説明

レーダ装置用送信モジュール

【課題】最大探知距離を劣化させることなく、小型化、質量の低減が可能とし、かつ電源効率を向上させる。
【解決手段】レーダ装置用送信モジュール11は、出力電圧が経時的に変動する電圧源12と、電圧源12から出力される出力電圧を検出する電圧モニタ回路19と、電圧モニタ回路19によって検出された出力電圧に基づいてデューティー比が制御された第1の制御パルス列Pc1を出力するパルス発生器16と、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じた第2の制御パルス列Pc2を出力する半導体スイッチ13と、搬送波を出力する搬送波発生器14と、第2の制御パルス列Pc2に含まれる制御パルスが入力されたときに、搬送波を増幅して送信信号を形成する電力増幅器15とを具備し、電圧モニタ回路19は、電圧源12の出力電圧の変動による送信信号の平均電力の変動を抑制するように、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ装置用送信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーダ装置は、この装置から離れた箇所に存在する物体に送信信号を送信し、その反射信号を受信して処理することにより、物体の画像を得るものである。
【0003】
このパルスレーダ装置において、送信信号を形成する従来の送信モジュールは、半導体スイッチ、直流の電圧源、および電力増幅器、を有する。送信モジュールにおいて、まず、半導体スイッチに、電圧源によって直流の電圧が印加された状態で、第1の制御パルス列が入力されると、半導体スイッチは、直流の電圧を、第1の制御パルス列に応じたパルス状の電圧からなる第2の制御パルス列に変換する。次に、電力増幅器に、搬送波が入力され、第2の制御パルス列が入力されると、電力増幅器は、搬送波を、第2の制御パルス列に応じた送信信号に変換し、送信用アンテナ素子に送信信号を供給する。
【0004】
ところで、近年のパルスレーダ装置は、最大探知距離を長くするために、送信信号の平均電力を増大することが望まれる。このため、電圧源に、小型で大電圧を出力可能な熱電池または発電機が適用される。しかし、この電圧源から出力される電圧は、経時的に変動する。従って、従来のパルスレーダ装置において、半導体スイッチと電圧源との間に、出力電圧の経時的な変動を抑制するための電源変換器が配置される。電源変換器は、例えばDC/DCコンバータであり、入力された電圧値を変換して出力するトランス、および入出力電圧を制御する複数の半導体スイッチを有する。
【0005】
しかし、電圧変換器において大電圧を処理するためには、トランスを大型化する必要がある。従って、電圧源に、熱電池または発電機を適用する場合、電源変換器が大型化し、質量が増大する。例えば、電源変換器は、10cm×10cm×20cm程度の体積、および3kg程度の質量を有する。この結果、送信モジュールは大型化し、質量が増大する。
【0006】
さらに、トランスに電圧が印加されると、その一部は熱エネルギーに変換されるため、電源変換器による電圧変換の効率は100%未満である。従って、半導体スイッチと電圧源との間に電源変換器を用いる場合、送信モジュールの電源効率も劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−181268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、最大探知距離を劣化させることなく、小型化、質量の低減が可能であり、かつ電源効率を向上させることができるレ−ダ装置用送信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールは、出力電圧が経時的に変動する直流の電圧源と、この電圧源に接続され、前記電圧源から出力される前記出力電圧を検出する電圧モニタ回路と、この電圧モニタ回路に接続され、前記電圧モニタ回路によって検出された前記出力電圧に基づいて、デューティー比が制御された第1の制御パルス列を出力するパルス発生器と、入力端子が前記電圧源に接続されるとともに、制御端子が前記パルス発生器に接続され、前記第1の制御パルス列の前記デューティー比に応じた第2の制御パルス列を出力する半導体スイッチと、所望の周波数の搬送波を出力する搬送波発生器と、前記半導体スイッチの出力端子、および前記搬送波発生器に接続され、前記第2の制御パルス列に含まれる制御パルスが入力されたときに、前記搬送波を増幅して送信信号を形成する電力増幅器と、を具備し、前記パルス発生器は、前記電圧源の出力電圧が基準電圧より低下した場合に、前記第1の制御パルス列のデューティー比を、前記電圧源の出力電圧が基準電圧である場合における前記第1の制御パルス列のデューティー比より高くし、前記電圧源の出力電圧が基準電圧より上昇した場合に、前記第1の制御パルス列のデューティー比を、前記電圧源の出力電圧が基準電圧である場合における前記第1の制御パルス列のデューティー比より低くするように、前記第1の制御パルス列のデューティー比を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールの構成を示す図である。
【図2】直流電源から出力される電圧の経時的な変動を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態に係る送信モジュールのパルス発生器で形成される第1の制御パルス列と、送信モジュールから出力される送信信号と、の関係を模式的に示す説明図であり、同図(a)は、第1の制御パルス列を示し、同図(a)は、送信信号を示す。
【図4】第2の実施形態に係る送信モジュールのパルス発生器で形成される第1の制御パルス列と、送信モジュールから出力される送信信号と、の関係を模式的に示す説明図であり、同図(a)は、第1の制御パルス列を示し、同図(a)は、送信信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るレーダ装置用送信モジュールについて、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールは、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じた送信信号を形成するモジュールである。そこで、まず、送信信号が形成される流れにそって、第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールの構成を説明し、次に、第1の制御パルス列Pc1を形成するための構成を説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るパルスレーダ装置用送信モジュール11(以下、送信モジュール11と称する)は、電圧源12、半導体スイッチ13、搬送波発生器14、および電力増幅器15を有する。
【0014】
電圧源12は、半導体スイッチ13に電圧を印加するための直流の電圧源である。電圧源12は、例えばマンガン電池やリチウム電池等と比較して、小型かつ大電圧を出力可能な直流の電圧源であり、例えば熱電池、または発電機である。電圧源12は、小型かつ大電圧が出力可能であるメリットを有するが、出力電圧Vが経時的に変動するデメリットも有する。
【0015】
半導体スイッチ13は、例えば電界効果トランジスタ等のように、スイッチング特性を有するスイッチ素子である。半導体スイッチ13の入力端子は、電圧源12に接続される。半導体スイッチ13の制御端子は、後述するパルス発生器16に接続される。半導体スイッチ13が電界効果トランジスタである場合、ドレイン端子が電圧源12に接続され、ゲート端子がパルス発生器16に接続される。
【0016】
半導体スイッチ13は、後述するパルス発生器16から出力される第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じた第2の制御パルス列Pc2を出力する。すなわち、半導体スイッチ13の入力端子に電圧源12の出力電圧が印加された状態で、半導体スイッチ13の制御端子に第1の制御パルス列Pc1が入力される。半導体スイッチ13は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスが入力されたときにONする。従って、半導体スイッチ13は、出力端子から、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じた第2の制御パルス列Pc2を出力する。なお、デューティー比は、パルス幅Wとパルス繰り返し時間Tとを用いてW/Tで表わされる。
【0017】
半導体スイッチ13から出力される第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御パルスのピーク電圧は、電圧源12の出力電圧に応じた電圧である。従って、各制御パルスのピーク電圧は、変動する出力電圧に応じてそれぞれ異なる。
【0018】
搬送波発生器14は、所望の周波数の搬送波を出力する。出力される搬送波は、電力が一定の搬送波であってもよいし、パルス状に変調された搬送波であってもよい。
【0019】
電力増幅器15は、半導体スイッチ13の出力端子、および搬送波発生器14に接続される。電力増幅器15は、半導体スイッチ13の出力端子から出力された第2の制御パルス列Pc2に含まれる制御パルスが入力されたときに、搬送波発生器14から出力された搬送波の電力を増幅する。従って、電力増幅器15は、第2の制御パルス列Pc2のデューティー比に応じて搬送波を変調し、送信信号を形成する。
【0020】
ここで、上述のように、第2の制御パルス列Pc2は、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じたデューティー比を有する。従って、送信信号は、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比に応じたデューティー比を有する。
【0021】
送信信号に含まれる各パルスのピーク電圧は、第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御パルスのピーク電圧に応じた電圧である。従って、送信信号に含まれる各パルスのピーク電圧は、各制御パルスのピーク電圧に応じてそれぞれ異なる。
【0022】
ここで、上述のように、第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御パルスのピーク電圧は、電圧源12の出力電圧に応じた電圧である。従って、送信信号に含まれる各パルスのピーク電圧は、電圧源12の出力電圧に応じた電圧である。
【0023】
形成された送信信号は、アンテナ素子17に送られ、アンテナ素子17から、レーダ装置から離れた位置の物体に送信される。
【0024】
電力増幅器15は、例えばGaNを用いた電界効果トランジスタ(以下、GaN系のFETと称する)である。GaN系のFETは、GaAsを用いた電界効果トランジスタ(以下、GaAs系のFETと称する)と比較して、最大出力電圧が高く、また、出力可能な電圧幅が広い特性を有する。例えば、GaN系のFETの最大出力電圧は50V程度、出力可能な電圧幅は数10V程度であるのに対し、GaAs系のFETの最大出力電圧は10V程度、出力可能な電圧幅は数V程度である。従って、電力増幅器15としてGaN系のFETを適用した場合、GaAs系のFETを適用した場合と比較して、電源効率に優れ、かつ汎用性に優れた送信モジュールが提供される。
【0025】
なお、電力増幅器15として、GaN系のFETを適用した場合、半導体スイッチ13の出力端子は、GaN系のFETのドレイン端子に接続され、搬送波発生器14は、GaN系のFETのゲート端子に接続される。また、GaN系のFETのソース端子は接地される。そして、GaN系のFETのドレイン端子に第2の制御パルス列Pc2が入力されると、GaN系のFETのゲート端子に入力された搬送波の電力は、第2の制御パルス列Pc2に応じて増幅され、GaN系のFETのドレイン端子から送信信号として出力される。
【0026】
また、送信モジュール11は、大容量コンデンサ18を有する。大容量コンデンサ18の一端は、電圧源12と半導体スイッチ13の入力端子との間に接続されており、他端は接地されている。大容量コンデンサ18は、半導体スイッチ13の入力端子に印加される電圧を安定化させる。
【0027】
次に、送信信号のデューティー比を決定するための第1の制御パルス列Pc1を形成するための構成について説明する。送信モジュール11は、電圧モニタ回路19、およびパルス発生器16を有する。
【0028】
電圧モニタ回路19は、電圧源12に接続される。電圧モニタ回路19は、抵抗の分圧用抵抗器、およびインピーダンス変換用オペアンプICを有する。電圧モニタ回路19は、電圧源12の出力電圧を検出して、その検出結果をパルス発生器16に送る高入力インピーダンス回路であり、電源変換器に含まれるトランスのように、処理する電圧値に応じて大型化されるものとは異なる。電圧モニタ回路19は、例えば1cm×1cm×0.5cm程度の体積、および1g程度の質量を有する。なお、電圧モニタ回路19は、高入力インピーダンス回路であるため、電圧源12からこの回路19に向かって電流はほとんど流れない。従って、この回路19を配置しても、電圧源12から供給されるエネルギーは、ほとんど損失しない。
【0029】
パルス発生器16は、電圧モニタ回路19に接続されるとともに、半導体スイッチ13の制御端子に接続される。パルス発生器16は、電圧モニタ回路19による出力電圧の検出結果に応じて制御された所望のデューティー比、および所望の電圧を有する第1の制御パルス列Pc1を形成し、半導体スイッチ13の制御端子に出力する。
【0030】
なお、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比は、送信モジュール11から出力される送信信号の平均電力が、電圧源12の出力電圧の変動によって変動することが抑制されるように制御される。第1の制御パルス列Pc1のデューティー比は、送信モジュール11から出力される送信信号の平均電力が、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、実質的に一定になるように制御されることが好ましい。
【0031】
パルス発生器16は、具体的に、以下のように第1の制御パルス列Pc1のデューティー比を制御する。半導体スイッチ13に印加される電圧が、基準電圧である場合、パルス発生器16は、パルス幅Wを有する複数の制御パルスが、繰り返し時間Tで時間軸上に配列されるように、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比W/Tを制御する。
【0032】
しかし、半導体スイッチ13に印加される電圧が基準電圧より低下した場合、送信信号に含まれる各パルスのピーク電圧は、印加される電圧が基準電圧のときの各パルスのピーク電圧Vtより低下し、送信信号の平均電力は低下する。この場合、パルス発生器16は、送信信号の平均電力が低下することを抑制するために、パルス幅をWより長くして、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比が、W/Tより高くなるように制御する。
【0033】
反対に、半導体スイッチ13に印加される電圧が基準電圧より上昇した場合、送信信号に含まれる各パルスのピーク電圧は、印加される電圧が基準電圧のときの各パルスのピーク電圧Vtより上昇し、送信信号の平均電力は増加する。この場合、パルス発生器16は、送信信号の平均電力が増加することを抑制するために、パルス幅をWより短くして、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比が、W/Tより低くなるように制御する。
【0034】
このように、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅を制御するため、電圧源12の出力電圧の変動による送信信号の平均電力の変動が抑制される。なお、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅を、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御することが好ましい。
【0035】
また、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのピーク電圧は、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、制御パルスが入力されたときに、常に半導体スイッチ13がONするように制御される。
【0036】
パルス発生器16は、具体的に、以下のように第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのピーク電圧を制御する。半導体スイッチ13に印加される電圧が基準電圧である場合、パルス発生器16は、半導体スイッチ13に基準電圧が印加されている場合にスイッチ13をONさせることができるように、各制御パルスのピーク電圧をVに制御する。
【0037】
しかし、半導体スイッチ13に印加される電圧が基準電圧より低下した場合、半導体スイッチ13がONするために必要な電圧は低下する。この場合、パルス発生器16は、各制御パルスのピーク電圧がVより低くなるように制御する。
【0038】
反対に、半導体スイッチ13に印加される電圧が基準電圧より上昇した場合、半導体スイッチ13がONするために必要な電圧は上昇する。この場合、パルス発生器16は、各制御パルスのピーク電圧がVより高くなるように制御する。
【0039】
パルス発生器16は、以上に説明したように、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのピーク電圧を制御するため、半導体スイッチ13は、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、制御パルスが入力されたときに常にONする。
【0040】
次に、送信モジュール11による送信信号の形成方法を、図2および図3を参照して説明する。図2は、電圧源12の出力電圧特性を示す図である。図3は、本実施形態に係る送信モジュールのパルス発生器16で形成される第1の制御パルス列Pc1と、本実施形態に係る送信モジュールから出力される送信信号と、の関係を模式的に示す説明図である。同図(a)は、第1の制御パルス列Pc1を示し、同図(a)は、送信信号を示す。
【0041】
なお、図3に記載された第1の制御パルス列Pc1および送信信号は、模式的なパルスおよび信号を示している。実際の制御パルスおよび送信信号のパルス幅は、例えば1μs〜200μs程度、パルス繰り返し時間は、例えば10μs〜1ms程度である。
【0042】
図2に示すように、電圧源12から出力される電圧Vは、経過時間tとともに変動する。出力電圧Vは、経過時間tとともに、以下のように変動する。
【0043】
すなわち、出力電圧Vは、電圧源12から電圧が印加されはじめるとともに上昇し続け、時間t1を経過したとき、基準電圧(例えば24V)に達する。その後も出力電圧Vは上昇を続け、時間t2を経過したとき、出力電圧Vはピーク電圧(例えば36V)に達する。出力電圧Vがピーク電圧に達した後、出力電圧Vは下降しはじめ、時間t3を経過したとき、基準電圧(例えば24V)に再び達する。その後も出力電圧Vは下降し続ける。
【0044】
図2に示されるように経時的に変動する出力電圧は、半導体スイッチ13の入力端子に印加されるとともに、電圧モニタ回路19によって、電圧が検出される。検出結果は、パルス発生器16に送られる。
【0045】
パルス発生器16は、電圧モニタ回路19によって検出された出力電圧Vの検出結果に基づいて、出力される第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅、およびピーク電圧を制御する。
【0046】
パルス発生器16は、具体的に、以下のように制御パルスのパルス幅およびピーク電圧を制御する。
【0047】
(1)電圧源12から電圧Vが印加されはじめてから、基準電圧に達するまでの期間(0≦t≦t1)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より低い範囲で時間tの経過とともに上昇する。この場合、図3(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスのパルス幅を、Wl3、Wl2、Wl1の順に狭くするように制御して出力する。なお、パルス幅Wl1は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるパルス幅Wより広い。
【0048】
また、パルス発生器16は、制御パルスのピーク電圧を、V6、V5、V4の順に高くするように制御して出力する。なお、ピーク電圧V4は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるピーク電圧Vより低い。
【0049】
(2)出力電圧Vが基準電圧に達してから、ピーク電圧に達するまでの期間(t1≦t≦t2)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より高い範囲で時間tの経過とともに上昇する。この場合、図3(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスのパルス幅を、Ws3、Ws2、Ws1の順に狭くするように制御して出力する。なお、パルス幅Ws3は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるパルス幅Wより狭い。
【0050】
また、パルス発生器16は、制御パルスのピーク電圧を、V3、V2、V1の順に高くするように制御して出力する。なお、ピーク電圧V3は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるピーク電圧Vより高い。
【0051】
(3)出力電圧Vがピーク電圧に達してから、基準電圧に再び達するまでの期間(t2≦t≦t3)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より高い範囲で時間tの経過とともに低下する。この場合、図3(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスのパルス幅を、Ws2、Ws3の順に広くするように制御して出力する。なお、パルス幅Ws3は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるパルス幅Wより狭い。
【0052】
また、パルス発生器16は、制御パルスのピーク電圧を、V2、V3の順に低くするように制御して出力する。なお、ピーク電圧V3は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるピーク電圧Vより高い。
【0053】
(4)出力電圧Vがピーク電圧に再び達した後(t3≦t)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より低い範囲で時間tの経過とともに低下する。この場合、図3(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスのパルス幅を、Wl1、Wl2、・・・の順に広くするように制御して出力する。なお、パルス幅Wl1は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるパルス幅Wより広い。
【0054】
また、パルス発生器16は、制御パルスのピーク電圧を、V4、V5、・・・・の順に低くするように制御して出力する。なお、ピーク電圧V4は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御されるピーク電圧Vより低い。
【0055】
パルス発生器16は、電圧モニタ回路19によって検出された出力電圧Vの検出結果に基づいて、以上に説明したように、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅、およびピーク電圧を制御し、半導体スイッチ13の制御端子に入力する。なお、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅Wl1、Wl2、Wl3、Ws1、Ws2、Ws3を、それぞれ、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御することが好ましい。
【0056】
半導体スイッチ13の入力端子に、図2に示されるように経時的に変動する出力電圧が印加された状態で、半導体スイッチ13の制御端子に第1の制御パルス列Pc1が入力されると、半導体スイッチ13は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御信号のパルス幅、および出力電圧に応じた各制御パルスからなる第2の制御パルス列Pc2を、電力増幅器15に出力する。
【0057】
電力増幅器15に半導体スイッチ13から第2の制御パルス列Pc2が入力され、搬送波発生器14から搬送波が入力されると、電力増幅器15は、第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御パルスに応じて搬送波を増幅する。従って、電力増幅器15は、第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御信号のパルス幅、およびピーク電圧に応じた各パルスからなる送信信号を形成し、アンテナ素子17に出力する。
【0058】
電力増幅器15において形成される送信信号は、第2の制御パルス列Pc2に応じて形成されるが、第2の制御パルス列Pc2は、図3(a)に示される第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅、および電圧源12の出力電圧に応じて形成される。従って、図3(b)に示されるように、送信信号は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅、および電圧源12の出力電圧に応じて形成される。
【0059】
なお、送信信号に含まれる各制御信号のピーク電圧が低下した場合であっても、上述のようにパルス幅を長くしてパルス圧縮技術を適用する事により、S/N比を満足出来る事は言うまでもない。
【0060】
このように、送信信号は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅に応じて形成される。第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅は、電圧源12の出力電圧の変動による送信信号の平均電力の変動が抑制されるように制御されている。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、送信信号の平均電力の変動は抑制され、パルスレ−ダ装置の主要性能である最大探知距離の劣化は抑制される。
【0061】
なお、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのパルス幅を、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御すれば、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、実質的に平均電力が一定の送信信号が形成される。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、パルスレ−ダ装置の最大探知距離の劣化は、より抑制される。
【0062】
以上に説明した第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールによれば、電圧源12の出力電圧の変動に応じて、送信信号に含まれる各パルスのパルス幅を制御する。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、送信信号の平均電力が変動することは制御される。従って、従来のように電源変換器を用いることなく、従来の送信モジュールと同等の最大探知距離を実現することができる。従って、最大探知距離を劣化させることなく、小型化、質量の低減が可能であり、かつ電源効率を向上させることができるレーダ装置用送信モジュールを提供することができる。
【0063】
また、第1の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュールによれば、電源変換器を用いないため、送信モジュールの低コスト化も実現される。
【0064】
以上に説明したレーダ装置用送信モジュール11は、電圧源12の出力電圧が基準電圧より低下したときには、送信信号のデューティー比を高くし、基準電圧より上昇したときには、送信信号のデューティー比を低くすることによって、電源変換器を用いることなく、送信信号の平均電力の変動を抑制可能とするものである。しかし、このような送信信号のデューティー比の制御は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる制御パルスの繰り返し時間を制御することによっても制御可能である。以下に、この実施形態を第2の実施形態として説明する。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るパルスレーダ装置用送信モジュールの構成は、図1と同様であり、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比の制御方法が異なる。以下に、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比の制御方法について説明する。
【0066】
パルス発生器16は、半導体スイッチ13に印加される出力電圧が基準電圧である場合、パルス発生器16は、パルス幅Wを有する複数の制御パルスが、繰り返し時間Tで時間軸上に配列されるように、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比W/Tを制御する。
【0067】
しかし、半導体スイッチ13に印加される出力電圧が基準電圧より低下した場合、制御パルスの繰り返し時間をTより短くして、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比が、W/Tより高くなるように制御する。
【0068】
反対に、半導体スイッチ13に印加される出力電圧が基準電圧より上昇した場合、制御パルスの繰り返し時間をTより長くして、第1の制御パルス列Pc1のデューティー比が、W/Tより低くなるように制御する。
【0069】
このように、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間を制御するため、電圧源12の出力電圧の変動による送信信号の平均電力の変動が抑制される。なお、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間を、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御することが好ましい。
【0070】
なお、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスのピーク電圧は、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、制御パルスが入力されたときに、常に半導体スイッチ13がONするように制御される。この点は、第1の実施形態と同様であるため、具体的な説明を省略する。
【0071】
次に、以上に説明した送信モジュール11による送信信号の形成方法を、図2および図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る送信モジュールのパルス発生器16で形成される第1の制御パルス列Pc1と、本実施形態に係る送信モジュールから出力される送信信号と、の関係を模式的に示す説明図である。同図(a)は、第1の制御パルス列Pc1を示し、同図(a)は、送信信号を示す。
【0072】
なお、図4に記載された第1の制御パルス列Pc1および送信信号は、模式的なパルスおよび信号を示している。実際の制御パルスおよび送信信号のパルス幅は、例えば1μs〜200μs程度、パルス繰り返し時間は、例えば10μs〜1ms程度である。
【0073】
パルス発生器16は、電圧モニタ回路19によって検出された出力電圧Vの検出結果に基づいて、出力される第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間、およびピーク電圧を制御する。ピーク電圧の制御方法については、第1の実施形態と同様であるため、具体的な説明を省略し、以下に、パルス発生器16による、制御パルスの繰り返し時間の制御方法を具体的に説明する。
【0074】
(1)電圧源12から出力電圧Vが供給されはじめてから、基準電圧に達するまでの期間(0≦t≦t1)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より低い範囲で時間tの経過とともに上昇する。この場合、図4(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスの繰り返し時間を、Tl2、Tl1の順に長くするように制御して出力する。なお、繰り返し時間Tl1は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御される繰り返し時間Tより短い。
【0075】
(2)出力電圧Vが基準電圧に達してから、ピーク電圧に達するまでの期間(t1≦t≦t2)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より高い範囲で時間tの経過とともに上昇する。この場合、図4(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスの繰り返し時間を、Ts3、Ts2、Ts1の順に長くするように制御して出力する。なお、繰り返し時間Ts3は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御される繰り返し時間Tより長い。
【0076】
(3)出力電圧Vがピーク電圧に達してから、基準電圧に再び達するまでの期間(t2≦t≦t3)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より高い範囲で時間tの経過とともに低下する。この場合、図4(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスの繰り返し時間を、Ts1、Ts2の順に短くするように制御して出力する。なお、繰り返し時間Ts2は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御される繰り返し時間Tより長い。
【0077】
(4)出力電圧Vがピーク電圧に再び達した後(t3≦t)
図2に示すように、出力電圧Vは、基準電圧より低い範囲で時間tの経過とともに低下する。この場合、図4(a)に示すように、パルス発生器16は、制御パルスの繰り返し時間を、Tl1、Tl2、Tl3、・・・の順に短くするように制御して出力する。なお、繰り返し時間Tl1は、出力電圧Vが基準電圧のときに制御される繰り返し時間Tより短い。
【0078】
パルス発生器16は、以上に説明したように、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間を制御するとともに、およびピーク電圧を制御し、半導体スイッチ13の制御端子に入力する。なお、パルス発生器16は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間Tl1、Tl2、Tl3、Ts1、Ts2、Ts3を、それぞれ、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御することが好ましい。
【0079】
このように、制御パルスの繰り返し時間が制御された第1の制御パルス列Pc1を半導体スイッチ13に入力した後、この第1の制御パルス列Pc1に基づいて送信信号を形成する方法は、第1の実施形態と同様である。
【0080】
すなわち、半導体スイッチ13は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御信号の繰り返し時間、および出力電圧に応じた各制御パルスからなる第2の制御パルス列Pc2を、電力増幅器15に出力する。次に、電力増幅器15は、第2の制御パルス列Pc2に含まれる各制御信号の繰り返し時間、およびピーク電圧に応じた各パルスからなる送信信号を形成し、アンテナ素子17に出力する。
【0081】
電力増幅器15において形成される送信信号は、第2の制御パルス列Pc2に応じて形成されるが、第2の制御パルス列Pc2は、図4(a)に示される第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間、および電圧源12の出力電圧に応じて形成される。従って、図4(b)に示されるように、送信信号は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間、および電圧源12の出力電圧に応じて形成される。
【0082】
このように、送信信号は、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間に応じて形成される。第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間は、電圧源12の出力電圧の変動による送信信号の平均電力の変動が抑制されるように制御されている。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、送信信号の平均電力の変動は抑制され、パルスレ−ダ装置の主要性能である最大探知距離の劣化は抑制される。
【0083】
なお、第1の制御パルス列Pc1に含まれる各制御パルスの繰り返し時間を、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、送信信号の平均電力が実質的に一定になるように制御すれば、電圧源12の出力電圧の変動にかかわらず、実質的に平均電力が一定の送信信号が形成される。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、パルスレ−ダ装置の最大探知距離の劣化は、より抑制される。
【0084】
以上に説明した第2の実施形態に係るレーダ装置用送信モジュール11によれば、電圧源12の出力電圧の変動に応じて、送信信号に含まれる各パルスの繰り返し時間を制御する。従って、電圧源12の出力電圧が変動しても、送信信号の平均電力が変動することは制御される。従って、従来のように電源変換器を用いることなく、従来の送信モジュールと同等の最大探知距離を実現することができる。従って、最大探知距離を劣化させることなく、小型化、質量の低減が可能であり、かつ電源効率を向上させることができるレーダ装置用送信モジュールを提供することができる。さらに、送信モジュール11の低コスト化も実現される。
【0085】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、
【符号の説明】
【0087】
11・・・パルスレーダ装置
12・・・電圧源
13・・・半導体スイッチ
14・・・搬送波発生器
15・・・電力増幅器
16・・・パルス発生器
17・・・アンテナ素子
18・・・大容量コンデンサ
19・・・電圧モニタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧が経時的に変動する直流の電圧源と、
この電圧源に接続され、前記電圧源から出力される前記出力電圧を検出する電圧モニタ回路と、
この電圧モニタ回路に接続され、前記電圧モニタ回路によって検出された前記出力電圧に基づいて、デューティー比が制御された第1の制御パルス列を出力するパルス発生器と、
入力端子が前記電圧源に接続されるとともに、制御端子が前記パルス発生器に接続され、前記第1の制御パルス列の前記デューティー比に応じた第2の制御パルス列を出力する半導体スイッチと、
所望の周波数の搬送波を出力する搬送波発生器と、
前記半導体スイッチの出力端子、および前記搬送波発生器に接続され、前記第2の制御パルス列に含まれる制御パルスが入力されたときに、前記搬送波を増幅して送信信号を形成する電力増幅器と、
を具備し、
前記パルス発生器は、前記電圧源の出力電圧が基準電圧より低下した場合に、前記第1の制御パルス列のデューティー比を、前記電圧源の出力電圧が基準電圧である場合における前記第1の制御パルス列のデューティー比より高くし、
前記電圧源の出力電圧が基準電圧より上昇した場合に、前記第1の制御パルス列のデューティー比を、前記電圧源の出力電圧が基準電圧である場合における前記第1の制御パルス列のデューティー比より低くするように、前記第1の制御パルス列のデューティー比を制御することを特徴とするレーダ装置用送信モジュール。
【請求項2】
前記パルス発生器は、前記制御パルス列のパルス幅を変化させることにより、前記制御パルス列の前記デューティー比を制御することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置用送信モジュール。
【請求項3】
前記パルス発生器は、前記制御パルス列の繰り返し時間を変化させることにより、前記制御パルス列の前記デューティー比を制御することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置用送信モジュール。
【請求項4】
前記電圧源は、熱電池または発電機であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーダ装置用送信モジュール。
【請求項5】
前記電力増幅器は、GaNを用いた電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項4に記載のレーダ装置用送信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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