説明

ローソク

【課題】屋外用ローソクであっても、全周にわたって一定の燃焼を維持し、燃焼剤を効率良く利用できるので燃焼時間を長くすることができ、また流ロウを少なくできるローソクを提供する。
【解決手段】円柱状に成形された燃焼剤1と、この燃焼剤の外周に固定された燃焼筒とからなるローソクであって、上記燃焼筒は、燃焼剤側に少なくとも硫酸紙を配した積層芯であり、燃焼剤側から第1の硫酸紙2a、不織布3、および第2の硫酸紙2bの順に積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローソクに関し、特に屋外にあっても燃焼が一定であり、流ロウの少ないローソクに関する。
【背景技術】
【0002】
長い歴史を持つローソクは、近年、イベントなどで装飾的に用いられることが多くなってきている。例えば、各地に残る万灯祭、万灯籠もしくは万灯流し、または神社仏閣での万灯供養会等では多数のローソクが使用される。また、屋外での芸能リサイタル、演劇イベント等でも多数のローソクがショーの光効果を演出するために使用される。
風が吹いても消えにくく、屋外で安全に使用でき、さらに流ロウを少なくできるローソクとして、燭心の周りをロウ材で固めたローソク本体に和紙を巻き、この和紙の表面にロウ材を被覆したローソク(特許文献1)、捲回されて筒に形成された和紙の内方に位置させた円筒状のろうより構成されているろうそく(特許文献2)、燃焼剤と、少なくとも該燃焼剤外周面に装着配置された燃焼芯部からなる燃焼本体の外周面に、合成樹脂と植物繊維とを一体化させた薄状の複合体を装着配置してなるローソク(特許文献3)等が知られている。
【0003】
しかしながら、従来の屋外用ローソクは、屋内用のローソクに比較して太い燃焼芯を用いたものが多く、溶融した燃焼剤がローソクの外周面にそって垂れろうそく下部にて固化し、あるいは屋外の風によりろうそく足元周辺に飛び散り、また燃焼後も残渣として残るという問題がある。
【0004】
また、ローソクの外周面を和紙などで巻いたローソクであっても、燃焼剤の燃焼が外周全周にわたって一定に燃焼するのが困難であり、液状化した燃焼剤が外周の一部から流れ落ち易くなる。そのため、実際の燃焼に利用される燃焼剤量が少なくなり、従来の屋外用ローソクは燃焼時間が短くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−43604
【特許文献2】特開平5−320689
【特許文献3】特開平10−140181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、屋外用ローソクであっても、全周にわたって均一な燃焼速度を維持し、燃焼剤を効率良く利用できるので燃焼時間を長くすることができ、また流ロウを少なくできるローソクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローソクは、円柱状に成形された燃焼剤と、この燃焼剤の外周に固定された燃焼筒とからなるローソクであって、上記燃焼筒は、燃焼剤側に少なくとも硫酸紙を配した積層芯であることを特徴とする。
特に、積層芯が燃焼剤側から第1の硫酸紙、不織布、および第2の硫酸紙の順に積層されていることを特徴とする。
また、燃焼剤の外周に積層される第1および第2の硫酸紙が同一種類および厚さの硫酸紙であることを特徴とする。
本発明のローソクは、上記燃焼筒が燃焼することにより、液状化した燃焼剤の上表面が燃焼剤側に配された硫酸紙の燃焼面と略一定となりながら燃焼することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のローソクは、円柱状に成形された燃焼剤側に、少なくとも硫酸紙を配した積層芯であるので、特にこの燃焼剤側から第1の硫酸紙、不織布、および第2の硫酸紙の順に積層されている燃焼筒を備えているので、燃焼筒が均一な燃焼速度で燃焼する。そのため、燃焼剤を効率良く利用できるので燃焼時間を長くすることができ、また流ロウを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ローソクの断面図である。
【図2】ローソクの燃焼状態を示す断面図である。
【図3】ローソクの燃焼状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のローソクの一例を図1に示す。図1はローソクの断面図である。
ローソクは、円柱状に成形された燃焼剤1と、この燃焼剤1の外周に積層された第1の硫酸紙2a、不織布3、および第2の硫酸紙2bとからなる積層芯を有する。主燃焼芯となるのは不織布3である。
【0011】
燃焼剤1の材質としては、パラフィンワックス、フィシャトロピッシュワックス、天然ガスワックス、ポリエチレンワックス、植物ロウ、蜜ロウなど、従来ローソクの燃焼剤として使用されている材料を単独でまたは混合して使用することができる。これらの中で、植物性高級脂肪酸類を主成分とするものが本発明に好適である。植物性高級脂肪酸類は筒状体2aの筒の厚さを薄くしてもローソクとしての機械的強度を保つことができるので、本発明のローソクの太さおよび筒の厚さを任意に調節することができ、ローソクの燃焼時間を容易に調整することができる。また、植物性高級脂肪酸類はローソク燃焼時に不快なにおいが発生せず、変色(黄変)や燃焼時の煙の発生を抑制することができる。
【0012】
植物性高級脂肪酸としては、炭素数12〜18の飽和脂肪酸であることが好ましく、例えば、ミリスチン酸(炭素数14、融点54℃)、パルミチン酸(炭素数16、融点63〜64℃)、ステアリン酸(炭素数18、融点69〜70℃)、アラキジン酸(炭素数20、77.5℃)等の飽和脂肪酸、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)等の不飽和脂肪酸の高度水素添加物を使用できる。
また、植物性高級脂肪酸に、高級アルコールおよび/または高級脂肪酸グリセリドを副成分として含有させることができる。高級アルコール、高級脂肪酸グリセリドとしては、従来ローソク製造に使用されているものであればいずれも好適に使用することができる。具体的には、高級アルコール:ステアリルアルコール、セチルアルコール等の炭素数16以上のアルコール、高級脂肪酸グリセリド:ステアリン酸グリセリド、パルミチン酸グリセリド、ミリスチン酸グリセリド、ラウリン酸グリセリド、オレイン酸グリセリド、リノール酸グリセリド等の炭素数12以上の脂肪酸グリセリド、等が例示でき、これらの中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0013】
燃焼剤1の形状は円柱状であれば使用できる。好ましい円柱の形状としては、真円、楕円、異形円などが挙げられる。これらの中で、真円は燃焼が外周全体にわたり均一に進むので好ましい。
燃焼剤1内部には燃焼芯を設けることなく、燃焼剤1の外周に積層された燃焼筒が燃焼芯となる。
【0014】
ローソクの大きさとしては、ローソクの高さが約500mmまで、全体の外径が約85mmまでであることが好ましい。
ローソクの大きさがこの範囲内であれば、イベントなどに使用するための屋外ローソクとして使用時に折れたりすることがなく数時間燃焼を続けることが可能となる。また、ローソクの外表面に宣伝広告、開催イベント名など大きく明瞭に表示できる。
【0015】
燃焼筒となる積層芯は燃焼剤側に少なくとも硫酸紙を配し、この硫酸紙の外周に主燃焼芯を積層する。また、積層芯の最外層には硫酸紙を配することが好ましい。
好ましい積層芯の構造は、第1の硫酸紙2a、不織布3、および第2の硫酸紙2bが順に積層された構造である。
【0016】
燃焼剤1の外周面に第1の硫酸紙2a、不織布3、および第2の硫酸紙2bを順に積層して燃焼筒となる積層芯を形成する。第1の硫酸紙2a、不織布3、および第2の硫酸紙2bからなる燃焼筒は、燃焼剤1の外周面に順に巻きつけることにより積層することも、あるいは、あらかじめ円筒状に成形した筒状体を重ねあわせて、燃焼剤1の外周面に固定できる。さらに、これらの組み合わせであってもよい。巻きつける方法としては、例えばテープ状の不織布等をスパイラルに巻くことで得ることができる。スパイラルに巻く場合、テープの幅方向端部同士を突合せても、または重ねあわせてもよい。あるいは、幅広の不織布等の幅方向端部同士を筒状体に突合せ、重ねあわせることができる。
【0017】
硫酸紙は、加工紙の1つであり、パルプから抄造した原紙を濃硫酸に通して表面の繊維を変性させたもので、薄くて耐水・耐油性がある。パーチメント紙あるいは擬羊皮紙ともいう。
硫酸紙の市販品としては、王子特殊紙株式会社製、商品名ドリープが好ましく使用できる。ドリープはドリープ原紙を硫酸溶液で処理し、紙の繊維を粘り強い半透明なゼラチン状のアミロイドと呼ばれる物質に変えたもので、このアミロイドは、紙の繊維をお互いに結びつけ、紙の細孔を塞ぐことで、以下の特性を有する。
耐油性:アミロイドの作用によって、一般の紙と比べて耐油度が強い。
耐水性:湿潤強度が強く水に強い。
保香性:外気との通気を防ぎ内部の香気を保つ。
強い強度:アミロイドの作用により、一般の紙と比べ、引き裂き強度・引っ張り強度が強い。
剥離性:紙の表面強度が強く繊維が剥がれないため、弱剥離性がある。
半透明性:半透明性により、製品・印刷物等の美装性が表現できる。
上記特性を有するドリープとしては、ドリープF、ドリープW、ドリープWS、アートドリープなどが挙げられる。これらの中でもドリープFが好ましい。
【0018】
不織布は、木綿、麻糸等の天然植物性繊維、レーヨン等の再生繊維を用いて不織布を好ましく使用できる。
硫酸紙と不織布との積層順は、燃焼剤側から第1の硫酸紙、不織布、および第2の硫酸紙の順が好ましい。燃焼剤側に第1の硫酸紙を最初に積層することにより、液状化した燃焼剤が第1の硫酸紙から漏れなくなり、燃焼剤の上表面が第1の硫酸紙の上面と略一定になる。
また、第1および第2の硫酸紙が同一種類および厚さの硫酸紙であることが、燃焼が均一になるため好ましい。
【0019】
なお、主燃焼芯として、不織布以外に、木綿、麻糸等の天然植物性繊維、レーヨン等の再生繊維を用いた織物または編物を使用することができる。織物または編物を用いる場合、継ぎ目のない長尺の筒状織物または筒状編物とすることができる。筒状織物は円筒織機で、筒状編物はシームレス編機で製造することができる。
また、主燃焼芯として、上記不織布、織物または編物以外に、紙を使用することができる。
紙は植物繊維を薄葉体でシート状にしたものであって織っていないものである。植物繊維としては、木材、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、麻、綿、リンター、マニラ麻、エスパルト、ワラ、竹、バガス、ケナフ、古紙などから採取されるパルプが例示される。
【0020】
燃焼筒は燃焼剤1の外周に積層芯として少なくとも硫酸紙を含む燃焼芯を巻きつけることで形成できる。巻きつけるときには、ポリビニルアルコールを主成分とした水糊、酢酸ビニル系共重合体を主成分とした水糊等の紙用接着剤を利用できる。または、ロウを含浸することで固定することもできる。
【0021】
図1に示すローソクの燃焼状態を図2により説明する。本発明のローソクの燃焼は、図2(a)〜図2(c)のサイクルで継続する。図2(a)〜図2(c)において、1aは、燃焼芯の熱により液状化した燃焼剤、4は炎の状態をそれぞれ表す。
不織布3に点火することで、炎4が不織布3を伝わって下りていくにつれ、固形の燃焼剤(ロウ)1が溶けて液状化した燃焼剤1aとなる(図2(a))。
不織布3が液状化した燃焼剤1aを吸い上げながら燃焼をする。液状化した燃焼剤1aの周りの第1の硫酸紙2aは、液状化した燃焼剤1aに冷やされることにより燃焼しない(図2(b))。
不織布3が液状化した燃焼剤1aを吸い上げ燃焼し、その液面が下がることにより露出した部分の第1の硫酸紙2aおよび第2の硫酸紙2bが燃焼する(図2(c))。
燃焼が図2(a)〜図2(c)のサイクルで継続することにより、液状化した燃焼剤1aの上表面が第1の硫酸紙2aの燃焼面と略一定となりながら燃焼する。
【0022】
本発明のローソクは、燃焼剤を効率的に燃焼させることができるので、燃焼時間を長くすることができるとともに、流ロウを少なくできる。
このため、本発明のローソクは、各種イベントなどの屋外で使用されるローソクとして利用できる。
【実施例】
【0023】
実施例および各比較例に用いた燃焼剤および燃焼芯を以下に示す。
燃焼剤:
燃焼剤はパルミチン酸、ステアリン酸およびパラフィン酸との混合物を用いた。
燃焼芯:
(A)硫酸紙は王子特殊紙株式会社製、商品名ドリープF(連量96kg[四六判])を用いた。
(B)不織布は、ユニチカ社製、C035S/A01−1480(厚さ0.28mm)を用いた。
(C)コピー用紙(坪量64g/m2)、画用紙(厚さ0.30mm)、および半紙(厚さ0.07mm)はそれぞれ市販品を用いた。
【0024】
実施例1および比較例1〜4
金型を用いて、外径(T)33mmφ、高さ200mmの燃焼剤を製造した。この燃焼剤の外周に以下に示す積層順で燃焼筒を形成した。積層時の接着剤としては、酢酸ビニル系共重合体を主成分とした水糊を用いた。
実施例1:(内)ドリープF1重巻き−(中)不織布2重巻き−(外)ドリープF1重巻き
比較例1:(内)コピー用紙1重巻き−(中)不織布2重巻き−(外)コピー用紙1重巻き
比較例2:(内)画用紙1重巻き−(中)不織布2重巻き−(外)画用紙1重巻き
比較例3:(内)半紙1重巻き−(中)不織布2重巻き−(外)半紙1重巻き
比較例4:(内)不織布1重巻き−(中)不織布2重巻き−(外)不織布1重巻き
【0025】
得られた実施例1および比較例1〜4のローソクを用いて、以下の燃焼テストを行なった。結果を表1に示す。また、燃焼状態を図3−1〜図3−5に示す。図3−1が実施例1の燃焼状態を、図3−2が比較例1の燃焼状態を、図3−3が比較例2の燃焼状態を、図3−4が比較例3の燃焼状態を、図3−5が比較例4の燃焼状態を、それぞれ表す。
(1)はかりの上に「受け・燭台」を用意し、はかりを0グラムにあわせる。
(2)燭台にローソクをセットし、ローソクの重量を測定する。
(3)扇風機を用意し、首を振らずに、ローソクに風速1〜1.5m/secの風が当たるようにセットする。風速は日本カノマックス株式会社製、ANEMOMASTER MODEL 6003/6004を使用して測定する。図3−1〜図3−5において、風は図面左側から当たるようにセットした。
(4)ローソクに点火し、扇風機を回す。
(5)15分ごとにローソクの重量を測定する。
(6)燃焼後に「受け・燭台」に垂れたロウの重量を測定する。
【0026】
【表1】

【0027】
表1および図3−1に示すように、実施例1は、各比較例に比較して燃焼炎が小さく、ロウ垂れはほとんどなかった。燃焼の最後にロウ垂れがわずかに発生した。
表1および図3−2に示すように、比較例1は、ローソクの風が当たっていない側の燃焼が進み、風を受けている側は燃焼の進行が遅く、斜めに燃えていった。ロウ垂れはほとんどなかったが、燃焼の最後にロウ垂れが発生した。
表1および図3−3に示すように、比較例2は、比較例1と同様に、風の当たっていない側の燃焼が進み、受けているほうは燃焼の進行が遅く斜めに燃えていった。また、燃焼開始後、約12分で流ロウが始まり、約20分でローソクの下の方に火がつき、ローソク全体が炎に包まれ、ロウ垂れが加速した。
表1および図3−4に示すように、比較例3は、比較例1および比較例2より良好であるが、やはり風の当たっていない側の燃焼が進み、受けているほうは燃焼の進行が遅く斜めに燃えていった。また、燃焼開始後、約5分で流ロウが始まった。
表1および図3−5に示すように、比較例4は、比較例1と同様に、風の当たっていない側の燃焼が進み、受けているほうは燃焼の進行が遅く斜めに燃えていった。また、燃焼開始後、約37分でローソクの下の方に火がつき、ローソク全体が炎に包まれ、ロウ垂れが加速した。燃焼開始後、約5分で流ロウが始まった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のローソクは、燃焼筒が均一に燃焼するため、燃焼剤を効率良く利用でき、燃焼時間を長くすることができるので、屋外イベントに利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 燃焼剤
2 硫酸紙
3 不織布
4 炎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に成形された燃焼剤と、この燃焼剤の外周に固定された燃焼筒とからなるローソクであって、
前記燃焼筒は、前記燃焼剤側に少なくとも硫酸紙を配した積層芯であることを特徴とするローソク。
【請求項2】
前記積層芯が燃焼剤側から第1の硫酸紙、不織布、および第2の硫酸紙の順に積層されていることを特徴とする請求項1記載のローソク。
【請求項3】
前記第1および第2の硫酸紙が同一種類および厚さの硫酸紙であることを特徴とする請求項2記載のローソク。
【請求項4】
前記燃焼筒が燃焼することにより、液状化した前記燃焼剤の上表面が前記燃焼剤側に配された硫酸紙の燃焼面と略一定となりながら燃焼することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のローソク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−7100(P2012−7100A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145123(P2010−145123)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(592102869)カメヤマ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】