説明

レーザーポインタを用いたトンネル内照明器具取付角度の精度向上による路面輝度の管理方法

【課題】トンネル内照明器具の取付角度の精度向上と角度調整作業の簡易化を実現する角度調整方法を提供すること。
【解決手段】レーザーポインタを照明器具側に設置して照明の照射ポイントを道路面上に直接照射し、照射されたポイントの位置を所定の管理基準値内に維持することで照明器具の光軸の中心の調整を行う。レーザーポインタは照明器具の前面ガラスの光軸の中心位置に直角に設置し、レーザーポインタの垂直表示機能を用いて精密な基準点管理を行う。また、CADなどを利用してトンネル断面の形状を少なくとも数十断面以上分析し、その分析結果に基づいて、壁面形状に適合した照明器具取付金物のタイプ数を数種類に集約して製作することで、管理の簡易化および角度調整の精度向上が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内照明器具の取付時において、レーザーポインタを用いて照明器具の光軸の中心が管理基準値の範囲内にあることを明確化し、照明器具の角度調整を簡易化することでトンネル内の路面輝度の均一化を図ることが可能な照明器具の光軸の中心の管理手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル内照明器具は、車両の運転者が安全かつ円滑に走行できるよう、所定の路面輝度を確保する必要がある。そのためには、照明器具による誘導性やトンネル線形認識に加えて、路面上輝度分布の均一性が求められ、壁面や天井面も明るくして視線誘導効果を高め、グレアによる悪影響を出来るだけ少なくすることを考慮しなければならない。照明器具の輝度分布を均一化するためには、正確な取付間隔と取付角度の管理が重要な品質管理要素である。
【0003】
従来から、トンネル内照明器具の角度調整は、角度計(アングルメーター)などを照明器具に直接当てて読み取った器具角度をもとに行われていた。しかし、この方法では、測定精度に個人差が生じ角度管理の確実性が明確ではないこと、および暗いトンネル内での測定となるため測定者が数値を読み間違える可能性があることなどの問題点があった。
【0004】
また、従来の測定方法では、作業車の運転手1名、作業車上での器具の角度測定者1名、路面傾斜の測定者2名、器具角度と路面傾斜より取付角度を算出する者1名の計5名は最低限必要となるのが一般的で、多大な調整作業時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−296748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
照明器具取付角度の精度向上と角度調整の簡易化を目的として、レーザー光の直進性を利用した手法が提案されている。特開平05−296748号に開示される「投光器の照準調整装置」は、投光器の照準点にレーザーを装着した照準調整台を設置し、レーザー光を反射鏡が取付けられた投光器の前面に照射させ、投光器の角度調整によってレーザー光の反射光を正確に調整台に再帰させ、照準調整を行う装置である。この装置では、照準調整台に再帰されたレーザー光で投光器の照射ポイントを検知するが、照準調整台は一定の高さを有しているため、照準調整台上に示された照射ポイントと、地面での照射ポイントには誤差が生じる。この照射ポイントの誤差は、野球場のグランド照明などある一定の範囲を照射すればよい場合は許容できるが、トンネル照明の場合では、路面での正確な照射ポイントを管理する必要があるため大きな問題となる。さらに、再帰反射は、往復の到達距離が必要であり、レーザー光の到達距離限界を超えることも考えられるため実用的ではない。
【0007】
また、トンネル内壁面は湾曲していることから、直接壁面へ照明器具を取付けることは不可能であり、要求される取付角度に適合した取付金物を製作する必要がある。この取付金物の製作精度の向上も照明器具の角度調整を容易にする構成要素の一つであるが、トンネルは直線的な箇所だけではなく蛇行している部分もあるため、トンネル壁面の形状は多種多様であり、トンネル壁面の形状に合わせることができるように、角度可変用の長穴を設けてビス止めにて照明器具を所定角度に支持していた。取付角度の精度向上のためには、壁面の湾曲に合わせた取付金物が望ましいが、用意する取付金物の種類を多くしすぎると検討段階で多大な労力がかかる上に、コストアップ及び管理の複雑化にもつながる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて発明したものであって、照明器具取付角度の精度向上と光軸の中心角度調整作業の簡易化を実現し、トンネル内路面輝度を均一化するための管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明においてはレーザーポインタを照明器具側に設置して照明の照射ポイントを路面上に直接照射し、照射されたポイントの位置を所定の管理基準値内に調整することで照明器具の光軸の中心の調整を行う。ここで、レーザーポインタは照明器具の前面ガラスに直角に設置し、レーザーポインタの垂直表示機能を用いて精密な基準点管理を行う。そのためには、レーザーポインタを照明器具の光軸の中心に容易に設置することを可能とするレーザーポインタ固定用の機構を具備することが望ましい。
【0010】
さらに、CADなどを利用してトンネル断面の形状を少なくとも数十断面以上分析し、その分析結果に基づいて、断面形状に適合した照明器具取付金物のタイプ数を数種類に集約して製作することで、管理の簡易化および角度調整の精度向上が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、道路面上で容易に取付角度が確認できるため、取付角度精度の見える化が行え、作業の高品質化につながる。また、従来の高所での角度確認作業を道路面上のポイント確認作業とすることで作業の安全性が向上する。加えて、従来手法では調整作業に最低5名を必要としていたが、本手法では作業者のドライバー1名、レーザーポインタの設置者1名、照射ポイントの確認者1名の3名で行うことが可能となる。そのうえ、従来手法よりも角度調整作業が大幅に簡素化されるため、作業時間の短縮も図れ、取付工事の省力化および工期短縮にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのトンネル内断面図。
【図2】照明器具取付金物の例1
【図3】照明器具取付金物の例2
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面にしたがって本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1に本発明の実施形態に係るトンネル内断面図の一例を示す。図1において、1はトンネル内照明器具であり、通常は左右の両壁面に設置されるが、以下では片側の照明器具の角度調整に着目して説明する。2は基準点とよばれるポイントで、照明器具1の照射ポイントとして設定される。基準点2は、一般的には反対車線の外側線上に設定される場合が多いが、特にこれに限定されるものではない。基準角度3は、照明器具1の最適な取付角度を示し、照明器具1の取付位置と基準点2の位置により決定される。しかし、実際には基準点2のポイントに正確に照射することは困難であるため、許容できる誤差の範囲を設定する。
【0015】
照明器具の取付けにより所定の路面輝度を確保するが、路面輝度は一般に照明器具1を基準角度3の近傍で設置した場合に最大となり、基準角度3から逸脱するほど路面輝度が低下する傾向がある。すなわち、基準角度3からの変位角度4を一定の範囲内に収めるよう角度管理することが要求される。なお、変位角度4の限界値については、事前に照明器具1の照射シミュレーション等を行うことで求めることが可能である。また、変位角度4の限界値を求めることは、照明器具1の照射ポイントの基準点2からの変位の限界値を求めることと等価である。
【0016】
照明器具1の照射ポイントは、レーザーポインタ5を照明器具の光軸の中心上に設置し、レーザー光の照射ポイントを検知することで判明する。このとき、照明器具1の前面ガラス上に直接レーザーポインタ5を添えてもよいが、光軸の中心上にレーザーポインタ5を着脱自在に設置できるようなレーザーポインタ固定用の機構を具備した構造としてもよい。照明器具1の取付角度を変更すると、それに伴ってレーザー光の照射ポイントも移動するため、レーザー光の照射ポイントを照明器具1の角度調整の管理値として代用することができる。レーザーの変位範囲6は変位角度4の限界値からあらかじめ計算しておき、レーザー光の照射ポイントがこの範囲内になるように管理基準値として用いる。以上のように、レーザー光の照射位置を管理することで、簡単に照明器具1の角度調整が行える。
【0017】
また、図2、図3は、照明器具の取付金物の一例である。前述したように、照明器具を設置する壁面の形状は多種多様であるが、その壁面の形状に適合した取付金物を製作することが角度調整作業の省力化につながる。そこで、事前にCADなどを利用してトンネル断面の形状を少なくとも数十断面以上分析し、その分析結果に基づいて、壁面形状に適合した取付金物のタイプ数を数種類に集約して製作する。これにより金物製作のコストダウンが図れ、併せて角度調整の精度向上も可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 照明器具
2 基準点
3 基準角度
4 変位角度
5 レーザーポインタ
6 レーザーの変位範囲
7 取付金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル照明器具の取付角度の精度向上のため、レーザーポインタを用いて照明の照射ポイントをレーザー光にて路面上に照射し、照射されたポイントの位置を管理基準値内に調整することを目的として、照明器具の光軸の中心の調整を容易に行うことを可能とするトンネル内路面輝度均一化のための管理手法。
【請求項2】
照明器具の光軸の中心の調整のため、照明器具の前面ガラスに直角にレーザーポインタを設置し、レーザーポインタの垂直表示機能を用いて精密な基準点管理を行うことを特徴とした管理手法。
【請求項3】
照明器具の光軸の中心に容易にレーザーポインタを設置することを可能とする、レーザーポインタ固定用の機構を具備した請求項2の管理方法。
【請求項4】
トンネル断面の形状を少なくとも数十断面以上分析し、その分析結果に基づいて、壁面形状に適合した照明器具取付金物のタイプ数を数種類に集約して製作することで、取付金物の管理の簡易化および角度調整の精度向上を可能とした請求項2の管理手法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101793(P2013−101793A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244100(P2011−244100)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】