説明

レーダ用空中線装置

【課題】レーダ用空中線装置の動作を安定化させる。
【解決手段】複数のアンテナ4−1〜nと、アンテナ4−1〜nそれぞれに設けられ、アンテナ4−1〜nから高周波信号をパルス送信する複数の送信モジュール10−1〜nと、トリガ信号及びゲート信号を複数の送信モジュールに分配するマザーボード1とを具備し、複数の送信モジュール10−1〜nそれぞれは、トリガ信号にしたがってクロック信号を生成するクロック生成回路22と、トリガ信号によって起動し、上記ゲート信号にしたがって上記生成されたクロック信号に同期する電源生成回路21と、生成されたパルス電源を用いて高周波信号を増幅する高周波増幅回路3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルスレーダ装置に用いられる空中線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空中線装置では、複数のパルス電源回路を同期動作させるために、送信パルス電源を生成するゲート信号に加えて、同期用のクロック信号がパルス電源回路に必要である。従来の空中線装置では、パルス電源回路の動作するクロック信号は空中線装置の動作クロックと同じものを使用している。電源回路に最適な動作周波数は数KHzから数MHzであるのに対し、空中線装置の動作クロックは数MHzから数10MHzの高い周波数であるため、パルス電源回路の動作を不安定にさせていた。またクロック信号はノイズの発生源でもあり、クロック信号をパルス電源回路まで配線することにより、動作の不安定化を招いていた。
【0003】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開2005−130198公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の空中線装置では、パルス電源回路の動作するクロック信号は空中線装置の動作クロックと同じものを使用しているため、クロック信号の配線から発生するノイズにより、パルス電源回路の動作が不安定となっていた。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、空中線装置の動作を安定化させることができるレーダ用空中線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明に係るレーダ用空中線装置は、複数のアンテナと、前記アンテナ毎に設けられ、前記アンテナから高周波信号をパルス送信する複数の送信モジュールと、トリガ信号及びゲート信号を前記複数の送信モジュールに分配する分配手段とを具備し、前記複数の送信モジュールそれぞれは、前記トリガ信号にしたがってクロック信号を生成するクロック生成回路と、前記トリガ信号によって起動し、前記ゲート信号にしたがって前記生成されたクロック信号に同期するパルス電源を生成する電源生成回路と、前記生成されたパルス電源を用いて前記高周波信号を増幅する高周波増幅回路とを備える。
【発明の効果】
【0007】
したがってこの発明によれば、空中線装置の動作を安定化させることができるレーダ用空中線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ用空中線装置における制御信号および電源に関する系統図である。
この空中線装置は、複数のアンテナ4−1〜nと、アンテナ4−1〜nそれぞれに設けられ、アンテナ4−1〜nから高周波信号をパルス送信する複数の送信モジュール10−1〜nと、トリガ信号及びゲート信号を複数の送信モジュールに分配するマザーボード1とを備える。送信モジュール10−1〜nは、高周波信号を増幅する高周波増幅回路3、高周波増幅回路3に送信用パルス電源を供給するパルス電源回路2を備える。以下、送信モジュール10−1〜nの総称は、送信モジュール10とする。
【0009】
パルス電源回路2には、マザーボード1を通じてトリガ信号およびゲート信号が入力される。パルス電源回路2には、電源生成回路21およびクロック生成回路22がそれぞれ内蔵されている。クロック生成回路22は、電源生成回路21に供給する電源用クロック信号を生成する。電源生成回路21は、クロック生成回路22により供給される電源用クロック信号により動作して送信用パルス電源を生成する。なお、電源用クロック信号の周波数は、電源生成回路21の動作に適した周波数(数KHzから数MHz程度)を任意に選択可能である。
【0010】
図2を用いてパルス電源回路2の動作について説明する。なお、図2は、負論理(立下り同期)の場合について示したものであるが、正論理(立ち上がり同期)の場合も同様である。
パルス電源回路2に入力されるトリガ信号が立ち下がると(A点)、この立下りに同期してクロック生成回路22は動作をリセットし、電源用クロック信号を生成し始める。このトリガ信号にしたがって、電源生成回路21は起動し、回路内の異常の有無を判定し、異常のない場合は動作を開始し、ゲート信号の立ち下がり区間(B点からC点の間)において電源用クロック信号に同期してパルス電源を高周波増幅回路3に出力する。
【0011】
以上述べたように、上記実施形態では、各送信モジュール10−1〜nには、マザーボード1からトリガ信号及びゲート信号が分配供給され、クロック生成回路22は、トリガ信号にしたがって電源用クロック信号を生成する。電源生成回路21は、トリガ信号によって起動し、上記ゲート信号にしたがって電源用クロック信号に同期するパルス電源を生成する。
【0012】
したがって上記実施形態によれば、電源用クロック信号の周波数は電源生成回路21の動作に最適な周波数を選択できるため、電源生成回路21の動作を安定化でき、全ての送信モジュール10−1〜nの電源生成回路21の動作に同期を得ることが出来る。また、空中線装置の動作クロック信号のパルス電源回路2への配線が不要になるので、従来問題であった空中線装置の動作クロック信号の配線から発生するノイズ信号を低減することができ、空中線装置の動作を安定なものとできる。
【0013】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ用空中線装置における制御信号および電源に関する系統図。
【図2】図1に示す空中線装置の動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0015】
1…マザーボード、10−1〜n…送信モジュール、2…パルス電源回路、3…高周波増幅回路、21…電源生成回路、22…クロック生成回路、4−1〜n…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記アンテナ毎に設けられ、前記アンテナから高周波信号をパルス送信する複数の送信モジュールと、
トリガ信号及びゲート信号を前記複数の送信モジュールに分配する分配手段と
を具備し、
前記複数の送信モジュールそれぞれは、
前記トリガ信号にしたがってクロック信号を生成するクロック生成回路と、
前記トリガ信号によって起動し、前記ゲート信号にしたがって前記生成されたクロック信号に同期するパルス電源を生成する電源生成回路と、
前記生成されたパルス電源を用いて前記高周波信号を増幅する高周波増幅回路と
を備えることを特徴とするレーダ用空中線装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−175094(P2009−175094A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16509(P2008−16509)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】