説明

レール支持構造

【課題】簡単な工事で構築でき、投資コストを抑えることができるレール支持構造を提供する。
【解決手段】レール支持構造は、まくらぎ2,3及び沈下補正補助まくらぎ6でレール4を道床1上に支持している。沈下補正補助まくらぎ6は、道床1に設置される道床設置体8と、上下方向に昇降自在に道床設置体8で支持されるレール支持体7とを備えている。道床1が沈下して道床設置体8が下降すると、レール支持体7が道床設置体8に対して上昇し、内筒71内の粒状体75が流出孔71aから載置板80に流出する。その後は、流出孔71aから流出した粒状体75で内筒71の底板が支持され、レール支持体7及び粒状体75を介してレール4が道床設置体8で道床1上に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト軌道でのレール支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道では、踏切との境界や高架橋への取付部、レール継目等の軌道構造変化箇所で大きな荷重変動が生じ、局所的な沈下が道床に生じることがある。この局所的な沈下が生じると、列車通過後のレールの弾性回復によってまくらぎが持ちあげられ、所謂浮きまくらぎの状態になり易い。一度浮きまくらぎが発生すると、列車の車輪が通過する度にまくらぎが道床に叩きつけられて道床の沈下が促進され、大きな軌道狂いを発生させる。また、浮きまくらぎのポンピングアクションにより、路盤に滞水した雨水と共に路盤土が吸い上げられて道床外へ流出する、所謂噴泥の発生が顕著になることも分かっている。
【0003】
このような課題を解決するために、まくらぎ同士の間に補助まくらぎを設置することも考えられるが、補助まくらぎを用いても道床が沈下すれば軌道補修を行わなければならず、その作業では補助まくらぎを一旦撤去する必要があり実用的ではなかった。
【0004】
このため、下記の特許文献1では自動沈下調整機能付きまくらぎが考えられている。このまくらぎでは、レールが締結された上部ブロックが道床上に設置された下部ボックスに収納され、両ボックス間に介在した自動沈下調整装置で上部ブロックが支持されている。道床が沈下すると、上部ブロックが両ボックス間に介在した案内部材で案内されて上昇し、上昇位置で自動沈下調整装置に支持されることで、レールのレベルが正規の位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4463137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の自動沈下調整機能付きまくらぎは、自動沈下補正装置を内蔵している分、一般のまくらぎよりも製造コストが高くて重量も重くなる。このため、バラスト軌道の初期投資コストが高くなり、設置工事も大掛かりとなっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な工事で構築でき、投資コストを抑えることができるレール支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明のレール支持構造は、バラスト軌道の道床に敷設されてレールを支持するまくらぎと、前記道床に前記レール毎に敷設され、前記道床の沈下に応じて伸長して前記レールを正規位置に支持する沈下補正補助まくらぎとを備え、前記沈下補正補助まくらぎが、前記レールに取り付けられるレール支持体と、道床上に設置されて前記レール支持体が収容される道床設置体と、前記道床設置体に対する前記レール支持体の昇降を案内する案内部材とを備え、前記レール支持体が、粒状体又は粉状体を収容する収容室と、前記収容室の底板から前記粒状体又は粉状体を流出させる一つまたは複数の流出孔とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体と前記道床設置体との間をシールする防塵機構を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体が、底板下面が平坦に形成された形状をしており、
前記流出孔の内周面が,下方から上方にかけて大きさが次第に拡大することを特徴とする。
また、本発明は、前記案内部材が、前記道床設置体内周側面と前記レール支持体外周側面との間に配置された、転がり案内部材または滑り案内部材であることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体が、前記レールの底面に吸着する磁石を備え、前記レールに前記磁石により固定されることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体の前記磁石の配設面には、前記レール支持体を前記レールから脱落させるための工具が挿入される間隙を、前記レールの底面との間に形成する間隙形成凹部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体が、き電電流が前記レールから地絡するのを防止するための絶縁部を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記レール支持体が、前後レールにおける信号電流の導通を防止するための絶縁部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、まくらぎとは別に敷設された沈下補正補助まくらぎでレールのレベルが正規位置に保たれることから、簡単な工事でレール支持構造を構築でき、軌道の投資コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のレールの支持構造を示す図であり、(a)は平面図,(b)は前後方向に沿った断面図である。
【図2】レールの支持構造が備える沈下補正補助まくらぎを示す図であり、(a)は平面図,(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図3】沈下補正補助まくらぎが備える内筒の底面図である。
【図4】道床に設置された状態での沈下補正補助まくらぎを示す図であり、(a)は平面図,(b)は前後方向に沿った断面図,(c)は左右方向に沿った断面図である。
【図5】道床設置体に対してレール支持体が上昇した状態での沈下補正補助まくらぎを示す図であり、(a)は前後方向に沿った断面図,(b)は左右方向に沿った断面図である。
【図6】レールの支持構造の前後方向に沿った断面を示す図であり、(a)は道床の沈下前,(b)は沈下後を示している。
【図7】沈下補正補助まくらぎの変形例を天板側から見た概略断面図である。
【図8】絶縁継目に適用された本発明のレール支持構造を示す図であり、(a)は平面図,(b)は前後方向に沿った断面図である。
【図9】図8に示すレール支持構造の前後方向に沿った断面図であり、(a)は道床の沈下前,(b)は沈下後を示している。
【図10】従来の絶縁継目のレール支持構造を示す図であり、(a)は平面図,(b)は前後方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のレール支持構造を示す図,図2はレール支持構造が備える沈下補正補助まくらぎ6を示す図である。
【0012】
図1に示すように、レール支持構造は、バラスト軌道の道床1上に沈下補正補助まくらぎ6を設置して構成されており、並まくらぎ3及び沈下補正補助まくらぎ6でレール4を道床1上に支持している。各レール4の前後の端部は、前側又は後側で隣り合ったレール4の端部と継目まくらぎ2上で継目板5により連結されている。継目板5で連結されたレール4同士は、前後の端面同士を互いの間に間隙が形成されるように向き合わせている。継目まくらぎ2及び並まくらぎ3は、道床1に埋設されて、上端部を道床1上に突出させており、左右の両端部の上面でそれぞれレール4を支持している。
【0013】
沈下補正補助まくらぎ6は、継目まくらぎ2の前後の両側に配置された並まくらぎ3と継目まくらぎ2との間、及び、継目まくらぎ2の前後の両側に配置された複数(図に示す例では2本)の並まくらぎ3同士の間にそれぞれ左右に並んで設置され、レール4を道床1上に支持している。
【0014】
図2に示すように、沈下補正補助まくらぎ6は、道床1に設置される道床設置体8と、上下方向に昇降自在に道床設置体8で支持されるレール支持体7とを備えている。
【0015】
道床設置体8は、道床1に載置される載置板80上にレール支持体7を支持する外筒81を設けて構成されている。載置板80は、矩形の平板状を呈している。
【0016】
外筒81は、上下の端部に開口部を備えた四角筒状を呈しており、前後及び左右の各側壁部が載置板80の前後及び左右の周縁部に沿って配置されるように、載置板80の上面に固定されている。外筒81の前後及び左右の各側壁部には、レール支持体7をスライド自在に支持する案内機構が設けられている。
【0017】
案内機構は、外筒81の側壁部の内側面に形成された収容凹部81aと、収容凹部81aに収容された案内部材82と、案内部材82と収容凹部81aとの間に介装された付勢手段84とを備えている。収容凹部81aは、外筒81の各側壁部の内側面に上下及び水平方向に複数並んで形成されている。本実施形態では、外筒81の各側壁部の内側面に上下方向に2つ、水平方向に3つの収容凹部81aがそれぞれ並んで形成されている。
【0018】
案内部材82は、ローラーやベアリング等の転動体82aを容器82bで転動自在に支持して構成されており、容器82bが転動体82aを外筒81の内側に向けて収容凹部81a内に収容されている。付勢手段84は、圧縮コイルバネ等から構成されており、案内部材82を内筒71の外側に向けて付勢している。
【0019】
レール支持体7は、有底四角筒状を呈した内筒71と、内筒71の上端開口部を覆った天板72とを備えている。内筒71は、粒状体75を収容するためのものであり、底板には複数の流出孔71aが開口している。本実施形態では、図3に示すように、内筒71の底板の左右方向に沿って3つ、前後方向に沿って4つの流出孔71aがそれぞれ並んで開口している。図2に示すように、各流出孔71aは、円形の開口形状を有して内筒71の底板を上下方向に貫通しており、上端側から下端側にかけて徐々に縮径して内周面が下降傾斜している。つまり、流出孔71aは、下方から上方にかけて大きさが次第に拡大している。
【0020】
天板72は、方形の平面形状を有した平板体であり、金属板72a上に絶縁板72bを重ね合わせて形成されている。天板72は、外筒81よりも大きな方形の平面形状を有しており、内筒71と軸心を一致させて内筒71の上端面に固着されている。絶縁板72bの上面には、着脱用溝73a及び磁石収納部73bが設けられている。着脱用溝73aは、絶縁板72bの前後方向の中央部に形成されており、絶縁板72bの左端から右端にかけて矩形の断面形状を有して左右方向に延びている。磁石収納部73bは、着脱用溝73aを挟んで対向する位置に対になって設けられており、絶縁板72bの左右方向の中央部に形成されている。磁石収納部73bには、レール支持体7をレール4の底面に取り付けるための永久磁石74が収容される。
【0021】
天板72には、外筒81と内筒71との間を防塵する防塵筒体9が備えられている。防塵筒体9は、天板72の下面から四角筒状を呈して下方に延びており、内側面にはシール部材91が固着されている。シール部材91は、防塵筒体9の内側面の下端部に上下に並んで配置されている。各シール部材91は、防塵筒体9の開口端に沿って四角環状に延びており、外筒81の外周面に密着している。
【0022】
図4に示すように、沈下補正補助まくらぎ6は、天板72の永久磁石74がレール4の底面に前後に並んで吸着することでレール支持体7がレール4に取り付けられ、載置板80が道床1に埋設されて道床設置体8が道床1に設置される。レール支持体7の両永久磁石74間に配置された着脱用溝73aは、レール4に直交して左右に延びており、レール4の下面との間に空隙を形成している。この空隙には、レール支持体7をレール4から脱落させるための工具が挿入される。
【0023】
レール支持体7は、道床設置体8の外筒81に内筒71が収容されて、天板72を外筒81の上方に位置させており、案内部材82の転動体82aが内筒71の前後及び左右の側面に弾接することで、外筒81内に昇降自在に支持されている。内筒71は載置板80に載置されている。レール支持体7は、内筒71の側面に弾接された転動体82aが転動することで、道床設置体8に対する昇降が案内される。また、道床設置体8の昇降に伴い、防塵筒体9のシール部材91が外筒81の外周面に摺接した状態で上下動する。
【0024】
道床1が沈下すると道床設置体8が道床1と共に下降し、図5に示すように、レール4に取り付けられたレール支持体7が道床設置体8に対して上昇する。このレール支持体7の上昇に伴い、内筒71内の粒状体75が流出孔71aから載置板80に流出する。その後は、流出孔71aから流出した粒状体75で内筒71の底板が支持される。この結果、沈下補正補助まくらぎ6が道床1の沈下に応じて伸長し、レール4が沈下補正補助まくらぎ6で正規位置に支持される。
【0025】
本実施形態のレール支持構造では、レール4同士の継ぎ目でレール4の曲げ剛性が低下し易く、また、車輪が通過する度にレール4同士の継ぎ目に衝撃荷重が作用することから、継目まくらぎ2の近辺に道床1の沈下が生じ易い。しかしながら、図6(a)に示す正規の状態から図6(b)に示すように道床1が沈下して継目まくらぎ2及び並まくらぎ3に浮きまくらぎが生じても、沈下補正補助まくらぎ6で道床1上にレール4が支持されて、レール4のレベルが低下するのが防止される。
【0026】
本実施形態によれば、継目まくらぎ2と並まくらぎ3との間及び並まくらぎ3同士の間の道床1に沈下補正補助まくらぎ6を設置することで、道床1の沈下に伴うレール4のレベルの変動を抑えて正規位置に支持することができる。また、レール4にかかる水平荷重は継目まくらぎ2及び並まくらぎ3で負担されることから、沈下補正補助まくらぎ6では鉛直荷重が負担できればよく、水平荷重まで負担する場合に比べて沈下補正補助まくらぎ6の構成を簡略化できる。このため、簡単な工事でレール支持構造を構築でき、軌道の投資コストも抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、並まくらぎ3で支持された各レール4が沈下補正補助まくらぎ6で別個に支持されていることから、道床設置体8に対するレール支持体7の上昇量が道床1の沈下量に合わせて個別に調整され、左右のレール4の不同沈下が道床1に生じても左右のレール4のレベルを正規位置に保つことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態によれば、継目まくらぎ2と並まくらぎ3との間及び並まくらぎ3同士の間の道床1に沈下補正補助まくらぎ6が設置されることで、これらのまくらぎ2,3,6を支持する道床1の上下方向への剪断変形が規制される。このため、レール4から荷重が加えられたまくらぎ2,3,6を支持する道床1がまくらぎ2,3,6の上下方向に剪断変形して浮きまくらぎが生じるのを防止できる。
【0029】
また、本実施形態によれば、永久磁石74がレール4に吸着することでレール支持体7がレール4に取り付けられることから、レール4に対するレール支持体7の着脱を容易に行うことができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、内筒71の側面に転動体82aを弾接させてレール支持体7を道床設置体8で昇降自在に支持することから、道床設置体8に対するレール支持体7の傾きや水平方向への移動を許容することができ、道床1の沈下に伴い道床設置体8に傾きや移動が生じても、レール支持体7でレール4を安定して支持できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、内筒71の底板下面が平坦に形成されて、底板の流出孔71aが下方から上方にかけて大きさが次第に拡大していることから、粒状体75が流出孔71aから内筒71内に戻るのを防止して、粒状体75でレール支持体7を安定して支持できる。
【0032】
また、本実施形態によれば、レール4の底面と着脱用溝73aとの間に形成された間隙に鋼材等の棒状の工具を挿入して、レール支持体7をレール4から脱落させられることから、レール支持体7をレール4から容易に取り外すことができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、天板72に絶縁板72bを設けることで、き電電流がレール4からレール支持体7を通して地絡するのを防止できる。
【0034】
上記実施形態では、レール4同士の継目部に本発明のレール支持構造を適用した場合について説明した。しかしながら、踏切,スラブ軌道などの直結系軌道とバラスト軌道との境界のようなレール4の変形が不連続になり易い他の軌道構造変化箇所にも、本発明のレール支持構造は適用できる。
【0035】
また、道床1の沈下に伴うレール4のレベルの変動を抑えられるのであれば、沈下補正補助まくらぎ6の構成も任意である。例えば、上記実施形態では、レール支持体7から流出させた粒状体75で道床設置体8から上昇したレール支持体7を道床設置体8上に支持した場合について説明したが、粒状体75に代えて粉状体を用いることもできる。また、油圧等の他の手段を用いて沈下補正補助まくらぎ6を構成することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、道床設置体8に対するレール支持体7の昇降を案内機構で案内したが、案内機構を備えていなくてもよい。また、上記実施形態では、レール4に取り付けられるレール支持体7を道床1上に設置された道床設置体8に収容し、レール支持体7を道床設置体8で昇降自在に支持していたが、レール支持体7が道床設置体8内に収容される構成でなくてもよく、これらが別体に構成されている必要もない。また、道床設置体8の載置板80の中央部に、載置板80を上下方向に貫通した貫通孔が形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、内筒71の底板に複数の流出孔71aが形成されている場合について説明したが、流出孔71aの数量は任意である。また、流出孔71aの配置態様,大きさ,形状も任意である。また、案内機構も道床設置体8の内周側面とレール支持体7の外周側面との間に転動体82aのような転がり案内部材を介在させるものには限定されず、潤滑金属等の滑り案内部材を介在させて構成してもよい。また、上記実施形態では、レール支持体7をレール4に永久磁石74で取り付けた場合について説明したが、電磁石を用いて取り付けてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、レール4の底面に永久磁石74が吸着することで、レール支持体7がレール4に固定された場合について説明したが、レール4に対するレール支持体7の固定方法は任意である。また、 上記実施形態では、絶縁板72bをレール4の底面に直接接続した場合について説明したが、絶縁板72bの上面が金属板で覆われていてもよい。また、レール支持体7をレール4から脱落させるための工具を挿入できるのであれば、着脱用溝73aの形状は任意であり、例えば、天板72の左右方向の中央部のみに設けられていてもよい。また、き電電流がレール4から地絡するのを防止できれば絶縁部の構成も任意であり、天板72に絶縁板72bを設ける構成には限定されない。
【0039】
また、内筒71及び外筒81の形状も四角筒状には限定されず、例えば、図7に示すように円筒状を呈していてもよい。内筒71及び外筒81を円筒状にすることで、案内機構を放射状に配置して、水平力を均等に受けることが可能になる。また、外筒81と内筒71との間を防塵する防塵機構の構成は本実施形態での構成には限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、内筒71又は天板72に一端が固定され、外筒81に他端が固定された筒状体が伸縮する構成を備えていても良い。
【0040】
上記実施形態では、前後のレール4間で信号電流が導通する普通継目に本発明を適用した場合について説明したが、レール間での信号電流の導通が遮断される絶縁継目にも本発明は適用できる。図8は、本発明が適用された絶縁継目のレール支持構造を示す図である。
【0041】
上記実施形態のレール支持構造のように、普通継目ではレール4同士の継ぎ目の直下に継目まくらぎ2を設置した支え継目の支持構造が一般的に採用されているが、絶縁継目では、図10に示すように、レール4Aの端部を中に浮かせたかけ継目の支持構造が採用されている。
【0042】
図8に示すレール支持構造では、レール4A同士の継ぎ目の直下に、沈下補正補助まくらぎ6と同様に構成された沈下補正補助まくらぎ6Aが設置されている。各レール4Aの前後の端部は、前側又は後側で隣り合ったレール4Aの端部と、沈下補正補助まくらぎ6A上で継目板5Aにより連結されている。天板72Aの絶縁板72bにより、前後のレール4A間での絶縁がなされている。
【0043】
このレール支持構造でも、図9(a)に示すようにレール4A同士の継ぎ目の直下に設置された沈下補正補助まくらぎ6Aにより、道床1の沈下に関わらず、図9(b)に示すようにレール4Aの端部が支持される。このため、レール4Aのレベルが低下するのを防止でき、上記実施形態と同様の作用効果を得られる。また、天板72Aに設けられた絶縁板72bにより、前後のレール4A間で信号電流が導通するのも防止できる。なお、沈下補正補助まくらぎ6Aでは、前後のレール4A間で信号電流が導通するのを防止できれば、絶縁部の構成は任意であり、天板72Aに絶縁板72bを設ける構成には限定されない。例えば、天板72Aのレール4Aと接触する面のみに絶縁材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 道床
2 継目まくらぎ
3,3A 並まくらぎ
4,4A レール
5,5A 継目板
51 絶縁材
6,6A 沈下補正補助まくらぎ
7,7A レール支持体
71 内筒(収容室)
71a 流出孔
72,72A 天板
72a 金属板
72b 絶縁板
73a 着脱用溝
73b 磁石収納部
74 永久磁石
75 粒状体
8,8A 道床設置体
80,80A 載置板
81 外筒
81a 収納凹部
82 案内部材
82a 転動体
82b 容器
84 付勢手段
9 防塵筒体
91 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト軌道の道床に敷設されてレールを支持するまくらぎと、
前記道床に前記レール毎に敷設され、前記道床の沈下に応じて伸長して前記レールを正規位置に支持する沈下補正補助まくらぎとを備え、
前記沈下補正補助まくらぎは、前記レールに取り付けられるレール支持体と、道床上に設置されて前記レール支持体が収容される道床設置体と、前記道床設置体に対する前記レール支持体の昇降を案内する案内部材とを備え、
前記レール支持体は、粒状体又は粉状体を収容する収容室と、前記収容室の底板から前記粒状体又は粉状体を流出させる一つまたは複数の流出孔とを備えることを特徴とするレール支持構造。
【請求項2】
前記レール支持体と前記道床設置体との間をシールする防塵機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のレール支持構造。
【請求項3】
前記レール支持体は、底板下面が平坦に形成された形状をしており、
前記流出孔の内周面は,下方から上方にかけて大きさが次第に拡大することを特徴とする請求項1又は2に記載のレール支持構造。
【請求項4】
前記案内部材は、前記道床設置体内周側面と前記レール支持体外周側面との間に配置された、転がり案内部材または滑り案内部材であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレール支持構造。
【請求項5】
前記レール支持体は、前記レールの底面に吸着する磁石を備え、前記レールに前記磁石により固定されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレール支持構造。
【請求項6】
前記レール支持体の前記磁石の配設面には、前記レール支持体を前記レールから脱落させるための工具が挿入される間隙を、前記レールの底面との間に形成する間隙形成凹部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のレール支持構造。
【請求項7】
前記レール支持体は、き電電流が前記レールから地絡するのを防止するための絶縁部を備えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のレール支持構造。
【請求項8】
前記レール支持体は、前後レールにおける信号電流の導通を防止するための絶縁部を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のレール支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255265(P2012−255265A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127841(P2011−127841)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】