説明

レーザー印刷方法、レーザー印刷物及び紙容器

【課題】2次元コードを含む微細コードを明瞭にかつ紙粉を発生させることなく形成することができるレーザー印刷方法、レーザー印刷物および紙容器を提供する。
【解決方法】本発明によるレーザー印刷方法は、紙基材2上の白色コート層3に黒色インキ層4を形成する工程と、黒色インキ層4上にニス層5を形成する工程とを備えている。黒色インキ層4およびニス層5の所望部分に対して、YVO4レーザー光が照射される。このとき、黒色インキ層4およびニス層5の当該部分が除去され、印刷部7を形成することにより、レーザー印刷物15が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材上に細密な2次元コードをレーザー印刷するためのレーザー印刷方法、及び食品、医薬品、医薬部外品、および医療器具等の包装に使用され、このレーザー印刷方法により得られたレーザー印刷物および紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材を含む包装材料から作製された紙容器内に内容物を収納した包装体が流通している。これらの包装体の紙容器には、商品名、内容物、使用上の注意などの消費者による目視確認が可能な文字や図柄が印刷され、また、生産者、商品名等を数字化した後に図柄化したバーコードが当該商品の固定情報として印刷されている。
【0003】
このような固定情報は、紙容器を作製するための包装材料の製造段階で印刷することができる。一方、消費期限、ロットナンバー等の日々変化しうる変動情報は、包装材料の製造段階で印刷することができないため、紙容器に内容物を収納する直前、または、直後にサーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、およびレーザー印刷機等を用いて紙容器の包装材料に直接印刷している。あるいは、消費期限、ロットナンバー等の日々変化しうる変動情報を予め印刷しておいたラベルを、紙容器の包装材料又は紙容器内に収納される内容物に貼付する。
【0004】
このような変動情報として、消費期限の他に製造日時、ロットナンバーなどを印刷することが一般的であったが、近年の「安全・安心」に対する国民的関心の高まりにより、特に食品、医薬品、医薬部外品または医療器具の分野においては、トレーサビリティが求められている。このような要望に応えるため、上述した情報が包装体の紙容器又は内容物に印刷されるようになっている。
【0005】
上述した変動情報として、消費期限、製造日時、ロットナンバーなどを印刷しようとすると、バーコードは長くなり過ぎてしまい、紙容器によってはバーコードの長さが紙容器のサイズを超えてしまうこともある。このためバーコードよりも情報密度が大きく、サイズをコンパクトにできる一定のモジュール幅を含む2次元コードを用いて、例えば製品コードを表すバーコードと、その他の変動情報を表す2次元コードを組み合せた、GS1DataBar Limited CC−A等、2次元コードを含むシンボル(コード)が変動情報を示すものとして利用されている。
【0006】
紙容器に固定情報と変動情報とを印刷する方法として、予め固定情報が印刷された紙容器用の包装材料に変動情報を直接印刷する方法や、包装材料に変動情報と固定情報とを直接印刷する方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
変動情報は日々変化しうる情報であるため、変動情報の印刷には、印刷データを容易に変更可能なサーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いることが多い。しかしながら、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換期限を徒過すると印刷不良が発生してしまう。
【0008】
更に、サーマルプリンタやインクジェットプリンタ以外では、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷を用いて包装材料へ変動情報を直接印刷することもあるが、包装材料の汚れや包装材料の厚みむらなどによっては、印刷カスレや文字欠け等が発生してしまう。また、モジュール幅0.25mm以下の2次元コードは、細密過ぎて印刷することがむずかしい。
【0009】
そこで、消耗品を必要とせず印刷性能に優れたレーザー印刷を変動情報の印刷に利用する試みがなされ、これまでに、紙容器用包装材料または紙容器にレーザー印刷するための様々な発明が開示されている。
【0010】
例えば、特許文献2においては、包装材料の紙基材表面に白インキと黒インキをこの順に重ね刷りし、黒インキ層をレーザー光で除去することにより白インキを露出させるレーザー印刷方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2で開示されている発明を実現するためには、包装材料の紙基材上に隠蔽性の高い白色インキを厚塗りしなくてはならない。この際、紙基材に対する一般的な印刷方法であるオフセット印刷において、隠蔽性の高い白インキ層を形成することはむずかしい。このため特許文献2で開示されているように、黒インキ層を除去して、その下地の白インキ層を露出させる方法では、白インキの隠蔽性が不足して、充分なコントラストを得ることはむずかしい。
【0012】
また、特許文献2に開示されている炭酸ガスレーザー光で印刷する場合、白インキ層を殆ど削らないようにするためにはレーザー光の出力を落し、時間を掛けて極めてゆっくり印刷しなければならず、実用的ではない。また、炭酸ガスレーザー光は容易に白インキ層も削ってしまうため、紙基材が露出することがあり、この場合はレーザー印刷物のコントラストを低下させる。このため、炭酸ガスレーザー光で印刷する方法を一般的にバーコードの印刷に用いることは可能だが、白黒のコントラストで読み取る2次元コードの印字に用いると、読み取りグレードが低下してしまう。
【0013】
一方、生産者、商品名などの固定情報と、消費期限の他に製造年月日、製造日時、ロットナンバー、トレーサビリティに関する様々な変動情報を一つのコードに含ませることを考えると、広く利用されているバーコードではなく、モジュール幅0.33mmや0.25mm、更には一般的なハンディリーダーで読み取り可能な最小サイズである、モジュール幅0.20mmの、GS1DataBar Limited CC−A、Data Matrix、QRコード(商標登録)等の複雑かつ細密な2次元コードを含むシンボル(コード)を用いなければならない。しかしながら、このような2次元コードをバーコードリーダーで安定して読み取らせるためには、紙容器にレーザー印刷される2次元コードのコントラストを向上させる必要がある。
【0014】
従来用いられている炭酸ガスレーザー光を用いて黒インキ層をレーザー光により除去する方法においては、レーザー印刷される2次元コードのコントラストを向上させるため、ベースとなる板紙にアイボリー紙等、全層白色紙からなる板紙を使用することがある。このような板紙を用いると、炭酸ガスレーザー光が黒インキ層を除去する際にアイボリー紙表面を削ってしまっても、アイボリー紙の白いボール紙層のみが露出するので、高いコントラストを得ることができる。実際に、このような方法は、紙箱入りタバコの製造年月日等の数字のレーザー印刷や、医薬品販売用紙箱への変動情報のレーザー印刷に用いられている。しかしながら、コート、および、非コートを問わず、白色度の低い、未脱インキ、あるいは未漂白の雑誌古紙や新聞古紙等の再生紙を、中間層、または、裏面に使用した、いわゆるコートウラジロ、コートウラネズ、カード紙等のコート白ボール等に炭酸ガスレーザー光でレーザー印刷すると、表層の白色コート層を削ってしまうため、前記の再生紙基材が露出し、レーザー印刷物のコントラストが低下してしまう。
【0015】
ところでアイボリー紙は高価であるため、薬価の低い医薬品の箱や、製品を複数個包装した外装箱のような、特にコスト低減を要する外装箱にアイボリー紙を用いることが困難である。
【0016】
上述のように従来よりコート白ボールへ変動情報をレーザー印刷する場合、炭酸ガスレーザーが用いられているが、炭酸ガスレーザー光はその性質から、コート白ボール表面のニス層、インキ層のみならず、白色コート層も削ってしまい、更には紙基材までも容易に削ってしまう。このことにより紙粉や煙が大量に発生し、包装工程の環境を汚染するため、衛生性を重視する、医薬品、医療器具の紙箱への変動情報印刷には非常に利用し難い。
【0017】
また、従来レーザー印刷に用いられていたレーザー光は、ビームの中にランダムにピークが発生するマルチモードビームを含むため、紙基材を削らないように、炭酸ガスレーザー光の出力を落とすと、黒インキ層の削り残しが発生してしまう。他方、黒インキ層を完全に除去しようとすると、紙基材も削ってしまうという問題がある。
【0018】
また、コート白ボールにコートされている白色コート層の塗布量自体のばらつきが大きく、コントラストの高い、良好なレーザー印刷物を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−313876号公報
【特許文献2】特開平10−138641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、GS1DataBar Limited CC−Aや、QRコード(商標登録)等の2次元コードを含むコードを明瞭にレーザー印刷することができ、読み取りミスが少なく、紙粉の発生が少なく、かつ衛生的なレーザー印刷方法、レーザー印刷物、および紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、紙基材の一面に形成された白色コート層上に黒色顔料を含む黒色インキ層を形成する工程と、黒色インキ層上にニス層を形成する工程と、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去して印刷部を形成する工程と、を備えたことを特徴とするレーザー印刷方法である。
【0022】
本発明は、ニス層はマットニス層からなることを特徴とするレーザー印刷方法である。
【0023】
本発明は、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とするレーザー印刷方法である。
【0024】
本発明は、2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とするレーザー印刷方法である。
【0025】
本発明は、紙基材と、紙基材の一面に形成された白色コート層と、白色コート層上に形成され、黒色顔料を含む黒色インキ層と、黒色インキ層上に形成されたニス層とを備え、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去することにより印刷部が形成されていることを特徴とするレーザー印刷物である。
【0026】
本発明は、ニス層はマットニス層からなることを特徴とするレーザー印刷物である。
【0027】
本発明は、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とするレーザー印刷物である。
【0028】
本発明は、2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とするレーザー印刷物である。
【0029】
本発明は、紙基材と、紙基材の一面に形成された白色コート層と、白色コート層上に形成され、黒色顔料を含む黒色インキ層と、黒色インキ層上に形成されたニス層とを備え、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去することにより印刷部が形成されていることを特徴とする紙容器である。
【0030】
本発明は、ニス層はマットニス層からなることを特徴とする紙容器である。
【0031】
本発明は、黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とする紙容器である。
【0032】
本発明は、2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とする紙容器である。
【0033】
本発明によれば、紙粉の発生を抑えて2次元コード等の微細コードが明瞭に印刷されたレーザー印刷物および紙容器を得ることができる。
【0034】
また、ニスがマットニスであることによって、読み取りミスがより一層少ない、2次元コードを含むレーザー印刷物および紙容器を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように本発明によれば、紙粉の発生を抑えて2次元コード等の微細コードが明瞭に印刷されたレーザ印刷物及び紙容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明によるレーザー印刷方法を実施するための説明図。
【図2】図2は本発明によるレーザー印刷物を示す図。
【図3】図3は従来のレーザー印刷方法により得られたレーザー印刷物を示す図。
【図4】図4は従来のレーザー印刷方法により得られたレーザー印刷部物を示す図。
【図5】図5は本発明による印刷部を有する紙容器を示す図。
【図6】図6は本発明による印刷部を有する他の紙容器を示す図。
【図7】図7は2次元コードを示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図2および図5乃至図7は本発明によるレーザー印刷方法、レーザー印刷物および紙容器を示す図である。
【0038】
まず図2により、本発明によるレーザー印刷方法によって得られるレーザー印刷物15について説明する。
【0039】
図2に示すように、レーザー印刷物15は紙基材2と、紙基材2の一面に形成された白色コート層3と、白色コート層3上に形成され黒色顔料を含む黒色インキ層4と、黒色インキ層4上に形成されたニス層5とを備えている。
【0040】
そして黒色インキ層4およびニス層5の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射することにより、黒色インキ層4およびニス層5の当該部分が除去され、これによって印刷部7が形成される(図2)。
【0041】
このような構成からなるレーザー印刷物15は、例えば後述する紙容器20を作製するための包装材料を構成する。すなわち、レーザー印刷物15からなる包装材料を打抜きブランク材とし、このブランク材を組立てることによって、紙容器20が得られる(図5および図6)。
【0042】
なお、レーザー印刷物15の印刷物7によって、紙容器20表面に現われる2次元コード11を形成することができ、紙容器20表面には2次元コード11の他に、商品名印刷部10、バーコード12、および文字部13が表示されている(図5および図6)。
【0043】
なお、2次元コード11以外のデザイン印刷部10、バーコード12および文字部13は、レーザー印刷物15の印刷物7によって形成してもよく、レーザー印刷方法以外の方法によって印刷してもよい。
【0044】
またレーザー印刷物15の印刷物7によって形成される2次元コード11は、図7に示すように基本セルの幅(セル幅)lをもつ。尚、特に図示しないが、バーコードの最小バー幅をモジュール幅といい、更に2次元コードとバーコードを複合させたコンポジットコードのモジュール幅とセル幅は等しく、一般的にモジュール幅で表す。
【0045】
また図1および図2において、紙基材2と、紙基材2上の白色コート層3とによってコート白ボール1が構成され、黒色インキ層4とニス層5とによって印刷インキ層6が構成される。
【0046】
<レーザー印刷用コート白ボールの作製>
次に本発明によるレーザー印刷方法について説明する。
【0047】
まず、レーザー印刷用コート白ボールを作製する。
【0048】
すなわち、図1に示すように、まず紙基材2を準備し、紙基材2上の一面に白色コート層3を形成することにより、コート白ボール1が得られる。
【0049】
コート白ボール1は、未脱インキ再生紙、または未漂白再生紙等の上に漂白、または未漂白の白色紙層を重ねて抄紙したボール紙等の白色紙基材2と、紙基材2上に白色顔料をコートして得られた白色コート層3とを有し、表面平滑性と白色度を向上させた板紙である。白色コート層3の反対面に再生紙層が露出しているものをコートウラネズ、白色コート層3の反対面の再生紙層上に漂白紙等の白色紙を積層抄紙したものをコートウラジロといい、再生紙層に着色したコート白ボール1も存在する。
【0050】
白色コート層3は、白色顔料と接着剤を混ぜたものを紙基材2上にコートし、表面平滑性を向上させると共に、接着剤を固めることを目的として、カレンダーロールを通してカレンダー処理がなされることにより紙基材2上に形成される。
【0051】
紙基材2となるボール紙表面にはパルプ繊維の凹凸が存在し、その表面に白色コート層3を形成しても、微視的には白色顔料粒子に起因する若干の凹凸と、パルプ繊維に起因するうねりのような凹凸は残る。
【0052】
コート白ボール用ボール1は、一般的にコートウラジロ、または、コートウラネズと称する、脱インキしていない、または未漂白の新聞古紙、および/または雑誌古紙を原料とする層を有するボール紙、あるいは、未脱インキ、または未漂白の再生紙パルプから作製されるため、色ムラを隠蔽するために染色した再生紙基材2を有するボール紙からなる。このような再生紙基材2表面には、脱インキ再生紙層、または上質古紙漂白層等の白色紙層を積層抄紙することにより予め白色度を上げた層が設けられ、このような紙基材2表面に白色コート層3を形成することにより、未脱インキ新聞古紙等の再生紙を使用しても白色度が高く、表面平滑性に優れるコート白ボール1が得られる。
【0053】
白色コート層3の白色顔料の主成分として最も一般的なのはクレー(焼成クレー、化学変性クレー等の各種変性クレーを含む)であり、その他にも無機顔料として、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、サチンホワイト、タルク等があり、有機顔料として、ポリスチレンやポリアクリル系樹脂からなるピグメント、尿素樹脂系ピグメント等を用いることができ、これらの顔料を単独で、あるいは、複数種類混合して用いられる。
【0054】
接着剤としては、各種変性澱粉、ポリビニルアルコール、カゼイン等を、単独、あるいは、複数種類混合して用いられる。
【0055】
尚、必要に応じてその他助剤として、分散剤、pH調整剤、消泡剤、離型剤等を単独、あるいは、複数種類混合して用いることもある。
【0056】
このようにコート白ボール1表面の白色コート層3の白色顔料としては、多数の種類の顔料が存在するが、本発明のレーザー印刷方法は、白色に吸収され難いレーザー光を使用するため、特にコート白ボールの種類を限定する必要は無い。
【0057】
<レーザー印刷用印刷インキ層の形成>
次に白コート層3上に黒色インキ層4が形成され、その後、黒色インキ層4上にニス層5が形成され、このようにして黒色インキ層4とニス層5とにより印刷インキ層6が得られる。黒色インキ層4およびニス層5からなるレーザー印刷用印刷インキ層6を設けるため、コート白ボール1に対して印刷が行なわれるが、このような印刷方法としてオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等、いかなる方法を用いても良い。このうち、一般的には枚葉オフセット印刷が用いられる。
【0058】
本発明において重要なことは印刷方式ではなく、いかなる印刷方式であれ、レーザー印刷用印刷インキ層6として、少なくともカーボン、チタンブラック等、黒色顔料からなる黒インキ層4を含み、黒色インキ層4の表面にニスを塗布することによりニス層5を形成して耐摩耗性を付与することである。
【0059】
コート白ボール1に黒色インキ層4を設ける場合、黒色インキ層4にピンホールが発生すると目立ってしまうため、しばしば、黒インキ層4の下地層として、ピンホールを目立ち難くするために他の色を印刷したり、あるいは、黒色インキを黄、藍、赤の重ね刷りによって表現したりする。本発明では後述のように黒色インキ層4を除去するレーザー光を用いるため、黒色インキ以外のインキを使用すると、印刷部7において黒色以外の色インキが残ってしまい、コントラストを低下させるため好ましくない。但し、赤色LEDの光でシンボルを読み取る場合は、赤色、桃色、黄色を重ねても良い。
【0060】
コート白ボール1表面には、黒色インキ層4を保護するためニス層5が形成されている。本発明によるレーザー印刷用印刷インキ層6において、黒インキ層4の表面に形成されるニス層5はグロスニス層、マットニス層のいずれでも構わない。
【0061】
本発明において、印刷部7を機械的に読み取る場合、マットニス層を用いると、機械が読み取る際に、機械が発した光を読み取り部に大量に反射することが殆どなく、好ましい。印刷部7の近傍のみマットニス層を形成し、それ以外の部分にはグロスニス層を形成してもよい。マットニス層を形成する場合、メジウムインキ、または、グロスニスにマット剤を添加したインキ等が用いられる。
【0062】
<レーザー光の照射>
次に黒色インキ層4およびニス層5の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射し、黒色インキ層4およびニス層5の当該部分を除去して、印刷部7を形成する(図2)。
【0063】
本発明において使用するレーザー光はシングルモードのYVO4レーザー光である。シングルモードのレーザー光とは、一つのピークからなるレーザー光であって、焦点が絞られるため微細な加工に適している。
【0064】
YVO4レーザーは、YAGレーザーの一種で、当該レーザー光の波長は1064nmで、黒色以外の色に吸収されにくい性質がある。しかしながらYVO4レーザーは全反射される訳ではないので、白色であっても、例えば有機物に強力な出力を付与すれば、最初に焦げが発生し、発生した焦げの部分のカーボンブラックがレーザー光を吸収してレーザー印刷を実施することもできる。しかし、印刷に長時間を要し、かつ、印刷精度が低下するので好ましくない。
【0065】
<レーザー印刷条件>
レーザー印刷の実施に際し特に重要な条件は出力、走査速度、パルス周波数であるが、レーザー出力装置の能力、印刷面積、黒インキの材質、要求される印刷時間、および、要求されるシンボルのグレード等によってレーザー印刷条件は異なるため、具体的に範囲を限定することはできない。
【0066】
レーザー印刷速度を上げたい場合、出力を大きくして走査速度を上げるが、あまり走査速度が高すぎると走査精度が低下して印刷物の仕上がりが雑になる。
【0067】
レーザー印刷物の仕上がりを良くしたい場合、出力を小さくして走査速度を下げると良いが、印刷時間が長くなる。
【0068】
パルス周波数は、黒インキ層4の黒色顔料の材質によって最も効果的にインキを除去できる数値が異なる。パルス周波数は一般的にあまり大きく変動する数値ではないので、レーザー印刷条件を求めるに際して、最初は適当な周波数に設定する。
【0069】
そしてレーザー印刷条件の選定にあたっては、レーザー印刷物のシンボルを検証機で検証しながら出力と走査速度の組合せを何通りか試みてレーザー印刷テストを実施し、希望に近い印刷時間とグレードが得られたら、出力と走査速度を固定して周波数を何通りか変えてレーザー印刷を試みてレーザー印刷物の検証を実施する。最後に出力と走査速度の微調整を行って、最も好適なレーザー印刷条件を選定する。
【0070】
好適なレーザー印刷条件を求める際、最も重要なことはコントラストであり、大抵のレーザー印刷物のグレードはコントラストのグレードに左右される。レーザー印刷部に黒インキ残りが無いか、または、殆ど無く、かつコート白ボールのコート層が削り取られてボール紙の再生紙層が露出していない高コントラストの状況は、目視でも判断可能である。
【0071】
図2は、本発明のレーザー印刷方法を用いて得られたレーザー印刷物15を示す。図2において、レーザー光(シングルモードのYVO4レーザー光)の出力・走査速度を調整し、文字や図柄などの印刷パターンに合わせて位置を制御しながらレーザー光を照射する。このことにより、レーザー光が照射された箇所の黒インキ層4と共にニス層5が燃焼除去され、レーザー光が白色コート層3に達すると、大部分のレーザー光は反射されてしまい、白色コート層3は殆ど除去されない。
【0072】
このような現象は、レーザー印刷した箇所に発生する印刷カスの量からも明らかで、予め弱粘着テープで印刷インキ層6のニス層5上の異物を取り除いた後、本発明のレーザー印刷方法でレーザー印刷を実施し、印刷部7を形成する。次に再度弱粘着テープを印刷部7近傍に貼って、剥がした。この場合、弱粘着テープの粘着面には可視異物を殆ど認めることができず、本発明のレーザー印刷物15の表面を指で擦っても、黒色インキが除去された部分と、除去されていない部分の段差を感じることはできない。
【0073】
他方、従来の炭酸ガスレーザー光を用いたレーザー印刷物15の場合、印刷部7とその周囲の段差が大きく、指で擦ればザラザラした感触を確認できる。また、可視異物も紙粉や紙粉の燃えカス、剥がれたコート層等を容易に確認できる。
【0074】
上記のようにして得られる本発明に係るレーザー印刷物15において、黒色インキ層4と白色コート層3との高コントラストを得ることができ、バーコードの検証項目の一つであるシンボルコントラスト値(バーコード上の最大反射率と最小反射率の差)が55%以上のものを容易に得ることができる。このため、シンボルコントラストのグレードでBを容易に得られる。
【0075】
このとき、ニス層5がグロスニス層からなる場合、測定機の光を黒インキ層4表面のグロスニス層5が反射し、黒インキ層4の最小反射率を上げてしまう場合がある。このような場合にはシンボルコントラスト値が40%〜55%未満に低下してしまうがバーコードの読み取りには差し支え無い。更に、測定光の入射角や反射角によっては、同一のレーザー印刷物であってもシンボルコントラスト値が20%未満となることもあるが、読み取りは可能である。
【0076】
次に図3および図4により、従来の炭酸ガスレーザーを用いた比較例としてのレーザー印刷物15について説明する。図3は、従来の炭酸ガスレーザーを用いて、印刷カスの発生をできるだけ低く抑えるために、コート白ボール1の再生紙層が露出しないようにレーザー印刷されたレーザー印刷物15を示す図である。
図3に示すように、炭酸ガスレーザー光は白色コート層3を除去してしまうため、ボール紙の再生紙層を露出させないように弱い出力でレーザー印刷して印刷部7を形成すると、どうしても印刷部7に黒インキ層4が部分的に残ってしまい、このため印刷部7におけるシンボルコントラスト値が低下する。また、白色コート層3も部分的に除去してしまうため、印刷後のレーザー印刷物15表面には、細かい印刷カスが多数付着してしまう。また、レーザー印刷により形成された印刷部7に黒色インキ層4が残ってしまうため、読み取りエラーが発生し易い。更には炭酸ガスレーザー光のビーム中には、細かいピークが複数存在するため精密描画を短時間で実施するのは難しい。このため、モジュール幅0.33mm以下のバーコードや2次元コードをレーザー印刷方法により形成する場合、読み取り可能なバーコードや2次元コードを得ることが困難である。
【0077】
図4は、従来の炭酸ガスレーザーを用いて、黒インキ層4の除去もれが無いように、黒インキ層4を完全に除去する条件でレーザー印刷されたレーザー印刷物15を示す図である。図4においては、白色コート層3も部分的に除去されるため、ボール紙(紙基材)2が露出してしまっている。このようなレーザー印刷物15であっても、アイボリー紙等、白色度の高いコート白ボールであれば、ボール紙がレーザー光で焦げない限りコントラストの高いレーザー印刷物を得ることができる。しかしながら未脱インキ、あるいは未漂白の古紙を原料とする層を含むボール紙を用いたコート白ボールでは、未脱インキ層あるいは、未漂白層が露出してしまい、シンボルコントラスト値が低下して、40%以下になってしまう。このため文字等人間が読み取る印刷内容であれば良いが、機械が読み取る、バーコード、や2次元シンボルではグレードが低下してしまう。特に、総合判定でグレードC以上を求められる医薬品用紙容器に炭酸ガスレーザーを用いることは、白色コート層3の厚みのばらつきを考えると好ましくない。
【0078】
次に図5および図6により本発明によるレーザー印刷物15からなる紙容器20について述べる。
【0079】
図5に示すように、紙容器20の表面には、予めオフセット印刷機等で印刷した商品名、内容量等の商品名印刷部10、バーコード12、文字部13とともに、レーザー印刷により得られた2次元コード11が表示されている。図5において、紙容器20を組み立てた後、レーザー印刷を実施しているが、紙容器20を組み立てる直前に、ブランクまたはサック貼りの状態でレーザー印刷しても構わない。なお、図5において、2次元コード11は、紙容器20表面のレーザー印刷用表示部11に形成される。
【0080】
また図6に示す紙容器20において、紙容器20の表面に、商品名、内容量等の商品名印刷部10、文字部13、数字部14、GS1DataBar Limited CC−A等の2次元コードを含むバーコード12が設けられ、これら商品名印刷部10、文字部13、数字部14およびバーコード12は、いずれも本発明によるレーザー印刷方法により形成された印刷部7から構成されている。
【実施例】
【0081】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0082】
(実施例1)
裏面が未脱インキ再生紙となっているコートウラネズとして、坪量310g/m2の紙基材2を含むコート白ボール1(王子製紙株式会社製、製品名「UFコート」)を使用し、枚葉オフセットUV印刷機を用いて、該コート白ボール1の白色コート層3に、デザイン印刷部等の商品名印刷部10を形成した。同時に、黒色インキを用いて20mm×35mmの黒色インキ層4を含むレーザー印刷用表示部11Aを形成した後、糊代部を除いたコート白ボール1全面にUVメジウムインキを塗布してニス層5を形成した後、打抜き、サック貼りを施した。その後、黒色インキ層4およびニス層5に対して、YVO4レーザー光を照射して、レーザー印刷物15を製造した。その後、当該サック貼り品を組み立てて、縦76mm×横110mm×高さ62mmの紙容器20を得た。紙容器20の印刷部7は紙容器20の天面の右下に位置する。
【0083】
(実施例2)
実施例1と同様にしてレーザー印刷物15を製造した。この場合、レーザー印刷物15において、糊代部を除いた紙箱形成部全面にUVグロスニスを塗布し、打抜き、サック貼りを施した。当該サック貼り品を組み立てることにより、実施例1と同じく縦76mm×横110mm×高さ62mmの紙容器20が得られた。紙容器20の印刷部7は紙容器20の天面の右下に位置する。
【0084】
(レーザー印刷条件出し)
実施例1および2において、レーザー印刷物15を得るため、黒色インキ層4およびニス層5に対して、シングルモードビームYVO4レーザー印刷機(株式会社キーエンス製、商品名「MD−V9900」)を用いて、YVO4レーザー光を照射した。この場合、印刷部7の黒色インキ層4が肉眼で見えなくなる、レーザーパワーの最も低い条件を目視で比較判断した。同時にスキャンスピードを1000mm/秒に固定し、レーザーパワーと周波数を振って、モジュール幅0.33mmのバーコード(RSSリミテッド)と二次元コード(CCA)とで構成されるコンポジットコードであるGS1DataBar Limited CC−Aのレーザー印刷テストを実施した。この結果、レーザーパワー70%、周波数40kHzの条件が最も優れていた。
【0085】
なお、本実施例1および2において、バーコードと2次元コードの両方を一度に評価できる利便性からGS1DataBar Limited CC−Aを用いたのであり、本発明に基づきレーザー印刷するシンボルは、バーコード、および、2次元コード共に他の規格であっても全く問題無い。
【0086】
また、本実施例では厚生労働省が特定生物由来の医薬品包装に印刷を義務付けたGS1DataBar Limited CC−AをYVO4レーザー光により形成したが、本発明のレーザー印刷方法は、当該シンボルの印刷に限定するものではなく、Data Matrix、QRコード(商標登録)等の他の2次元コードを含むシンボルを形成してもよい。
【0087】
(レーザー印刷物比較実験)
また同様に、比較実験1、2において、レーザー印刷物15を得るため、黒色インキ層4およびニス層5に対して、炭酸ガスレーザー印刷機(商品名「ML−Z9500」、株式会社キーエンス製)を用いて、炭酸ガスレーザー光を照射した。この場合、印刷部7の黒インキ層7が肉眼で見えなくなる、レーザーパワーの最も低い条件を目視で比較判断しながら、スキャンスピードを1000mm/秒に固定した。装置の機能上、周波数を振ることができないため、レーザーパワーを振って、モジュール幅0.33mmのGS1DataBar Limited CC−Aのレーザー印刷テストを実施した。その結果、レーザーパワー90%が最も優れていた。なお、比較実験1はYVO4レーザー光を用いる代わりに炭酸ガスレーザー光を用いた点以外は実施例1と同様である。また比較実験2はYVO4レーザー光を用いる代わりに炭酸ガスレーザー光を用いた点以外は実施例2と同様である。
【0088】
(レーザー印刷物の製造)
前記二つの装置で求めたそれぞれのレーザー印刷条件で、実施例1、2、および比較実験1、2において、モジュール幅lが0.33mm、0.25mm、0.20mm、および0.18mmの3種類のGS1DataBar Limited CC−Aをレーザー印刷用表示部11の1箇所について1個形成してレーザー印刷物15を作製し、このレーザー印刷物15を10枚作製した。
【0089】
その結果、実施例1,2において、YVO4レーザー光によるレーザー印刷物15は、印刷部がきれいな白色コート層3の白色を呈し、かつ、レーザー印刷時に煙は発生したが、レーザー印刷物15上に印刷カスは肉眼では認められず、指先で印刷部を拭いても指に汚れは付着せず、また、印刷部と非印刷部の段差は感じられなかった。
【0090】
しかしながら、比較実験1、2において、炭酸ガスレーザー光によるレーザー印刷物15は、印刷部7において再生紙の灰白色を呈しており、明らかにコントラストが低下しているのみならず、コート層の粉や紙粉といった印刷カスが周囲に飛び散って衛生的に好ましい状態ではなかった。さらに、モジュール幅lが0.20mm以下のレーザー印刷物15は残るべき黒インキ層4も殆ど除去されていて、肉眼でも判読不能なレベルであることが分かる状態だった。
【0091】
このことから、本発明に係るレーザー印刷方法で作成したレーザー印刷物15および紙容器20は、従来のレーザー印刷方法で作成したレーザー印刷物15および紙容器20より衛生的であり、医薬品を収納するために適している。
【0092】
(印刷品質の検証)
実施例1,2およびその比較実験のレーザー印刷物15に対し、検証機(商品名「TC401−RL」、ムナゾウ株式会社製)を用いて印刷品質の検証を行なった。このときの検証グレードを表1に示す。
【0093】
ここでいう検証グレードとは、米国基準ANSI X3.182により定められたもので、エレメントエッジの判定等、バーコードおよびコンポジットコードは8個、2次元コードは17個の評価項目でシンボルを測定してそれぞれの測定結果をA、B、C、D、Fの5段階で表したものである。検証グレードは全ての評価結果中の最低評価グレードを示した測定項目のグレードであって、被測定シンボルのグレードを表すものである。
【0094】
ちなみに、Aが最高グレード、Dが最低グレードであって、Fは欠陥を表す。但し、グレードFでも通常のハンディリーダーや検査装置でも読み取り可能だが、シンボルとみなされなかった場合は、グレードFの評価も得られない。一般的にはグレードC以上の使用が勧められているため、印刷品質のばらつきによる突発的グレード低下を考慮して、グレードB以上の品質で管理されることが多い。
【表1】

【0095】
表1に示した通り、実施例1,2において、シングルモードビームYVO4レーザー光を用いてレーザー印刷用表示部11Aにレーザー印刷して形成されたシンボル(印刷部7)は、高いコントラストと精密印刷の効果により全てグレードBをもつ。但し、実施例2のレーザー印刷用表示部11Aにレーザー印刷したシンボルにおいて、検証機の測定光がグロスニスに反射することがあったが、検証機内で少し位置をずらして測定するとグレードBが得られたため、実質的にグレードBであると判断した。尚、当然ながらハンディリーダー(商品名「BT−951」、株式会社キーエンス製)による読み取りも全て正確にできた。
【0096】
これに対して比較実験1、2において、炭酸ガスレーザー光を用いてレーザー印刷用表示部11Aにレーザー印刷して形成されたシンボル(印刷部7)は、モジュール幅lが0.33mmのレーザー印刷物15において、印刷部7で部分的に再生紙層が露出したことによるコントラストの低下が原因でグレードCとなった。モジュール幅lが0.25mmのレーザー印刷物15の印刷部7において走査レーザー光の周囲も幅広く削られ、モジュール幅がやせ細る現象により、モジュール幅が異常に細くなってしまい、グレードFになってしまった。
【0097】
更に、モジュール幅lが0.20mm、0.18mmのレーザー印刷物15において、モジュール幅lが細まる割合が大きくなり、検証機がシンボルと認識できないほどになってしまい、ハンディリーダーでも読み取ることはできなかった。
【0098】
以上の結果から、本発明のレーザー印刷方法は、従来と比較して細密な印刷物を高い精度で得られることが明らかであった。
【0099】
(紙容器20の製造)
YVO4レーザー印刷装置、および炭酸ガスレーザー印刷装置を用いて、モジュール幅lが0.33mmのGS1DataBar Limited CC−Aを印刷した実施例1,2によるレーザー印刷物15から紙容器20を作製するとともに、同様にして比較例によるレーザー印刷物15から紙容器20を作製した。実施例1,2により作製された10個の紙容器20内にそれぞれ市販の目薬を箱ごと5個づつまとめてポリプロピレン製シュリンクフィルムを用いてシュリンク包装したものを収納した。
【0100】
尚、本実施例1,2において、紙容器20のサック貼り状態のレーザー印刷物15にレーザー印刷を施したが、紙容器20を形成した後、または紙容器20内に内容物を収納した後にレーザー印刷を施しても構わない。
【0101】
上記包装体を開封し、内容物を取り出してシュリンクフィルム外面に付着した異物を肉眼で観察した結果、実施例1,2において、YVO4レーザー印刷装置を用いてレーザー印刷した紙容器20の内容物に付着した異物は、紙粉と思われるものが多くても1箱当り数個であった。
【0102】
これに対して比較例において炭酸ガスレーザー印刷装置を用いてレーザー印刷した紙容器20内の内容物には、紙粉と思われる異物以外に、紙容器20内面にレーザー印刷カスが侵入した黒色異物がみられた。このようなレーザー印刷カスからなる黒色異物が十個以上付着したものが3箱あった。黒色異物の大きさは紙粉の十分の一程度だが、白っぽい紙粉と比較して汚らしく見えるため、医薬品、医療器具、化粧品等の包装体において非常に嫌われるものである。
【0103】
以上の結果から、本発明に係るレーザー印刷方法で作成したレーザー印刷物15からなる紙容器20は、従来のレーザー印刷方法で作成したレーザー印刷物15からなる紙容器20より衛生的であり、医薬品を収納する紙箱に適していることは明白である。
【符号の説明】
【0104】
1 コート白ボール
2 紙基材
3 白色コート層
4 黒色インキ層
5 ニス層
6 印刷インキ層
7 印刷部
10 デザイン印刷部
11A レーザー印刷用表示部
11 2次元コード
12 バーコード
13 文字部
14 数字部
15 レーザー印刷部
20 紙容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一面に形成された白色コート層上に黒色顔料を含む黒色インキ層を形成する工程と、
黒色インキ層上にニス層を形成する工程と、
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去して印刷部を形成する工程と、を備えたことを特徴とするレーザー印刷方法。
【請求項2】
ニス層はマットニス層からなることを特徴とする請求項1記載のレーザー印刷方法。
【請求項3】
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とする請求項1記載のレーザー印刷方法。
【請求項4】
2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とする請求項3記載のレーザー印刷方法。
【請求項5】
紙基材と、
紙基材の一面に形成された白色コート層と、
白色コート層上に形成され、黒色顔料を含む黒色インキ層と、
黒色インキ層上に形成されたニス層とを備え、
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去することにより印刷部が形成されていることを特徴とするレーザー印刷物。
【請求項6】
ニス層はマットニス層からなることを特徴とする請求項5記載のレーザー印刷物。
【請求項7】
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とする請求項5記載のレーザー印刷物。
【請求項8】
2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とする請求項5記載のレーザー印刷物。
【請求項9】
紙基材と、
紙基材の一面に形成された白色コート層と、
白色コート層上に形成され、黒色顔料を含む黒色インキ層と、
黒色インキ層上に形成されたニス層とを備え、
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層およびニス層の当該部分を除去することにより印刷部が形成されていることを特徴とする紙容器。
【請求項10】
ニス層はマットニス層からなることを特徴とする紙容器。
【請求項11】
黒色インキ層およびニス層の所望部分に対してYVO4レーザー光を照射して黒色インキ層の当該部分を除去することにより印刷部として2次元コードを形成することを特徴とする紙容器。
【請求項12】
2次元コードのモジュール幅は0.18mm〜0.33mmとなっていることを特徴とする紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235462(P2011−235462A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106518(P2010−106518)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】