説明

レーザ送信器の照準調整装置

【課題】非可視光であるレーザ光を用いた射撃訓練装置等において、発射したレーザ光が実際にどの地点に到達したかを特定でき、照準方向の補正を明確にできるレーザ送信器の照準調整装置を提供する。
【解決手段】レーザ送信器11に照準眼鏡15を装着すると共に撮像装置16を平行に装着する。制御部12は、照射用スイッチ14が操作された際にレーザ送信器11から非可視光であるレーザ光を目標物13に発射すると共に、撮像装置16により目標方向の画像を撮像し、その画像をメモリ17に記憶して画像処理し、レーザ光の到達地点と共にモニタ装置18に表示する。レーザ光の到達地点が目標物13からずれた場合、そのずれに基づいてレーザ送信器11のレーザ光発射方向を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の照準方向を調整するための照準調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非可視光であるレーザ光を送信するレーザ送信器を有する射撃装置に照準眼鏡を装着し、該照準眼鏡によりレーザ送信器の照準方向を合わせてレーザ光を照射するようにした射撃訓練装置や射撃シミュレーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、上記非可視光であるレーザ光を用いた射撃訓練装置や射撃シミュレーション装置は、図6に示すようにレーザ送信器1に照準眼鏡2を装着し、該照準眼鏡2によりレーザ送信器1の照準方向を目標物3に合わせてレーザ光4を照射しても、レーザ光の送信方向と照準眼鏡2の照準方向が一致していない場合には、照射側では発射したレーザ光4の到達地点5が実際にどの地点であるのか特定することができず、次に何処を狙えば的確に目標物3へレーザ光4を的中させることができるのか、照準方向の補正を明確にすることができなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−18892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように非可視光であるレーザ光を用いた従来の射撃訓練装置や射撃シミュレーション装置は、照準眼鏡2を備えていても発射したレーザ光4が実際にどの地点に到達したかを特定することができず、次に何処を狙えば的確に目標物3へレーザ光4を的中させることができるのか、照準方向の補正を明確にすることができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、非可視光であるレーザ光を用いた射撃訓練装置や射撃シミュレーション装置において、発射したレーザ光が実際にどの地点に到達したかを特定でき、次に何処を狙えば的確に目標物へレーザ光を的中させることができるのか、照準方向の補正を明確にすることができるレーザ送信器の照準調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の方向を調整するための照準調整装置であって、前記レーザ送信器と平行に固定された撮像手段と、前記レーザ送信器から前記非可視光が発射されたときに前記撮像手段で撮像された画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ送信器から発射される非可視光は基本的に直線上に照射されるので、レーザ送信器と平行に撮像手段を配置することにより、レーザ送信器から発射された非可視光を中心とする目標方向の画像を撮像することができる。そして、上記撮像手段により撮像した画像を記憶手段に記憶して表示手段に表示することで、画像による到達地点の判定が可能となり、照準眼鏡の方向を的確に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る照準調整装置をレーザ光を用いた射撃訓練装置に実施した場合の概略構成例を示すブロック図である。
図1において、11はレーザ送信器で、制御部12の制御に基づいて非可視光であるレーザ光を目標物13に向けて発射する。このレーザ送信器11からレーザ光の発射により、弾丸の発射を模擬して射撃訓練を行う。また、レーザ送信器11は、模擬銃に取り付けられる模擬銃の引金(図示せず)には、照射用スイッチ14が設けられており、制御部12は照射用スイッチ14が操作された際にレーザ送信器11を駆動制御し、例えば特定情報(移動情報を含む各種情報(時刻情報、状況情報等))が含まれるレーザ光を発射させる。また、上記模擬銃には、照準眼鏡15が取り付けられる。照準眼鏡15は、本来、銃口から発射される弾丸の発射方向を目標物に照準するものだが、本実施形態では、レーザ送信器11から照射されるレーザ光を目標物13に照準するための模擬銃に用いる。照準眼鏡15は、照準方向を調整するための調整機構(図示せず)を備える。
【0010】
上記のようにレーザ送信器を有する射撃装置に照準眼鏡15が取り付けられ、照射用スイッチ14の操作によってレーザ光を発射するように構成された射撃訓練装置は、例えば特開2002−81897号公報に詳細に示されている。
また、レーザ送信器11には、例えばCCD(Charge Coupled Device)や望遠レンズ等を用いた撮像装置16が装着される。この場合、撮像装置16は、レーザ送信器11に対して物理的に平行となるように固定して設けられ、上記照射用スイッチ14が操作された際に制御部12の制御に従って動作し、レーザ送信器11の目標方向の画像を撮像して制御部12へ出力する。
【0011】
制御部12は、撮像装置16により撮像された画像を記憶するメモリ17を内部に備えると共に、上記撮像された画像を表示するためのモニタ装置18が外部接続される。制御部12は、撮像装置16により撮像された画像をメモリ17に記憶して画像処理し、レーザ送信器11から放射されたレーザ光の到達地点における画像をモニタ装置18に表示する。
【0012】
次に上記レーザ送信器11及び撮像装置16部分の具体的な構成例について図2を参照して説明する。図2はレーザ送信器11及び撮像装置16部分の構成を示す分解斜視図である。レーザ送信器11は図示しないが銃(模擬銃)上に装着されるもので、該レーザ送信器11及び銃によって射撃装置を構成している。
【0013】
上記レーザ送信器11は、筐体111の内部にレーザ光を発生するレーザダイオードモジュール(図示せず)が設けられ、筐体111の先端側に光学レンズ112が設けられる。この光学レンズ112は、上記レーザダイオードモジュールで発生したレーザ光を収束し、外部の目標物に向けて照射する。
【0014】
上記レーザ送信器11の筐体111の両側下部には、銃に設けられた取付基台(図示せず)に取り付けるための例えば4つの取付基部113を備え、この取付基部113にそれぞれ取付穴(ねじ穴)114が設けられている。
また、レーザ送信器11の筐体111には、例えば一方の側面の下部に撮像装置16を取り付けるための2つの取付基台115a、115bが設けられる。この取付基台115a、115bには、それぞれガイドピン116a、116bが側方に突出して設けられると共に、ガイドピン116a、116bに隣接してネジ穴117a、117bが設けられる。
【0015】
一方、撮像装置16は、平面状の取付基板160にネジ161a〜161dにより固定されている。上記取付基板160には、上記ガイドピン116a、116bに対向する位置にガイドピン挿入穴162a、162bが設けられている。撮像装置16は、レーザ送信器11の筐体111に取り付ける際に取付基台115a、115bに設けられているガイドピン116a、116bを取付基板160のガイドピン挿入穴162a、162bに挿入して位置決めを行い、その後、取付基台115a、115bに設けたネジ穴117a、117bに取付ネジ163a、163bを螺着して固定する。これにより撮像装置16は、レーザ送信器11に対して物理的に平行となるように固定して設けられる。また、撮像装置16は、前端側に集光用レンズ164を備えている。
【0016】
次に上記のように構成された射撃訓練装置の照準調整処理動作を図3に示すフローチャート、図4に示す照準画像及びモニタ画像を参照して説明する。
射撃訓練装置を使用して射撃訓練をする人は、先ず照準眼鏡15によりレーザ送信器11のレーザ照射方向を目標物13に照準する(ステップA1)。図4(a)は、照準眼鏡15から見た目標方向の照準画像31を示したもので、画像の中央位置に照準用の十字線21が示される。また、図4(a)の中央に示す枠は照準画像内における目標物13の位置を示している。射撃訓練者は、目標照準を行う場合、照準用の十字線21の中心が目標物13に一致するように射撃装置の方向を調整する。尚、照準画像31(照準器の覗き側から見える像)を図では四角で示したが、実際は照準眼鏡15の形状による。
【0017】
射撃訓練者は、上記目標照準を行った後、照射用スイッチ14を操作する(ステップA2)。照射用スイッチ14が操作されると、制御部12はレーザ送信器11を駆動してレーザ光を目標物13に向けて発射すると共に、撮像装置16を駆動して目標方向の画像を撮像する(ステップA3、A4)。撮像装置16は、レーザ送信器11に対して平行に設けられており、レーザ送信器11から発射されたレーザ光を中心として目標方向の画像を撮像する。
【0018】
制御部12は、撮像装置16で撮像された目標方向の画像を取得して処理し(ステップA5)、図4(b)に示すようにレーザ送信器11から発射されたレーザ光を中心とする目標方向の画像及びレーザ光の到達地点23をモニタ装置18に表示する(ステップA6)。
【0019】
図4(b)は、レーザ送信器11から発射されたレーザ光が照準眼鏡15により照準された目標物13より左上にずれた位置に到達した場合の例を示したもので、32はモニタ装置18に表示される実際のモニタ画像を示している。制御部12は、モニタ画像32の中心部に照準用の十字線22を表示すると共に、十字線22の中心にレーザ送信器11から発射されたレーザ光の到達地点23を例えば黒丸で表示する。すなわち、レーザ送信器11に対して撮像装置16が平行に設けられているので、制御部12は撮像装置16により撮像された画像の中心をレーザ光の到達地点23として処理する。従って、この場合の例では、モニタ画像32の中心位置より右下に目標物13が表示される。
【0020】
図5は、上記照準眼鏡15による照準方向とレーザ送信器11から発射されたレーザ光の到達地点23との関係を更に詳細に示したものである。図5において、41は照準眼鏡15と目標物13とを結ぶ眼鏡線、42はレーザ送信器11から目標物13に向けて発射されたレーザ光、43は撮像装置16が撮像する画像の中心を示すカメラ線である。
【0021】
照準眼鏡15により目標物13に照準を合わせた場合、眼鏡線41は目標物13に一致する。このときレーザ送信器11から発射されるレーザ光42と眼鏡線41との間にずれがなければ、レーザ光42は目標物13に到達する。また、撮像装置16はレーザ送信器11に平行に設けられているので、カメラ線43もレーザ光42と平行して目標物13に一致する。しかし、レーザ送信器11から発射されるレーザ光42と眼鏡線41との間にずれを生じていると、レーザ光42は目標物13には到達せず、眼鏡線41とのずれに応じて目標物13から離れた位置に到達する。このときカメラ線43もレーザ光42と同じ方向にずれる。図5では、レーザ光42及びカメラ線43が目標物13より左上にずれている状態を示している。
【0022】
上記のように照準眼鏡15により目標物13に照準を合わせてレーザ送信器11からレーザ光42を発射した結果、図4(b)に示したようにレーザ光の到達地点23が目標物13の左上にずれた場合、射撃訓練者はレーザ光の発射方向はそのままの状態で図4(c)に示すように照準眼鏡15における照準用十字線21が目標物13の左上方向に位置するように照準眼鏡15の方向を調整し(すなわち前回の照準結果を補正するようにレーザ送信器11のレーザ光発射方向を修正し)、その後、再度照準用十字線21を目標物13の位置に合わせて照射用スイッチ14を操作する。
【0023】
制御部12は、照射用スイッチ14が操作されると、上記したようにレーザ送信器11を駆動してレーザ光を目標物13に向けて発射すると共に撮像装置16を駆動して目標方向の画像を撮像する。そして、制御部12は、撮像装置16で撮像された画像を処理し、図4(d)に示すようにレーザ送信器11から発射されたレーザ光を中心とする目標方向の画像及びレーザ光の到達地点23をモニタ装置18に表示する。この場合には、レーザ送信器11から発射されるレーザ光の方向が修正されているので、レーザ光の到達地点23を目標物13に的中させることができる。なお、この時点においてもレーザ光の到達地点23が目標物13からずれている場合には、そのずれに応じて照準方向を再度調整することにより、レーザ光の到達地点23を目標物13に的中させることができる。
【0024】
上記実施形態によれば、非可視光であるレーザ光を用いた射撃訓練装置や射撃シミュレーション装置において、発射したレーザ光が実際にどの地点に到達したかを特定でき、次に何処を狙えば的確に目標物へレーザ光を的中させることができるのか、照準方向の補正を明確にすることができる。
【0025】
すなわち、レーザ送信器11から発射されるレーザ光は、基本的に直線上に照射されるので、レーザ送信器11と平行に撮像装置16を配置することで、レーザ送信器11から発射されたレーザ光を中心とする目標方向の画像を撮像装置16により撮像することができる。そして、撮像装置16が撮像した画像を制御部12により処理して撮影画像及びレーザ光の到達地点をモニタ装置18上に表示させることにより、画像による到達地点の判定が可能となり、照準眼鏡15による照準を的確に調整することができる。
【0026】
上記のようにモニタ装置18に表示されるレーザ光の到達地点23に基づいて照準眼鏡15自体の照準方向を調整することにより、その後は、照準眼鏡15により照準した目標物13とレーザ送信器11から発射したレーザ光の到達地点23とのずれをなくし、命中率を向上することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る照準調整装置をレーザ光による射撃訓練装置に実施した場合の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】同実施形態におけるレーザ送信器及び撮像装置部分の具体的な構成例を示す分解斜視図である。
【図3】同実施形態における射撃訓練装置の照準調整動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態における射撃訓練装置のモニタ画像及び照準画像を示す図である。
【図5】同実施形態において、照準眼鏡による照準方向とレーザ送信器から発射されたレーザ光の到達地点との関係を詳細に示す図である。
【図6】非可視光であるレーザ光を用いた従来の射撃訓練装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
11…レーザ送信器、12…制御部、13…目標物、14…照射用スイッチ、15…照準眼鏡、16…撮像装置、17…メモリ、18…モニタ装置、21、22…照準用の十字線、23…レーザ光の到達地点、31…照準画像、32…モニタ画像、41…眼鏡線、42…レーザ光、43…カメラ線、111…筐体、112…光学レンズ、113…取付基部、114…取付穴、115a、115b…取付基台、116a、116b…ガイドピン、117a、117b…ネジ穴、160…取付基板、161a〜161d…ネジ、162a、162b…ガイドピン挿入穴、163a、163b…取付ネジ、164…集光用レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の方向を調整するための照準調整装置であって、
前記レーザ送信器と平行に固定された撮像手段と、
前記レーザ送信器から前記非可視光が発射されたときに前記撮像手段で撮像された画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするレーザ送信器の照準調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−71593(P2010−71593A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241724(P2008−241724)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】