説明

ロドコッカス属細菌由来の抗菌活性物質及びそれを用いた微生物防除法

【課題】抗菌活性を有するロドコッカス属細菌が生産する抗菌活性物質とそれを用いた微生物防除法を提供すること。
【解決手段】微生物に対し抗菌活性を示すロドコッカス属細菌の培養物から抗菌活性物質(画分)を抽出したもの、あるいはそれらを組合せて用い、感受性である微生物を防除する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロドコッカス属細菌由来の抗菌活性物質に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質を生産するストレプトマイセス属以外の放線菌としてはノカルジオイデス属(非特許文献1を参照)、アクチノプラネス属(非特許文献2を参照)、フランキア属(非特許文献3を参照)、ノカルジア属(非特許文献4を参照)、アクチノマデュラ属(非特許文献5を参照)、アルスロバクター属(非特許文献6を参照)などが報告されている。またバクテリオシンはストレプトマイセス属の他にコリネバクテリウム属やマイコバクテリウム属から報告されている(非特許文献7を参照)。
【0003】
しかしながらこれまでに抗生物質を生産するロドコッカス属としては、抗真菌ペプチドであるロドペプチンを生産するRhodococcus sp. Mer-N1033 (特許文献1並びに非特許文献8〜10を参照)、また抗結核物質であるK01-B0171を生産するRhodococcus sp. K01-B0171 (特許文献2及び非特許文献11を参照)の二例報告されているだけである。ロドコッカス属の多くの株で難分解性の芳香族化合物に対する高い分解能力を持つことが知られ、また巨大線状プラスミドを有し、芳香族分解に関わる遺伝子などの多くはその線状プラスミドにコードされていることが報告されている。これらのことからロドコッカスは遺伝子資源として有望でありこのほかにも様々な機能を持つ株が存在すると予測され、抗菌機能についても上記二例の他に新規の抗菌物質生産能を有する株の発見が大いに期待される。
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO95/26978号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2004/065413号パンフレット
【非特許文献1】J. A. Matson et al., J. Antibiot. 1989; 42: 1763-1767
【非特許文献2】Z. H. Jin et al., Microbiol. Biotechnol., 2002; 58: 63-66
【非特許文献3】J. P. Haansuu et al., J. Ind. Microbiol. Biotechnol., 2001; 27: 62-66
【非特許文献4】Y. Tanaka et al., Antibiot., 1997; 50: 1036-1041
【非特許文献5】K. Ohtsuka et al., J. Antimicrob. Chemother., 1997; 39: 71 - 77
【非特許文献6】K. Kamigiri et al., J. Antibiot., 1996; 49: 823-835
【非特許文献7】J. R. Tagg et al., Microbiol. Mol. Biol. Rev., 1976; 40: 722-756
【非特許文献8】H. Chiba et al., J. Antibiot., 1999; 52: 695-659
【非特許文献9】H. Chiba et al., J. Antibiot., 1999; 52: 700-709
【非特許文献10】H. Chiba et al., J. Antibiot., 1999; 52: 710-720
【非特許文献11】M. Iwatsuki et al., J. Am. Chem. Soc., 2006; 128 :7486-7491
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗菌活性を有するロドコッカス属細菌から得られる抗菌活性物質及び抗菌活性培養物とその製造法、及びそれらを用いた微生物防除を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、抗菌活性を有するロドコッカス属細菌について知見を得、微生物に対し抗菌活性を示すロドコッカス属細菌の培養物及びそこから抗菌活性物質(画分)を抽出したもの、あるいはそれらの複合を用い、感受性である微生物を防除する、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]-[33]である。
【0007】
[1] 以下の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質。
(a) Rhodococcus erythropolis JCM6821
(b) Rhodococcus erythropolis JCM6822
(c) Rhodococcus erythropolis JCM6823
(d) Rhodococcus erythropolis JCM6824
(e) Rhodococcus erythropolis JCM6827
(f) Rhodococcus erythropolis DSM11397
(g) Rhodococcus erythropolis DSM44522
(h) Rhodococcus globerulus DSM44519
(i) Rhodococcus erythropolis JCM2895
(j) Rhodococcus erythropolis JCM2893
(k) Rhodococcus erythropolis JCM2894
(l) Rhodococcus erythropolis DSM9675
(m) Rhodococcus erythropolis DSM43200
(n) Rhodococcus erythropolis IAM1400
(o) Rhodococcus erythropolis IAM1503
(p) Rhodococcus ruber DSM43338
(q) Rhodococcus rhodnii DSM43336
(r) Rhodococcus zopfii DSM44189
[2] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、グラム染色陽性細菌(phylum Actinobacteria、phylum Firmicutes)に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[3] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、じゃがいもそうか病菌に対し抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[4] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、スイートピー帯化病菌に対し抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[5] [1]の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[6] [1]の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[7] [1]の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[8] [1]の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[9] [1]の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
[10] ロドコッカス属細菌菌株からの精製が有機溶媒による抽出及び逆相クロマトグラフィー用固定相を用いた固相抽出により行われる[1]〜[9]のいずれかの抗菌活性物質。
【0008】
[11] 有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出であり、固相抽出の移動相がエタノール又はメタノールである[10]の抗菌活性物質。
[12] [1]〜[11]のいずれかの抗菌活性物質の少なくとも1つを有効成分として含有する抗菌剤。
[13] [1]の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物からの分離により得られる抗菌活性画分。
[14] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物からの分離により得られるじゃがいもそうか病菌に対して抗菌活性を示す抗菌活性画分。
[15] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られるスイートピー帯化病菌に対して抗菌活性を示す及び抗菌活性画分。
[16] [1]の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
[17] [1]の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌作用を示す抗菌活性画分。
[18] [1]の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
[19] [1]の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
[20] [1]の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【0009】
[21] ロドコッカス属細菌菌株からの分離が有機溶媒による抽出により行われる[13]〜[20]のいずれかの抗菌活性画分。
[22] 有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出である[21]の抗菌活性画分。
[23] [13]〜[22]のいずれかの抗菌活性画分の少なくとも1つを有効成分として含有する抗菌剤。
[24] [1]の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する抗菌剤。
[25] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有するじゃがいもそうか病菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
[26] [1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有するスイートピー帯化病菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
[27] [1]の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
[28] [1]の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌活性を示す抗菌剤。
[29] [1]の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
[30] [1]の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【0010】
[31] [1]の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
[32] [1]の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該菌株の培養物から抗菌活性を有する物質を精製することを特徴とするロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
[33] ロドコッカス属細菌菌株からの精製が有機溶媒による抽出及び逆相クロマトグラフィー用固定相を用いた固相抽出により行われる[32]のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
[34] 有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出であり、固相抽出の移動相がエタノール又はメタノールである[33]のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
[35] [1]の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該菌株の培養物から抗菌活性を有する画分を分離することを特徴とするロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
[36] ロドコッカス属細菌菌株からの分離が有機溶媒による抽出により行われる[35]のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
[37] 有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出である[36]のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
[38] [1]〜[11]のいずれかの抗菌活性物質、[13]〜[22]のいずれかの抗菌活性画分並びに[12]、[23]〜[31]のいずれかの抗菌剤からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は抗菌剤の少なくとも1つを有効成分として用い、抗菌作用を得ることを特徴とする微生物防除の方法。
[39] [38]の微生物防除の方法であって、[1]〜[11]のいずれかの抗菌活性物質、[13]〜[22]のいずれかの抗菌活性画分並びに[12]、[23]〜[31]のいずれかの抗菌剤からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は抗菌剤の複数を組合せて用いることを特徴とする微生物防除の方法。
[40] [3]の抗菌活性物質、[14]の抗菌活性画分及び[1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の少なくとも1つを有効成分として用いることを特徴とする、じゃがいもそうか病菌防除の方法。
[41] [3]の抗菌活性物質、[14]の抗菌活性画分及び[1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の複数を組合せて用いる及びことを特徴とする、じゃがいもそうか病菌防除の方法。
[42] [4]の抗菌活性物質、[15]の抗菌活性画分及び[1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の少なくとも1つを有効成分として用いることを特徴とする、スイートピー帯化病菌防除の方法。
[43] [4]の抗菌活性物質、[15]の抗菌活性画分及び[1]の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の複数を組合せて用いる及びことを特徴とする、スイートピー帯化病菌防除の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により新規の抗菌活性を示すロドコッカス属細菌由来の抗菌活性物質及び抗菌活性培養物とその製造法及び使用法が提供される。本発明で提供する抗菌活性物質、抗菌活性画分にはじゃがいもそうか病菌、またスイートピー帯化病菌に対し抗菌活性を持つものも含まれる。これらを用いることで感受性微生物を防除することができるため、農業、医療の現場で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
1. 抗菌活性を有するロドコッカス属細菌
本発明の抗菌活性を有するロドコッカス属細菌は、国内外の菌株保存機関から数々の菌株を収集し、その性質を調べることにより探索することができる。菌株保存機関としては、例えばIAM(Institute of Applied Microbiology、東京大学)、JCM(Japan Collection of Microorganisms、理化学研究所)、DSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)、ATCC(米国)等が挙げられる。また、新たに自然環境よりロドコッカス属細菌を単離し、該単離細菌について性質を調べてもよい。
【0013】
それぞれの菌株が抗菌活性を有するか否かの判断は、寒天培地上(シャーレ)に生育させたロドコッカス属細菌のコロニーの上から、抗菌物質活性を試される微生物(被験菌)を低濃度で懸濁した軟寒天(ソフトアガー)を重層し、培養後にロドコッカスコロニー周辺に被験菌の生育阻止円を観察することで行えばよい(ソフトアガー重層法)。用いたロドコッカス属菌株が抗菌活性を有し何らかの抗菌成分を培地中に放出していると、ソフトアガーでシャーレ全面に分散した被験菌はロドコッカスコロニーの周辺だけ生育できず、培地は透明なまま残るため視覚的に活性株を探索することができる。
【0014】
微生物には様々な種類がおり抗生物質に対する耐性、感受性はそれぞれ異なる。また抗生物質がどのような微生物に対しどのような働きによって殺菌又は静菌作用を示すかについてもそれぞれ異なっている。新規の抗菌活性ロドコッカスを得るため、ソフトアガー重層法で用いる被験菌として例えば以下に示す11株の微生物を用いればよい。
【0015】
被験菌として用いた菌株
Escherichia coli IAM1264*
Pseudomonas putida IAM1236
Sinorhizobium meliloti IAM12611
Acinetobacter calcoaceticus IAM12087
(以上グラム染色陰性細菌)
Bacillus subtilis IAM12118
Streptomyces griseus IAM12311
Arthrobacter atrocyaneus IAM12339
Corynebacterium glutamicum IAM12435
Rhodococcus erythropolis IAM12122 (基準菌株)
Rhodococcus rhodocurous JCM3202**
(以上グラム染色陽性細菌)
Saccharomyces cerevisiae IAM14383
(以上真菌)
*IAM = Institute of Applied Microbiology (東京大学)
**JCM = Japan Collection of Microorganisms (理化学研究所)
【0016】
上記被験菌の少なくとも1つの菌に対して生育阻止円を形成させる株を抗菌活性を示すロドコッカス属細菌菌株として選択することができる。
【0017】
いくつかのロドコッカス属細菌菌株において、共通の抗菌特異性(抗菌スペクトル)を持つことが見いだされる場合がある。このように、同様の抗菌スペクトルを示す菌株は、同一の又は非常に類似した抗菌活性物質を生産していることが予測されるため、菌株から抗菌活性物質を単離する場合や微生物防除に用いる場合に共通の方法を用いることができる。
【0018】
得られた抗菌活性を示すロドコッカス属細菌菌株の培養物、該菌株培養物から得た抗菌活性画分及び該菌株培養物から単離精製した抗菌活性物質を、感受性微生物の存在する環境に導入することによって該感受性微生物の防除に用いることができる。
【0019】
本発明において、「培養物」とは、細菌の培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。例えば、抗菌活性を示すロドコッカス属細菌菌株を培養した培養液と細菌の菌株が混合したものをそのまま微生物の防除に用いることができ、また培養上清を遠心分離処理やフィルター処理により得て、微生物の防除に用いることもできる。
【0020】
本発明において、本発明の微生物を培地で培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。放線菌や細菌等の微生物を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。これらの導入の方法は塗布・散布・分散などによって行われるが、何ら限定されるものではない。
【0021】
本発明の微生物防除は後記の表1のソフトアガー重層法で明らかになった感受性菌に対する使用のみではなく、感受性のあるその他の微生物、あるいはそれらの存在する環境に対しても用いることができ、特に限定されるものではない。ある菌が本発明のロドコッカス属細菌菌株の培養物から精製により得られる抗菌活性物質に感受性であるか否かは、上記のソフトアガー重層法その他の方法により確認することができる。
【0022】
本発明の微生物防除は後記の菌株リスト1に記した菌又はその培養物の使用に限定されるものではなく、これらの菌の一部又は全部と一致する抗菌スペクトルを有するその他のロドコッカス株も使用することができる。
【0023】
2. ロドコッカス属の生産する抗菌活性物質
上記で示されたような抗菌活性を有する細菌の培養物で得られる抗菌効果の他に、実際の使用にはそれらが生産する抗菌活性画分を抽出あるいは分離などによって取得し、液体又は固体の抗菌剤として用いることもできる。
本発明において、「抗菌活性画分」とは培養物から抗菌活性物質を含む画分を分離、抽出した物、部分的に精製した物、純物質に精製した抗菌活性物質のいずれをも意味するものである。すなわち、上記培養物を分離、抽出、精製等の処理により得られた抗菌活性を有する成分を含む物ならば、抗菌活性物質の純度に限定されることなく本発明の「抗菌活性画分」に含まれる。上記の「抗菌活性画分」のうち、純物質に精製した抗菌活性物質は、画分中にほぼ該抗菌活性物質のみが含まれる程度まで精製して得られた単離された抗菌活性物質であり、例えば、電気泳動によりほぼ単一のバンドのみ得られるまで精製したもの、またはクロマトグラフィーに供したときにほぼ単一のピークのみ得られるまでに精製したものをいう。その純度は70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。本発明のロドコッカス属細菌菌株の培養物から精製により得られる抗菌活性物質は、例えば、有機溶媒を用いて抽出することができる。具体的には、例えば、菌株菌体破砕物又は菌株の培養上清に有機溶媒を添加し、攪拌し、遠心分離により有機溶媒層を回収し、蒸発乾固することにより乾固物として得ることができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル等を用いることができるが、有機溶媒は酢酸エチルに限られず、抽出に用いることができるどんな有機溶媒又はそれらの混合物も用いることができる。例えば、クロロホルム:メタノールなどを用いることができる。また培養上清を酸やアルカリに合わせてから有機溶媒抽出する方法も用いることができる。たとえば塩酸でpH2〜pH6、好ましくはpH3〜pH5、例えば、pH3、pH4、pH5などに、あるいは水酸化ナトリウムでpH7〜pH11、好ましくはpH8〜pH10、例えばpH8、pH9、pH10などに合わせてから抽出を行うことができる。
【0024】
このようにして得られた有機溶媒抽出物はさらに、精製・純化することができる。たとえば固相抽出法や各種カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離・精製することができる。ここで固相抽出とは、化学結合型シリカゲル、ポーラスポリマー、アルミナ、活性炭等の固定相(固相、吸着剤)を用いながら複雑な組成を有する試料中から特定の目的成分のみを選択的に抽出し、分離・精製を行う手法のことをいい、これにより試料中の夾雑物を除去することができる。本発明の抗菌活性物質は例えば、逆相分配クロマトグラフィー用固定相を用いて精製することができる。逆相クロマトグラフィー用固定相として、オクダデシルシリル基(C18)、オクチル基(C8)、ブチル基(C4)、トリメチル基(C3)、フェニル基(Ph)、ブチル基、トリアコンチル基(C30)、CN基、スチレンジビニルベンゼン共重合体(PS-1、PS-2)等の基を有する充填剤を用いることができ、この中でもオクタデシルシリル基(C18)またはオクチル基(C8)を有する充填剤が好ましい。溶出させる際に用いる溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトニトリル等を好適に用いることができる。この際の溶媒の濃度は、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。固相抽出に使用するカートリッジは、市販品である、シリンジ型固相カートリッジや、ディスク型固相カートリッジを使用することができる。市販のカートリッジタイプのものとして、Sep-Pak(登録商標、Waters社)、Autoprep(登録商標、昭和電工社)、Discovery DSC-18(SUPELCO社)、Discovery DSC-8(SUPELCO社)等が挙げられる。上記の固相抽出により本発明の抗菌活性物質は、75%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の純度で精製することが可能である。このようにして抗菌活性画分又は抗菌活性物質として得ることができ、これを微生物防除に用いることができる。
【0025】
本発明は、さらに抗菌活性を有するロドコッカス属細菌培養物、該細菌由来の抗菌活性を示す抗菌活性画分及び抗菌活性物質の少なくとも1つを有効成分として含む抗菌剤をも包含する。該抗菌剤の剤形は限定されず、液体、固体、ゲル、ゾル等の形態で用いることができる。固体の抗菌剤は、例えば培養物の凍結乾燥品、抽出乾固した画分の乾固物であってもよいし、ゲル状の抗菌剤は、例えば、抗菌活性を有する画分をゲルに混合すればよい。該抗菌剤は、有効成分の他に、水、緩衝液、エタノール等の有機溶媒、防腐剤等を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の抗菌活性を有するロドコッカス属細菌培養物、該細菌由来の抗菌活性を示す抗菌活性画分及び抗菌活性物質は単独で用いてもよいし、組合せて用いてもよい。組合せて用いる場合、混合して混合物として使用することもできるし、混合せずに別々のものとして使用することもできる。後者の場合、異なるロドコッカス属細菌培養物、該細菌由来の抗菌活性を示す抗菌活性画分及び抗菌活性物質を同時に使用することもでき、また時間をおいて使用することもできる。組合せは、培養物同士でも、抗菌活性画分同士でも、抗菌活性物質同士の組合せでもよいし、培養物、抗菌活性画分及び抗菌活性物質の任意の組合わせでもよい。また、同じ抗菌スペクトルを有する菌株同士の組合せで使用してもよいし、異なる抗菌スペクトルを有する菌株同士の組合せでもよい。また、本発明の抗菌剤に抗菌活性を有するロドコッカス属細菌培養物、該細菌由来の抗菌活性を示す抗菌活性画分及び抗菌活性物質を組合せて含ませてもよい。さらに、公知の抗菌剤を含ませてもよい。
【0027】
本発明の抗菌活性を有するロドコッカス属細菌菌株の例を以下の菌株リスト1に示す。
(a) Rhodococcus erythropolis JCM6821
(b) Rhodococcus erythropolis JCM6822
(c) Rhodococcus erythropolis JCM6823
(d) Rhodococcus erythropolis JCM6824
(e) Rhodococcus erythropolis JCM6827
(f) Rhodococcus erythropolis DSM11397***
(g) Rhodococcus erythropolis DSM44522
(h) Rhodococcus globerulus DSM44519
(i) Rhodococcus erythropolis JCM2895
(j) Rhodococcus erythropolis JCM2893
(k) Rhodococcus erythropolis JCM2894
(l) Rhodococcus erythropolis DSM9675
(m) Rhodococcus erythropolis DSM43200
(n) Rhodococcus erythropolis IAM1400
(o) Rhodococcus erythropolis IAM1503
(p) Rhodococcus ruber DSM43338
(q) Rhodococcus rhodnii DSM43336
(r) Rhodococcus zopfii DSM44189
***DSM = Deutsche Sammlung von Mikroorganismen (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)
【0028】
さらに、一例として上記(d)及び(f)の2株のロドコッカスからの抗菌活性画分の抽出法を示す。
【0029】
2−1. (d)株 (= Rhodococcus erythropolis JCM6824)からの抗菌活性画分の抽出
上記(d)株 (= Rhodococcus erythropolis JCM6824)を培養し遠心分離で菌体を沈殿させた後、その上清をメンブランフィルターに通し培養上清として回収する。この培養上清に酢酸エチルを加え良く撹拌した後、遠心分離で酢酸エチル層(上層)と水層(下層)に分離し、酢酸エチル層を回収する。回収した酢酸エチル層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水し、減圧乾固を行う。乾燥物をエタノールで溶かし、この溶液を(d)株抽出物とする。本手法は抗菌スペクトルが一致していた(a)から(e)株に同様に用いることができる。
上記の(d)株抽出物の抗菌活性は、この抽出物をしみ込ませた濾紙(ペーパーディスク)を作成し、これをソフトアガー試験に用いることで確認できる。寒天培地に感受性菌を含むソフトアガーを重層した後、あらかじめ準備したペーパーディスクをその上に置き、培養後の阻止円の形成を観察する。
(d)株抽出物のペーパーディスクを用いた抗菌活性の確認は(d)株に対し最も感受性の高いアルスロバクター(Arthrobacter atrocyaneus IAM12339)を用いることが望ましいがその限りではない。
【0030】
2−2.(f)株 (= Rhodococcus erythropolis DSM11397)からの抗菌活性画分の抽出
上記(f)株 (= Rhodococcus erythropolis DSM11397)を培養し遠心分離で菌体を沈殿させた後、その上清をメンブランフィルターに通し培養濾液として回収する。この培養濾液に飽和量の塩化ナトリウムと酢酸エチルを加え良く撹拌した後、遠心分離で酢酸エチル層(上層)と水層(下層)に分離し、酢酸エチル層を回収する。回収した酢酸エチル層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水し、減圧乾固を行う。乾燥物をエタノールで溶かし、この溶液を(f)株抽出物とする。本手法は抗菌スペクトルが一致していた(f)から(h)株に同様に用いることができる。
上記の(f)株抽出物の抗菌活性は、上記(d)株抽出物の抗菌活性と同様に試験することができる。
【0031】
本発明の(d)、(f)株からの抗菌活性画分の抽出法はこれらの菌に限定されるものではなく、どんな抗菌活性を有するロドコッカスに用いても良い。
【0032】
本発明の抗菌活性を有するロドコッカス属細菌培養物、該細菌由来の抗菌活性を示す抗菌活性画分若しくは抗菌活性物質、又はそれらを含む抗菌剤は感受性微生物の存在する環境又は存在が疑われる環境に導入することによって微生物防除に用いることができる。これらの導入は塗布・散布・分散などによって行われるが、何ら限定されるものではない。導入量も、感受性微生物の存在量や感受性微生物が存在する環境の大きさにより適宜設定することができる。
【0033】
本発明の抗菌活性画分は菌株リスト1に示した菌株からの抗菌活性画分に限定されるものではなく、これらの菌の一部又は全部と一致する抗菌スペクトルを有するその他のロドコッカス菌株からの抗菌活性画分も含み、さらにその使用も本発明に含まれる。
【実施例】
【0034】
以下、実験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。以下の実施例において使用した大部分の試薬、培地成分は和光純薬、シグマ、及びDifco製の製品を用いた。
【0035】
培養培地としては、LB培地(トリプトン10 g、イーストエキストラクト5 g、塩化ナトリウム5 g / 1L)を用いて、28℃にて培養した。固形培地に関しては、1.6%寒天粉末を添加し、ソフトアガー重層法に用いる培地には0.5%寒天粉末を添加した。また無機培地(最少培地)としてW培地(KH2PO4 0.85 g、Na2HPO4・12H2O 4.90 g、(NH4)2SO4 0.50 g、MgSO4・7H2O 0.10 g、FeSO4・7H2O 0.0095 g、MgO 0.01075 g、CaCO30.002 g、ZnSO4・7H2O 0.00144 g、MnSO4・4H2O 0.00112 g、CuSO4・5H2O 0.00025 g、CoSO4・5H2O 0.00028 g、 H3BO3 0.00006 g、Conc. HCl 0.0513 ml / 1L)を使用した。
【0036】
(実施例1)
新規の抗菌活性ロドコッカスを得るため、ソフトアガー重層法で用いる被験菌は以下に示す11株の微生物を用いた。
被験菌として用いた菌株
Escherichia coli IAM1264*
Pseudomonas putida IAM1236
Sinorhizobium meliloti IAM12611
Acinetobacter calcoaceticus IAM12087
(以上グラム染色陰性細菌)
Bacillus subtilis IAM12118
Streptomyces griseus IAM12311
Arthrobacter atrocyaneus IAM12339
Corynebacterium glutamicum IAM12435
Rhodococcus erythropolis IAM12122 (基準菌株)
Rhodococcus rhodocurous JCM3202**
(以上グラム染色陽性細菌)
Saccharomyces cerevisiae IAM14383
(以上真菌)
*IAM = Institute of Applied Microbiology (東京大学)
**JCM = Japan Collection of Microorganisms (理化学研究所)
【0037】
総計85株のロドコッカス属細菌を用い、上記の11株の被験菌それぞれに対しソフトアガー重層法によって抗菌活性を調べた。その結果少なくともいずれか1つの被験菌に対し生育阻止円を形成させる株、計18株を見いだすに至った。以下に抗菌活性を示した18株のロドコッカス属を示す。これらは全て抗菌活性を有する株として新規に報告されるものである。
【0038】
抗菌活性を示した18株(a)から(r)のロドコッカス株(菌株リスト1)
(a) Rhodococcus erythropolis JCM6821
(b) Rhodococcus erythropolis JCM6822
(c) Rhodococcus erythropolis JCM6823
(d) Rhodococcus erythropolis JCM6824
(e) Rhodococcus erythropolis JCM6827
(f) Rhodococcus erythropolis DSM11397***
(g) Rhodococcus erythropolis DSM44522
(h) Rhodococcus globerulus DSM44519
(i) Rhodococcus erythropolis JCM2895
(j) Rhodococcus erythropolis JCM2893
(k) Rhodococcus erythropolis JCM2894
(l) Rhodococcus erythropolis DSM9675
(m) Rhodococcus erythropolis DSM43200
(n) Rhodococcus erythropolis IAM1400
(o) Rhodococcus erythropolis IAM1503
(p) Rhodococcus ruber DSM43338
(q) Rhodococcus rhodnii DSM43336
(r) Rhodococcus zopfii DSM44189
***DSM = Deutsche Sammlung von Mikroorganismen (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)
【0039】
見いだされた抗菌活性ロドコッカス(a)から(r)の各被験菌に対する効果を表1に示す。阻止円を形成したものを+ (プラス)、阻止円を形成しなかったものを- (マイナス)で表す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるようにいくつかのロドコッカスにおいて、共通の抗菌特異性(抗菌スペクトル)を持つことが見いだされる。すなわち(a)から(e)の5株、(f)から(h)の3株、また(i)から(o)の7株はそれぞれ同様の抗菌スペクトルを示し、同一の又は非常に類似した抗菌活性物質を生産していることが予測されるため、菌株から抗菌活性物質を単離する場合や微生物防除に用いる場合に共通の方法を用いることができる。
【0042】
(実施例2)
ロドコッカス菌体を用いた抗菌活性の取得。菌株リスト1の(d)株(= Rhodococcus erythropolis JCM6824)を用いた実施例を以下に示す。
LB寒天培地にあらかじめ(d)株を植菌し、1〜3日培養してコロニーを形成させておく。感受性菌(例えばArthrobacter atrocyaneus IAM12339)を1×106 〜 1×107 CFU / mlとなるように35℃程度に冷やしたソフトアガーに懸濁し、この5 mlを(d)株が生育したシャーレ(直径9 cm)に重層する。
【0043】
感受性菌を重層したシャーレを28℃で1〜2日培養後、(d)株周辺に感受性株が生育できない生育阻止円を確認することができた。また、新しいシャーレに先に感受性菌を含むソフトアガーを重層し、その上に後から(d)株を植菌(寒天培地上のコロニーの移植、あるいは液体培養した菌液の滴下)することでも生育阻止円を確認することができた(図1)。
【0044】
上記のソフトアガーを用いた感受性微生物に対する抗菌効果(阻止円の形成)は菌株リスト1に示したいずれの抗菌活性ロドコッカスにおいても確認された。阻止円の大きさはそれぞれのロドコッカス、感受性菌、その組み合わせにより様々であるが、直径2〜10 mm程度のロドコッカスコロニーに対し、阻止円の直径は2.5〜30 mm程度であった。
【0045】
菌株リスト1に示した各ロドコッカス株それぞれの抗菌スペクトルをさらに詳細に調べるため、以下の菌株リスト2に示した52株を被験菌としてソフトアガー重層試験に用い、生育阻止円の形成について調べた。リスト中の[32][36]はそれぞれじゃがいもそうか病菌、スイートピー帯化病菌の一種である。
【0046】
ロドコッカスの抗菌スペクトルを調べるために用いた52菌株(菌株リスト2)
[01] Acetobacter aceti IAM14349
[02] Sphingomonas paucimobilis IAM12576
[03] Sinorhizobium meliloti IAM12611
[04] Bradyrhizobium japonicum IAM12608
[05] Paracoccus aminovorans IAM14244
(以上phylum Proteobacteria, class Alphaproteobacteria)
[06] Comamonas testosteroni IAM12419
[07] Achromobacter denitrificans IAM12370
[08] Alcaligenes faecalis IAM12586
[09] Ralstonia eutropha IAM12368
[10] Microvirgula aerodenitrificans IAM14991
[11] Thauera linaloolentis IAM15112
(以上phylum Proteobacteria, class Betaproteobacteria)
[12] Pseudomonas putida IAM1236
[13] Escherichia coli IAM1264
[14] Acinetobacter calcoaceticus IAM12087
[15] Alteromonas macleodii IAM12920
[16] Stenotrophomonas maltophilia IAM12423
(以上phylum Proteobacteria, class Gammaproteobacteria)
[17] Sphingobacterium multivorum IAM14316
[18] Flavobacterium saccharophilum IAM14309
(以上phylum Bacteroidetes)
[19] Deinococcus grandis IAM13005
(以上phylum Deinococcus-Thermus)
[20] Bacillus subtilis IAM12118
[21] Paenibacillus polymyxa IAM13419
[22] Planococcus citreus IAM12541
[23] Sporolactobacillus nakayamae subsp. Nakayamae IAM12388
(以上phylum Firmicutes)
[24] Arthrobacter atrocyaneus IAM12339
[25] Corynebacterium glutamicum IAM12435
[26] Janibacter terrae IAM14781
[27] Micrococcus luteus IAM1056
[28] Mycobacterium smegmatis IAM12065
[29] Nocardia pseudosporangifera IAM501
[30] Nocardioides jensenii IAM112581
[31] Streptomyces griseus IAM12311
[32] Streptomyces scabiei JCM7914 (じゃがいもそうか病菌の一種)
[33] Terrabacter tumescens IAM12345
[34] Dietzia psychroalcalophilus IAM14896
[35] Micromonospora chalcea IAM14285
(以上phylum Actinobacteria)
[36] Rhodococcus fascians JCM10002 (スイートピー帯化病菌の一種)
[37] Rhodococcus rhodocurous JCM3202
[38] Rhodococcus opacus DSM44193
[39] Rhodococcus coprophilus DSM43591
[40] Rhodococcus percolatus DSM44240
[41] Rhodococcus pyridinivorans DSM44555
[42] Rhodococcus baikonurensis DSM44587
[43] Rhodococcus aetherivorans DSM44752
[44] Rhodococcus erythroplois JCM3191
[45] Rhodococcus erythroplois IAM12122 T(Type strain = 基準菌株)
[46] Rhodococcus erythroplois IAM1399
[47] Rhodococcus erythroplois JCM6825
[48] Rhodococcus erythroplois IAM1414
[49] Rhodococcus erythroplois JCM3011
[50] Rhodococcus erythroplois DSM7373
[51] Rhodococcus erythroplois DSM20665
(以上phylum Actinobacteria, genus Rhodococcus)
[52] Saccharomyces cerevisiae IAM14383
(以上真菌)
【0047】
本発明において見いだされた抗菌活性ロドコッカス18株(菌株リスト1、(a)から(r))を用い被験菌52株(菌株リスト2、[01]から[52])に対する抗菌活性(生育阻止円形成)試験をした結果を表2〜5に示す。観察された抗菌活性はその阻止円幅 (Rhodococcusコロニーの縁から阻止円の最外部の距離)と透明度でそのタイプを区別し、阻止円幅1 mm未満を+、1 mm以上3 mm未満を++、3 mm以上を+++として、また濁った阻止円(完全な生育阻止ではなく円内に弱く被験菌の生育が見られるもの)をT(=turbid)として評価した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
上記の様にそれぞれのロドコッカス株の抗菌スペクトルが示されたが、微生物防除としては表2〜5で感受性を示した細菌株に加え、それらと進化的に近縁な微生物に対して有効に用いることができると考えられる。
【0053】
ソフトアガー重層法の試験結果から、共通の抗菌スペクトルを示す菌株群を見いだすことができた。すなわち菌株リスト1の(a)から(e)株(グループ1とする)は広くグラム染色陽性細菌に対して抗菌スペクトルを有し、(f)から(h)株(グループ2とする)は主としてロドコッカス、ノカルジア(Nocardia)に属する菌、またファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌スペクトルを有し、また(i)から(o)株(グループ3とする)は主としてロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)に対する抗菌スペクトルを有していた。
【0054】
次に抗菌活性を持つロドコッカス株同士での阻止円形成試験を行った。この結果を表6に示した(縦軸の抗菌活性菌に対し、横軸の菌を被験菌としてソフトアガーで重層した)。
【0055】
【表6】

【0056】
表6の阻止円形成試験の結果、グループ1-3で示されたロドコッカスはそれぞれ同じグループの菌に対し、阻止円を形成しないことが明らかになった。すなわち、(a)から(e)の各株間、(f)から(h)の各株間、また(i)から(o)の各株間では抗菌活性を示さず、互いに干渉しないという結果であった(表6の太枠部)。これらの株は抗菌スペクトルの共通性から、また互いの生育に干渉しないという結果から、グループ内の菌では同一又は機能的に類似した抗菌活性物質を持ち、それに対応する防御系を持ち、更にそれらの機能に関わる同一又は相同性の高い遺伝子を持っていると考えられる。これらのことから、同一グループ内の抗菌活性培養物・菌・抗菌活性画分は、同様の方法で調製し微生物防除に使用することができる。
【0057】
(実施例3)
ロドコッカス培養物からの抗菌活性画分の抽出法。菌株リスト1の(d)株(= Rhodococcus erythropolis JCM6824)を用いた実施例を以下に示す。
(少容量のLB培地からの抽出)
(d)株からの抗菌活性抽出物を以下の手順で調製した。
1) 50 mlのLB液体培地に(d)株を植菌し、28℃で48〜72時間振盪培養した。培養中に増殖した菌が分散せずに菌塊を形成し、菌濃度が上がらない場合はガラスビーズ(粒径2〜5 mm)を培養チューブに入れ、菌塊がほぐせるように培養した。
2) 培養後の菌液を遠心分離し(室温、3,000 rpm、10分)、上清を孔経0.2μmのシリンジフィルターに通して菌体を除去し、新しい50 mlチューブに培養上清として回収した。
3) 40 mlの培養上清に10 mlの酢酸エチルを加え、ボルテックスミキサーを用いて5分間激しく撹拌、遠心分離し(室温、3,000 rpm、10分)、酢酸エチル層を新しいチューブに回収した。
4) 回収した酢酸エチルに0.4 gの無水硫酸ナトリウムを加え、ボルテックスミキサーを用いて5分間激しく撹拌して脱水し、抽出酢酸エチルとして回収した。
5) 抽出酢酸エチルをガラスチューブに移し、減圧乾燥機を用いて蒸発乾固し、乾固物を400μlのエタノールに再溶解し、(d)株抽出液(LB)とした。
【0058】
(大容量のW培地からの抽出)
(d)株からの抗菌活性抽出物を以下の手順で調製した。
1) 炭素源としてコハク酸、シュークロース、カザミノ酸をそれぞれ0.1% (w/v)、またチアミン0.002% (w/v)を加えた1,200 mlのW液体培地に (d)株を植菌し、28℃で72〜96時間振盪培養した。培養は2リットルのバッフル付き三角フラスコ2本に分注して行った。
2) 培養後の菌液を遠心分離し(室温、3,000 rpm、10分)、上清を孔経0.2μmのボトルトップフィルターに通して菌体を除去し、培養上清として回収した。
3) 1,200 mlの培養上清を2 l容のガラス瓶に移し、300 mlの酢酸エチルを加え、スターラーを用いて2時間激しく撹拌後4時間静置し、上層を遠心分離して(室温、3,000 rpm、10分)酢酸エチル層を新しい50 mlチューブに分注回収した。
4) 回収した酢酸エチル50 mlあたりに2 gの無水硫酸ナトリウムを加え、激しく撹拌して脱水し、抽出酢酸エチルとして回収した。
5) 抽出酢酸エチルをガラスチューブに移し、減圧乾燥機を用いて蒸発乾固し、乾固物を計6 ml のエタノールに再溶解し、(d)株抽出液(W)とした。
上記2通りの(d)株からの抽出法は同じ抗菌スペクトルを示したグループ1の(a)から(e)株に、またグループ2の(f)から(h)株全てに用いることができた。
上記2通りの(d)株からの抽出法は、グループ2の(f)から(h)株に用いる場合、培養上清に酢酸エチルを加える前に飽和量の塩化ナトリウムを加えること、また培養上清のpHを8〜10に調節することによって更に効果的に抽出を行うことができた。
【0059】
(実施例4)
抗菌活性画分の使用法。上記(d)株抽出液(LB)、(d)株抽出液(W)、を用いた実施例を以下に示す。
(d)株抽出液(LB)及び(d)株抽出液(W)の抗菌活性の検出は以下の手順で行った。
1) 直径7 mmの濾紙でできたペーパーディスクに5〜20μlの抽出液を染みこませ、十分に乾燥させてエタノールを除去した。
2) 感受性菌(Arthrobacter atrocyaneus IAM12339又はRhodococcus erythropolis IAM12122)を1×106 〜 1×107 CFU / mlとなるように35℃程度に冷やしたソフトアガーに懸濁し、この5 mlを新しいLB寒天培地のシャーレ(直径9 cm)に重層した。
3) ソフトアガーが固まった後、1)で準備したペーパーディスクをその上に置いた。
4) 28℃で1〜2日培養し、ペーパーディスクの周りの阻止円を確認した(図2)。
上記(d)株抽出物の使用は菌株リスト1の(a)から(h)株(グループ1、2)からの全ての抽出物について行うことができた。
エタノールに溶解した(d)株抽出物は4℃の冷蔵庫で少なくとも6ヶ月以上の期間安定に保存することができた。
【0060】
(実施例5)
(d)株抽出物のカラム精製を行った実施例を以下に示す。
上記実施例2で調製した(d)株抽出液(W)のカラム精製を以下の手順で行った。カラムはWaters社のSep-Pakメソッド開発キットKを用いた。
1) 2 mlの100% エタノールをカラムに通し、コンディショニングを行った。
2) 2 mlの20% エタノールをカラムに通し、平衡化を行った。
3) 2 mlの20% エタノールに調製したサンプルをカラムにロードした。
4) 2 mlの20% エタノールをカラムに通し、洗浄した。
5) 0.4 mlの50%又は100%エタノールで溶出し、カラム精製産物とした。
上記のエタノール(EtOH)溶出をメタノール(MeOH)、アセトニトリル(CH3CN)に変更したコンディションも試験した。
カラム精製産物の抗菌活性を上記実施例3のペーパーディスクを用いた方法で測定し、結果を表7に示した。
【0061】
【表7】

【0062】
表7に示したカラム精製物の抗菌活性試験の結果、カラム充填剤としてC8、C18、PS-2を用い、100% エタノールで溶出した場合、精製前と同様の活性が得られることが示され、このような条件で(d)株の抗菌活性物質の精製が可能であることが示された。またこの条件はHPLCを用いた精製に用いることができる。
【0063】
(実施例6)
寒天培地から得られる抗菌活性の検出。菌株リスト1の(i)から(o)株(グループ3)の培養液からは、酢酸エチルによる抽出で抗菌活性を再確認できなかった。このことからこれらの株の生産する抗菌活性物質が酢酸エチルに溶解しない(抽出されない)、あるいは酢酸エチルで変性する性質であることが考えられる。そこで(i)株を用い、LB寒天培地から得られる抗菌活性を確認した。
1) LB寒天培地に11 mm幅になるように縦横格子状に(i)株を植菌し、25℃で48時間培養した。
2) 生育した菌に囲まれた菌の無い部分を7 mm角で切り出し、ゲルチップとした。
3) 感受性菌(Rhodococcus erythropolis IAM12122)を1×106 〜 1×107 CFU / mlとなるように35℃程度に冷やしたソフトアガーに懸濁し、この5 mlを新しいLB寒天培地のシャーレ(直径9 cm)に重層した。
4) ソフトアガーが固まった後、2)で準備したゲルチップをその上に置いた。
5) 25℃で1〜2日培養し、ゲルチップの周りの阻止円を確認した(図3)。
【0064】
上記のゲルチップ法を用いて生育阻止円、すなわち抗菌活性を確認することができた。本手法は(i)株のみではなく、グループ3の(i)から(o)株いずれの株においても用いることができた。また菌株リスト1に示す全ての株でも用いることができた。
【0065】
菌株リスト1の(i)から(o)株(グループ3)から得たLB培養のゲルチップは25℃以上の温度で保存するとその抗菌活性を失ったが4℃以下では活性が保持されており、冷蔵や冷凍で少なくとも1週間保存ができた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(d)株(= Rhodococcus erythropolis JCM6824)の抗菌活性によって形成されたArthrobacter atrocyaneus IAM12339 の生育阻止円を表す図である。
【図2】ペーパーディスクに含ませた(d)株抽出液の抗菌活性によって形成されたArthrobacter atrocyaneus IAM12339 の生育阻止円を表す図である。
【図3】(i)株のゲルチップの抗菌活性によって形成されたRhodococcus erythropolis IAM12122の生育阻止円を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質。
(a) Rhodococcus erythropolis JCM6821
(b) Rhodococcus erythropolis JCM6822
(c) Rhodococcus erythropolis JCM6823
(d) Rhodococcus erythropolis JCM6824
(e) Rhodococcus erythropolis JCM6827
(f) Rhodococcus erythropolis DSM11397
(g) Rhodococcus erythropolis DSM44522
(h) Rhodococcus globerulus DSM44519
(i) Rhodococcus erythropolis JCM2895
(j) Rhodococcus erythropolis JCM2893
(k) Rhodococcus erythropolis JCM2894
(l) Rhodococcus erythropolis DSM9675
(m) Rhodococcus erythropolis DSM43200
(n) Rhodococcus erythropolis IAM1400
(o) Rhodococcus erythropolis IAM1503
(p) Rhodococcus ruber DSM43338
(q) Rhodococcus rhodnii DSM43336
(r) Rhodococcus zopfii DSM44189
【請求項2】
請求項1の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、グラム染色陽性細菌(phylum Actinobacteria、phylum Firmicutes)に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項3】
請求項1の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、じゃがいもそうか病菌に対し抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項4】
請求項1の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、スイートピー帯化病菌に対し抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項5】
請求項1の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項6】
請求項1の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項7】
請求項1の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項8】
請求項1の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項9】
請求項1の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から精製により得られる抗菌活性物質であって、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌作用を持つ抗菌活性物質。
【請求項10】
ロドコッカス属細菌菌株からの精製が有機溶媒による抽出及び逆相クロマトグラフィー用固定相を用いた固相抽出により行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗菌活性物質。
【請求項11】
有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出であり、固相抽出の移動相がエタノール又はメタノールである請求項10記載の抗菌活性物質。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗菌活性物質の少なくとも1つを有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項13】
請求項1に記載の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物からの分離により得られる抗菌活性画分。
【請求項14】
請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物からの分離により得られるじゃがいもそうか病菌に対して抗菌活性を示す抗菌活性画分。
【請求項15】
請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られるスイートピー帯化病菌に対して抗菌活性を示す抗菌活性画分。
【請求項16】
請求項1の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【請求項17】
請求項1の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【請求項18】
請求項1の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【請求項19】
請求項1の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【請求項20】
請求項1の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株を培養し、該細菌の培養物から分離により得られる抗菌活性画分であって、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌作用を示す抗菌活性画分。
【請求項21】
ロドコッカス属細菌菌株からの分離が有機溶媒による抽出により行われる請求項13〜20のいずれか1項に記載の抗菌活性画分。
【請求項22】
有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出である請求項21記載の抗菌活性画分。
【請求項23】
請求項13〜22のいずれか1項に記載の抗菌活性画分の少なくとも1つを有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項24】
請求項1に記載の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項25】
請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有するじゃがいもそうか病菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項26】
請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有するスイートピー帯化病菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項27】
請求項1の(f)から(h)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともロドコッカス及びノカルジア(Nocardia)に属する菌並びにファーミキューテス(phylum Firmicutes)に分類される菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項28】
請求項1の(i)から(o)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともロドコッカス・エリスロポリスに対する抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項29】
請求項1の(p)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともシノリゾビウム(Sinorhizobium)及びアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項30】
請求項1の(q)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくともアルスロバクター(Arthrobacter)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項31】
請求項1の(r)に示されるロドコッカス属細菌菌株の培養物を有効成分として含有する、少なくとも大腸菌(Escherichia)に属する菌に対して抗菌活性を示す抗菌剤。
【請求項32】
請求項1の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該菌株の培養物から抗菌活性を有する物質を精製することを特徴とするロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
【請求項33】
ロドコッカス属細菌菌株からの精製が有機溶媒による抽出及び逆相クロマトグラフィー用固定相を用いた固相抽出により行われる請求項32に記載のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
【請求項34】
有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出であり、固相抽出の移動相がエタノール又はメタノールである請求項33記載のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性物質製造法。
【請求項35】
請求項1の(a)から(r)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株を培養し、該菌株の培養物から抗菌活性を有する画分を分離することを特徴とするロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
【請求項36】
ロドコッカス属細菌菌株からの分離が有機溶媒による抽出により行われる請求項35に記載のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
【請求項37】
有機溶媒による抽出が酢酸エチルによる抽出である請求項36記載のロドコッカス属細菌菌株由来の抗菌活性画分の製造法。
【請求項38】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗菌活性物質、請求項13〜22のいずれか1項に記載の抗菌活性画分並びに請求項12、23〜31のいずれか1項に記載の抗菌剤からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は抗菌剤の少なくとも1つを有効成分として用い、抗菌作用を得ることを特徴とする微生物防除の方法。
【請求項39】
請求項38記載の微生物防除の方法であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗菌活性物質、請求項13〜22のいずれか1項に記載の抗菌活性画分並びに請求項12、23〜31のいずれか1項に記載の抗菌剤からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は抗菌剤の複数を組合せて用いることを特徴とする微生物防除の方法。
【請求項40】
請求項3に記載の抗菌活性物質、請求項14に記載の抗菌活性画分及び請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の少なくとも1つを有効成分として用いることを特徴とする、じゃがいもそうか病菌防除の方法。
【請求項41】
請求項3に記載の抗菌活性物質、請求項14に記載の抗菌活性画分及び請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の複数を組合せて用いることを特徴とする、じゃがいもそうか病菌防除の方法。
【請求項42】
請求項4に記載の抗菌活性物質、請求項15に記載の抗菌活性画分及び請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の少なくとも1つを有効成分として用いることを特徴とする、スイートピー帯化病菌防除の方法。
【請求項43】
請求項4に記載の抗菌活性物質、請求項15に記載の抗菌活性画分及び請求項1に記載の(a)から(e)に示されるいずれかのロドコッカス属細菌菌株の培養物からなる群から選択される抗菌活性物質、抗菌活性画分又は培養物の複数を組合せて用いる及びことを特徴とする、スイートピー帯化病菌防除の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−231023(P2008−231023A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72535(P2007−72535)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】