説明

レールマウント式門型クレーンの片ターンテーブルによるブロック移動方法及び装置

【課題】RMT1(レールマウント式門型クレーン)のブロック間移動を、短時間で機動的に行え、故障が少なくメンテナンス性の高い構造及び設備により実現し、コンテナヤード15内におけるRMT1の効率的な運用を実現することを目的とする。
【解決手段】隣り合う第1ブロック21と第2ブロック22の接する側である内側レール64端部に設置された回転体であるターンテーブル60と、第1ブロック21及び第2ブロック22の接しない側である外側レール65を円弧状に連結する旋回レール62と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば港湾等のコンテナヤード内において、コンテナの運搬を行うレールマウント式門型クレーン及びコンテナヤード内の設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾等のコンテナヤードでは、クレーンによって船舶及びトレーラ間の、コンテナの積み下ろしを行っている。
【0003】
図8にコンテナヤード15の概観を示す。
【0004】
コンテナ船等の船舶16によって運搬された20ftあるいは40ftコンテナ等のコンテナ31は、岸壁に設置されたコンテナクレーン17によって荷揚げされ、コンテナヤード15内を走行するトレーラ32に搭載される。トレーラ32に搭載されたコンテナ31は、レール13とコンテナ31を載置する場所であるコンテナスタック29からなる荷役ブロック30に、門型クレーン1によって複数列に整然と並べられ、荷揚げを完了する。これらのコンテナ31は他の船舶16に再び積まれたり、トレーラ32により他の場所へ運搬されたりする。
【0005】
ここで、使用されている門型クレーン1は大きく分けて、タイヤにより移動するもの(以下、RTT)と、レール及び車輪の組み合わせで移動するレールマウント式門型クレーン(以下、RMT)がある。RTTはヤード15内を自在に移動することが可能であるが、クレーンは自重が増加すると、それを支えるためのタイヤの個数を多くする必要があり、さらに自重が大きい場合は、タイヤでは支えきれなくなるため、レール式のRMTが採用される。
【0006】
また、RMTは、ヤード15内に敷設されたレール13上を移動することで、走行方向が規定され、位置決めが容易となり、吊荷移動の際は荷揺が少ない安定した運搬を実現している。さらに、レール13に沿って移動するため、RMTの側面図である図10に示すケーブルリール20等で給電することが可能となるため、エンジンを搭載したクレーンに比べメンテナンス性が高く、排気ガス等も発生しないため環境性能も高い。
【0007】
他方、RMTは、コンテナヤード15において荷役作業の高効率化や作業の平準化を図るために、例えば図8に示した第1ブロック21の荷役作業量が少なく、第2ブロック22の作業量が多い場合に、第1ブロック21のクレーンC1を第2ブロック22に移動させるという要求があり、また、故障時の対策としてRMTをブロック間(例えば第1ブロック21と第2ブロック22)で移動させるという要求があるが、RMTはブロック間を移動する手段を持たないため、あらかじめひとつのブロックに多数のクレーンを配置しておくことで対応しなくてはならず、設備的に無駄が大きく、非効率であるという問題を抱えている。
【0008】
これに対して、RMTのブロック間移動を行うための発明がなされてきた(例えば特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載の発明によれば、RMTのブロック間移動を実現するために、図7に示すように、各ブロック(例えば第1ブロック21、第2ブロック22)に対して垂直に交わる方向に、ブロック間移動用レール33を敷設し、RMT37のブロック間移動を実現している。
【0010】
この時、ブロック端部38に移動したRMT37は、前記RMT37下部に設置されたジャッキ36によりジャッキアップすることで、車輪11にかかる荷重を抜き、RMT37と車輪11の間に設置された図示しない旋回装置を作動させ、車輪11を90度回転させる。その後、車輪11がブロック間移動用レール33に乗るように、ジャッキアップしたRMT37を降ろすことで、RMT37の方向は変えずに車輪11のみブロック間移動用レール33の方向に回転させ、ブロック間移動用レール33上を移動するよう構成されている。
【特許文献1】特開2004−175515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1の記載の方法においては、図7に示すようにRMT37をジャッキアップし、車輪11を旋回させた後、ブロック間移動用レール33を走行し、移動先であるブロックを走行するため再びジャッキアップ及び車輪11の旋回を行うため、ブロック間の移動に時間及び手間がかかるので、RMT37のブロック間移動を容易かつ機動的に行うことは困難である。
【0012】
また、RMT37をジャッキアップするジャッキ36や、車輪11を旋回させるための旋回装置等の機構が必要となり、この旋回装置には重量物であるRMT37やコンテナ31の重量が常にかかるため、不具合が生じやすくなり、そのためメンテナンス性が低いという問題がある。特に、多忙な港湾で使用される場合は、複雑な機構が潮風の影響を受け、劣化が激しくなり故障の発生頻度が高くなる。
【0013】
更に、図7に示すようにレール13に切断部25が発生し、このレール切断部25をクレーンの車輪11が通過する際、レール切断部25の角で車輪11と接触する部分の摩耗が激しくなり、レール13及びブロック間移動用レール33の交換回数が増加してしまう。
【0014】
特に近年、港湾等のコンテナヤード15は24時間フル稼働となる場合も多く、RMT37のメンテナンス頻度が高くなると、コンテナヤード15の稼働率は著しく低下してしまい、さらに、レール磨耗に伴うレール交換作業中は、そのレール13に関わるRMT1の使用が不可能となるため、コンテナヤード15の稼働率の大幅低下は不可避となってしまう。
【0015】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、RMTのブロック間移動を、短時間で機動的に行え、故障が少なくメンテナンス性の高い構造及び設備により実現し、コンテナヤード15内におけるRMTの効率的な運用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る片ターンテーブルによるブロック移動装置は、海上輸送用コンテナの荷役に使用され、走行用レール(2本又は複数本のであってもよく、また平行に敷設してもよい)で構成されたレーンとコンテナを保管するコンテナスタックからなる荷役ブロックに沿って走行用車輪11の駆動力によって移動し、かつ前記車輪11を水平面で回転可能としたレールマウント式門型クレーン(RMT1)が、前記ブロックを複数設けた港湾等のコンテナヤード15で他のブロックに移動するブロック間移動装置であって、隣接した前記ブロック間の端部に設置したターンテーブル60上に片側の脚部の車輪11を停止させ、もう片方の脚部の車輪11を駆動することで、円弧を成した旋回レール62上を自力移動して、隣接したブロックへ(例えば第1ブロック21から第2ブロック22へ)の移動を行うことを特徴とする。
【0017】
具体的には、隣り合う第1ブロック21と第2ブロック22の接する側である内側レール64端部にターンテーブル60を設置し、前記ターンテーブル60上にRMT1の車輪11のリムを嵌合して案内するように構成された案内部を形成し、第1ブロック21及び第2ブロック22の接しない側である外側レール65を連結して、前記ターンテーブル60を中心とした円弧状の旋回レール62を形成し、前記ターンテーブル60上にRMT1の一方の車輪11を載置し、他方の車輪11が前記旋回レール62上を自走することで、隣のブロックへの移動が可能となるように構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明に係る片ターンテーブルによるブロック移動装置は、隣接した前記ブロック(例えば21,22)間の端部に設置した前記ターンテーブル60上には、前記ブロックの走行レールが延長できる位置にターン用レール61を設け、そのレール上に前記車輪11を嵌合して、車輪の駆動力で移動することを特徴とする。
【0019】
具体的には前記ターンテーブル60上の前記案内部が、前記第1ブロック21及び第2ブロック22の内側レール64に連結し、短尺であるターン用レール61を具備し、前記車輪11のリムを嵌合して案内するよう構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明に係る片ターンテーブルによるブロック移動装置は、前記ターンテーブル60には、ターンテーブル60上のターン用レール61の位置合わせを検知する位置合わせセンサ62と、位置合わせのための動力装置を備えた回転機構63を持つことを特徴とする。
【0021】
具体的には、前記ターンテーブル60の案内部と前記内側レール64の、位置合わせを検知する位置合わせセンサ52と、前記ターンテーブル60に、位置合わせのための動力装置を伴う回転機構63を具備したことを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明に係る片ターンテーブルによるブロック移動装置は、前記ターンテーブル60、前記ターン用レール61、及びクレーン走行レール13の上面が、クレーン走行レール付近の地平面34と50mm以内の段差となるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の片ターンテーブルによるブロック移動方法により、従来の方法に比べ、RMT1がブロック間を移動する際に、ジャッキアップや旋回等の必要な動作がなくなり、必要とする時間が短縮され、より機動的に、容易にRMT1のブロック間移動を実現することが可能となった。
【0024】
RMT1が旋回装置やジャッキ36を具備する必要がないため、単純な機構で構成することが可能となった。そのため、RMT1の故障となる要因が減少し、メンテナンス性が向上した。特に港湾等のコンテナヤード15で使用されるRMT1は、潮風の影響等で金属の劣化が激しくなるため、より単純な構造で故障が少ない機械であることが望まれ、本発明はその要求を満たすものである。
【0025】
RMT1の片方の車輪11を、ターンテーブル60上でブレーキにより固定し、他方の車輪11を旋回レール62上で回転させることで、RMT1はブロック間を移動するように構成している。ここで、ターンテーブル60は、RMT1の移動に伴う方向転換の影響で、自動的に回転するため、特に大きな動力を必要とせず、結果、ターンテーブル60の構造は大きな動力装置を伴わない単純な構造とすることができ、メンテナンス性が向上する。
【0026】
また、ターンテーブル60上に敷設されたターン用レール61及び旋回レール62上面をコンテナヤード15の地平面34と50mm以内の小さな段差となるように敷設することで、トレーラ32の走行に支障が出ないように構成している。
【0027】
さらに、ターンテーブル60の案内部と、ブロックのレール13の位置合わせのための位置合わせセンサ52を設置することで、レールの連絡を正確なものとし、RMT1の脱線や脱輪等の事故を防ぐことを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は本発明の概略の平面図であり、RMT1が第1ブロック21から第2ブロック22に、ターンテーブル60を利用して移動する様子を示している。
【0030】
図2はターンテーブル60の拡大平面図、図3は図2のA−A断面図である。
【0031】
図4及び図5は本発明である片ターンテーブルによるブロック移動方法及び装置の、コンテナヤード15内における実施例を示している。
【0032】
図6は旋回レール62交差部の拡大図を示している。
【0033】
図9はRMT1の荷役時の概略図であり、レールマウント式門型クレーンであるRMT1がコンテナ31をトロリ12で吊り上げ、待機しているトレーラ32に搭載する様子を示している。RMT1は移動の際、車輪11を利用する。
【0034】
図10はRMT1の側面図である。RMT1は、下部に配置された支持部35を介して設置された複数の車輪11によりレール13上を移動する。
【0035】
図1に示すように、隣接する第1ブロック21と第2ブロック22の、外側レール65は円弧状の旋回レール62により連絡され、内側レール64はターンテーブル60のターン用レール61に連絡され、全体として略U字型になるように構成されている。
【0036】
例えば、第1ブロック21から第2ブロック22にRMT1を移動させる場合、まず第1ブロック21端部にRMT1を移動させ、RMT1の片方の車輪11をターンテーブル60上に載せる。この時、ターンテーブル60に載っている方の車輪11はブレーキによりロックし、他方の旋回レール62上の車輪11を回転させ、旋回レール62上を移動させる。
【0037】
RMT1は旋回レール62上を移動するとともに、RMT1が回転するため、その外力によりターンテーブル60は回転する。その後、RMT1が移動先ブロックである第2ブロック22正面に移動完了後、ターンテーブル60に載っている車輪11のブレーキを解除することで、第2ブロック22への移動を完了する。
【0038】
図2に示すように、内側レール64端部はレール切断部25を介して、ターン用レール61に連絡されており、この連絡を正確に行うための、位置合わせセンサ52を設置している。
【0039】
内側レール64とターン用レール61が直線上に位置していない場合、RMT1の脱線や転倒の原因となるため、位置合わせセンサ52は、ターンテーブル60の方向を監視している。
【0040】
また、車輪11がターンテーブル60からはみ出さない位置に搭載されているかを監視するための車輪センサ53を搭載してもよい。
【0041】
図3は、図2のA−A断面図を示している。ターン用レール61上面は、地平面34との段差が50mm以内となるように敷設することで、トレーラ32等のコンテナヤード15内を移動する他の移動体に与える影響を少なくしている。
【0042】
また、何らかの原因でターンテーブル60が回転してしまい、内側レール64とターン用レール61の位置がずれた場合、この位置ずれを解消するためにターンテーブル60を回転させる回転機構63を設置している。ターンテーブル60の位置合わせを行うための回転機構63であるため、併設される駆動装置の出力はそれほど大きなものを必要としない。
【0043】
図4は、2つのブロック毎にターンテーブル60と旋回レール62を設けた際の実施例を示している。
【0044】
図5は、すべてのブロック間にターンテーブル60と旋回レール62を設けた際の実施例を示している。図5のように構成することで、敷設する旋回レール62及びターンテーブル60の量が図4の場合と比べ多くなるが、RMT1を任意のすべてのブロックに移動させることが可能となる。
【0045】
図6は旋回レール62交差部であるX状交差部25aの拡大図を示している。旋回レール62上をRMT1が通過可能なように、旋回レール62は斜めに切断され、短尺レール26により連結されるよう構成されている。
【0046】
上述のように、本発明の片ターンテーブルによるブロック移動方法及び装置により、RMT1のブロック間移動を、短時間で機動的に行え、故障が少なくメンテナンス性の高い構造及び設備により実現し、コンテナヤード15内におけるRMT1の効率的な運用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の片ターンテーブルによるブロック移動装置の概略を示した平面図である。
【図2】本発明の片ターンテーブル周辺部の拡大図である。
【図3】本発明の片ターンテーブルの断面図である。
【図4】本発明の実施例の概略図である。
【図5】本発明の実施例の概略図である。
【図6】旋回レール交差部の拡大図である。
【図7】従来のレーン間移動装置の概略図である。
【図8】港湾等のコンテナヤード全体を示した概略図である。
【図9】RMTによる荷役の状態を示した概略図である。
【図10】RMTの側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 レールマウント式門型クレーン(RMT)
11 車輪
15 コンテナヤード
29 コンテナスタック
30 荷役ブロック(ブロック)
52 位置合わせセンサ
53 車輪センサ
60 ターンテーブル
61 ターン用レール
62 旋回レール
63 回転機構
64 内側レール
65 外側レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上輸送用コンテナの荷役に使用され、走行用レールで構成されたレーンとコンテナを保管するコンテナスタックからなる荷役ブロックに沿って走行用車輪の駆動力によって移動し、かつ前記車輪を水平面で回転可能としたレールマウント式門型クレーンが、前記ブロックを複数設けた港湾等のコンテナヤードで他のブロックに移動するブロック間移動装置であって、隣接した前記ブロック間の端部に設置したターンテーブル上に片側の脚部の車輪を停止させ、もう片方の脚部の車輪を駆動することで、円弧を成した旋回レール上を自力移動して、隣接したブロックへの移動を行うことを特徴とする門型クレーンの荷役ブロック移動装置。
【請求項2】
隣接した前記ブロック間の端部に設置した前記ターンテーブル上には、前記ブロックの走行レールが延長できる位置にターン用レールを設け、そのレール上に前記走行用車輪を嵌合して、車輪の駆動力で移動することを特徴とする請求項1に記載の門型クレーンの荷役ブロック移動装置。
【請求項3】
前記ターンテーブルには、ターンテーブル上のターン用レールの位置合わせを検知する位置合わせセンサと、位置合わせのための動力装置を備えた回転機構を持つことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の門型クレーンの荷役ブロック移動装置。
【請求項4】
前記ターンテーブル、前記ターン用レール、及びクレーン走行レールの上面が、クレーン走行レール付近の地平面と50mm以内の段差となるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の門型クレーンの荷役ブロック移動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate