説明

ロボットハンド

【課題】物を安定して把持できるロボットハンドを提供すること。
【解決手段】本発明に係るロボットハンドは、掌リンク20と、掌リンクに連結される複数の指リンク10とを有する。指リンク10及び掌リンク20における物を把持する面の少なくとも一部に、柔軟性を有する材料から把持面が形成され、当該把持面のうち、掌リンクの把持面の摩擦係数を1.7以下とし、かつ掌リンクの把持面の摩擦係数が指リンクの把持面の摩擦係数以下とする。その摩擦係数を調整するために、把持面の表面に微小な凹凸を設けている。指リンク10は、掌リンク20に連結される根本側リンク11と、根本側リンク11に連結される指先側リンク12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物を把持するためのロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物を把持するロボットハンドが例えば特許文献1乃至3に記載されている。特許文献1に記載のロボットハンドにおいては、先端指部、第1の指部、及び第2の指部がそれぞれ屈曲可能に連結されている。先端指部の内側には比較的摩擦係数の大きな表面材料が取り付けられていて、根本側の指部である第1及び第2の指部の内側には摩擦係数の小さな表面材料が取り付けられている。把持対象物は、摩擦係数の大きい先端指部で引っ掛けて巻き込まれる。そして、先端指部より摩擦係数の小さい第1及び第2の指部において、把持対象物が滑りながら移動する。これにより、把持対象物の移動、及び位置決め等を行っている。
【0003】
また、特許文献2に記載のロボットハンドは、指リンクのうち、先端部の把持面は摩擦係数が大きい領域であり、根本部把持面は摩擦係数が小さい領域となっている。さらに、指リンクに連結されている掌リンクの把持面は摩擦係数が小さい領域となっている。そして、摩擦係数の大きい先端部把持面で安定して物を把持する。さらに、指の根元部に対する先端部の角度を変化させた場合、摩擦係数の小さい領域で物がすべり、当該物がなめらかに移動する。
【0004】
さらに、特許文献3には、指部の表面に凹部が形成された凹凸形状(ディンプル形状)が形成されたロボットハンドが開示されている。凹部を形成することにより、指部の摩擦係数を向上させ、対象物を安定して把持している。
【特許文献1】特開2002−264066号公報
【特許文献2】特開平6−143179号公報
【特許文献3】特開2005−88096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のロボットハンドにおいては、指先端での把持対象物の把持を重視している。このため、指の先端で所望の把持力を得る場合、指の根本側で把持対象物を把持するために必要なトルクよりも大きなトルクが必要となる。これにより、アクチュエータが大型化する。
【0006】
また、特許文献3に記載のロボットハンドでは、凹部が形成された凹凸形状(ディンプル形状)により、対象物と指部との接触面積を大きくし、指部の摩擦係数を向上させている。摩擦形状を向上させることにより容易に物を把持することができる。しかしながら、指部の材質によっては、対象物と指部との接触面積を大きくし摩擦係数を向上させると、当該摩擦係数の大きい指部で対象物が固定されてしまう場合がある。これにより、所望の位置で対象物を把持できず、安定した把持を行えない場合があるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、物を安定して把持できるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットハンドは掌リンクと、前記掌リンクに連結される複数の指リンクとを有し、前記掌リンク及び前記指リンクにおける物を把持する面の少なくとも一部に、柔軟性を有する材料から把持面が形成され、当該把持面のうち、前記掌リンクの把持面の摩擦係数が1.7以下であって、前記指リンクの把持面の摩擦係数が前記掌リンクの把持面の摩擦係数以上であり、かつ表面粗さを適切なものとすることで摩擦係数を調整したものである。
【0009】
本発明においては、物体を把持する面に、柔軟性を有する材料で、かつ指リンクの把持面の摩擦係数が掌リンクの把持面の摩擦係数以上となるよう把持面が形成され、柔軟性を有する材料の表面粗さを粗くすることで、摩擦係数を調整している。これにより。把持物を把持した際に、掌の上で把持物が安定した位置に移動しやすく、把持物を上手に把持することが可能となる。
【0010】
また、前記指リンクのうち前記掌側の根本及び掌の前記把持面には凹凸が設けられているものとすることができる。指リンクの根本及び掌に凹凸を設けて摩擦係数を低減することができる。
【0011】
さらに、前記指リンクの把持面より前記掌の把持面の摩擦係数が小さくなるよう、前記指リンク及び掌の前記把持面全面に凹凸が設けられているものとすることができる。把持面全面に凹凸が設けられていてもよい。
【0012】
さらにまた、前記指リンクは、前記掌リンクに連結される根本側リンクと、前記根本側リンクに連結される指先側リンクとを有するものとすることができる。指リンクを複数のリンクから構成することで、より複雑又は小さい把持物を把持することができる。
【0013】
また、前記把持面の硬度は、90デュロメータ(A)以下であることができる。硬度が90デュロメータ(A)以下の材料の表面粗さを調整することで、摩擦係数を調節することができる。
【0014】
さらに、前記把持面のうち、前記掌リンクの把持面の表面粗さについて、凹凸平均間隔RSmが20μm乃至1mmにあって、凹凸平均高さRcが2μm以上であり、前記指リンクの把持面の表面粗さは前記掌リンクの把持面の表面粗さより小さいものとすることができる。これにより、摩擦係数を調整することができる。
【0015】
さらにまた、前記柔軟性を有する把持面は、ゴム又は樹脂材料からなることができ、特に、シリコンゴムであることが好ましい。
【0016】
また、前記指リンク及び前記掌リンクの物体を把持する側の面に、前記柔軟性を有する材料からなるシートが貼られたものとするか、又は、前記指リンク及び前記掌リンクが、前記柔軟性を有する材料により覆われているものとすることができる。把持面はシートを貼っても、手袋を被せてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、物を安定して把持することができるロボットハンドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1. 以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかるロボットハンド1を示す図である。図1に示すように、ロボットハンド1は、掌リンク20に、複数の指リンク10が連結されてなる。
【0019】
指リンク10は、複数のリンクが連結されていている。本実施の形態においては、指リンク10は、掌リンク20に連結される根本側リンク11と、この根本側リンクに連結される指先側リンク12とを有する。指リンク10を根本側リンク11及び指先側リンク12から構成することにより、把持物との接触面積を増加させることができ、把持物をより安定して把持することができる。
【0020】
指リンク10の根本側リンク11は、掌リンク20に連結される。また、指先側リンク12は、根本側リンク11において掌リンク20が連結される側と反対側に連結される。根本側リンク11、指先側リンク12、及び掌リンク20はそれぞれ関節軸30を介して連結されている。各関節軸30はそれぞれアクチュエータ(図示せず)に接続されていて、当該アクチュエータの駆動により、掌リンク20に対する根本側リンク11及び指先側リンク12の角度が変化する。このように、根本側リンク11及び指先側リンク12の掌リンク20に対する角度を変化させることにより把持物を把持する。
【0021】
また、各リンクはそれぞれ把持物を把持する把持面を有する。根本側リンク11は、把持面11a(以下、根本側把持面11aという。)を有する。指先側リンク12は、把持面12a(以下、指先側把持面12aという。)を有する。掌リンク20は、把持面20a(以下、掌把持面20aという。)を有する。これらの把持面は、柔軟性を有する材料から構成され、把持面のうち、掌リンク20の把持面の摩擦係数が1.7以下であって、指リンク10の把持面の摩擦係数が掌リンク20の把持面の摩擦係数以上となっている。また、例えば、柔軟性を有する材料とは、硬度が90デュロメータ(A)以下であることが好ましい。そのような材料としては、例えばゴム又は樹脂材料等が好ましく、シリコンゴムが更に好ましい。シリコンゴム等、このような柔軟性を有する材料の表面に凹凸を形成することで摩擦係数を調整することができる。例えばその凹凸は掌リンクの把持面の表面粗さについて、凹凸の平均間隔RSmが20μm乃至1mmにあって、平均凹凸高さRcが2μm以上とし、指リンク10の把持面の表面粗さが掌リンク20の把持面の表面粗さより小さいことが望ましい。すなわち、柔軟性を有する材料の表面に凹凸を設けることで掌把持面20aの摩擦係数を1.7以下とし、かつ指先側把持面の摩擦係数が掌側把持面の摩擦係数以上とすることで、把持物を把持した際に、掌上で把持物が適度に移動し、把持がしやすくなる。
【0022】
ここで、従来においても、根本側把持面11aの摩擦係数を指先側把持面12aの摩擦係数より小さくしていた。これにより、掌把持面20aより摩擦係数が大きい指先側把持面12aで把持物を把持し、指先側把持面12aより摩擦係数の小さい掌把持面20aで把持物を滑らせることにより、ロボットハンドにおける把持物の移動を行う。この場合、指先側把持面12aより摩擦係数を小さくするために掌把持面20aには、例えばフッ素樹脂(テフロン(登録商標))等が用いられていた。掌把持面20aにフッ素樹脂等を用いたロボットハンドで把持物を把持する場合、把持物の表面が、例えば紙、木材、金属、又は硬質樹脂等の場合には著しく摩擦係数が低減される。しかしながら、把持物の表面がシリコンゴム等である場合にはシリコンゴムとフッ素樹脂との吸着的な現象により摩擦係数が極めて大きい状態のままとなる。このため、把持物の表面の材質の違いにより、摩擦係数が大きくことなり、よって把持の挙動が大きく異なる結果となる。これにより、把持が不安定となり、把持の制御が複雑になる等する。
【0023】
そこで、本実施の形態では、把持面に柔軟性を有する材料を適用し、かつ表面に微細な凹凸を設けることにより表面粗さを調整し、把持面の摩擦係数を調節する。より具体的には、掌把持面20aに微細な凹凸を形成することで摩擦係数を1.7以下とし、かつ指先側把持面以上の摩擦係数とする。又は、後述するように掌把持面20a及び根本側把持面11aに微細な凹凸を形成することにより、摩擦係数を1.7以下とし、かつ指先側把持面以上の摩擦係数とする。又は少なくとも指先側把持面12aに形成する凹凸より掌把持面20aの表面に形成する凹凸を大きくして掌把持面20aの摩擦係数を指先側把持面12aの摩擦係数より小さくする。これにより、把持物の表面が、紙、木材、金属、又は硬質樹脂等である場合に加えて、シリコンゴム等の場合においても、把持物との摩擦係数を低減することができる。すなわち、把持物の表面の材質の違いによる摩擦係数の変化を小さくすることができ、把持物を安定して把持することができる。このため、把持の制御が容易になる。
【0024】
上述したように、把持物を所望の位置で把持するためには、掌リンクの把持面の摩擦係数を1.7以上とし、かつ指リンク10の把持面の摩擦係数を掌リンク20の把持面の摩擦係数以上よする。このため、掌把持面20aが1.7より大きい摩擦係数を有する場合、掌把持面20aも指リンクの把持面と同等に大きな摩擦係数を有することとなり、把持物を所望の位置で把持することが困難である。すなわち、掌把持面20aに把持物が固定されてしまい、所望の位置での把持を行うことが困難である。このため、把持面の摩擦係数が1.7以下で、かつ指先側把持面以下の摩擦係数となるよう、掌把持面の表面粗さを調節する。これにより、把持物の表面が、紙、木材、金属、又は硬質樹脂等である場合に加えて、シリコンゴム等の場合においても、摩擦係数を低減することができ、把持物の材質の違いによる摩擦係数の変化を小さくすることができ、把持物を安定して把持することができる。そして、把持の制御を簡単に行うことができる。
【0025】
また、根本側把持面11aの表面粗さと指先側把持面12aの表面粗さとを略同じにし、当該根本側把持面11aの摩擦係数を掌把持面20aより大きくすることで、根本側把持面11aにおいても十分な摩擦力を有し、把持物の安定した把持を行うことができる。また、指先側把持面12aに加えて根本側把持面11aにおいても把持物の把持を行うことができるため、根本側リンク11と掌リンク20とを連結する関節軸30aの駆動トルクを小さくすることができる。これにより、当該関節軸30に連結され、減速機等を有するアクチュエータにおいて、当該減速機等を小さくすることができるため、アクチュエータを小型化することができ、ロボットハンド1の寸法を小さくすることができる。
【0026】
上述したように、従来は、ロボットハンドの指先側における把持を重視していたため、大きな駆動トルクが必要としていた。この場合、歯車が大きい減速機が必要となり、これに伴いアクチュエータが大型化する。これに対し、本実施の形態では、根本側把持面11aの摩擦係数を指先側把持面12aと同様に高くすることで、根本側リンク11と掌リンク20とを連結する関節軸30aの駆動トルクを小さくすることができる。よって減速機の歯車を小さくし、アクチュエータを小型化することができ、ロボットハンド1の寸法を小さくすることができる。ロボットハンド1が小さい場合、当該ロボットハンド1が把持物の把持及び移動等を行う際の周辺環境等との干渉を大幅に軽減することができる。
【0027】
次に、本実施の形態におけるロボットハンド1の構成及び各把持面の構成について詳細に説明する。ロボットハンド1の根本側リンク11における関節軸30間のリンク長は、略55mmとすることができる。指先側リンク12における関節軸30と当該関節軸30が形成される側とは反対側の端部との間のリンク長は、略55mmとすることができる。また、掌リンク20における関節軸30間のリンク長は略70mmとすることができる。また、関節軸30で連結されている根本側リンク11及び指先側リンク12の可動範囲は、掌リンク20と平行な全開状態を角度0度とする場合、根本側リンク11は、略0度以上+120度以下、指先側リンク12は、略0度以上+90度以下とする。
【0028】
各リンクの把持面はそれぞれシリコンゴムを用いて形成する。掌把持面20aは、JISB0601で規定される平均凹凸高さ(ISO4287/1)Rcを例えば2μm、凹凸の平均間隔(粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値をミリメートルで表わしたもの:Sm=1/nΣSmi)RSmを例えば20乃至1000μmとすることができる。ここで、凹凸の平均間隔RSm=50乃至300μm、平均凹凸高さRc=5μm以上が特に好ましい。
【0029】
また、根本側把持面11a及び指先側把持面12aは算術平均粗さRaを例えば0.4μm以下、平均凹凸高さを例えば1.5μm以下とし、平滑面とする。図2(a)に掌把持面20aの断面図を示し、図2(b)に根本側把持面11a及び指先側把持面12aの断面図を示す。各リンクの把持面を上記のような構成とすることにより、掌把持面20aは図2(a)に示すように、微小な突起部を有し、根本側把持面11a及び指先側把持面12aは図2(b)に示すように平滑面となる。
【0030】
上記のような構成の場合であって、把持物の表面が紙、木材、金属、硬質樹脂、又はシリコンゴムの場合において、把持物と各把持面との摩擦係数は、掌把持面20aでは、略0.5乃至1.6となり、根本側把持面11a及び指先側把持面12aでは、略1.2m乃至6.0となる。このような構成を有するロボットハンド1に、把持物の表面が、紙、木材、金属、硬質樹脂、又はシリコンゴムをそれぞれ把持させる。指リンク10を動作させると、把持物が掌把持面20aで固定されることなく、所望の位置で把持することができ、把持の制御を簡単に行うことができる。また、把持物の表面の材質の違いに関わらず、把持物を安定して把持することができる。
【0031】
ここで、比較例として、掌把持面20aを、根本側把持面11a及び指先側把持面12aとを略同一の平均凹凸高さRc=1.5μmとした場合について説明する。このとき、把持物の表面が、紙、木材、金属、硬質樹脂、又はシリコンゴムである把持物をそれぞれ把持させ、指リンク10を動作させる。この場合、把持物の表面が、金属、硬質樹脂、及びシリコンゴムの場合、把持物が掌把持面20aで固定されてしまう。このため、把持物を所望の位置で把持することができず、安定した把持を行うことが困難である。また、把持物の把持の制御を行うことが困難となる。
【0032】
さらに、別の比較例として、掌把持面20aの材質を従来から用いられているフッ素樹脂板とし、根本側把持面11a及び指先側把持面12aの材質をシリコンゴムの平滑面とする。この場合、把持物の表面が、紙、木材、金属、硬質樹脂、又はシリコンゴムであれば、掌把持面20aと把持物との摩擦係数は、略0.1乃至6.0となり、根本側把持面11a及び指先側把持面12aと把持物との摩擦係数は、略1.2乃至6.0となる。よってこの比較例におけるロボットハンドに把持物を把持させ、指リンク10を動作させる場合、把持物の表面がシリコンゴムの場合には、摩擦係数が大きいため、把持物が掌把持面20aで固定されてしまい、上手く把持することが困難となる。すなわち、フッ素樹脂加工板を使用すると、把持物の表面の材質によっては、所望の位置での把持を行うことができず、安定した把持を行えず、把持の制御が困難となる。
【0033】
本実施の形態においては、指リンク10及び掌リンク20における物を把持する面の少なくとも一部に、柔軟性を有する材料から把持面が形成され、当該把持面のうち、掌リンクの把持面の表面粗さを調節し、掌リンクの把持面の摩擦係数が1.7以下かつ指リンクの把持面の摩擦係数以下とする。このように、柔軟性を有する材料の表面粗さを調整して摩擦係数を調整することにより、把持物の表面の材質の違いによる摩擦係数の変化を小さくすることができ、所望の位置で把持物を把持することができる。このため、把持物を安定して把持することができる。また、把持の制御を簡単に行うことができる。さらに、本実施の形態では、根本側把持面11aには微小な突起部を付与しないため、当該根本側把持面11aにおいても十分な摩擦力を有し、より安定して把持物を把持することができる。
【0034】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1では、根本側把持面11a及び指先側把持面12aと、掌把持面20aとで把持物との摩擦係数を異ならせるが、実施の形態2では、指先側把持面12aと、根本側把持面11a及び掌把持面20aとで摩擦係数を異ならせる。指先側把持面12aは、例えば、実施の形態1の根本側把持面11a及び指先側把持面12aで規定したJISB0601の平均凹凸高さRcと同様の規定とし、平滑面とする。また、根本側把持面11a及び掌把持面20aは、例えば実施の形態1の掌把持面20aで規定したJISB0601の平均凹凸高さRc、及び凹凸の平均間隔Smと同様の規定とし、表面に凹凸を形成する。
【0035】
本実施の形態では、各把持面の硬度が90以上の材料を使用し、指先側把持面12aと、根本側把持面11a及び掌把持面20aとで把持物との表面粗さを異ならせる。例えば、掌把持面20a及び根本側把持面11aに微小な凹凸を付与する。このことにより、把持物の表面の材質の違いによる摩擦係数の変化を小さくすることができ、把持物が掌把持面20aで固定されることなく、把持物を所望の位置で把持することができる。このため、把持物を安定して把持することができる。そして、把持の制御を簡単に行うことができる。ただし、実施の形態2では、根本側把持面11aの表面粗さを粗くしたため、実施の形態1と比較して根本側把持面11aの摩擦係数が低減する。このため、根本側リンク11と掌リンク20とを連結する関節軸30aの駆動トルクは実施の形態1の場合の略2倍程度必要となる。
実施の形態3.
【0036】
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態1と同様、根本側把持面11a及び指先側把持面12aと、掌把持面20aとで摩擦係数を異ならせる。ここで、実施の形態1では掌把持面20aにのみ微小な突起部を形成することとしたが、実施の形態3では、根本側把持面11a及び指先側把持面12aと、掌把持面20aとにそれぞれ微小な突起部を付与する。この場合、把持物の表面が、紙、木材、金属、硬質樹脂、又はシリコンゴムの場合、把持物と各把持面との摩擦係数は、掌把持面20aでは例えば略0.5乃至0.8であり、根本側把持面11a及び指先側把持面12aの摩擦係数は、例えば略1.0乃至1.7となる。
【0037】
本実施の形態では、根本側把持面11a及び指先側把持面12aと、掌把持面20aとにそれぞれ微小な凹凸を形成することにより、把持物の材質の違いによる摩擦係数の変化を小さくすることができ、把持物が掌把持面20aで固定されることなく、所望の位置で把持することができる。このため、把持物の把持を安定して行うことができる。そして、把持の制御を簡単に行うことができる。ただし、本実施の形態では、根本側把持面11a及び指先側把持面12aにも微小な突起部を付与したため、実施の形態1と比較して、根本側把持面11a及び指先側把持面12aの摩擦力は低下するが、把持物を把持するための摩擦力は十分に確保されている。
【0038】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態にかかるロボットハンドを示す図である。
【図2】(a)は、実施の形態1におけるロボットハンドの掌リンクの把持面を拡大して示す模式図、(b)は、実施の形態1におけるロボットハンドの指リンクの把持面を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ロボットハンド
10 指リンク
11 根本側リンク
11a 根本側把持面
12 指先側リンク
12a 指先側把持面
20 掌リンク
20a 掌把持面
30 関節軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌リンクと、
前記掌リンクに連結される複数の指リンクとを有し、
前記掌リンク及び前記指リンクにおける物を把持する面の少なくとも一部に、柔軟性を有する材料から把持面が形成され、当該把持面のうち、前記掌リンクの把持面の摩擦係数が1.7以下であって、前記指リンクの把持面の摩擦係数が前記掌リンクの把持面の摩擦係数以上であり、かつ表面粗さを適切なものとすることで摩擦係数を調整したロボットハンド。
【請求項2】
前記指リンクのうち前記掌側の根本及び掌の前記把持面には凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記指リンクの把持面より前記掌の把持面の摩擦係数が小さくなるよう、前記指リンク及び掌の前記把持面全面に凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項2記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記指リンクは、前記掌リンクに連結される根本側リンクと、前記根本側リンクに連結される指先側リンクとを有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記把持面の硬度は、90デュロメータ(A)以下である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記把持面のうち、前記掌リンクの把持面の表面粗さについて、凹凸平均間隔RSmが20μm乃至1mmにあって、凹凸平均高さRcが2μm以上であり、前記指リンクの把持面の表面粗さは前記掌リンクの把持面の表面粗さより小さい
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記柔軟性を有する把持面は、ゴム又は樹脂材料からなる
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記柔軟性を有する把持面は、シリコンゴムである
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記指リンク及び前記掌リンクの物体を把持する側の面に、前記柔軟性を有する材料からなるシートが貼られている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記指リンク及び前記掌リンクが、前記柔軟性を有する材料により覆われている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−166181(P2009−166181A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7523(P2008−7523)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】