説明

レーザーマーキング多層シート

【課題】レーザーマーキング性に優れ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られるとともに、積層工程における加熱融着性に優れ、シートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、折り曲げ性を兼ね揃えたレーザーマーキング多層シートを提供する。
【解決手段】多層シートAの下層に多層シートBを積層してなる透明レーザーマーキング多層シートである。多層シートAは、透明レーザーマーキング多層シートであり、両最外層であるスキン層が、実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、コア層がポリカーボネート系樹脂組成物からなる。多層シートBは、着色レーザーマーキング多層シートであり、両最外層であるスキン層が、実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、コア層がポリカーボネート系樹脂組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーマーキング多層シートに関する。とりわけ、レーザー光線照射により該多層シートに損傷なくマーキングされ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られ、耐熱性にも優れたレーザーマーキング多層シートに関するものであり、電子パスポートまたはプラスチックカード等に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
国際交流が進展する中で、人材の移動も活発化している昨今、個人を特定し身元を証明する手段として、個人情報を記録したIDカード、ICカード、或いはパスポート等のいわゆる身分証(身元照明証等)、とくに、公的機関や信頼性の高い団体の発行する身分証の重要性が高まっている。
【0003】
とりわけ、2001年9月の世界同時多発テロ事件以降、各国の入出国管理を厳しくする等の対応策が講じられている。たとえば、国連の専門機関 ICAO(International Civil Aviation Organization)が標準規格を制定し、個人情報を書き込み、読み取り可能なICチップを組み込んだ電子パスポート導入の取り組みが開始されている。また、個人を特定するのに多量な情報を記録したIDカード、ICカード等も登場するに至っている。これらのIDカード、ICカード、或いはパスポート等のいわゆる身分証では、個人情報を書き込みしたICチップの他に、カード本体やシート本体等に個人名、記号、文字、写真等の個人情報を表示したものが一般的となっている。
【0004】
ところで、このようなIDカード、ICカード、或いはパスポート等は、個人を特定し証明し得るものであるから、公的機関や信頼性の高い団体以外の第三者が、個人情報の改竄や偽造等を容易に行えるものであれば、身分証への信頼性は落ち、国際交流の進展や人材の世界規模での移動に支障を与えることになりかねない。
【0005】
そこで、前述の電子パスポート、IDカード、ICカード等のいわゆる身分証では、如何に改竄や偽造を防止するがが重要な問題となっている。すなわち、軽薄短小な電子パスポート、IDカード、ICカード等に如何にしてコントラストが高く、鮮明な表示が得られるかは、改竄や偽造等防止にも繋がるため重要となる。
【0006】
このような問題に対して、個人名、記号、文字、写真などをレーザーマーキングする技術、具体的にはレーザーマーキング用多層シートが注目されており、たとえば、以下の特許文献1、2がある。
【0007】
特許文献1では、外観の損傷がなく、コントラストが良好で、表面平滑性の優れたレーザーマーキングできる多層シートを得ることを目的に、少なくとも表層及び内層からなる多層シートであって、(A)透明の熱可塑性樹脂からなる表層と、(B)(b−1)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(b−2)レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体0.01〜5重量部および(b−3)着色剤0.5〜7重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる内層とを、溶融共押し出しにて形成したレーザーマーキング用多層シートが開示されている。
【0008】
特許文献2では、外観の損傷がなく、コントラストが良好で、表面平滑性の優れたレーザーマーキングでき、耐熱性の優れた多層シートを得ることを目的に、第一の表層/内層/第二の表層からなる多層シートであって、(A)透明の熱可塑性樹脂100重量部に対し、雲母及び/又はカーボンブラックを0.001〜5重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる透明な第一及び第二の表層と、(B)熱可塑性樹脂100重量部に対し、レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体0.001〜3重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる内層とから形成され、第一の表層/内層/第二の表層のシートの厚み構成比が1:4:1〜1:10:1であり、第一の表層/内層/第二の表層を、溶融共押し出しにて形成したレーザーマーキング用多層シートが開示されている。
【0009】
確かに、特許文献1、2におけるレーザーマーキング用多層シートでは、これらの多層シート同士や例えば、PETGシートやABS樹脂シート等の熱可塑性樹脂シートとの加熱融着性に優れ、レーザー光照射によるレーザーマーキングにより文字、数字を印字するには充分な印字性が得られ、評価に値するものである。しかし、前述のような個人情報を記録したIDカード、ICカード、或いはパスポート等のいわゆる身分証のように、人の顔などの画像を描画すると必ずしも十分でないとの問題があった。すなわち、個人名、記号、文字、写真等の個人情報を軽薄短小の規格寸法内に如何にして鮮明に表示するかについては、十分な対応がなされていない。
【0010】
【特許文献1】特開2002−273832号公報
【特許文献2】特許第3889431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、レーザーマーキング性に優れ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られるとともに、多層シートの積層工程における加熱融着性に優れ、更には、シートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、折り曲げ性を兼ね揃えたレーザーマーキング多層シートを提供することにある。とりわけ、改竄防止、偽造防止に優れている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、以下のレーザーマーキング多層シートが提供される。
【0013】
[1] 多層シートAと多層シートBを積層してなるレーザーマーキング多層シートであって、前記多層シートAは、スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される透明レーザーマーキング多層シートであって、前記多層シートAの両最外層であるスキン層が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、前記多層シートAのコア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物を含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなり、更に、前記多層シートAの全厚さが50〜150μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートAの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートであり、前記多層シートBは、スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される着色レーザーマーキング多層シートであって、前記多層シートBの両最外層であるスキン層が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、前記多層シートBのコア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物及び着色系無機顔料を1質量部以上含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなり、更に、前記多層シートBの全厚さが50〜250μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートBの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートであるレーザーマーキング多層シート。
【0014】
[2] 前記多層シートA及び/又は多層シートBの表面には平均粗さ(Ra)0.1〜5μmのマット加工が施されている[1]に記載のレーザーマーキング多層シート。
【0015】
[3] 前記多層シートA及び/または多層シートBのコア層及び/又はスキン層が熱可塑性樹脂100質量部に対して、酸化防止剤及び/又は着色防止剤0.1〜5質量部、及び紫外線吸収剤及び/又は光安定剤0.1〜5質量部含有する[1]又は[2]のいずれかに記載のレーザーマーキング多層シート。
【0016】
[4] 電子パスポート用である[1]〜[3]のいずれかに記載のレーザーマーキング多層シート。
【0017】
[5] プラスチックカード用である[1]〜[3]のいずれかに記載のレーザーマーキング多層シート。
【0018】
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載のレーザーマーキング多層シートに、レーザーマーキングする方法であって、前記レーザーマーキング多層シートに積層した多層シートA側から、レーザー光線を照射して印字するレーザーマーキング方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザーマーキング性に優れ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られるとともに、多層シートの積層工程における加熱融着性に優れ、更には、シートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、折り曲げ性を兼ね揃えたレーザーマーキング多層シートを提供できるという優れた効果を奏する。とりわけ、改竄防止、偽造防止に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のレーザーマーキング多層シートを実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるレーザーマーキング多層シートを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[1]本発明のレーザーマーキング多層シートは、図1に示されるように、多層シートA(符号3)と多層シートB(符号5)を積層してなるレーザーマーキング多層シート1である。前記多層シートAは、スキン層3aとコア層3bを有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される透明レーザーマーキング多層シートである。前記多層シートAの両最外層であるスキン層3aが、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる。前記多層シートAのコア層3bが、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物を含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなる。更に、前記多層シートAの全厚さが50〜150μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートAの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートである。前記多層シートB(符号5)は、スキン層5aとコア層5bを有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される着色レーザーマーキング多層シートである。前記多層シートBの両最外層であるスキン層5aが、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる。前記多層シートBのコア層5bが、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物及び着色系無機顔料を1質量部以上含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなる。更に、前記多層シートBの全厚さが50〜250μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートBの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートであるレーザーマーキング多層シート1として構成される。
【0022】
[A]多層シートAの構成:
本発明の透明レーザーマーキング多層シートにおける多層シートAはスキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される透明レーザーマーキング多層シートから構成される。
【0023】
[A−1]3層シート:
多層シートAは、スキン層とコア層とからなる少なくとも3層構造のシートとして構成され、共押出法により積層形成される。なお、本実施形態に係る3層シートは、「少なくとも3層」であって、3層構造のシートに限られたものではない。すなわち、本実施形態の透明レーザーマーキング多層シートAにおいて、「3層シート」と言うのは、説明の便宜を図るものであり、「3層シート」とは「少なくとも3層以上の層からなるシート」を意味するものであって、「3層」から成るシートに限定する趣旨ではない。換言すれば、3層以上の構成からなれば、5層から構成されても、7層から構成されても、或いは、それ以上の奇数層から形成されていても、本実施形態の多層シートAに含まれる。
【0024】
ただし、上述した多層構造から本実施形態の多層シートAが構成される場合にも、後述するスキン層は、多層構造から構成されるシートの最も外側の位置に配されるとともに、そのシートの両側に配され、さらに、両スキン層(の間)に、コア層が挟まれるように配されることが必要となる。なお、スキン層の厚さは、特に限定されるものではないが、より好ましいのは、後述の所定範囲の厚さに形成されることである。
【0025】
他方、多層シートAが上述の「それ以上の奇数層」から構成される場合であっても、あまりに多層構造からなる場合には、配されるスキン層とコア層との一層あたりの層厚が薄くなり過ぎてしまうと、積層時の加熱プレス工程での、いわゆる金型スティックが発生してしまうおそれがある。したがって、好ましいのは5層から、より好ましいのは3層から構成される多層シートAである。
【0026】
ここで、多層シートAが前述のように奇数層から構成されるのは、偶数層からなる多層シートは、必ず奇数層からなる多層シートと同じ構成となるからである。例えば、4層からなる多層シートでは、スキン層(PETG)/コア層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配置となり、結局のところ、奇数層から構成される多層シートと同様の構成となるからである。
【0027】
また、たとえば、3層から構成される多層シートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されて多層シートが形性されることになる。また、5層から構成される多層シートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、かつ、交互にスキン層とコア層を配列して、多層シートを形性してもよい。このように多層構造を有する多層シートを形成することにより、充分な加熱融着性が確保でき、積層工程におけるシートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、折り曲げ性、透明性等の点で、微調整が可能となる。
【0028】
また、3層シートの全厚さ(総厚さ)は、全厚さが50〜150μmからなるともに、全厚さに対して占める前記コア層の厚さの割合が35%以上、85%未満からなること望ましい。3層シートの全厚さが、50μm未満であると、多層シート積層工程における加熱融着時に金型に多層シートが貼りつくという、いわゆる金型スティックの問題が発生しやすくなり、このような支障を取り除くためには、加熱融着温度や、加熱融着時のプレス圧力、加熱融着時間等を制御することが煩雑となり、成形工程に支障をきたしやすいからである。また、3層シートの全厚さが150μmを超えると、その150μmを超えた3層シートを用いて電子パスポート用多層シートを成型した場合、全厚みが厚くなりすぎ使いづらくなる。また、プラスチックカードに使用した場合、カードの厚さが、一般的な接触、非接触式カードの規格である全厚さの最大厚さ800μmを超えることになるため、汎用性がなく、使用困難となるから好ましくない。さらに、多層シートAは、全厚さに対して占める前記コア層の厚さの割合が35%以上、85%未満からなることが望ましい。スキン層の厚さがあまりにも薄いと金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じてしまい、他方、スキン層の厚さがあまりにも大きすぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、レーザーマーキング性が劣ったり、多層シート積層後にそりが発生したりするなどの問題が生じて望ましくないからである。
【0029】
このように3層シート全体の厚さを所望の厚さとすることにより、多層シートAの特性といった局所的な特性を引き出しやすくなるのみならず、本実施形態のレーザーマーキング多層シート(多層シートA及び多層シートBからなる多層シート)といった本実施形態全体の特性を引き出しやすくなる。さらに、この3層シート全体の総厚さだけに限らず、3層シートを構成するスキン層及びコア層の3層シートに占める厚さの割合も前述の所望の割合にすることにより、3層シート全体の厚さを所望範囲内にすることと相俟って、レーザーマーキング性を向上させやすくなる等、本願の効果をより発揮させるため好ましい。
【0030】
なお、多層シートの融着性と金型スティックの問題は多層シートの実用化や生産性、市場のニーズに応え得るものであるか等極めて重要な要素となるため、さらに後段にて、3層シート全体の総厚さと、スキン層、及びコア層との厚さとの関係について詳述する。
【0031】
[A−1−1]多層シートAにおけるスキン層:
多層シートAにおけるスキン層は、3層シートの外側に配される両最外層として構成される。すなわち、このスキン層は、後述する多層シートAにおけるコア層の両端面側(外側)から、挟み込むように配される、3層シートの表層(両最外層)としての役割を担っている。
【0032】
スキン層の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。それぞれ異なる厚さのスキン層から多層シートAを構成すると、前述したように、多層シートのプレス工程等でシートのソリが生じて好ましくないからである。また、例えば、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)といった3層から多層シートAが構成される場合であって、コア層の厚さが35%以上、85%未満である場合には、スキン層は両側で15%以上、65%未満となる。スキン層の厚さがあまりにも薄いと金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じてしまい、他方、スキン層の厚さがあまりにも大きすぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、レーザーマーキング性が劣ったり、多層シート積層後にそりが発生したりするなどの問題が生じて好ましくないから、所望の厚さに形成されることが望ましい。
【0033】
このスキン層を形成する素材としては、ポリエステル系樹脂組成物、すなわち、後述の共重合ポリエステル樹脂([A−1−1−1]参照)と、後述の滑剤([A−1−1−2]参照)と、を調製した、後述する実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層として形成される。
【0034】
[A−1−1−1]共重合ポリエステル樹脂:
本実施形態に用いられる共重合ポリエステル樹脂は、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物の主要な成分として配合されている。この共重合ポリエステル樹脂としては、スキン層には、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂が使用される。この共重合ポリエステル樹脂に含まれる、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、の成分量を調製する理由は、共重合ポリエステル樹脂において、エチレングリコール成分の置換量が10モル%未満で得られる樹脂では十分な非晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣るからである。また、70モル%を超えて得られる樹脂では十分な非晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣るからである。したがって、本実施形態のように、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、の成分量を調製して得られる樹脂は、十分な非晶性になり、熱融着性の点で優れているため、望ましい樹脂といえる。
【0035】
さらに、この共重合ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂(商品名「PETG」、イーストマンケミカル社製)が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0036】
[A−1−1−2]滑剤:
本実施形態に用いられる滑剤は、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤が添加されるように調製されるものである。これらの滑剤の添加量としては0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部である。0.01質量部未満では加熱プレス時にプレス板に融着してしまい、3質量部を超えるとカードの熱融着性に問題が生じるため好ましくない。
【0037】
脂肪酸エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、セチルパルミレート、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、モンタンワックス酸のエステル、ロウエステル、ジカルボン酸エステル、複合エステル等が挙げられ、脂肪酸アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリルアマイド等が挙げられる。また、脂肪酸金属塩系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミウム、ステアリン酸バリウム等が挙げられる。
【0038】
[A−1−2]多層シートAにおけるコア層:
コア層は、3層シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。すなわち、このコア層は、最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。このコア層の厚さとしては、全シート中に占める厚さの割合が、35%以上、85%未満になるよう形成されることが望ましい。好ましいのは、40%以上80%未満である。コア層の厚み比率が85%以上となると、透明レーザーマーキング多層シートAの総厚みが50〜150μmと薄いため、相対的にスキン層も薄くなってしまい、仮に、スキン層に滑剤が混合されていても、積層工程における加熱プレス工程にて透明レーザーマーキング多層シートAが金型に貼りつくという金型スティックの問題が発生するので好ましくない。また、コア層の厚み比率が35%未満では積層工程において、スキン層が厚いため金型スティックの問題が発生しないが、レーザーマーキング性が劣ったり、耐熱性が乏しくなったりするためシートのソリが生じて好ましくない。
【0039】
コア層を構成する材料(素材)としては、ポリカーボネート樹脂、特に透明なポリカーボネート樹脂が使用される。ただし、使用されるポリカーボネート樹脂は特に制限はないが、メルトボリュームレイトが4〜20のものを好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。また、メルトボリュームレイトが20を超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。
【0040】
[A−1−3]エネルギー吸収体:
エネルギー吸収体としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、炭酸塩および金属ケイ酸塩の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0041】
カーボンブラックは、平均粒径が10〜90nmで、ジブチルフタレート(DBT)吸油量60〜170ml/100grのカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの平均粒径が10nm未満ではレーザー発色性が低下すると共に、微細すぎて取扱いに難があり、90nmを超えるとシートの透明性が低下したり、シート表面に大きな凹凸が発生したりする事があり好ましくない。また、DBT吸油量が60ml/100gr未満では分散性が悪く、170ml/100grを超えると隠蔽性に劣るため好ましくない。
【0042】
また、金属酸化物としては、酸化物を形成する金属として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、銅、マンガン、コバルト、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、白金などが挙げられる。更に、複合金属酸化物としてITO、ATO、AZO等が挙げられる。
【0043】
また、金属硫化物としては、硫化亜鉛、硫化カドミニウムなどが挙げられる。さらに、炭酸塩としては炭酸カルシウムなどが、また、金属ケイ酸塩としてはケイ酸アルミナ、鉄を含むケイ酸アルミナ(マイカ)、含水ケイ酸アルミナ(カオリン)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0044】
また、これらの金属酸化物、複合金属酸化物及び金属硫化物の平均粒子径は150nm未満が好ましく、より好ましくは100nm未満である。
【0045】
また、エネルギー吸収体としては、カーボンブラック及び金属酸化物、複合金属酸化物が好適に用いられ、各々単独または併用して用いられる。
【0046】
また、エネルギー吸収体の添加量(配合量)は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部添加(配合)され、より好ましくは0.0001〜1質量部である。また、カーボンブラックと平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種とを併用する場合にはその混合物の配合量が0.0001〜6質量部配合され、より好ましくは0.0001〜3質量部である。
【0047】
このように、エネルギー吸収体の添加量(配合量)を所望量に調製するのは、多層シートAは透明であることが好ましいからである。すなわち、多層シートAの下層である多層シートBは、着色、画像、文字等の印刷を施す場合が多く、その場合に多層シートAの透明性が劣ると印刷された着色、画像、文字等が不鮮明となり実用上問題となる。そのために平均粒子径の小さいカーボンブラックが好ましく用いられ、また、カーボンブラックと他の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物をレーザーエネルギー吸収剤として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩の平均粒子径が少なくとも150nm未満、好ましくは100nm未満、更に好ましくは50nm未満とするのである。
【0048】
したがって、これらレーザーエネルギー吸収体の平均粒子径が150nmを超えると透明レーザーマーキング多層シートAの透明性が低下して好ましくない。また、これらレーザーエネルギー吸収体の配合量も6質量部を超えると多層シートAの透明性が低下すると共に、吸収エネルギー量が多すぎてしまい、樹脂を劣化させてしまう。その結果、充分なコントラストが得られない。他方、レーザーエネルギー吸収体の添加量が0.0001質量部未満では充分なコントラストが得られず好ましくない。
【0049】
[A−1−4]酸化防止剤及び/または着色防止剤:
酸化防止剤及び/または着色防止剤は、コア層及び/またはスキン層におけるコア層の場合はポリカーボネート樹脂、スキン層の場合は共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部含有させることが好ましい。酸化防止剤及び/または着色防止剤の添加(配合)は成形加工時における分子量低下による物性低下及び色相安定化に有効に作用する。この酸化防止剤及び/又は着色防止剤としては、フェノール系酸化防止剤や亜燐酸エステル系着色防止剤が使用される。
【0050】
フェノール系酸化防止剤の例としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンなどが挙げられる。
【0051】
なお、これらの例示の中でも、とりわけ、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが好適であり、特にn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0052】
亜燐酸エステル系着色防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0053】
さらに、他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0054】
上記の中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。亜燐酸エステル系着色防止剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。また、フェノール系酸化防止剤と併用してもよい。
【0055】
さらに、コア層及び/またはスキン層におけるコア層の場合はポリカーボネート樹脂、スキン層の場合は共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤0.1〜5質量部含有させることが好ましい。また、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤の添加(配合)は透明レーザーマーキング多層シートAの保管時及び最終製品である電子パスポートまたはプラスチックカードの実際の使用時における耐光劣化性を抑制に有効に作用する。
【0056】
紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
【0057】
更に、紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0058】
さらに、紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などの環状イミノエステル系化合物を挙げることができる。
【0059】
また、光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系のも含むことができ、かかる光安定剤は前記紫外線吸収剤や場合によっては各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0060】
[A−1−5]マット加工:
また、多層シートAの両面には、マット加工が施され、平均粗さ(Ra)0.1〜5μmであることが好ましい。このように、多層シートAの表面にマット加工を形成する理由は、例えば、本実施形態のレーザーマーキング多層シートの構成が、多層シートA/多層シートBにて加熱プレス成形した場合、多層シートAと多層シートBの間の空気が抜けやすくなり、これら多層シートを積層工程に搬送する場合に、吸引・吸着して搬送した後、これら多層シートを位置合わせして積層した後、空気を注入して多層シートを脱着する際、マット加工していないと脱着困難であったり、脱着できても積層位置がずれたりするなどの問題が生じやすい傾向がある。また、マット加工の平均粗さ(Ra)が5μmを超えると、透明レーザーマーキング多層シートA/着色レーザーマーキング多層シートの熱融着性が低下しやすくなる傾向がある。
【0061】
さらに、表面の平均粗さ(Ra)が0.1μm未満では前述したようにシート搬送時・積層時に、シートが搬送機に貼りつくという問題等が発生しやすい傾向がある。
【0062】
[B]多層シートBの構成:
本発明の透明レーザーマーキング多層シートBはスキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成されるレーザーマーキング多層シートとして構成される。
【0063】
なお、説明の便宜を図るため、前段の多層シートAと構成が同一であるものについては、その旨を記載するに留め可能な限り説明を省略し、次項以下では、多層シートAと構成が相違するものについて詳述することとする。したがって、多層シートAと構成が同一であるものについては、多層シートAの説明を参照されたい。
【0064】
[B−1]3層シート:
多層シートBは、スキン層とコア層とからなる少なくとも3層構造のシートとして構成され、共押出法により積層形成される。なお、この3層シート定義は多層シートAと同じであるため、多層シートAの3層シート[A−1]の説明を参照されたい。
【0065】
また、3層シートの全厚さ(総厚さ)は、全厚さが50〜250μmからなるとともに、全厚さに対して占めるコア層の厚さの割合が35%以上、85%未満からなることが望ましい。3層シートの全厚さが、50μm未満であると、多層シート積層工程における加熱融着時に金型に多層シートが貼りつくという、いわゆる金型スティックの問題が発生しやすくなり、このような支障を取り除くには、融着温度や、融着時のプレス圧力、融着時間等を制御することが煩雑となり、成形工程に支障をきたしやすいからである。また、3層シートの全厚さが250μmを超えると、その250μmを超えた3層シートを用いて電子パスポート用多層シートを成型した場合、全厚みが厚くなりすぎ使いづらくなる。また、プラスチックカードに使用した場合、カードの厚さが、一般的な接触、非接触式カードの規格である全厚さの最大厚さ800μmを超えることになるため、汎用性がなく、使用困難となるから好ましくない。さらに、多層シートBは、全厚さに対して占める前記コア層の厚さの割合が35%以上、85%未満からなることが望ましい。スキン層の厚さがあまりにも薄いと金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じてしまい、他方、スキン層の厚さがあまりにも大きすぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、レーザーマーキング性が劣ったり、多層シート積層後にそりが発生したりするなどの問題が生じて好ましくないからである。
【0066】
このように3層シート全体の厚さを所望の厚さとすることにより、多層シートBの特性といった局所的な特性を引き出しやすくなるのみならず、本実施形態のレーザーマーキング多層シート(多層シートA及び多層シートBからなる多層シート)といった本実施形態全体の特性を引き出しやすくなる。さらに、この3層シート全体の総厚さだけに限らず、3層シートを構成するスキン層及びコア層の3層シートに占める厚さの割合も前述の所望の割合にすることにより、3層シート全体の厚さを所望範囲内にすることと相俟って、レーザーマーキング性を向上させやすくなる等、本願の効果をより発揮させるため好ましい。
【0067】
なお、多層シートの融着性と金型スティックの問題は、多層シートBにおいても多層シートAと同様に本実施形態の実用化や生産性、市場のニーズに応え得るものであるか等極めて重要な要素となるため、多層シートAと重複しない範囲で、さらに後段にて、3層シート全体の総厚さと、スキン層、及びコア層との厚さとの関係について詳述する。
【0068】
[B−1−1]多層シートBにおけるスキン層の構成:
多層シートBにおけるスキン層は、多層シートAと同様に、3層シートの外側に配される両最外層として構成される。すなわち、このスキン層は、後述する多層シートBにおけるコア層の両端面側(外側)から、挟み込むように配される、3層シートの表層(両最外層)としての役割を担っている。
【0069】
スキン層の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。それぞれ異なる厚さのスキン層から多層シートBを構成すると、前述したように、多層シートのプレス工程等でシートのソリが生じて好ましくないからである。また、例えば、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)といった3層から多層シートBが構成される場合であって、コア層の厚さが35%以上、85%未満である場合には、スキン層は両側で15%以上、65%未満となる。スキン層の厚さがあまりにも薄いと金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じてしまい、他方、スキン層の厚さがあまりにも大きすぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、レーザーマーキング性が劣ったり、多層シート積層後にそりが発生したりするなどの問題が生じて好ましくないから、所望の厚さに形成されることが望ましい。
【0070】
[B−1−1−1]共重合ポリエステル樹脂:
多層シートBにおける共重合ポリエステル樹脂の定義は透明レーザーマーキング多層シートAと同じである。したがって、多層シートA([A−1−1−1])の共重合ポリエステル樹脂の説明を参照されたい。
【0071】
[B−1−1−2]滑剤:
多層シートBにおいては、滑剤の添加量は、前述の共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して0〜3質量部である。このように、0質量部を含めるのは、たとえば、レーザーマーキング多層シートが、多層シートA/多層シートB/多層シートAと積層する場合には、多層シートBがこの積層体の最表面にでないため、多層シートBに滑剤を添加する必要がないからである。他方、多層シートA/多層シートB、または多層シートB/他のシート/多層シートBの積層体シートを加熱融着させて、この積層体シート表面に印刷等をした後、更に多層シートA/該積層体シート/多層シートAを積層して加熱融着させる場合には、この前半の工程にて多層シートBが積層体シートの最表面を形成するため、滑剤を添加する必要がある。したがって、多層シートBにおいては、その使用方法、積層パターンによって滑剤の必要の有無が異なるため、添加量を0〜3質量部として必要に応じて添加させることにした。
【0072】
なお、多層シートBに滑剤を添加させる場合に用いる滑剤の定義は、多層シートAに用いる滑剤と同じである。したがって、多層シートAにおける滑剤([A−1−1−2])の説明を参照されたい。
【0073】
[B−1−2]多層シートBにおけるコア層の構成:
多層シートBにおけるコア層は、多層シートAと同様に3層シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。すなわち、このコア層は、最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。
【0074】
コア層の厚さとしては、全シート中に占める厚さの割合が、35%以上、85%未満になるよう形成されることが望ましい。好ましいのは、40%以上80%未満、である。コア層の厚み比率が85%以上となると、透明レーザーマーキング多層シートBの総厚みが50〜250μmであるため、相対的にスキン層も薄くなってしまい、仮に、スキン層に滑剤が混合されていても、積層工程における加熱プレス工程にて透明レーザーマーキング多層シートAが金型に貼りつくという金型スティックの問題が発生するので好ましくない。また、コア層の厚み比率が35%未満では積層工程において、スキン層が厚いため金型スティックの問題が発生しないが、レーザーマーキング性が劣ったり、耐熱性が乏しくなったりするためシートのソリが生じて好ましくない。
【0075】
コア層を構成する材料(素材)としては、多層シートAと同じであるため、多層シートAの説明を参照されたい。
【0076】
[B−1−2−1]着色系無機顔料:
多層シートBは、着色レーザーマーキング多層シートであり、多層シートBのコア層には、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して着色系無機顔料を1質量部以上配合される。この点で、多層シートAと異なる。このように着色系無機顔料を1質量部以上配合するのは、後述するように、透明レーザーマーキング多層シートAと着色レーザーマーキング多層シートBの積層体シートにレーザー光を照射してマーキングする場合にコントラストが良好になるため、文字、数字及び画像の鮮明性が良くなるからである。
【0077】
この着色系無機顔料としては、白色顔料として酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、黄色顔料として酸化鉄、チタンイエロー、赤色顔料として、酸化鉄、青色顔料としてコバルトブルー群青などが挙げられる。ただし、コントラスト性を高めるため、薄い色付、淡彩色系となるものが好ましい。
【0078】
より好ましいのは、コントラスト性の際立つ、白色系無機顔料が添加されることである。
【0079】
[B−1−3]エネルギー吸収体:
多層シートBにおけるエネルギー吸収体の種類、配合量は多層シートAと同じである。したがって、多層シートAの説明を参照されたい。
【0080】
[B−1−4]酸化防止剤及び/または着色防止剤:
多層シートBにおける酸化防止剤及び/または着色防止剤は透明レーザーマーキング多層シートAと同じである。また、多層シートBにおける紫外線吸収剤及び/または光安定剤は透明レーザーマーキング多層シートAと同じである。したがって、多層シートAの説明を参照されたい。
【0081】
[B−1−5]マット加工:
多層シートBにおけるマット加工は透明レーザーマーキング多層シートAと同じである。したがって、多層シートAの説明を参照されたい。
【0082】
[C]多層シートAと多層シートBの関係:
前述のように、多層シートAと多層シートBを積層することにより、本願の効果を奏することができる。すなわち、多層シートAは、PETG/PC(レーザーマーク)/PETG からなる透明なレーザーマーク3層シートとして構成される。さらに、その多層シートAのレーザーを照射する面と反対の面には、PETG/PC(着色レーザーマーク)/PETG、からなる着色レーザーマーク多層シートBを積層することにより、上層(多層シートA)にレーザー照射してコア層PCが黒発色しても、レーザー光は更に通過して下層(多層シートB)のコア層PCも黒発色を生成する。これにより、レーザー光で発色した部分の黒化度が向上する。
【0083】
ここで、レーザーマーキングによる画像(ex.人の顔)の鮮明性を十分に引き出すには、反射率やコントラストを制御することが重要となる。たとえば、反射率が不十分であったり、コントラストが低かったりすると、画像の鮮明性が低下してしまうためである。また、たとえば、前述の多層シートA(PETG/PC(レーザーマーク)/PETG 透明なレーザーマーク3層シート)に、レーザーマーク対応でないPETG/PC(白)/PETG 3層シートを加熱融着させて積層体シートを形成する場合には、下層の3層シートにPETG透明層があるため反射率が不十分となってしまい好ましくない。さらに、反射率やコントラストを考慮し、PC(白)シートを前述のPETG/PC(白)/PETG 3層シートに代えて、多層シートAの下層に用いると、反射率がPETG/PC(白)/PETG 3層シートより向上するとともに、上層(多層シートA)のレーザーマーキングによる黒発色と下層(PCシート)の白とのコントラストが向上する事で画像の鮮明性がよくなる。しかし、下層がPC(白)シートでは上層との加熱融着性の問題が発生し、120〜150℃程度の低温での加熱融着性が悪い。210〜240℃に温度を上げれば加熱融着するが、これでは上層のPETG層が軟化、溶融してしまい積層体シートを得ることができない。
【0084】
したがって、PETG/PC(レーザーマーク)/PETG からなる透明なレーザーマーク3層シートの下層にPETG/PC(着色レーザーマーク)/PETG、からなる着色レーザーマーク多層シートBを積層する事で、上層にレーザー照射してコア層PCが黒発色しても、レーザー光は更に通過して下層のコア層PCも黒発色を生成する。これにより、レーザー光で発色した部分の黒化度が向上することにより、下層にPC(白)シートを使用した場合の同等のコントラストが得られることにより、画像を鮮明にでき、しかも、加熱融着性における問題も生じさせないようにした。このように、本願は所望の多層シートAと多層シートBとの組み合わせにより、相乗的に本願の効果を発揮するものである。
【0085】
なお、前述では、本実施形態体におけるレーザーマーキング多層シートを、多層シートAの下層に多層シートBを積層する配置パターンついて説明したが、このような配置に限られるものではない。すなわち、必ずしも上層に多層シートAを配置し、下層に多層シートBを配置するものに限定されるものではない。たとえば、多層シートAを下層に配置し、多層シートBを上層に配置してもよい。このように、多層シートA(多層シートB)を、上層又は下層に配置してもよいのは、レーザーマークした画像等を目視する位置(方向)が、上下方向に限られないからである。換言すれば、たとえば、パスポーのように冊子形式で、本実施形態体におけるレーザーマーキング多層シートを使用する場合には、見開き状にして平面視した場合に、上層に多層シートAを配置し下層に多層シートBを配置しても、次ページを開いて平面視した場合には、その多層シートAと多層シートBの配置位置は、丁度、上層に多層シートBを配置し下層に多層シートAを配置したことになってしまうからである。したがって、ここでの上層、下層は、説明の便宜を図るために用いたものであって、レーザー照射する側に多層シートAが配置され、多層シートBは多層シートAを介して(透過して)レーザー照射されるように、配置されることを意味する。このように配置されることにより、レーザーマークされた後の多層シートAと多層シートBとの、画像等の鮮明さや高コントラストを得ることができ、本願の効果を奏することできるのである。
【0086】
さらに、本実施形態体におけるレーザーマーキング多層シートでは、多層シートA/多層シートBと積層させる場合に限らず、たとえば、多層シートA/多層シートB/多層シートAと積層する場合、多層シートB/他のシート/多層シートBの積層体シートを加熱融着させた後、この積層体シート表面に印刷等をした後、更に多層シートA/該積層体シート/多層シートAを積層させる場合なども広く含まれる。使用目的や使用方法に応じて柔軟に対応可能となり、本願の効果を奏することができる。
【0087】
[2]用途:
また、本実施形態におけるレーザーマーキング多層シートは、電子パスポート用、プラスチックカード用に好適に用いることができる。
【0088】
たとえば、電子パスポート用として用いる場合には、図2に示されるように、本実施形態におけるレーザーマーキング多層シートを2つ用意し、その間にレーザーマーキング多層シートを綴じやすくするための、ポリエステル樹脂フィルム、熱可塑性ウレタン樹脂フィルムまたはナイロン樹脂フィルムの1種類、または、ポリエステルクロス、ナイロンクロスから選ばれる1種のクロスなどからなる、いわゆるラミフィルムC等を配置し、必要に応じてミシン綴じ部17等を形成するとともに、さらに図3に示されるような、表紙9、本実施形態を用いた積層体11、ビザシート13、ICチップ15等を配置し、電子パスポートを作成してもよい。ただし、これは一例であって、必ずしもこのような構成に限られるものではない。
【0089】
[3]多層シートA及び多層シートBの成形方法:
本発明において、3層の透明レーザーマーキング多層シートA及び着色レーザーマーキング多層シートBを得るには、例えば、各層の樹脂組成物を共押出して積層する共押出法、各層をフィルム状に形成し、これをラミネートする方法、2層を共押出法で形成し、これに別途形成したフィルムをラミネートする方法等があるが、生産性、コストの面から共押出法により積層することが好ましい。
【0090】
具体的には、各層の樹脂組成物をそれぞれ配合し、あるいは必要に応じてペレット状にして、Tダイを共有連結した3層Tダイ押出機の各ホッパーにそれぞれ投入し、温度200℃〜280℃の範囲で溶融して3層Tダイ共押出し、冷却ロール等で冷却固化して、3層積層体を形成することができる。なお、本発明の透明レーザーマーキング多層シートA及び着色レーザーマーキング多層シートBは、上記方法に限定されることなく、公知の方法により形成することができ、例えば、特開平10−71763号第(6)〜(7)頁の記載に従って得ることができる。
【0091】
上述のようにして得られた多層シートA、多層シートBを積層し、所望時間、所望圧力で、所望温度で加熱融着等によって接合して、レーザーマーキング多層シートを得ることができる。より具体的には、多層シートAおよびBを各々溶融共押出成形にて2種3層シートを押出した後、ロール状に巻き取りしたロール状シートを所定温度に加熱した加熱ローラー間に、例えば、多層シートA/多層シートB/多層シートA、または多層シートB/他のシート/多層シートBを通して加熱ローラーにて加熱、加圧により長尺の積層体シートを製造した後所定の寸法にカットする方法などによって製造するとよい。更に、前記多層シートAおよびBを所定の寸法にカットした後、加熱プレス機により、前述同様、例えば、多層シートA/多層シートB/多層シートA、または多層シートB/他のシート/多層シートBの枚葉積層体シートを製造することもできる。
【0092】
ここで、所望時間、所望圧力、所望温度は、特に限定されるものではない。所望時間、所望圧力、所望温度は、必要に応じて適宜選択されることが好ましい。なお、一般的なものとして、所望時間は10秒〜6分程度、所望圧力1〜20Mpa、所望温度100〜160℃を一例としてあげることができる。
【0093】
[4]:レーザーマーキング方法
本実施形態におけるレーザーマーキング多層シートは、レーザー光線を照射して発色させるものであるが、レーザー光としては、He−Neレーザー、Arレーザー、Coレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー、YAGレーザー、Nd・YVOレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が挙げられる。これらのうち、YAGレーザー、Nd・YVOレーザーが好ましい。
【0094】
なお、前述したように、上記樹脂組成物には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば離型剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、強化剤などを添加することができる。
【0095】
本実施形態のレーザーマーキング方法において、レーザー光線としては、レーザビームは、シングルモードでもマルチモードでもよく、また、ビーム径が20〜40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80〜100μmのごとく広いものについても用いることができるが、シングルモードで、ビーム径が20〜40μmの方が、印字発色部と下地のコントラストを3以上とし、コントラストが良好な印字品質を得る点で好ましい。
【0096】
このように本実施形態のレーザーマーキング多層シートに、レーザー光線を照射すると、レーザーマーキング多層シートを構成する多層シートA、及び多層シートBが、それぞれ発色することによって、相乗効果的に容易かつ鮮明に画像等を描くことができる。したがって、本実施形態のレーザーマーキング多層シートは、レーザーマーク性に優れ、その表面、又は支持体と被覆体の界面部にレーザー光線で黒下地に白文字、白色記号及び白色図柄などを、容易かつ鮮明に描くことが出来、特に、バーコード等の情報コードを解像度よくマーキングすることが可能となる。
【0097】
より好ましいのは、前述のレーザーマーキング多層シートに、レーザーマーキングする方法であって、図1に示されるようにレーザーマーキング多層シートに積層した多層シートA側から、レーザー光線7を照射して印字することである。このように本実施形態のレーザーマーキング多層シート側から、所望のレーザー光線を照射すると、より相乗効果的に容易かつ鮮明に画像等を描くことができる。したがって、本実施形態のレーザーマーキング多層シートは、レーザーマーク性に優れ、その表面、又は支持体と被覆体の界面部にレーザー光線で黒下地に白文字、白色記号及び白色図柄などを、容易かつ鮮明に描くことが出来、特に、バーコード等の情報コードを解像度よくマーキングすることが可能となる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における「部」は特に断りのない限り質量部および質量%を意味する。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0099】
[1]シートの搬送性:
製造例1〜7の透明レーザーマーキング多層シートA及び着色レーザーマーキング多層シートBを100×300mmにカットした後、シート搬送機で搬送し、透明レーザーマーキング多層シートA/着色レーザーマーキング多層シートと積層した際、以下の判定基準にてシート搬送性を評価した。
○:問題なし、△:シート積層時吸着部から脱着しにくくシートがずれる、
×:シート積層時吸着部から脱着困難。
【0100】
[2]積層加熱プレス成形後の離型性:
前記のように積層したシートを2枚のクロムメッキ鋼板で挟み、プレス温度130℃、圧力50kgf/cmにて10分間保持した。その後、室温まで冷却した後、クロムメッキ鋼板で挟んだ試料をクロムメッキ鋼板ごと取り出し、試料からクロムメッキ鋼板を引き剥がした際の金型からの離型性を以下のように評価した。
○:容易にはくり可、△:金型にわずかに付着し、剥がす事は可能であるがシート表面に傷が生じて使用不可、×:金型に付着。
【0101】
[3−1]気泡抜け性:
前記のように加熱プレス後の積層体中の残存気泡状態を観察して、気泡抜け性を以下のように評価した。
○:積層体中に気泡なし、×:積層体中に気泡残存。
【0102】
[3−2]熱融着性:
熱融着性を観察するために、積層体を構成するシート間にカッター刃を軽く差し入れることにより密着力を以下のように観察した。
○:はくりなし、×:はくりが一部、又は、全面にわたって発生。
【0103】
[4]レーザーマーク性:
Nd・YVOレーザー(商品名「LT−100SA」、レーザーテクノロジー社製及び、商品名「RSM103D」、ロフィンシナール社製)を使用して、レーザーマーク性を評価した。具体的には、レーザーマーク性は400mm/secのレーザー照射速度にてマーキングを行い、コントラストの良否、表面層破壊など異常の有無から以下のように判定した。
○:コントラスト比3以上、表面層破壊、樹脂焼けなし、
△:コントラスト比2〜3未満、表面層破壊、樹脂焼けなし、
×:コントラスト比2未満及びまたは表面層破壊、樹脂焼けあり。
【0104】
[5]透明レーザーマーキング多層シートAの透明性:
透明レーザーマーキング多層シートAの全光線透過率を、分光光度計(商品名「EYE7000」マクベス社製)を用いて測定した。
○:全光線透過率80%以上、△:全光線透過率60%以上80%未満、
×:全光線透過率60%未満。
【0105】
(製造例1)透明レーザーマーキング多層シートA〈1〉:
スキン層として非結晶性ポリエステル(商品名「イースターGN071」イーストマンケミカル社製、EG/CHDM=70/30モル%)を、コア層としてポリカーボネート(商品名「タフロンFN2500A」出光興産製、メルトボリュームレイト=8cm/10min)を用い、かつ、非結晶性ポリエステルに滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3質量部を配合した。さらに、上記ポリカーボネートに、レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラック(三菱化学製#10、平均粒子径75nm、DBP吸油量86ml/100gr)を0.001質量部を配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「イルガノックス1076」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))を0.1部、及び、紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名「チヌビン327」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を、0.2部配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用コアシートを得た。シートの総厚さは100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとするとともに、層の構成をスキン層(27μm)/コア層(46μm)/スキン層(27μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を46%にした。さらに、両面の平均表面粗さ(Ra)については、0.5〜1.8μm、になるようマット加工が施された3層透明レーザーマーキング多層シートA〈1〉を得た。
【0106】
(製造例2)透明レーザーマーキング多層シートA〈2〉:
製造例1と同様にして、シートの総厚さを100μmにするとともに、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとして、層の構成をスキン層(40μm)/コア層(20μm)/スキン層(40μm)に構成するとともに、コア層の厚さを比率20%にした。さらに、両面の平均表面粗さ(Ra)については、0.5〜1.8μm、になるようマット加工が施された3層透明レーザーマーキング多層シートA〈2〉を得た。
【0107】
(製造例3)透明レーザーマーキング多層シートA〈3〉:
製造例1において、層の構成をスキン層(5μm)/コア層(90μm)/スキン層(5μm)に構成するとともに、コア層の厚さを比率90%にした他は、製造例1同様にして透明レーザーマーキング多層シートA〈3〉を得た。
【0108】
(製造例4)透明レーザーマーキング多層シートA〈4〉:
製造例1において、非結晶性ポリエステルに滑剤を加えなかった他は、製造例1同様にして透明レーザーマーキング多層シートA〈4〉を得た。
【0109】
(製造例5)透明レーザーマーキング多層シートA〈5〉:
製造例1において、3層シートのコア層にレーザー光エネルギー吸収剤 カーボンブラックを配合しなかった他は製造例1同様にして、透明レーザーマーキング多層シートA〈5〉を得た。
【0110】
(製造例6)透明レーザーマーキング多層シートA〈6〉:
製造例1において、3層シートのコア層にレーザー光エネルギー吸収剤 カーボンブラック5質量部配合した他は製造例1同様にして、透明レーザーマーキング多層シートA〈6〉を得た。
【0111】
(製造例7)着色レーザーマーキング多層シートB〈1〉:
スキン層として非結晶性ポリエステル(商品名「イースターGN071」イーストマンケミカル社製、EG/CHDM=70/30モル%)を、コア層としてポリカーボネート(商品名「タフロンFN2500A」出光興産製、メルトボリュームレイト=8cm/10min)を用い、かつ、非結晶性ポリエステルに滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3質量部を配合した。さらに、上記ポリカーボネートに、レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラックを0.001質量部を配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、(n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「イルガノックス1076」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.1部、及び、紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名「チヌビン327」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.2部、及び酸化チタン5部を配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層の着色レーザーマーキング多層シートB〈1〉を得た。さらに、シートの総厚さ150μmにするとともに、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとし、層の構成をスキン層(20μm)/コア層(110μm)/スキン層(20μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率73%にした。さらに、両面の平均表面粗さ(Ra)については、0.5〜1.8μm、になるようマット加工が施された3層着色レーザーマーキング多層シートB〈1〉を得た。
【0112】
(製造例8)着色レーザーマーキング多層シートB〈2〉:
製造例7において、層の構成をスキン層(60μm)/コア層(30μm)/スキン層(60μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率20%にした他は製造例8同様にして、着色レーザーマーキング多層シートB〈2〉を得た。
【0113】
(製造例9)着色レーザーマーキング多層シートB〈3〉:
製造例7において、層の構成をスキン層(7.5μm)/コア層(135μm)/スキン層(7.5μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率90%にした他は製造例8同様にして、着色レーザーマーキング多層シートB〈3〉を得た。
【0114】
(製造例10)着色レーザーマーキング多層シートB〈4〉:
製造例7において、3層シートのコア層にレーザー光エネルギー吸収剤 カーボンブラックを配合しなかった他は製造例8同様にして、着色レーザーマーキング多層シートB〈4〉を得た。
【0115】
(製造例11)着色レーザーマーキング多層シートB〈5〉:
製造例7において、3層シートのコア層に酸化チタンを配合しなかった他は製造例8同様にして、着色レーザーマーキング多層シートB〈5〉を得た。
【0116】
上述の製造例1〜11を、表1〜表3に示す構成により、実施例1及び、比較例1〜9として、各種評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
(考察)
表1〜3に示すように、実施例1では、いずれもシートの搬送性、積層加熱プレス後の離型性、気泡抜け性及び熱融着性に優れ、かつ、優れたレーザーマーキング性を有するものであった。なお、マット加工がないという点以外で実施例1と同様に製造したシートを用いて、実験を行ったが使用に関しては問題はなかった。ただし、歩留まり率の向上という点では、実施例1に見られるようにマット加工したものの方が好ましいことが裏づけられた。
【0121】
これに対して、比較例1では透明レーザーマーキング多層シートA〈2〉のコア層の厚み比率が20%であったため、レーザーマーキング性に劣るものであった。比較例2は透明レーザーマーキング多層シートA〈3〉のコア層の厚み比率が90%であったため、スキン層が薄いため積層加熱プレス後の離型性と熱融着性に問題が生じた。比較例3では透明レーザーマーキング多層シートA〈4〉のスキン層に滑剤を加えなかったため、加熱プレス工程にて離型性が悪く実用困難である。
【0122】
また、比較例4では透明レーザーマーキング多層シートA〈5〉のコア層にレーザー光エネルギー吸収材であるカーボンブラックを配合しなかったため、レーザーマーク性に劣るものであった。比較例5では透明レーザーマーキング多層シートA〈6〉のコア層にレーザー光エネルギー吸収材であるカーボンブラックを5質量部と多くしたため、透明レーザーマーキング多層シートA〈6〉透明性に劣り、かつ、レーザーマーク性に劣るものであった。
【0123】
さらに、比較例6では着色レーザーマーキング多層シートB〈2〉のコア層の厚み比率が20%であったため、レーザーマーキング性に劣るものであった。比較例7では着色レーザーマーキング多層シートB〈3〉のコア層の厚み比率が90%であったため、スキン層が薄いため熱融着性に問題が生じた。比較例8では着色レーザーマーキング多層シートB〈4〉のコア層にレーザー光エネルギー吸収材であるカーボンブラックを配合しなかったため、レーザーマーク性に劣るものであった。比較例9は着色レーザーマーキング多層シートB〈5〉のコア層に酸化チタンを配合しなかったため、レーザーマーク性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の透明レーザーマーキング多層シートA及び着色レーザーマーキング多層シートBは非PVC系の多層シートであり、多層シートA/多層シートBの積層体構造とすることにより、レーザー光照射により文字、数字のみならず画像についても鮮明で優れたレーザーマーキング性を有し、多層シートの積層、加熱プレス工程においても、シートの搬送性、積層性、加熱融着性及び積層体シートの変形“ソリ”もなく耐熱性に優れた多層シートであり、電子パスポート用多層シートやプラスチックカードとして好適に使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明のレーザーマーキング多層シートの一実施形態を示す模式図であって、断面図である。
【図2】本発明のレーザーマーキング多層シートを、電子パスポートに使用する場合の一例を示す模式図である。
【図3】本発明のレーザーマーキング多層シートを、電子パスポートに使用する場合の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0126】
1:レーザーマーキング多層シート、3:多層シートA、3a:(多層シートAの)スキン層、3b:(多層シートAの)コア層、5:多層シートB、5a:(多層シートBの)スキン層、5b:(多層シートBの)コア層、7:レーザー光線、9:表紙、11;積層体、13:ビザシート、15:ICチップ、17:ミシン綴じ部、C:ラミフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層シートAと多層シートBを積層してなるレーザーマーキング多層シートであって、
前記多層シートAは、スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される透明レーザーマーキング多層シートであって、
前記多層シートAの両最外層であるスキン層が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、
前記多層シートAのコア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物を含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなり、
更に、前記多層シートAの全厚さが50〜150μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートAの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートであり、
前記多層シートBは、スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成される着色レーザーマーキング多層シートであって、
前記多層シートBの両最外層であるスキン層が、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0〜3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなるとともに、
前記多層シートBのコア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001〜3質量部、又は、カーボンブラックを0.0001〜3質量部と金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種を0〜6質量部との混合物及び着色系無機顔料を1質量部以上含んでなるポリカーボネート系樹脂組成物からなり、
更に、前記多層シートBの全厚さが50〜250μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記多層シートBの全厚さに対して占める割合が35%以上、85%未満からなる多層シートであるレーザーマーキング多層シート。
【請求項2】
前記多層シートA及び/又は多層シートBの表面には平均粗さ(Ra)0.1〜5μmのマット加工が施されている請求項1に記載のレーザーマーキング多層シート。
【請求項3】
前記多層シートA及び/または多層シートBのコア層及び/又はスキン層が熱可塑性樹脂100質量部に対して、酸化防止剤及び/又は着色防止剤0.1〜5質量部、及び紫外線吸収剤及び/又は光安定剤0.1〜5質量部含有する請求項1又は2に記載のレーザーマーキング多層シート。
【請求項4】
電子パスポート用である請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザーマーキング多層シート。
【請求項5】
プラスチックカード用である請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザーマーキング多層シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザーマーキング多層シートに、レーザーマーキングする方法であって、
前記レーザーマーキング多層シートに積層した多層シートA側から、レーザー光線を照射して印字するレーザーマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−279905(P2009−279905A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137026(P2008−137026)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【特許番号】特許第4215816号(P4215816)
【特許公報発行日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】