説明

ロボットの手首装置

【課題】ロボットの手を駆動させるための配線や配管の長さを短縮するとともに、当該配線または配管の破損等を防止することができるロボットの手首装置を提供する。
【解決手段】下腕部10の先端側に設けられた手首部20を備え、先端に手部30が接続されるロボットの手首装置1であって、手首部20が、第1軸を中心に回転駆動する第1駆動源21と、第1駆動源21の回転駆動に合わせて回動する第1フレーム22と、中空部25aを有する力覚センサ25と、中空部25a内に配置され、一端側に第1開口部26aを有し、他端側に第2開口部26bを有し、配線・配管WPが配設される筒状の配線・配管支持部材26とを備え、配線または配管WPが、第1駆動源21の周囲の外径に沿って取り回しされ、配線・配管支持部材26の第1開口部26aおよび第2開口部26bに結束部材29を介して係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの手首装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットの手首構造として、力覚センサを搭載したものが知られている。例えば特許文献1では、一対の把持片および当該一対の把持片を駆動させる複動シリンダが設けられた第1部材と、第2部材との間であって、人間の手首に相当する位置に力覚センサが設けられた手首構造が提案されている。また、特許文献1には、前記した複動シリンダに油圧を伝達するための管体が、力覚センサの外部に配設された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−13114号公報(第1図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案された手首構造は、油圧伝達のための管体が力覚センサを迂回するように外部に配設されているため、管体が無駄に長くなるという問題があった。また、特許文献1で提案された手首構造は、管体が力覚センサの外部に露出して配設されているため、手首の動作によって管体が破損または切断される可能性があった。
【0005】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、ロボットの手を駆動させるための配線や配管の長さを短縮するとともに、当該配線または配管の破損等を防止することができるロボットの手首装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係るロボットの手首装置は、下腕部と、当該下腕部の先端に設けられた手首部とを備え、先端に手部が接続されるロボットの手首装置であって、前記手首部が、第1軸を中心に回転駆動する第1駆動源と、前記第1駆動源の回転駆動に合わせて回動する第1フレームと、一端側が前記第1フレームの先端に接続されるとともに、他端側が前記手部に接続され、前記一端側と前記他端側とを連通する中空部を有する力覚センサと、前記力覚センサの前記中空部内に配置され、一端側に第1開口部を有し、他端側に第2開口部を有する筒状の配線・配管支持部材と、前記配線・配管支持部材の内部に配設される配線または配管と、を備え、前記配線または配管が、前記第1駆動源の周囲の外径に沿って取り回しされ、かつ、前記配線・配管支持部材の前記第1開口部および前記第2開口部に結束部材を介して係止されている構成とした。
【0007】
このような構成を備えるロボットの手首装置は、力覚センサに中空部を設け、当該中空部内に配線または配管を通すことで、先端に接続されたロボットの手部を駆動させるための配線または配管を最短距離で配設することができる。また、ロボットの手首装置は、前記した中空部内に配線または配管を通すことで、当該配線または配管を外部に露出させずに配設することができるため、手首装置の動作による破損または切断を防止することができる。また、ロボットの手首装置は、力覚センサの中空部内に配線・配管支持部材を配置し、当該配線・配管支持部材に配線または配管を係止することで、手首装置の動作に伴って、力覚センサの中空部内で配線または配管が動く(摺動する)ことを防止することができる。
【0008】
また、本発明に係るロボットの手首装置は、前記手首部が、前記第1駆動源を内部に収容して支持する筒状の第2フレームを備え、前記第1駆動源と前記第2フレームの内周面との間に、前記配線または配管が配設される円環状の配線・配管路が形成され、前記配線または配管が、前記配線・配管路における円環の上側および下側に分岐されて配設されることが好ましい。
【0009】
このような構成を備えるロボットの手首装置は、配線または配管が、配線・配管路における円環の上側および下側に分岐されて配設されるため、手首部内部のスペースを最大限、効率よく利用することができる。
【0010】
また、本発明に係るロボットの手首装置は、前記下腕部が、前記第1軸と直交する第2軸を中心に回転駆動する第2駆動源と、前記第2駆動源と前記第2フレームとを接続し、前記第2駆動源の駆動力を前記第2フレームに伝達する手首リンクと、を備え、前記配線または配管が、前記第2駆動源の周囲の外径に沿って取り回しされていることが好ましい。
【0011】
このような構成を備えるロボットの手首装置は、配線または配管を第2駆動源の周囲に沿って配設することで、配線または配管の長さを極力短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るロボットの手首装置によれば、ロボットの手部を駆動させるための配線または配管の長さを極力短縮することができるとともに、当該配線または配管の破損等を防止することができる。また、本発明に係るロボットの手首装置によれば、力覚センサに中空部を設け、当該中空部内に配線または配管を配設した場合であっても、当該中空部内で配線または配管が動くことを防止することができるため、当該配線または配管の摺動によって不要な干渉値が発生し、当該干渉値が力覚センサの検出値に悪影響を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットの手首装置の全体構成を示す斜視図であって、下腕部および手首部の一部を切り欠いて示す斜視断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロボットの手首装置が備える力覚センサの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロボットの手首装置が備える配線・配管支持部材の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロボットの手首装置が備える配線・配管支持部材内に配線・配管を配設した状態を示す概略図であって、力覚センサ、配線・配管支持部材および配線・配管等を側面から見た断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るロボットの手首装置が備える配線・配管支持部材内に配線・配管を配設した状態を示す概略図であって、(a)は、配線・配管支持部材および配線・配管等を手部側から見た断面図、(b)は、配線・配管支持部材および配線・配管等を下腕側から見た断面図、である。
【図6】ロボットの手首装置の効果を示す概略図であって、(a)は、配線・配管支持部材を備えない手首装置の動作を示す断面図、(b)は、配線・配管支持部材を備える本発明に係る手首装置の動作を示す断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るロボットの手首装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、各実施形態について、同一の構成については同一の名称及び符号を付し、詳細説明を適宜省略する。また、以下で参照する図面では、説明の便宜上、部材の大きさや形状を誇張、あるいは一部の構成の描写を省略している場合がある。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るロボットの手首装置1について、図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。手首装置1は、人間の手首を模倣した装置であり、物をつかみ、持ち上げ、または運ぶためのものである。手首装置1は、図示を省略した自律移動型の2足移動ロボットの腕部に配置され、例えばロボットの胸部等に配置されたメイン制御部から入力される制御信号に従って、各部材の動作を制御する。ロボットの手首装置1は、ここでは図1に示すように、下腕部10と、手首部20と、手部30と、を備えている。
【0016】
下腕部10は、人間の下腕に相当するものである。下腕部10は、図示を省略した上腕部の先端に設けられている。なお、図1では、手首部20付近における下腕部10の一部のみを図示し、その他の構成は図示を省略している。下腕部10は、図1に示すように、下腕フレーム部11と、第2駆動源12と、手首リンク13と、フレーム支持部14と、配線・配管通路部材16と、を備えている。
【0017】
下腕フレーム部11は、下腕部10の基材となるものである。下腕フレーム部11は、図1に示すように、下腕部10内の部材を包み込むような筒型の形状に形成される。下腕フレーム部11の上部は、図1に示すように、締結部材Bによって、後記する手首リンク13と締結されて固定されている。また、下腕フレーム部11の下部には、図1に示すように、手部30側に延出する延出部11aが形成されている。そして、この延出部11aの先端は、図1に示すように、締結部材Bによって、後記する第2フレーム23と回動自在に締結されている。また、下腕フレーム部11の内部には、図1に示すように、第2駆動源12と、配線・配管通路部材16と、が配置されている。
【0018】
第2駆動源12は、手首部20および手部30を、ヨー軸を中心に(ヨー軸回りに)回転駆動するものである。なお、本発明では、このヨー軸を「第2軸」と定義する。第2駆動源12の上部は、図1に示すように、締結部材Bによって、手首リンク13と締結されて固定されている。また、第2駆動源12の下部は、図1に示すように、図示を省略した締結部材によって、下腕フレーム部11と締結されて固定されている。そして、第2駆動源12の手首部20側に位置する一端側は、図1に示すように、図示を省略した締結部材によって、フレーム支持部14と締結されて固定されている。このような構成を備える第2駆動源12を駆動させると、手首リンク13を介して手首部20に駆動力が伝達され、手首部20および手部30がヨー軸回りに回動する。
【0019】
手首リンク13は、第2駆動源12と手首部20とを連結し、第2駆動源12の駆動力を手首部20に伝達するものである。手首リンク13は、図1に示すように、締結部材Bによって下腕フレーム部11の上部と締結されているとともに、締結部材Bによって第2駆動源12の上部と締結されている。また、手首リンク13の先端は、図1に示すように、締結部材Bによって、後記する第2フレーム23と回動自在に締結されている。
【0020】
フレーム支持部14は、手首部20の第1フレーム22を支持するものである。フレーム支持部14は、ここでは図示は省略してものの、Y字状に形成される。フレーム支持部14の手首部20側に位置する一端側は、図1に示すように、締結部材Bによって、後記する第1フレーム22と締結されている。また、フレーム支持部14の下腕部10側に位置する他端側は、図示しない締結部材によって、第2駆動源12と締結される。このような構成を備えるフレーム支持部14は、第2駆動源12の駆動に伴って、第1フレーム22とともにヨー軸を中心に回動する。
【0021】
配線・配管通路部材16は、ロボットの本体および上腕部(図示省略)からの配線・配管WPが内部に配設されるものである。ここで、配線・配管WPにおける配線とは、例えば手部30内に設けられたアクチュエータ等(図示省略)の駆動を制御するための制御信号を伝達するものであり、配管とは、手部30内に設けられたシリンダ(図示省略)に油圧を伝達するものである。この配線・配管WPは、図1に示すように、ロボットの本体および上腕部(図示省略)から配線・配管通路部材16を通って下腕部10内に引き込まれ、後記するように、第2駆動源12の周囲の外径(すなわち第2駆動源12の外周)に沿って取り回しされるとともに、第1駆動源21の周囲の外径(すなわち第1駆動源21の外周)に沿って取り回しされる(図6(b)参照)。そして、配線・配管WPは、図1に示すように、配線・配管支持部材26の内部に引き込まれ、手部30内に設けられたアクチュエータやシリンダに接続される。このように、手首装置1は、配線・配管WPを第1駆動源21および第2駆動源12の周囲に沿って配設することで、配線・配管WPの長さを極力短縮することができる。
【0022】
手首部20は、人間の手首に相当するものである。手首部20は、図1に示すように、下腕部10の先端に設けられる。手首部20は、図1に示すように、第1駆動源21と、第1フレーム22と、第2フレーム23と、配線・配管路24と、力覚センサ25と、配線・配管支持部材26と、を備えている。
【0023】
第1駆動源21は、手部30を、ピッチ軸を中心に(ピッチ軸回りに)回転駆動するものである。なお、本発明では、このピッチ軸を「第1軸」と定義する。この第1軸は、第2軸と互いに直交する軸である。第1駆動源21は、図1に示すように、第2フレーム23の内部に収容され、第1フレーム22と回動自在に締結されている。このような構成を備える第1駆動源21を駆動すると、第1フレーム22、力覚センサ25および手部30がピッチ軸回りに回動する。
【0024】
第1フレーム22は、手首部20の最外部に露出する基材である。第1フレーム22は、ここでは図示は省略したものの、全体の形状が内部を中空にした半球状に形成される。そして、第1フレーム22は、半球の内壁に第1駆動源21および当該第1駆動源21を覆う第2フレーム23が接続されることで、半球の内部に第1駆動源21および第2フレーム23が収容される。また、第1フレーム22は、前記した半球の平面部分である先端に、力覚センサ25の他端側25bが接続される。このような構成を備える第1フレーム22は、図1に示すように、第1駆動源21と接続されているため、当該第1駆動源21の回転駆動に合わせてピッチ軸(第1軸)を中心に回転駆動する。これにより、第1フレーム22の先端と接続されている力覚センサ25および手部30もピッチ軸回りに回転駆動することになる。
【0025】
第2フレーム23は、第1駆動源21を内部に収容して支持する基材である。第2フレーム23は、ここでは図示は省略したものの、第1駆動源21の形状に合わせて、全体の形状が円筒状に形成されている。第2フレーム23の上部は、図1に示すように、締結部材Bによって、手首リンク13と回動自在に締結されている。また、第2フレーム23の下部は、図1に示すように、締結部材Bによって、下腕フレーム部11の延出部11aと回動自在に締結されている。また、第2フレーム23の内周面と第1駆動源21との間には、図1に示すように、配線・配管路24が形成されている。
【0026】
配線・配管路24は、ロボットの本体および上腕部(図示省略)から引き込まれた配線・配管WPを配設するものである。配線・配管路24は、図1に示すように、円環状に形成され、図6(b)に示すように、配線・配管WPが当該配線・配管路24における円環の上側および下側に分岐されて配設される。なお、ここでの円環状とは、図1および図6(b)に示すように、円環の一部が欠けている場合も含むものとする。このように、手首装置1は、配線・配管WPが、配線・配管路24における円環の上側および下側に分岐されて配設されるため、手首部20内部のスペースを最大限、効率よく利用することができる。
【0027】
力覚センサ25は、外部からの圧力を検出するものである。力覚センサ25は、具体的には、手部30に作用する反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出する6軸力センサで構成される。力覚センサ25は、図2に示すように、略円柱状に形成されている。また、力覚センサ25は、図1および図2に示すように、手部30側の一端側25aと、下腕部10側の他端側25bと、を連通する中空部25cを有しており、この中空部25c内に後記する配線・配管支持部材26が配置される。また、力覚センサ25には、手部30(図1参照)を図示しない締結部材によって締結して接続するための貫通穴Hが形成されている。そして、力覚センサ25は、図1および図2に示すように、手部30側に位置する一端側25aが当該手部30と接続されるとともに、下腕部10側に位置する他端側25bが第1フレーム22の先端と接続される。
【0028】
配線・配管支持部材26は、ロボットの本体および上腕部(図示省略)から引き込まれた配線・配管WPを支持するものである。配線・配管支持部材26は、例えばアルミ等の材料から構成され、図3に示すように、円筒状に形成される。また、配線・配管支持部材26は、図3に示すように、手部30側に位置する一端側に複数の第1開口部26aを有し、下腕部10側に位置する他端側に複数の第2開口部26bを有している。この第1開口部26aおよび第2開口部26bは、後記するように、結束部材29を介して配線・配管WPが係止されるものである(図4および図5参照)。また、配線・配管支持部材26には、力覚センサ25の一端側25a(図2参照)と、図示しない締結部材によって締結して接続するための貫通穴Hが形成されている。
【0029】
配線・配管支持部材26は、図1に示すように、力覚センサ25の中空部25c内に配置される。そして、この配線・配管支持部材26には、図6(b)に示すように、ロボットの本体および上腕部(図示省略)から、配線・配管通路部材16、第2駆動源12の周囲および配線・配管路24を通って、配線・配管WPが引き込まれる。
【0030】
以下、配線・配管支持部材26内に配線・配管WPを配設する場合の一例について、図4および図5を参照しながら説明する。なお、以下の例では、図3の二点鎖線で示すように、配線・配管支持部材26の手部30側における円筒の一部をカットしたものを用いることとする。
【0031】
配線・配管WPは、図4に示すように、下腕部10側から2つに分岐した状態で、配線・配管支持部材26の他端側(下腕部10側)から内部に引き込まれる。その際、配線・配管WPは、図4および図5(a)に示すように、分岐された束ごとにテフロン(登録商標)テープ等の被覆部材27によってまとめられ、さらにスポンジ等の緩衝部材28を間に巻いた状態で、束ごとに結束部材29によって結束され、かつ、第2開口部26bに係止される。
【0032】
そして、配線・配管WPは、図4および図5(b)に示すように、配線・配管支持部材26の内部でさらに被覆部材27が被覆されて1本にまとめられ、さらにスポンジ等の緩衝部材28を巻いた状態で、結束部材29によって結束され、かつ、第1開口部26aに係止される。そして、配線・配管WPは、図4に示すように、配線・配管支持部材26の一端側(手部30側)から外部に引き出される。このように配線・配管WPは、図4および図5に示すように、配線・配管支持部材26の内部に配設されているため、力覚センサ25の中空部25cと直接接触しないように構成されている。また、配線・配管WPは、図4および図5に示すように、第1開口部26aと第2開口部26bの2箇所で配線・配管支持部材26に係止されているため、例えば手首装置1がヨー方向またはピッチ方向に可動したとしても、配線・配管支持部材26内部の配線・配管WPが固定されて動かない状態となっている。
【0033】
手部30は、人間の手指に相当するものである。手部30は、図1に示すように、手首部20の先端に接続される。手部30は、図示は省略したが、人間の5本の指に相当する複数の指機構を備えており、配線・配管WPを通じて伝達される制御信号および油圧に従って、当該複数の指機構を駆動させる。
【0034】
以上のような構成を備えるロボットの手首装置1は、力覚センサ25に中空部25cを設け、当該中空部25c内に配線・配管WPを通すことで、先端に接続されたロボットの手部30を駆動させるための配線・配管WPを最短距離で配設することができる。また、ロボットの手首装置1は、前記した中空部25c内に配線・配管WPを通すことで、当該配線・配管WPを外部に露出させずに配設することができるため、手首装置1の動作による破損または切断を防止することができる。また、ロボットの手首装置1は、力覚センサ25の中空部25c内に配線・配管支持部材26を配置し、当該配線・配管支持部材26に配線・配管WPを係止することで、手首装置1の動作に伴って、力覚センサ25の中空部25c内で配線・配管WPが動く(摺動する)ことを防止することができる。
【0035】
従って、ロボットの手首装置1によれば、ロボットの手部30を駆動させるための配線・配管WPの長さを極力短縮することができるとともに、当該配線・配管WPの破損等を防止することができる。また、ロボットの手首装置1によれば、力覚センサ25に中空部25cを設け、当該中空部25c内に配線・配管WPを配設した場合であっても、当該中空部25c内で配線・配管WPが動くことを防止することができるため、当該配線・配管WPの摺動によって不要な干渉値が発生し、当該干渉値が力覚センサ25の検出値に悪影響を与えることを防止することができる。
【0036】
以下、本発明に係るロボットの手首装置1の効果について、図6を参照しながら説明する。以下の説明では、配線・配管支持部材26を備えない手首装置101と、配線・配管支持部材26を備える手首装置1と、のそれぞれの動作を比較することで、配線・配管支持部材26を備える本発明に係る手首装置1の効果を説明する。
【0037】
まず、配線・配管支持部材26を備えない手首装置101の場合、図6(a)に示すように、配線・配管WPは力覚センサ25の中空部25c内に直に配設され、動きが固定されない状態となる。このような構成を備える手首装置101は、図6(a)に示すように、第1駆動源21によって力覚センサ25およびその先端に接続された手部30(図示省略)をピッチ方向(図6(a)では40°)に可動させると、中空部25c内において、配線・配管WPが配線・配管WPと配線・配管WPとに分かれて矢印の方向にそれぞれ摺動することになる。
【0038】
すなわち、図6(a)に示すように力覚センサ25および手部30をピッチ方向における上側に可動させると、中空部25c内の配線・配管WPと、配線・配管路24の上側に配設された配線・配管WPと、の間に角度が生じるとともに、中空部25c内の配線・配管WPと、配線・配管路24の下側に配設された配線・配管WPと、の間に角度が生じるため、配線・配管WPおよび配線・配管WPが手部30側または下腕部10側に引っ張られ、摺動することになる。但し、図6(a)に示すように、中空部25c内の配線・配管WPと配線・配管路24内の配線・配管WPとの角度は、中空部25c内の配線・配管WPと配線・配管路24内の配線・配管WPとの角度よりも浅いため、配線・配管WPは下腕部10側に摺動し、配線・配管WPは手部30側に摺動する。
【0039】
従って、配線・配管支持部材26を備えない手首装置101の場合、力覚センサ25および手部30を可動させると、力覚センサ25の中空部25c内で配線・配管WPおよび配線・配管WPが摺動することになり、これによって力覚センサ25に不要な干渉値が発生して、当該干渉値が力覚センサ25の検出値に悪影響を与えるという問題がある。
【0040】
一方、配線・配管支持部材26を備える本発明に係る手首装置1の場合、図6(b)に示すように、配線・配管WPは力覚センサ25の中空部25c内に配置された配線・配管支持部材26内に配設され、かつ、当該の第1開口部26aおよび第2開口部26bに結束部材29を介して係止された状態となる(図4および図5参照)。このような構成を備える手首装置1は、図6(b)に示すように、第1駆動源21によって力覚センサ25およびその先端に接続された手部30(図示省略)をピッチ方向(図6(b)では40°)に可動させたとしても、配線・配管WPは配線・配管支持部材26の内部に配設されているため、力覚センサ25と直接接触することがない。また、手首装置1は、図6(b)に示すように、配線・配管WPが結束部材29によって配線・配管支持部材26に係止されているため、力覚センサ25および手部30の可動に伴って、中空部25c内で摺動することもない。
【0041】
従って、配線・配管支持部材26を備える本発明に係る手首装置1の場合、力覚センサ25および手部30を可動させたとしても、力覚センサ25の中空部25c内で配線・配管WPが摺動することもなく、力覚センサ25に不要な干渉値が発生することもない。そのため、手首装置1の動作が力覚センサ25の検出値に影響を与えることがなく、力覚センサ25の検出精度が向上することになる。
【0042】
以上、本発明に係るロボットの手首装置1について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 手首装置
10 下腕部
11 下腕フレーム部
12 第2駆動源
13 手首リンク
14 フレーム支持部
16 配線・配管通路部材
20 手首部
21 第1駆動源
22 第1フレーム
23 第2フレーム
24 配線・配管路
25 力覚センサ
25a 一端側
25b 他端側
25c 中空部
26 配線・配管支持部材
26a 第1開口部
26b 第2開口部
27 被覆部材
28 緩衝部材
29 結束部材
30 手部
,B,B,B,B 締結部材
,H 貫通穴
WP,WP,WP 配線・配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下腕部と、当該下腕部の先端に設けられた手首部とを備え、先端に手部が接続されるロボットの手首装置であって、
前記手首部は、
第1軸を中心に回転駆動する第1駆動源と、
前記第1駆動源の回転駆動に合わせて回動する第1フレームと、
一端側が前記第1フレームの先端に接続されるとともに、他端側が前記手部に接続され、前記一端側と前記他端側とを連通する中空部を有する力覚センサと、
前記力覚センサの前記中空部内に配置され、一端側に第1開口部を有し、他端側に第2開口部を有する筒状の配線・配管支持部材と、
前記配線・配管支持部材の内部に配設される配線または配管と、を備え、
前記配線または配管は、前記第1駆動源の周囲の外径に沿って取り回しされ、かつ、前記配線・配管支持部材の前記第1開口部および前記第2開口部に結束部材を介して係止されていることを特徴とするロボットの手首装置。
【請求項2】
前記手首部は、前記第1駆動源を内部に収容して支持する筒状の第2フレームを備え、
前記第1駆動源と前記第2フレームの内周面との間には、前記配線または配管が配設される円環状の配線・配管路が形成され、
前記配線または配管は、前記配線・配管路における円環の上側および下側に分岐されて配設されることを特徴とする請求項1に記載のロボットの手首装置。
【請求項3】
前記下腕部は、
前記第1軸と直交する第2軸を中心に回転駆動する第2駆動源と、
前記第2駆動源と前記第2フレームとを接続し、前記第2駆動源の駆動力を前記第2フレームに伝達する手首リンクと、を備え、
前記配線または配管は、前記第2駆動源の周囲の外径に沿って取り回しされていることを特徴とする請求項2に記載のロボットの手首装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94939(P2013−94939A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242735(P2011−242735)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】