説明

ロータリ耕耘機

【課題】 メンテナンス性良好で且つ油漏れの発生を抑制できると共に、気密性確認試験を行う際の試験効率を向上させることができるロータリ耕耘機を提供する。
【解決手段】 ドリブンシャフト26とロータケース29とを備えたロータリ耕耘機20において、ロータケース29の両側壁29L,29Rには、それぞれ、対応する軸受部材22,23の外径と等しいか又は略等しい開口径d1,d2を有する開口P1,P2が設けられ、一対の軸受部材22,23は止め輪Qによって車輌幅方向X外方への移動が防止されており、開口P1,P2はシール部材SL,SRによって液密にシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸からの動力を受けるドリブンシャフトと、該ドリブンシャフトの軸線方向両端部を一対の軸受部材を介して軸線回り回転自在に支持するロータケースとを備えたロータリ耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリ耕耘機として、図6に示すように、入力軸A1からの動力を受けるドリブンシャフトA2と、該ドリブンシャフトA2の軸線方向両端部を一対の軸受部材A3,A4を介して軸線回り回転自在に支持するロータケースA5と、ロータケースA5の両側壁A5L,A5Rに、それぞれ、連結される一対のメーンビーム部材A6L,A6Rとを備えたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
このようなロータリ耕耘機のロータケースA5においては、一方側軸受部材A3はロータケースA5の一方側壁A5Lで位置決めされ、他方側軸受部材A4はメーンビーム部材A6Rに設けられたフランジA61端面A61’で位置決めされ、一方側壁A5Lには、一方側軸受部材A3の外径より小さい開口径d1’を有する開口A7が設けられ、他方側壁A5Rには、他方側軸受部材A4の外径と略等しい開口径d2’を有する開口A8が設けられている。この一方側壁A5Lに設けられた開口A7は、主として、ドリブンシャフトA2等を取り外す際に、該開口A7に棒状のジグを外側から挿入し、該ジグによってドリブンシャフトA2等を他方側壁A5Rの開口A8に向けて押動させて、該ドリブンシャフトA2等をロータリーケースA5から脱離させるアクセス開口として利用され、他方側壁A5Rに設けられた開口A8は、主として、ドリブンシャフトA2等のロータケースA5への出し入れに利用される。そして、潤滑油が入ったロータケースA5内からの油漏れを防止すべく、一方側壁A5Lに設けられた開口A7はシール部材A9で液密にシールされ、他方側壁A5Rに設けられた開口A8はメーンビーム部材A6RのフランジA61と該開口A8周端部との間に配置されたOリングA10で液密にシールされている。
【特許文献1】特公平6−40763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したような構成においては、次のような問題がある。即ち、ロータケースA5の一方側壁A5Lでは、一方側軸受部材A3を位置決めするための壁A5L’があり、該壁A5L’における開口A7の開口径が小さいため、前記したようにジグを挿入してドリブンシャフトA2等を取り外す必要があるなど、メンテナンス性が良くない。また、該開口A7をシールするシール部材A9は車輌幅方向外方への抜け止めがないため、ロータケースA5内の内圧が上がった場合において、該シール部材A9が車輌幅方向外方へ抜け出ると、油漏れを起こす虞がある。
【0005】
また、他方側壁A5Rでは、メーンビーム部材A6RのフランジA61と開口A8周端部との間に配置されるOリングA10で該開口A8をシールするために、さらにはメーンビーム部材A6RのフランジA61で他方側軸受部材A4を位置決めするためにメーンビーム部材A6Rを加工する必要がある。また、メーンビーム部材A6L,6Rは一般的には比較的重量物であるため、組立作業を行い難く、メーンビーム部材A6LをロータケースA5にOリングA10を介して組み付ける場合において、該OリングA10を傷つけてしまうことがあり、このOリングA10が傷つくと油漏れを起こす虞がある。さらに、シール部材A9及びOリングA10による各開口A7,A8へのシール後、油漏れがないか否かを判定する気密性確認試験においては、ロータケースA5にメーンビーム部材A6Rを取り付けた状態で行う必要があり、換言すればロータケース単体での試験ができず、該気密性確認試験を行う際に手間がかかる。
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、メンテナンス性良好で且つ油漏れの発生を抑制できると共に、気密性確認試験を行う際の試験効率を向上させることができるロータリ耕耘機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、入力軸からの動力を受けるドリブンシャフトと、該ドリブンシャフトの軸線方向両端部を一対の軸受部材を介して軸線回り回転自在に支持するロータケースとを備えたロータリ耕耘機であって、前記ロータケースの両側壁には、それぞれ、対応する前記軸受部材の外径と等しいか又は略等しい開口径を有する開口が設けられ、前記一対の軸受部材は、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されており、前記開口は、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされていることを特徴とするロータリ耕耘機を提供する。
【0008】
本発明に係るロータリ耕耘機において、前記ロータケースの両側壁に、それぞれ、連結される一対のメーンビーム部材を、さらに備えていてもよい。
【0009】
本発明に係るロータリ耕耘機によれば、前記一対の軸受部材が、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されているので、該止め輪によって対応する前記軸受部材を位置決めすることができる。また、前記ロータケースの両側壁には、それぞれ、対応する前記軸受部材の外径と等しいか又は略等しい開口径を有する開口が設けられているので、棒状のジグ等を用いなくても前記ドリブンシャフト等を良好に取り外すことができ、これによりメンテナンス性を向上させることができる。また、前記開口が、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされているので、従来のようなOリングを用いることなく該開口を液密にシールすることができ、従って、該Oリングの傷つきによって油が漏れるといったことがなくなり、それだけ油漏れの発生を抑制することができる。さらに、前記シール部材による各開口へのシール後、油漏れがないか否かを判定する気密性確認試験においては、たとえ前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合でも、前記ロータケースに該メーンビーム部材を取り付けた状態で行わなくてもよく、換言すれば前記ロータケース単体での試験ができ、該気密性確認試験を行う際の手間を軽減させることができる。
【0010】
さらに、前記開口が、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされており、前記一対の軸受部材が、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されているので、たとえ前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合でも、該メーンビーム部材に対して、前記開口をシールするための、さらには前記軸受部材を位置決めするための加工を行う必要がなく、それだけ加工コストを低減させることができる。
【0011】
また、本発明に係るロータリ耕耘機において、前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合においては、前記シール部材が、対応する前記メーンビーム部材によって車輌幅方向外方への離脱が防止されていることが好ましい。こうすることで、前記シール部材の車輌幅方向外方への離脱防止用部材を前記メーンビーム部材とは別に設ける必要がなく、それだけ部品コストを低減させることができる。
【0012】
前記メーンビーム部材の具体的態様としては、車輌幅方向に延びるメーンビーム本体と、該メーンビーム本体の車輌幅方向内端部に設けられたフランジとを有していて、前記フランジを前記ロータケースの側壁に連結させた状態において、該フランジ又は/及び前記メーンビーム本体が前記シール部材の車輌幅方向外方への移動を防止するように構成されている態様を例示できる。
【0013】
かかる構成としては、次の(a)〜(d)の具体的態様を例示できる。即ち、
(a)前記メーンビーム本体の外径が前記シール部材の径と等しい態様、
(b)前記メーンビーム本体の外径が前記シール部材の径より小さい且つ前記フランジにおける前記シール部材側の側面が前記メーンビーム本体における前記シール部材側の端面より車輌幅方向外方に位置するように該フランジが該メーンビーム本体に設けられている態様、
(c)前記メーンビーム本体の外径が前記シール部材の径より小さい且つ前記フランジにおける前記シール部材側の側面が車輌幅方向Xにおいて前記メーンビーム本体における前記シール部材側の端面と同一位置に位置するように該フランジが該メーンビーム本体に設けられている態様、
(d)前記メーンビーム本体の外径が前記シール部材の径より小さい且つ前記フランジにおける前記シール部材側の側面が前記メーンビーム本体における前記シール部材側の端面より車輌幅方向内方に位置するように該フランジが該メーンビーム本体に設けられている態様である。
【0014】
以上の構成において、前記シール部材の車輌幅方向外方への移動の防止は、前記(a)及び(b)の態様では、前記メーンビーム本体における前記シール部材側の端面にて行うことができ、前記(c)の態様では、前記メーンビーム本体における前記シール部材側の端面及び前記フランジにおける前記シール部材側の側面の双方にて行うことができ、また前記(d)の態様では、前記フランジにおける前記シール部材側の側面にて行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係るロータリ耕耘機によると、前記一対の軸受部材が、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されているので、該止め輪によって対応する前記軸受部材を位置決めすることができる。また、前記ロータケースの両側壁には、それぞれ、対応する前記軸受部材の外径と等しいか又は略等しい開口径を有する開口が設けられているので、棒状のジグ等を挿入しなくても前記ドリブンシャフト等を良好に取り外すことができ、これによりメンテナンス性を向上させることができる。また、前記開口が、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされているので、従来のようなOリングを用いることなく該開口を液密にシールすることができ、従って、該Oリングの傷つきによって油が漏れるといったことがなくなり、それだけ油漏れの発生を抑制することができる。さらに、前記シール部材による各開口へのシール後、油漏れがないか否かを判定する気密性確認試験においては、たとえ前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合でも、前記ロータケースに該メーンビーム部材を取り付けた状態で行わなくてもよく、換言すれば前記ロータケース単体での試験ができ、該気密性確認試験を行う際の手間を軽減させることができる。
【0016】
さらに、前記開口が、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされており、前記一対の軸受部材が、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されているので、たとえ前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合でも、該メーンビーム部材に対して、前記開口をシールするための、さらには前記軸受部材を位置決めするための加工を行う必要がなく、それだけ加工コストを低減させることができる。
【0017】
また、前記一対のメーンビーム部材をさらに備える場合においては、前記シール部材が、対応する前記メーンビーム部材によって車輌幅方向外方への離脱が防止されていると、前記シール部材の車輌幅方向外方への離脱防止用部材を前記メーンビーム部材とは別に設ける必要がなく、それだけ部品コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るロータリ耕耘機の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施に係るロータリ耕耘機20が作業車輌の本機10に付設されている状態を示す側面図であり、図2は図1におけるロータリ耕耘機20の後面断面図である。なお、本実施形態において、前記作業車輌はトラクタとしている。
【0019】
図1に示すトラクタ本機10は、エンジンフレーム1に前輪2を懸架するとともに、ミッションケース3に後輪4を懸架して、該ミッションケース3の上方にシート5を配置し、該シート5の前方にステアリングハンドル6を配設している。該トラクタ本機10の後端部には、アッパリンク71とロアリンク72,72等とで構成される3点リンク式の作業機装着装置7を設け、該作業機装着装置7に前記ロータリ耕耘機20を着脱可能に装着している。該ロータリ耕耘機20は、左右略中央部に設けられたロータケース29内の駆動伝達系によってエンジンからの駆動力がユニバーサルジョイント8を介して該ロータケース29から左右両側に延設される耕耘爪軸30に伝達され、これにより該耕耘爪軸30が回転駆動されるようにしたセンタードライブ式のロータリ耕耘機として構成されている。
【0020】
このロータリ耕耘機20は、図2に示すように、ドリブンシャフト26と、前記のロータケース29とを備えている。前記ドリブンシャフト26は、入力軸21からの動力を受けるものであり、前記ロータケース29は、前記ドリブンシャフト26の軸線方向両端部を左右一対の軸受部材22,23(本実施形態ではベアリング)を介して軸線回り回転自在に支持するものである。
【0021】
さらに説明すると、前記ロータケース29は、左右の半割ケースからなる側壁29L,29Rにより構成されており、上端部においては前記入力軸21に前記トラクタ本機10から前記ユニバーサルジョイント8を介して伝達される動力の伝達方向を変更するベベルギアボックス部を構成しており、下端部においては前記耕耘爪軸30を支持する耕耘爪軸支持部を構成しており、また、これらの中間部においてはチェーン19の為のチェーンケース部を構成している。
【0022】
前記ロータケース29上端部におけるベベルギアボックス部では、前記入力軸21に入力軸側ベベルギア24が相対回転不能に設けられており、前記ドリブンシャフト26にスプロケット27及びドリブンシャフト側ベベルギア25が相対回転不能に設けられている。前記入力軸21は前記入力軸側ベベルギア24を内側にして刻設されており、該入力軸側ベベルギア24が前記ドリブンシャフト26の前記ドリブンシャフト側ベベルギア25に噛合している。一方、前記ロータケース29下端部における耕耘爪軸支持部では、前記耕耘爪軸30にスプロケット28が相対回転不能に設けられており、該スプロケット28より車輌幅方向(図2中X方向)両側方には前記耕耘爪軸30の周方向に沿って放射状に所定の間隔をあけて配置された耕耘爪34が相対回転不能に設けられている。そして、前記ロータケース29中間部を挿通する前記チェーン19が前記ドリブンシャフト26の前記スプロケット27及び前記耕耘爪軸30の前記スプロケット28に巻き掛けられている。これにより、前記入力軸21から前記ベベルギア24,25を介して前記ドリブンシャフト26に伝達された動力を前記スプロケット27,28及び前記チェーン19を介して前記耕耘爪軸30に伝達することができ、こうして動力が伝達された前記耕耘爪軸30は、前記耕耘爪34を周方向に沿って回転駆動する。
【0023】
また、前記ロータケース29上端部におけるベベルギアボックス部では、該ロータケース29の前記左右両側壁29L,29Rに開口P1,P2が設けられている。この開口P1,P2は、それぞれ、対応する前記ベアリング22,23の外径と等しいか又は略等しい開口径d1,d2を有している。前記左右一対のベアリング22,23は、それぞれ、対応する開口P1,P2部内に配設された状態で、止め輪Qによって車輌幅方向X外方への移動が防止されている。前記開口P1,P2は、前記ベアリング22,23より車輌幅方向X外方に配置される左右一対のシール部材SL,SRによって液密にシールされている。さらに具体的に言えば、前記左右一対のベアリング22,23は、本実施形態では、それぞれ、対応する開口P1,P2部内に配設された状態で、前記止め輪Qにて車輌幅方向X摺動不能に固定されており、前記開口P1,P2をシールする前記シール部材SL,SRは、本実施形態では、前記開口P1,P2の開口径d1,d2と同等の径を有するゴム製の蓋である。
【0024】
このロータリ耕耘機20は、前記ロータケース29の前記左右両側壁29L,29Rに、それぞれ、連結される左右一対のメーンビーム部材28L,28Rを、さらに備えており、前記シール部材SL,SRは、対応する前記メーンビーム部材28L,28Rによって車輌幅方向X外方への離脱が防止されている。さらに具体的に言えば、前記メーンビーム部材28L,28Rは、本実施形態では、車輌幅方向Xに延びるメーンビーム本体281L,281Rと、該メーンビーム本体281L,281Rの車輌幅方向X内端部に設けられた左右一対のフランジ282L,282Rとを有しており、前記フランジ282L,282Rを前記ロータケース29の側壁29L,29Rに連結させた状態において、該フランジ282L,282R又は/及び前記メーンビーム本体281L,281Rが前記シール部材SL,SRの車輌幅方向X外方への移動を防止するように構成されている。
【0025】
本実施形態では、前記ロータケース29の左側壁29Lにおいて、前記左メーンビーム本体281Lの外径が前記左シール部材Sの径と等しい構成としている。この構成では、前記左シール部材SLの車輌幅方向X外方への移動の防止を前記左メーンビーム本体281Lにおける前記左シール部材SL側の端面281L’にて行うことができる。なお、前記ロータケース29の右側壁29Rにおいても前記した構成を採用してもよい。また、前記ロータケース29の右側壁29Rにおいて、前記右メーンビーム本体281Rの外径が前記右シール部材SRの径より小さい且つ前記右フランジ282Rにおける前記右シール部材SR側の側面282R’が前記右メーンビーム本体281Rにおける前記右シール部材SR側の端面281R’より車輌幅方向X内方に位置するように該右フランジ282Rが該右メーンビーム本体281Rに設けられている構成としている。この構成では、前記右シール部材SRの車輌幅方向X外方への移動の防止を前記右フランジ282Rにおける前記右シール部材SR側の側面282R’にて行うことができる。なお、前記ロータケース29の左側壁29Lにおいても前記した構成を採用してもよい。
【0026】
また、前記メーンビーム本体281L,281Rの外径が前記シール部材SL,SRの径より小さい且つ前記フランジ282L,282Rにおける前記シール部材SL,SR側の側面282L’,282R’が前記メーンビーム本体281L,281Rにおける前記シール部材SL,SR側の端面281L’,281R’より車輌幅方向X外方に位置するように該フランジ282L,282Rが該メーンビーム本体281L,281Rに設けられていてもよい。この場合、前記シール部材SL,SRの車輌幅方向X外方への移動の防止は、前記メーンビーム本体281L,281Rにおける前記シール部材SL,SR側の端面281L’,281R’にて行うことができる。また、前記メーンビーム本体281L,281Rの外径が前記シール部材SL,SRの径より小さい且つ前記フランジ282L,282Rにおける前記シール部材SL,SR側の側面282L’,282R’が車輌幅方向Xにおいて前記メーンビーム本体281L,281Rにおける前記シール部材SL,SR側の端面281L’,281R’と同一位置に位置するように該フランジ282L,282Rが該メーンビーム本体281L,281Rに設けられていてもよい。この場合では、前記シール部材SL,SRの車輌幅方向X外方への移動の防止は、前記メーンビーム本体281L,281Rにおける前記シール部材SL,SR側の端面281L’,281R’及び前記フランジ282L,282Rにおける前記シール部材SL,SR側の側面282L’,282R’の双方にて行うことができる。
【0027】
ここで、前記べべルギア24,25間の噛み合い隙間を調整するバックラッシュ調整について説明しておく。このバックラッシュ調整は、従来においては、メーンビームフランジとベアリングとの間にべべルギア間で良好な噛み合い隙間が得られるような隙間調整用シムを介在させており、調整の都度メーンビームの取付け/取外しをしなければならないため作業性が悪かった。しかしながら、本実施形態においては、前記止め輪Qと前記ベアリング23との間に前記べべルギア24,25間で良好な噛み合い隙間が得られるような隙間調整用シムTを介在させている。従って、前記メーンビーム28Rを取り付けることなく、止め輪Qの取付け/取外しをするだけで前記隙間調整用シムTを介在させることができ、これにより作業性を向上させることができる。
【0028】
また、このロータリ耕耘機20においては、耕耘幅を可変するという観点から、前記ロータケース29下端部における耕耘爪軸支持部から車輌幅方向X外方に突出する前記耕耘爪軸30に延長爪軸が着脱可能に設けられる。従来においては、延長爪軸の耕耘爪軸との接続は、耕耘爪軸及び延長爪軸にそれぞれ設けられた径方向外方に延びるフランジ同士をボルト・ナットで締結することでなされていたために、耕耘作業を行った後の土壌の耕耘跡に該フランジによりスジが残ってしまうことがある。そこで、本実施形態では、延長爪軸60の前記耕耘爪軸30との接続を図3(A)又は図3(B)に示すような構成としている。
【0029】
即ち、図3(A)及び図3(B)示す構成では、いずれも前記耕耘爪軸30の前記延長爪軸60側端部に軸線方向外方に突出する突出部30aが設けられると共に該突出部30aの軸中心部に螺子穴30a’が設けられ、前記延長爪軸60の前記耕耘爪軸30側端部に前記耕耘爪軸30の前記突出部30aを係入する係入部60aが設けられ、ボルトBLが前記係入部60aに設けられた座金60a’を介して前記突出部30aの螺子穴30a’に螺合されることで、前記延長爪軸60が前記耕耘爪軸30に接続される。
【0030】
そして、前記延長爪軸60が前記耕耘爪軸30に軸線回り相対回転不能に接続されるべく、図3(A)示す構成では、前記耕耘爪軸30及び前記延長爪軸60のうち少なくとも一方(図示例では前記延長爪軸60)の外周面の周方向の一部に軸線方向に延びる溝部Hが設けられ、他方に該溝部Hに対応する形状のキー部材70が固設されている。なお、前記耕耘爪軸30及び前記延長爪軸60の両方に前記溝部Hが設けられる場合には、前記耕耘爪軸30及び前記延長爪軸60の何れか一方に前記キー部材70を固設してもよいし、前記耕耘爪軸30及び前記延長爪軸60の間の前記溝部Hにおいて前記キー部材70を単に配置するだけでもよい。また、図3(B)示す構成では、前記延長爪軸60の前記耕耘爪軸30側端部が断面視D字形状にカット(所謂Dカット)され、前記耕耘爪軸30の前記前記延長爪軸60端部が該延長爪軸60のD字形状に対応する形状に形成されている。
【0031】
図3(A)又は図3(B)に示す構成によると、前記延長爪軸60及び前記耕耘爪軸30に従来のようなフランジが設けられておらず、これにより耕耘作業の際に土の流れを妨げないので、耕耘作業を行った後の土壌の耕耘跡にスジが付くことはない。また、かかるフランジを締結するボルト・ナットが不要となるため、それだけ部品点数が減り、ひいては部品コストを低減させることができる。
【0032】
前記ロータケース29の下方には、図1に示すように、耕耘部31の上方を覆うロータリカバー41と、前記耕耘部31の後方を覆うリヤカバー42とが設けられている。
【0033】
前記ロータリカバー41は、車輌幅方向X両端部にサイドカバー43が設けられており、図4に示すように、車輌前方(図4中Y1方向)端部には、フロントカバー44が枢支されている。なお、図4(A)は前記フロントカバー44が通常の位置に配置されている状態を示しており、図4(B)は前記フロントカバー44が跳ね上げられた状態を示している。さらに言えば、このフロントカバー44は、前記ロータリカバー41の車輌前方Y1端部に設けられた支持部材41aに車輌幅方向Xに沿う枢支軸41bに回動自在に枢支されており、付勢部材45によって該フロントカバー44が下方への回動方向(図中矢印A1方向)に向けて付勢されている。この付勢部材45は、ここでは両端部45a,45bが巻き部分から所定量突出した巻きバネであり、前記フロントカバー44が下方への回動方向A1に向けて該フロントカバー44を付勢するように、一端部45aが前記ロータリカバー41に、他端部45bが前記フロントカバー44に係止されている。
【0034】
ところで、前記ロータリ耕耘機20の耕耘作業、特に耕深作業の際には、前記フロントカバー44が付勢部材45の付勢力に抗して上方への回動方向(図中矢印A2方向)に向けて跳ね上がり、前記ロータリカバー41に当接することがあるため、従来においては、該フロントカバー44の前記ロータリカバー41との当接部分にゴム等のクッション部材を設けることがある。しかしながら、前記フロントカバー44側に設けられるクッション部材は外れやすいという不具合を有していた。そこで、本実施形態では、図4に示すように、前記ロータリカバー41の前記フロントカバー44との当接部分にゴム等のクッション部材46が設けられている。こうすることで、前記クッション部材46は前記フロントカバー44側に設けられるよりも、以下の点で外れにくいという利点がある。即ち、前記クッション部材46が前記ロータリカバー41側に設けられる方が耕耘作業等の振動を受け難く、それだけ該振動による影響が小さい点、前記クッション部材46が前記ロータリカバー41側に設けられる方が土壌が付着し難い点、前記クッション部材46が前記ロータリカバー41側に設けられる方がはじき飛ばされた小石等が当たり難い点である。
【0035】
また、前記ロータリカバー41には、前記ロータリ耕耘機20単体の状態で立てておくためのスタンド50が脱着可能且つ収納可能に設けられている。図5は前記スタンド50が前記ロータリカバー41に設けられる状態を示す概略平面図であり、図5(A)はスタンド使用状態を示しており、図5(B)はスタンド収納状態を示している。
【0036】
前記スタンド50は、スタンド使用状態では、図5(A)に示すように、一端部51に設けられた貫通孔51aに蝶ボルト53が貫通して前記ロータリカバー41に設けられた螺子孔41aに螺合されることで、該ロータリカバー41に前記ロータリ耕耘機20を単体の状態で立てることができるように取り付けられ、また、スタンド収納状態では、図5(B)に示すように、他端部52に設けられた貫通孔52aに蝶ボルト53が貫通して前記ロータリカバー41に設けられた螺子孔41aに螺合されることで、該ロータリカバー41に車輌幅方向に沿って且つ該ロータリカバー41の内側に沿って取り付けられる。
【0037】
このスタンド50は、前記ロータリ耕耘機20の耕耘作業の際には、図5(B)に示すように、前記スタンド収納状態となっており、耕耘作業等の振動により、音が発生したり、前記ロータリカバー41への当接によって、該スタンド50及び/又は該ロータリカバー41の傷つき、塗装はがれといった不具合が発生するため、本実施形態では、前記スタンド収納状態での前記スタンド50と前記ロータリカバー41との間にゴム等のクッション部材47が設けられている。さらに具体的に言えば、前記ロータリカバー41の前記フロントカバー44との対応部分に、前記クッション部材47が支持部材48を介して設けられている。こうすることで、振動による音の発生を十分抑制でき、該スタンド50及び/又は該ロータリカバー41の傷つき、塗装はがれといった不具合を防止することができる。
【0038】
以上説明したロータリ耕耘機20によれば、前記左右一対のベアリング22,23が、それぞれ、対応する開口P1,P2部内に配設された状態で、止め輪Qによって車輌幅方向X外方への移動が防止されているので、該止め輪Qによって対応する前記ベアリング22,23を位置決めすることができる。また、前記ロータケース29の両側壁29L,29Rには、それぞれ、対応する前記ベアリング22,23の外径と等しいか又は略等しい開口径d1,d2を有する開口P1,P2が設けられているので、棒状のジグ等を用いなくても前記ドリブンシャフト26等を良好に取り外すことができ、これによりメンテナンス性を向上させることができる。また、前記開口P1,P2が、前記ベアリング22,23より車輌幅方向X外方に配置される左右のゴム製蓋SL,SRによって液密にシールされているので、従来のようなOリングを用いることなく該開口P1,P2を液密にシールすることができ、従って、該Oリングの傷つきによって油が漏れるといったことがなくなり、それだけ油漏れの発生を抑制することができる。さらに、前記ゴム製蓋SL,SRによる各開口P1,P2へのシール後、油漏れがないか否かを判定する気密性確認試験においては、前記ロータケース29に前記メーンビーム部材28L,28Rを取り付けた状態で行わなくてもよく、換言すれば前記ロータケース29単体での試験ができ、該気密性確認試験を行う際の手間を軽減させることができる。
【0039】
さらに、前記開口P1,P2が、前記ベアリング22,23より車輌幅方向X外方に配置されるゴム製蓋SL,SRによって液密にシールされており、前記ベアリング22,23が、それぞれ、対応する開口P1,P2部内に配設された状態で、止め輪Qによって車輌幅方向X外方への移動が防止されているので、前記メーンビーム部材28L,28Rの前記右メーンビーム本体281L,281Rに対して、前記開口P1,P2をシールするための、さらには前記ベアリング22,23を位置決めするための加工を行う必要がなく、それだけ加工コストを低減させることができる。
【0040】
また、前記ゴム製蓋SL,SRが、対応する前記メーンビーム部材28L,28Rの前記左右のメーンビーム本体281L,281Rによって車輌幅方向X外方への離脱が防止されているので、前記ゴム製蓋SL,SRの車輌幅方向X外方への離脱防止用部材を前記メーンビーム部材28L,28Rとは別に設ける必要がなく、それだけ部品コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の実施に係るロータリ耕耘機が作業車輌の本機に付設されている状態を示す側面図である。
【図2】図2は、図1におけるロータリ耕耘機の後面断面図である。
【図3】図3は、延長爪軸の耕耘爪軸との接続状態を示す図であり、図3(A)は、図中左側に延長爪軸が耕耘爪軸にキー部材を介して接続されている状態の概略正面図を、図中右側に該状態の概略断面を示しており、図3(B)は、図中左側に延長爪軸が断面視D字状にカットされた耕耘爪軸に接続されている状態の概略正面図を、図中右側に該状態の概略断面を示している。
【図4】図4は、ロータリカバーのフロントカバーとの当接部分にクッション部材が設けられている状態を示す概略側面図である。図4(A)は、フロントカバーが通常の位置に配置されている状態を示しており、図4(B)は、フロントカバーが跳ね上げられた状態を示している。
【図5】図5は、ロータリ耕耘機単体の状態で立てておくためのスタンドがロータリカバーに設けられる状態を示す概略平面図であり、図5(A)は、スタンド使用状態を示しており、図5(B)は、スタンド収納状態を示している。
【図6】図6は、従来のロータリ耕耘機の後面断面図である。
【符号の説明】
【0042】
20…ロータリ耕耘機20 21…入力軸 22,23…一対の軸受部材
26…ドリブンシャフト 28L,28R…一対のメーンビーム部材
29…ロータケース 29L,29R…ロータケースの両側壁
281L,281R…メーンビーム本体 282L,282R…フランジ
d1,d2…開口径 P1,P2…開口 Q…止め輪 SL,SR…シール部材
X…車輌幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸からの動力を受けるドリブンシャフトと、該ドリブンシャフトの軸線方向両端部を一対の軸受部材を介して軸線回り回転自在に支持するロータケースとを備えたロータリ耕耘機であって、
前記ロータケースの両側壁には、それぞれ、対応する前記軸受部材の外径と等しいか又は略等しい開口径を有する開口が設けられ、
前記一対の軸受部材は、それぞれ、対応する開口部内に配設された状態で、止め輪によって車輌幅方向外方への移動が防止されており、
前記開口は、前記軸受部材より車輌幅方向外方に配置されるシール部材によって液密にシールされていることを特徴とするロータリ耕耘機。
【請求項2】
前記ロータケースの両側壁に、それぞれ、連結される一対のメーンビーム部材を、さらに備え、
前記シール部材は、対応する前記メーンビーム部材によって車輌幅方向外方への離脱が防止されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘機。
【請求項3】
前記メーンビーム部材は、車輌幅方向に延びるメーンビーム本体と、該メーンビーム本体の車輌幅方向内端部に設けられたフランジとを有しており、
前記フランジを前記ロータケースの側壁に連結させた状態において、該フランジ又は/及び前記メーンビーム本体が前記シール部材の車輌幅方向外方への移動を防止するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のロータリ耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−246832(P2006−246832A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70553(P2005−70553)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】