説明

ロック式接続具

【課題】オスコネクタとメスコネクタとの接続状態を確実に維持することができるロック式接続具を提供する。
【解決手段】先端部に接続挿入部11が形成されたオスコネクタ10と、接続挿入部11を挿入させて嵌合可能な嵌合部14cを有するとともに、外周面に雄ネジ部14bが形成されたメスコネクタ14と、雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合させることによりオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をロックするロック手段12とを具備したロック式接続具において、接続挿入部11には、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロック手段12にてロックされた状態で当該ロック手段12の内周面における雌ネジ部12aに対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材13が設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロック手段を具備したロック式接続具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液浄化治療時に患者の血液を体外循環させるための血液回路は、通常、可撓性チューブから成る動脈側血液回路及び静脈側血液回路にて構成されており、当該動脈側血液回路及び静脈側血液回路のそれぞれの基端には、体外循環する血液を浄化するための血液浄化器(ダイアライザ等)が接続されるとともに、それぞれの先端には、患者に穿刺可能な動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付けられている。
【0003】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端には、それぞれシャントコネクタと称されるロック式接続具が形成されており、例えば動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針から延設されたチューブと動脈側血液回路及び静脈側血液回路を構成するチューブの先端とを当該ロック式接続具にて接続し得るようになっている。かかる従来のロック式接続具は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を構成するチューブの先端に接続されたオスコネクタと、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針から延設されたチューブに接続されたメスコネクタとを有し、メスコネクタにオスコネクタを嵌合させて接続するとともに、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロックリングとを有していた。
【0004】
より具体的には、ロックリングは、オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面にメスコネクタの外周面に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることによりオスコネクタとメスコネクタとの接続状態がロックされるよう構成されていた(例えば特許文献1参照)。これにより、動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端にそれぞれ動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を接続させることができ、これら動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺することにより血液を体外循環させることができるとともに、緊急時や患者が一時的に場所を離れるとき、ロックリングによるロックを解除した後、オスコネクタをメスコネクタから外すことができるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3137386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のロック式接続具においては、以下の如き問題があった。
オスコネクタ及びメスコネクタは、通常、JIS(ISO)規格に従って製造される硬質部品(硬質材料にて製造される部品)であるものの、当該硬質部品の特性上、ロックリングの雌ネジ部とメスコネクタの雄ネジ部との螺合が僅かに緩むと雄ネジ部と雌ネジ部との嵌合力が低下し、ロックリングが一気に緩んで外れてしまう可能性があった。
【0007】
また、オスコネクタにおけるメスコネクタとの嵌合部は、先端から基端に向かって径が大きくなるルアーテーパとされているが、オスコネクタ及びメスコネクタは、硬質部品同士のテーパ嵌合であるため互いの反発力によって僅かな衝撃や振動、温度変化などによって緩み、嵌合が不十分となって液漏れや空気の吸込みを生じさせてしまう虞もあった。なお、このような不具合は、シャントコネクタに限らず、オスコネクタ及びメスコネクタにより接続可能とされ、その接続状態をロックリングの如きロック手段でロックするロック式接続具全般に共通して発生し得る。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態を確実に維持することができるロック式接続具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、基端部に液体を流通させ得るチューブが接続されるとともに、先端部に接続挿入部が形成されたオスコネクタと、前記接続挿入部を挿入させて嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に対する前記接続挿入部の嵌合により前記オスコネクタと接続されて液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部が形成されたメスコネクタと、前記オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面に前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることにより前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロック手段とを具備したロック式接続具において、前記接続挿入部には、前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態が前記ロック手段にてロックされた状態で当該ロック手段の前記内周面に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のロック式接続具において、前記弾性部材は、弾力を有したリング状部材から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のロック式接続具において、前記弾性部材は、前記接続挿入部とは別体のリング状部材から成るものとされ、加熱により前記接続挿入部の表面に対して熱膠着して固定され得ることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のロック式接続具において、前記弾性部材は、前記接続挿入部を前記嵌合部に嵌合させた状態において当該接続挿入部と嵌合部とで挟まれた状態とされ、且つ、前記ロック手段によるロックの過程で径方向に膨出可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のロック式接続具において、前記オスコネクタには、前記ロック手段の抜けを防止するために前記接続挿入部の後端部に段部が形成され、前記弾性部材は、前記接続挿入部を前記嵌合部に嵌合させた状態において、前記嵌合部の開口縁面と前記段部との間で各々に隣接するように配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載のロック式接続具において、前記オスコネクタに接続されるチューブは、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成するとともに、前記メスコネクタは、患者に穿刺可能な穿刺針又は当該穿刺針が取り付けられたチューブに接続されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1つに記載のロック式接続具を具備したことを特徴とする血液回路である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、接続挿入部には、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態がロック手段にてロックされた状態で当該ロック手段の内周面に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材が設けられているので、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態を確実に維持することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、弾性部材は、弾力を有したリング状部材から成るので、リブ状の弾性部材に比べ、ロック手段の雌ネジ部に対する当接面積をより大きくすることができ、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をより一層確実に維持することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、弾性部材は、接続挿入部とは別体のリング状部材から成るものとされ、加熱により前記接続挿入部の表面に対して熱膠着して固定され得るので、弾性部材を接続挿入部に一体的に形成するものに比べ、低コストにて弾性部材を接続挿入部に形成することができるとともに、加熱することによって弾性部材をより強固に接続挿入部に対して固定させることができる。
【0019】
請求項4、5の発明によれば、弾性部材は、接続挿入部を嵌合部に嵌合させた状態において当該接続挿入部と嵌合部とで挟まれた状態とされ、且つ、ロック手段によるロックの過程で径方向に膨出可能とされたので、ロック手段によるロック状態において、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をより強固に維持させることができるとともに、ロック手段によるロック操作時又は当該ロックの解除操作時に必要とされる操作力を低減させることができる。さらに、弾性部材がオスコネクタとメスコネクタに当接し液密とするので液漏れを防止することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、オスコネクタに接続されるチューブは、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成するとともに、メスコネクタは、患者に穿刺可能な穿刺針又は当該穿刺針が取り付けられたチューブに接続されるので、血液回路と穿刺針とを連結させるシャントコネクタに適用させることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、オスコネクタとメスコネクタとの接続状態を確実に維持することができる血液回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るロック式接続具が適用される血液回路を示す模式図
【図2】本発明の第1実施形態に係るロック式接続具(接続前)を示す斜視図
【図3】同ロック式接続具におけるオスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【図4】同ロック式接続具におけるメスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【図5】同ロック式接続具における弾性部材を示す正面図及び側面図
【図6】同ロック式接続具(接続後であってロック前の状態)を示す斜視図
【図7】同ロック式接続具(接続後であってロック前の状態)を示す断面図
【図8】同ロック式接続具(ロックされた状態)を示す斜視図
【図9】同ロック式接続具(ロックされた状態)を示す断面図
【図10】本発明の他の実施形態に係るロック式接続具(接続前)を示す斜視図
【図11】同ロック式接続具における弾性部材を示す正面図及び側面図
【図12】同ロック式接続具(ロックされた状態)を示す断面図
【図13】本発明の第2実施形態に係るロック式接続具(接続前)を示す斜視図
【図14】同ロック式接続具におけるオスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【図15】同ロック式接続具におけるメスコネクタを示す図であって(a)側面図(b)断面図
【図16】同ロック式接続具(接続後であってロック前の状態)を示す斜視図
【図17】同ロック式接続具(接続後であってロック前の状態)を示す断面図
【図18】同ロック式接続具(ロックされた状態)を示す斜視図
【図19】同ロック式接続具(ロックされた状態)を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るロック式接続具は、例えば図1に示すような動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を有した血液回路に適用される。かかる血液回路は、人工透析治療のため患者の血液を体外循環させ、その途中において血液浄化等を行わせるもので、同図に示すように、先端に動脈側穿刺針aが接続された動脈側血液回路1と、先端に静脈側穿刺針bが接続された静脈側血液回路2とから主に構成されている。
【0024】
これら動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2のそれぞれの基端は、血液浄化器としてのダイアライザ3に接続されており、その内部に血液を流通させ得る血液流路が形成されている。また、ダイアライザ3には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2がそれぞれ接続されており、透析液を流通させ得る流通路が形成されている。そして、体外循環する血液が血液流路を通過し、透析液が透析液流路を通過する際、血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去され得るようになっている。
【0025】
動脈側血液回路1の途中には、当該動脈側血液回路1の流路を構成するチューブをしごきつつ駆動するしごき型の血液ポンプ4が配設されているとともに、静脈側血液回路2の途中には、除泡のためのエアトラップチャンバ5が接続されており、体外循環させる過程において生じた血液中のエアを取り除いて当該血液を患者の体内に戻し得るよう構成されている。なお、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の途中には、図示しないT字管やゴムボタン等が接続されて、透析治療をしつつ血液採取や薬剤投与等が行えるようになっている。
【0026】
動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2は、それぞれ可撓性チューブから成るものであり、患者の血液やプライミング液等を流通させ得るようになっている。また、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の先端は、それぞれロック式接続具8、9を介して動脈側穿刺針aから延設したチューブ6及び静脈側穿刺針bから延設したチューブ7とそれぞれ接続されている。これにより、動脈側穿刺針aから採取した患者の血液は、チューブ6及び動脈側血液回路1を流通し、ダイアライザ3にて血液浄化が施された後、静脈側血液回路2及びチューブ7を流通し、静脈側穿刺針bを介して患者に戻されることとなる。
【0027】
本発明の第1実施形態に係るロック式接続具(8、9)は、チューブ(6、7)と動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2とを接続してそれぞれの流路を連通させ得るもので、図2〜4に示すように、オスコネクタ10と、メスコネクタ14と、ロック手段12と、弾性部材13とから主に構成されている。なお、説明の重複を避けるべく、動脈側血液回路1とチューブ6とを接続するロック式接続具8について以下に詳細に説明するが、静脈側血液回路2とチューブ7とを接続するロック式接続具9についても同様の構成である。
【0028】
オスコネクタ10は、基端部10aに液体を流通させ得るチューブ(本実施形態においては動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブ)が接続されるとともに、先端部に接続挿入部11が形成された樹脂(硬質樹脂)製部品から成るものである。このオスコネクタ10には、軸方向に亘って内部に貫通孔が形成されており、かかる貫通孔が液体を流通させ得る流路α(図3参照)を構成している。接続挿入部11は、オスコネクタ10の先端側に一体的に成形された部位から成り、先端に向かって縮径したテーパ面を有して成る。
【0029】
メスコネクタ14は、オスコネクタ10の接続挿入部11を挿入させて嵌合可能な嵌合部14cを有し、当該嵌合部14cに対する接続挿入部11の嵌合によりオスコネクタ10と接続され、液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部14bが形成された樹脂(硬質樹脂)製部品から成るものである。このメスコネクタ14には、軸方向に亘って内部に貫通孔が形成されており、かかる貫通孔が液体を流通させ得る流路β(図4参照)を構成している。なお、図中符号14aは、チューブ6と接続した接続部を示している。
【0030】
ロック手段12は、図3に示すように、略円筒状の樹脂(硬質樹脂)製部品から成り、オスコネクタ10の軸方向に対して摺動自在に取り付けられるとともに、オスコネクタ10に形成された段部10bによって抜け止めされている。かかるロック手段12は、内周面にメスコネクタ14の雄ネジ部14bと螺合可能な雌ネジ部12aが形成され、当該雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合させることによりオスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をロックし得るものとされている(図9参照)。
【0031】
弾性部材13は、所定の弾力を有するとともに、オスコネクタ10の接続挿入部11に固定されたものであり、本実施形態においては、図5に示すように、外周面13a及び孔13bを有するとともに、接続挿入部11とは別体のリング状部材から成る。しかるに、弾性部材13は、その孔13bの径(内径)が接続挿入部11における弾性部材13を取り付ける部位の径(外径)と略同一寸法とされており、当該孔13bに接続挿入部11を挿通させて圧入固定可能とされている。
【0032】
さらに、弾性部材13は、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロック手段12にてロックされた状態で当該ロック手段12の内周面(本実施形態においては、雌ネジ部12aが形成された部位)に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得るものであり、例えば軟質塩化ビニル樹脂から成るものとされている。すなわち、弾性部材13は、図9に示すように、接続挿入部11に取り付けられた状態で、その外周面13aがロック手段12の内周面(雌ネジ部12a)と当接するよう寸法t(図5参照)が設定されているのである。
【0033】
このようなロック式接続具を用いてオスコネクタ10及びメスコネクタ14の接続及びロックするには、先ず、図6、7に示すように、メスコネクタ14の嵌合部14cにオスコネクタ10の接続挿入部11を挿入させて嵌合させる。そして、ロック手段12を軸方向に移動(すなわち、先端側に前進)させつつ回転させることにより、雄ネジ部14bに対して雌ネジ部12aを螺合させる。
【0034】
しかして、ロック手段12の雌ネジ部12aが雄ネジ部14bに螺合することにより、図8、9に示すように、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロックされることとなる。このとき、弾性部材13は、その外周面13aがロック手段12の雌ネジ部12aと当接することにより径方向に僅かに圧縮された状態とされており、当該ロック手段12に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接した状態となっている。
【0035】
したがって、ロック状態のロック手段12に対して弾力による反発力を付与させることができるため、その反発力によってロックが緩む方向にロック手段12が移動してしまうのを抑制することができ、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態を確実に維持することができる。
【0036】
ここで、本実施形態に係る弾性部材13は、軟質塩化ビニル樹脂を材質とし、接続挿入部11とは別体のリング状部材から成るものとされているため、加熱により接続挿入部11の表面に対して熱膠着して固定され得るものとされている。これにより、弾性部材13を接続挿入部11に一体的に形成するものに比べ、低コストにて弾性部材13を接続挿入部11に形成することができるとともに、加熱することによって弾性部材13をより強固に接続挿入部11に対して固定させることができる。
【0037】
特に、本実施形態においては、医療機器の一つである血液回路に適用されているため、製造工程において、通常、蒸気滅菌等が行われる。本実施形態によれば、蒸気滅菌時の加熱によって、弾性部材13を接続挿入部11の表面に対して熱膠着して固定することができるので、当該固定のための別個の工程(接着剤の塗布工程等)を不要とすることができ、より低コストにて弾性部材13を接続挿入部11に形成することができる。
【0038】
しかるに、弾性部材13は、図5に示すものに限定されず、例えば図10、11に示すように、両端面が平坦なリング状部材から成る弾性部材13’としてもよい。かかる弾性部材13’は、上記実施形態と同様、外周面13’a及び孔13’bを有するとともに、接続挿入部11とは別体のリング状部材から成り、孔13’bの径(内径)が接続挿入部11における弾性部材13’を取り付ける部位の径(外径)と略同一寸法とされている。
【0039】
そして、弾性部材13’は、オスコネクタ10の接続挿入部11に圧入固定されて成るとともに、図12に示すように、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロック手段12にてロックされた状態で当該ロック手段12の雌ネジ部12aに対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得るようになっている。これにより、ロックが緩む方向にロック手段12が移動してしまうのを抑制することができ、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態を確実に維持することができる。
【0040】
なお、上記実施形態に係る弾性部材13、13’に代えて、当該接続挿入部11に対して一体成形されたものであってもよい。さらに、弾性部材13、13’は、ロック手段12の雌ネジ部12aに対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得るものであれば足り、材質として軟質塩化ビニル樹脂に代え、例えばシリコンや合成ゴム等とすることができる。また、リング状部材から成る弾性部材13、13’に代え、接続挿入部11における周方向の所定位置に複数形成されたリブ状の弾性部材等とすることができる。
【0041】
上記第1実施形態によれば、接続挿入部11には、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロック手段12にてロックされた状態で当該ロック手段12の内周面(雌ネジ部12a)に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材13が設けられているので、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態を確実に維持することができる。
【0042】
また、弾性部材13は、弾力を有したリング状部材から成るので、リブ状の弾性部材に比べ、ロック手段12の雌ネジ部12aに対する当接面積をより大きくすることができ、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をより一層確実に維持することができる。さらに、本実施形態によれば、ロック手段12によるロックの過程(すなわち、雌ネジ部12aと雄ネジ部14bとの螺合過程)及びロック解除の過程において、弾性部材13が雌ネジ部12aに対して当接するので、ロック手段12によるロック操作過程全般及び当該ロックの解除操作過程全般に亘って、必要とされる操作力を略均等にすることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係るロック式接続具について説明する。
本実施形態に係るロック式接続具は、第1実施形態と同様、血液回路(図1参照)に適用され、チューブ(6、7)と動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2とを接続してそれぞれの流路を連通させ得るもので、図13〜15に示すように、オスコネクタ10と、メスコネクタ14と、ロック手段12と、弾性部材15とから主に構成されている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様、説明の重複を避けるべく、動脈側血液回路1とチューブ6とを接続するロック式接続具8について以下に詳細に説明するが、静脈側血液回路2とチューブ7とを接続するロック式接続具9についても同様の構成である。
【0044】
弾性部材15は、その両端面(15a、15b)が平坦とされた円筒状部材から成るもので、接続挿入部11を嵌合部14cに嵌合させた状態において当該接続挿入部11の段部10cと嵌合部14cの開口縁面14caとで挟まれた状態とされ(図17参照)、且つ、ロック手段12によるロックの過程(すなわち、雌ネジ部12aと雄ネジ部14bとの螺合過程)で径方向に膨出(図19参照)可能とされたものである。すなわち、弾性部材15は、その寸法uが、オスコネクタ10とメスコネクタ14とを接続させた状態(ロック手段12によるロック前)で接続挿入部11の段部10cと嵌合部14cの開口縁面14caとの離間寸法と略同一とされており、ロック手段12によるロックの過程で当該寸法uが小さくなる方向に圧縮されて径方向に膨出するよう構成されているのである。
【0045】
より具体的には、オスコネクタ10とメスコネクタ14とを接続させた状態(ロック手段12によるロック前)においては、弾性部材15の両端面(15a、15b)が接続挿入部11の段部10cと嵌合部14cの開口縁面14caとで挟まれた状態とされ、当該弾性部材15が径方向に膨出されない程度の挟持力とされている。すなわち、弾性部材15は、接続挿入部11を嵌合部14cに嵌合させた状態において、嵌合部14cの開口縁面14caと段部10cとの間で各々に隣接するように配置されているのである。そして、ロック手段12を軸方向に移動させつつ回転させてロックを行わせようとする際、雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合させる過程でオスコネクタ10とメスコネクタ14とが互いに引き寄せられ、その引き寄せられる力により弾性部材15が軸方向に圧縮(図19中符号F1、F2で示す圧縮力による圧縮)される。
【0046】
しかして、弾性部材15は、この軸方向に対する圧縮力に伴って径方向に膨出(同図中符号F3で示す方向の膨出)し、ロック手段12の雌ネジ部12aに対して弾力による反発力を生じさせつつ当接することとなる。なお、雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合させる前の状態であってロック手段12をメスコネクタ14側に摺動させる際、弾性部材15と雌ネジ部12aとは接触せず、当該雌ネジ部12aに対する雄ネジ部14bに対する螺合過程で当接するものとしてもよく、或いは雌ネジ部12aを雄ネジ部14bに螺合させる前の状態であってロック手段12をメスコネクタ14側に摺動させる際、弾性部材15と雌ネジ部12aとが僅かに当接するとともに当該雌ネジ部12aに対する雄ネジ部14bの螺合過程で当該弾性部材15が径方向に膨出してより強く当接するものとしてもよい。
【0047】
このようなロック式接続具を用いてオスコネクタ10及びメスコネクタ14の接続及びロックするには、先ず、図16、17に示すように、メスコネクタ14の嵌合部14cにオスコネクタ10の接続挿入部11を挿入させて嵌合させる。このとき、弾性部材15の両端面(15a、15b)が接続挿入部11の段部10cと嵌合部14cの開口縁面14caとで挟まれた状態とされているものの、当該弾性部材15に対して軸方向の圧縮力が付与されない状態(径方向に対する膨出がない状態)とされている。
【0048】
そして、ロック手段12を軸方向に移動(すなわち、先端側に前進)させつつ回転させることにより、雄ネジ部14bに対して雌ネジ部12aを螺合させると、図18、19に示すように、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロックされることとなる。このとき、弾性部材15は、図19中符号F1、F2で示す如き軸方向の圧縮力が付与されることとなり、同図中符号F3で示す如き径方向の膨出がなされることとなる。これにより、ロック手段12に対してより強固な反発力を付与させることができる。
【0049】
上記第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、接続挿入部11には、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態がロック手段12にてロックされた状態で当該ロック手段12の内周面(雌ネジ部12a)に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材15が設けられているので、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態を確実に維持することができるとともに、液漏れを防止することができる。すなわち、弾性部材15の両端面(15a、15b)がそれぞれオスコネクタの段部10c、メスコネクタ14の開口縁面14caに当接し、ロック手段12を軸方向に移動しながら螺合するとより強く当接、密着して液密となるので、液漏れを防止できるのである。
【0050】
特に、本実施形態によれば、弾性部材15は、接続挿入部11を嵌合部14cに嵌合させた状態において当該接続挿入部11と嵌合部14cとで挟まれた状態とされ、且つ、ロック手段12によるロックの過程で径方向に膨出可能とされたので、ロック手段12によるロック状態において、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態をより強固に維持させることができるとともに、ロック手段12によるロック操作時又は当該ロックの解除操作時(雌ネジ部12aに対する雄ネジ部14bの螺合作業又は螺合の解除作業)に必要とされる操作力を低減させることができる。
【0051】
上記第1実施形態及び第2実施形態によれば、オスコネクタ10に接続されるチューブは、患者の血液を体外循環させるための血液回路(動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2)を構成するとともに、メスコネクタ14は、患者に穿刺可能な穿刺針(a、b)が取り付けられたチューブ(6、7)に接続されるので、血液回路と穿刺針とを連結させるコネクタ(シャントコネクタ)に適用させることができる。また、オスコネクタ10とメスコネクタ14との接続状態を確実に維持することができる血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)を提供することができる。
【0052】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えばメスコネクタに穿刺針a、bを形成させるとともに、そのメスコネクタにロック手段12の雌ネジ部12aと螺合し得る雄ネジ部を形成するものとし、チューブ6、7を介さず動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2の先端に穿刺針a、bを取り付けるものに適用してもよい。すなわち、オスコネクタ10に接続されるチューブは、患者の血液を体外循環させるための血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)を構成するとともに、メスコネクタは、患者に穿刺可能な穿刺針(a、b)又は当該穿刺針(a、b)が取り付けられたチューブ(6、7)に接続されるものに適用できるのである。また、本実施形態においては、上記の如く血液回路の先端に穿刺針を接続させるためのシャントコネクタと称されるロック式接続具に適用されているが、液体又は気体の流路を接続するための他の形態のロック式接続具(医療用に限定されない)に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
オスコネクタとメスコネクタとの接続状態がロック手段にてロックされた状態で当該ロック手段の内周面に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材が接続挿入部に設けられているロック式接続具であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化器)
4 血液ポンプ
5 エアトラップチャンバ
6、7 チューブ
8、9 ロック式接続具
10 オスコネクタ
11 接続挿入部
12 ロック手段
12a 雌ネジ部
13 弾性部材
14 メスコネクタ
14b 雄ネジ部
14c 嵌合部
15 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部に液体を流通させ得るチューブが接続されるとともに、先端部に接続挿入部が形成されたオスコネクタと、
前記接続挿入部を挿入させて嵌合可能な嵌合部を有し、当該嵌合部に対する前記接続挿入部の嵌合により前記オスコネクタと接続されて液体を流通可能とされるとともに、外周面に雄ネジ部が形成されたメスコネクタと、
前記オスコネクタに取り付けられるとともに、内周面に前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成され、当該雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることにより前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするロック手段と、
を具備したロック式接続具において、
前記接続挿入部には、前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態が前記ロック手段にてロックされた状態で当該ロック手段の前記内周面に対して弾力による反発力を生じさせつつ当接し得る弾性部材が設けられていることを特徴とするロック式接続具。
【請求項2】
前記弾性部材は、弾力を有したリング状部材から成ることを特徴とする請求項1記載のロック式接続具。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記接続挿入部とは別体のリング状部材から成るものとされ、加熱により前記接続挿入部の表面に対して熱膠着して固定され得ることを特徴とする請求項2記載のロック式接続具。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記接続挿入部を前記嵌合部に嵌合させた状態において当該接続挿入部と嵌合部とで挟まれた状態とされ、且つ、前記ロック手段によるロックの過程で径方向に膨出可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のロック式接続具。
【請求項5】
前記オスコネクタには、前記ロック手段の抜けを防止するために前記接続挿入部の後端部に段部が形成され、前記弾性部材は、前記接続挿入部を前記嵌合部に嵌合させた状態において、前記嵌合部の開口縁面と前記段部との間で各々に隣接するように配置されていることを特徴とする請求項4記載のロック式接続具。
【請求項6】
前記オスコネクタに接続されるチューブは、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成するとともに、前記メスコネクタは、患者に穿刺可能な穿刺針又は当該穿刺針が取り付けられたチューブに接続されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のロック式接続具。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つに記載のロック式接続具を具備したことを特徴とする血液回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−34557(P2013−34557A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171416(P2011−171416)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】