説明

レール切断装置

【課題】フランジ壁のコーナー部分を斜めに、あるいは丸めた状態で切断して衣服などの引っ掛かりを確実に防止できるレール切断装置を提供する。
【解決手段】ハット形断面のレールRを切断する第1切断構造2と、フランジ壁5のコーナー部分を切断する第2切断構造3とを隣接配置する。第1切断構造2は、固定刃10と、揺動可能に軸支される可動刃12と、可動刃12を操作するハンドル13および倍力機構を含む。第2切断構造3は、固定刃35と、固定刃35で案内支持される可動刃36と、可動刃36を復帰付勢するばね37とを含む。第2切断構造3の固定刃35および可動刃36に、コーナー部分を切断する切断刃44・49を設ける。以て、ハンドル13による第1切断構造2の切断動作に連動して、第2切断構造3の可動刃36を倍力機構で切断待機位置から切断位置へ変位操作して、フランジ壁5のコーナー部分を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断されたレール端のコーナー部分を斜めに、あるいは丸めた状態で切断する切断構造を備えているレール切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のレール(金属形材)を所定寸法に切断するためのレール切断装置は、特許文献1に公知である。そこでは、固定刃と、固定刃で上下揺動可能に軸支される可動刃と、可動刃を揺動操作する倍力機構およびハンドルなどでレール切断装置を構成している。固定刃および可動刃には、しれぞれレール断面に合致した装填穴が形成してあり、両装填穴にレールを差し込んだ状態でハンドルを押し下げることによりレールをせん断できる。切断対象となるレールは、断面コ字形のレール本体と、レール本体の開口縁から張り出されるフランジ壁とを一体に備えたハット形断面のアルミニウム条材(DINレール)からなり、配電盤や分電盤などにおいて配線レールとして使用される。同様のレール切断装置は特許文献2にも開示してあり、そこではカーテンレールを切断対象としている。
【0003】
上記のレール切断装置は手動でレール切断を行なうが、油圧圧力を駆動源とするレール切断装置も提案されている(特許文献3、4)。これらのレール切断装置は、本発明のレール切断装置と同様の配線レールを切断対象としている。
【0004】
【特許文献1】特許第2978969号公報(段落番号0010、図1)
【特許文献2】実開昭55−147211号公報(第2頁第1〜15行、第1図)
【特許文献3】特開平8−318423号公報
【特許文献4】特開平11−291123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレール切断装置では、配線レールをその長手方向の軸線と直交する状態で切断する。そのため、切断されたフランジ壁のコーナー部分が直角となり、配線レールに対して電気機器を取り付け、あるいは配線作業を行なうような場合に、作業者の衣服が先のコーナー部分に引っ掛かり、衣服が破れたり怪我を負うことがある。
【0006】
上記のような衣服の引っ掛かりや怪我を避けるために、従来は電動グラインダーなどでコーナー部分を丸め、あるいはレール端にプラスチッケ製のエンドキャップを装着して、衣服の引っ掛かりを防いでいる。しかし、電動グラインダーによるコーナー除去作業はレール両端の4箇所で行なう必要があり、手間とコストが掛かる。また、エンドキャップを付加装着する場合には、エンドキャップのコストと、エンドキャップを装着する手間が不可欠であり、コーナー除去処理を行なう場合と同様のコスト負担を避けることができない。配線作業時に誤って身体がエンドキャップに接触して、エンドキャップが脱落することもあり、そうした場合に安全性を充分に確保できない。
【0007】
本発明の目的は、フランジ壁のコーナー部分を斜めに、あるいは丸めた状態で切断して衣服などの引っ掛かりを確実に防止できるレール切断装置を提供することにある。本発明の目的は、より小さな力で軽快にコーナー部分を切断できるレール切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレール切断装置は、レール本体4と一対のフランジ壁5とを一体に備えたハット形断面のレールRを切断する第1切断構造2と、フランジ壁5のコーナー部分を切断する第2切断構造3とを、ベース1の上面に隣接配置する。第1切断構造2は、固定刃10と、固定刃10で揺動可能に軸支される可動刃12と、可動刃12を揺動操作するハンドル13および倍力機構とを含む。第2切断構造3は、固定刃35と、固定刃35で相対変位可能に案内支持される可動刃36と、可動刃36を切断待機位置へ復帰付勢するばね37とを含む。第2切断構造3の固定刃35および可動刃36に、フランジ壁5のコーナー部分を切断する切断刃44・49を設ける。以て、ハンドル13による第1切断構造2の切断動作に連動して、第2切断構造3の可動刃36を切断待機位置から切断位置へ変位操作できるレール切断装置。
【0009】
具体的には、第1切断構造2の倍力機構で、第2切断構造3の可動刃36を切断待機位置から切断位置へ変位操作できるようにする。
【0010】
第1切断構造2によるレール切断動作と、第2切断構造3によるコーナー部分の切断動作とが順次行われるように、第1切断構造2と第2切断構造3とを配置する。
【0011】
第1切断構造2の固定刃10および可動刃12のそれぞれに、第2切断構造3の上方へ伸びる連結腕22・23を固定し、ハンドル13の連結部19に設けた支点部28を固定刃10の連結腕22に第1軸31を介して連結する。支点部28の下部に設けたハンドル13の作用点部29を、可動刃12の連結腕23に倍力リンク24と第2軸32および第3軸33を介して連結する。以て、第1切断構造2の可動刃12に固定した連結腕23の突端で、第2切断構造3の可動刃36を変位操作する。
【0012】
第2切断構造3の可動刃36に、固定刃35の装着穴40に差し込み装着されたレールRの端部を受け止める位置決め面47を設ける。位置決め面47に連続して、固定刃35の切断刃44と協同してフランジ壁5のコーナー部分をせん断する一対の切断刃49を形成する。
【0013】
第2切断構造3の固定刃35に、可動刃36をスライド案内するガイド穴39と、ガイド穴39に連続する落下穴41とを形成する。落下穴41に臨む中空枠状のベース1の上壁に、可動刃36で切断された切断片を落下させる排出穴42を形成する。
【0014】
第1切断構造2の固定刃10および可動刃12の装着穴15・16の底部両側に、横向きの溝15a・16aを形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、第1切断構造2とは別に第2切断構造3を設けて、第1切断構造2でハット形断面のレールRを切断したのち、フランジ壁5のコーナー部分を第2切断構造3で切断できるようにした。したがって本発明のレール切断装置によれば、フランジ壁5のコーナー部分を斜めに、あるいは丸めた状態で切断して、衣服などの引っ掛かりを確実に防止し、しかも安全性に優れたレールRを形成できる。電動グラインダーでコーナー部分を除去する場合に比べて、より少ない手間で簡単にコーナー部分を除去でき、その分だけコーナー部分が切断されたレールRを低コストで得ることができる。
【0016】
また、ハンドル13による第1切断構造2の切断動作に連動して、第2切断構造3の可動刃36を切断待機位置から切断位置へ変位操作できるようにするので、第1切断構造2と第2切断構造3とでハンドル構造を共用できる。したがって、専用のハンドル構造で第2切断構造3を切断操作する場合に比べてレール切断装置の構造を簡素化し、その分だけレール切断装置の製造に要するコストを削減でき、さらにレール切断装置の全体重量を軽減できる。また、固定刃35と、可動刃36と、可動刃36を復帰付勢するばね37などで構成した第2切断構造3は、レールRを第1切断構造2で切断するときの切断衝撃を緩和する緩衝体を兼ねることができ、したがって、別途緩衝体を設ける場合に比べて、レール切断装置の構造を簡素化できる。
【0017】
第1切断構造2の倍力機構で、第2切断構造3の可動刃36を切断待機位置から切断位置へ変位操作できるようにしたレール切断装置によれば、ハンドル13と倍力機構によって増幅された切断力を可動刃36に作用させて、フランジ壁5のコーナー部分をより小さな力で軽快に切断できる。
【0018】
レール切断動作とコーナー部分の切断動作とが順次行われるように、第1切断構造2と第2切断構造3を配置したレール切断装置によれば、第2切断構造3の動作抵抗を受けることなくレール切断を行えるので、レール切断に要する力を小さくできる。また、コーナー部分の切断時には、ハンドル13を揺動ストロークの中途部へ戻すだけで、可動刃36を切断待機姿勢に復帰できるので、ハンドル操作に無駄がなく、例えば、連続してコーナー部分の切断を行なう場合の労力のロスを解消できる。
【0019】
第1切断構造2の固定刃10および可動刃12のそれぞれに連結腕22・23を固定し、これら両者22・23とハンドル13の連結部19とを、第1軸31〜第3軸33および倍力リンク24を介して連結したレール切断装置によれば、従来のレール切断装置に比べて、より小さな力でレールRを切断できる。具体的には、支軸11から第2軸32までの長さと、支軸11からレールRの切断位置までの長さのレバー比をみるとき、連結腕22・23を長くした分だけハンドル13に加えられる切断力を増幅して、可動刃12によるレールRの切断力を大きくでき、したがって、従来のレール切断装置に比べてより軽い力でレールRを切断できる。
【0020】
また、第1切断構造2の可動刃12に固定した連結腕23の突端で、第2切断構造3の可動刃36を変位操作すると、ハンドル13と倍力リンク24によって増幅された力で可動刃36を押し込み操作できるので、可動刃36によるフランジ壁5のコーナー部分の切断をより小さな力で軽快に行なうことができる。
【0021】
第2切断構造3の可動刃36に位置決め面47を設けると、固定刃35の装着穴40にレールRを差し込み装着した状態において、レールRの端部を位置決め面47で受け止めて位置決めして、フランジ壁5のコーナー部分を過不足のない状態で常に適正に切断できる。また、位置決め面47に連続して、固定刃35の切断刃44と協同してフランジ壁5のコーナー部分をせん断する一対の切断刃49を形成すると、フランジ壁5の左右のコーナー部分を同時に切断できるので、コーナー部分の切断に要する手間を最小限化して、コーナー除去作業を能率よく行なえる。
【0022】
第2切断構造3の固定刃35に、ガイド穴39と落下穴41を形成し、落下穴41に臨むベース1の上壁に切断片を落下させる排出穴42を形成したレール切断装置によれば、切断片を落下穴41と排出穴42を介してベース1の内部へ落下案内して、切断片が落下穴41に詰まるのを解消でき、切断片を落下穴41から取り除く手間も省くことができる。また、ベース1が床面から浮き離れる状態にレール切断装置を支持してコーナー部分の切断を行なうと、ベース1と床面との間の空間に大量の切断片を収容できるので、コーナー部分の切断作業を連続して行なうことができ、切断片の回収に要する手間も軽減できる。
【0023】
第1切断構造2の固定刃10および可動刃12の装着穴15・16の底部両側に、横向きの溝15a・16aを形成したレール切断装置によれば、ハット形断面を基本形状とするDIN規格の複数種のレールRを、第1切断構造2で共通して切断できるので、レール切断装置の適用範囲を拡大して使い勝手を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施例) 図1ないし図8は本発明に係るレール切断装置の実施例を示す。図2において、レール切断装置は、左右に長い断面がC字状のべース1の一側端に第1切断構造2を配置し、その隣に第2切断構造3を配置して構成してある。第1切断構造2はハット形断面のレールRを切断するために設けてあり、第2切断構造3はレールRのフランジ壁5のコーナー部分を切断するために設けてある。
【0025】
図3に示すように、レールR(DIN規格のレール)は断面コ字形のレール本体4と、レール本体4の開口縁から張り出されるフランジ壁5とを一体に備えたハット形断面のアルミニウム条材からなり、レール本体4の底壁には給電線や信号線を出し入れするための長穴6が一定間隔おきに開口してある。DINレールは、ハット形断面を基本形状とするが、レール本体4側の断面形状の僅かな違いによっていくつかの種類がある。例えば、レール本体4の対向する側壁の下部外面に、底壁に連続する短寸のリブ壁を突設することがある。
【0026】
第1切断構造2は、ベース1に固定した支持ブロック9の上面に固定される固定刃10と、固定刃10の後面に密着配置されて、支軸11で揺動可能に支持される可動刃12と、可動刃12を揺動操作するハンドル13と、ハンドル13と可動刃12との間に設けられる倍力機構などで構成する。
【0027】
図3に示すように固定刃10および可動刃12は、縦横寸法に比べて前後厚みが小さな直方体状の鋼材ブロックからなり、ブロック中央部分にレールRを装填するための装着穴15・16が前後貫通状に形成してある。固定刃10の前面には、ブロック上面から装着穴15にわたってガイド凹部17が凹み形成してあり、可動刃12の後面にも、同様のガイド凹部18がブロック上面から装着穴16にわたって凹み形成してある。装着穴15・16は逆ハット形に形成してあり、その断面形状はレールRの断面形状より僅かに大きく形成してある。両装着穴15・16の摺動面が切断刃となる。なお、先に説明したようにDIN規格のレールにはいくつかの種類があるが、断面形状が僅かずつ異なるいずれのDINレールでも共通して切断できるようにするために、装着穴15・16の底部両側に横向きの溝15a・16aが形成してある。
【0028】
ハンドル13は、一端に連結部19を備えたハンドル本体20と、ハンドル本体20の遊端装着されるグリップ21とからなり、連結部19が固定刃10および可動刃12に直接、あるいは繭形の倍力リンク24を介して連結してある。固定刃10および可動刃12のそれぞれには、第2切断構造3の上方へ向かって伸びる横長の連結腕22・23が締結固定してある。図3に示すように各連結腕22・23は、一端に締結座を有し、他端に連結部を備えた同じ部品からなり、上下を反転した状態で固定刃10と可動刃12の摺動面の側に固定してある。ハンドル13の連結部19の側端には二又状の支点部28が形成され、連結部19のの下面側には二又状の作用点部29が形成してある。
【0029】
固定刃10および可動刃12とハンドル13とは次のように連結する。固定刃10に固定した連結腕22の連結部を、ハンドル13の二又状の支点部28の間に差し込み、これら両者を第1軸31で相対回転可能に連結する。また、可動刃12に固定した連結腕23の連結部を、二又状の倍力リンク24の間に差し込み、これら両者を第2軸32で相対回転可能に連結する。さらに倍力リンク32の他端を、ハンドル13の二又状の作用点部29の間に差し込み、これら両者を第3軸33で相対回転可能に連結する。このように、各構成部品を連結した状態では、固定刃10の連結腕22が可動刃12の連結腕23の上面を受け止めて、ハンドル13の上方揺動限界を規定する。したがって、図2に実線で示す切断待機位置を越えてハンドル13が上方揺動することはない。
【0030】
上記のように、可動刃12とハンドル13を倍力リンク24を介して連結することにより、ハンドル13の押し下げ力を増幅して可動刃12に伝えることができる。詳しくは、ハンドル13の第1軸31の中心からグリップ21の押し下げ箇所中央部分までの長さと、第1軸31の中心から第3軸33の中心までの長さのレバー比に相当する、増幅された力を倍力リンク24と連結腕23を介して可動刃16に伝えることができる。さらに、支軸11から第2軸32までの長さと、支軸11からレールRの切断位置までの長さのレバー比に相当する、増幅された力をレールRの切断位置に作用させることができる。本発明の倍力機構のひとつは、ハンドル13と連結部19に設けた作用点部29とで構成され、他のひとつはハンドル13および倍力リンク24と、可動刃12に固定した連結腕23とで構成される。
【0031】
図5に示すように第2切断構造3は、ベース1に固定される固定刃35と、固定刃35で上下に出退スライド可能に案内支持される可動刃36と、可動刃36を切断待機位置へ復帰付勢する2個のばね37などで構成する。固定刃35および可動刃36は、倍力機構の下方、具体的には可動刃12の連結腕23の突端下方に臨んで配置してあり、ハンドル13による第1切断構造2の切断動作に連動して、可動刃36を切断待機位置から切断位置へ押し下げ操作できる。なお、第2切断構造3は、レールRを第1切断構造2で切断するときの切断衝撃を緩和する緩衝体を兼ねている。
【0032】
固定刃35は直方体状の鋼材ブロックからなり、ブロックの上面中央に可動刃36をスライド案内するガイド穴39が凹み形成され、ブロックの前面中央からガイド穴39へ向かってレールRの断面形状に合致する装着穴40が形成してある。ガイド穴39の底壁は固定刃35の上下高さの過半下部付近に位置させてあり、底壁の左右に設けたばね穴にばね37が装填してある。ガイド穴39の底部に連続して左右一対の落下穴41が形成され、さらに落下穴41に臨むベース1の上壁に排出穴42が形成してある。このように、ガイド穴39に連続して落下穴41と排出穴42を設けることにより、可動刃36で切断された切断片をベース1の下面側へ落下させて排出することができる。
【0033】
装着穴40は、先に説明した装着穴15・16と同じ断面形状に形成してあり、装着穴40の底部両側に横向きの溝40aが形成してある(図1参照)。装着穴40のうち、レールRのフランジ壁5を受け止める部分とガイド穴39とが交差する部分に、フランジ壁5のコーナー部分を切断するための切断刃44が斜めに形成してある(図6参照)。固定刃35の前面には、レールRを装着穴40に差し込み案内するためのガイド凹部45が、ブロック上面から装着穴40にわたって凹み形成してある。
【0034】
可動刃36は横断面が凹字状の鋼材ブロックからなり、ブロック前面に装着穴40に差し込み装着されたレールRの端部を受け止める位置決め面47と、位置決め面47の左右両側に連続する傾斜面48とが形成してある。両傾斜面48の下端縁が、固定刃35の切断刃44に対応する切断刃49となる。位置決め面47の下端は、傾斜面48の下端より下方へ突出させてある。これは、図1に示すように、可動刃36がばね37で押し上げられて切断待機位置に位置している状態において、位置決め面47の下部を装着穴40の内端と交差させて、装着穴40に差し込まれたレールRの端部を位置決め面47で受け止められるようにするためである。
【0035】
レールRを切断するときは図2に示すように、ハンドル13を切断待機姿勢にした状態で、レールRを固定刃10および可動刃12の装着穴15・16に差し込む。このとき、レルー端をガイド凹部17(または18)にあてがった状態で押し下げることにより、レールRを容易に装着穴15・16へ差し込んで、切断すべき位置を固定刃10および可動刃12のせん断面(摺動面)に臨ませることができる。この状態で、ハンドル13を押し下げ操作して、レールRを一気に切断する。このときの可動刃12は、支軸11から離れるほど揺動量が大きい。したがって、レールRの破断面は、支軸11から遠い側のフランジ壁5の端部から、支軸11に近い側のフランジ壁5の端部へと成長する。そのため、切断抵抗を減少してより小さな力でレールRを切断できる。
【0036】
レールRは、ハンドル13を図2に符号C1で示す位置まで押し下げた状態で完全に切断でき、このとき、図1に示すように可動刃12の連結腕23の突端が第2切断構造3の可動刃36の上面に接触する。したがって、レールRが切断された直後の切断衝撃を可動刃36およびばね37で緩和吸収することができる。
【0037】
上記のレール切断動作は、特許文献1のレール切断装置の切断動作と比べて基本的に違いはない。しかし、本発明では、固定刃10および可動刃12に固定される連結腕22・23を長寸法に設定して(従来装置の2倍)、さらに小さな力でレール切断を行えるようにしている。先に説明したように、ハンドル13に加えられる切断力は、ハンドル13と倍力リンク24によるトッグル作用で増幅され、さらに、支軸11から第2軸32までの長さと、支軸11からレールRの切断位置までの長さのレバー比の分だけ増幅される。したがって、連結腕22・23の長さが長い分だけ切断力の増幅度を高めて、より軽い力でレールRを切断できる。このように、より小さな力でレール切断を行えるようにするのは、レール切断作業が力の弱い補助的な作業者によって行なわれることが多い点に配慮したものである。
【0038】
上記のようにして切断されたレールRは、次に第2切断構造3によってフランジ壁5のコーナー部分を切断する。詳しくは、ハンドル13を符号C1位置に位置させた状態で、レールRをガイド凹部45で案内しながら固定刃35の装着穴40に差し込み、レール端を可動刃36の位置決め面47に接当させる。この状態で、ハンドル13を符号C2位置まで一気に押し下げ操作すると、図8に示すように可動刃36が連結腕23の先端で押し込まれて下降移動する。その結果、フランジ壁5の左右のコーナー部分を同時に切断できる。コーナー部が切断されたレールRを図7に示している。切断片は、落下穴41と排出穴42を介してベース1の内部へ落下するので、連続してフランジ壁5のコーナー部分を切断する場合であっても、切断片が落下穴41に詰まるのを防止できる。
【0039】
以上のように、本発明のレール切断装置では、第2切断構造3の可動刃36を、ハンドル13による第1切断構造2の切断動作に連動して切断待機位置から切断位置へ変位操作して、フランジ壁5のコーナー部分を切断するので、第1切断構造2と第2切断構造3とでハンドル構造を共用できる。したがって、例えば第2切断構造3を専用のハンドル構造で切断操作する場合に比べてレール切断装置の構造を簡素化し、その分だけレール切断装置の製造に要するコストを削減できる。また、レール切断装置の全体重量を軽減できる利点もある。なお、必要があればエンドキャップを付加装着して、さらに安全性を向上することができる。
【0040】
図9はレール切断装置の別の実施例を示す。そこでは、第1切断構造2を省略して、第2切断構造3のみでレール切断装置を構成した。詳しくは、支持ブロック9に固定ブロック51を固定し、固定ブロック51の後面に配置した可動ブロック52を支軸11で揺動可能に支持した。そのうえで、固定ブロック51に左右横長の連結腕22を固定し、可動ブロック52に左右横長の連結腕23を固定した。第2切断構造3は、上記の実施例と同様に構成し、その可動刃36を連結腕23の先端で押し込むことにより、フランジ壁5のコーナー部分を切断することができる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図9に示すレール切断装置は、以下の態様で実施することができる。
ベース1の上面に、固定ブロック51と、レールRのフランジ壁5のコーナー部分を切断する第2切断構造3とが設けられており、
固定ブロック51と、固定ブロック51で支軸11を介して揺動可能に支持される可動ブロック52とのそれぞれに、第2切断構造3の上方へ延びる連結腕22・23が固定されており、
第2切断構造3を切断操作するハンドル13が、固定ブロック51に固定した連結腕22で第1軸31を介して揺動可能に支持されており、
第2切断構造3は、固定刃35と、固定刃35で相対変位可能に案内支持される可動刃36と、可動刃36を切断待機位置へ復帰付勢するばね37とを含み、
第2切断構造3の固定刃35および可動刃36に、フランジ壁5のコーナー部分を切断する切断刃44・49が設けられており、
可動ブロック52に固定した連結腕23とハンドル13との間に設けた倍力機構で、可動刃36を切断待機位置から切断位置へ変位操作するレール切断装置。
【0042】
ハンドル13の連結部19に設けた支点部28が、前記連結腕22に第1軸31を介して連結されており、
前記支点部28の下部に設けたハンドル13の作用点部29が、可動ブロック52の連結腕23に倍力リンク24と第2軸32および第3軸33を介して連結されており、
前記連結腕23の突端で、可動刃36を変位操作するレール切断装置。
【0043】
上記の実施例以外に、切断刃44・49を丸めた形状に形成しておいて、フランジ壁5のコーナー部分を、4分円状や放物線状に丸めた状態で切断することができる。第2切断構造3の可動刃36は連結腕23で押し込み操作する必要はない。例えば、倍力リンク24の連結腕23との連結部分で可動刃36を押し下げ操作できる。必要があれば、第2軸32で軸支した回転自在なローラーで、可動刃36を押し下げ操作することができる。第2切断構造3の切断負荷は、第1切断構造2の切断付加に比べて充分に小さい。したがって、ハンドル13の作用点部29で可動刃36を押し下げ操作できるようにしてもよい。
【0044】
第2切断構造3の可動刃36は、固定刃35でスライド自在に案内支持する必要はなく、第1切断構造2の可動刃12と同様に支軸で揺動自在に支持することができる。その場合の可動刃36は、第1切断構造2から最も離れた位置を支軸で軸支して、軸支構造が連結腕23と接当緩衝するのを避けるとよい。このように揺動自在に支持した可動刃36によれば、フランジ壁5の一方のコーナー部分を先行して切断できるので、切断付加を小さくして、より小さな力でコーナー部分を切断できる。上記の実施例においては、第2切断構造3の前面側からレールRを装填するようにしたが、第2切断構造3の前面および後面のいずれの側からでもレールRを装填できるようにすることができる。その場合には、固定刃35の前後面のそれぞれに装着穴40、切断刃44、およびガイド凹部45などを設ける。さらに、可動刃36の前後面のそれぞれに位置決め面47、傾斜面48、および切断刃49などを設ける。
【0045】
上記の実施例では、可動刃36を垂直に往復スライドしたがその必要はなく、可動刃36は垂直線から左右いずれかへ傾斜する傾斜線に沿って往復スライドできるように支持することができる。排出穴42が形成してある個所のベース1の前後壁に左右横長の開口を形成し、この開口に角皿状の引き出しを出し入れ自在に装填して、排出穴42から落下する切断片を引き出しで受け止めることができる。あるいは、排出穴42の下面から前記開口の外へ向かって下り傾斜するシュートを設けて、排出穴42から落下する切断片をベース1の前後面のいずれかへ排出することができる。また、ガイド凹部17・45を省略する代わりに、横長L字状のガイド金具を固定刃10・35の前後面に締結固定することができる。この場合のガイド金具の縦壁は装着穴40の一側端に沿わせ、横壁は装着穴40の底面に沿わせる。第2切断構造3は、フランジ壁5のコーナー部分を片側ずつ切断するものであってもよい。可動刃12の下面と、ベース1の上面との間に圧縮コイル形のばねを配置して、不使用時の可動刃12およびハンドル13を切断待機位置に復帰させることができる。レールRは隣接する長穴6の中央部や、長穴6の中央部で切断することができ、そのための指標を固定刃10の外面に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】レール切断装置の要部の正面図である。
【図2】レール切断装置の全体正面図である。
【図3】第1切断構造の分解斜視図である。
【図4】図2におけるA−A線断面図である。
【図5】第2切断構造の分解斜視図である。
【図6】第2切断構造の横断平面図である。
【図7】コナー部分を切断した状態のレールの平面図である。
【図8】ハンドルと第2切断構造の動作を示す正面図である。
【図9】レール切断装置の別の実施例を示す要部の正面図である。
【符号の説明】
【0047】
2 第1切断構造
3 第2切断構造
4 レール本体
5 フランジ壁
10 固定刃
11 支軸
12 可動刃
13 ハンドル
35 固定刃
36 可動刃
37 ばね
39 ガイド穴
40 装着穴
44 切断刃
49 切断刃
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール本体(4)と一対のフランジ壁(5)とを一体に備えたハット形断面のレール(R)を切断する第1切断構造(2)と、フランジ壁(5)のコーナー部分を切断する第2切断構造(3)とが、ベース(1)の上面に隣接配置されており、
第1切断構造(2)は、固定刃(10)と、固定刃(10)で揺動可能に軸支される可動刃(12)と、可動刃(12)を揺動操作するハンドル(13)および倍力機構とを含み、
第2切断構造(3)は、固定刃(35)と、固定刃(35)で相対変位可能に案内支持される可動刃(36)と、可動刃(36)を切断待機位置へ復帰付勢するばね(37)とを含み、
第2切断構造(3)の固定刃(35)および可動刃(36)に、フランジ壁(5)のコーナー部分を切断する切断刃(44・49)が設けられており、
ハンドル(13)による第1切断構造(2)の切断動作に連動して、第2切断構造(3)の可動刃(36)を切断待機位置から切断位置へ変位操作できるレール切断装置。
【請求項2】
第1切断構造(2)の倍力機構で、第2切断構造(3)の可動刃(36)を切断待機位置から切断位置へ変位操作できる請求項1記載のレール切断装置。
【請求項3】
第1切断構造(2)によるレール切断動作と、第2切断構造(3)によるコーナー部分の切断動作とが順次行われるように、第1切断構造(2)と第2切断構造(3)とが配置してある請求項1または2に記載のレール切断装置。
【請求項4】
第1切断構造(2)の固定刃(10)および可動刃(12)のそれぞれに、第2切断構造(3)の上方へ伸びる連結腕(22・23)が固定されており、ハンドル(13)の連結部(19)に設けた支点部(28)が固定刃(10)の連結腕(22)に第1軸(31)を介して連結されており、
前記支点部(28)の下部に設けたハンドル(13)の作用点部(29)が、可動刃(12)の連結腕(23)に倍力リンク(24)と第2軸(32)および第3軸(33)を介して連結されており、
第1切断構造(2)の可動刃(12)に固定した連結腕(23)の突端で、第2切断構造(3)の可動刃(36)を変位操作する請求項2または3に記載のレール切断装置。
【請求項5】
第2切断構造(3)の可動刃(36)に、固定刃(35)の装着穴(4)に差し込み装着されたレール(R)の端部を受け止める位置決め面(47)が設けられており、
前記位置決め面(47)に連続して、固定刃(35)の切断刃(44)と協同してフランジ壁(5)のコーナー部分をせん断する一対の切断刃(49)が形成してある請求項2、3または4に記載のレール切断装置。
【請求項6】
第2切断構造(3)の固定刃(35)に、可動刃(36)をスライド案内するガイド穴(39)と、ガイド穴(39)に連続する落下穴(41)とが形成されており、
前記落下穴(41)に臨む中空枠状のベース(1)の上壁に、可動刃(36)で切断された切断片を落下させる排出穴(42)が形成してある請求項2から5のいずれかに記載のレール切断装置。
【請求項7】
第1切断構造(2)の固定刃(10)および可動刃(12)の装着穴(15・16)の底部両側に、横向きの溝(15a・16a)が形成してある請求項1から6のいずれかに記載のレール切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−285749(P2009−285749A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138592(P2008−138592)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000181572)篠原電機株式会社 (18)
【Fターム(参考)】