説明

ロスバスタチンの製造方法

立体選択的アルドール反応によって、ロスバスタチンを作製するのに有用な式(V)の化合物を製造する方法が開示されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の化学プロセスに関し、さらに詳細には、ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩(特にロスバスタチンカルシウム)を製造するための新規化学プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩はHMGCoAレダクターゼ阻害剤であり、特に高コレステロール血症と混合型異常脂質血症の治療に対して使用されている。ロスバスタチンカルシウム〔式(A)〕が、クレストール(CRESTOR)の商標にて販売されている。ヨーロッパ特許出願公開番号(EPA)0521471は、(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸(ロスバスタチン)、そのナトリウム塩とカルシウム塩(ロスバスタチンカルシウム、以下に表示されている)、およびこれら物質の製造方法を開示している。
【0003】
【化1】

【0004】
該特許出願によれば、ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩は、(3R)−3−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−5−オキソ−6−トリフェニルホスホラニリデンヘキサン酸メチルと4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メタンスルホニルアミノ)−5−ピリミジンカルボキシアルデヒドとを縮合反応させ、次いで3−ヒドロキシ基を脱保護、5−オキソ基の不斉還元、および加水分解を行うことによって得られる。
【0005】
ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩の他の製造方法が、WO00/49014とWO04/52867に開示されている。ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩は、WO00/49014においては、ジフェニル[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イルメチル]ホスフィンオキシドと2−[(4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル}酢酸tert−ブチルとを塩基の存在下にて反応させ、次いで保護基を除去することによって得られる。WO04/52867は、1−シアノ−(2S)−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ−4−オキソ−5−トリフェニルホスホラニリデンペンタンと4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メタンスルホニルアミノ)−5−ピリミジンカルボキシアルデヒドとを縮合反応させ、次いで脱保護、4−オキソ基の不斉還元、および加水分解を行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EPA0521471
【特許文献2】WO00/49014
【特許文献3】WO04/52867
【特許文献4】WO03/064382
【特許文献5】WO03/42180
【特許文献6】WO2007/007119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら依然として、ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩を製造するための代替法が求められている。このような製造方法は、これまでに知られている製造方法と比較して、例えば、より使用しやすく、大規模な工業的製造により適しており、生成物がより高い収率で得られ、含まれる工程の数が少なく、より簡単に単離される中間体を使用し、より複雑ではない精製法を必要とし、より安価な試剤を使用し、及び/又はより環境に優しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
WO03/064382は、キラルチタン触媒を使用する不斉アルドール反応をベースとするスタチン化合物(例えば、特にピタバスタチンやロスバスタチン)の製造方法を開示している。WO03/42180は、ピタバスタチンを合成するための類似の方法を開示している。我々の同時係属出願WO2007/007119(PCT/GB2006/003543)は、アミン(例えばTMEDA)の存在下にてジエニルシリルエノールエーテルをマスキングされたアセトアセテート成分として使用する、ロスバスタチンへの不斉アルドール反応によるアプローチを開示している。
【0009】
代替のジエン成分を使用することで、TMEDA等のアミンを必要とすることなく、ロスバスタチンと医薬的に許容しうるその塩を高い収率とエナンチオマー純度にて得ることができる、ということを我々は見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
の化合物または医薬用として許容しうる前記化合物の塩の工業生産(manufacture)用の製造方法が提供され、前記製造方法は、
a)式(II)
【0013】
【化3】

【0014】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルとから独立的に選択され;あるいは2つのR基が一緒になって、(1−3C)アルキレン鎖もしくは(5−6C)スピロシクロアルキル基{1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい}を構成する〕の化合物と式(III)
【0015】
【化4】

【0016】
の化合物とを、式(IV)
【0017】
【化5】

【0018】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、置換されていてもよいS立体配置のビアリール誘導体を構成する〕のチタン(IV)触媒とアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて不活性溶媒中で反応させて、式(V)
【0019】
【化6】

【0020】
の化合物を得る工程;
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して、式(VI)
【0021】
【化7】

【0022】
の化合物を得る工程;および
c)R基を除去して、式(I)の化合物またはその塩を得る工程;
次いで、必要に応じて医薬的に許容しうる塩を作製する工程
を含む。
【0023】
言うまでもないことであるが、チタン触媒の鏡像異性体エナンチオマー(the opposite enantiomer)を使用すると、式(V)の化合物の鏡像異性体エナンチオマーが得られ、従ってロスバスタチンのエナンチオマーを作製するためのルートとなる。
【0024】
2つのR基が一緒になって、(1−3C)アルキレン鎖もしくは(5−6C)スピロシクロアルキル基{1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい}を構成する場合の式(II)の化合物が、下記の構造
【0025】
【化8】

【0026】
を含むのは言うまでもない。
【0027】
適切な反応条件を以下に説明する。
【0028】
【化9】

【0029】
で示される置換されていてもよい適切なビアリールジオキシ誘導体は、下記のジオールから誘導される誘導体を含む:
【0030】
【化10】

【0031】
特に適切なビアリール誘導体は、下記のジオール:
【0032】
【化11】

【0033】
から誘導される誘導体である。
【0034】
言うまでもないが、上記のビアリール系はキラルであり、本発明の反応においてはS立体配置にて使用される。
【0035】
工程a)
アルカリ金属ハロゲン化物の使用は、式(III)の化合物との反応に対して良好な収率とエナンチオマー過剰率を得るのに必須であると考えられる。
【0036】
反応混合物中に最初に存在する式(III)のアルデヒドと式(II)の化合物とのモル比は、適切には1:1〜1:6(例えば1:1〜1:4)であり、さらに適切には1:1.5〜1:3(例えば1:2)である。
【0037】
反応混合物中に最初に存在する式(IV)のチタン(IV)触媒と式(III)のアルデヒドとのモル比は、適切には0.01:1〜0.5:1(例えば0.1:1〜0.3:1)である。
【0038】
反応混合物中に最初に存在するアルカリ金属ハロゲン化物と式(III)のアルデヒドとのモル比は、適切には0.03:1〜1:1(特に0.1:1〜0.5:1)である。当業者には周知のことであるが、アルカリ金属ハロゲン化物の正確な使用量は、チタン触媒の使用量及び/又は反応溶液の濃度に依存する。アルカリ金属ハロゲン化物が塩化リチウムであるときは、上記の量が特に適している。
【0039】
本発明の反応は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはジメトキシエタン等の極性非プロトン性溶媒中で行うことができ、好ましいのはテトラヒドロフランである。溶媒の組み合わせも使用することができる。
【0040】
本発明の反応は、約0℃〜約70℃(例えば約10℃〜約60℃)の温度で行うことができ、好ましいのは約15℃〜約30℃である。
【0041】
好ましいアルカリ金属ハロゲン化物は塩化リチウムである。
【0042】
(1−6C)アルキルと(1−4C)アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびtert−ブチルなどがある。アリール(1−6C)アルキルの例としては、ベンジルなどがある。(1−3C)アルキレンの例としては、メチレン、エチレン、およびプロピレンなどがある。(5−6C)スピロアルキルの例としては、スピロシクロペンチルやスピロシクロヘキシルなどがある。(3−6C)シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルなどがある。
【0043】
各R基はメチルであるのが適切である。各R基は、(1−6C)アルキルから独立的に選択されるのが適切であり、特にエチルが適切である。
【0044】
式(II)の化合物は、「Organic Letters,2005,7,2421−2423」に記載の手順に従って製造することができる。式(II)のスピロ環式化合物は、当業界に公知の方法によって製造することができる。このような化合物に対する適切な出発物質としては、
【0045】
【化12】

【0046】
及び
【0047】
【化13】

【0048】
等のスピロ環式アセトアセテートなどがある。
【0049】
式(IV)の化合物は、WO03/064382およびWO03/42180に記載の手順に従って製造することができる。
【0050】
式(III)の化合物は、後述の実施例に記載のように、また下記のスキーム1に示すように、下記の手順に従って製造することができる。
【0051】
【化14】

【0052】
言うまでもないが、本発明は、任意の適切な方法によって製造される式(III)の化合物の使用を含み、上記スキームにおいて示されている化合物に限定されない。
【0053】
式(XI)の化合物は、式(X)の化合物とアクリロニトリルとを、遷移金属触媒〔例えば、Pd[P(tBu)[予め作製しておくか、あるいは例えば、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba))もしくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))とBuPH・BFからその場で生成させる]等のパラジウム触媒〕の存在下で反応させることによって適切に製造することができる。臭化テトラブチルアンモニウム等の相間移動触媒を使用することができる。
【0054】
式(XI)の化合物の、式(III)の化合物への転化は、DIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム)を使用して還元することによって適切に果たすことができる。他の適切な還元剤としては、下記の化合物およびそれらの錯体などがある:ラネーニッケル(Hの供給源と併用)、塩化スズ(II)、トリエチルホウ水素化リチウム、カリウム9−sec−アミル−9−ボラタビシクロ[3.3.1]ノナン、水素化ジイソプロピルアルミニウム、水素化リチウムトリエトキシアルミニウム、水素化リチウムジエトキシアルミニウム、水素化ナトリウムジエチルアルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化リチウムトリス(ジアルキルアミノ)アルミニウム、および適切なルイス酸の存在下でのトリアルキルシラン。
【0055】
より適切には、式(XI)の化合物の、式(III)の化合物への転化は、DIBALを使用して、例えばトルエン中にて0℃未満の温度で還元することによって果たすことができる。
【0056】
これらの反応に対するさらに他の適切な条件は、後述の実施例に記載されているか、あるいは当業界によく知られている。
【0057】
式(III)の化合物の他の製造方法は、式(X)の化合物と適切なビニルホウ素化合物、例えば、式(XII)のビニルボロネート
【0058】
【化15】

【0059】
[式中、BYは、B(OH)、B(OH)、B(OH)、BX(式中、X=ハロゲン)、B(OR、B(OR、B(OR(OH)、B(OR)(OR)、B(OR)(OR)(OH)、B(OR)(OR)F、BR、BROH、およびBRから選択され;
は、(1−6C)アルキル、(3−6C)シクロアルキル、およびアリール(1−6C)アルキルから選択され;
とRは、一緒になって、それらが結合している2つの酸素間に2〜3炭素のアルキレンブリッジを形成し、前記アルキレンブリッジが1個、2個、3個、もしくは4個のメチル基またはフェニル基で置換されていてもよく;
あるいはRとRは、一緒になってフェニル環を形成し;
そしてRは保護基である]
との反応;
次いで、脱保護を行って式(XIII):
【0060】
【化16】

【0061】
の化合物を得て;そして
式(XIII)の化合物を酸化して式(III)の化合物を得ることによる。
【0062】
に対する適切な意味は、よく知られているヒドロキシ保護基を含み、例えばSi(R(式中、各Rは、(1−6C)アルキルから独立的に選択される)、テトラヒドロピラニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、メトキシメチル(MOM)、およびベンジルオキシメチル(BOM)などがある。ORはエステル基ではないのが好ましい。
【0063】
1つの態様においては、RはSi(R(例えば、トリメチルシリルやtert−ブチルジメチルシリル)である。他の態様においては、Rはテトラヒドロピラニルである。
【0064】
BYはB(OR)(OR)であるのが適切である。
【0065】
B(OR)(OR)の例としては、
【0066】
【化17】

【0067】
などがある。
【0068】
1つの態様においては、B(OR)(OR)は
【0069】
【化18】

【0070】
である。
【0071】
(XII)の化合物と(X)の化合物との反応は、パラジウム触媒〔例えば、(1,1'−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)〕の存在下にて適切に行うことができる。この反応は、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下にてアセトニトリル/水中にて行うことができる。これとは別に、この反応は、フッ化物の存在下にて行うこともできる(例えば「J.Org.Chem.,1994,59,6095−6097」を参照)。
【0072】
言うまでもないが、Rの一部の意味に対しては(例えば、RがSi(Rであるとき)、シリル基を工程A中にてその場で除去することができる。Rがテトラヒドロピラニルであるとき、中間体であるアリルエーテルを脱保護してアルコール(XIII)を得るには別個の工程が必要とされ、これは例えば、塩酸水溶液を使用する加水分解によって果たすことができる。この脱保護工程は、後述の実施例に記載のように、中間体アリルエーテルを単離せずに行うことができる。Rがp−メトキシベンジル基であるときは、ヒドロキシ基を同時に酸化する酸化条件下にてこれを除去して、式(III)のアルデヒドを得ることができる。
【0073】
(III)の化合物を得るための(XIII)の化合物の酸化(工程B)は、例えばトルエン中にて二酸化マンガンを使用して適切に果たすことができる。当業界によく知られている他の酸化条件〔例えば、塩素とジメチルスルフィドを使用して達成されるスウェーン酸化のバリエーション〕も使用することができる。
【0074】
さらに、これらの反応に対する適切な条件は、後述の実施例において見出すことができる。
【0075】
言うまでもないが、(IV)の化合物の存在下での(II)の化合物と(III)の化合物との反応は、式(Va)の中間体エノラートを通過し、一般にはこの中間体を、最終処理時に加水分解して化合物(V)を得る。本発明の他の態様においては、(Va)を単離し、次いで反応の別個の工程においてこれを加水分解して(例えば、テトラヒドロフラン中にて塩酸水溶液等の酸水溶液を使用して)(V)の化合物を得ることができる。この工程を以後、工程a')と呼ぶ。
【0076】
【化19】

【0077】
式(Va)の特定の化合物(特に、各Rが(1−6C)アルキルから独立的に選択される場合の化合物)は新規化合物であり、本発明のさらなる態様として提供されている。
【0078】
各Rがエチルであるとき、式(Va)の化合物は、3−エトキシ−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル)−5−ヒドロキシ−2,6−ヘプタジエン酸(S)−トランス−エチルであり;この化合物は、本発明のさらなる態様として提供されている。
【0079】
工程b)
式(V)の化合物中のケト基の還元は、ジ(低級アルキル)メトキシボラン(例えば、ジエチルメトキシボランやジブチルメトキシボラン)の存在下にて果たすことができる。ジエチルメトキシボランを使用するのが適切である。反応は一般に、テトラヒドラフランやアルコール(例えば、メタノールやエタノール)等の極性溶媒、またはこのような溶媒の混合物(例えば、テトラヒドロフランとメタノールとの混合物)中にて行われる。
【0080】
還元剤は、ナトリウムホウ水素化物やリチウムホウ水素化物等の水素化物試剤が適切であり、特に適しているのはナトリウムホウ水素化物である。
【0081】
反応は、低温(例えば、約−20℃〜約−100℃;特に、約−50℃〜約−80℃)にて果たすことができる。
【0082】
類似のジアステレオ選択的な還元がEP0521471に開示されている。
【0083】
工程c)
式(VI)の化合物中のR基を、当業界によく知られている条件下での加水分解によって除去して、式(I)の化合物またはその塩を作製することができる。このような塩は、医薬的に許容しうる塩である場合もあるし、あるいは医薬的に許容しうる塩に変換することができる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液で処理することによってRを加水分解して、(I)のナトリウム塩を作製することができる。
【0084】
医薬的に許容しうる適切な塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩やマグネシウム塩)、アンモニウム塩、または生理学的に許容しうるカチオンをもたらす有機塩基との塩〔例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンとの塩〕などがある。
【0085】
前述したように、式(I)の化合物は、カルシウム塩として市販されている。カルシウム塩は、R基を除去するための反応の生成物として直接形成させることができる〔例えば、式(VI)の化合物を水酸化カルシウム水溶液で処理することによって、US2003/0114685参照;あるいは、式(I)の化合物の別の塩(例えばナトリウム塩)を適切なカルシウム供給源の水溶液で処理することによって〕。適切なカルシウム供給源としては、塩化カルシウムや酢酸カルシウムなどがある。この状況をスキーム2に示す。
【0086】
【化20】

【0087】
ナトリウム塩をカルシウム塩に変換させるための適切な条件がEP0521471に記載されている。言うまでもないが、異なった粒径または異なった物理的形態(例えば、非晶質や結晶質)を得るために、得られたカルシウム塩を当業界に公知の方法によって再処理することができる(例えば、国際特許出願WO00/42024とWO2005/023779を参照)。
【0088】
本発明の他の態様によれば、式(I)
【0089】
【化21】

【0090】
の化合物またはその医薬的に許容しうる塩の製造方法が提供され、前記製造方法は以下を含む:
a)式(II)
【0091】
【化22】

【0092】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルから独立的に選択され;あるいは、2つのR基が一緒になって(1−3C)アルキレン鎖または(5−6C)スピロシクロアルキル基(1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい)を構成する〕の化合物と式(III)
【0093】
【化23】

【0094】
の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒
【0095】
【化24】

【0096】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、S立体配置の、置換されていてもよいビアリール誘導体を構成する〕およびアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて、不活性溶媒中で反応させて、式(Va)
【0097】
【化25】

【0098】
の化合物を得る工程;
a')式(Va)の化合物を加水分解して式(V)
【0099】
【化26】

【0100】
の化合物を得る工程;
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して式(VI)
【0101】
【化27】

【0102】
の化合物を得る工程;および
c)R基を除去して式(I)の化合物またはその塩を得る工程;
次いで、必要に応じて医薬的に許容しうる塩を作製すること。
【0103】
本発明のさらに他の態様によれば、式(VI)
【0104】
【化28】

【0105】
の化合物の量産(manufacture)用の製造方法が提供され、前記製造方法は以下を含む:
a)式(II)
【0106】
【化29】

【0107】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;
各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルから独立的に選択され;
あるいは、2つのR基が一緒になって(1−3C)アルキレン鎖または(5−6C)スピロシクロアルキル基(1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい)を構成する〕の化合物と
式(III)
【0108】
【化30】

【0109】
の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒
【0110】
【化31】

【0111】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、S立体配置の、置換されていてもよいビアリール誘導体を構成する〕、アルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて、不活性溶媒中で反応させて、式(V)
【0112】
【化32】

【0113】
の化合物を得る工程;および
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して、式(VI)の化合物を得る工程。
【0114】
本発明のさらに他の態様によれば、式(VI)
【0115】
【化33】

【0116】
の化合物の製造方法が提供され、前記製造方法は以下を含む:
a)式(II)
【0117】
【化34】

【0118】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;
各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルから独立的に選択され;
あるいは、2つのR基が一緒になって(1−3C)アルキレン鎖または(5−6C)スピロシクロアルキル基(1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい)を構成する〕の化合物と、
式(III)
【0119】
【化35】

【0120】
の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒
【0121】
【化36】

【0122】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、S立体配置の、置換されていてもよいビアリール誘導体を構成する〕およびアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて、不活性溶媒中で反応させて、式(Va)
【0123】
【化37】

【0124】
の化合物を得る工程;
a')式(Va)の化合物を加水分解して、式(V)
【0125】
【化38】

【0126】
の化合物を得る工程;および
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して式(VI)
【0127】
【化39】

【0128】
の化合物を得る工程。
【0129】
工程a)、a')、およびb)に対する適切な条件は前述したとおりである。
【0130】
本発明のさらに他の態様によれば、式(V)
【0131】
【化40】

【0132】
の化合物の量産用の製造方法が提供され、当該製造方法は、式(II)
【0133】
【化41】

【0134】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;
各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルから独立的に選択され;
あるいは、2つのR基が一緒になって(1−3C)アルキレン鎖または(5−6C)スピロシクロアルキル基(1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい)を構成する〕の化合物と
式(III)
【0135】
【化42】

【0136】
の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒
【0137】
【化43】

【0138】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、S立体配置の、置換されていてもよいビアリール誘導体を構成する〕およびアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて、不活性溶媒中で反応させる工程を含む。
【0139】
本発明のさらに他の態様によれば、式(V)
【0140】
【化44】

【0141】
の化合物の量産用の製造方法が提供され、当該製造方法は、式(II)
【0142】
【化45】

【0143】
〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;
各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルから独立的に選択され;
あるいは、2つのR基が一緒になって(1−3C)アルキレン鎖または(5−6C)スピロシクロアルキル基(1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい)を構成する〕の化合物と
式(III)
【0144】
【化46】

【0145】
の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒
【0146】
【化47】

【0147】
〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、S立体配置の、置換されていてもよいビアリール誘導体を構成する〕およびアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて、不活性溶媒中で反応させて、式(Va)
【0148】
【化48】

【0149】
の化合物を得る工程;および
a')式(Va)の化合物を加水分解して式(V)の化合物を得る工程、を含む。
【0150】
この反応に対する適切な条件は、プロセスa)とa')に関して前述したとおりである。
【0151】
本発明のさらに他の態様によれば、式(VI)の化合物の製造方法が提供され、前記製造方法は、
a)式(V)の化合物を前述のように作製する工程を含み;そしてさらに、
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して、式(VI)
【0152】
【化49】

【0153】
の化合物を得る工程を含む。
【0154】
本発明のさらに他の態様によれば、式(I)の化合物または医薬用として許容しうるその塩の製造方法が提供され、前記製造方法は、
a)式(V)の化合物を作製する工程と、b)式(VI)の化合物を前述のように作製する工程を含み;そしてさらに、
c)R基を除去して、式(I)の化合物またはその塩を得る工程;
次いで、必要に応じて医薬的に許容しうる塩を作製する工程、を含む。
【0155】
【化50】

【0156】
後述の実施例に示すような特定の条件下においては、化合物(V)の化合物(VI)への還元、およびその後の、化合物(I)またはその塩への転化を、中間体化合物(VI)を単離することなく果たすことができる。このように2つの反応を1つの工程に縮めることは、生成物の品質が損なわれなければ、効率的で且つ費用対効果が大きいと考えられる。
【0157】
本発明のさらに他の態様によれば、工程b)とc)とが、式(VI)の中間体化合物を単離することなく行われることを特徴とする、式(I)の化合物またはその塩の製造方法が提供される。
【実施例】
【0158】
以下の実施例(これらの実施例に限定されない)においては、特に明記しない限り、下記に記載のとおりである:
(i) 蒸発除去は、ロータリーエバポレーターを使用して減圧にて行い、最終処理は、残留固体(乾燥剤など)を濾過により除去した後に行った。
【0159】
(ii) 操作は、室温(すなわち18〜25℃)にて不活性ガス(例えば、アルゴンや窒素)の雰囲気下で行った。
【0160】
(iii) 収率は、例示のためにのみ記載されており、必ずしも得られる最大値というわけではない。
【0161】
(iv) 最終生成物の構造は、核(通常はプロトン)磁気共鳴(NMR)によって確認し、プロトン磁気共鳴化学シフト値は、δスケールに基づいて(テトラメチルシランと比較して)測定した。ピークの多重度は次のとおりである:s,一重項;d,二重項;t,三重項;m,多重項;br,ブロード;q,四重項;quin,五重項。
【0162】
(v) 中間体は、必ずしも完全には特性決定を行わず、純度は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、融点(Mp)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外線(IR)分析、またはNMR分析によって評価した。
【0163】
(vi) クロマトグラフィーによる精製は一般に、特に明記しない限り、シリカによるフラッシュカラムクロマトグラフィーを表わしている。カラムクロマトグラフィーは一般に、ビオテージ(Biotage)(英国、ハーツ、ハートフォードのビオテージUK社)等のプレパック・シリカカートリッジ(4g〜最大で400g)を使用し、ポンプとフラクション・コレクター・システムを使用して溶離した。
【0164】
(vii) 高分解能質量スペクトル(HRMS)データは、フライト・マス・スペクトロメーターのマイクロマスLCT時間を使用して得た。
【0165】
(viii) 融点のデータは一般に、パーキンエルマー社製パイリス(Pyris)1を使用する示差走査熱量計を使用して測定した。記載の値は開始温度である。
【0166】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。実施例においては、以下のような略語が使用されている:
DIBAL 水素化ジ−イソブチルアルミニウム
DCM ジクロロメタン
EtOAc 酢酸エチル
CDCl デューテロクロロホルム
DMF ジメチルホルムアミド
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
e.e. エナンチオマー過剰率
実施例1:(3R,5S)−トランス−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸カルシウム塩
【0167】
【化51】

【0168】
窒素雰囲気下にて、7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−6−ヘプテン酸(S)−トランス−エチルを5mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、−70℃に冷却した。この溶液に、ジエチルメトキシボラン(テトラヒドロフラン中1M,430μl,0.43ミリモル)を、シリンジにより25分で滴下した。得られた淡黄色溶液を−78℃で30分攪拌し、次いでホウ水素化ナトリウム(16.3mg,0.43ミリモル)を加えた。本混合物を−78℃で2時間攪拌し、反応混合物を酢酸(86mg,1.44ミリモル)でクエンチし、室温に自然加温した。これに1MのNaOH水溶液を2ml加え、得られた溶液を90分攪拌した。次いでこの溶液を5mlの水と5mlのトルエンで希釈し、30分攪拌し、分離し、そして水相を減圧にて濃縮して淡色の油状物を得た。この油状物を5mlの水中に溶解し、40℃に加熱し、次いで塩化カルシウム水溶液(0.93M,300μl,0.28ミリモル)をシリングにより滴下した。得られたスラリーを60分で室温に冷却してから、濾過によって固体を採集し、これを1mlの水で洗浄した。採集した固体を減圧にて一晩乾燥して、(3R,5S)−トランス−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミニル)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸カルシウム塩(122.6g,収率62%,e.e.99.3%)を白色の結晶質固体として得た。物理的データは、現行の標準値および公開されている記載値と全く一致した。
【0169】
1a):7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸(3R,5S)−トランス−エチル
【0170】
【化52】

【0171】
窒素雰囲気下にて、7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−6−ヘプテン酸(S)−トランス−エチルを10mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、−76℃に冷却した。この溶液に、ジエチルメトキシボラン(テトラヒドロフラン中1M,1.15ml,1.15ミリモル)を、シリンジにより30分で滴下した。得られた淡黄色溶液を−75℃で30分攪拌し、次いでホウ水素化ナトリウム(43.5mg,1.15ミリモル)を加えた。本混合物を−65℃で2時間攪拌し、反応混合物を酢酸(224μl,3.75ミリモル)でクエンチし、室温に自然加温した。10mmlのメチルtert−ブチルエーテルと20mlの水で希釈し、10分間激しく攪拌してから分離した。上層の有機相を20mlの水、20mlのNaHCO飽和水溶液、次いで20mlの水でで洗浄し、そして減圧にて濃縮して淡色の油状物を得、これをビオテージクロマトグラフィー(50:50 EtOAc/ヘキサン)によって精製して表記生成物(182mg,収率36%)を白色固体として得た。
【0172】
【化53】

【0173】
1b):7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスンホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−6−ヘプテン酸(S)−トランス−エチル
【0174】
【化54】

【0175】
3−エトキシ−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスンホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−2,6−ヘプタジエン酸(S)−トランス−エチル(130mg,0.101ミリモル)をテトラヒドロフラン(5ml)中に溶解し、0℃に冷却した。塩酸水溶液(2.0M,0.75ml,1.50ミリモル)をシリンジにより加え、得られた溶液を室温に加温し、90分攪拌し、次いでEtOAc(20ml)と水(10ml)で希釈した。層を分離し、有機層を水(10ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、そして減圧にて濃縮して、表記化合物(113.5mg,収率92%)を淡色の油状物として得た(エナンチオマー過剰率97.46%)。
【0176】
【化55】

【0177】
1c):3−エトキシ−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−2,6−ヘプタジエン酸(S)−トランス−エチル
【0178】
【化56】

【0179】
窒素雰囲気下にて、トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソ−1−プロペニル)−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド(200mg,0.530ミリモル)、(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン(48mg,0.11ミリモル)、および塩化リチウム(9.0mg,0.21ミリモル)を室温にてテトラヒドロフラン(5ml)中に溶解した。得られた赤色溶液を5分攪拌してから0℃に冷却した。この溶液に、1,3−ジエトキシ−1−トリメチルシロキシ−1,3−ブタジエン(244mg,1.06ミリモル)を10分で滴下した。得られた混合物を室温で42時間攪拌し、25%ギ酸水溶液(0.50ml)により0℃でクエンチし、室温に自然加温した。本混合物を2時間攪拌してから、メチルtert−ブチルエーテル(20ml)と水(10ml)で希釈した。層を分離し、有機層を水(10ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧にて濃縮して淡黄色の油状物を得た。これをフラッシュクロマトグラフィー(2:1 ヘキサン/EtOAc)で精製して、表記化合物(145.2mg,収率54%)を淡黄色油状物として得た。
【0180】
【化57】

【0181】
1d):(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン
【0182】
【化58】

【0183】
窒素雰囲気下にて、(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフトール)(500mg,1.74ミリモル)、チタンテトライソプロポキシド(500μl,1.69ミリモル)、および粉末状の4Åモレキュラーシーブ(500mg)をジクロロメタン(25ml)中に懸濁し、室温にて1時間攪拌した。固体を濾別し、減圧にて濾液を濃縮して、(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン(980mg,収率126%)を暗赤色の粉末として得た。この粉末を、さらに精製することなくその後の反応に使用した。
【0184】
1e):4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール
【0185】
【化59】

【0186】
この実験に使用する反応器を、使用前に、トルエン蒸留を行うことによって十分に乾燥した。フレッシュなトルエン(100ml)とカリウムtert−ブトキシド(7.50g,64.8ミリモル)を反応器に装入し、攪拌してスラリーを形成させた。本混合物を−9℃に冷却し、3−メチル−2−ブタノン(3.63g,41.7ミリモル)を加えた。本混合物を−5℃に加温し、30分攪拌した。4−フルオロ安息香酸エチル(6.25g,36.8ミリモル)をトルエン(4ml)中に溶解し、この溶液をシリンジにより加え、次いで少量のトルエン(1ml)でライン洗浄した。本混合物を0℃で10分攪拌し、10℃に加温し、この温度で一晩攪拌した。流動性のスラリーを25℃に加温し、酢酸(4.4ml)を加え、次いで水(37.5ml)を加えた。本混合物を5分間にわたって十分に攪拌してから静置した。下側の相を取り出して廃棄した。上側の相に5%重炭酸ナトリウム水溶液(16ml)を加え、5分攪拌してから静置した。下側の水性相を取り出し、上側の有機相を水(5ml)で2回洗浄した。
【0187】
残留トルエン溶液を共沸蒸留によって乾燥し(ディーン−シュタルク・トラップを所定の位置に取り付けて還流させる)、本溶液を60℃に冷却した。尿素(5.1g,84.9ミリモル)とイソプロパノール(20ml)を装入し、塩酸(イソプロパノール中5〜6M,32.3ml,183ミリモル)を加えながら激しく攪拌した。本溶液を80℃に加熱し、48.5時間攪拌してから、さらにイソプロパノール中塩酸(2ml,11ミリモル)を加えた。80℃にて合計112時間後、混合物を60℃に冷却し、水(50ml)を加えた。15分攪拌した後、混合物を静置し、下側の水性相を取り出して保持した。この水性相を攪拌し、炭酸水素ナトリウム(6.9g)を、pHが7になるまで少量ずつ加えた。生成物が溶液から結晶化し、そのまま20℃に冷却した。固体を濾別し、水(20ml)で2回洗浄し、真空オーブン中にて50℃で一晩乾燥した。4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール(4.92g)を白色粉末として得た(全体としての収率56%)。
【0188】
【化60】

【0189】
1f):5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール
【0190】
【化61】

【0191】
反応器に4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール(8.00g,34.1ミリモル)を、次いでDMF(100ml)を装入した。得られた懸濁液を攪拌し、−3℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(6.25g,34.8ミリモル)を加えた。反応混合物を20℃に加温し、一晩攪拌した。反応混合物に水(100ml)を加え、結晶質混合物を1時間攪拌してから濾別した。単離した固体を水(25ml)で2回洗浄し、真空オーブン中にて50℃で乾燥した。5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール(10.45g,収率97%)が白色固体として得られた。
【0192】
【化62】

【0193】
1g):5−ブロモ−2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン
【0194】
【化63】

【0195】
5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジノール(5.027g,15.28ミリモル)に塩化ホスホリル(5.00ml,53.8ミリモル)を加え、反応混合物を90℃の内部温度に加熱した。この温度で混合物を150分攪拌してから、25℃に自然冷却した。氷(60g)と水(40ml)と重炭酸ナトリウム(10g)の混合物に、攪拌しながら反応混合物を滴下することによって、反応混合物をクエンチした、滴下終了後、重炭酸ナトリウム(13g)を加えて、中性になっていることを確認した。次いで混合物を酢酸エチル(4×70ml)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。珪藻土のパッドを介して溶液を濾過し、減圧にて濃縮して表記化合物(4.98g,収率99%)を得た。
【0196】
【化64】

【0197】
1h):N−(5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド
【0198】
【化65】

【0199】
水素化ナトリウム(1.20g,30.0ミリモル,鉱油中60%懸濁液)をヘキサン(2×10ml)で洗浄し、DMF(50ml)加え、次いで5−ブロモ−2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン(4.944g,15.0ミリモル)を加えた。得られた懸濁液を−7℃に冷却し、N−メチルメタンスルホンアミド(2.585g,22.5ミリモル)を加え、DMF(10ml)で洗浄した。混合物を17.5時間攪拌してから、酢酸エチル(80ml)、トルエン(100ml)、および水(120ml)で希釈した。有機相を分離し、水性相を、酢酸エチル(20ml)とトルエン(30ml)との混合物で抽出した。有機相を合わせ、水(2×40ml)で洗浄し、次いでブライン(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。本溶液を減圧にて濃縮して(2×20mlのヘキサン共沸混合物)表記化合物を得た(5.50g,収率91%)。
【0200】
【化66】

【0201】
1i):トランス−N−(5−(2−シアノビニル)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド
【0202】
【化67】

【0203】
500mlの丸底フラスコに、N−(5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド(20.0g,49.72ミリモル)、臭化テトラ−N−ブチルアンモニウム(3.24g,10ミリモル)、およびビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(1.48g,2.89ミリモル)を装入した。フラスコを窒素で5分フラッシングしてから、トルエン(200ml)、ジシクロヘキシルメチルアミン(31.6ml,147ミリモル)、およびアクリロニトリル(3.60ml,54.67ミリモル)をシリンジによって加え、反応混合物を攪拌した。得られた琥珀色溶液を油浴中にて50℃で7時間加熱し、このときベージュ色の沈殿物が生成し始めた。反応混合物を室温に自然冷却し、イソヘキサン(200ml)で希釈し、次いでさらに−8℃に冷却した。沈殿物を濾過によって採集し、イソヘキサン(4×100ml)で洗浄して、約85%のトランス異性体からなる粗生成物(31g,湿潤)を得た。この粗生成物にメタノール(130ml)を加え、得られた懸濁液を室温で30分攪拌し、次いで−8℃に冷却した。白色の結晶質固体を濾過によって採集し、真空オーブン中にて一晩乾燥して、表記化合物(13.1g,収率70%)を白色結晶質固体として得た。
【0204】
【化68】

【0205】
1j):トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソ−1−プロペニル)−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド
【0206】
【化69】

【0207】
トランス−N−(5−(2−シアノビニル)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド(12.83g,34.27ミリモル)をトルエン(750ml)中に溶解し、−9℃に冷却した。この溶液に、内部温度を−6℃未満に保持しつつ、DIBAL(トルエン中20%溶液,34ml,41.1ミリモル)をシリンジにより45分で加えた。添加が終了した後、反応混合物を一晩で徐々に室温に加温し、メタノール(3ml)で、次いで1MのHCl(41.1ml)でクエンチした。得られた懸濁液を濾過し、濾液の下側水性層を分離した。濾液の有機層を1MのHCl(100ml)で処理し、得られた懸濁液を濾過した。層を分離し、有機層を、ブライン(125ml)、NaHCO飽和水溶液(125ml)、および水(125ml)で洗浄し、MgSOとノビット(Novit)SX1Gカーボンで処理し、濾過し、減圧にて濃縮して12gの黄色油状物を得た。これをクロマトグラフィー(ビオテージカートリッジ,100%DCM)によって精製して、表記化合物(9.7g,収率76%)を淡黄色の非晶質固体として得た。
【0208】
【化70】

【0209】
1k):トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−1−プロペニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド
【0210】
【化71】

【0211】
塩化(1,1'−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)(162mg,0.249ミリモル)と炭酸カルシウム(1.03g,74.6ミリモル)をアセトニトリル(40ml)と水(40ml)の中に溶解して得た室温の溶液に、トランス−4,4,5,5−テトラメチル−2−(3−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)−1−プロペニル)−1,3,2−ジオキサボロラン〔"Synthesis,2004,p.1814−1820"を参照;11.9g(70%濃度),31.1ミリモル〕を水リンス(water rinse)(12.5ml)を含むアセトニトリル(35ml)中に溶解して得た溶液を加えた。混合物を5分攪拌し、N−(5−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド(10.0g,24.9ミリモル)を白色固体として加え、次いで水(12.5ml)を加えた。反応混合物を5時間加熱還流(内部温度77℃)してから、室温に自然冷却した。MTBE(150ml)と水(150ml)で希釈し、分離し、有機相を水(50ml)で2回洗浄し、次いで減圧にて濃縮して16gの褐色油状物を得た。この油状物を室温にて150mlのアセトニトリル中に溶解し、10Mの塩酸水溶液(3.0ml,30ミリモル9を加えた。得られた混合物を室温で45分攪拌してから、重炭酸ナトリウム(2.52g,30ミリモル)でクエンチした。混合物をトルエン(150ml)と水(150ml)で希釈し、分離し、有機層を水(40ml)で2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧にて濃縮し、クロマトグラフィー(1:1 イソヘキサン/EtOAc,シリカゲル450g)によって精製して、表記化合物(8.29g,収率72%)を淡黄色油状物として得た。
【0212】
【化72】

【0213】
1m):トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソ−1−プロペニル)−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド
【0214】
【化73】

【0215】
トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−1−プロペニル)−6−イソプロピル−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド〔1.81g(95%濃度),4.53ミリモル〕を25mlのトルエン中に溶解して得た室温の溶液に二酸化マンガン〔10g(85%濃度),97.77ミリモル〕を加えた。得られた懸濁液を18時間攪拌し、セライトのパッドを介して濾過してトルエンですすいだ。濾液から溶媒を減圧にて蒸発除去して、表記化合物(1.33g,収率75%)を黄色油状物として得た(速やかに結晶質固体になった)。
【0216】
【化74】

【0217】
実施例2:単一工程のアルドール反応と加水分解による7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−6−ヘプテン酸(S)−トランス−エチル
【0218】
【化75】

【0219】
窒素雰囲気下にて、トランス−N−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソ−1−プロペニル)−2−ピリミジニル)−N−メチルメタンスルホンアミド(200mg,0.530ミリモル)、(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン(48mg,0.11ミリモル)、および塩化リチウム(9.0mg,0.21ミリモル)を室温にてテトラヒドロフラン(5ml)中に溶解した。得られた赤色溶液を5分攪拌してから、0℃に冷却した。この溶液に、1,3−ジエトキシ−1−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン(244mg,1.06ミリモル)を10分で滴下した。得られた混合物を室温で42時間攪拌してから、2.0Mの塩酸水溶液(0.75ml,1.50ミリモル)を使用して0℃にてクエンチした。得られた溶液を室温に加温し、120分攪拌し、MTBE(20ml)と水(10ml)で希釈した。層を分離し、有機層を水(10ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧にて濃縮して粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ上ビオテージ,2:1 ヘキサン/EtOAc)により7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−6−ヘプテン酸(S)−トランス−エチル(107.9mg,収率40%)を98.2%のエナンチオマー過剰率にて淡色油状物として得た。
【0220】
【化76】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)
【化1】

の化合物の大規模な製造の方法であって、
a)式(II)
【化2】

〔式中、各Rは、(1−6C)アルキルとフェニルから独立的に選択され;各Rは、(1−6C)アルキルとアリール(1−6C)アルキルとから独立的に選択され;あるいは2つのR基が一緒になって、1個または2個の(1−4C)アルキル基で置換されていてもよい(1−3C)アルキレン鎖もしくは(5−6C)スピロシクロアルキル基を構成する〕の化合物と式(III)
【化3】

の化合物とを、式(IV)
【化4】

〔式中、各Rは(1−6C)アルキルから独立的に選択され;A−Bは、置換されていてもよいS立体配置のビアリール誘導体を構成する〕のチタン(IV)触媒とアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて不活性溶媒中で反応させる工程を含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(V)の化合物の製造方法であって、式(II)の化合物と式(III)の化合物とを、式(IV)のチタン(IV)触媒とアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下にて不活性溶媒中で反応させて式(Va)
【化5】

の化合物を得て、
a')式(Va)の化合物を加水分解して式(V)の化合物を得る工程を含む、前記方法。
【請求項3】
式(VI)の化合物の製造方法であって、
a)請求項1または請求項2に記載の式(V)の化合物を作製する工程を含み;さらに、
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して式(VI)
【化6】

の化合物を得る工程を含む、前記方法。
【請求項4】
式(I)の化合物または医薬的に許容しうるその塩を作製するための製造方法であって、
a)式(V)の化合物を作製する工程、および、b)請求項3による式(VI)の化合物を作製する工程を含み;そしてさらに、
c)R基を除去して式(I)
【化7】

の化合物またはその塩を得て、次いで必要に応じて医薬的に許容しうる塩を作製する工程を含む、前記方法。
【請求項5】
工程b)とc)が、式(VI)の中間体化合物を単離せずに行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属ハロゲン化物が塩化リチウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
各Rがメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
各Rが(1−6C)アルキルから独立的に選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
各Rがエチルである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
式(I)の化合物がそのカルシウム塩として単離される、請求項4〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
式(IV)の化合物が(S)−(−)−1,1'−ビ−(2−ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン
【化8】

である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
化合物 3−エトキシ−7−(4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルメチルスルホンアミド)−5−ピリミジニル)−5−ヒドロキシ−2,6−ヘプタジエン酸(S)−トランス−エチル。
【化9】


【公表番号】特表2010−511029(P2010−511029A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538786(P2009−538786)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004590
【国際公開番号】WO2008/065410
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】