説明

レールの自動溶接方法

【目的】 レールを現地溶接で突き合わせ溶接するための高能率な自動溶接方法を提供する。
【構成】 レール足部初層をCO2 ガスシールドアーク溶接方法で溶接し、その後一度溶接アークを切り、ノズルの横行を反転させ横行しながら溶融型フラックスを開先内に添加し、横行停止と共に溶融型フラックスの添加を止めて、レール足部2層目の溶接をサブマージアーク溶接方法により行い、連続してレール足部3層目で2層目の溶接で形成された凝固スラグを再溶融してエレクトロスラグ溶接方法に移行し、その後引き続きレール足部および柱部、頭部をエレクトロスラグ溶接方法で溶接することを特徴とするレールの自動溶接方法。
【効果】 レール溶接をCO2 ガスシールドアーク溶接法、サブマージアーク溶接法、エレクトロスラグ溶接法を併用して高能率に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄道用またはクレーン用のレールを突き合わせ溶接するための自動溶融溶接技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からレールの突き合わせ溶接にはI型開先を突き合わせた後レール足部を多層溶接し、その後レール柱部と頭部を当金材で取り囲み連続的に溶接する被覆アーク溶接棒を使用したエンクローズドアーク溶接方法が用いられている。しかしながら、該溶接方法は手溶接方法であるため、溶接作業者の技量に依存する部分が多く熟練を要すること、溶接時間が長く施工能率が上がらないこと、また溶接ヒューム等の作業環境等の問題があり、溶接作業者の熟練を必要としない高能率な自動溶接方法が要望されてきた。
【0003】このような背景のもとに、エンクローズドアーク溶接方法に代わる自動溶接方法が種々検討されてきた。特公昭44−24249号公報に示された技術も該溶接方法に代わる方法として提案されたものであり、レール足部をサブマージアーク溶接方法で各層毎に溶接を中断し、凝固スラグを除去しながら溶接し、レール柱部および頭部をエレクトロスラグ溶接方法により溶接する。また特開平1−2779号公報に示された技術では、レール足部初層をサブマージアーク溶接方法で溶接し、2層目においてエレクトロスラグ溶接方法に移行して以降レール柱部から頭部を同様にエレクトロスラグ溶接方法で溶接する方法が提案されている。さらに特公昭45−14173号公報に示された技術では、レール全断面をガスシールド溶接方法で溶接する方法が提案されている。特公昭45−19369号公報および特公昭61−249679号公報に示された技術も、ガスシールドアーク溶接方法を用いてレールを突き合わせ溶接する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来技術は、いずれも溶融溶接法でありレール軸方向への加圧は必要とせず、またエンクローズドアーク溶接方法よりも能率向上、脱技量化は図れるものの、まだ多くの問題点を残している。即ち特公昭44−24249号公報に示されている技術では、サブマージアーク溶接をレール足部の各層で行うため各層毎に凝固したスラグを除去しなければならない。またレール足部溶接終了後は、一旦溶接を中断してエレクトロスラグ溶接の再スタート準備をしてからレール柱部と頭部の溶接を行う。従って、各溶接の開始と停止部には溶け込み不良や凝固割れ等の溶接欠陥が発生し易く、溶接能率も低下する。さらにレール足部と柱部および頭部では溶接方法の違いから溶接材料のフラックスを使い分け、溶接電源の特性も切り替えて使用する等、操作の煩雑さに起因する能率の低下、溶接機のコスト高、溶接材料の管理で問題が残る。
【0005】また特開平1−2779号公報に示された技術では、低融点で低粘性の溶融型フラックスの開発によりレール足部初層のサブマージアーク溶接方法から2層目以降のエレクトロスラグ溶接方法への移行が速やかにでき、レール足部初層からレール頭部の溶接が連続してできる溶接方法である。しかしながら該溶接方法でレール足部を溶接する際には、レール足部2層目において初層のサブマージアーク溶接で形成された凝固スラグを再溶融させ、エレクトロスラグ溶接に移行するための多大な溶接入熱が必要となる。反面、凝固割れ防止の観点からは、過大な入熱は避けなければならないという相反する制約条件のため採用し得る溶接電流、溶接電圧、溶接速度の条件範囲が著しく狭くなる。そのため現地溶接における雰囲気、溶材湿度、開先精度等の変動要因の増加により、初層凝固スラグの微細な未溶融欠陥残存の危険性が皆無とはいえない溶接方法である。
【0006】また特公昭45−14173号公報に示される技術のようにレール全断面をガスシールド溶接方法で溶接する方法においては溶接開始から終了までシールドガスを用いるため、本技術が現地施工に適用されることを念頭におくと耐風性に十分な配慮が必要となり、特にレール柱部以降頭部までを完全に屋外の風から防風し、シールドガスのシールド効果を健全に保つことは極めて至難であり、治具等で解決しようとしてもその機構は複雑なものとなり、ハンドリング面で施工能率を悪くする。またガスシールドアーク溶接方法は開先寸法に対する適正な溶接条件範囲が狭く、特に溶接積層が進行しレール柱部から頭部に至る領域では、開先寸法の変動により開先の融合不良等の溶接欠陥を発生する危険性が高く溶接継手の信頼性で問題となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その要旨は、レールを突き合わせ溶接する自動溶接方法において、レール足部初層をCO2 ガスシールドアーク溶接方法にて裏波溶接し、一時的に溶接を停止して溶接終端位置から非消耗ノズルの横行を反転し、レール足部初層の溶接開始側に横行しつつ溶融型フラックスを50g/min以上、1kg/min以下の添加速度で開先内に添加する。その後溶接ワイヤの送給を開始してレール足部2層目をサブマージアーク溶接方法で溶接し、連続してレール足部3層目においてレール足部2層目で形成された凝固スラグを再溶融させつつエレクトロスラグ溶接方法に移行し、移行後は非消耗ノズルを溶接電流検知による自動上昇とレール足部での溶接層数対応またはレール柱部からレール頭部におけるレール高さ位置対応の横行幅を記憶装置により制御することでレール形状に合わせて上昇または反復横行させ、レール頭頂面までの溶接を行う溶接方法であり、一連の溶接においては、レール足部上面に載置した枠体型固定当金および非消耗ノズルの外筒を用いてCO2 ガスまたはフラックスの自動供給を行うと共に、溶融スラグまたは溶融金属の流出を防止し、さらに定電圧特性を有する直流電源と溶接ワイヤ径φ1.2mmからφ2.0mmと低融点で低粘性な溶融型フラックスとしてフラックスの重量%でCaF2 で25〜40%、SiO2 が20〜35%、TiO2 が5〜15%で、かつCaF2 +SiO2 が50%以上含有されるCaF2 −SiO2 −TiO2 を主成分とした溶融型フラックスを用いて溶接することを特徴とするレールの自動溶接方法にある。
【0008】
【作用】以下、図面に従い本発明を詳細に説明する。図1R>1は本発明方法の実施態様を示す斜視図であり、図2は被溶接部材であるレール端面方向から見た実施態様の断面図である。
【0009】図1において、1aおよび1bは被溶接部材であるレールで、各端面間に適当な開先間隔を開けて突き合わせた状態で設置している。2aおよび2bは枠体型固定当金であり、それぞれレール頭頂部用当金2bとレール頭側部からレール足先までを囲む当金2a一対が2本のピンにより連結され、レール頭側部から下の当金2aがレール頭頂部用当金2bを中心に開脚する機構であり、溶接の際にはレール1a,1bの頭部からかぶせるように設置し、溶接中の溶融金属および溶融スラグ流出を防止する。3aおよび3bは移動当金でレール足部の溶接完了後に油圧駆動機構等任意の駆動手段(図示せず)で矢印10,11の方向に移動させレール柱部およびレール頭側部に一定の隙間を設けて当接され、レール柱部以降のエレクトロスラグ溶接で溶融金属および溶融スラグの流出を防止する。4a,4cはシールドガスの供給腔を備えた防風壁で内部空洞の箱型構造であり、溶接においては固定当金2a,2bに載置して使用し、レール足部初層のCO2 ガスシールド溶接で防風としての作用を果たすと共に、側壁に設けたシールドガス供給口8a,8bから供給されるシールドガスをシールドガス吹出口9a,9bから開先内へと導入する。4b,4dは4a,4cとそれぞれ一対で使用される防風壁である。5a,5bはレール足先の当金で、それぞれ固定当金2aか2bの一方にボルト等で固定して用いて、溶接中は溶融金属の流出を防止する。6は裏当材収納枠体で固定当金2a,2bに連結して用い、レール足部裏面にコージライト系の固形材とガラス繊維シートからなる裏当材7を密着当接する。裏当材7はレール足部初層溶接において裏波ビードの落ち込みを防止し、ビード形状を健全に保つと共にビード表面を滑らかにする。
【0010】12は溶接フィラーワイヤであり、13はフィラーワイヤ12をレール開先内に導くと共に溶接電源から電力をフィラーワイヤ12に供給する非消耗ノズルである。非消耗ノズル13の周囲は分岐口15に取り付けられた消耗式外筒14が覆っていて、分岐口15を介して溶融型フラックス23とガスシールド用CO2ガス24の両方またはどちらか一方をレール形状の溶接部位によって適所適量フィラーワイヤ先端部(アーク点)近傍に自動供給できる構造になっている。また16はホルダーであり、非消耗ノズル13を昇降用モーター21とボールネジ、ピニオン、ギヤ、軸受け、外部枠体等の要素からなる昇降装置20に保持し、非消耗ノズル13の矢印方向22へ昇降移動を可能にする。また17は横行装置であり、横行用モーター18とボールネジ、ピニオン、ギヤ、軸受け、外部枠体等の要素で構成され、昇降装置20と連結して用いて矢印方向19に横行移動を可能にする。また32はフラックスホッパーと送給機であり、溶接開始前にホッパー内に予め乾燥した溶融型フラックス23を補給しておくことにより溶接中記憶装置からの出力信号とおりの位置で適量の溶融型フラックス23をレール開先内に上述の分岐口15および消耗式外筒14を通して供給することができる。上記構成により溶接フィラーワイヤ12の先端部は図2の31の軸跡を描きながら溶接を行うが、移動式当金3aおよび3bは溶接がレール足部を完了した時点、即ち溶接フィラーワイヤ先端の軸跡31のA点以降においては3a−1,3b−1に移動させる。以上本発明の実施態様における構成を説明した。
【0011】次に、図3から図7に従い本発明溶接方法をさらに詳細に説明する。まず図3に示す本発明実施態様の一例の断面図によりレール足部初層裏波溶接の状態を説明する。図において直接アークをシールドするCO2 ガス24は、非消耗ノズル13が貫通する消耗式外筒14を通して供給される。またシールドの効果を完全にするため、溶接するレール足部全体の雰囲気を置換するCO2 ガス24は、シールドガス供給腔付き防風壁4aおよび4bに設けたシールドガス吹出口9aおよび9bから供給される。即ちレール足部初層のCO2 ガスシールドアーク溶接は、流量制御器により3分割されたシールドガスをそれぞれ流量調整して開先内に供給する2重シールドの状態で行われる。また溶接が進行するに従い、裏当材7も表面のガラス繊維シートとコージライト系の固形材が一部溶融し、形成されたレール足部初層溶接ビード25の裏面に薄いスラグ膜となって覆い溶接ビードの表面およびエッジ部の形状を滑らかにする。この裏当材7には、非溶接物の開先がI型で比較的ルート間隔が広い14mmから22mmでも裏波ビードの余盛高さが過大とならないために耐火性の比較的高いコージライト系の固形材表面にレール1a,1bの軸線を横切る方向の連続した溝を設けガラス繊維シートを張り付けて使用しており、この方法で最も良好な溶接結果が得られた。
【0012】次に図4に示す本発明実施態様の一例の断面図によりレール足部初層裏波溶接後の溶融型フラックス23添加の状態について説明する。図において非消耗ノズル13はレール足部初層をCO2 ガスシールドアーク溶接により裏波溶接し、横行動作を停止した後、溶接アークとガスシールド用のCO2 ガスを自動的に停止し、その後連続して横行方向を反転して横行しつつ溶融型フラックス23を溶接開先内に添加している状態である。この際開先内に供給される溶融型フラックス23の添加量は、レール1a,1bからなるルート間隔と枠体型固定当金2aおよび2bからなる枠体内部容積により必要量は若干変動するが枠体内部の幅を24mmから30mmとした場合、次層においてサブマージアーク溶接を行うためには最低でも80g以上の添加量が必要であり、レール足部3層目以降エレクトロスラグ溶接へ移行することを考えれば300g以下であることが望ましい。また添加する際の横行速度は50mm/min以下では添加終了までに時間がかかりすぎて効率の面で好ましくなく、500mm/min以上では添加された溶融型フラックス23は開先内の2層目溶接開始側に片寄って散布されてしまい溶接上好ましくない。上述の理由から添加速度は50g/min以上で1kg/min以下の条件範囲において添加することが望ましく、横行速度は添加速度に対応して適正添加量を最も効率良く添加できるように調整することが必要である。
【0013】次に図5に示す本発明実施態様の一例の断面図によりレール足部2層目のサブマージアーク溶接の状態について説明する。溶接は上述添加された溶融型フラックス23によりレール足部初層溶接ビード25を一部再溶融しながらサブマージアーク溶接を行う。図において25は初層溶接ビードであり、26は2層目溶接ビードで、23が溶融型フラックスである。
【0014】続いて図6に示す本発明実施態様の断面図によりレール足部3層目以降のエレクトロスラグ溶接の状態について説明する。溶接は2層目の溶接が終了した後、溶接を中断することなく連続して非消耗ノズル13の横行方向を反転して行われる。図は2層目溶接の際に凝固したスラグを再溶融しながら3層目にエレクトロスラグ溶接に移行した後の状態を示すが、この後自動上昇と横行反転を繰り返し、溶接がレール足部を終了する時には、移動当金3a,3bは自動で図中の点線(図2参照)で示す位置に当接され、連続してレール柱部の溶接が行われる。2層目のサブマージアーク溶接で形成した凝固スラグは、初層CO2 ガスシールドアーク溶接によるレールの予熱効果によって比較的高温な状態にあるため、3層目おいて凝固スラグは容易に再溶融し、未溶融スラグ残存の危険性はない。また3層目以降のエレクトロスラグ溶接においては、溶接の進行と共に横行幅をレール形状に合わせて低減させればレール足表に形成される溶接余盛を薄くできるので溶接後の仕上げ工程において加工が容易となる。
【0015】さらに続いて図7に示す本発明実施態様の一例の断面図によりレール柱部および頭部の溶接について説明する。図において13bはレール柱部溶接時の非消耗ノズルの状態であり、29はその時の溶融スラグである。一方、13c,13dはレール頭部溶接中の非消耗ノズルの状態であり、30はその時の溶融スラグを示す。また3a,3bは移動当金であり、レール柱部および頭部の溶接中は図の位置に当接され溶融金属および溶融スラグが枠体外へ流出するのを防止し、溶融ビード形状を整える。また溶接においてはレール足部の溶接が終了した後移動当金3a,3bを当接し、同時に非消耗ノズルの横行をレール幅の中央で停止させて、その後は溶接電流を検知しながら自動上昇のみを行いレール柱部をエレクトロスラグ溶接する。また溶接がレール頭部に入る前の高さ位置で10mmから30mm下の位置まで進行した時点では添加速度20g/minから100g/minで20秒から120秒の範囲で溶融型フラックス23を自動添加することが必要であり、この時点で溶融スラグ29を徐々に深くしておくことにより、溶接が頭部に入り急に溶接面積が広がり溶融スラグ29が浅くなって可視アークとなるのを防止する。また溶接がレール頭部に入ると非消耗ノズル13は横行を再開しレール形状に合わせて横行幅を増加させながら反復横行を繰り返し、溶接電流を検知して自動上昇して所望の高さ位置までの溶接を完了する。
【0016】上記本発明溶接方法を完成するに当たり、本発明者らは溶接作業性と溶接継手性能の両面から溶接電源、溶接ワイヤ径、フラックスのタイプ等を過去に検討している。まずレール足部初層においてCO2 ガスシールドアーク溶接により良好な裏波溶接を行うには、電流密度確保のため細径の溶接ワイヤを用いれば良い。ただしワイヤ径が1.2mm未満では、適正電流範囲の上限で溶接しても、アークの広がりが小さく開先内をブリッジするだけの溶接金属量および入熱が得られない。一方、2.0mmを超える溶接ワイヤ径では、適正な電流密度で溶接を行うには電流が過大になり大容量の溶接電源が必要となるため現地溶接への適用上問題となるので採用できない。
【0017】また溶接電源は、定電圧特性を有する直流電源を用い、溶接ワイヤを定速送給して溶接すれば、CO2 ガスシールドアーク溶接のみならずサブマージアーク溶接およびエレクトロスラグ溶接に切り替わっても細径溶接ワイヤで良好に溶接が行えることがわかった。さらにCO2 ガスシールドアーク溶接からサブマージアーク溶接に切り替わる際に添加される溶接フラックスは、一度凝固した後次層溶接において速やかに再溶融し適正深さの溶融スラグ浴を形成する必要があり、そのためにはフラックスの重量%でCaF2 が25〜40%、SiO2 が20〜35%、TiO2 が5〜15%、かつCaF2 +SiO2 が50%以上含有されるCaF2 −SiO2 −TiO2 を主成分とする低融点で低粘性の溶融型フラックスが適している。CaF2 が25%未満およびSiO2 が20%未満では生成スラグの粘性および融点が高く、エレクトロスラグ溶接への移行が順調に進まず溶接が不安定となる。一方、CaF2 が40%を超えると弗化物ガスの発生が多く作業環境を害する。またSiO2 が35%を超えるとスラグの粘性が低下し過ぎるためスラグの流出を起こし易くなり不安定になり易い。しかしCaF2 +SiO2 の合計は50%以上が必要であり、50%未満ではエレクトロスラグ溶接へ移行する際、再溶融するのに時間がかかり溶接部内部に凝固スラグ噛み込み状の欠陥を発生する可能性がある。
【0018】
【実施例】上述した構成および手順に従い鉄道用レール50kgN レールをI型開先で突き合わせ溶接した例を述べる。本発明の構成による実施例を実施例1〜4に、比較例を1〜2に示す。実施例1〜4においては順調に欠陥のない溶接を実施できた。比較例1においては、溶融型フラックスの添加速度が本発明の範囲を外れており、開先内のレール足部2層目溶接開始側に片寄って添加されたため、レール足部2層目のサブマージアーク溶接において溶接が進行途中で可視アーク状態となり、連続してレール足部3層目においてエレクトロスラグ溶接への移行途中でレール足部2層目で形成された凝固スラグを再溶融しきれずに溶接ワイヤが凝固スラグに乗り上げ溶接が中断してしまった。また比較例2では、溶融型フラックスの添加量は本発明に従い、組成を本発明から外して溶接した。この結果溶接はレール足部3層目においてレール足部2層目で形成された凝固スラグを再溶融しきれずに比較例1同様溶接が中断してしまった。以下に各実施例および比較例の溶接方法および条件を示す。
【0019】〔実施例1〕
開先形状 :I型開先、幅16mm溶接ワイヤ:φ1.6mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :35%、TiO2 :10%、CaO :20%、SiO2 :30%レール足部フラックス添加量:140g(添加速度:280g/min、固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表1】


【0020】〔実施例2〕
開先形状 :I型開先、幅18mm溶接ワイヤ:φ1.6mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :35%、TiO2 :7%、CaO :25%、SiO2 :25%レール足部フラックス添加量:140g(添加速度:420g/min、固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表2】


【0021】〔実施例3〕
開先形状 :I型開先、幅15mm溶接ワイヤ:φ1.2mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :40%、TiO2 :12%、CaO:18%、SiO2 :25%、MgO:5%レール足部フラックス添加量:120g(添加速度:960g/min、固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表3】


【0022】〔実施例4〕
開先形状 :I型開先、幅16mm溶接ワイヤ:φ2.0mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :40%、TiO2 :15%、CaO:10%、SiO2 :22%、MgO:5%レール足部フラックス添加量:160g(添加速度:80g/min、固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表4】


【0023】〔比較例1〕
開先形状 :I型開先、幅18mm溶接ワイヤ:φ1.6mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :34%、TiO2 :8%、CaO :24%、SiO2 :30%レール足部フラックス添加量:350g(添加速度:1200g/min、固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表5】


【0024】〔比較例2〕
開先形状 :I型開先、幅16mm溶接ワイヤ:φ1.6mm(ソリッドワイヤ)
フラックス:溶融型フラックスCaF2 :15%、TiO2 :25%、CaO:10%、SiO2 :15%、Al2 3 :30%レール足部フラックス添加量:140g(固定当金枠体内27W ×150L )
シールドガス:CO2 100%(消耗式外筒からの供給:45l/min、防風壁からの供給:30l/min×2)
溶接電源:直流定電圧特性、定格出力 500A
【表6】


【0025】以上の要領で溶接した結果、実施例1〜4は、溶接前の段取りと溶接後の処理を除いて溶接開始のスイッチをONしてから15min 〜18min で溶接を終了し、後日の調査で溶接継手の欠陥もなく、機械試験性能も十分であることが確認された。
【0026】
【発明の効果】以上述べた如く本発明によればレールの現地溶接において、レール足部からレール頭部までの自動溶接をCO2 ガスシールドアーク溶接方法とサブマージアーク溶接方法とエレクトロスラグ溶接方法を併用して高能率に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施態様を示す斜視図。
【図2】同レール端面方向から見た断面図。
【図3】本発明によりレール足部初層を溶接中の断面図。
【図4】レール足部初層溶接後、折り返し2層目サブマージアーク溶接を行うための溶融型フラックスを散布中の断面図。
【図5】レール足部2層目溶接中の断面図。
【図6】レール足部3層目以降を溶接中の断面図。
【図7】レール柱部および頭部を溶接中の断面図。
【符号の説明】
1a,1b レール
2a,2b 固定当金
3a,3b 移動当金
4a,4c シールドガス供給腔付き防風壁
4b,4d 防風壁
5a,5b レール足先当金
6 裏当材収納枠体
7 裏当材
8a,8b シールドガス供給口
9a,9b シールドガス吹出口
10,11 移動当金移動方向
12 溶接フィラーワイヤ
13 非消耗ノズル
14 消耗式外筒
15 分岐口
16 ホルダー
17 横行装置
18 横行用モーター
19 横行移動方向
20 昇降装置
21 昇降用モーター
22 昇降移動方向
23 溶融型フラックス
24 ガスシールド用CO2 ガス
25 初層溶接ビード
26 2層目溶接ビード
27 3層目以降溶接ビード
28,29,30 溶融スラグ
31 溶接フィラーワイヤ先端の軌跡
32 フラックスホッパーと送給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レールを突き合わせ溶接する自動溶接方法において、レール足部初層をCO2 ガスシールドアーク溶接方法にて裏波溶接し、一時的に溶接を停止して溶接終端位置から非消耗ノズルの横行を反転し、レール足部初層の溶接開始側に横行しつつ溶融型フラックスを50g/min以上、1kg/min以下の添加速度で開先内に添加し、その後溶接ワイヤの送給を開始してレール足部2層目をサブマージアーク溶接方法で溶接し、連続してレール足部3層目においてレール足部2層目で形成された凝固スラグを再溶融させつつエレクトロスラグ溶接方法に移行し、移行後は非消耗ノズルを溶接電流検知による自動上昇とレール足部での溶接層数対応またはレール柱部からレール頭部におけるレール高さ位置対応の横行幅を記憶装置により制御することでレール形状に合わせて上昇または反復横行させ、レール頭頂面までの溶接を行う溶接方法であり、一連の溶接において、レール足部上面に載置した枠体型固定当金および非消耗ノズルの外筒を用いて、CO2 ガスまたはフラックスの自動供給を行うと共に、溶融スラグまたは溶融金属の流出を防止し、さらに定電圧特性を有する直流電源と溶接ワイヤ径φ1.2mmからφ2.0mmと低融点で低粘性な溶融型フラックスとしてフラックスの重量%で、CaF2 が25〜40%、SiO2 が20〜35%、TiO2 が5〜15%で、かつCaF2 +SiO2 が50%以上含有されるCaF2 −SiO2 −TiO2 を主成分とした溶融型フラックスを用いて溶接することを特徴とするレールの自動溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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