説明

ロスバスタチン及び中間体の製造方法

ロスバスタチンの製造に有用な式(V)の化合物を立体選択的アルドール反応により製造する方法について記載する。これらを製造するための新規中間体及び方法についても記載する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化学的製造方法、特にロスバスタチン(rosuvastatin)及びその医薬的に許容可能な塩、特にロスバスタチンカルシウムの新規製造方法、並びに前記方法で使用する新規中間体及びその新規中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチン及びその医薬的に許容可能な塩は、HMG CoAレダクターゼ阻害剤であり、中でも高コレステロール血症及び混合脂質異常症(mixed dyslipidemia)の処置に有用である。ロスバスタチンカルシウム(式(A))はCRESTOR(商標)のもと市販されている。欧州特許出願公開第(EPA)0521471号は、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エノン酸(ロスバスタチン)及びそのナトリウム塩とカルシウム塩(ロスバスタチンカルシウム、以下に記載)並びにその製造方法について開示する。
【0003】
【化1】

【0004】
ロスバスタチン及びその医薬的に許容可能な塩は、前記明細書ではメチル(3R)-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-5-オキソ-6-トリフェニルホスホラニリデンヘキサノエートと4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メタンスルホニルアミノ)-5-ピリミジンカルボキシアルデヒドとの縮合、続くその3-ヒドロキシ基の脱保護、5-オキソ基の不斉還元及び加水分解によって得られる。
【0005】
ロスバスタチン及びその医薬的に許容可能な塩の他の製造方法は、PCT国際特許出願国際公開第WO00/49014号及び同第WO04/52867号に記載されている。この化合物及びその医薬的に許容可能な塩は、PCT国際特許出願国際公開第WO00/49104号では、ジフェニル[4-(4-フルオロフェニ)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イルメチル]ホスフィンオキシドとtert-ブチル2-[(4R,6S)-6-ホルミル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4-イル}アセテートとの塩基の存在下での反応、続いて保護基の除去によって得られる。PCT国際特許出願国際公開第WO04/52867号は、1-シアノ-(2S)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ-4-オキソ-5-トリフェニルホスホラニリデンペンタンと4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メタンスルホニルアミノ)-5-ピリジンカルボキシアルデヒドとの縮合、続く脱保護、その4-オキソ基の不斉還元と加水分解とを開示する。
【0006】
しかしながら、ロスバスタチン及びその医薬的に許容可能な塩の別の製造法を発見することがいまだに必要とされている。そのような方法としては、たとえば既に公知の方法と比較したときに、使用に便利で、ラージスケールでの製造により適しており、より高い収率で生成物が得られ、製造工程数が少なく、より単離し易い中間体を使用し、込み入った精製法を使用せずに済み、より安価な試薬を使用し、及び/またはより環境に優しいことが挙げられる。
【0007】
PCT国際特許出願国際公開第WO03/064382号は、キラルチタン触媒を使用する不斉アルドール反応をベースとして、なかでもピタバスタチン(pitavastatin)及びロスバスタチンなどのスタチン化合物の製造方法について記載する。
【発明の開示】
【0008】
本出願人は、PCT国際特許出願国際公開第WO03/064382号の方法変形例を使用してロスバスタチン及びその医薬的に許容可能な塩の特に有用な方法を開示し、本方法が本生成物の収率及び/または鏡像体過剰率に関して特に有益であることを知見した。
【0009】
本発明の第一の側面に従って、式(I):
【0010】
【化2】

【0011】
の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の製造方法であって、
a)式(II):
【0012】
【化3】

【0013】
{式中、R1はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、Rは(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキルまたはアリール(1-6C)アルキルから選択される}の化合物と、式(III):
【0014】
【化4】

【0015】
の化合物とを、式(IV):
【0016】
【化5】

【0017】
{式中、R2はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、前記ビナフチル部分はS-配置である}のチタン(IV)触媒、アルカリ金属のハロゲン化物の塩とアミンの存在下、不活性溶媒中での反応により、式(V):
【0018】
【化6】

【0019】
の化合物を与える;
b)式(V)の化合物のケト-基を還元して、式(VI):
【0020】
【化7】

【0021】
の化合物を与える;及び
c)R基を除去して、式(I)の化合物またはその塩を与える;
場合により続いて医薬的に許容可能な塩を形成する、各工程を含む方法を提供する。
【0022】
この反応の好適な条件を以下に記載する。
【0023】
工程a)
前記アルカリ金属のハロゲン化物とアミンとを使用するのは、式(III)の化合物を使用する本反応の優れた収率及び鏡像体過剰率を得るのに不可欠であると考えられる。
【0024】
反応混合物中に始めに存在する式(III)のアルデヒドと式(II)の化合物とのモル比は、好都合には1:1〜1:6、たとえば1:1〜1:4であり、好都合には1:1.5〜1:3、たとえば1:2である。
【0025】
反応混合物中に始めに存在する式(IV)のチタン(IV)触媒と式(III)のアルデヒドとのモル比は、好都合には0.01:1〜0.15:1であり、たとえば0.01:1〜0.05:1である。
【0026】
反応混合物中に始めに存在するアルカリ金属のハロゲン化物と式(III)のアルデヒドとのモル比は、好都合には0.03:1〜1:1であり、特に0.1:1〜0.4:1である。使用すべきアルカリ金属のハロゲン化物の正確な量は、どのアミンを使用するか及び/または使用するチタン触媒の量、及び/または反応溶液の濃度に依存することは当業者には理解されよう。上記に与えられる量は、アルカリ金属のハロゲン化物が塩化リチウムであるときに特に適している。
【0027】
反応混合物中に始めに存在するアミンと式(III)のアルデヒドのモル比は、好都合には0.015:1〜2:1であり、特に0.5:1〜1.5:1であり、好ましくは約1:1である。使用すべきアミンの正確な量は、どのアミンを使用するか及び/または使用するチタン触媒の量、及び/または使用する金属塩の量及び/または反応溶液の濃度に依存することは当業者には理解されよう。上記に与えられる量は、アミンがTMEDAであるときに特に適している。
【0028】
この反応は、極性非プロトン性溶媒、たとえばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルまたはジメトキシエタン、好ましくはテトラヒドロフランで実施することができる。溶媒を組み合わせても使用することができる。
【0029】
この反応は約0℃〜約70℃の温度、たとえば約10℃〜約60℃、好ましくは約15℃〜約30℃で実施することができる。
【0030】
好ましいアルカリ金属のハロゲン化物は塩化リチウムである。
【0031】
好ましいアミンは、N,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である。別のアミンとしては、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、モルホリン及びN,N-ジメチルピペラジンが挙げられる。一側面では、好ましいアミンは二座配位子のもの(bidentate)である。
【0032】
(1-6C)アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びtert-ブチルが挙げられる。(3-6C)シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。アリール(1-6C)アルキルの例としてはベンジルが挙げられる。
【0033】
R1基はそれぞれメチルであるのが好適である。好適には、Rは(1-6C)アルキルから選択され、特にRはエチルである。
【0034】
式(II)の化合物は、PCT国際特許出願国際公開第WO03/064382号及び同第WO03/42180号、並びにJ.Am.Chem.Soc,1993年、830頁に記載の手順に従って製造することができる。
【0035】
式(IV)の化合物は、PCT国際特許出願国際公開第WO03/064382号及び同第WO03/42180号に記載の手順に従って製造することができる。
【0036】
式(III)の化合物は、付記実施例に説明したように、及び以下のスキーム1に示すように以下の手順に従って製造することができる。
【0037】
【化8】

【0038】
本発明は、任意の好適な方法により製造した式(III)の化合物の使用を包含し、上記スキームに示されたものに限定されないことは理解されよう。しかしながら、スキーム1に示された経路は新規であると考えられ、本発明のさらに独立した側面として提供される。
【0039】
本発明のさらなる側面において、式(III)の化合物の製造方法であって、
【0040】
【化9】

【0041】
i)式(X)の化合物から式(XI)の化合物を形成する;及び
ii)式(X)の化合物を式(III)の化合物に転換する、
【0042】
【化10】

【0043】
各工程を含む前記方法を提供する。
【0044】
好適には、式(XI)の化合物は、式(X)の化合物とアクリロニトリルとを遷移金属触媒、たとえばパラジウム触媒、たとえばPd[P(tBu)3]2[たとえばビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)2)またはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)及びtBu3PH-BF4からin-situで製造または予め製造]の存在下で反応させることによって製造することができる。相転移触媒、たとえばテトラブチルアンモニウムブロミドを使用することができる。
【0045】
好適には、式(XI)の化合物の式(III)の化合物への転換は、DIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド)を使用する還元によって実施することができる。さらに好適な還元剤としては、以下のもの及びその複合体(complexe)が挙げられる:ラネーニッケル(H2供給源と共に)、塩化スズ(II)、リチウムトリエチルボロヒドリド、カリウム9-sec-アミル-9-ボラタビシクロ[3.3.1]ノナン、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、リチウムトリエトキシアルミニウムヒドリド、ナトリウムジエチルアルミニウムヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド、リチウムトリス(ジアルキルアミノ)アルミニウムヒドリド、及び好適なルイス酸の存在下でのトリアルキルシラン。
【0046】
より好適には、式(XI)の化合物の式(III)の化合物への転換は、<0℃でたとえばトルエン中、DIBALを使用する還元によって実施することができる。
【0047】
これらの反応に関してより好適な条件は、付記実施例中で知見され得るか、または当業者に公知である。
【0048】
式(III)の化合物、即ちtrans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-5-(3-オキソプロプ-1-エニル)ピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミドは、新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0049】
式(VII)の化合物、即ち4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オールは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0050】
式(VIII)の化合物、即ち5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オールは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0051】
式(IX)の化合物、即ち5-ブロモ-2-クロロ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジンは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0052】
式(X)の化合物、即ちN-(5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミドは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0053】
式(XI)の化合物、即ちtrans-N-(5-(2-シアノビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミドは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面として提供される。
【0054】
式(III)の化合物の別の製造方法は、式(X)の化合物と好適なビニルボロン種(boron species)との反応による。
【0055】
従って、本発明のさらなる側面に従って、(上記定義の)式(III)の化合物の製造方法であって、
A)(上記定義の)式(X)の化合物と式(XII):
【0056】
【化11】

【0057】
{式中、BYxはB(OH)2、B(OH)3、B(OH)2F、BX3(式中、X=ハロゲンである)、B(OR5)2、B(OR5)2F、B(OR5MOH)、B(OR6)(OR7)、B(OR6)(OR7)(OH)、B(OR6)(OR7)F、BR52、BR52OH及びBR5Fから選択される;
R5は(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキル及びアリール(1-6C)アルキルから選択される;
R6とR7は一緒になって、これらが結合している二つの酸素の間に1、2、3若しくは4個のメチルまたはフェニル基により場合により置換される、炭素原子2または3個のアルキレン橋架を形成するか;あるいは
R6とR7は一緒になってフェニル環を形成する;及び
R3は保護基である}のボロン酸ビニルとの反応;
続く脱保護により式(XIII):
【0058】
【化12】

【0059】
を提供すること、及び
B)式(XIII)の化合物を酸化して式(III)の化合物を提供する、各工程を含む前記方法を提供する。
【0060】
R3の好適な値としては、公知のヒドロキシ保護基が挙げられ、たとえばSi(R4)3(式中、R4はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択される)、テトラヒドロピラニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、メトキシメチル(MOM)及びベンジルオキシメチル(BOM)が挙げられる。好ましくはOR3はエステル基ではない。
【0061】
一態様において、R3はSi(R4)3(たとえばトリメチルシリル、またはtertブチルジメチルシリル)である。別の態様では、R3はテトラヒドロピラニルである。
【0062】
好適には、BYxはB(OR6)(OR7)である。
【0063】
B(OR6)(OR7)の例としては、以下のものが挙げられる。
【0064】
【化13】

【0065】
一態様において、B(OR6)(OR7)は以下のものである。
【0066】
【化14】

【0067】
好適には、(XII)と(X)との反応は、(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリドなどのパラジウム触媒の存在下で実施することができる。この反応は、炭酸カリウムなどの塩基の存在下、アセトニトリルと水中で実施することができる。あるいは、この反応は、フッ化物の存在下で実施することができる。たとえば、J.Org.Chem.,1994,59,6095-6097頁を参照されたい。
【0068】
R3の値の幾つかの値に関して(たとえばR3がSi(R4)3であるとき)、シリル基は工程A)の間にin-situで除去することができると理解されよう。R3がテトラヒドロピラニルであるとき、中間体アリルエーテルを保護してアルコール(XIII)を提供するのに別の工程が必要になるかもしれない。これは、たとえば塩酸水溶液を使用する加水分解により実施することができる。この脱保護工程は、付記実施例で説明されるように、中間体アリルエーテルを単離せずに実施することができる。R3がp-メトキシベンジル基であるとき、同時にヒドロキシ基を酸化する酸化的条件下でこれを除去して、式(III)のアルデヒドを提供することができる。
【0069】
好適には、(XIII)を酸化して(III)を提供する工程(工程B)は、たとえばトルエン中、二酸化マンガンを使用して実施することができる。当業界で公知の他の酸化条件、塩素とジメチルスルフィドを使用して実施できるような、たとえばSwern酸化の変形も使用することができる。
【0070】
これらの反応のさらに好適な条件は、付記実施例で知見することができる。
【0071】
式(XIII)の化合物、即ちtrans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(3-ヒドロキシプロプ-1-エニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミドは新規であると考えられ、本発明のさらなる側面を形成する。
【0072】
工程b)
式(V)の化合物のケト基の還元は、ジ(低級アルキル)メトキシボラン、たとえばジエチルメトキシボランまたはジブチルメトキシボランの存在下で実施することができる。好適にはジエチルメトキシボランを使用する。この反応は通常、極性溶媒、たとえばテトラヒドロフランまたはアルコール、たとえばメタノール若しくはエタノール、あるいはそのような溶媒の混合物、たとえばテトラヒドロフランとメタノールとの混合物中で実施する。
【0073】
この還元剤は、好適には水素化物反応剤、たとえばホウ化水素ナトリウムまたはホウ化水素リチウム、特にホウ化水素ナトリウムである。
【0074】
この反応は、低温、たとえば−20〜約−100℃、特に約−50℃〜約−80℃で実施することができる。
【0075】
同様の不斉還元は、欧州特許第EP0521471号に記載されている。
【0076】
工程c)
式(VI)の化合物のR基は、当業界で公知の条件下で加水分解により除去して、式(I)の化合物、またはその塩を形成することができる。そのような塩は、医薬的に許容可能な塩であるか、または医薬的に許容可能な塩に転換することができる。たとえば、Rは、水酸化ナトリウム水溶液を使用する処理によって加水分解して、(I)のナトリウム塩を形成することができる。
【0077】
好適な医薬的に許容可能な塩としては、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム若しくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム若しくはマグネシウム塩、アンモニウム塩または、生理学的に許容可能なカチオンを提供する有機塩基との塩、たとえばメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン及びトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンとの塩が挙げられる。
【0078】
式(I)の化合物は、上記のごとくそのカルシウム塩として市販されている。このカルシウム塩は、R基を除去するために反応生成物として直接形成することができるか(たとえば、水酸化カルシウム水溶液で式(VI)の化合物を処理することによる。米国特許出願第US2003/0114685号参照)または好適なカルシウム供給源の水溶液で、式(I)の化合物の別の塩、たとえばナトリウム塩を処理することにより形成することができる。好適なカルシウム供給源としては、塩化カルシウム及び酸化カルシウムが挙げられる。これをスキーム2に示す。
【0079】
【化15】

【0080】
ナトリウム塩のカルシウム塩への変換の好適な条件は、欧州特許第EP0521471号に記載されている。得られたカルシウム塩は、所望により当業界で公知の方法(たとえばPCT国際特許出願国際公開第WO00/42024号及び同第WO2005/023779号参照)により種々の粒径、または種々の物理的形状(たとえばアモルファス対結晶質)で得るために再処理することができる。
【0081】
本発明のさらなる側面では、式(VI):
【0082】
【化16】

【0083】
の化合物の製造方法であって、
a)式(II):
【0084】
【化17】

【0085】
{式中、R1はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、Rは(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキルまたはアリール(1-6C)アルキルから選択される}の化合物と、式(III):
【0086】
【化18】

【0087】
の化合物を、式(IV):
【0088】
【化19】

【0089】
{式中、R2は(1-6C)アルキルであり、前記ビナフチル部分はS-配置である}のチタン(IV)触媒、アルカリ金属のハロゲン化物とアミンの存在下、不活性溶媒中で反応させて、式(V):
【0090】
【化20】

【0091】
の化合物を得る、及び
b)式(V)の化合物のケト基を還元して、式(VI)の化合物を得る、各工程を含む前記方法を提供する。
【0092】
工程a)とb)の好適な条件は、上記の通りである。
【0093】
本発明のさらなる側面において、式(V):
【0094】
【化21】

【0095】
の化合物の製造方法であって、式(II):
【0096】
【化22】

【0097】
{式中、R1はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、Rは(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキルまたはアリール(1-6C)アルキルから選択される}の化合物と、式(III):
【0098】
【化23】

【0099】
の化合物とを、式(IV):
【0100】
【化24】

【0101】
{式中、R2は(1-6C)アルキルであり、前記ビナフチル部分はS-配置である}のチタン(IV)触媒、アルカリ金属のハロゲン化物及びアミンの存在下、不活性溶媒中での反応を含む、前記方法を提供する。
【0102】
この反応の好適な条件は、方法a)に関して上記した通りである。
【0103】
本発明のさらなる側面において、式(VI)の化合物の製造方法であって、
a)上記のように式(V)の化合物を形成することを含み、さらに
b)式(V)の化合物中のケト基を還元して式(VI):
【0104】
【化25】

【0105】
の化合物を提供する、各工程を含む前記方法を提供する。
【0106】
本発明のさらなる側面に従って、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の製造方法であって、
a)式(V)の化合物を形成する、及び
b)上記のように式(VI)の化合物を形成することを含み、さらに
c)R基を還元して式(I)の化合物またはその塩を提供する、
場合により続いて医薬的に許容可能な塩を形成する、各工程を含む前記方法を提供する。
【0107】
【化26】

【0108】
付記実施例で説明したような特定の条件下では、式(V)の化合物を式(VI)の化合物への還元を実施し、続いて中間体化合物(VI)を単離することなく、式(I)の化合物またはその塩に転換することが可能である。このように二つの反応を一工程に組み込むことは、効率的且つ費用効果的であり、生成物の品質を低下させないと考えられる。
【0109】
本発明のさらなる側面に従って、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、工程b)とc)を、式(VI)の中間体化合物を単離することなく実施する、前記方法を提供する。
【実施例】
【0110】
以下の非限定的な実施例において、他に記載しない限り、以下の通りである。
(i)蒸発は真空下、ロータリーエバポレーターを使用して実施し、仕上げ手順は、濾過によって乾燥剤などの残存固体を除去した後に実施した;
(ii)操作は室温、即ち18〜25℃で、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス雰囲気下で実施した;
(iii)収率は説明のためだけに与えるものであり、必ずしも達成可能な最大値を示すものではない;
(iv)式(I)の最終生成物の構造は、核(通常プロトン)磁気共鳴(NMR)により確認した;核磁気共鳴のケミカルシフトは、(テトラメチルシランに対する)デルタスケールで測定し、ピーク多重度は以下のようにして示す:s,一重線;d,二重線;t,三重線;m,多重線;br,ブロード;q,四重線;quin,五重線;
(v)中間体は必ずしも完全にキャラクタリゼーションせず、純度は薄層クロマトグラフィー(TLC)、融点(Mp)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外線(IR)またはNMR分析によって評価した;
(vi)クロマトグラフィーによる精製は他に記載しないかぎり、通常、フラッシュカラムクロマトグラフィーをさす。カラムクロマトグラフィーは通常、ポンプと画分収集系を使用して溶離した、Biotage(Biotage UK Ltd,Hertford,Herts,UK)などの予備充填済みシリカカートリッジ(4g〜40g)を使用して実施した。
(vii)高解像度マススペクトル(HRMS)データは、Micromass LCT飛行時間型質量分析計(time of flight mass spectrometer)を使用して発生させた。
(viii)融点データは通常、Perkin Elmer Pyris 1を使用する示差走査熱量計(DSC)を使用して測定する。引用する値は、開始温度である。

本発明の以下の実施例により説明する。実施例中では、以下の略号を使用する。
DIBAL:ジイソブチルアルミニウムヒドリド;
DCM:ジクロロメタン;
EtOAc:酢酸エチル;
CDCl3:重クロロホルム;
DMF:ジメチルホルムアミド;
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル;
実施例1:(3R,5S)-trans-7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エノン酸、カルシウム塩
【0111】
【化27】

【0112】
窒素雰囲気下、(S)-trans-エチル7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エノエート(200mg,0.39mmol)とメタノール(0.67mL)を5mLテトラヒドロフランに溶解し、−70℃に冷却した。この溶液に、ジエチルメトキシボラン(テトラヒドロフラン中1M,430μL,0.43mmol)を25分かけてシリンジを介して滴下添加した。得られた薄黄色溶液を−78℃で30分間攪拌し、ホウ化水素ナトリウム(16.3mg,0.43mmol)を添加した。この混合物を−78℃で2時間攪拌し、次いで反応物を酢酸(86mg,1.44mmol)でクエンチし、放置して室温に温めた。これに1MのNaOH水溶液2mLを添加し、得られた溶液を90分間攪拌した。これを5mLの水と5mLトルエンとで希釈し、30分間攪拌し、分離し、水溶液を真空下で濃縮すると薄い油状物が得られた。この油状物を5mL水に溶解し、40℃に加熱し、次いで塩化カルシウム水溶液(0.93M,300μL,0.28mmol)をシリンジを介して滴下添加した。得られたスラリーを60分で室温に冷却し、次いで固体を濾過により集め、1mL水で洗浄した。集めた固体を真空下、一晩乾燥すると、白色結晶質固体状の(3R,5S)-trans-7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エノン酸、カルシウム塩(122.6g,62%収率)が得られた。物理データは、現行の標準及びその公表データと一致した。
【0113】
(3R,5S)-trans-エチル7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エノエート
【0114】
【化28】

【0115】
窒素雰囲気下、(S)-trans-エチル7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エノエート(506mg,1.00mmol)とメタノール(1.7mL)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、−76℃に冷却した。この溶液に、ジエチルメトキシボラン(テトラヒドロフラン中1.0M,1.15mL,1.15mmol)を30分でシリンジを介して滴下添加した。得られた薄黄色溶液を−75℃で30分間攪拌し、次いでホウ化水素ナトリウム(43.5mg,1.15mmol)を添加した。反応物を−65℃で2時間攪拌し、次いで反応物を酢酸(224μL,3.75mmol)でクエンチし、室温に放置して温めた。これをメチルtert-ブチルエーテル100mLと水20mLで希釈し、10分間激しく攪拌し、次いで分離した。上部の有機相を水20mL、飽和NaHCO3水溶液20mL、次いで水20mLで洗浄し、次いで真空下で濃縮すると、薄い油状物が得られ、これをBiotageクロマトグラフィー(50:50=EtOAc/ヘキサン)で溶離すると、白色固体状の表記生成物が得られた(182mg,36%収率)。1H-NMR(400MHz)(CDCl3)δ:1.27(6H,d),1.28(3H,t),2.45(1H,s),2.47(1H,d),3.37(1H,m),3.52(3H,s),3.57(3H,s),3.58(1H,br.s),3.74(1H,br.s.),4.19(2H,q),4.22(1H,m),4.46(1H,m),5.46(1H,dd),6.64(1H,dd),7.09(2H,dd),7.65(2H,dd)。Mp:92-94℃。HRMS,C24H32FN3O6S計算値:509.1996,実測値:509.1999。
【0116】
(S)trans-エチル7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン-5-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エノエート
【0117】
【化29】

【0118】
窒素雰囲気下、trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-5-(3-オキソプロプ-1-エニル)ピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド(1.00g,2.65mmol)、(S)-(−)-1,1’-ビ-(2-ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン(41.8mg,0.093mmol)と塩化リチウム(40.2mg,0.94mmol)を室温でテトラヒドロフラン(15mL)に溶解した。この溶液を10分間攪拌し、次いでN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(397μL,2.51mmol)をシリンジを介して添加すると、溶液が赤から橙色に変化した。この溶液に、1,3-ビス(トリメチルシロキシ)-1-エトキシブタ-1,3-ジエン(1.45g,5.30mmol)を1時間でシリンジポンプを介して添加した。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで0℃でトリフルオロ酢酸20%水溶液(2.5mL)でクエンチし、1時間で室温に放置して温めた。この混合物を0℃に冷却し、リン酸25%溶液(4mL)を添加し、反応物を室温に放置して温めた。これを1時間攪拌し、次いでメチルtert-ブチルエーテル(50mL)で希釈した。混合物を分離し、水性層をメチルtert-ブチルエーテル(2×50mL)で抽出した。混合した有機画分を水(2×100mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、真空下で濃縮すると、薄黄色油状物が得られた。クロマトグラフィー(Biotageカートリッジ,40:60=EtOAc/ヘキサン)で精製すると、99.3%鏡像体過剰率で薄い油状の表記化合物(1.221g,91%収率)が得られた。
1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.26(6H,d),1.28(3H,t),2.65(1H,d),2.66(1H,s),2.89(1H,br.s),3.34(1H,m),3.44(2H,s),3.51(3H,s),3.57(3H,s),4.21(2H,q),4.65(1H,m),5.45(1H,dd),6.67(1H,dd),7.11(2H,dd),7.63(2H,dd)。HRMS:C24H30FN3O6Sの計算値:507.1839,実測値:507.1870。
【0119】
(S)-(−)1,1’-ビ-(2-ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン
【0120】
【化30】

【0121】
窒素雰囲気下、(S)-(−)-1,1’-ビ(2-ナフトール)(500mg,1.74mmol)、チタンテトライソプロポキシド(500μL,1.69mmol)、粉末4Åモレキュラーシーブ(500mg)をジクロロメタン(25mL)中に懸濁させ、室温で1時間攪拌した。固体を濾別し、濾液を真空下で濃縮すると、暗赤色粉末状の(S)-(−)-1,1’-ビ-(2-ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン(980mg,126%収率)が得られ、これをさらに精製することなく次の反応で使用した。
【0122】
4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール
【0123】
【化31】

【0124】
この実験で使用した反応器は、使用前にトルエン蒸留を実施して完全に乾燥した。新しいトルエン(100mL)とカリウムtert-ブトキシド(7.50g,64.8mmol)を容器に添加し、攪拌するとスラリーが形成した。この混合物を−9℃に冷却し、3-メチル-2-ブタノン(3.63g,41.7mmol)を添加した。混合物を−5℃に温め、30分間攪拌した。エチル-4-フルオロベンゾエート(6.25g,36.8mmol)をトルエン(4mL)に溶解し、シリンジを介して添加し、少量のトルエン(1ml)をライン洗浄用に続いて添加した。この混合物を0℃で10分間攪拌し、次いで10℃に温め、次いでこの温度で一晩攪拌した。移動可能なスラリーを25℃に温め、酢酸(4.4mL)、続いて水(37.5mL)を添加した。この混合物を5分間よく攪拌してから静置した。下の相を流しだして廃棄した。5%重炭酸ナトリウム溶液(16mL)を上部相に充填し、5分間攪拌し、次いで静置した。下部の水性層を流し出して、上の有機相を水(5mL)で2回洗浄した。
【0125】
残りのトルエン溶液を共沸蒸留(その場所でDean-Starkトラップで環流)により乾燥し、溶液を60℃に冷却した。尿素(5.1g,84.9mmol)とイソプロパノール(20mL)を充填し、塩酸を添加する間、激しく攪拌した(イソプロパノール中、5〜6M,32.3mL,183mmol)。この溶液を80℃に加熱し、48.5時間攪拌してからさらにイソプロパノール中の塩酸(2mL,11mmol)を充填した。80℃で全部で112時間後、混合物を60℃に冷却し、水(50mL)を添加した。15分間攪拌した後、混合物を静置し、下の水性相を流し出して保持した。水性相を攪拌し、炭酸水素ナトリウム(6.9g)を少しずつ、pH=7になるまで添加した。生成物を溶液から結晶化させて、20℃に冷却した。固体を濾別し、水(20mL)で2回洗浄し、真空オーブン中、50℃で一晩乾燥した。4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール(4.92g)を全部で56%収率で白色粉末状で単離した。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.41(6H,d),3.08(1H,m),6.69(1H,s),7.17(2H,dd),8.14(2H,dd),13.57(1H,br.s)。Mp:215-217℃。HRMS:C13H13N2OFの計算値:232.1012,実測値:232.0963。これをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0126】
5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール
【0127】
【化32】

【0128】
4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール(8.00g,34.1mmol)、次いでDMF(100mL)を反応器に充填した。懸濁液を攪拌し、−3℃に冷却し、N-ブロモスクシンイミド(6.25g,34.8mmol)を添加した。反応混合物を20℃に温め、一晩攪拌した。水(100mL)を反応混合物に充填し、結晶質混合物を1時間攪拌してから濾過した。単離した固体を水(25mL)で2回洗浄し、固体を真空オーブン中、50℃で乾燥した。5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール(10.45g,97%収率)が白色固体状で得られた。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.39(6H,d),3.57(1H,m),7.16(2H,dd),7.66(2H,dd)。Mp:199℃で分解。HRMS:C13H12N2OFBrの計算値:310.0117,実測値:310.0116。これをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0129】
5-ブロモ-2-クロロ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン
【0130】
【化33】

【0131】
塩化ホスホリル(5.00mL,53.8mmol)を5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール(5.027g,15.28mmol)に添加し、反応混合物を内部温度90℃まで加熱した。次いでこの混合物をこの温度で150分間攪拌し、次いで25℃に放冷した。この反応混合物を氷(60g)、水(40mL)と重炭酸ナトリウム(10g)の攪拌混合物中に滴下添加(EtOAc濯ぎ30mL)してクエンチした。添加完了後、重炭酸ナトリウム(13g)を添加して確実に中性にした。この混合物を酢酸エチル(4×70mL)で抽出した。有機相をあわせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を珪藻土パッドを通して濾過し、真空下で濃縮すると、表記化合物が得られた(4.98g,99%収率)。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.34(6H,d),3.64(1H,m),7.17(2H,dd),7.73(2H,dd)。Mp:99-101℃。HRMS:C13HnN2FClBrの計算値:327.9778,実測値:327.9752。これをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0132】
N-(5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
【0133】
【化34】

【0134】
水素化ナトリウム(1.20g,30.0mmol,鉱油中60%懸濁液)をヘキサン(2×10mL)で洗浄し、次いでDMF(50mL)、続いて5-ブロモ-2-クロロ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン(4.944g,15.0mmol)を添加した。得られた懸濁液を−7℃に冷却し、N-メチルメタンスルホンアミド(2.585g,22.5mmol)を添加し、DMF(10mL)で洗浄した。この混合物を17.5時間攪拌し、次いで酢酸エチル(80mL)、トルエン(100mL)、水(120mL)で希釈した。有機相を分離し、水性相を酢酸エチル(20mL)とトルエン(30mL)の混合物で抽出した。有機相をあわせ、水(2×40mL)、次いで塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を真空中で濃縮(ヘキサン共沸混合物2×20mL)すると、表記化合物(5.50g,91%収率)が得られた。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.32(6H,d),3.49(3H,s),3.55(3H,s),3.63(1H,m),7.16(2H,dd),7.77(2H,dd)。Mp:122-125℃。HRMS:C13H17N3O2FSBrの計算値:401.0209,実測値:401.0225。これをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0135】
trans-N-(5-(2-シアノビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
【0136】
【化35】

【0137】
N-(5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド(20.0g,49.72mmol)、テトラ-N-ブチルアンモニウムブロミド(3.24g,10mmol)、及びビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(1.48g,2.89mmol)を500ml丸底フラスコに充填した。このフラスコを窒素で5分間フラッシュし、次いでトルエン(200mL)、ジシクロヘキシルメチルアミン(31.6mL,147mmol)、アクリロニトリル(3.60mL,54.67mmol)をシリンジを介して添加し、反応物を攪拌した。得られた琥珀色溶液を油浴中50℃で7時間加熱し、この間にベージュ色の沈殿が形成し始めた。反応物を室温に放冷し、次いでイソ-ヘキサン(200mL)で希釈し、さらに−8℃に冷却した。沈殿物を濾過により集め、イソ-ヘキサン(4×100mL)で洗浄すると、およそ85%異性体からなる粗な生成物(31g湿潤)が得られた。この粗な生成物にメタノール(130mL)を添加し、得られた懸濁液を室温で30分間攪拌し、次いで−8℃に冷却した。白色結晶質固体を濾過により集め、真空オーブン中で一晩乾燥すると、結晶質固体状の表記化合物(13.1g,70%収率)が得られた。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.32(6H,d),3.29(1H,m),3.51(3H,s),3.58(3H,s),5.31(1H,d),7.18(2H,dd),7.49(1H,d),7.58(2H,dd)。Mp:134.5℃。HRMS:C18H19FN4O2Sの計算値:374.1213,実測値:374.1210。
【0138】
trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-5-(3-オキソプロプ-1-エニル)ピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
【0139】
【化36】

【0140】
trans-N-(5-(2-シアノビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド(12.83g,34.27mmol)をトルエン(750mL)に溶解し、−9℃に冷却した。この溶液に、DIBAL(トルエン中20%溶液,34mL,41.1mmol)を、−6℃未満に内部温度を保持しつつ、45分かけてシリンジポンプを介して添加した。添加完了後、反応物をゆっくりと一晩かけて室温にあたため、次いでメタノール(3mL)、続いて1MのHCl(41.1mL)でクエンチした。得られた懸濁液を濾過し、濾液の下の水性層を分離した。濾液の有機層を1M HCl(100mL)ですりつぶし、得られた懸濁液を濾過した。層を分離し、有機層を塩水(125mL)、飽和NaHCO3水溶液(125mL)及び水(125mL)で洗浄し、次いでMgSO4とNovit SX 1Gカーボンで処理し、濾過し、真空下で濃縮すると、12gの黄色油状物が得られた。これをクロマトグラフィー(Biotageカートリッジ,100%DCM)で精製すると、薄黄色アモルファス固体状の表記化合物(9.7g,76%収率)が得られた。1H-NMR(400MHz;CDCl3)δ:1.32(6H,d),3.39(1H,m),3.53(3H,s),3.60(3H,s),6.22(1H,dd),7.15(2H,dd),7.52(1H,d),7.59(2H,dd),9.61(1H,d)。Mp:86.5℃。HRMS:C18H20FN3O3Sの計算値:377.1209,実測値:377.1196。
【0141】
trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(3-ヒドロキシプロプ-1-エニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
【0142】
【化37】

【0143】
(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(162mg,0.249mmol)と炭酸カリウム(10.3g,74.6mmol)のアセトニトリル(40mL)と水(40mL)中の室温の溶液に、trans-4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロプ-1-エニル)-1,3,2-ジオキソボロラン(Synthesis,2004,1814〜1820頁参照;11.9g(70%濃度),31.1mmol)をアセトニトリル(35mL)中の溶液として、濯ぎ水(12.5mL)と一緒に添加した。この混合物を5分間攪拌し、次いでN-(5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド(10.0g,24.9mmol)を白色固体状として添加し、続いて水(12.5mL)を添加した。反応物を5時間環流下加熱(内部温度77℃)し、次いで室温に放冷した。これをMTBE(150mL)と水(150mL)で希釈し、分離し、有機層を水(50mL)で2回洗浄し、次いで真空下で濃縮すると、茶色油状物16gが得られた。この物質を室温で150mLのアセトニトリルに溶解し、10M塩酸水溶液(3.0mL,30mmol)を添加した。得られた混合物を室温で45分間攪拌し、次いで重炭酸ナトリウム(2.52g,30mmol)でクエンチした。この混合物をトルエン(150mL)と水(150mL)で希釈し、分離し、有機層を水(40mL)で2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、クロマトグラフィー(1:1=イソ-ヘキサン/EtOAc,450gシリカゲル)で精製すると、薄黄色油状物の表記化合物(8.29g,72%収率)が得られた。1H-NMR(400MHz)(CDCl3)δ:1.27(6H,d),3.38(1H,m),3.51(3H,s),3.57(3H,s),4.20(2H,d),5.65(1H,ddd),6.58(1H,ddd),7.09(2H,dd),7.59(2H,dd)。HRMS:C18H22FN3O3Sの計算値:379.1366,実測値:379.1392。
【0144】
trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-5-(3-オキソプロプ-1-エニル)ピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド
【0145】
【化38】

【0146】
trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(3-ヒドロキシプロプ-1-エニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド(1.81g(95%濃度),4.53mmol)のトルエン25mL中の室温溶液に、二酸化マンガン(10g(85%濃度),97.77mmol)を添加した。得られた懸濁液を18時間攪拌し、次いでセライトパッドで濾過し、トルエンで濯いだ。溶媒を濾液から真空中で除去すると、黄色油状物の表記化合物(1.33g,75%収率)が得られた。これは急速に結晶質固体になった。1H-NMR(400MHz)(CDCl3)δ:1.32(6H,d),3.39(1H,m),3.53(3H,s),3.60(3H,s),6.22(1H,dd),7.15(2H,dd),7.52(1H,d),7.59(2H,dd),9.61(1H,d)。Mp:86.5℃。HRMS:C18H20FN3O3Sの計算値:377.1209,実測値:377.1196。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】

の化合物の製造方法であって、
a)式(II):
【化2】

{式中、R1はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、Rは、(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキルまたはアリール(1-6C)アルキルから選択される}の化合物と、式(III):
【化3】

の化合物との、式(IV):
【化4】

のチタン(IV)触媒{式中、R2はそれぞれ独立して(1-6C)アルキルから選択され、ビナフチル部分はS-配置である}、アルカリ金属のハロゲン化物の塩とアミンの存在下、不活性溶媒中での反応を含む、前記方法。
【請求項2】
式(VI)の化合物の製造方法であって、
a)請求項1に記載の式(V)の化合物を形成することを含み;さらに
b)式(V)の化合物中のケト-基を還元して、式(VI):
【化5】

の化合物を与えることを含む、前記方法。
【請求項3】
式(I):
【化6】

の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の形成方法であって、
a)式(V)の化合物を形成すること、及び
b)請求項2に記載の式(VI)の化合物を形成することを含み、さらに
c)R基を除去して、式(I)の化合物またはその塩を提供し、場合により続いて医薬的に許容可能な塩を形成することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記工程b)とc)を、式(VI)の中間体化合物を単離することなく実施する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属のハロゲン化物が塩化リチウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンがN,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記R1がそれぞれメチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Rが(1-6C)アルキルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の前記化合物がそのカルシウム塩として単離される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の式(III):
【化7】

の化合物の製造方法であって、
i)式(X)の化合物から式(XI)の化合物を形成する工程;
【化8】

及び
ii)式(X)の化合物を式(III)の化合物に転換する工程の、各工程を含む前記方法。
【請求項11】
前記工程i)は、Pd[P(tBu)3]2の存在下、式(X)の化合物とアセトニトリルとの反応により実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程ii)は、DIBALとの反応により実施する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
(請求項1に記載の)式(III)の製造方法であって、
A) (請求項8に記載の)式(X)の化合物と、式(XII):
【化9】

{式中、BYxはB(OH)2、B(OH)3、B(OH)2F、BX3(ここでX=ハロゲンである)、B(OR5)2、B(ORS)2F、B(OR5)2(OH)、B(OR6)(OR7)、B(OR6)(OR7)(OH)、B(OR6)(OR7)F、BR52、BR52OH及びBR5Fから選択される;
R5は(1-6C)アルキル、(3-6C)シクロアルキルまたはアリール(1-6C)アルキルから選択される;
R6とR7は一緒になって、これらが結合している二つの酸素の間に1、2、3若しくは4個のメチルまたはフェニル基により場合により置換される、炭素原子2または3個のアルキレン橋架を形成するか;あるいは
R6とR7は一緒になってフェニル環を形成する;及び
R3は保護基である}のボロン酸ビニルとの反応;
続く脱保護により式(XIII):
【化10】

の化合物を提供すること、及び
B) 式(XIII)の化合物を酸化して式(III)の化合物を提供すること
を含む、前記方法。
【請求項14】
式中、R3がテトラヒドロピラニルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式中、BYxがB(OR6)(OR7)である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
化合物 trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-5-(3-オキソプロプ-1-エニル)ピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド。
【請求項17】
化合物 4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール。
【請求項18】
化合物 5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-オール。
【請求項19】
化合物 5-ブロモ-2-クロロ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン。
【請求項20】
化合物 N-(5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド。
【請求項21】
化合物 trans-N-(5-(2-シクロビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド。
【請求項22】
化合物 trans-N-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(3-ヒドロキシプロプ-1-エニル)-6-イソプロピルピリミジン-2-イル)-N-メチルメタンスルホンアミド。

【公表番号】特表2009−500388(P2009−500388A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520005(P2008−520005)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003543
【国際公開番号】WO2007/007119
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】