説明

ローソクおよびその製造方法

【課題】外径が大きい太いローソクでありながら、燃焼時間を調節できると共に燃焼時の油煙の発生を抑えることができ、流ロウの少ないローソクおよびその製造方法に関する。
【解決手段】成形された燃焼剤2と、この燃焼剤内に固定された燃焼芯3とからなるローソクであって、燃焼剤2は、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25となる筒状体に成形されており、燃焼芯3は、筒状体内に該筒状体と同心に内包固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローソクおよびその製造方法に関し、特に外径が大きい太いローソクでありながら、燃焼時間を調節できると共に燃焼時の油煙の発生を抑えることができ、流ロウの少ないローソクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長い歴史を持つローソクは、近年、イベントなどで装飾的に用いられることが多くなってきている。例えば、各地に残る万灯祭、万灯籠もしくは万灯流し、または神社仏閣での万灯供養会等では多数のローソクが使用される。また、屋外での芸能リサイタル、演劇イベント等でも多数のローソクがショーの光効果を演出するために使用される。
風が吹いても消えにくく、安全に使用でき、さらに燃焼残渣を少なくできる、屋外イベント用ローソクとして、ロウを主剤とする燃焼剤と木綿糸を編み込んだ燃焼芯とからなり、燃焼芯が中空筒状に構成され、燃焼剤に設けられた貫通孔内を燃焼芯が移動し得るように構成したローソクが開示されている(特許文献1)。このローソクは中空筒状の燃焼芯が燃焼することにより、屋外における風にも消されにくいとの効果を有する。
しかしながら、このローソクは燃焼剤が肉厚の円筒であり、また、中空筒状の燃焼芯は、ローソクの火炎が円筒状に燃焼することになり、従来イメージされているローソクの炎とならない場合があるという問題がある。さらに、風向きなどにより、燃焼芯が円筒状に均一な燃焼が困難であったり、油煙が発生しやすかったりする場合があるという問題がある。このローソクは燃焼剤と燃焼芯とが分離されていることにより、燃焼芯の燃えかすが残ったり、燃焼剤がローソク本体の外周に燃焼しないで残る現象である流ロウが発生したり、ローソクの燃焼時間を調節できなかったりするという問題がある。
【0003】
また、寸法が外径34mmφ×高さ315mmであり、全体の重さが225g程度の大ローソク60号の場合、ローソクの燃焼時間は20〜22時間である。しかし、ローソク使用用途の多様化に伴い、この外径および高さ寸法を維持して約1時間程度の燃焼時間であったり、あるいは燃焼時間を制御したり、流ロウの発生を抑制したりすることができる大ローソクが求められている。
【0004】
また、寸法が外径約9mmφ×高さ110mmの大きさの墓参用ローソク1.5号の場合、墓前において風が強いときにローソクの炎が消えてしまったり、ローソクの炎が消えるのを防ぐために燃焼芯を太くすると、油煙が発生しやすかったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、外径が大きい太いローソクでありながら、燃焼時間を調節できると共に燃焼時の油煙の発生を抑えることができ、流ロウを少なくできるローソクおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローソクは、成形された燃焼剤と、この燃焼剤内に固定された燃焼芯とからなるローソクであって、上記燃焼剤は、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25となる筒状体に成形されており、上記燃焼芯は、上記筒状体内に該筒状体と同心に内包固定されていることを特徴とする。
また、上記燃焼剤は、上記筒状体の先端燃焼部が先細り形状に成形されており、上記燃焼芯は、上記先端燃焼部にて集合されて燃焼剤より露出していることを特徴とする。
また、上記燃焼芯が筒状体となる、不織布、織物、編物または紙であることを特徴とする。特に、上記不織布、織物または編物が筒状不織布、筒状織物または筒状編物であり、かつ筒の円周方向で非対称構造の織構造または編構造を有することを特徴とする。
本発明のローソクは、燃焼剤である筒状体の底部に栓を有することを特徴とする。
また、本発明のローソクは、燃焼剤である筒状体が円筒状であることを特徴とする。
【0008】
本発明のローソクの製造方法は、上記円筒状ローソクの製造方法であって、
基底部にフランジ部を有する柱状金型に筒状体となるように不織布、織物、編物または紙を被せる工程と、
上記柱状金型の基底部に、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25となる筒状体を形成できる筒状金型の開放端を嵌合する工程と、
上記柱状金型と筒状金型とで形成される隙間に溶融した燃焼剤を注入する工程と、
上記柱状金型と筒状金型とを取り外す工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のローソクは、筒の肉厚さを所定の範囲にする筒状体と、燃焼芯が筒状体内に同心に内包固定されているので、筒状体が燃焼芯で補強された構造となる。そのため、ローソクの外径が大きくなっても燃焼時に倒れることがなく、また、筒状体の筒厚さを調整することで燃焼時間を任意に制御することができる。燃焼芯は、松明のような大きな炎を可能にすると共に、ローソク表層への流ロウや油煙の発生を抑制することができる。
特に、燃焼芯を筒状体となる、不織布、織物または編物とすることにより、均一な燃焼を可能とし、ローソクの片減り、表層への流ロウを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ローソクの斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図である。
【図4】製造工程を示す図である。
【図5】他の製造工程を示す図である。
【図6】実施例17〜21および比較例2の煤の発生状況を示す図である。
【図7】実施例22〜26および比較例2の煤の発生状況を示す図である。
【図8】実施例17および比較例2の流ロウ状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のローソクを図1に示す。図1はローソクの斜視図であり、図2は図1におけるA−A断面図、図3は同B−B断面図をそれぞれ表す。
図1〜図3に示すように、ローソク1は、筒状体、例えば円筒状に成形された燃焼剤2と、この燃焼剤2内に筒状となるように固定された燃焼芯3と、ローソク1の底部を塞ぐ栓4とから構成されている。成形された燃焼剤2は本体部分である筒状体2aと、先細り形状に成形された先端燃焼部2bとから構成されており、この燃焼剤2内部に燃焼芯3が一体に固定されている。燃焼芯3は、筒状体2aから先端燃焼部2bに燃焼剤2の形状に従って筒状から1本の集合体に集合されて、その先端部分3aが先端燃焼部2bから露出している。
筒状体2aの底部には、燭台のピン形状に合わせた孔4aが設けられている栓4が嵌め込まれている。
【0012】
成形された燃焼剤2の材質としては、パラフィンワックス、フィシャトロピッシュワックス、天然ガスワックス、ポリエチレンワックス、植物ロウ、蜜ロウなど、従来ローソクの燃焼剤として使用されている材料を単独でまたは混合して使用することができる。これらの中で、植物性高級脂肪酸類を主成分とするものが本発明に好適である。植物性高級脂肪酸類は筒状体2aの筒の厚さを薄くしてもローソクとしての機械的強度を保つことができるので、本発明のローソクの太さおよび筒の厚さを任意に調節することができ、ローソクの燃焼時間を容易に調整することができる。また、植物性高級脂肪酸類はローソク燃焼時に不快なにおいが発生せず、変色(黄変)や燃焼時の煙の発生を抑制することができる。
【0013】
植物性高級脂肪酸としては、炭素数12〜18の飽和脂肪酸であることが好ましく、例えば、ミリスチン酸(炭素数14、融点54℃)、パルミチン酸(炭素数16、融点63〜64℃)、ステアリン酸(炭素数18、融点69〜70℃)、アラキジン酸(炭素数20、77.5℃)等の飽和脂肪酸、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)等の不飽和脂肪酸の高度水素添加物を使用できる。
また、植物性高級脂肪酸に、高級アルコールおよび/または高級脂肪酸グリセリドを副成分として含有させることができる。高級アルコール、高級脂肪酸グリセリドとしては、従来ローソク製造に使用されているものであればいずれも好適に使用することができる。具体的には、高級アルコール:ステアリルアルコール、セチルアルコール等の炭素数16以上のアルコール、高級脂肪酸グリセリド:ステアリン酸グリセリド、パルミチン酸グリセリド、ミリスチン酸グリセリド、ラウリン酸グリセリド、オレイン酸グリセリド、リノール酸グリセリド等の炭素数12以上の脂肪酸グリセリド、等が例示でき、これらの中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0014】
成形された燃焼剤2の形状は筒状体2aが筒状であれば使用できる。図2に示す筒状断面の内周面2cおよび外周面2dが、真円、楕円、異形円などの円筒状、または三角形、四角形、六角形、多角形などの角筒状のいずれでも使用できる。筒状体の内周面2cと外周面2dとは同一の形状であっても、異なる形状であっても使用できる。例えば内周面2cを真円筒、外周面をスパイラル形状の筒状体とすることができる。
好ましい本発明の筒状断面は内周面2cおよび外周面2dが同心の円筒状であり、より好ましくは同心の真円円筒である。同心の真円円筒とすることにより、均一な燃焼炎が得られる。また、円筒の厚さが薄くなっても折れたりしないなど、ローソクの機械的強度が向上する。また、円筒はローソク先端部方向に向かって先細りとなるテーパー状であってもよい。
燃焼剤2の形状を筒状とすることにより、単位時間内に溶解させるロウの量を制御することができ、流ロウを防止できる。さらに、不意な風などで、燃焼のバランスが崩れてもロウが円筒内部に流れ込むため多量の流ロウが発生しない。
【0015】
燃焼剤2の先端燃焼部2bは、筒状体2aの円周より先細りに閉じられた形状であり、この内部に筒状の燃焼芯3が筒状体2aより連続して先端燃焼部2bにて集合され、集合した燃焼芯3が先端燃焼部2bより露出している。
ローソクの先端燃焼部2bの先細り形状は、燃焼芯3を内包できる形状であれば、特に制限なく、周知のローソクの形状を用いることができる。
【0016】
筒状体2aの底部に嵌め込まれる栓4は、燃焼剤2を構成する材質と同一の材料を用いることが好ましく、その形状は、燭台のピン形状に合わせた孔4aを有する。栓4を嵌め込むことにより、燭台への設置が容易であり、また、ローソクの機械的強度が向上する。また、さまざまな燭台形状に対応できる栓の種類を準備することで、ローソクの使用用途が広がる。
【0017】
筒状体に成形される燃焼剤2は、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25の範囲にある。ここで、筒の外径は筒の最大外径を表し、筒の肉厚さは最小肉厚さを表す。また、筒の肉厚さは燃焼芯を含む厚さである。
円筒状の燃焼剤2の場合、図2に示すように、筒状断面の筒の肉厚さをtとして、燃焼剤2の外径をTとすれば、(t/T)=0.04〜0.25であり、好ましくは(t/T)=0.05〜0.20である。(t/T)が0.04未満であると肉厚さtが薄くなりすぎるため燃焼芯を保持するのが困難になり、またローソクが折れやすくなり機械的強度を保てない。(t/T)が0.25をこえると肉厚さtが厚くなりすぎ、燃焼時間の調節が困難になる。なお、肉厚さtは、(外径−内径)/2で表される。
【0018】
ローソクの大きさとしては、ローソクの高さhが約500mmまで、外径Tが約75mmまでであることが好ましい。
ローソクの大きさがこの範囲内であれば、イベントなどに使用するためのローソクとして使用時に折れたりすることがなく十分な機械的強度を有し、かつ数分〜数時間で燃え尽きるなど燃焼の調整が可能となる。また、ローソクの外表面に宣伝広告、開催イベント名など大きく明瞭に表示できる。
【0019】
また、墓参用ローソクの場合、ローソクの高さhは約100mm、外径Tが約9mmであることが好ましい。墓参用ローソクは墓前において風などで炎が消えることがあるが、後述する燃焼芯3を紙にして、円筒状にすることにより、炎が安定して消えることがなく、かつ油煙が発生しない。
【0020】
燃焼芯3は、筒状体となる不織布、織物または編物を使用することができる。筒状体は、例えばテープ状の不織布等をスパイラルに巻くことで得ることができる。スパイラルに巻く場合、テープの幅方向端部同士を突合せても、重ねあわせても、または、テープの幅方向端部同士を所定の間隔を設けてもよい。あるいは、幅広の不織布等の幅方向端部同士を筒状体に突合せ、重ねあわせることができる。
織物または編物を燃焼芯3として用いる場合は、燃焼芯3は継ぎ目のない長尺の筒状織物または筒状編物とすることができる。筒状織物は円筒織機で、筒状編物はシームレス編機で製造することができる。
継ぎ目のない筒状の長尺物とすることにより、燃焼時に不均等な燃焼剤の溶けが生じたり、燃焼剤の液化と燃焼の吸い上げバランスが崩れたりすることがなくなる。このためローソクの片減り、流ロウを防ぐことができる。
本発明の燃焼芯3としては、筒状編物であることが好ましい。編物とすることにより、シームレスの筒状長尺物にすることが容易であり、また、燃焼により芯3が炭化した後もその構造を長く保つことができることから安定燃焼を持続することができる。
【0021】
燃焼芯3に用いることができる材質としては、木綿、麻糸等の天然植物性繊維、レーヨン等の再生繊維を好ましく使用できる。
本発明における筒状織物または筒状編物は、筒の円周方向でその一部が異なる織り方または編み方の筒状物を使用することが好ましい。例えば、円周方向の一部を他の部分よりも密に編むこと等により、非対称構造の織り構造または編み構造とすることができる。
具体的には、縦型リリアン編機を用いることにより、非対称構造とすることができる。
非対称構造とすることにより、例えば織り方または編み方の疎密の部分で燃焼速度が変化するため、燃焼芯3が燃焼時に適度な角度を有して折れ曲がり燃焼炎の外側に一部がでる。その結果、炎外部の酸素と反応しやすくなり、燃焼芯3が灰になって消滅しやすくなる。
【0022】
燃焼芯3としては、上記不織布、織物または編物以外に、紙を筒状体として使用することができる。
紙は植物繊維を薄葉体でシート状にしたものであって織っていないものである。植物繊維としては、木材、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、麻、綿、リンター、マニラ麻、エスパルト、ワラ、竹、バガス、ケナフ、古紙などから採取されるパルプが例示される。
紙の品種としては、添加剤や漂白剤を使用していない和紙が好ましい。和紙は樹皮の内側の靭皮を使用するもので、和紙としては、産地名で呼ばれる美濃紙、土佐紙、特殊な用途または呼び名である奉書紙、鳥の子紙、半紙などが挙げられる。和紙は、セルローズが主たる構成成分であるため、人体に有害な成分を含んでおらず、油煙を発生することなく燃焼できる。本発明の燃焼芯3となる紙類としては奉書紙が燃焼残が少ないため、好ましい。
【0023】
また、本発明のローソクの外周に紙を巻くことができる。紙としては上記和紙が好ましい。
【0024】
本発明のローソクの製造方法について図4により説明する。図4は製造工程を示す図である。
図4(a)に示すように、円柱状の金型5aおよび円筒状の金型5bを準備する。金型5aはローソク1の内径および高さを規定する太さを有している。金型5bは金型5aの基底部5cに一方の開放端が嵌合する円筒状であり、ローソク1の外径を規定する内径を有し、金型5aの外径の大きさと金型5bの内径の大きさとの差で筒状体2aの筒の厚さを調整することができる。
図4(b)に示すように、筒状織物または筒状編物3を編目等を拡張しながら金型5aに被せ、燃焼芯3の形状を整える。この場合、不織布のテープをスパイラル状に巻きつけることで燃焼芯3とすることができる。
図4(c)に示すように、金型5bを金型5aに嵌合した後、金型5bと金型5aとの隙間に加熱して液状になった燃焼剤2を注入する。
図4(d)に示すように、金型5bの頭部にキャップ6を被せてローソクの燃焼先端部の形を整える。その後冷却する。
金型5b、金型5a、およびキャップ6を取り外し、別に準備した栓4を底部に嵌め込むことにより、図4(e)に示すローソク1が完成する。
【0025】
本発明のローソクは、太いローソクでありながら、短時間で燃焼するなど燃焼時間を調節することができる。また、太いローソクであるため、ローソク外面に各種祈願などの表示をすることが容易であり、かつ容易に認識できる。また、流ロウや油煙の発生を抑制しながら松明のように大きな炎を演出できる。
このため、本発明のローソクは、各種イベントなどの光効果を演出するために利用できる。また、万灯祭、万灯籠、万灯流し、または万灯供養会等のローソクとして利用できる。
【0026】
本発明にかかる小型ローソクである万灯ローソクの製造方法について図5により説明する。図5は万灯ローソクの製造工程を示す図である。この万灯ローソク1’は、墓参用ローソク1.5号に準ずるものである。ローソク1’の外径は9.3mmφ、内径は6mmφ、高さ100mmの円筒状であり、内径7.0mmφの位置に紙芯を有している。燃焼剤より突出している紙芯の長さは約10mmである。
図5(a)に示すように、円柱状の金型5a’、円筒状の金型5b’および円筒状の紙芯となる巻紙3’を準備する。金型5a’はローソク1’の内径および高さを規定する太さを有している。金型5b’は金型5a’の基底部5c’に一方の開放端が嵌合する円筒状であり、ローソク1’の外径を規定する内径を有している。
図5(b)に示すように、巻紙3’を金型5a’に被せてセットする。巻紙3’の内径は金型5a’の外径よりも僅かに大きくすることで金型5a’への巻紙3’のセットが容易になる。
図5(c)に示すように、巻紙3’のつなぎ目に不織布または薄紙をあてて燃焼剤2で固定する。なお、図5(b)に示すセットの段階で巻紙3’を燃焼剤2で固定できる場合には、この工程を省略できる。
図5(d)に示すように、金型5b’を金型5a’に嵌合する。その後、図5(e)に示すように、金型5b’と金型5a’との隙間に加熱して液状になった燃焼剤2を注入する。
金型5b’および金型5a’を取り外し、別に準備した栓4を底部に嵌め込むことにより、図5(f)に示す万灯ローソク1’が完成する。
【実施例】
【0027】
各実施例および比較例に用いた燃焼剤および燃焼芯を以下に示す。
燃焼剤:
燃焼剤はパルミチン酸、ステアリン酸およびパラフィン酸との混合物を用いた。
燃焼芯:
(A)不織布C035S/A01−1480 厚み270μm ユニチカ社製
(B)不織布C080S/A26−750 厚み470μm ユニチカ社製
(C)不織布C150S/A07−1200 厚み1050μm ユニチカ社製
(D)不織布C060S/A18 厚み400μm ユニチカ社製
(E)綿糸20番手x2本をリリアン編み機26針で編んだ編物
(F)綿糸20番手x4本をリリアン編み機8針で編んだ編物
(G)綿糸20番手x10本をリリアン編み機20針で編んだ編物
(H)綿糸20番手x3本をリリアン編み機16針で編んだ編物
(I)縦型リリアンで綿糸20番手4本と20番3本を6対4の比率で変形させて編んだ編物
(J)奉書紙、厚さ0.09mm
【0028】
実施例1〜3
円柱金型および円筒金型を用いて、外径(T)26mmφ、内径21mmφ、肉厚さ(t)2.50mm、高さ250mmのローソクを製造した。用いた燃焼芯を表1に示す。
図4(a)に示す円柱金型に燃焼芯を被せた。実施例1および2は、筒状編物の編目を拡張しながら円柱金型に被せて形状を整えた。実施例3は、不織布を連続した筒状になるように円柱金型に燃焼芯を巻きつけた。
円柱金型に円筒金型を嵌合し、円柱金型と円筒金型との隙間に液状燃焼剤を注入した。液状燃焼剤が固化する前に、金型の頭部にキャップを被せてローソクの燃焼先端部の形を整え、その後冷却した。
金型からローソクを取り外した後、上記燃焼剤で予め成形した栓を底部に嵌め込み、実施例1〜3のローソクを得た。
【0029】
比較例1
外径(T)26mmφ、高さ250mmの従来型の円柱状のローソクを円筒金型を用いる従来の方法で製造した。なお、ローソクは円柱状であるので、本願発明で定義される肉厚さ(t)は外径(T)の半分の長さの13mmとなる。燃焼芯は綿糸を用いた。
【0030】
実施例1〜3および比較例1で得られたローソクの燃焼試験を行ない、煤係数と、流ロウの有無を測定した。結果を表1に示す。
煤係数は、ヨーロッパのローソク工業会が使用している測定器を使用して、該方法で測定した(RAL−GZ 041準拠)。但し、煤測定ガラス面とローソク先端部との距離を40cmとし、20分間燃焼させた。各実施例および比較例とも全て同じ条件で測定した。結果を表1に示す。また、流ロウの有無は煤係数測定後のローソクを目視することで行なった。
煤係数は、以下の式で求めた。

煤係数=100×[1−(E1/E0)]×60/燃焼時間(20分)

ここで、E1は煤のついたガラスプレートを透過する光の強さ、E0は煤のつかないきれいなガラスプレートを透過する光の強さをそれぞれ表す。
【0031】
実施例4〜30、比較例2〜4
円柱金型および円筒金型を用いて、外径(T)32mmφ、肉厚さ(t)1.50〜6.00mm、高さ250mmのローソクを、実施例4〜30および比較例3、4は実施例1と同様にして、比較例2は比較例1と同様にして製造し、得られたローソクの外側に0.07mm厚さの和紙を巻きつけた。厚み比率および用いた燃焼芯を表1に示す。
実施例1と同様にして、煤係数および流ロウの有無を測定した。結果を表1に示す。なお、比較例4は厚み比率が小さく、ローソクとしての成形が困難であった。そのため、その後の評価試験を中止した。
また、実施例17〜26および比較例2の煤の発生状況を図6および図7に、実施例17および比較例2の流ロウの発生状況を図8に示す。図6および図7に見られるように、各実施例は比較例2よりも煤の発生が少ないことが目視でも確認された。また、図8に見られるように、従来のローソクは流ロウの発生が明らかに見られた。
【0032】
燃焼時間を時間当たりの燃焼量で測定した結果、実施例17(ローソクの重量は116.2g)が47.4g/h、実施例18(ローソクの重量は91.8g)が50.4g/h、実施例19(ローソクの重量は75.8g)が51.9g/h、実施例20(ローソクの重量は51.7g)が63.9g/h、実施例21(ローソクの重量は40.0g)が68.4g/hであり、厚み比率が小さくなる、すなわち円筒状ローソクの厚みが薄くなると共に、時間当たりの燃焼量が増加する、すなわちローソクの燃焼時間を短くすることができた。
ローソクの燃焼時間を具体的に比較すると、実施例17の燃焼時間は2.44時間、実施例18の燃焼時間は1.82時間、実施例19の燃焼時間は1.46時間、実施例20の燃焼時間は0.81時間、実施例21の燃焼時間は0.58時間であり、燃焼時間は2.44時間から0.58時間の間で調節することができた。
【0033】
実施例31および32、比較例5
円柱金型および円筒金型を用いて、外径(T)65mmφ、肉厚さ(t)7.50mm、高さ250mmのローソクを、実施例1と同様にして、比較例5は比較例1と同様にして製造した。厚み比率および用いた燃焼芯を表1に示す。
実施例1と同様にして、煤係数および流ロウの有無を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例33および34
実施例27および28で得られたローソクの外側に和紙を巻いた。具体的には、0.07mm厚さの和紙を筒状に巻きつけた。
実施例1と同様にして、煤係数および流ロウの有無を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
実施例35および比較例6
円柱金型および円筒金型を用いて、外径(T)9.3mmφ、内径6.3mmφ、肉厚さ(t)1.65mm、高さ100mmのローソクを図5に示す工程に準じて製造した。燃焼芯は0.09mm厚さの奉書紙を用いた。奉書紙は筒状体の先端燃焼部を先細り形状に成形することなく、筒状体のままとした。厚み比率および用いた燃焼芯を表1に示す。また、比較例6として、外径(T)9.3mmφ、高さ100mmの従来型の円柱状のローソクを、奉書紙でない一般和紙を燃焼芯とし、円筒金型を用いる従来の方法で製造した。
実施例1と同様にして、煤係数および流ロウの有無を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のローソクは、消えにくく、かつ燃焼時間を調節することができるので、万灯祭などの屋外イベントに利用できる。また、墓参用ローソクとして利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ローソク
2 燃焼剤
3 燃焼芯
4 栓
5 金型
6 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された燃焼剤と、この燃焼剤内に固定された燃焼芯とからなるローソクであって、
前記燃焼剤は、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25となる筒状体に成形されており、
前記燃焼芯は、前記筒状体内に該筒状体と同心に内包固定されていることを特徴とするローソク。
【請求項2】
前記燃焼剤は、前記筒状体の先端燃焼部が先細り形状に成形されており、
前記燃焼芯は、前記先端燃焼部にて集合されて前記燃焼剤より露出していることを特徴とする請求項1記載のローソク。
【請求項3】
前記燃焼芯が筒状体となる、不織布、織物または編物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のローソク。
【請求項4】
前記不織布、織物または編物が筒状不織布、筒状織物または筒状編物であり、かつ筒の円周方向で非対称構造の織構造または編構造を有することを特徴とする請求項3記載のローソク。
【請求項5】
前記燃焼芯が筒状体となる、紙であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のローソク。
【請求項6】
前記筒状体の底部に栓を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のローソク。
【請求項7】
前記筒状体が円筒状であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のローソク。
【請求項8】
前記筒状体の外周にさらに紙を巻くことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載のローソク。
【請求項9】
請求項1記載のローソクの製造方法であって、
基底にフランジ部を有する柱状金型に筒状体となるように不織布、織物、編物または紙を被せる工程と、
前記柱状金型の基底に、(筒の肉厚さ/筒の外径)の値が0.04〜0.25となる筒状体を形成できる筒状金型の開放端を嵌合する工程と、
前記柱状金型と前記筒状金型で形成される隙間に溶融した燃焼剤を注入する工程と、
前記柱状金型と前記筒状金型とを取り外す工程とを備えることを特徴とするローソクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38068(P2011−38068A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293813(P2009−293813)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(592102869)カメヤマ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】