる。
レーザ発振器105は、前記二次元位置検出装置104が凸レンズ103からのレーザビーム光を受けて、その重心が所定の位置を照射したとき、これを検知した制御部114の制御により、当該レーザ発振器105自身から新たにレーザ光を発振するか、または発振しているレーザ光を使用可とする。
遮光板106は、凸レンズ103の前方に位置してレーザビーム光の広がりを制限して凸レンズ103に入射させ、二次元位置検出装置104に進行させる通過孔106aを備える。
プリズムユニット107が備える一対のウェッジプリズム107a,107bは、共通する軸を基準軸116として、その基準軸116を中心に回転自在に設けられ、この基準軸116は凸レンズ103の光軸と一致するとともに、二次元位置検出装置104のセンサ平面が凸レンズほぼ直角に位置し、レーザ発振器105のレーザ発光部とを結ぶ線とも一致する。凸レンズ103と二次元位置検出装置104とは距離Lの間隔で配置される。遮光板106の通過光106aは基準軸116が通過するように形成する。レーザ発振器105が発振するレーザ光は前記基準軸116方向に発光する。
初期状態では、一対のウェッジプリズム107a,107bの2つのプリズムは、それらの一番厚い個所と一番薄い個所とを結ぶ線が水平となる位置としてこれをウェッジプリズムの基準位置とする。このとき、基準軸116に平行な光は屈折なしに基準軸116に平行な光が射出する。
傾斜計114は、ケース101の長さ方向をX軸、水平方向をY軸、下向きをZ軸とすると、X軸回りのローリングを計測する。ローリングは一対のウェッジプリズム107a,107bを回転させることとなり、屈折角に影響し、その補正のためにローリングによる傾斜角を計測する。
制御部115は、当該光中継器100の外部にあって、二次元位置検出装置104、角度検出手段111、光電センサ112及び傾斜計114の信号を受けて、駆動手段109及びレーザ発振器105を制御するとともに、計測計算をする。
【0018】
図示しない推進管をつなげながら図示しない先導体で管路内をある程度屈折して進んだところ、先導体に続く一定長さの推進管の数により管路の長さが、300m以下の適当な長さになると、光中継器100を搭載した推進管を管路に進入させる。発進立坑側に配置したレーザ発振器(図示しない)からのレーザ光は、中継器後方のプリズムユニット140により防塵窓113aのほぼ中心に当たるように制御されて光中継器100の基準軸116に沿って入射するから遮光板106の通過孔106aを通過して(図2のステップP101)から、凸レンズ103により集光されて、二次元位置検出装置104に照射される。
二次元位置検出装置104はその面に仮定されるX,Y軸の原点が基準軸116(二次元位置検出装置104の面に直交する)を通るようにする。レーザビーム光が二次元位置検出装置104の面を照射すると、照射面を検出し、その重心の二次元位置を検出する。制御部115では凸レンズ103までの距離Lと二次元位置検出装置104が測定したレーザビーム光のスポット重心の二次元位置とからレーザビーム光が二次元位置検出装置104に照射した角度θを検出する(図2のステップP102)。すなわち、二次元位置検出装置104の面に照射されるレーザビーム光のスポット重心の二次元位置を(x,y)として、それにより定まる原点からの距離をd(x,y)とすると、
θ=tan−1(d/L)
で求められる(図3)。
このとき、二次元位置検出装置104の面に照射されるレーザビームは、前述のように、遮光板106の通過孔106aを通過している。凸レンズ103によりビームを1点近くに集光することにより、空気の擾乱によるビームスポットのゆれ及びビーム外周部の干渉縞、散乱などによるビーム外周部の変形による重心計算の誤差を減らすことができる。また、凸レンズ103により二次元位置検出装置104の面上に集光させたレーザビームが凸レンズ103の収差により1点にはならず、わずかに残る光のむらにより、重心計算時に誤差となるのを減らすため、レーザビームの中心付近を使えるように凸レンズ103の入射側の前にレーザビームの直径より小さい円形状の孔すなわち通過孔106a(レーザ光の波長635nm程度で3〜5mm程度)を開けた遮光板106を入れてある。この遮光板106、通過孔106aによる減衰については、レーザビームの光強度はビーム中心から2次元のガウス分布状になっており、中心部が残るようにすれば強度としては二次元位置検出装置104での検出は可能である。
制御部115は、二次元位置検出装置104の出力がその面に照射した角度θが所定の範囲例えばθ=0±ε(εは所定の範囲)のときにレーザ発振器105を発振させるか、予め安定時間が必要なため発振させておいたレーザ発振器使用可の信号を出す。(図2のステップP103)。そのレーザ光はプリズムユニット107の一対のウェッジプリズム107a,107b及び防塵窓113bを通過して、光中継器100から射出する。射出されるレーザ光は、到達立坑側の図示しない先導体又はプリズムユニットに入射するように、プリズムユニット107の一対のウェッジプリズム107a,107bのそれぞれを駆動手段109a,109bにより回転してレーザ光の屈折角が変化するように制御される。この制御は、所定の方向に屈折角が変化するように振らせ、先導体の受光部(図7の受光部707に相当する。)又は前方の中間プリズムユニット150の光電センサ(図8の光電センサ804に相当する。)の何れの位置の受光部によって検出されたかと、レーザ光をどのような方向に振ったか、どの角度で検出されたかによって、レーザ光を向ける対象物である先導体又は前方の中間プリズムユニット150の中央部分からずれの角度を算定することにより行い、レーザ発振器105からのレーザ光が対象物に向かうように駆動手段109a,109bによりプリズムユニット107の一対のウェッジプリズム107a,107bの回転角度を調整する。
【0019】
さらに、推進管をつなげながら先導体で管路内をある程度屈折して進んだところ、発進立坑側に後方の中間プリズムユニット140が配置される。後方の中間プリズムユニット140は、発進立坑側に設けた基準プリズムユニットを介して発進立坑からのレーザ光を屈折させ、図示しない駆動手段により一対のウェッジプリズムを回転し、屈折光の屈折角度を変えて、このレーザ光を振らして光中継器100の光電センサ112により検出させる。プリズムユニット140の制御部(図示せず)は所定の方向に屈折角が変化するように振らせ、4つの光電センサ112について、何れの位置の光電センサ112によって検出されたかと、レーザ光をどのような方向に振ったか、どの角度で検出されたかによって、光中継器100の防塵窓113aのほぼ中央にレーザ光が当たるように調整する。このとき、傾斜計114の測定値が0すなわち光中継器100が備えた一対のウェッジプリズム107a,107bの基準位置が水平面に一致している場合は、補正の必要はない。傾斜計114による傾斜角が測定される場合は、光中継器100のプリズムユニット107の中央部分からずれの角度を算定する際にこの傾きを考慮して補正する。例えば、図4(a)のように、光中継器100が水平面に対して傾きがない場合、光中継器100の防塵窓113aの上部の光電センサ112aで検出されたとき、その下方の所定の距離が光中継器100の防塵窓113aの中央部分であるが、図4(b)のように、ψだけ傾いている場合に光中継器100の防塵窓113aの中央部分は図において左下へψだけ傾いた方向の所定の距離の位置にあるものとして補正する。これらの結果、後方の中間プリズムユニット140からの射出光の入射角θ1が測定される。
レーザ発振器105は、二次元位置検出装置104が凸レンズ103からの光を受けて、新たなレーザ光を発振して、光路を中継することとなる。このレーザ光は前述のように、プリズムユニット107の一対のウェッジプリズム107a,107b及び防塵窓113bを通過して、光中継器100から射出する。射出されるレーザ光は、前述したように、到達立坑側の図示しない先導体又はプリズムユニットに入射するように、プリズムユニット107の一対のウェッジプリズム107a,107bのそれぞれを駆動手段109a,109bにより回転してレーザ光の屈折角が変化するように制御される。この結果、プリズムユニット107すなわち光中継器100からの射出光の屈折角をθ2が測定される。
推進管の長さは、一定のものを用いているからそれらが配設されている管路の長さLは既知であり、基準プリズムユニット、各中間プリズムユニット140,150等、及び光中継器100のプリズムユニット107により屈折角θ2を得る。長さLと屈折角θ2により計画線からのずれを計算することができる。また、本発明による光中継器100を必要数用いることにより長い距離においても精度よく計画線からのずれを測定することができる。例えば、図5のように、501を計画線、502をレーザ光線として、後方の中間プリズムユニット140から光中継器100までの計画線上の距離をL1、後方の中間プリズムユニット140における射出光に対する光中継器100への入射角度θ1、光中継器100から前方の中間プリズムユニット150間での計画線上の距離をL2、光中継器100のプリズムユニットにおける射出光の屈折角がθ2であると、後方の中間プリズムユニット140から光中継器100までのずれx1は、
x1=L1tanθ1
となり、光中継器100から前方の中間プリズムユニットまでのずれx2は、
x2=L2tanθ2
となり、後方の中間プリズムユニット140から前方の中間プリズムユニットまでの計画線上からのずれxは、
x=x1+x2
となる。
【0020】
また、プリズムユニットが進む距離を測定することにより、任意の位置間の距離を測定することができる。
【0021】
光中継器は、その設置された場所において、光中継器と先導体との距離を発進立坑に設置されたレーザトランシットと光中継器との距離と同等の距離(例えば、150m)とするため角度基準としての精度はレーザトランシット相当の2軸の角度検出精度プラスマイナス0.01°以内である要望が実現できる。
【0022】
図1では、遮光板106は、凸レンズ103の前方に位置したものを示した。遮光板106は、凸レンズ103の後方に位置させても、レーザビーム光の広がりを制限して、二次元位置検出装置104に進行させた通過孔106aを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーザビーム角度計測装置を適用した光中継器の一実施例の構成を示す図である。
【図2】レーザビーム角度計測方法を用いた光中継方法を説明するフロー図である。
【図3】レーザビーム角度計測の計算を説明する図である。
【図4】光路制御中継器の傾きによる影響を説明する図である。
【図5】計画線からのずれを説明する図である。
【図6】地下管路工法を説明する図である。
【図7】光路の曲がり測定するシステムを説明する図である。
【図8】プリズムユニットの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0024】
100…光中継器、101…ケース、103…凸レンズ、104…二次元位置検出装置、105…レーザ発振器、106…遮光板、106a…通過孔、107…プリズムユニット、107a,107b…ウェッジプリズム、109a,109b…駆動手段、111a,111b…角度検出手段、112…光電センサ、113a,113b…防塵窓、114…傾斜計、115…制御部、116…基準軸、140…中間プリズムユニット、150…中間プリズムユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置を備え、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出するレーザビーム角度計測方法であって、前記二次元位置検出装置の前方にレーザビーム光の広がりを制限して進行させる通過孔を備えた遮光板を位置させた状態で、レーザビーム光を通過孔に通過させる過程と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出する過程からなることを特徴とするレーザビーム角度計測方法。
【請求項2】
レーザビーム光を集光する凸レンズと、
光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置と、
前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を算出するレーザビーム角度算出手段と、
前記二次元位置検出装置へのレーザビーム光の広がりを制限して進行させる通過孔を備えた遮光板とからなることを特徴とするレーザビーム角度計測装置。
【請求項3】
レーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置を備え、前記二次元位置検出装置の前方にレーザビーム光の広がりを制限して進行させる遮光孔を備えた遮光板を位置させた状態で、レーザビーム光を通過孔に通過させる過程と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を検出する過程と、当該検出した角度が所定の角度内のときにレーザ発振器を発振させるか、または発振しているレーザ光を使用可とするようにした過程とにより光路を中継することを特徴とする光中継方法。
【請求項4】
外部からのレーザビーム光を集光する凸レンズと、光センサが前記凸レンズの光軸とほぼ直角の平面上に配列し前記凸レンズにより集光されたレーザビーム光が前記平面上に照射した重心の二次元位置に応じて出力する二次元位置検出装置と、前記凸レンズ及び二次元位置検出装置間の距離と前記二次元位置検出装置の出力とによりレーザビーム光が二次元位置検出装置に照射した角度を算出するレーザビーム角度算出手段と、
前記二次元位置検出装置へのレーザビーム光の広がりを制限して進行させる遮光孔を備えた遮光板と、
前記二次元位置検出装置の所定の位置へのレーザビーム光の入射により発振するか、または発振しているレーザ光を使用可とするようにしたレーザ発振器とを備えたことを特徴とする光中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−256573(P2008−256573A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100041(P2007−100041)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(595158762)株式会社アトム技研 (8)
【Fターム(参考)】