説明

ロータリ耕耘装置における草藁巻付防止装置

【課題】ロータリ耕耘装置の耕耘筒への草類(長藁,雑草等)の巻き付きを効果的に防止できる草藁巻付防止装置を設ける。
【解決手段】ロータリ耕耘装置2の耕耘筒15の外周に、該耕耘筒15の反回転方向(耕耘筒15の回転方向に対して背面側)に向く凹状の円弧刃面31aを有する草藁切断刃31を設けることによって、圃場での耕耘作業中に耕耘筒15へ巻き付いた草藁(長藁,雑草等)Gは、遠心力により草藁切断刃31の凹状の円弧刃面31aに当接しながら耕耘筒15の外周から浮上する。その際、前記草藁Gは、草藁切断刃31の円弧刃面31aに強く突き当たりながら切断されて細片化し、この細片化した草藁Gが耕耘土と共に放擲されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の農作業用車両の後部にリンク装置を介して昇降自在に装着されるロータリ耕耘装置に係り、詳しくは複数の耕耘爪を装着した耕耘筒に設ける草藁巻付防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の農作業用車両の後部には、三点リンク式の作業機装着装置が配設されており、この作業機装着装置の後部にロータリ耕耘装置等の作業機を昇降自在に装着できるようになっている。また、複数の耕耘爪が装着されているロータリ耕耘装置の耕耘筒は、当該ロータリ耕耘装置の片側に設けた伝動ケース内の駆動スプロケットと従動スプロケットに巻き掛けられた駆動チェンによって回転駆動するようになっており、農作業用車両を走行させながら耕耘筒を回転駆動させることによって耕耘爪による圃場の耕耘作業が行われる。
【0003】
そして、耕耘筒の回転駆動によって該耕耘筒に草藁(長藁,雑草等)が巻き付くことを防止するために、耕耘筒の外周から所定間隔を存して該耕耘筒と略平行な一本のロッドを、当該耕耘筒の左右最外端側の耕耘爪ホルダ間に張設支持したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、耕耘爪に巻き付いた草藁を耕耘時の砕土圧力によって切断すべく、当該耕耘爪の内方曲面側の端面、即ち耕耘軸(車軸)の回転方向に鋸刃状の切断刃を設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−150801号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】実開昭60−89804号公報(図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の特許文献1のものは、耕耘筒の外周から所定間隔を存して耕耘筒と略平行に張設したロッドによって、耕耘筒に巻き付こうとする草藁を捕捉しながら放擲しようとするものであるが、その期待効果が十分に得られず、特に一旦耕耘筒に巻き付いてしまった草類は鎌等を用いて切除しなければならなかった。また、特許文献2のものは、耕耘軸の回転方向に切断刃を設けているので、該切断刃は、土中の石との衝突により磨耗や損傷が激しく実用的なものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、複数の耕耘爪を装着した耕耘筒と、前記耕耘爪の上方を覆うロータリカバーを備えたロータリ耕耘装置であって、前記耕耘筒の外周に、該耕耘筒の回転方向に対して背面側に刃面を有する草藁切断刃を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータリ耕耘装置における草藁巻付防止装置として、複数の耕耘爪を装着した耕耘筒の外周に、該耕耘筒の回転方向に対して背面側に刃面を有する草藁切断刃を設けたことによって、圃場での耕耘作業中に前記耕耘筒へ草藁(長藁,雑草等)が巻き付いた場合は、この草藁は、遠心力により草藁切断刃の刃面に当接しながら耕耘筒の外周から浮上する。その際、前記草藁は、草藁切断刃の刃面に強く突き当たりながら切断されて細片化し、この細片化した草藁は、耕耘土と共に放擲されるので耕耘筒への草藁の巻き付きを防止できるようになる。そして、草藁切断刃の刃面は、耕耘筒の反回転方向に向いており、圃場での耕耘作業時に耕耘爪によって跳ね上げられる石との衝突による磨耗や損傷が起こり難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、農作業用車両であるトラクタ1の後部に装着したロータリ耕耘装置2によって耕耘作業を行っている状態を示す側面図であり、また図2は、ロータリ耕耘装置2の平断面図であって、当該ロータリ耕耘装置2は、3点リンク機構3及びオートヒッチ4を介してトラクタ1に昇降自在に装着されている。
【0009】
そして、ロータリ耕耘装置2の中央部にはギヤケース5が設けてあり、このギヤケース5の上部に左右一対のトップマスト6,6を固設すると共に、該トップマスト6,6の前側上部をオートヒッチ4に連結してある。また、トップマスト6,6の後側上部には、通常は尾輪や畦立器等を装着するツールバー7の上下姿勢を調節するためのネジ式調節装置8を軸支している。
【0010】
また、ギヤケース5の左右両側には、ロータリ耕耘装置2の横伝動筒を兼ねる左側筒状アーム10と、この左側筒状アーム10と略同寸法の右側筒状アーム11を配設すると共に、左側筒状アーム10の外端(左端側)にはロータリ耕耘装置2の伝動ケースであるチェンケース12、一方右側筒状アーム11の外端(右端側)にはサイドプレート13を固設してある。そして、複数本の耕耘爪14を装着した耕耘筒15をチェンケース12とサイドプレート13の下部に配設したボールベアリング16,17,18に軸支することによって、当該ロータリ耕耘装置2を一体的に組み立てている。尚、耕耘爪14は、耕耘筒15に固設したホルダ15aを介して装着(螺設)してある。
【0011】
また、耕耘爪14の上方を覆うロータリカバー19を側面視で円弧状に形成すると共に、その後寄り左右両側にサイドカバー20,20を設けている。そして、ロータリカバー19後部の支点Pを回動中心としてリヤカバー21を上下回動自在に軸支すると共に、左右一対の吊りロッド22,22を介してリヤカバー21を持ち上げ可能に構成することによって、耕耘爪14の回転軌跡とリヤカバー21との空間Sを所望の隙間に調節できるようにしてある。
【0012】
また、トラクタ1の後部PTO軸とユニバーサルジョイントを介して連結する入力軸24から伝達される駆動力は、ギヤケース5内のベベルギヤ25,26を介して左側筒状アーム10に内装した駆動軸27に伝達され、更にチェンケース12の上部で駆動軸27に軸着した駆動スプロケット28と、チェンケース12の下部で耕耘筒(従動軸)15に連結した従動スプロケット29に巻き掛けた駆動チェン30を介して、当該耕耘筒15を回転駆動させるように構成してあり、所謂サイドドライブ方式の伝動機構を採用している。
【0013】
そして、本発明のロータリ耕耘装置2には、回転駆動する耕耘筒15へ巻き付いた草藁(長藁,雑草等)を切断することができる草藁巻付防止装置として、図3及び図4に示す草藁切断刃31を設けている。この草藁切断刃31は、耕耘筒15に装着されている複数本の耕耘爪14の間を縫いながら、図3に二点鎖線Bで示如く所定の間隔で当該耕耘筒15の外周に略螺旋状に設けてある。
【0014】
更に詳しく説明すると、草藁切断刃31は、耕耘筒15の回転方向である図中A矢印方向に対して、その背面側である反回転方向に向く凹状の円弧刃面31aを図4に示す如く有しており、圃場での耕耘作業中に耕耘筒15へ草藁Gが巻き付いた場合は、この草藁Gは、遠心力によって草藁切断刃31の凹状の円弧刃面31aに当接しながら耕耘筒15の外周面Fから図中D矢印方向に浮上する。その際、前記草藁Gは、草藁切断刃31の円弧刃面31aに強く突き当たりながら切断されて細片化し、この細片化した草藁Gは、耕耘土と共に放擲されるので耕耘筒15への草藁Gの巻き付きを防止できるようになる。
【0015】
尚、上述した草藁切断刃31は、耕耘筒15の回転方向である図中A矢印方向に対して後退角を有する凸状の円弧31bを形成しており、この凸状の円弧31bによって耕耘筒15へ巻き付こうとする草藁Gを浮き上がらせることができるようになっており、特許文献1における耕耘筒の外周から所定間隔を存して該耕耘筒と略平行に張設支持した一本のロッドと同様に、一旦浮き上がった草藁Gを耕耘土と共に放擲せしめる作用効果を奏する。また、草藁切断刃31の円弧刃面31aは、耕耘筒15の反回転方向に向いており、圃場での耕耘作業時に耕耘爪14によって跳ね上げられる石との衝突による磨耗や損傷が起こり難い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ロータリ耕耘装置による耕耘作業状態を示す側面図。
【図2】ロータリ耕耘装置の一部を省略した平断面図。
【図3】耕耘筒の要部斜視図。
【図4】草藁切断刃(草藁巻付防止手段)の作用状態を示す要部側面図。
【符号の説明】
【0017】
2 ロータリ耕耘装置
14 耕耘爪
15 耕耘筒
19 ロータリカバー
31 草藁切断刃
31a 刃面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪(14)を装着した耕耘筒(15)と、前記耕耘爪(14)の上方を覆うロータリカバー(19)を備えたロータリ耕耘装置(2)であって、前記耕耘筒(15)の外周に、該耕耘筒(15)の回転方向に対して背面側に刃面(31a)を有する草藁切断刃(31)を設けたことを特徴とするロータリ耕耘装置における草藁巻付防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−106205(P2009−106205A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282555(P2007−282555)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】