説明

ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置並びにその制御方法

【課題】 ロータリースクリーン印刷機に関し、特にロータリースクリーン駆動モータの電流値によってインキ供給及びスキージ押圧を自動制御する装置並びに制御方法を提供する。
【解決手段】 ロータリースクリーンの駆動モータの電流値を測定し、測定した電流値とあらかじめ設定してある基準となる電流値とを比較して、測定した電流値が基準となる電流値の範囲を逸脱した場合に、自動でインキ供給及びスキージ押圧を調整する自動制御装置並びに自動制御方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリースクリーン印刷機に関し、特にロータリースクリーン駆動モータの電流値によるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置並びにそれらの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スクリーン印刷とは、版面にインキが通過する貫通孔と通過しない非貫通孔を形成し、スキージによりインキを貫通孔から押し出して被印刷物に転写する印刷方式である。
【0003】
スクリーン印刷は、版面が柔軟で印圧が非常に小さくかつインキ皮膜が他の版式と比べて厚いという特徴があるため、被印刷物の材質が自由に選択できるという利点を有する。また、版面の形状は、平面状の版面を用いる平面式と、シリンダ状の版面を用いるロータリー式があり、ロータリー式のスクリーン印刷は、巻取紙への連続模様の印刷が可能である。
【0004】
ロータリー式のスクリーン印刷を用いた装置は、ロータリースクリーン印刷機と呼称され、その構成としては、給紙部、印刷部及び排紙部を有して成る。被印刷物は、給紙部において順次給紙され印刷部へと搬送される。印刷部へ搬送された被印刷物は、圧胴と版胴とによって押圧され印刷が行われる。このとき、版胴へのインキの供給方法は、版胴に内設したインキ供給手段からインキを吐出することで供給される。また、版胴内部に滞留したインキは、版胴の回転に伴い移動を繰り返し、版胴に内在するスキージにより版胴の貫通孔に押し込まれる。そして、貫通孔に押し込まれたインキが対向する圧胴により押圧することで、版胴と圧胴に介在する被印刷物への印刷が行われる。その後、排紙部からロータリースクリーン印刷機外へと排出される。
【0005】
ロータリースクリーン印刷機におけるスキージ押圧の調整及びインキ供給の調整は、安定した印刷品質を保全するために重要な要素である。これまで、スキージ押圧の調整及びインキ供給の調整を行うための様々な工夫が成されている。
【0006】
例えば、スキージ押圧を調整する機構として、ホルダーに保持されたスキージを撓ませないで先端部をスクリーン版面に押圧させた機構が開示されている。これは、スキージを撓んだ状態でスクリーン版面に押圧していると、スキージのスクリーン版面に対する押圧力が幅方向で均一とならず、スキージによりスクリーン版面から押し出されるインキの量が幅方向で異なり、印刷されたインキ層の膜厚がスキージの幅方向にばらついてしまいインキ層の平坦性が悪くなるためであり、その対策として、スキージの撓みを抑制するために、スキージの突出長さ及び先端角度を限定したり、スキージの材質を限定したりといった特徴を持たせている技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、スクリーン印刷においてインキの供給量を調整する機構として、インキをロータリースクリーン版の内面に塗布するスクレッパにインキを供給する供給部と、スクレッパ近傍におけるインキの量を検出するセンサを備え、インキの供給はセンサにより検出されたインキの量に基づいて適宜供給量を制御する機構が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−326485号公報
【特許文献2】特表2006−321100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のスキージ押圧の調整機構は、幅方向におけるスキージ押圧を均一に保つことは可能であるが、経時変化に伴うスキージ押圧の微妙な調整を行うことはできず、オペレータが実施することになっていた。
【0010】
また、特許文献2に記載のインキ供給量の調整機構は、使用に伴いセンサヘッドが汚れることによる誤動作が懸念されている。
【0011】
現在まで、スキージ押圧の調整は、結局のところオペレータが印刷品質を確認しながら実施している。加えて、インキ供給量の調整はオペレータがロータリースクリーン内に残存するインキ残量を目視により確認しながら実施しているため作業が繁忙である。更に連続印刷を実施した場合、スキージ押圧及びインキ供給量がやがて不安定な状態となることから印刷品質にも悪影響を及ぼしており、少なからず改善の余地があった。
【0012】
本発明は、現時点における課題を解決することを目的としたものであり、ロータリースクリーンの駆動モータの電流値を測定し、測定した電流値とあらかじめ設定してある基準となる電流値と比較して、基準となる電流値の範囲よりも逸脱した場合に、自動でインキ供給及びスキージ押圧を調整する機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置は、ロータリースクリーン印刷機におけるロータリースクリーン駆動モータの電流値によってインキ供給及びスキージ押圧の自動制御を行う自動制御装置において、自動制御装置は、使用するインキの特性に応じて、インキに対応した基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量をあらかじめ記憶している管理部と、管理部に記憶してある設定単位時間に対するインキ重量調整量をもとに、インキの供給量を決定し、設定単位時間が経過した際のロータリースクリーン駆動モータの電流値と基本電流値を比較し、比較した結果をもとにスキージ押圧を制御するためのスキージ押し込み調整量を決定する制御部と、制御部による決定をもとに、インキの供給を行い、スキージの押し込みを行う動作部を有することを特徴とする。
【0014】
ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置は、制御部が、管理部にあらかじめ記憶している基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量に対して、ロータリースクリーン印刷機の稼動前に、それぞれ該当する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を設定するデータ設定手段と、ロータリースクリーンの一回転中に対して電流値を検出するタイミングの設定を行う電子タイミング手段と、設定単位時間が経過するごとに電子タイミング手段において設定したタイミングでロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値を検出する検出手段と、検出手段によって得られた電流値と、基本電流値を比較する比較手段と、設定単位時間が経過するごとに、インキ重量調整量をもとに動作部に対してインキの供給を調整する命令を伝播し、比較手段により比較した結果、基本電流値と検出した電流値が異なっている場合に、動作部に対してスキージの押し込み量を調整する命令を伝播する送信手段を有していることを特徴とする
【0015】
ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置は、さらに、データ設定手段における設定値、検出手段における検出値、比較手段における比較結果をそれぞれ表示する表示部を有することを特徴とする。
【0016】
ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御方法は、ロータリースクリーン印刷機におけるロータリースクリーン駆動モータの電流値によってインキ供給及びスキージ押圧の自動制御を行う自動制御方法において、自動制御方法は、ロータリースクリーン印刷機の稼動前に使用するインキの特性に応じてインキに対応した基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を設定し、ロータリースクリーン印刷機の稼動後、常時、設定単位時間が経過したかどうかの判定を行い、設定単位時間が経過していていないと判定された場合は、そのままロータリースクリーン印刷機の稼動を継続し、設定単位時間が経過したと判定された時点でインキ重量調整量に従ってインキの供給を行い、インキの供給が終了した後、ロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値と、基本電流値を比較し、電流値と基本電流値が異なっている場合は、スキージ押し込み調整量に従ってスキージの押し込みによる調整を行い、電流値と基本電流値が同じ場合は、再度、設定単位時間が経過したかどうかの判定を行うことを特徴とする。
【0017】
ロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御方法は、スキージ押し込み調整量に従って、スキージの押し込みを行った後、再度、ロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値と、基本電流値を比較し、電流値と基本電流値が同じ値となるまで、スキージ押し込み調整量に従ってスキージの押し込みを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
ロータリースクリーン内におけるインキの滞留量を安定させることができ、スクリーン版面からのインキ供給量が略同一になったため、長期連続印刷を実施した際においても良質で安定した印刷品質の印刷製品が生産できた。
【0019】
また、スキージ押圧の調整及びインキ供給量の調整が自動となったため、作業負荷の大幅な軽減が可能となった。また、検出手段等をロータリースクリーン印刷機の外部に設置しているため、インキ汚れによる検出手段の誤動作及び故障がなくなり、検出手段の清掃にかかる作業負荷の低減が図れた。
【0020】
また、ロータリースクリーン内におけるインキ量が確実にコントロールできるようになったことから、例えば温度依存に敏感なインキを用いた場合においても、従前まで懸念されていたロータリースクリーン内でのインキの乾燥が抑制でき、その特性を変化させることなく連続印刷が実施できるようになった。更に、インキ不良に伴う機械調整等の不稼動時間が低減でき、生産性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるロータリースクリーン印刷機の断面図を示す。
【図2】本発明におけるロータリースクリーン印刷機の平面図を示す。
【図3】本発明におけるロータリースクリーン駆動モータ電流を利用した自動制御のハード構成図を示す。
【図4】本発明におけるロータリースクリーン駆動モータ電流を利用した自動制御のイメージ図を示す。
【図5】本発明におけるロータリースクリーン駆動モータ電流を利用した自動制御のフロー図を示す。
【図6】本発明におけるロータリースクリーン駆動モータ電流を利用した自動制御の動作例を示す。
【図7】本発明におけるロータリースクリーン駆動モータ電流を利用した自動制御の別形態の動作例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面を参看して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な実施の形態が含まれる。
【0023】
まず、本発明について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明におけるロータリースクリーン印刷機の断面図を示す。図2は本発明におけるロータリースクリーン印刷機の平面図を示す。
【0024】
図1は、ロータリースクリーン印刷機(S)における印刷部(1)を示す断面図である。ロータリースクリーン印刷機(S)は、印刷部(1)、図示しない給紙部及び排紙部等により構成されている。給紙部は、給紙手段及び積載手段から成る。給紙手段は、積載手段から被印刷物(P)を印刷部(1)へと供給する手段である。また、積載手段は、枚葉状の被印刷物(P)を積載する手段である。積載手段上に載置した被印刷物(P)は、供給手段により一枚ずつ給紙される。給紙した被印刷物(P)は、その後、印刷部(1)へと搬送される。
【0025】
印刷部(1)は、圧胴(2)、ロータリースクリーン(3)、インキ供給手段(4)、スキージ(5)、支持体(6)を有している。圧胴(2)は、被印刷物(P)上にインキを転移させるために、被印刷物(P)に圧力を加える手段である。圧胴(2)は円筒状であり、中心部を回転可能な軸芯により支持されている。ロータリースクリーン(3)は、被印刷物(P)に画線部(e)を付与する手段である。ロータリースクリーン(3)は、中空の円筒状であり、模様等の画線部(e)を形成するためにインキを通過させる貫通孔が設けられている。インキ供給手段(4)は、インキ(E)をロータリースクリーン(3)内へ供給する手段である。インキ供給手段(4)は、図示しないインキタンクと接続しており、ポンプ等によりインキタンク内からインキ(E)を吸い上げ、インキ供給手段(4)よりロータリースクリーン(3)内へ吐出する。
【0026】
印刷部(1)において、圧胴(2)及びロータリースクリーン(3)は、本体カバー内において対向して配置している。また、インキ供給手段(4)は、ロータリースクリーン(3)内において、少なくとも一つ以上設置し、好ましくはロータリースクリーン(3)における軸方向と平行となる方向に複数配置する。ロータリースクリーン(3)は、円筒の端部をこの図では図示しない回転体と連結することで回転可能に支持されている。印刷時においては、圧胴(2)及びロータリースクリーン(3)は回転駆動する。
【0027】
図2は、ロータリースクリーン印刷機(S)における印刷部(1)を示す平面図である。印刷部(1)は、図1に示した他に、スキージ押圧調整用モータ(7)、ロータリースクリーン駆動用モータ(8)、減速機(9)、ロータリースクリーン駆動電流検出器(10)を有している。
【0028】
スキージ押圧調整用モータ(7)は、スキージ(5)を支持する支持体(6)の両端に取付けられており、ロータリースクリーン(3)内に配置されたスキージ(5)を、ロータリースクリーン(3)の軸方向に対して前後移動を行い、スキージ(5)とロータリースクリーン(3)の接触圧を調整するためのモータである。なお、スキージ(5)とロータリースクリーン(3)の接触圧の調整は、ロータリースクリーン(3)に対するスキージ(5)の押し込み量により調整される。
【0029】
ロータリースクリーン駆動用モータ(8)は、本体カバー外に配置されており、ロータリースクリーン駆動用モータ(8)を駆動させることで、ロータリースクリーン(3)が回転する。
【0030】
減速機(9)は、ロータリースクリーン(3)とロータリースクリーン駆動用モータ(8)との間に配置されており、減速機(9)を介してロータリースクリーン駆動用モータ(8)がロータリースクリーン(3)の端部とギアにより連結されている。減速機(9)は、高速で回転するロータリースクリーン駆動用モータ(8)の回転数を、ロータリースクリーン印刷機(S)の回転数に減速させるとともに、ロータリースクリーン印刷機(S)を回転させるための駆動トルクを上昇させる役割がある。
【0031】
ロータリースクリーン駆動電流検出器(10)は、ロータリースクリーン駆動用モータ(8)に取り付けられており、ロータリースクリーン(3)の駆動時に発生する電流値を検出するためのものである。
【0032】
ロータリースクリーン駆動電流検出器(10)により、ロータリースクリーン駆動モータ(8)の電流値を測定し、測定した電流値とあらかじめ設定してある基準電流値と比較して、基準電流値の範囲よりも逸脱した場合に、自動でインキ供給及びスキージ押圧を調整する機構である。次に、自動でインキ供給量を制御したり、自動でスキージ押圧を制御したりするための装置について詳細に説明する。
【0033】
図3は、ロータリースクリーン駆動モータ(8)における電流値を利用した自動制御装置の構成図である。自動制御装置は、管理部(11)、制御部(12)、動作部(13)を有しており、さらに制御部(12)は、データ設定手段(14)、電子タイミング手段(15)、検出手段(16)、比較手段(17)及び送信手段(18)を有している。
【0034】
管理部(11)は、あらかじめ自動制御に必要なデータを蓄積する箇所である。自動制御に必要なデータとは、後述する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量のことであり、基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量は、使用するインキのインキ特性、使用する版面の版面構成、印刷を行うための印刷条件等により異なる。そのため、あらかじめ使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に対する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を決定するための数種類のデータを採取し、管理部(11)に対応付けて記憶させておく。なお、あらかじめ使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に対する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を決定するためのデータについては後述する。
【0035】
制御部(12)におけるデータ設定手段(14)は、ロータリースクリーン印刷機を稼動する前に、使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に見合ったデータを、あらかじめ管理部(11)に記憶してあるデータの中から選出し、設定を行う手段である。使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に見合ったデータとは、基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量のことである。
【0036】
制御部(12)における電子タイミング手段(15)は、ロータリースクリーン(3)の1回転(360度)における、どのタイミングで電流値を検出するかの設定を行う手段である。設定するタイミングとしては、例えば、版面の画線部、非画線部、対向する圧胴(2)のギャップ部(切欠部)等が挙げられる。
【0037】
制御部(12)における検出手段(16)は、データ設定手段(14)で設定した設定単位時間が経過するごとに、ロータリースクリーン(3)の駆動に伴い発生する電流値を検出する手段である。設定単位時間が経過した際に、電流値を検出するタイミングとしては、電子タイミング手段(15)において設定したタイミングとする。
【0038】
制御部(12)における比較手段(17)は、検出手段(16)によって得られた電流値と、管理部(11)にあらかじめ記憶してある基本電流値を比較する手段である。
【0039】
制御部(12)における送信手段(18)は、データ設定手段(14)で設定した設定単位時間が経過するごとに、データ設定手段(14)で設定したインキ重量調整量に従って、後述する動作部(13)に対してインキの供給を行う命令を伝播する手段である。また、比較手段(17)により比較した結果、基本電流値と検出した電流値が異なっている場合に、動作部(13)に対してスキージの押し込み量を調整する命令を伝播する手段である。
【0040】
動作部(13)は、制御部(12)における送信手段(18)からインキの供給に関する命令を受けた後、インキ重量調整量に従って、インキの供給を実施する箇所である。また、制御部(12)における送信手段(18)からスキージの押し込みに関する命令を受けた後、スキージ押し込み調整量に従って、スキージ(5)をロータリースクリーン(3)の軸方向に対して前進又は後退させる箇所である。
【0041】
さらに、自動制御装置は、表示部(19)を有していても良く、表示部(19)は制御部(12)及び管理部(11)のデータを表示する。
【0042】
表示部には、基本電流値、現在の電流値、上下限電流値、設定単位時間、検出タイミング度数、スキージ押し込み調整量等を表示し、オペレータが目視確認できるようにしておく。
【0043】
図4は、あらかじめ使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に対する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を決定するためのデータの一例を示すグラフである。
【0044】
図4におけるグラフ中のX軸は時間(印刷枚数)、Y軸は電流値を示す。X軸において、「X0」から「X1」まで経過した時間を設定単位時間とし、Y軸における「Y0」を基本電流値とする。
【0045】
設定単位時間とは、ロータリースクリーン(3)の駆動に伴い発生する電流値を検出するタイミングのことであり、設定単位時間が経過するごとに、後述する検出手段(16)に設定単位時間が経過したことを知らせる信号が伝播される。
【0046】
また、グラフ中の「A」は設定単位時間あたりの電流変化値、グラフ中の「B」は設定単位時間あたりのインキ重量変化に伴う電流変化値、グラフ中の「C」は設定単位時間あたりのスキージ押圧変化に伴う電流変化値を示す。ロータリースクリーン駆動モータ(8)における電流値(A)は、インキ重量変化に伴う電流変化値(B)とスキージ押圧変化に伴う電流変化値(C)の合計で示される。
【0047】
設定単位時間あたりのインキ重量変化に伴う電流変化値(b−b’)が「Y1」から「Y2」であり、設定単位時間あたりのスキージ押圧変化に伴う電流変化値(c−c’)が「Y3」から「Y4」である。また、インキ重量変化とスキージ押圧変化に伴う電流変化値の合計(a−a’)が「Y0」から「Y2」である。
【0048】
このことから、設定単位時間が「X0」から「X1」まで経過したとき、電流値は「Y0」から「Y2」まで変化することになる。そのため、「Y2」まで変化した電流値を基本電流値「Y0」に戻す必要がある。それに必要な電流の調整量が、グラフ中の実線矢印で示した必要調整量である。
【0049】
この電流値の必要調整量は、インキの投入量及びスキージの押し込み量の調整により行われる。インキを投入する量は、グラフ中の点線矢印で示したインキ重量調整量であり、スキージの押し込みを調整する量は、グラフ中の二重線矢印で示したスキージ押し込み調整量である。
【0050】
図4に、あらかじめ使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に対する基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量の一例を示したが、様々なインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に見合ったデータを管理部(11)に複数種類記憶させておく。
【0051】
図5は、ロータリースクリーン駆動モータによる電流値を利用した自動制御のフロー図である。フロー図を参看しながら、本発明におけるロータリースクリーン駆動モータによる電流値の制御方法について説明する。
【0052】
まず、ロータリースクリーン印刷機を稼動する前に、使用するインキのインキ特性、版面構成及び印刷条件に見合ったデータを、あらかじめ管理部(11)に記憶してあるデータの中から選出し、選出したデータを制御部(12)における設定手段(18)に設定する(STEP1)。
【0053】
ロータリースクリーン印刷機が稼動し、その後、設定単位時間が経過したかどうかを判定する(STEP2)。設定単位時間が経過していないと判定された場合は、設定単位時間が経過するまでロータリースクリーン印刷機の稼動をそのままの状態で続ける。設定単位時間が経過したと判定された場合、管理部(11)にあらかじめ記憶しておいたインキ重量調整量に従ってインキの供給を行う(STEP3)。
【0054】
次に、基本電流値になったかどうかを判定する(STEP4)。基本電流値に戻ったと判定された場合は、スキージの押し込みによる調整を行わず、そこから再度、STEP2まで戻り、設定単位時間が経過するまでロータリースクリーン印刷機の稼動をそのままの状態で続ける。基本電流値に戻らなかったと判定された場合は、管理部(11)にあらかじめ記憶しておいたスキージ押し込み調整量に従って、スキージの押し込みによる調整を行う(STEP5)。
【0055】
設定単位時間が経過後に、インキ供給動作を先に実施したが、状況によりスキージの調整動作を先に実施しても構わない。
【実施例1】
【0056】
本発明の実施例1について、図5のフロー図及び図6の動作例を用いて説明をする。今回使用するインキのインキ特性、版面構成、印刷条件に見合ったデータを、あらかじめ管理部(11)に記憶してあるデータの中から選出し、自動制御を開始する。
【0057】
実施例1においては、図6(a)に示すように、基本電流値の指数が「100」で、「1時間」に「20Kg」のインキが消費され、その際の電流値の指数変化値が「20」であると記憶されている場合について説明する。なお、本発明においてはインキ消費量と電流変化値が比例関係にあるものと仮定する。
【0058】
また、インキを「20Kg」供給した後、基本電流値の指数が「100」に達しない場合は、スキージが摩滅損耗していることから、スキージを「0.1mm」押し込み、電流値の指数を「1」上昇させて基本電流値の指数を「100」まで戻すことにする。なお、ここではスキージの押し込み量と電流変化値は比例関係であるものとする。
【0059】
図6(b)に示すように、ロータリースクリーン印刷機が稼動すると同時に自動制御がスタートする(STEP1)。その後、設定単位時間である「1時間」が経過したかどうかを判定する(STEP2)。「1時間」が経過していないと判定された場合は、「1時間」が経過するまでロータリースクリーン印刷機の稼動をそのままの状態で続ける。
【0060】
その後、「1時間」が経過したと判定された場合、その時点での電流値の指数を計測した結果が「78」であった。同時に、管理部(11)にあらかじめ記憶しておいたインキ重量調整量に従って、インキの供給を行う(STEP3)。本実施例では、記憶データより、インキは1時間で20Kg消費されることを学習しているため、インキを20Kg供給する。インキ供給に伴う電流値の指数の上昇分は「20」であるため、インキ供給後の電流値の指数は、「78+20」で「98」となる。
【0061】
インキの供給が終了した後、基本電流値の指数である「100」になったかどうかを判定する(STEP4)。基本電流値の指数が「100」に戻ったと判定された場合は、スキージの押し込みによる調整を行わず、そこから再度、(STEP2)まで戻り、再度、設定単位時間である「1時間」が経過するまでロータリースクリーン印刷機の稼動を継続する。
【0062】
しかし、本実施例においては、インキ供給後の電流値の指数が「98」であり、基本電流値の指数である「100」に戻っていない。ここでは、基本電流値の指数「100」とインキ供給後の電流値の指数「98」より「100−98」で電流値の指数の差は「2」となり、この差を管理部(11)にあらかじめ記憶しておいたスキージの押し込み量により調整する(STEP4)。
【0063】
具体的には、あらかじめ記憶してあるスキージ押し込み量「0.1mm」に基づき、スキージを「0.1mm」押し込み、その後、再度、基本電流値の指数が「100」になったかどうかを判定する(STEP4)。スキージを「0.1mm」押し込んだことにより、電流値の指数が「1」上昇するため、「98+1」で電流値の指数が「99」となるが、基本電流値の指数である「100」とは異なることから、更にスキージを「0.1mm」押し込む。その結果、更に電流値の指数が「1」上昇するため、「99+1」で基本電流値の指数が「100」となる。その後、再度、STEP2まで戻り、設定単位時間である「1時間」が経過するまでロータリースクリーン印刷機の稼動を継続する。
【0064】
なお、図6(b)に示した動作例は、ロータリースクリーン印刷機を稼動して、設定単位時間が1時間経過した際の電流値の実値を示すものであり、更にその後、設定単位時間が1時間経過した際の電流値の実値が、図6(b)に示すものと異なる可能性があることは言うまでもない。例えば、ロータリースクリーン印刷機を稼動して、3度目の設定単位時間が経過した際、換言すれば、ロータリースクリーン印刷機を稼動して3時間が経過した際、インキを20Kg供給した後の電流値の指数が「77」となる場合がある。その場合は、スキージ押し込み量を「0.1mm」単位で調整し、スキージの押し込みを3度実施することで基本電流値の指数が「100」に戻ることになる。
【0065】
また、スキージの押し込み量を調整する方法として、図7(a)に示すように、スキージの摩耗により「1時間」で電流値の指数が「2」減少することがあらかじめ分かっており、そのデータが管理部(11)に記憶してある場合、図6(b)で前述したようにスキージを「0.1mm」単位で押し込んでいくのではなく、図7(b)に示すように一度に「0.2mm」押し込んで、一度に基本電流値の指数を「100」に戻す方法とする場合もある。
【0066】
ただし、この方法の場合、あらかじめ記憶してある設定単位時間に対するスキージの磨耗量より、実際のスキージ磨耗量の方が少なかった場合、又はその逆の場合に問題が生じる。
【0067】
例えば、設定単位時間である「1時間」経過後にスキージが「0.2mm」摩耗するため、「1時間」経過後にスキージを「0.2mm」押し込むことを記憶してあったが、実際のロータリースクリーン稼動において「0.1mm」しかスキージが摩耗しなかった場合、あらかじめ記憶してあるスキージの押し込み調整量「0.2mm」に基づいて、スキージを押し込んでしまうと、基本電流値を超えてしまう可能性がある。
【0068】
また、逆に、設定単位時間である「1時間」経過後にスキージが「0.2mm」摩耗するため、「1時間」経過後にスキージを「0.2mm」押し込むことを記憶してあったが、実際のロータリースクリーン稼動において「0.3mm」もスキージが摩耗してしまった場合、あらかじめ記憶してあるスキージの押し込み調整量「0.2mm」に基づいて、スキージを押し込んでも、基本電流値の指数が「100」に達しない状態のままロータリースクリーンの稼動を継続してしまう可能性がある。この状態が何度も加算されてしまうと、スキージ押圧が一定でなくなり、印刷物の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0069】
そのため、スキージ押し込み量の調整に関しては、図6を用いて説明したとおり「0.1mm」単位で押し込んでいき、基本電流値に戻るまで何度かスキージの押し込みを繰り返す方法の方が推奨される。
【0070】
ここまで実施の例示をいくつか説明してきたが、当然のことながら各種検出器が故障した場合において、ロータリースクリーン印刷機における各種動作を停止させるなどの安全対策機能を附帯させる場合もある。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷部
2 圧胴
3 ロータリースクリーン
4 インキ供給手段
5 スキージ
6 スキージホルダー(支持体)
7 スキージ押圧調整用モータ
8 ロータリースクリーン駆動用モータ
9 減速機
10 ロータリースクリーン駆動電流検出器
11 管理部
12 制御部
13 動作部
14 データ設定手段
15 電子タイミング手段
16 検出手段
17 比較手段
18 送信手段
19 表示部
S ロータリースクリーン印刷機
P 被印刷物(用紙)
E ロータリースクリーン内に存するインキ
e インキ(画線部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリースクリーン印刷機におけるロータリースクリーン駆動モータの電流値によってインキ供給及びスキージ押圧の制御を自動で行う自動制御装置において、前記自動制御装置は、使用するインキの特性に応じて前記インキに対応した基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量をあらかじめ記憶している管理部と、前記管理部に記憶してある前記設定単位時間に対するインキ重量調整量をもとにインキの供給量を決定し、前記設定単位時間が経過した際の前記ロータリースクリーン駆動モータの電流値と前記基本電流値を比較し、前記比較した結果をもとに前記スキージ押圧を制御するための前記スキージ押し込み調整量を決定する制御部と、前記制御部による決定をもとに前記インキの供給を行い、前記スキージの押し込みを行う動作部を有することを特徴とするロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記管理部にあらかじめ記憶している前記基本電流値、前記設定単位時間、前記インキ重量調整量及び前記スキージ押し込み調整量に対して、前記ロータリースクリーン印刷機の稼動前に、それぞれ該当する前記基本電流値、前記設定単位時間、前記インキ重量調整量及び前記スキージ押し込み調整量を設定するデータ設定手段と、前記ロータリースクリーンの一回転中に対して電流値を検出するタイミングの設定を行う電子タイミング手段と、前記設定単位時間が経過するごとに前記電子タイミング手段において設定した前記タイミングにて前記ロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値を検出する検出手段と、前記検出手段によって得られた電流値と前記基本電流値を比較する比較手段と、前記設定単位時間が経過するごとに前記インキ重量調整量をもとに前記動作部に対して前記インキの供給を調整する命令を伝播し、前記比較手段により比較した結果、前記基本電流値と前記検出した電流値が異なっている場合に前記動作部に対して前記スキージの押し込み量を調整する命令を伝播する送信手段を有していることを特徴とする請求項1記載のロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置。
【請求項3】
前記自動制御装置は、さらに、前記データ設定手段における設定値、前記検出手段における検出値、前記比較手段における比較結果をそれぞれ表示する表示部を有することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御装置。
【請求項4】
ロータリースクリーン印刷機におけるロータリースクリーン駆動モータの電流値によってインキ供給及びスキージ押圧の制御を自動で行う自動制御方法において、前記自動制御方法は、前記ロータリースクリーン印刷機の稼動前に使用するインキの特性に応じて前記インキに対応した基本電流値、設定単位時間、インキ重量調整量及びスキージ押し込み調整量を設定し、前記ロータリースクリーン印刷機の稼動後、常時、前記設定単位時間が経過したかどうかの判定を行い、前記設定単位時間が経過していていないと判定された場合は前記ロータリースクリーン印刷機の稼動を継続し、前記設定単位時間が経過したと判定された時点で、前記インキ重量調整量に従ってインキの供給を行い、前記インキの供給が終了した後、前記ロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値と前記基本電流値を比較し、前記電流値と前記基本電流値が異なっている場合は前記スキージ押し込み調整量に従ってスキージの押し込みによる調整を行い、前記電流値と前記基本電流値が同じ場合は、再度、前記設定単位時間が経過したかどうかの判定を行うことを特徴とするロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御方法。
【請求項5】
前記スキージ押し込み調整量に従って、前記スキージの押し込みを行った後、再度、前記ロータリースクリーンの駆動モータに発生する電流値と前記基本電流値を比較し、前記電流値と前記基本電流値が同じ値になるまで前記スキージ押し込み調整量に従ってスキージの押し込みを行うことを特徴とする請求項4記載のロータリースクリーン印刷におけるインキ供給及びスキージ押圧の自動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218737(P2011−218737A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92804(P2010−92804)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】