説明

レール式クレーン

【課題】
互いに直交するレールの交差部のようなレール不連続部のある走行レール上を、クレーンが円滑に走行移動することを可能とする。
【解決手段】
各コーナーに走行車輪二輪付きの走行ボギーを一個又は複数個備えて、走行路に敷設された直線レール上を走行するレール式クレーンであって、当該レールの途中の一部小区間が局部的にレールが切除され不在となるレール不連続部を、前記走行車輪が正常に走行通過できるレール不連続部通過手段を備えたことを特徴とするレール式クレーン。
前記レール不連続部通過手段は、各走行ボギーの二個の走行車輪の中間又は前後に、一個又は複数個の補助ローラー又はチルタンクを、その踏み面が前記走行車輪が接する走行レール踏み面又はレール不在部前後のレール横にある突起平面の上面と僅かな上下方向間隙を保つ高さで強固に取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部的に僅かな区間でレールが欠落した直線レール上を走行する走行ボギー付きのクレーンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レール式クレーンは、ジブクレーン、橋形レーン、門型クレーン、天井クレーン等々として産業界のあらゆる分野で活躍している非常に重要な機械設備である。レール式クレーンは定められたレール上をレールに沿って移動するので走路逸脱の心配が無く、その点ではレールに拠らずに移動するゴムタイヤ式移動式クレーンに比べ安全面では優っているし、走行運転操作も容易である。反面、レールが存在することがクレーンの移動の前提となるので、例えセンチメートル単位の極短い区間でもレールが無い部分があると、車輪がその間隙に落ち込み、クレーンの移動が困難又は不可能になるという弱点もある。一般にクレーンは大型の高価な設備であり、各クレーンを効果的に配置し且つ出来る限り広範囲で利用することで、設備の投資効果を高めることが望ましいが、上記弱点のため、その目的の実現に制約を受けることが多い。
【0003】
一例を挙げると、図1に示すような広いヤードで2基のクレーンが互いに直角方向に交差して走行するようなクレーン配置が求められる場合である。この場合互いのクレーンの走行路が交差する部分では当然レールが図1に示すように交差する。しかし、レール式走行車輪に一般的に必要となるフランジ付き車輪においては、レール交差部と云えども必ず車輪フランジが通過するための空間が必要になる。その状態は図3に示す通りである。つまり、レール交差部では両レールともに必ず相手方クレーンの車輪のフランジが通過する範囲のレールが切り取られ、図2に示すようにレール不在部が形成される。このようなレール交差部では、そこを通過しようとする車輪がこのレール不在部に落ち込むため、クレーンの走行は困難となる。この結果、従来は図1に示すようなレール式クレーンの配置は不可能であった。
【0004】
他の例としては、造船所のドライドックの両側に設置されたジブクレーンや、図7で示す複数列のクレーン走行路が平行して走るコンテナヤードの門型クレーン等である。これらのクレーンは他の走行路に移動できれば、各走行路における作業量の多寡に応じて各走行路のクレーン台数を適宜調整できるので、設備の利用効率が大幅に向上する。このクレーンの移動を実現するには、各クレーン走行路に直角に交差したクレーン横移動用レールを敷設し、この横移動用レールを使って移動対象とするクレーンを移動目的の走行路まで横移動させ、然る後目的走行路に乗り移ればよい。しかし、ここでも上述のレール交差点での局部的レール不在部が存在し、例え走行輪が向きを変えることが出来たとしても、クレーンがこのレール交差部を通過することが不可能である。従って、これらのクレーンの位置換えも、レール不在部の通過不能の問題を解決すること無しには実現出来ない。
【0005】
このレール交差部の問題の一つの解決策としては、レール交差部を旋回式の円盤に載せる方法がある。図4の(2)に示すように、直交する何れのレール2a、3aともレール欠落部無しに一直線を形成することが出来る一本のレール4を旋回円盤5の中心に取り付け、その旋回中心が両レールの中心線の交点にあるように旋回円盤を据え付ける。この旋回円盤をその上のレールがクレーンの進行方向のレール中心線と一致する位置まで旋回移動して停止させれば、クレーンはレール欠落部無しのレール上を目的方向に移動することが出来る。従って走行車輪をクレーンに対し回転可能に取り付ければ、旋回円盤と走行車輪を目的とする進行方向に向けることにより、クレーンはレール継ぎ目の問題無しにその方向に移動できる。この操作を繰り返すことにより、クレーンはレールが直交する走行路上を走行することも、互いに直交する走行路に乗り移ることも、平行な他の走行路に移動ことも可能となる。
【0006】
しかし、重車両が頻繁に往来する屋外作業場の地面にこのような精巧な旋回円盤装置を設置すると、通過車両の衝撃や、雨水の浸水で装置の故障が頻発する可能性が高く点検や補修に多大な労力が費やされることが予想される。又安全上、旋回円盤の回転は作業員が立会いの下に運転操作する必要があるので、頻繁な位置換え作業がある場合は作業員の負担が増加する。このように装置の維持管理や運転操作に多くの労力を必要とすることと、更に設備建設費用が高額になることとが、この方法の実用化を妨げる大きな欠点となり、広く一般的に利用されるまでには至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、レール上を走行するレール式クレーンは、走行レールの一部に存在する局部的レール不在部を通過することは不可能であると言う問題を抱えている。その結果、地上に敷設された固定レールのみを使ってのクレーンの交差運転や、同じく固定レールのみを使っての平行に配置された隣接する走行路への移動等は実現されていない。本発明は上記課題を解決し、レール式クレーンの利用効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を以下の手段で解決するものである。
請求項1に記載の発明は、各コーナーに走行車輪二輪付きの走行ボギーを一個又は複数個備えて走行路に敷設された直線レール上を走行するレール式クレーンであって、当該レールの途中の一部小区間が局部的にレール不在となるレール不連続部を、前記走行車輪の落ち込み無しに正常に走行通過できるレール不連続部通過手段を備えたことを特徴とするレール式クレーンである。
【0009】
このクレーンはレール不連続部を正常に通過できるので、図1、図6、図7に示すような直角(原理的には直角以外の角度でも良い)に交差する走行路の各々に沿って移動する各クレーンが、お互いに直交する相手のレールに影響されること無しに、各々の走行路全域を走行することができる。又、クレーンを常時移動するレール軌条から、それに直交する横移動レール軌条に乗り移る場合は、クレーンの車輪を旋回式にすると共に、直交するレール交差部に存在する局部的レール欠落部を通過する機能を備えることが不可欠である。従って、クレーンに走行車輪旋回機能とレール不連続部通過手段を具備すれば、クレーンの交差レール軌条への乗り移りも可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクレーンのレール不連続部通過手段の一つである。本発明は、各走行ボギーの二個の走行車輪の中間に、一個又は複数個の補助ローラー又はチルタンクを取り付けるものである。この場合、補助ローラー踏み面又はチルタンクの踏み面は、その下にある前記走行車輪が接する走行レール踏み面又はレール不在部前後のレールの両横にある突起平面の上面と僅かな上下方向間隙を保つ位置に取り付けることも必要不可欠な条件となる。
【0011】
クレーンがレール不連続部を通過する場合、先ずボギーの先行走行車輪がレール不在部に到達するとその走行車輪はレールが無い空隙に落ち込もうとする。しかしその直ぐ後の補助ローラー又はチルタンクが僅かな隙間を降下してレールまたは突起平面に着床するので、走行ボギーは後ろ側の走行車輪とこの補助ローラー又はチルタンクで支持され、先行の走行車輪はそれ以上落ち込むことは無く空に浮いた状態を保ちつつレール不在部を通過する。次に後ろ側の車輪がレール不連続部に到達した場合は、既にレールに接している先行車輪と、後ろ側車輪の隣の、レールまたは突起平面に着床した補助ローラー又はチルタンクの2輪でボギーを支える。従って後方車輪は空に浮き空隙に落ち込むこと無しにレール不在部を通過する。上記の動作を繰り返すことにより、各ボギーおよびクレーンはレール不在部を円滑に走行通過出来る。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のクレーンのもう一つのレール不連続部通過手段に関するものである。当該発明は、各走行ボギーの二個の走行車輪の前後外側に、補助ローラーまたはチルタンクを各一個又は複数個づつ取り付けるものである。この場合、補助ローラー又はチルタンクの踏み面が、その下方にある走行車輪と接する走行レール踏み面、またはレール不在部前後のレール両横にある突起平面の上面と僅かな上下方向間隙を保つ位置に取り付けられることが必要不可欠な条件である。
【0013】
クレーンがレール不在部を通過する場合、先ずボギーの先行走行車輪がレール不在部に到達するとその走行車輪はレールが無い空隙に落ち込もうとする。しかしその直ぐ前の走行ローラー又はチルタンクが僅かな隙間を降下してレールまたは突起平面に着床するので、走行ボギーは後ろ側の走行車輪とこの補助ローラー又はチルタンクで支持され、先行の走行車輪は空に浮いた状態を保ち空隙に落ち込むことは無しにレール不在部を通過する。次に後ろ側の車輪がレール不在部に到達した場合は、既にレールに接している先行走行車輪と、後ろ側走行車輪の後ろにある、レールまたは突起平面に着床した補助ローラー又はチルタンクとの2輪でボギーを支える。従って後方車輪はこれ以上空隙に落ち込むこと無しにレール不在部を通過する。上記の動作を繰り返すことにより各ボギーおよびクレーンはレール不在部を円滑に走行通過する。
【0014】
上述の通り請求項2および請求項3に記載の発明による技術手段を用いれば、請求項1で記載した発明のレール式クレーンが実用可能となる。従って、走行路が直交するクレーンの配置は容易に実現できる。又、既存の技術手段である走行ボギーの垂直軸周りの回転機能とクレーン全体を多少持ち上げるジャッキアップ機能とをクレーンに付加し、且つ縦横方向の適切な位置に走行レールを敷設すれば、クレーンは通常の走行方向のみならずそれと直角の方向にも移動出来ることとなる。その結果平行して配列された同じスパンの他の走行路に移動も可能となる。これらのクレーンに対する給電は剛体トロリー線給電やバッテリー給電、或いはその併用等の既存の技術により可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る各技術手段を備えたレール式クレーンは、走行レール上に局部的にレール不連続部分があっても、その走行レール上を円滑に走行すると言う従来のレール式クレーンにない優れた機能を備えている。その結果、以下に記すようなレール式クレーンの配置の多様化とクレーン利用効率の向上をもたらす上に、更に、地上電力を動力源とすることによる環境汚染抑制と公害低減の効果があり、産業上きわめて有益かつ重要な発明である。
【0016】
その効果の最も単純な形が図1に示すようなクレーン配置である。これまでは、地上側に、レールに加え何かの特別な装置を装備するか、または一方を高架式クレーンとすること無しには、2台のクレーン1aおよび1bが互いに交差して走行するようなクレーン配置は不可能であった。しかし、本発明の技術手段を用いれば、単純にレール2a、2bと3a、3bを交差して敷設する(当然、レール交差点は図2に示すようにレール不在の領域となる)ことで、互いに交差して走行するクレーンの配置が容易に実現できるようになる。このクレーン交差配置は、クレーンの台数が多いヤードにおいても実現可能である。図6はその一例を示すものであり、3台のクレーン101と一台のクレーン102が交差運転をするヤードを示したものである。従来は、このようなクレーン配置を実現するためには一部を高架式クレーンにする必要があったが、本発明の技術手段を用いればそれも不要となり、その結果設備投資が大幅に低減される。以上の例で示すように、本発明によりクレーンの配置の多様化と設備投資額の低減がもたらされる。
【0017】
更に、既存の技術である走行車輪旋回機能を備えたクレーンに、本発明の技術手段を装備し、かつ通常の走行路に加えてそれと直角に走る横移動用レールを備えると、地上レールのみを通過しての、隣の走行路への位置替えが可能となる。その一例が図7に示すコンテナヤードのレール式門型クレーンである。互いに平行に配置された3組のクレーン走行路(走行レール2a,2bで構成)に対し、それと直角に交差するクレーン横移動式レール3a,3bを敷設すると、ヤード内クレーンはクレーン横移動用レールを通って、どの走行路にも移動可能となる。その結果、従来のゴムタイヤ式門型クレーンと同様に、作業量の少ない走行路のクレーンを、適宜、作業量の多い走行路に移動させ、作業量の多い走行路にクレーンを集中させることが可能である。従って、必要最小台数のクレーンで最大荷役処理量を持つ効率的なレ−ル式クレーンヤードを実現できる。又、これらのレール式クレーンは横移動区間(ここでは機上バッテリー電源等を利用)を除いては地上電源(図7には表示を割愛)を利用できるため、従来のレーン換え可能なディーゼル発電駆動のゴムタイヤ式門形クレーンが抱えていた排気ガス公害や騒音公害を一挙に解決できる。特に、コンテナターミナルの二酸化炭素排出量低減に大いに寄与する。
【0018】
他の例として、造船所のドライドック横に配置されたドックサイドジブクレーンがあり、これに対しても同様な運用が可能となり、設備の有効利用が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
以下に請求項1に記載の発明の実施例を図1を用いて説明する。1a,1bはレール上を走行する門型クレーンであり、各コーナーには走行車輪7、8を装備した走行ボギー6を一個づつ備えている。走行レール2a,2b,3a,3bは、レール交差部ではその一部が切除され、図2に示すようにレールが無い不連続レールとなっている。レール式クレーン1a,1bは夫々このレール2a,2bおよび3a,3b上を、以下に記す技術手段を用いて、レールの端から端まで円滑に走行出来るクレーンである。
【実施例2】
【0021】
以下に請求項2に記載の発明の第一の実施例を、図8(1)を用いて説明する。図8(1)のボギー6には走行車輪7と8が装備されている。又このボギー6はボギーピン9でクレーン本体に回転自在に連結されている。このボギー6の走行車輪7と8の間のレール上方の位置に二個の補助ローラー10と11が図8(1)に示すように取り付けてある。
【0022】
このボギー6の走行車輪8がレール不在部に差し掛かると、図8(2)に示すように走行車輪8はレール31の端を通過しレール不連続部に落下しかかる。しかし、ほんの僅かだけ落下しかけたところで、補助車輪11がレール31に着床するため、この補助車輪11に支えられて走行車輪8はレール不在部の空中に浮いた状態でレール不在部を通過し、再び次のレール31の端部の傾斜面を介してレール31に乗り上げ、通常の状態に戻る。それとともに補助ローラー11は僅かに持ち上げられ、レール踏み面と僅かな隙間を持った本来の位置へ戻る。この時点では、ボギー6は2個の走行車輪7,8で支えられる本来の状態に戻っている。次に、後ろの走行車輪7がレール不在部を通過する際には補助ローラー10が上記補助ローラー11と同じ役割を果たし、走行輪7は落下無しにレール不在部を通過する。上述の各ローラーの補助動作の結果、走行車輪7,8走行ボギー6そしてクレーン1は走行レール31の局部に存在するレール不在部上を円滑に走行通過することが出来る。
【実施例3】
【0023】
次に請求項2に記載の発明の第二の実施例を図10を用いて説明する。本実施例では、実施例1の各補助ローラー10、11の位置に走行レールから張り出た補助ローラー12、13を二個づつ備えるとともに、レール不在部の前後のレール両横には、突起平面32が備えられている。前記4個の補助ローラーは各々対応する突起平面32の上面と僅かな隙間を保って通過できるようにボギー6に取り付けられている。
従ってこのボギーの走行車輪8がレール不在部に差し掛かると、走行車輪8はレール31の端を通過しレール不在部の空隙に落ち込もうとする。しかし、ほんの僅かだけ落下しかけたところで、補助車輪13が突起平面32に着床するため、この補助車輪13に支えられて走行車輪8はレール不在部の空中に浮いた状態でレール不在部を通過し、次のレール31の端部の斜面を介して、再び次のレール31に乗り上げる。これとともに補助ローラー13は僅かに持ち上げられ、突起平面32と僅かな隙間も持った本来の位置へ戻る。後方の走行車輪7も同様な要領でレール不在部を円滑に走行通過する。上述の各ローラーの補助動作の結果、走行車輪7,8、走行ボギー6そしてクレーン1は走行レール31の局部に存在するレール不在部上を円滑に走行通過することが出来る。
【実施例4】
【0024】
次に請求項2に記載の発明の第三の実施例を図12を用いて説明する。本実施例は走行車輪7、8を備えたボギー6の中央にチルタンク15を一個取り付けたものである。この実施例ではチルタンク15が実施例1の補助ローラー10、11の両方の役割を担うものであり、請求項2の実施例1と同様な要領でレール不在部を円滑に走行通過する。又チルタンクをレール横の突起平面上の位置に取り付ければ請求項2の実施例2と同様な効果が出る。
【実施例5】
【0025】
以下に請求項3に記載の発明の第一の実施例を図13を用いて説明する。
図13のボギー16には走行車輪17と18が装備されている。又このボギー16はボギーピン19でクレーン本体に回転自在に連結されている。このボギー16の走行車輪17と18の外側のレール上方の位置に二個の補助ローラー20と21が図13に示すように取り付けてある。
【0026】
このボギー16の走行車輪18がレール不在部に差し掛かると走行車輪18はレール31の端を通過しレール不在部に落下しようとする。しかし、ほんの僅かだけ落下しかけたところで、未だレール31上にある補助車輪21がレール31に着床するため、この補助車輪21に支えられて走行車輪18はレール不在部の空中に浮いた状態でレール不在部を通過し、次のレール31端部の傾斜面を通って再び次のレール31に乗り上げる。これとともに補助ローラー21は僅かに持ち上げられ、レール踏み面と僅かな隙間も持った本来の位置へ戻る。この状態では、既にボギー16は2個の走行車輪17、18で支えられている。後ろの走行車輪17がレール不在部を通過する際には補助ローラー20が上記補助ローラー21と同じ役割を果たす。上述の各ローラーの補助動作の結果、走行車輪17,18、走行ボギー16そしてクレーン1は走行レール31の局部に存在するレール不在部上を円滑に走行通過することが出来る。
【実施例6】
【0027】
次に請求項3に記載の発明の第二の実施例を図14を用いて説明する。本実施例では、実施例5の各補助ローラーの位置に走行レールから張り出た補助ローラー22、23を二個
づつ備えるとともに、レール不在部の前後のレール両横には、突起平面32が備えられている。前記4個の補助ローラーは各々対応する突起平面32の上を僅かな隙間を保って通過できるようにボギー16に取り付けられている。
従ってこのボギーの走行車輪17、18がレール不在部に差し掛かると走行車輪18はレール31の端を通過しレールが無い空隙に落下しようとする。しかし、ほんの僅かだけ落下しかけたところで、二個の補助車輪23が突起平面32に着床するため、この補助車輪23に支えられて、走行車輪18はレール不在部の空中に浮いた状態でレール不在部を通過し、次のレール31の先端の傾斜面を通って再び次のレール31に乗り上げる。これとともに補助ローラー23は僅かに持ち上げられ、突起平面32と僅かな隙間も持った本来の位置へ戻る。後ろの走行車輪17も同様に補助ローラー22と協働してレール不在部を円滑に通過する。上述の各ローラーの補助動作の結果、走行車輪17,18、走行ボギー16そしてクレーン1は走行レール31の局部に存在するレール不在部上を円滑に走行通過することが出来る。
【実施例7】
【0028】
次に請求項3に記載の発明の第三の実施例は、上記実施例5お呼び実施例6のローラー120,21、22、23の位置にローラーの代わりにチルタンクを取り付けたものであり、実施例5および実施例6と同様な効果が実現される。技術手段の内容は実施例5および実施例6と重複する部分が多いので、実施外略図および更なる詳細な説明は割愛する。
【実施例8】
【0029】
又、本発明の応用例としては、通常の走行方向に対し直角の方向へも走行可能なレール式クレーンがある。図7及び図15(1)、(2)によってその一例を説明する。図7のクレーン103の各コーナーのボギー41は図15(1)に示す如く、本発明によるレール不連続部通過手段である補助ローラー43を備えると共に、当該ボギーは±90度旋回可能な機能を備えている。又各コーナーにはクレーンを少量(数cm)持ち上げることが出来るジャッキアップ44も装備されている。走行レール2a、2b上を走行しているレール式クレーン103をレール3a、3bの走行路上に移し換えるためには、クレーン103はレール2a、2bと3a、3bの交差部(レール不連続部)を乗り越えて、各ボギーの中心がレール3a、3bの中心位置まで進めそこで停止させる。この位置で図15(2)に示すように、クレーンを微少量ジャッキアップして車輪42のフランジが走行レール2a、2bに干渉しないようにする。その上でボギーを90度旋回させると、レール2a、2b上にあった各走行車輪はレール3a、3b上に移動し、そこでジャッキアップ44を解除すると各車輪はレール3a、3b上に着床する。この状態でクレーンを走行躯駆動すると、クレーンはレール不連続部を乗り越えてレール3a、3b上を走行する。このクレーンを再度レール2a、2b上に戻す場合は、上記の逆の操作をすれば良い。したがってクレーン103を隣の走行路に移動する場合も、上記の要領で容易に実現出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、従来不可能とされてきたクレーンの走行路の交差配置が、特別な地上設備無しに容易に実現可能となる。従って、広いヤードで作業を行う多くの業種の作業場で有効に利用できる。最も代表的な例としては、コンテナヤードにおける走行レーン替え可能なレール式門型クレーンを実現できる。更に条件次第では屋内外の天井クレーンでも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】走行路が交差する2台のクレーンを配置したヤード斜視図
【図2】図1のレール交差部Iの詳細斜視図
【図3】図2レール交差部のII-II矢視図
【図4】(1)旋回式レール交差部III-III断面図 (2)旋回式レール交差部の平面図
【図5】図1のクレーン1aの側面図
【図6】クレーン直交配置ヤード平面図
【図7】コンテナ保管ヤード平面図
【図8】(1)(2)中間ローラー付きボギー側面図
【図9】ボギーIV-IVおよびVI-VI断面図
【図10】中間複列ローラー付きボギー側面図
【図11】図10のV-V及びVII-VII断面図
【図12】中間チルタンク付きボギー側面図
【図13】前後ローラー付きボギー側面図
【図14】前後複列ローラー付きボギー側面図
【図15】(1)旋回式ボギー側面図 (2)走行ボギー90度旋回状態図。(クレーンジャッキアップ装置作動中)
【符号の説明】
【0032】
1a,1b 門型クレーン
2a,2b,3a,3b クレーンレール
4 旋回レール
5 レール旋回盤
6、16 走行ボギー
7、8、17、18 走行車輪
9、19 ボギーピン
10,11、20、21 補助ローラー
12、13、22、23 左右対補助ローラー
14 チルタンク
31 走行レール
32 突起平面
41 旋回式走行ボギー
42 走行車輪
43 補助ローラー
44 ジャッキアップ装置
45 走行モーター
46 走行減速機
47 ボギー旋回モーター
48 ギアー付きボギー旋回ボールレース
49 走行減速機
101、102、門型クレーン
103 コンテナヤード門型クレーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各コーナーに走行車輪二輪付きの走行ボギーを一個又は複数個備えて、走行路に敷設された直線走行レール上を走行するレール式クレーンであって、当該レールの途中にある局部的な短いレール欠落部上を、クレーンが正常に走行通過できるレール不連続部通過手段を備えたことを特徴とするレール式クレーン。
【請求項2】
前記レール不連続部通過手段は、各走行ボギーの二個の走行車輪の中間のボギー構造物に、一個又は複数個の補助ローラー又はチルタンクを、その踏み面が前記走行車輪が接する走行レール踏み面又はレール不在部前後のレール横にある突起平面の上面と僅かな上下方向間隙を保つように取り付けた装置構成であることを特徴とする、請求項1記載のレール式クレーン。
【請求項3】
前記レール不連続部通過手段は、各走行ボギーの二個の走行車輪の外側のボギー前後部の構造物に、一個又は複数個づつの走行ローラーまたはチルタンクを、その踏み面が走行車輪と接する走行レール踏み面またはレール不在部前後のレール横にある突起平面の上面と僅かな上下方向間隙を保つように取り付けた装置構成であることを特徴とする、請求項1または2記載のレール式クレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−116648(P2012−116648A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269980(P2010−269980)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(501360212)
【Fターム(参考)】