説明

ロータリーカッタ装置及び印刷装置

【課題】ロータリーカッタ装置の構造や製造工程を簡素化し、製造コストを低減する。
【解決手段】筐体612に対し回転可能に支持され、直線状に伸びる第1刃先部621bを有する第1平刃621を備えた回転体620と、直線状に伸びる第2刃先部631bを有する第2平刃631を備えた保持体630と、を有するロータリーカッタ装置610であって、回転体620は、第1刃先部621bが回転軸心Oと平行となるように第1平刃621を支持する平刃取付部624を備えており、保持体630は、第2平刃631の取付面方向が回転軸心Oと所定間隔を介し平行となるように、かつ、第2平刃631の取付面方向と直交する方向から見たとき、第2刃先部631bを含む直線と回転軸心Oとが所定の角度αを持って配設されるように第2平刃631を保持可能な保持部632を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断するロータリーカッタ装置及びこれを用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される被切断物に対し、搬送を停止させることなく切断を行える、ロータリーカッタ装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のロータリーカッタ装置では、円筒形の胴部の外周に螺旋状の刃物が設けられ、その刃物の各部を順次被切断物に切り込ませることで、被切断物に対し直線的に切断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭60−1997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、螺旋状の形状をした特殊な刃物が用いられ、その刃物が円筒形の胴部の外周に設けられるので、構造が複雑である。また、その胴部に螺旋状の刃物を設置するとき、胴部からの刃物の突出寸法等の寸法管理を非常に高精度に行う必要があるので、製造工程が複雑化し、製造コストの増大を招いていた。
【0005】
本発明の目的は、構造や製造工程を簡素化でき、製造コストを低減できるロータリーカッタ装置及び印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、筐体と、前記筐体に対し回転可能に支持され、直線状に伸びる第1刃先部を有する第1平刃を備えた回転体と、前記筐体に支持され、直線状に伸びる第2刃先部を有し、前記第1平刃と協働して被切断物を切断する第2平刃を備えた保持体と、を有するロータリーカッタ装置であって、前記回転体は、回転軸心のまわりに回転可能となるように前記筐体に設けられ、前記第1刃先部が前記回転軸心と平行となるように前記第1平刃を支持する回転側支持部を備えており、前記保持体は、前記第2平刃の取付面方向が前記回転軸心と所定間隔を介し平行となるように、かつ、前記第2平刃の取付面方向と直交する方向から見たとき、前記第2刃先部を含む直線と前記回転軸心とが所定の角度を持って配設されるように、前記第2平刃を保持可能な固定側保持部
を備えていることを特徴とする。
【0007】
本願発明のロータリーカッタ装置は、筐体と、回転体と、保持体とを有する。回転体に備えられた第1平刃が、回転体の回転とともに、保持体に備えられた第2平刃と協働し、動いている状態の被切断物に対し直線的な切断を行う。回転体は、第1平刃を支持する回転側支持部を備えている。第1平刃は、第1刃先部が回転軸心と平行となるように、回転側支持部に支持される。回転体が回転すると、第1刃先部は回転軸心を中心とした円筒形の回転軌跡(第1回転軌跡)を描く。
一方、保持体は、第2平刃を支持する固定側保持部を備えている。第2平刃は、取付面方向が回転軸心と平行となるように固定側保持部によって支持される。このとき、仮に第2平刃の第2刃先部が回転軸心と平行に配置されていたとすると、上記のようにして回転軸心を中心とする円筒形の上記第1回転軌跡を回転してくる第1刃先部の全領域が、ほぼ同じタイミングで第2刃先部に近接し突き合わされることになる。このため、当該突き合わせ部位に被切断物を導入したとしても、それら第1刃先部及び第2刃先部の全領域が同一のタイミングで被切断物に切り込むこととなる結果、せん断に要する力が非常に大きくなり、円滑に切断を行うことができない。
【0008】
そこで、本願発明では、上記と異なり、第2平刃の第2刃先部を回転軸心に対し非平行(ねじれの位置)となるように配置する。具体的には、第2平刃の取付面方向と直交する方向から見たときに、第2刃先部を含む直線と回転軸心とが所定の角度を持って配設される。これにより、回転軸心を中心とする円筒形の上記第1回転軌跡の外縁線に対し第2刃先部が斜交するような位置関係となる。その結果、当該第1回転軌跡を回転してくる第1刃先部は、直線形状のうちの一端部がまっ先に第2刃先部へ近接し接触した後、回転の進行に伴い、第2刃先部へ近接し接触する部位が上記一端部から他端側へ向かって徐々に直線的に移行していく。これにより、当該第1刃先部と第2刃先部との接触部位に被切断物を導入すると、上記一端部において被切断物への切り込みを開始した後、徐々に上記他端部側へと直線的に被切断物を切り進めることができる。すなわち、上記角度がシャー角として機能することとなってせん断に要する力は比較的小さくて足り、円滑に切断を行うことができる。
【0009】
以上の結果、本願発明のロータリーカッタ装置においては、円筒形の胴部の外周に設けた螺旋状の刃物の各部を順次被切断物に切り込ませ被切断物に対し直線的に切断を行う通常のロータリーカッタと同様の切断態様を、平刃のみを用いた構成により実現することができる。これにより、上記螺旋状の刃物を用いる構造と異なり、構造を簡素化できるとともに製造工程を簡素化でき、さらに製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造や製造工程を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるロータリーカッタ装置を備えたラベル作成装置の概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示したラベル作成装置の正面図である。
【図3】図1に示したラベル作成装置の側面図及び断面図である。
【図4】ラベル作成装置の制御系を表す機能ブロック図である。
【図5】印字ラベルの外観の一例を表す上面図及び下面図である。
【図6】図5中VI‐VI′断面による横断面図である。
【図7】ロータリーカッタ装置を正面側斜め上方から見た斜視図である。
【図8】ロータリーカッタ装置を背面側斜め上方から見た斜視図、及び、ロータリーカッタ装置を正面側斜め上方から見た斜視図である。
【図9】ロータリーカッタ装置の平面図及び背面図である。
【図10】水平な保持体に対して回転体の回転軸心を斜め配置した本発明の一実施形態の要部構成を表す背面図及び側面図、水平な回転体の回転軸心に対して保持体を斜め配置した変形例を表す背面図及び側面図である。
【図11】回転体と保持体との間へのラベル用テープの導入態様を表す、ロータリーカッタ装置の要部斜視図、及び、図11(a)中A方向から見た概念的側面図である。
【図12】回転体の第1切断刃の第1刃先部と保持体の第2切断刃の第2刃先部との擦り合わせによるラベル用テープの切断の推移を表す、説明図である。
【図13】図12中のL1−L1断面、L2−L2断面、MID−MID断面、R2−R2断面、R1−R1断面による横断面図、及び、それら各断面のうち第1刃先部と第2刃先部とが摺り合わされている部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明のロータリーカッタ装置を、印刷装置としてのラベル作成装置に適用した場合の実施形態である。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、各図中に適宜示す矢印方向に対応している。
【0013】
図1に示すように、ラベル作成装置500は、ラベル作成装置本体1と、ロータリーカッタ装置610と、を備えている。
【0014】
<ラベル作成装置本体の構成>
まず、ラベル作成装置本体1の構成を、図1、図2、図3(a)、及び図3(b)を用いて説明する。ラベル作成装置本体1は、筐体2と、透明樹脂製の上カバー5と、筐体2の前側に配置される電源ボタン7等から構成されている。
【0015】
図3(b)に示すように、ラベル作成装置本体1に備えられたテープホルダ収納部4には、テープホルダ3が収納配置されている。またテープホルダ収納部4の上側を覆うように、前述の上カバー5が後側上端縁部に開閉自在に取り付けられている。
【0016】
テープホルダ3には、所定幅のラベル用テープ3A(被印刷物、被切断物)が回転可能に巻回されている。すなわち、上記ラベル用テープ3Aは、所定の外周径を有する巻芯3Bにロール状に巻回され、テープロールを構成している。上記巻芯3Bの内周側には、軸方向に配置されるように略筒状形状のホルダ軸部材40が設けられる。
【0017】
ラベル用テープ3Aは、この例では3層構造となっており(部分拡大図参照)、ロールの外側に巻かれる側(図3(b)中上側)よりその反対側(図3(b)中下側)へ向かって、剥離紙3a、粘着層3b、自己発色性を有する長尺状の感熱紙(いわゆる、サーマルペーパー)3cの順序で積層され構成されている。感熱紙3cの裏側(図3(b)中上側)に、上記粘着層3bによって上記剥離紙3aが接着されている。この剥離紙3aは、最終的に完成した印字ラベルTが所定の物品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層3bにより当該物品等に接着できるようにしたものである。
【0018】
また、上記ラベル用テープ3Aの上記テープロールからの繰り出し位置の搬送方向下流側には、所望の印字を行うサーマルヘッド31(印字手段)が設けられ、このサーマルヘッド31と対向する位置にはプラテンローラ26(搬送手段)が設けられている。プラテンローラ26は、巻芯3Bに巻回された上記ラベル用テープ3Aを繰り出し、搬出口Eに至る上記搬送経路を搬送する。
【0019】
サーマルヘッド31は、その上下動操作用のレバー(図示省略)を上方に回動させることによりサーマルヘッド31が下方に移動されて上記プラテンローラ26から離間した状態となり、レバーを下方に回動させることにより上方に移動されてラベル用テープ3Aをプラテンローラ26に押圧付勢して印字可能な状態になる。そして、プラテンローラ26をパルスモータ(あるいはステッピングモータ)等により回転駆動しつつ、サーマルヘッド31を駆動制御することによって、ラベル用テープ3Aを搬送しながらラベル用テープ3Aに備えられた印字領域S(後述の図4参照)に対して所望の印字が行われる。そして、印字済みのラベル用テープ3Aは、搬出口Eから排出されてから後述するロータリーカッタ装置610により所望の長さに切断され、これによって印字ラベルT(後述する図5参照)が生成される。なお、図1、図3(a)、及び図3(b)中の破線が、搬送されるラベル用テープ3Aの搬送経路を示している。
【0020】
なお、ラベル作成装置本体1の前方側(搬出口Eから搬送方向下流側)には、ガイド用載置台700が設置されている。このガイド用載置台700からさらに搬送方向下流側に、上記ロータリーカッタ装置610が配置されている。ガイド用載置台700は、搬出口Eから排出されてきた印字済のラベル用テープ3Aを、ロータリーカッタ装置610の第1平刃621(後述)と第2平刃631(後述)との間に導く。
【0021】
<ラベル作成装置本体の制御系>
上記ラベル作成装置本体1の制御系を図4により説明する。図4において、ラベル作成装置本体1には、上記搬送経路におけるラベル用テープ3Aの有無を検出するセンサ239と、上記サーマルヘッド31への通電を制御する印刷駆動回路205と、上記プラテンローラ26を駆動するプラテンローラ用モータ208を制御するプラテンローラ駆動回路209と、印刷駆動回路205、プラテンローラ駆動回路209等を介し、ラベル作成装置本体1全体の動作を制御するための制御回路210と、が設けられている。
【0022】
制御回路210は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。またこの制御回路210は、電源回路211Aにより給電されるとともに、通信回路211Bを介し例えば通信回線に接続され、この通信回線に接続された図示しないルートサーバ、他の端末、汎用コンピュータ、及び情報サーバ等との間で情報のやりとりが可能となっている。なお、ラベル作成装置本体1の前方側に配した上記ロータリーカッタ装置610のモータ638(後述)も、上記制御回路210によって駆動制御される。
【0023】
ロータリーカッタ装置610によりラベル用テープ3Aの切断が完了し形成された印字ラベルTを、図5(a)、図5(b)、及び図6に示す。図示のように、印字ラベルTは、前述の3層構造となっており、表面側(図6中上側)よりその反対側(図6中下側)へ向かって、感熱紙3c、粘着層3b、剥離紙3aの順で積層している。そして、前述のように感熱紙3cの表面に印字R(この例では「AA−AA」の文字)が印刷されている。
【0024】
<ロータリーカッタ装置の概略構成>
次に、本実施形態の要部である上記ロータリーカッタ装置について、図7〜図11により説明する。図7、図8、図9、図10、及び図11に示すように、ロータリーカッタ装置610は、筐体612と、回転体620と、保持体630と、を備えている。そして、ロータリーカッタ装置610は、上記サーマルヘッド31により印字形成された状態のラベル用テープ3Aに対し、上記第1平刃621と、第2平刃631との協働によって直線的な切断を行う。筐体612は、一方側(この例では右側)に第1壁面613を有し、他方側(この例では左側)に第2壁面614を有している。また、筐体612は、第1壁面613と第2壁面614との間を接続する接続部611を備える。
【0025】
なお、上記図1及び図2に示したように、ロータリーカッタ装置610は、筐体612の第1壁面613及び第2壁面614の面方向が鉛直方向からやや左側に傾斜した姿勢で配置されるが、説明の便宜及び図示の見やすさのために、図8(a)、図8(b)、図9(a)、図9(b)、図11(a)、図11(b)においては、筐体612を鉛直方向に戻した姿勢で図示を行っている。
【0026】
<回転体の構成>
回転体620は、一方側の第1ブラケット622と、他方側の第2ブラケット623と、第1ブラケット622と第2ブラケット623との間を接続するようにかつ回転軸心Oまわりに回転可能に筐体612に設けられた回転軸650と、回転軸650に設けられ、回転刃としての第1平刃621を取り付けた平刃取付部624と、を備えている。なお、回転軸650及び平刃取付部624が各請求項記載の回転側支持部を構成している。
【0027】
第1平刃621は、略板状の第1基部621aと、この基部621aの縁部に直線状に延びる第1刃先部621b(図11参照)とを備える。このとき、第1刃先部621bは、図8(a)、図9(b)等に示すように、上記回転軸心Oと平行となるように、上記平刃取付部624及び回転軸650によって支持されている。回転体620が回転すると、第1刃先部621bは回転軸心Oを中心とした円筒形の回転軌跡(第1回転軌跡。図示省略)を描く。
【0028】
<保持体の構成>
保持体30は、固定刃としての第2平刃631を備えた板状の保持部632を有している。また、保持部632は左右両端部に延出部634,634を備えており、この延出部634,634を介し、揺動支持機構635(揺動支持手段。図8(b)参照)によって筐体612に対し揺動可能に支持されている。
【0029】
揺動支持機構635は、図8(a)及び図8(b)に示すように、筐体612の接続部611に立設された左右一対のヒンジアーム641,641と、これらヒンジアーム641,641に回動可能に挿通され、上記保持部632の上記延出部634が両端に固定された支持軸636と、支持軸636のまわりに配置された、鶴巻状のコイルバネ637と、を備えている。保持部632は、延出部634,634に固定された支持軸636がヒンジアーム641に回動可能に支持されることで、保持部632は、筐体612に対し前後に揺動可能となる。このとき、図8(a)に示すように、コイルバネ637の一端(後端)が上記接続部611に固定される一方、コイルバネ637の他端(上端)は上記保持部632の後部に当接しており、この結果コイルバネ637は、保持部632を前方(言い換えれば回転体620へ向かう方向)へ向かって付勢する。この結果、保持部632は、回転体620全体の回転軌跡(第2回転軌跡。図示せず)に対して遠近可能となるように、筐体612に対し揺動可能に支持されることとなる。なお、延出部634を備えた保持部632と、ヒンジアーム641と、支持軸636と、コイルバネ637とが、各請求項記載の固定側保持部を構成する。
【0030】
第2平刃631は、略板状の第2基部631aと、この第2基部631aの縁部において直線状に延びる第2刃先部631bとを備えている。第2平刃631は、第2基部631aが取り付けネジ633で固定されることにより保持部632に保持される。このとき、保持部632は上記のように揺動可能に配置されるが、どの揺動状態においても、第2平刃631の第2刃先部631bが回転軸心Oに対し非平行(ねじれの位置)となるように、保持部632は第2平刃631を保持している。詳細には、上記保持部632のどの揺動状態においても、第2平刃631の第2基部631aの面方向(すなわち第2平刃631の取付面方向)は、上記回転軸心Oと所定間隔を介し平行となる(図9(a)、図9(b)参照)。また、上記保持部632のどの揺動状態においても、第2平刃631は、正面から(言い換えれば第2基部631aの面方向と直交する側面方向から)見たときに、図9(b)に示すように、第2刃先部631bを含む直線と上記回転軸心Oとが、所定の角度αを持って配設される。回転軸心Oと第1刃先部621bとは常に平行であることから、第1刃先部621bと第2刃先部631bとが接触したときの傾斜角度(いわゆるシャー角)がこの角度αと一致する。特に、第2刃先部631bは、切断動作時にラベル用テープ3Aの搬送面内において直線状に延びるように、保持される。
【0031】
上記の結果として、上記回転体620が回転したときに第1刃先部621bの描く円筒形の第1回転軌跡が、第2刃先部631bに対して接触するように、上記第1平刃621は上記平刃取付部624に支持され、上記第2平刃631は上記保持部632に保持されることとなる。これにより、回転軸心Oを中心とする円筒形の上記第1回転軌跡の外縁線に対し、第2平刃631の第2刃先部631bが斜交するような位置関係となる。
【0032】
なお、本実施形態では、図10(a)に示すように、正面側から見て、ラベル用テープ3Aの搬送経路が(言い換えれば第2刃先部631bが)水平となり、かつ回転体620の回転軸心Oが上記水平方向に対して傾斜するように、回転体620及び保持体630を配置したが、これに限られない。すなわち、図10(b)に示すように、正面側から見て、回転体620の回転軸心Oが水平となり、かつラベル用テープ3Aの搬送経路が(言い換えれば第2刃先部631bが)上記水平方向に対して傾斜するように、回転体620及び保持体630を配置してもよい。
【0033】
<駆動力の伝達>
一方、筐体612の第2壁面614側の下方には、回転体620の駆動手段として機能するモータ638が設けられている。これに対応して、第2壁面614の外面には、第2壁面614を貫通したモータ638の駆動軸651(図8(b)参照)と第2壁面614を貫通した回転体620の回転軸650との間を作動連結可能な、ギア列からなる駆動伝達機構639が設けられている。モータ638は、第1平刃621の第1刃先部621bが上方から上記第2平刃631の第2刃先部631bに近接してゆく方向に、駆動伝達機構639を介して回転体620を回転する(図11(b)参照)。これにより、回転体620と保持体630との間に挿入されたラベル用テープ3Aが、(搬送停止することなく)走行状態で切断される。
【0034】
このとき、図8(a)、図7、図11(a)、及び図11(b)に示すように、回転体620の回転軸650の一端(この例では左端)には、側面視略D字形状の回転カム800が固定されている。このとき、第2平刃631のうち、第2刃先部631bより左側に位置する上端部に、突片状の被接触部640が形成されている。この被接触部640は、上記コイルバネ637の付勢力によって、上記揺動状態において回転カム800に圧接係合している。
【0035】
回転カム800は、図11(b)に示すように、第1周方向領域(上記D字形状の円弧部分に相当)801と、第2周方向領域(上記D字形状の直線部分に相当)802と、を備えている。回転カム800は、第1周方向領域801が被接触部640に対向している回転位置においては、当該第1周方向領域801によって被接触部640を後方へ向かって押圧する。これにより、回転カム800は、第2刃先部631bが回転体620全体の回転軌跡(第2回転軌跡)から離脱するように、保持体630を移動させる。一方、回転カム800は、第2周方向領域802が上記被接触部640に対向している状態では、(後述の第1平刃621の第1刃先部621bと第2平刃631の第2刃先部631bとの擦り合わせによって)被接触部801と非接触状態となり、保持体630を解放状態とする(図11(b)に示す状態)。
【0036】
<切断動作>
上記ロータリーカッタ装置610の動作を図12及び図13により説明する。前述したように、本実施形態では、上記回転体620が回転したときに第1刃先部621bの描く、回転軸心Oを中心とする円筒形の回転軌跡(第1回転軌跡)の外縁線に対し、第2平刃631の第2刃先部631bが斜交する位置関係となる。この結果、当該回転軌跡を回転してくる第1刃先部621bは、その直線形状のうちの一端部(この例では左端部)がまっ先に第2刃先部631bへ近接した後、回転の進行に伴い、第2刃先部631bへ近接する部位が左端部から右方へ向かって徐々に直線的に移行していく。図12(a)〜図12(e)、図13(a)〜図13(e)は、このときの挙動を順次表している。
【0037】
すなわち、図12(a)及び図13(a)は、上記第1刃先部621の左端部に近いR1−R1断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。なお、説明の便宜のために、この状態となる回転体620の姿勢(回転角度)を回転位相「0°」とする。
【0038】
その後、回転体620の回転が進行した図12(b)及び図13(b)では、上記第1刃先部621のR1−R1断面よりやや右側にずれたR2−R2断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「4°」である。
【0039】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図12(c)及び図13(c)では、上記第1刃先部621のR2−R2断面よりやや右側にずれた、左右方向中央部のMID−MID断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「8°」である。
【0040】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図12(d)及び図13(d)では、上記第1刃先部621のMID−MID断面よりやや右側にずれたL2−L2断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「12°」である。
【0041】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図12(e)及び図13(e)では、上記第1刃先部621のL2−L2断面よりやや右側にずれた、右端部近くのL1−L1断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「16°」である。
【0042】
以上のようにして順次移行する第1刃先部621bと第2刃先部631bとの接触部位にラベル用テープ3Aを導入することにより、上記左端部においてラベル用テープ3Aへの切り込みを開始した後、徐々に上記右方へと直線的にラベル用テープ3Aを切り進めることができる。そしてこのとき、前述の角度αがシャー角として機能するので、比較的小さいせん断力で円滑に切断を行うことができる。
【0043】
上述したように、本実施形態のロータリーカッタ装置610によれば、円筒形の胴部の外周に設けた螺旋状の刃物の各部を順次被切断物に切り込ませ直線的に切断を行う通常のロータリーカッタと同様の切断態様を、2つの平刃621,631を用いた構成により容易に実現することができる。これにより、上記螺旋状の刃物を用いる構造と異なり、構造を簡素化できるとともに製造工程を簡素化でき、さらに製造コストを低減することができる。このとき特に、回転体620の回転軌跡が第2刃先部631bに対し接触する部位にラベル用テープ3Aを導入するので、小さいせん断力で確実に円滑な切断を行うことができる。
【0044】
ここで、上記したように第1刃先部621bのうち第2刃先部631bへ接触する部位を左端部から右方へ向かって直線的に移行させる際、回転体620の第1平刃621の第1刃先部621bが回転軸心Oと平行となっていることから、回転と共に第1刃先部621bと第2刃先部631bとの距離が若干変動する。すなわち、回転体620全体は上記第1回転軌跡よりも若干大きな第2回転軌跡を有する。そこで本実施形態では特に、揺動支持機構635を設けて保持部632を揺動可能に支持する。これにより上記距離の変動を吸収し、上記左端部から右端部への移行の間において第1刃先部621bと第2刃先部631bとを密着させ、摺り合わせることができる。これにより、さらに円滑に切断を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では特に、上述したようにして回転体620の回転の進行に伴い第1刃先部621bと第2刃先部631bとの協働によるラベル用テープ3Aの切断が終わったら、適宜のタイミングで(例えば上記回転位相20°となったとき等)、回転カム800の第1周方向領域801により保持体630の被接触部640への接触を行い、第2平刃631の第2刃先部631bを回転体620から遠ざけることができる。この結果、回転体620のいずれかの部位が誤って回転途中に第2刃先部631bに衝突したり干渉するのを確実に回避して第2刃先部631bの破損等を防止できると共に、回転体620の円滑な回転動作を確保することができる。
【0046】
なお、以上においては、ラベル用テープ3Aに対し印字を行って切断し印字ラベルTを作成したが、これに限られない。すなわち、被切断物(被印刷物)としての被印字テープに印字を行った後に基材テープと貼り合わせ、その貼り合わせたテープを切断して印字ラベルTを作成する方式(いわゆるラミネートタイプ)に本発明を適用してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0047】
なお、以上において、図4中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0048】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0049】
なお、その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 ラベル作成装置本体
3A ラベル用テープ(被印刷物、被切断物)
500 ラベル作成装置(印刷装置)
610 ロータリーカッタ装置
612 筐体
620 回転体
621 第1平刃(回転刃)
621b 第1刃先部
650 回転軸
624 平刃取付部
630 保持体
631 第2平刃(固定刃)
631b 第2刃先部
632 保持部
635 揺動支持機構(揺動支持手段)
800 回転カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に対し回転可能に支持され、直線状に伸びる第1刃先部を有する第1平刃を備えた回転体と、
前記筐体に支持され、直線状に伸びる第2刃先部を有し、前記第1平刃と協働して被切断物を切断する第2平刃を備えた保持体と、
を有するロータリーカッタ装置であって、
前記回転体は、
回転軸心のまわりに回転可能となるように前記筐体に設けられ、前記第1刃先部が前記回転軸心と平行となるように前記第1平刃を支持する回転側支持部
を備えており、
前記保持体は、
前記第2平刃の取付面方向が前記回転軸心と所定間隔を介し平行となるように、かつ、前記第2平刃の取付面方向と直交する方向から見たとき、前記第2刃先部を含む直線と前記回転軸心とが所定の角度を持って配設されるように、前記第2平刃を保持可能な固定側保持部
を備えている
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のロータリーカッタ装置において、
前記固定側保持部は、
前記回転体が回転したときに前記第1刃先部の描く円筒形の第1回転軌跡が、前記第2刃先部に対して接触するように、前記第2平刃を保持する
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のロータリーカッタ装置において、
前記保持体が前記回転体全体の第2回転軌跡に対して遠近可能となるように、前記保持部を前記筐体に対し揺動可能に支持する揺動支持手段を有する
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項4】
請求項3記載のロータリーカッタ装置において、
前記回転体は、
前記保持体に設けた被接触部に接触することで前記第2刃先部が前記第2回転軌跡から離脱するように前記保持体を移動させる第1周方向領域、及び、前記被接触部と非接触状態となって前記保持体を解放状態とする第2周方向領域、を備えた、回転カムを備える
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項5】
被印刷物を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記被印刷物に対し、所望の印字を行う印字手段と、
前記搬送経路に設けられたロータリーカッタと、
を有する印刷装置であって、
前記ロータリーカッタは、
筐体と、
前記筐体に対し回転可能に支持され、直線状に伸びる第1刃先部を有する第1平刃を備えた回転体と、
前記筐体に支持され、前記搬送手段により搬送される前記被印刷物の搬送面内において直線状に伸びるように配置された第2刃先部を有し、前記第1平刃と協働して前記被印刷物を切断する第2平刃を備えた保持体と、
を有し、
前記回転体は、
回転軸心のまわりに回転可能となるように前記筐体に設けられ、前記第1刃先部が前記回転軸心を中心とした円筒形の第1回転軌跡を描くように前記第1平刃を支持する回転側支持部
を備えており、
前記保持体は、
前記第2平刃の取付面方向が前記回転軸心と所定間隔を介し平行となるように、かつ、前記第2平刃の取付面方向と直交する方向から見たとき、前記第2刃先部を含む直線と前記回転軸心とが所定の角度を持って配設されるように、前記第2平刃を保持可能な固定側保持部
を備えている
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−18107(P2013−18107A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155885(P2011−155885)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】